説明

ディスク装置

【課題】 簡単な構成で、カムスライダーとこれを駆動するトレイギアとの間で歯飛び
が生じないようにしたディスク装置を提供する。
【解決手段】 カムスライダー6のラック部6aの左端近傍上面より上方に向かって、
板状のリブ6fが突設した構成としている。これにより、上述したような異常な力により
ラック部6aが浮き上がろうとしても、リブ6fの上端がトレイ10の下面に当接し、そ
れ以上浮き上がれなくなる。このようにして、ラック部6aとトレイギア8との間の歯飛
びを防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD,DVD等のディスクに対して記録或いは再生を行うディスク装置に関
するものであり、特に、トラバースメカを駆動するカムスライダーの構造に関するもので
ある。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスク装置として、ディスクを載置したディスクトレイを本体内に移動さ
せ、本体内に設けたディスクホルダ(クランパー)とターンテーブルとの間にディスクを
クランプして、ディスクに対して記録或いは再生を行うようにしたものが知られている。
ところが、このような従来のディスク装置においては、トレイに異常な力が加わった場合
等に問題が生じるおそれがある。これについて以下に説明する。
【0003】
図5は、従来のディスク装置におけるトレイ部分を示す図であり、平面図としている。
同図ではトレイが閉じてトラバースメカが上昇したときの各部の位置関係を、トレイを透
視した状態で描いてある。同図に示すように、ディスクのローダー部分としては、ディス
クを前後方向に搬送するトレイ10及び、左右方向にスライドして後述するトラバースメ
カを昇降させるカムスライダー6が設けられている。
【0004】
トレイ10の下面右側にはラック部10aが前後方向に延びており、またカムスライダ
ー6の右側後部にはラック部6aが左右方向に延びている。各ラック部はトレイギア8と
噛み合い可能であり、ラック部10aが噛み合った状態でトレイギア8が回転することに
よりトレイ10が前後方向に移動し、ラック部6aが噛み合った状態でトレイギア8が回
転することによりカムスライダー6が左右方向にスライドする仕組みである。
【0005】
さて、図の状態からトレイ10を開く場合は、トレイギア8が右回転してカムスライダ
ー6が左方へスライドし、後述するトラバースメカを下降させた後、トレイギア8がラッ
ク部10aと噛み合い始め、トレイ10が駆動されて前方へと移動する。また、トレイ1
0を閉じる場合は、前記と逆の動作が行われる。しかし、同図に示したような従来の構成
において、トレイ10の開或いは閉動作時に使用者がトレイ10を押す或いは引く等の、
異常な力が加わった場合には、これがトレイギア8を介してカムスライダー6に伝わり、
ラック部6aが浮き上がることがある。
【0006】
こうなると、ラック部6aとトレイギア8との噛み合いが甘くなり、歯飛びが生じるお
それがある。このような歯飛びが生じると、本来噛み合うべき歯同士が噛み合わなくなる
ため、ディスクの搬送動作やチャッキング動作が正常に行えなくなる。そこで、ラック部
6aの浮き上がりを防止するような構成が必要となる。
【0007】
部品同士の位置関係を適正にすることに関しては、種々のものが提案されてきている。
例えば、移送手段の移送方向にスライドさせて装置ベースに組み付けることができ、しか
も、欠歯歯車を含む歯車機構と移送手段のラックとの噛み合い位置を適正に設定すること
ができるとしたディスクローディング装置が、特許文献1に開示されている。
【0008】
具体的には、ディスクを移送するトレイベースと、該トレイベースを駆動する駆動機構
と、トレイベースに設けられて駆動機構の出力ギアと噛合するラックと、上記出力ギアと
欠歯歯車とを含んで駆動機構の一部を構成する駆動ギア列と、該駆動ギア列の出力ギアの
上面側に設けられ、上記欠歯歯車を所定の回動位置に維持した場合に、トレイベースの移
動方向に沿った方位に設定されるスリット壁部と、トレイベースに一体的に設けられその
移動に伴って上記方位に設定されたスリット通路を挿通し得る突起部とを備えた構成とし
ている。
【0009】
或いは、輸送中の振動や衝撃によりカムスライダーが本来の位置から移動してしまうこ
との無いようにしたものが、特許文献2に開示されている。具体的には、カムスライダー
が捻りばねにより本来の位置、即ちトレイギアの小歯車部とカムスライダーのラック部と
が噛み合わない位置に保持されるように付勢されたものとしており、ひいてはトレイギア
