説明

ディスク駆動装置

【課題】短いアームを用いながらディスクトレイの移動ストロークを大きくすることのできるディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ディスクトレイ2を筐体1内のローディング位置と筐体1外のイジェクト位置との間で往復移動させるトレイ移動機構8を有するディスク駆動装置である。トレイ移動機構8は、ディスクトレイ2の移動方向と同方向に移動するスライド部材81と、このスライド部材81とディスクトレイ2とを連結する連接アーム82と、を有して構成される。連接アーム82は、スライド部材81の移動により当該スライド部材81との結合点85を中心に旋回しながら、ディスクトレイ2をスライド部材81の移動方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)といったディスクをディスクトレイに配置して搬送する方式のディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレイ搬送式のディスク駆動装置は、ディスクトレイがディスクを保持しながら筐体の内外に移動する構成とされるが、ディスクトレイを移動させる機構としては、ラックピニオン機構を採用する例が多い。詳しくは、ディスクトレイにラックギアを形成する一方、そのラックギアに噛み合うピニオンを筐体内に配置し、そのピニオンを回転駆動することにより、ディスクトレイの移動が行われる構成とされる。
【0003】
しかし、ラックギアが形成されるディスクトレイでは、その薄型化が困難となるばかりでなく、ディスクを筐体外に搬出するときなどにラックギアが視認されることで体裁を損なうという問題がある。尚、ラックギアがディスクの底部に形成されるものでも、ディスクトレイが透明材料で形成される場合、ラックギアが透視されることになるので装置全体の品位が損なわれる。
【0004】
一方、ラックピニオン機構に代えて、ディスクトレイに平行する面内で旋回するアームを用い、その旋回動作によりディスクトレイの移動が行われるようにした装置も知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−226001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにアームの旋回動作によりディスクトレイを移動させる方式において、係るアームは、その一端側が回転支点として装置フレームの定位置に回転自在に結合され、その回転支点を中心としてディスクトレイに接続される他端側が前後方向に旋回する構成とされることから、短いアームではディスクトレイの移動ストロークを大きくすることができない。
【0007】
ディスクトレイの移動ストロークを大きくするには、全長の大きいアームにしてその旋回半径を大きくすればよいが、これにはアームの旋回動作領域を装置内に確保するべく装置の横幅を大きくしなければならない関係上、装置の大型化を招くという問題がある。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は短いアームを用いながらディスクトレイの移動ストロークを大きくすることのできるディスク駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の目的を達成するため、
筐体1の内外に出入り可能とされるディスクトレイ2と、ディスクトレイ2を筐体1内のローディング位置と筐体1外のイジェクト位置との間の出入り方向に往復移動させるトレイ移動機構8と、を有するディスク駆動装置において、
トレイ移動機構8は、
前記出入り方向に往復移動するスライド部材81と、
このスライド部材81とディスクトレイ2とを連結して、スライド部材81の移動により当該スライド部材81との結合点85を中心に旋回しながら、ディスクトレイ2をスライド部材の移動方向に移動させる連接アーム82と、
を有して成ることを特徴とする。
【0010】
又、筐体1の内外に出入り可能とされるディスクトレイ2と、ディスクトレイ2を筐体1内のローディング位置と筐体1外のイジェクト位置との間の出入り方向に往復移動させるトレイ移動機構8と、ディスクトレイ2により筐体1内に搬入されたディスクを回転させるためのターンテーブル62Cを備えるドライブユニット6と、このドライブユニット6をディスクトレイ2から離間する待機位置とターンテーブル62Cによりディスクが支持される状態となるドライブ位置との間で移動させるユニット移動機構7と、を有するディスク駆動装置において、
トレイ移動機構8は、
前記出入り方向に往復移動するスライド部材81と、
