説明

ディスク装置

【課題】 出退移動している途中のディスクトレイの姿勢が不安定になることを回避してその姿勢を安定させることにより、ディスクトレイのビビリ現象に伴う異音の発生を抑制してディスク装置の動作品位を向上させる。
【解決手段】 筐体10の開放されている上面を防塵カバー60で塞いでいる。ディスクトレイ50の重心位置Gよりも後側部位に両持ち構造の板ばねでなる樹脂ばね55を設ける。樹脂ばね55は、ディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端21の前後の直近位置に到達したときにディスクトレイ50が前下がり姿勢になることを許容する弾性強さを有する。防塵カバー60に、ディスクトレイ50が後退位置に到達したときに樹脂ばね55を無負荷状態に復帰させる逃がし凹所62を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明、ディスク装置、特に、外枠としての筐体に出退移動可能に取り付けられたディスクトレイの動作安定性を高めて、振動や異音の発生を抑制しようとする対策が講じられているディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8はディスク装置の外枠としての筐体10とディスクトレイ50とを示した平面図、図9は図8のIX−IX線に沿う部分の概略断面図である。外枠としての筐体10は、上面が開放されていると共に、その幅方向の両端部のそれぞれに、ディスクトレイ50を支えて前後方向に案内するガイドレール20と、このガイドレール20からディスクトレイ50が浮き上がって外れることを防ぐ浮き上がり防止部30とを備えている。ガイドレール20は、前後方向に直線状に並んだ複数の突起でなる突起列(図10〜図12参照)によって形成されていたりする。浮き上がり防止部30についても同様である。
【0003】
これに対し、ディスクトレイ50は、その幅方向の両端部のそれぞれに摺動片部51を有していて、上記ガイドレール20に支えられた摺動片部51に、ガイドレール20の反対側(上側)から上記浮き上がり防止部30が臨んでいる。
【0004】
この構成を備えたディスク装置では、ディスクトレイ50が筐体10の内部と外部との相互間で出退移動される。そして、ディスクトレイ50が筐体10の外部に突出しているときに、記録媒体としてのディスク(不図示)がそのディスクトレイ50上の定位置に載架される。また、ディスクトレイ50が筐体10の外部から内部に向けて後退移動することによって、ディスクトレイ50に載架されているディスクが筐体10の内部に搬入される。さらに、ディスクトレイ50が筐体10の内部から外部に向けて突出移動することによって、ディスクトレイ50に載架されたディスクが筐体10の外部に搬出される。
【0005】
ディスク装置において、上記したようなディスクトレイ50の出退移動は、ディスクトレイ50の摺動片部51がガイドレール20上でスライドすることによって行われる。そして、そのような出退移動を円滑に行わせるための対策として、筐体10の内部にディスクトレイ50が後退しているときに、ガイドレール20に支えられているディスクトレイ50の摺動片部51と浮き上がり防止部30との相互間に一定の隙間Sが確保されていて、その隙間Sがディスクトレイ50の出退移動時の遊び空間を形成している。また、図8に示したディスクトレイ50はその重心が前後方向の中間部に位置していて、そのようなディスクトレイ50にディスクが載架されると、重心位置がディスクトレイ50の前端側に変位する。
【0006】
図10〜図12には筐体10の内部と外部との相互間で出退移動するディスクトレイ50の状態を説明的に示している。図10は筐体10の外部にディスクトレイ50が突出している状態を説明的に示した概略縦断側面図、図11は筐体10の外部から内部に向けてディスクトレイ50が後退移動している状態を示した概略縦断側面図、図12は筐体50の内部に後退したディスクトレイ50を説明的に示した概略縦断側面図である。
【0007】
図10に示したように、筐体10の外部にディスクトレイ50が突出している状態では、ディスクトレイ50にディスクが載架されているか否かに関係なく、ディスクトレイ50の重心位置Gが、ガイドレール20の前端部21よりも前側に位置している。しかも、浮き上がり防止部30とディスクトレイ50との相互間には、上記隙間Sによって遊び空間が形成されている。そのため、同図の状態では、ディスクトレイ50が前下りに傾き、その後端部52が浮き上がり防止部30に当接することによってディスクトレイ50の前下り姿勢が維持されている。したがって、このときにはディスクトレイ50がガイドレール20の前端部21と浮き上がり防止部30との前後2箇所で支えられることになって、その姿勢が安定している。