の回転が防止されるものとしている。
【0010】
また、トレイを組み付ける際にトレイのラックと駆動ギアとの噛み合わせがずれないよ
うにしたディスク装置が、特許文献3に開示されている。具体的には、駆動ギアの歯と歯
との間に逃げ部を設け、トレイのラックの導入部に逃げ部に対応する幅を有する幅広部を
設けてなり、トレイを組み付ける過程でトレイの幅広部が駆動ギアの逃げ部に嵌合して第
1のギアに噛合するトレイのラックの噛合位置と、第2のギアとを可動ベース駆動部材の
ラックの噛合位置とが一致して1回の操作でトレイを確実に組み付けることができる構成
としている。
【特許文献1】特開2004−310804号公報
【特許文献2】特開2004−253130号公報(第21頁)
【特許文献3】特開2002−288916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1或いは特許文献3に記載のような構成は、異常な力が加
わったときの部品の変形を抑制するようなものではなかった。また、上記特許文献2に記
載の構成においては、スライド部品の移動規制を弾性部材で行っているので、その付勢力
に抗してスライド部品を移動させるためには、余分な駆動力が必要となる上に、輸送中の
振動や衝撃等により前記付勢力を超える力がスライド部品に加わった場合には、忽ち移動
規制が損なわれてしまう。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑み、簡単な構成で、カムスライダーとこれを駆動する
トレイギアとの間で歯飛びが生じないようにしたディスク装置を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、装置本体に固定のシャーシと、モータの駆動
により複数のギアを介して前記シャーシに対して所定方向に昇降可能なトラバースメカと
、光ピックアップを有するとともに前記トラバースメカに設けられて前記モータの駆動に
より前記トラバースメカの昇降方向に略直交する方向に移動可能なピックアップユニット
とを有し、前記トラバースメカの昇降の方向及び前記ピックアップユニットの移動方向に
対して略直交する方向に移動できるように前記シャーシに設けられたカムスライダーと、
前記カムスライダーとのカム係合により前記トラバースメカを昇降させるように前記トラ
バースメカに設けられたシフトレバーとを備えたディスク装置であって、ディスクを搬送
するトレイと、そのラック部に噛合して該トレイを駆動するトレイギアを設け、ディスク
を載置したトレイを前記装置本体内に移動させ、該装置本体内に設けたクランパーと前記
トラバースメカに設けたターンテーブルとの間に前記ディスクをクランプして、該ディス
クに対して前記光ピックアップにより記録或いは再生を行うディスク装置において、前記
トレイギアは前記カムスライダーのラック部にも噛合し、該ラック部近傍上面より上方に
向かってリブが突設して、該リブの上端が前記トレイの下面近傍に位置するようにしてな
ることを特徴とする。
【0014】
また、前記リブは板状をしており、該リブが前記カムスライダーのスライド方向に延在
してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で、カムスライダーとこれを駆動するトレイギアとの間で
歯飛びが生じないようにしたディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係るディスク装置のディスクローダーを示す図であり、平
面図としている。このディスク装置は、ディスクを搬送するトレイ(不図示)と、トレイ
の搬送方向(前後方向)に略垂直な方向に旋回して昇降可能なトラバースメカ2とがロー
ダーシャーシ1に設けられている。なお、ローダーシャーシ1は図示しない装置本体に固
定されている。
【0018】
トラバースメカ2にはディスクの記録または再生を行う光ピックアップを有したピック
アップユニット3と、ピックアップユニット3をディスクの径方向に移動させるモータ4
とが設けられている。モータ4には複数の平ギアから成る伝達手段5が取り付けられてお
り、モータ4の駆動力を減速して伝達する。伝達手段5がピックアップユニット3に形成
されたラック部3aと噛合することにより、モータ4によってピックアップユニット3が
移動できるようになっている。
【0019】
また、伝達手段5は前方のトレイギア8と噛合し、トレイギア8はトラバースメカ2の
前方でローダーシャーシ1側に配されたカムスライダー6と噛合可能になっている。カム