このスライド部材81とディスクトレイ2とを連結して、スライド部材81の移動により当該スライド部材81との結合点85を中心に旋回しながら、ディスクトレイ2をスライド部材81の移動方向に移動させる連接アーム82と、を有する一方、
ユニット移動機構7は、ドライブユニット6を前記待機位置と前記ドライブ位置とに移動案内するスライドカム71を有し、
そのスライドカム71とスライド部材81との間には、スライド部材81を移動させるためのメインギア99に噛み合う歯部73Bを有してメインギア99の動力をスライドカム71に伝達する切換レバー73が介在され、
ディスクトレイ2を前記ローディング位置から前記イジェクト位置に移動させるとき、メインギア99と切換レバー73の歯部73Bとの噛合いによりメインギア99の動力がスライドカム71に伝達されて、ドライブユニット6がディスクトレイ2の移動に先行して前記ドライブ位置から待機位置への移動を開始し、
ディスクトレイ2が前記イジェクト位置にあるときには、切換レバー73の歯部73Bがメインギア99から離間して該メインギア99からスライドカム71への動力伝達が遮断され、
ディスクトレイ2を前記イジェクト位置から前記ローディング位置に移動させることにより、メインギア99に切換レバー73の歯部73Bが噛み合わされてドライブユニット6が前記待機位置からドライブ位置に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同方向に移動するディスクトレイとスライド部材とを連接アームにより連結し、その連接アームがスライド部材の移動により当該スライド部材との結合点を中心に旋回しながらディスクトレイをスライド部材の移動方向に移動させる構成としていることから、短い連接アームにしてディスクトレイの移動ストロークを大きくすることができる。
【0012】
又、連接アームを短くできることから、装置内に連接アームを旋回させるに必要な大きな領域を確保する必要がなく、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0013】
加えて、トレイ移動機構を構成するメインギアの動力を用いてドライブユニットの移動が行なわれる構成としていることから、ディスクトレイとドライブユニットの移動タイミングを確実に合わせることができ、装置の信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るディスク駆動装置の構成例を示す斜視外観図である。図1において、1は装置の外装を成す筐体であり、その前面部には横長のディスク挿入口1Aが形成されている。2はディスクDを搬送するためのディスクトレイであり、その一端部はディスク挿入口1Aを塞ぐ鍔状の端板2Aとされている。特に、係るディスクトレイ2は、ディスク挿入口1Aを通じて、筐体1内に収容されるローディング位置(図1の点線で表される位置)と、筐体1外に張り出すイジェクト位置(図1の一点鎖線で表される位置)と、の間を移動可能とされる。
【0015】
尚、ローディング位置では、端板2Aがディスク挿入口1A内に納まり、筐体1内にてディスクトレイ2に載せられたディスクDの回転駆動が可能とされる一方、イジェクト位置では、ディスクDの全体が外部に現れ、これをディスクトレイ2上から取り出すことができる。
【0016】
図2はディスクトレイの平面図である。図2から明らかなように、ディスクトレイ2にはその中央部分を切り欠いた切欠孔21が形成されている。又、図2において、22はディスクトレイ2の上面に形成される凹状のディスク配置部であり、このディスク配置部22は小径凹部22Aと該小径凹部よりも一段高い大径凹部22Bとから成る。その小径凹部22Aと大径凹部22Bは同心の円形状であり、小径凹部22Aには小径(例えば直径8cm)のディスクが嵌合状態に配置可能とされ、大径凹部22Bには大径(例えば、直径12cm)のディスクが嵌合状態に配置可能とされている。そして、上記の切欠孔21はディスク配置部22の中心から大径凹部22Bの外側領域まで連続して形成され、その切欠孔21を通じてディスク配置部22に配置されたディスクを後述のターンテーブルにより支持して回転させながら、当該ディスクの盤面に後述のピックアップからレーザ光を照射させ得るようになっている。
【0017】
尚、図2において、23はディスクトレイ2の移動方向を規定するガイド軸であり、このガイド軸23はディスクトレイ2の側縁に沿ってその底面側に固設されている。又、24は端板2Aとは反対側(後部側)の端部にてディスクトレイ2の幅方向に沿って形成した長孔であり、この長孔24の位置にて後述する連接アームの一端部がディスクトレイ2に接続する構成とされている。
【0018】
図3は装置内部を示した側面概略図である。尚、図3ではディスクトレイ2が上記のローディング位置にある状態が示される。
【0019】