【0008】
図11に矢印Rで示したように、ディスクが載架されているディスクトレイ50又はディスクが載架されていないデイスクトレイ50が、突出した位置から後退移動することによってその重心位置Gがガイドレール20の前端部21の直近位置に到達してからその前端部21を通り過ぎた位置付近に到達したときには、ディスクトレイ50の重心位置Gを挟む前側部分の重量と後側部分の重量とが均衡するので、ディスクトレイ50は、必ずしも、ガイドレール20の前端部21と浮き上がり防止部30との前後2箇所で支えられることにはならない。すなわち、ディスクトレイ50が振動などの外的影響を受けたときには、図示のように、ガイドレール20の前端部21で支えられているディスクトレイ50が前下り姿勢になったり、ディスクトレイ50の後端部52が浮き上がり防止部30から離れたりして、その姿勢が不安定になる。したがって、重心位置Gがガイドレール20の前端部21を挟む前後の直近に到達しているときには、ディスクトレイ50が振動などの影響を受けて所謂ビビリ現象を生じ、異音が発生したりすることがある。
【0009】
図12に矢印Rで示したように、ディスクが載架されているディスクトレイ50又はディスクが載架されていないデイスクトレイ50が、筐体10の内部に後退しているときには、ディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端部21の後側に到達しているので、ディスクトレイ50は、その全体がガイドレール20により支えられて安定した姿勢を維持する。
【0010】
図10〜図12は、筐体10の外部の突出位置からその内部の後退位置に向けて後退移動している行程でのディスクトレイ50の状態を示しているけれども、筐体10の内部の後退位置からその外部の突出位置に向けて突出移動する行程でのディスクトレイ50においても、その重心位置Gがガイドレール20の前端部21を挟む前後の直近に到達しているときには、同様にディスクトレイ50の姿勢が不安定になり、ディスクトレイ50が振動などの影響を受けて所謂ビビリ現象を生じ、異音が発生したりすることがある。
【0011】
一方、ディスク装置に関しては、ディスクトレイの出退移動の安定性を高めることを意図して、ばね性を備える傾動緩和リブを、ディスクトレイの突出位置でそのディスクトレイの後端部に弾接させるという提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。同様の意図の下で、ディスクトレイの後端部に一体成形した樹脂ばねでなる屈曲部を、ディスクトレイの突出位置でメインシャーシに弾接状態で係合させることも提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0012】
さらに、ディスクドライブ装置に関しては、ディスクトレイに押圧爪を具備させ、ディスクトレイが筐体の内部へ後退移動してきたときに、ディスクトレイに設けた押圧爪を筐体に弾接させることによって、ディスクトレイが筐体に衝突するときの騒音を低減させるという提案もなされている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−200507号公報
【特許文献2】特開2007−58891号公報
【特許文献3】特開2000−187916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図11を参照して説明したように、ディスク装置において、ディスクトレイ50の出退移動の途中の行程でディスクトレイ50の姿勢が不安定になり、振動などの影響でビビリ現象に伴う異音が発生したりすると、そのことによって、ディスク装置の動作品位の高級感が損なわれてしまうという問題がある。
【0015】
この点に関し、特許文献1や特許文献2によって提案されている技術は、ディスクトレイ50の出退移動の途中でディスクトレイの姿勢が不安定になることを回避するというものではなく、ディスクトレイが突出位置に達したときのディスクトレイの姿勢を安定させるものに過ぎない。したがって、これらの各特許文献によって提案されている技術を適用しても上記問題を解決することはできない。
【0016】
本発明は以上の問題や事情に鑑みてなされたものであり、出退移動している途中のディスクトレイが、筐体側の前後2箇所で常時支えられるような対策を講じることによって、出退移動途中でディスクトレイの姿勢が不安定になることを回避し、それによって、ディスクトレイの姿勢が不安定になることに伴って起こる異音の発生を防止してディスク装置の動作品位の高級感を高めることを目的としている。
【0017】