スライダー6は、トラバースメカ2の前部に設けられたシフトレバー7とカム係合し、ト
レイの搬送方向(前後方向)及びトラバースメカ2の昇降方向と略直交する方向(左右方
向)に移動できる。これにより、トラバースメカ2が昇降する。更に、トレイギア8はト
レイに形成されたラックと噛合可能になっており、所定の時期にトレイギア8とトレイと
が連結して、モータ4の駆動力がトレイに伝達されるようになっている。
【0020】
上記構成のディスク装置において、トレイにディスクが載置されると、モータ4の駆動
によりトレイがディスクローダー内に搬送される。トレイが所定位置に配されると、トレ
イとトレイギア8との連結が解除され、カムスライダー6とトレイギア8とが連結される
。カムスライダー6はトレイの搬送方向に垂直な方向(左右方向)に移動し、トラバース
メカ2を上昇させる。これにより、トラバースメカ2がディスクに係合してディスクがチ
ャックされる。
【0021】
ディスクのチャック部を具体的に説明すると、ローダーシャーシ1の上側に左右方向に
渡ってクランパーホルダーが架設されており、その中央には略円板状のクランパーが回転
自在に設けられている(不図示)。一方、図示しないスピンドルモータにより回転駆動さ
れるターンテーブル9が、トラバースメカ2から上方に突設している。上述したディスク
のチャック時には、トラバースメカ2が上昇することによりディスクの中心孔がターンテ
ーブル9に嵌合し、更にトラバースメカ2が上昇することによりディスクがターンテーブ
ル9とクランパーとの間に挟み込まれる。
【0022】
ディスクがチャックされると、トレイギア8とカムスライダー6との連結が解除され、
伝達手段5はピックアップユニット3と連結される。これにより、ピックアップユニット
3がディスクの径方向へ移動可能になり、ディスクの所定位置で記録または再生を行うこ
とができる。また、ディスクを取り出す際には上記と逆の動作が行われる。
【0023】
図2は、本実施例におけるトレイ部分を示す図であり、平面図としている。同図ではト
レイが閉じてトラバースメカが上昇したときの各部の位置関係を、トレイを透視した状態
で描いてある。また図3は、同じく本実施例におけるトレイ部分を示す図であり、正面図
としている。なお、上記従来の技術と同様の機能を有する部分には同一の符号を付して、
詳細な説明を適宜省略する。
【0024】
これらの図に示すように、本実施例では、カムスライダー6のラック部6aの左端近傍
上面より上方に向かって、板状のリブ6fが突設した構成としている。これにより、上述
したような異常な力によりラック部6aが浮き上がろうとしても、リブ6fの上端がトレ
イ10の下面に当接し、それ以上浮き上がれなくなる。このようにして、ラック部6aと
トレイギア8との間の歯飛びを防止している。
【0025】
リブ6fの上端とトレイ10の下面との隙間は、設計上で例えば0.5mm程度として
おり、ミリメートルオーダーで生じる浮き上がりを抑制することができる。また、カムス
ライダー6の移動範囲全体に渡って、リブ6fがトレイ10の下側に位置するように設け
られている。さらに、図2より分かるように、リブ6fは左右方向即ちカムスライダー6
のスライド方向に延在した構成となっており、これにより、カムスライダー6のスライド
時にリブ6fがトレイ10に当接しても、スティックスリップ等が生じ難いようにし、摺
動摩擦力の影響をできるだけ受けないようにしている。
【0026】
ここで図4は、カムスライダー6の外観図であり、同図(a)は背面図、同図(b)は
平面図、同図(c)は正面図である。なお、下面図,側面図は図示を省略している。同図
(a)に示すように、カムスライダー6の背面には、トラバースメカ2昇降用のカム溝6
d,6eが設けてあり、それぞれシフトレバー7のボス7a,7b(図1参照)と係合す
る。カム溝6dは、同図(c)より分かるように、貫通孔となっており、一方、カム溝6
eは有底のものとなっている。
【0027】
また、同図(b)に示すように、6aはトレイギア8と噛合するラック部である。その
他、カムスライダー6の左右端より下側に突設する側面視略L字状の係合部6b,6cは
、上記ローダーシャーシ1前部の左右に連設されるスリット1a,1b(図1参照)にそ
れぞれスライド可能に係合する。そして、上述したように、ラック部6aの左端近傍上面
より上方に向かって、板状のリブ6fが突設している。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、カムスライダーのラック部近傍にリブを設ける
といった簡単な構成で、異常な力によりカムスライダーのラック部が浮き上がろうとして