図3において、3は筐体1内に配置されるフレームであり、このフレーム3は筐体1に固定される合成樹脂製のローダベース4と、このローダベース4の下部に固定される金属製のメインベース5とにより構成されている。メインベース5は、開口部51を有する板状で、開口部51の縁には上方に曲げ起こした前後一対の壁部52,53が形成されている。
【0020】
又、メインベース5の開口部51の内側には、トラメカと呼ばれるドライブユニット6が上下方向に旋回移動可能にして配置されている。
【0021】
ドライブユニット6は、凹字形の断面をもつ合成樹脂製のユニットベース61内に金属製の座板62を固定し、その座板62上にピックアップ62Aやスピンドルモータ62Bを組み付けるなどして構成されるもので、スピンドルモータ62Bのロータ軸にはディスクを回転させるためのターンテーブル62Cが取り付けられている。又、ユニットベース61には、その一端部より水平方向に張り出す突片63が一体に設けられている。突片63の片面(底面)にはドライブユニット6の旋回中心となる連結部64が形成され、その逆側面(上面)には半球状の凸部65が設けられている。
【0022】
そして、係るドライブユニット6は、連結部64を中心に上下方向に旋回して、ディスクトレイ2から離間する待機位置と、ターンテーブル62Cによりディスクが支持される状態となるドライブ位置との間を移動するようになっている。
【0023】
尚、メインベース5には連結部64を嵌合支持する支持部54が形成され、ローダベース4には凸部65に弾性接触する板バネ部41が形成されている。板バネ部41は、支持部54から連結部64が外れるのを防止するほか、ドライブユニット6とフレーム3(ローダベース4及びメインベース5)との間における振動の伝搬を防止するダンパとして機能するもので、当該板バネ部41の弾力により連結部64が支持部54に向けて押圧されている。
【0024】
特に、連結部64は、図4に示すように半円柱状の突起で成る第1連結部64Aと、半球状の突起で成る第2連結部64Bとにより構成されている。又、連結部64に対応する支持部54は、図5(a)のように第1連結部64Aを嵌合支持するための半円柱状の凹面を形成する第1支持部54Aと、図5(b)のように第2連結部64Bを嵌合支持するための半球状の凹面を形成する第2支持部54Bとにより構成されている。尚、図5(b)は第2支持部54Bの中心部における断面が示される。
【0025】
第1連結部64Aと第1支持部54Aは、所定の長さを有してドライブユニット6の旋回動作が軸振れなく良好に行われるようにする役割を果たし、第2連結部64Bと第2支持部54Bは、ドライブユニット6が軸方向(第1連結部64Aの長さ方向)に移動するのを防止する役割を果たす。尚、第1連結部64Aと第2連結部64Bを凹、第1支持部54Aと第2支持部54Bを凸にそれぞれ変更しても差し支えない。
【0026】
一方、図3において、ユニットベース61には、連結部64とは反対側(前部側)となる昇降側(旋回移動側)の端面において水平方向に張り出す従節ピン66が突設されており、その従節ピン66がメインベース5の壁面部52に形成した凹字形の切欠部52Aを通じてスライドカム71に係合されている。そのスライドカム71は、ドライブユニット6を上記待機位置とドライブ位置との間で移動させるユニット移動機構を構成する板状のカム部材であり、当該スライドカムは、メインベース5の壁面部52に当接するローダベース4の垂直壁42に沿って左右方向(図3の表示面直角方向)に移動可能とされている。尚、ローダベース4の垂直壁42には、従節ピン66を通すU字形のガイド溝42Aが形成されている。
【0027】
図6はスライドカム71を正面側からみた図で、(a)は上記ドライブユニットが上限端となるドライブ位置まで移動された状態、(b)は上記ドライブユニットが下限端となる待機位置まで移動された状態が示される。
【0028】
図6から明らかなように、スライドカム71には傾斜部の上下両端に水平部を連ねた左右一対のカム溝71Aが形成されており、その両カム溝71A,71Aにドライブユニットの従節ピン66が挿入させてある。これにより、スライドカム71を図6の左右方向に移動させると、カム溝71Aに沿って従節ピン66の昇降が行われ、以って上記ドライブユニットが上下旋回して上記ドライブ位置と待機位置との間を旋回移動するようになっている。
【0029】
又、図6に示されるように、スライドカム71には捩りコイルバネ72が装着されている。捩りコイルバネ72は、コイル部72Aに連なる2つの腕部72Bを有しており、そのコイル部72Aがスライドカム71に突設した軸部71Bで支持され、両腕部72Bはスライドカム71に形成したフック71Cに係止されている。
【0030】