また、本発明は、出退移動しているディスクトレイを筐体側の前後2箇所で常時支えさせるという対策を、部品を追加することなく可能にしたディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るディスク装置は、上面が開放された外枠としての筐体と、この筐体に設けられたガイドレールと、このガイドレール上をスライドして上記筐体の内部と外部との相互間で出退移動することにより、重心位置が上記ガイドレールの前端を挟んでその前側位置と後側位置とに変位するように構成されているディスクトレイと、を備えている。
【0019】
そして、上記筐体の上面に防塵カバーを装備させてあると共に、上記ディスクトレイの出退移動の途中の行程であってそのディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端の前側及び後側に位置しているときに、上記防塵カバーに摺動可能に常時弾接する当接部を有する樹脂ばねが、上記ディスクトレイの重心位置よりも後側部位に設けられ、その樹脂ばねは、ディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端の前後の直近位置に到達したときに上記ディスクトレイが前下がり姿勢になることを許容する弾性強さを有している。
【0020】
このように構成されているディスク装置によると、ディスクトレイの出退移動の途中の行程で、ディスクトレイの重心位置がガイドレールの前端の後側に位置しているときには、ガイドレールによって支えられているディスクトレイの浮き上がりが樹脂ばねの作用によって阻止される。また、上記行程で、ディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端の前後の直近位置に到達したときには、樹脂ばねの弾性に抗してディスクトレイが前下がり姿勢になるけれども、ディスクトレイは、この状態でもガイドレールの前端と樹脂ばねが弾接している防塵カバーとによって少なくとも前後2箇所で支えられて安定した姿勢を維持するので、ディスクトレイがビビリ現象を起こして異音を発生するような状況が生じにくい。また、防塵カバーが筐体の内部への塵芥の侵入を防いでいることが、ディスク装置の高級機種化を促進することに役立っている。
【0021】
特に、この発明では、ディスクトレイに設けられる樹脂ばねは、ディスクトレイが前下がり姿勢になることを許容する弾性強さを有しているに過ぎないので、防塵カバーに対する樹脂ばねの弾接力はきわめて小さい。そのため、樹脂ばねが防塵カバーに弾接して摺動するとしても、それによってディスクトレイを出退移動させるための駆動系に無理な負荷が加わることがないという利点がある。
【0022】
本発明において、上記樹脂ばねは、ディスクトレイに一体に成形された前後方向に長い板ばねでなり、かつ、その樹脂ばねの前端と後端とがディスクトレイに連設された両持ち構造を有していると共に、その樹脂ばねが側面視山形に形成されて前端部表面と後端部表面とが上り勾配を有する傾斜したガイド面として形成されていることが望ましい。この構成であると、樹脂ばねに両持ち構造を付与してあるので、上記のように小さな弾性強さを有する樹脂ばねを肉薄の板ばねによって形成したとしても、その樹脂ばねのばね性能が早期に劣化(クリープ)することがなくなって、樹脂ばねの耐用性が向上する。また、樹脂ばねが側面視山形に形成されて前端部表面と後端部表面とが上り勾配を有する傾斜したガイド面として形成されていることにより、防塵カバーを備えた筐体にディスクトレイを挿入して組み付けるときに、樹脂ばねの前端部表面や後端部表面の傾斜したガイド面が、その樹脂ばねを防塵カバーの内側に無理なく滑り込ませることに役立つ。したがって、組み立て時に肉薄の板ばねでなる樹脂ばねが破損するという事態を生じにくい。
【0023】
本発明では、樹脂ばねの上記当接部が、当該樹脂ばねの頂部に形成された突起でなる、という構成を採用することが可能である。この突起は、台形状であっても半球状であってもよい。
【0024】
本発明では、上記防塵カバーに、ディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端よりも後側に位置しているときに、上記樹脂ばねを無負荷状態に復帰させる逃がし凹所が形成されていることが望ましい。この構成を採用すると、ディスクトレイの全体がガイドレールで支えられて、必ずしも樹脂ばねでディスクトレイの浮き上がりを防いでおく必要がないときに、樹脂ばねを逃がし凹所に復帰させてその樹脂ばねの弾性の劣化を抑制することができる。この作用については、上記逃がし凹所を、ディスクトレイが筐体の内部の後退位置に到達しているときに、上記樹脂ばねを無負荷状態に復帰させることのできる位置に形成しておくことによっても発揮される。