も、前記リブがトレイの下面に当接することによりその浮き上がりを防止し、カムスライ
ダーとこれを駆動するトレイギアとの間で歯飛びが生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係るディスク装置のディスクローダーを示す図。
【図2】本実施例におけるトレイ部分を示す図(平面図)。
【図3】本実施例におけるトレイ部分を示す図(正面図)。
【図4】カムスライダーの外観図。
【図5】従来のディスク装置におけるトレイ部分を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 ローダーシャーシ
2 トラバースメカ
3 ピックアップユニット
4 モータ
5 伝達手段
6 カムスライダー
7 シフトレバー
8 トレイギア
9 ターンテーブル
10 トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に固定のシャーシと、モータの駆動により複数のギアを介して前記シャーシに
対して所定方向に昇降可能なトラバースメカと、光ピックアップを有するとともに前記ト
ラバースメカに設けられて前記モータの駆動により前記トラバースメカの昇降方向に略直
交する方向に移動可能なピックアップユニットとを有し、
前記トラバースメカの昇降の方向及び前記ピックアップユニットの移動方向に対して略
直交する方向に移動できるように前記シャーシに設けられたカムスライダーと、前記カム
スライダーとのカム係合により前記トラバースメカを昇降させるように前記トラバースメ
カに設けられたシフトレバーとを備えたディスク装置であって、
ディスクを搬送するトレイと、そのラック部に噛合して該トレイを駆動するトレイギア
を設け、ディスクを載置したトレイを前記装置本体内に移動させ、該装置本体内に設けた
クランパーと前記トラバースメカに設けたターンテーブルとの間に前記ディスクをクラン
プして、該ディスクに対して前記光ピックアップにより記録或いは再生を行うディスク装
置において、
前記トレイギアは前記カムスライダーのラック部にも噛合し、該ラック部近傍上面より
上方に向かってリブが突設して、該リブの上端が前記トレイの下面近傍に位置するように
してなり、また前記リブは板状をしており、該リブが前記カムスライダーのスライド方向
に延在してなり、前記カムスライダーのラック部が異常な力を受けて浮き上がろうとして
も、該リブの上端が前記トレイの下面近傍に当接し、その浮き上がりを抑制するようにし
たことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
装置本体に固定のシャーシと、モータの駆動により複数のギアを介して前記シャーシに
対して所定方向に昇降可能なトラバースメカと、光ピックアップを有するとともに前記ト
ラバースメカに設けられて前記モータの駆動により前記トラバースメカの昇降方向に略直
交する方向に移動可能なピックアップユニットとを有し、
前記トラバースメカの昇降の方向及び前記ピックアップユニットの移動方向に対して略
直交する方向に移動できるように前記シャーシに設けられたカムスライダーと、前記カム
スライダーとのカム係合により前記トラバースメカを昇降させるように前記トラバースメ
カに設けられたシフトレバーとを備えたディスク装置であって、
ディスクを搬送するトレイと、そのラック部に噛合して該トレイを駆動するトレイギア
を設け、ディスクを載置したトレイを前記装置本体内に移動させ、該装置本体内に設けた
クランパーと前記トラバースメカに設けたターンテーブルとの間に前記ディスクをクラン
プして、該ディスクに対して前記光ピックアップにより記録或いは再生を行うディスク装
置において、
前記トレイギアは前記カムスライダーのラック部にも噛合し、該ラック部近傍上面より
上方に向かってリブが突設して、該リブの上端が前記トレイの下面近傍に位置するように
してなることを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
前記リブは板状をしており、該リブが前記カムスライダーのスライド方向に延在してな
ることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−18667(P2007−18667A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201845(P2005−201845)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】