尚、図6において、43はローダベースに形成した固定カムであり、この固定カム43にはスライドカム71が図6の右方(ドライブユニットをドライブ位置に案内する方向)に移動することで捩りコイルバネ72の腕部72Bが乗り上げるようになっている(図6(a)参照)。
【0031】
ここで、スライドカム71は、上記固定カム43と図3に示した垂直壁42との間に挟まれて上下方向に若干の移動を許容されており、捩りコイルバネ72の腕部72Bが固定カム43に乗り上げたとき、スライドカム71が捩りコイルバネ72により支持され、そのスライドカム71を介してドライブユニットが弾性支持されるようになっている。
【0032】
以上のように、図3に示されるドライブユニット6は、スライドカム71の移動により連結部64を中心に上下方向に旋回され、図3に示されるドライブ位置と、ディスクトレイ2から離間してその移動経路から外れる待機位置との間を移動するが、上限端となるドライブ位置では図3のようにローディング位置にあるディスクトレイ2の切欠孔21を通じてターンテーブル62Cがディスクトレイ2上に突出して、当該ターンテーブル62Cによりディスク配置部22に配置されたディスクDの中心部が支持されるようになっている。
【0033】
つまり、ディスクトレイ2の上記ローディング位置とは、ディスク配置部22の中心がドライブ位置でのターンテーブル62Cと同心となる位置であり、当該ローディング位置ではターンテーブル62CによりディスクDをディスクトレイ2上に若干浮上させた状態で回転させながら、ピックアップ62Aをディスクの半径方向に移動させてディスクDの記録情報を読み出したりディスクDに情報記録を行ったりすることができる。尚、ターンテーブル62Cはスピンドルモータ62Bにより回転される円盤状の部品で、これによるディスクDの回転時にはローダベース4の上部に設けられる図示せぬクランプ盤との間でディスクDがその中心部をクランプされるようになっている。又、図3、図7に示されるように、ユニットベース61の可動端においてその上端縁に位置決めピン67が突設されると共に、メインベース5には位置決めピン67に対応する位置決め孔55が穿設されており、ドライブユニット6がドライブ位置に達したときに位置決めピン67が位置決め孔55に嵌合してドライブユニット6の位置決めが行われるようにしてある。
【0034】
ここで、ドライブユニット6は、上記のようにその旋回中心となる連結部64が板バネ部41により支持部54に常時押し付けられることに加え、ドライブ位置では従節ピン66がスライドカム71を介して捩りコイルバネ72(図6参照)にて弾性支持されるために、ターンテーブル62Cの回転駆動に伴って発生する内部振動を減衰し、ピックアップ62Aによる信号の読取エラーを防止したり、共振音の発生を抑制したりすることができる。
【0035】
次に、ディスクトレイを移動させるトレイ移動機構について説明する。図8はディスクトレイ2が筐体1内のローディング位置(図8の一点鎖線で表される位置)から筐体1外のイジェクト位置(図8の二点鎖線で表される位置)まで移動された状態を示している。
【0036】
図8において、44はローダベースに固設されている軸受であり、この軸受44によりディスクトレイ2のガイド軸23が支持されることにより、ディスクトレイ2がガイド軸23の軸方向(前後方向)に移動可能とされている。尚、ディスクトレイ2には、ガイド軸23の取付側とは反対側の端縁において、ローダベースに形成されるガイドレール45に摺接する摺動子25が固設されるが、ディスクトレイ2の支持形態は図示例に限らず、その両側縁にガイド軸23を固設したり、ガイド軸23をローダベースに固設して軸受44をディスクトレイ2に固設するようにしたりしてもよい。但し、ガイド軸23をローダベースに固設する態様にした場合、これに対応する軸受44は筐体1の奥側でディスクトレイ2に固設されることになる。
【0037】
又、図8において、トレイ移動機構8は、ディスクトレイ2と同方向(前後方向)に移動可能とされるスライド部材81のほか、このスライド部材81とディスクトレイ2とを連結する連接アーム82を具備して構成される。スライド部材81には、ドライブギア83と扇形ギア84が装着されており、スライド部材81の移動によりドライブギア83を介して扇形ギア84の回転(揺動)が行われる構成となっている。
【0038】
一方、連接アーム82は、扇形ギア84の揺動中心を成す枢軸85により一端部がスライド部材81に結合され、当該スライド部材81との結合点(枢軸85)を中心としてディスクトレイ2に平行する面内で前後方向に旋回可能とされている。つまり、スライド部材81と連接アーム82との結節点を成す枢軸85は、連接アーム82の一端部を回転自在に支持しながらスライド部材81と同方向に移動する移動支点であり、このためスライド部材81の移動時には連接アーム82の一端部がスライド部材81と同方向に往復直線運動しながら、連接アーム82の他端部が枢軸85を中心とする回転運動(旋回移動)を行う。尚、連接アーム82の他端部(旋回端)は、ディスクトレイ2の長孔24に挿入する結節ピン86にてディスクトレイ2に接続される。