【0025】
本発明において、上記逃がし凹所は防塵カバーに設けた開口によっても形成することができる。しかし、開口を防塵カバーに設けると、防塵カバーの防塵性能が低下する。したがって、逃がし凹所は、防塵カバーに形成された膨出部の内側空間によって形成しておくことが望ましい。
【0026】
本発明では、上記樹脂ばねが、上記ディスクトレイの横幅方向の2箇所に対称に設けられていることが望ましい。この構成を採用すると、防塵カバーに対する樹脂ばねの摺動抵抗によって、ディスクトレイが出退移動するときに蛇行するおそれが少なくなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、出退移動している途中のディスクトレイが、筐体側の前後2箇所で常時支えられることになるので、出退移動の途中でディスクトレイの姿勢が不安定になることがなくなってディスクトレイの姿勢が安定する。したがって、ディスクトレイがビビリ現象を生じて異音を発生するという事態が抑制され、ディスク装置の動作品位の高級感が高められるという効果が奏される。また、出退移動しているディスクトレイを筐体側の前後2箇所で常時支えさせてディスクトレイの姿勢を安定させるという対策が、部品を追加することなく可能になるという効果も奏される。
【0028】
特に、本発明では、ディスク装置の高級化を促進することに役立つ防塵カバーを利用してその動作品位を高めている。そのため、樹脂ばねの当接部を弾接させる箇所を筐体側に確保することができない場合に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るディスク装置の外観斜視図である。
【図2】ディスクトレイが取り付けられた筐体の概略平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う部分の拡大断面図である。
【図4】筐体の外部にディスクトレイが突出している状態を説明的に示した概略縦断側面図である。
【図5】筐体の外部でディスクトレイが後退移動している状態を説明的に示した概略縦断側面図である。
【図6】筐体の内部でディスクトレイが後退移動している状態を説明的に示した概略縦断側面図である。
【図7】筐体の内部でディスクトレイが後退位置に到達している状態を説明的に示した概略縦断側面図である。
【図8】従来例の筐体とディスクトレイとを示した平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う部分の概略断面図である。
【図10】従来例において、筐体の外部にディスクトレイが突出している状態を説明的に示した概略縦断側面図である。
【図11】従来例において、筐体の外部から内部に向けてディスクトレイが後退移動している状態を示した概略縦断側面図である。
【図12】従来例において、筐体の内部に後退したディスクトレイを説明的に示した概略縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明の実施形態に係るディスク装置の外観斜視図である。図2はディスクトレイ50が取り付けられた筐体10の概略平面図、図3は図2のIII−III線に沿う部分の拡大断面図である。また、図4〜図7は筐体10の内部と外部との相互間で出退移動するディスクトレイ50の状態を説明的に示した概略縦断側面図である。
【0031】
図1に示したディスク装置の外枠としての筐体10は上面が開放されていて、その開放されている上面が、筐体10に装備した板金製の防塵カバー60によって塞がれている。この防塵カバー60は、筐体10に塵芥が侵入して動作性能を低下させることを防ぐことに役立っている。そして、図9を参照して説明したところと同様に、筐体10の幅方向の両端部のそれぞれに、ディスクトレイ50の幅方向両端部のそれぞれに備わっている摺動片部51を摺動自在に支えて前後方向に案内するガイドレール20が設けられている。このガイドレール20は、、前後方向に直線状に並んだ複数の突起でなる突起列(図4〜図7参照)によって形成されている。また、筐体10の幅方向の両端部のそれぞれには、それぞれのガイドレール20に上側から対向する浮き上がり防止部30が備わっている。この浮き上がり防止部30が、ガイドレール20に支えられたディスクトレイ50の摺動片部51に上側から対向していることによって、ディスクトレイ50がガイドレール20から浮き上がって外れることを防いでいる。浮き上がり防止部30も、前後方向に直線状に並んだ複数の突起でなる突起列(図4〜図7参照)によって形成されている。
【0032】
この構成を備えたディスク装置では、ディスクトレイ50が筐体10の内部と外部との相互間で出退移動される。そして、ディスクトレイ50が筐体10の外部に突出しているときに、記録媒体としてのディスク(不図示)がそのディスクトレイ50上の定位置に載架される。また、ディスクトレイ50が筐体10の外部から内部に向けて後退移動する行程を経ることによって、ディスクトレイ50に載架されているディスクが筐体10の内部に搬入される。さらに、ディスクトレイ50が筐体10の内部から外部に向けて突出移動する行程を経ることによって、ディスクトレイ50に載架されたディスクが筐体10の外部に搬出される。
【0033】
このディスク装置において、ディスクトレイ50の出退移動は、ディスクトレイ50の摺動片部51がガイドレール20上でスライドすることによって行われる。そして、そのような出退移動を円滑に行わせるための対策として、筐体10の内部にディスクトレイ50が後退しているときには、図9を参照して説明したところと同様に、ガイドレール20に支えられているディスクトレイ50の摺動片部51と浮き上がり防止部30との相互間に一定の隙間Sが確保されていて、この隙間Sがディスクトレイ50の出退移動時の遊び空間を形成している。また、図8に示したディスクトレイ50はその重心が前後方向の中間部に位置していて、そのようなディスクトレイ50にディスクが載架されると、重心位置がディスクトレイ50の前端側に変位する。
【0034】
図2に示したように、この実施形態では、樹脂成形体でなるディスクトレイ50の後端部の横幅方向の2箇所に対称に樹脂ばね55が一体に成形されている。樹脂ばね55は、ディスクトレイ50の後端部に設けられていることによって、ディスクが載架されているか否かに関係なく、ディスクトレイ50の重心位置よりも後側に位置している。図3のように、図例の樹脂ばね55は、ディスクトレイ50の前後方向に長い板ばねでなる。そして、その樹脂ばね55の前端55aと後端55bとがディスクトレイ50に連設された両持ち構造を有している。また、樹脂ばね55は、同図のように側面視台形状山形に形成されていて、前端部表面と後端部表面とが上り勾配を有する傾斜したガイド面56,57として形成されていると共に、その頂部の中央には、半球状ないし台形状に隆起した突起でなる当接部58が形成されている。
【0035】
図3のように、樹脂ばね55は、ディスクトレイ50の肉厚に比べてきわめて薄肉の板ばねでなる。また、この樹脂ばね55は、図4及び図5に示したように、ディスクトレイ50の重心位置がガイドレール20の前端21よりも前側に位置しているときには、当接部58が防塵カバー60に弾接したまま撓み変形してディスクトレイ50が樹脂ばね55の弾性に抗して前下がり姿勢になることを許容する程度の弾性強さを有している。すなわち、樹脂ばね55は軟弾性を有しているに過ぎない。
【0036】
また、図4〜図7に示したように、樹脂ばね55は、ディスクトレイ50の出退移動の途中の行程であってそのディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端21の前側及び後側に位置しているときに、その当接部58が防塵カバー60に摺動可能に常時弾接するように構成されている。
【0037】
図4〜図7には筐体10の内部と外部との相互間で出退移動するディスクトレイ50の状態を説明的に示している。
【0038】
図4に示したように、筐体10の外部にディスクトレイ50が突出している状態では、ディスクトレイ50にディスクが載架されているか否かに関係なく、ディスクトレイ50の重心位置Gが、ガイドレール20の前端部21よりも前側に位置している。しかも、浮き上がり防止部30とディスクトレイ50との相互間には、上記した隙間Sによって遊び空間が形成されてることに加えて、樹脂ばね55が軟弾性を有しているため、ディスクトレイ50が前下りに傾き、樹脂ばね55の当接部58が防塵カバー60に弾接している。したがって、ディスクトレイ50がガイドレール20の前端部21と樹脂ばね55の当接部59が弾接している防塵カバー60との前後2箇所で支えられることになって、その姿勢が安定している。
【0039】
図5に矢印Rで示したように、ディスクが載架されているディスクトレイ50又はディスクが載架されていないデイスクトレイ50が、突出位置から後退移動することによってその重心位置Gがガイドレール20の前端部21の直近位置に到達してからその前端部21を通り過ぎた位置付近に到達したときには、ディスクトレイ50の重心位置Gを挟む前側部分の重量と後側部分の重量とが均衡する。しかし、このときにも、樹脂ばね55の当接部58が防塵カバー60に弾接しているので、ディスクトレイ50がガイドレール20の前端部21と樹脂ばね55の当接部59が弾接している防塵カバー60との前後2箇所で支えられることになって、その姿勢が安定している。
【0040】