【0039】
そして、スライド部材81が図8の実線で示される位置から二点鎖線で示される位置まで移動するとき、枢軸85が同方向(前方)に同じ距離だけ移動し、その枢軸85を中心にして、連接アーム82が図8の一点鎖線で示される位置から二点鎖線で示される位置まで前方旋回しながら、ディスクトレイ2をローディング位置からイジェクト位置まで移動させるようになっている。
【0040】
このように、係るトレイ移動機構8によれば、連接アーム82がスライド部材81と同方向に移動しながら、当該スライド部材81との結節点である枢軸85(移動支点)を中心に旋回してディスクトレイ2をスライド部材81と同方向に移動させることから、連接アーム82の全長を短くしながらディスクトレイ2の移動ストロークを大きくすることができる。
【0041】
図9はトレイ移動機構の全体を示した平面図であり、図10には同機構の要部を拡大して示す。図9において、9はスライド部材81を移動させるための伝動部であり、この伝動部9は駆動源を成すローディングモータ91と減速歯車列92から構成される。ローディングモータ91と減速歯車列92は上記ローダベースに装置されており、ローディングモータ91のロータ軸には原動プーリ93が固着されている。一方、減速歯車列92は、原動プーリ92との間に伝動ベルト94が巻き掛けられるプーリギア95、該プーリギア95の中心部に形成されるギア部95Aと噛合う大径ギア部96Aをもつ第1ギア96、該第1ギア96の小径ギア部96Bと噛合う第2ギア97、該第2ギア97と噛合う大径ギア部98Aをもつ第3ギア98、及び該第3ギア98の小径ギア部98Bと噛合う大径ギア部99Aをもつメインギア99から構成される。尚、原動プーリ93から第3ギア98までを省略し、ローディングモータ91によりメインギア99を直接駆動するようにしてもよい。
【0042】
図10から明らかなように、メインギア99は小径ギア部99Bを有しており、スライド部材81にはその長さ方向に沿ってメインギア99の小径ギア部99Bと噛み合うラック部81Aが形成されるほか、そのラック部81Aに平行してスライド軸81Bが取り付けられ、そのスライド軸81Bがローダベースに固定される図示せぬ軸受により摺動自在に支持されている。
【0043】
又、ローダベースには、スライド部材81のラック部81Aに平行してラックギア46が形成され、そのラックギア46に上記ドライブギア83が噛み合う構成とされている。尚、ドライブギア83は、ラックギア46に噛合う大径ギア部83Aと上記扇形ギア84に噛合う小径ギア部83Bとを有する二段構造とされている。
【0044】
従って、メインギア99を正逆に回転させると、スライド部材81がスライド軸81Bの軸方向に移動するほか、そのスライド部材81に設けられたドライブギア83がラックギア46に噛み合ったまま回転して、扇形ギア84を回転(揺動)させることになる。特に、連接アーム82は、扇形ギア84の揺動中心となる枢軸85によりスライド部材81に結合されるほか、扇形ギア84に対しては連結ピン87にて回転不能に結合されるので、扇形ギア84が枢軸85を中心に揺動するとき、連接アーム82も枢軸85を中心に扇形ギア84に同調して同方向に旋回する。尚、本例において、連接アーム82と扇形ギア84は別体として形成されるが、それらを一体構造としてもよい。
【0045】
ここで、連接アーム82は上記ディスクトレイとドライユニットとの間にあって、上記のようにスライド部材81と同方向に移動しながら当該スライド部材81との結合点(枢軸85)を中心に旋回するが、その旋回時にはドライブユニットが上記待機位置にあって連接アーム82に干渉しないようになっている。
【0046】
特に、図11及び図12のように、スライドカム71とスライド部材81との間には、メインギア99の動力をスライドカム71に伝達する切換レバー73が設けられる。この切換レバー73は、支点軸73Aによりローダベースに揺動自在に取り付けられ、スライドカム71と共に上記のユニット移動機構7を構成するものであり、その一端部にはメインギアの小径ギア部99Bに噛合う円弧状の歯部73Bが形成されると共に、当該切換レバー73の他端部はスライドカム71の腕部71Dに突設したピン71Eを挿入すべき長孔73Cを有してスライドカム71に接続されている。そして、この切換レバー73によれば、その歯部73Bがメインギアの小径ギア部99Bと噛合うことにより、支点軸73Aを中心に揺動して、スライドカム71をその長さ方向(図11及び図12の左右方向)に移動させるのであり、これにより上記ドライブユニットが上記待機位置とドライブ位置との間で移動するようになっている。