なお、ディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端部21の直近位置に到達してからその前端部21を通り過ぎた位置付近に到達したときには、外的要因の影響を受けてディスクトレイ50が図示したような前下り姿勢になる場合と、ディスクトレイ50のガイドレール20に平行な水平姿勢になる場合とがある。しかし、いずれの場合でも、上記のようにディスクトレイ50がガイドレール20の前端部21と樹脂ばね55の当接部59が弾接している防塵カバー60との前後2箇所で支えられてその姿勢は安定している。したがって、これらのいずれの場合であっても、ディスクトレイ50が振動などの外的影響を受けてビビリ現象を生じることが回避され、そのことが異音の発生を防ぐことに役立つ。
【0041】
図6に矢印Rで示してように、ディスクが載架されているディスクトレイ50又はディスクが載架されていないデイスクトレイ50が、筐体10の内部に後退移動してきたときには、ディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端部21の後側に到達しているので、ディスクトレイ50は、その全体がガイドレール20により支えられている。しかも、樹脂ばね55の当接部58が防塵カバー60に弾接してディスクトレイ50の浮き上がりが防止されている。そのため、ディスクトレイ50の姿勢は安定している。
【0042】
図7に矢印Rで示してように、ディスクが載架されているディスクトレイ50又はディスクが載架されていないデイスクトレイ50が、筐体10の内部の後退位置に到達しているときには、ディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端部21の後側に到達しているので、ディスクトレイ50は、その全体がガイドレール20により支えられて安定した姿勢を維持する。
【0043】
以上のようにこの実施形態では、ディスクトレイ50の出退移動の途中の行程であってそのディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端21の前側及び後側に位置しているときに、ディスクトレイ50の後端部に設けられている樹脂ばね55の当接部58が防塵カバー60に摺動可能に常時弾接しているので、上記行程中でディスクトレイ50の姿勢が不安定になってディスクトレイ50がビビリ現象を生じることが抑制される。そのため、ディスクトレイ50のビビリ現象に伴う異音の発生も抑制される。このことから、ディスク装置の動作品位が向上して高級感が高められることになる。
【0044】
図4〜図7は、筐体10の外部の突出位置からその内部の後退位置に向けて後退移動するディスクトレイ50の状態を示しているけれども、筐体10の内部の後退位置からその外部の突出位置に向けて突出移動するディスクトレイ50においても、上記同様の作用が奏される。
【0045】
ところで、ディスクトレイ50に一体形成されている樹脂ばね55は、上記したように肉薄で軟弾性を有しているに過ぎない。そのため、樹脂ばね55の弾性が早期に劣化(クリープ)して初期の弾性を発揮しなくなることが懸念される。そこで、この実施形態では、上記したように樹脂ばね55を両持ち構造としてその耐久性を高めてある。また、樹脂ばね55を両持ち構造としてあることに加えて、次に説明する対策を講じることによってその耐久性をいっそう高めてある。
【0046】
すなわち、図1や図7などに示したように、防塵カバー60の後端部の幅方向両側に対称に膨出部61を成形することによって、その膨出部61の内側空間を、上記樹脂ばね55の逃がし空間62として形成している。そして、ディスクトレイ50の重心位置Gがガイドレール20の前端21よりも後側に位置しているとき、具体的には、図7によって判るように、ディスクトレイ50が後退位置の直前位置から後退位置までの間に位置しているときには、樹脂ばね55が防塵カバー60から離れて逃がし空間62に配備されるようにしてあり、そうすることによって、樹脂ばね55が無負荷状態に復帰するようにしてある。このように構成しておくと、ディスク装置の輸送時は勿論、ディスク装置が使われていないときや、ディスク装置がプレイモードに設定されているときに、樹脂ばね55が無負荷状態になっているので、その樹脂ばね55の弾性が早期に劣化してしまうという事態を回避することが可能になる。したがって、上記した樹脂ばね55の両持ち構造と相まって、軟弾性を有する薄肉の板ばねでなる樹脂ばね55の耐久性が効果的に改善されることになる。
【0047】
この発明では、上記逃がし空間を防塵カバーに形成した開口によって形成することもできる。しかし、そのようにすると、開口からの塵芥の侵入によって防塵カバーによる防塵性能が損なわれるおそれがある。しかし、実施形態では、逃がし凹所62を、防塵カバー60に成形した膨出部61の内側空間によって形成してあるので、防塵カバー60の防塵性能が損なわれることはない。