【0047】
又、切換レバー73の一端部には歯部73Bに近接してスライド部材81と係合する作動ピン73Dが突設され、スライド部材81の一端部には作動ピン73Dと係合する係合溝81Cが形成されている。そして、その作動ピン73Dと係合溝81Cにより、メインギア99の動力伝達がスライド部材81とスライドカム71との間で切り換えられるようになっている。
【0048】
尚、図11は、切換レバー73の作動ピン73Dが係合溝81Cの最深部にある状態を示しているが、このときメインギア99(小径ギア部99B)には切換レバー73の歯部73Bが噛み合って、上記ドライブユニットが切換レバー73及びスライドカム71を介して上記ドライブ位置に保持される一方、上記ディスクトレイは筐体内のローディング位置にあり、スライド部材81のラック部81Aはメインギア99から離間している。
【0049】
ここに、上記ディスクトレイをローディング位置からイジェクト位置に移動させるべくメインギア99を図11の反時計回りに回転させると、切換レバー73が支点軸73Aを中心に同図の時計回りに揺動しながら、スライドカム71を同図の左方に移動させるために、そのスライドカム71を介し上記ドライブユニットがディスクトレイの移動に先行して上記ドライブ位置から待機位置に向けて下方移動される。
【0050】
そして、ドライブユニットが待機位置に到達する段階になると、切換レバー73の作動ピン73Dが係合溝81Cの開放端部81Cに達して当該部分をディスク挿入口側(図11の下側)に押圧することにより、スライド部材81のラック部81Aがメインギア99(小径ギア部99B)に噛み合わされ、当該メインギア99によりスライド部材81の移動が開始され、以って上記ディスクトレイがローディング位置からイジェクト位置に向かってスライド部材81と同方向に移動するようになる。
【0051】
特に、図12から明らかなように、スライド部材81のラック部81Aがメインギ99アに噛み合った時点で切換レバー73の歯部73Bはメインギア99から離間し、メインギア99からスライドカム71への動力伝達が遮断される。又、ディスクトレイがイジェクト位置に向かって移動しているとき、作動ピン73Dがスライド部材81の側面に当接することにより、切換レバー73が図12の反時計回りに揺動することを抑制されるために、歯部73Bがメインギア99から離間された状態に保たれ、ドライブユニットが待機位置に維持されることになる。尚、このような状態はディスクトレイがイジェクト位置に達したときも維持される。
【0052】
一方、ディスクトレイをイジェクト位置からローディング位置に移動させるべく、メインギア99を逆転(図12の時計回り)に回転させると、切換レバー73の歯部73Bがメインギア99から離間された状態のまま、先ずメインギア99に対しラック部81Aが噛み合っているスライド部材81の移動が開始される。しかして、スライド部材81がディスク挿入口から離間する筐体の奥側(図3の上側)に移動することにより、ディスクトレイがイジェクト位置からローディング位置に向かってスライド部材81と同方向に移動するようになる。
【0053】
又、スライド部材81の移動により係合溝の開放端部81Cが作動ピン73Dの位置に差し掛かると、当該作動ピン73Dが係合溝の開放端部81Cによりメインギア99側に押し込まれるために、歯部73Bがメインギア99に噛み合わされ、切換レバー73が図12の反時計回りに揺動される。これにより、スライドカム81が図12の右方に移動されつつドライブユニットが待機位置からドライブ位置に移動するようになる。尚、切換レバー73の揺動により、その作動ピン73Dが係合溝81Cの最深部に達する段階になると、当該作動ピン73Dによりスライド部材81が押圧されることにより、メインギア99に切換レバー73の歯部73Bが噛み合ったまま、当該メインギア99からスライド部材81のラック部81Aが離間される。
【0054】
このように、係るユニット移動機構7は、トレイ移動機構8を構成するメインギア99の動力を用いてドライブユニットの移動を行う構成とされることから、ディスクトレイとドライブユニットの移動タイミングを確実に合わせることができ、装置の信頼性を向上できるという利点がある。
【0055】
以上、本発明に係るディスク駆動装置の構成例を図面に基づき説明したが、ドライブユニットはその一端側を支点にしてドライブ位置と待機位置との間を旋回移動することに限らず、その全体がドライブ位置と待機位置と間で平行移動するようにしてもよい。
【0056】