【0048】
また、この実施形態では、樹脂ばね55が側面視台形状山形に形成されて前端部表面と後端部表面とが上り勾配を有する傾斜したガイド面56,57として形成されていることにより、防塵カバー60を備えた筐体10にディスクトレイ50を挿入して組み付けるときに、樹脂ばね55の前端部表面や後端部表面の傾斜したガイド面56,57が、その樹脂ばね55を防塵カバー60の内側に無理なく滑り込ませることに役立つ。したがって、組み立て時に肉薄の板ばねでなる樹脂ばね55が破損するという事態を生じにくいという利点がある。
【0049】
さらにこの実施形態では、樹脂ばね55に軟弾性を付与しているので、その樹脂ばね55の当接部58が防塵カバー60に弾接状態で摺動するとしても、その摺動抵抗が非常に小さくなる。そのため、ディスクトレイ50を出退移動させるための駆動系に無理な負荷が加わらないという利点もある。
【0050】
なお、図1〜図12では、説明の便宜上、同一又は相応する部分に同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0051】
10 筐体
20 ガイドレール
21 ガイドレールの前端
50 ディスクトレイ
55 樹脂ばね
55a 樹脂ばねの前端
55b 樹脂ばねの後端
56,57 ガイド面
58 樹脂ばねの当接部
60 防塵カバー
61 膨出部
62 逃がし凹所
G ディスクトレイの重心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放された外枠としての筐体と、この筐体に設けられたガイドレールと、このガイドレール上をスライドして上記筐体の内部と外部との相互間で出退移動することにより、重心位置が上記ガイドレールの前端を挟んでその前側位置と後側位置とに変位するように構成されているディスクトレイと、を備えたディスク装置において、
上記筐体の上面に防塵カバーを装備させてあると共に、上記ディスクトレイの出退移動の途中の行程であってそのディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端の前側及び後側に位置しているときに、上記防塵カバーに摺動可能に常時弾接する当接部を有する樹脂ばねが、上記ディスクトレイの重心位置よりも後側部位に設けられ、その樹脂ばねは、ディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端の前後の直近位置に到達したときに上記ディスクトレイが前下がり姿勢になることを許容する弾性強さを有していることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
上記樹脂ばねは、ディスクトレイに一体に成形された前後方向に長い板ばねでなり、かつ、その樹脂ばねの前端と後端とがディスクトレイに連設された両持ち構造を有していると共に、その樹脂ばねが側面視山形に形成されて前端部表面と後端部表面とが上り勾配を有する傾斜したガイド面として形成されているディスク装置。
【請求項3】
樹脂ばねの上記当接部が、当該樹脂ばねの頂部に形成された突起でなる請求項2に記載したディスク装置。
【請求項4】
上記防塵カバーに、ディスクトレイの重心位置が上記ガイドレールの前端よりも後側に位置しているときに、上記樹脂ばねを無負荷状態に復帰させる逃がし凹所が形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載したディスク装置。
【請求項5】
上記逃がし凹所は、ディスクトレイが筐体の内部の後退位置に到達しているときに、上記樹脂ばねを無負荷状態に復帰させることのできる位置に形成されている請求項4に記載したディスク装置。
【請求項6】
上記逃がし凹所が、板金製の上記防塵カバーに形成された膨出部の内側空間によって形成されている請求項5に記載したディスク装置。
【請求項7】
上記樹脂ばねが、上記ディスクトレイの横幅方向の2箇所に対称に設けられている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載したディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−3226(P2011−3226A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143742(P2009−143742)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】