又、上記例では、ディスクトレイが水平状を成すように配置される横型を例に説明したが、係るディスク駆動装置はディスクトレイが垂直状を成すように配置される縦型にも適用することができる。
【0057】
更に、上記例では、連接アームがディスクトレイと平行する面内で旋回移動するようにしたが、当該連接アームがディスクトレイに直交する面内で旋回移動するような構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るディスク駆動装置を示す斜視概略図
【図2】ディスクトレイの平面図
【図3】装置の内部構造を示す側面概略図
【図4】ドライブユニットの一部を示す斜視図
【図5】ドライブユニットの支持構造を示す説明図
【図6】スライドカムの動作態様を示す説明図
【図7】ドライブユニットの平面概略図
【図8】ディスクトレイがローディング位置とイジェクト位置にある状態を示す平面図
【図9】トレイ移動機構の構成図
【図10】トレイ移動機構の要部拡大図
【図11】ユニット移動機構の構成図(ドライブユニットがドライブ位置にある状態)
【図12】ユニット移動機構の構成図(ドライブユニットが待機位置にある状態)
【符号の説明】
【0059】
1 筐体
2 ディスクトレイ
6 ドライブユニット
62C ターンテーブル
7 ユニット移動機構
71 スライドカム
73 切換レバー
73B 歯部
8 トレイ移動機構
81 スライド部材
82 連接アーム
85 枢軸(スライド部材と連接アームの結合点)
99 メインギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内外に出入り可能とされるディスクトレイと、前記ディスクトレイを前記筐体内のローディング位置と前記筐体外のイジェクト位置との間の出入り方向に往復移動させるトレイ移動機構と、を有するディスク駆動装置において、
前記トレイ移動機構は、
前記出入り方向に往復移動するスライド部材と、
このスライド部材と前記ディスクトレイとを連結して、前記スライド部材の移動により当該スライド部材との結合点を中心に旋回しながら、前記ディスクトレイを前記スライド部材の移動方向に移動させる連接アームと、
を有して成ることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
筐体の内外に出入り可能とされるディスクトレイと、前記ディスクトレイを前記筐体内のローディング位置と前記筐体外のイジェクト位置との間の出入り方向に往復移動させるトレイ移動機構と、前記ディスクトレイにより筐体内に搬入されたディスクを回転させるためのターンテーブルを備えるドライブユニットと、このドライブユニットを前記ディスクトレイから離間する待機位置と前記ターンテーブルによりディスクが支持される状態となるドライブ位置との間で移動させるユニット移動機構と、を有するディスク駆動装置において、
前記トレイ移動機構は、
前記出入り方向に往復移動するスライド部材と、
このスライド部材と前記ディスクトレイとを連結して、前記スライド部材の移動により当該スライド部材との結合点を中心に旋回しながら、前記ディスクトレイを前記スライド部材の移動方向に移動させる連接アームと、を有する一方、
前記ユニット移動機構は、前記ドライブユニットを前記待機位置と前記ドライブ位置とに移動案内するスライドカムを有し、
そのスライドカムと前記スライド部材との間には、前記スライド部材を移動させるためのメインギアに噛み合う歯部を有して前記メインギアの動力を前記スライドカムに伝達する切換レバーが介在され、
前記ディスクトレイを前記ローディング位置から前記イジェクト位置に移動させるとき、前記メインギアと前記切換レバーの歯部との噛合いにより前記メインギアの動力が前記スライドカムに伝達されて、前記ドライブユニットが前記ディスクトレイの移動に先行して前記ドライブ位置から待機位置への移動を開始し、
前記ディスクトレイがイジェクト位置にあるときには、前記切換レバーの歯部が前記メインギアから離間して該メインギアから前記スライドカムへの動力伝達が遮断され、
前記ディスクトレイを前記イジェクト位置から前記ローディング位置に移動させることにより、前記メインギアに前記切換レバーの歯部が噛み合わされて前記ドライブユニットが前記待機位置からドライブ位置に移動することを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−59395(P2009−59395A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223623(P2007−223623)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】