説明

ディスコチックおよびカラミチック基を含むメソゲン化合物

【課題】ディスコチックおよびカラミチック基を含むメソゲン化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、負の光学的分散の複屈折フィルムにおける使用に特に適する新規なカラミチックメソゲン化合物と、新規な液晶(LC:liquid crystal)配合物およびそれらを含む液晶フィルムと、光学的、電気光学的、電子的、半導体または発光部品または装置における該化合物、配合物およびフィルムの使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負の光学的分散の複屈折フィルムにおける使用に特に適しており、ディスコチックおよびカラミチック基を含む新規なメソゲン化合物と、新規な液晶(LC:liquid crystal)配合物およびそれらを含む液晶フィルムと、光学的、電気光学的、電子的、半導体または発光部品または装置における該化合物、配合物およびフィルムの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
負の光学的リターデーション分散を示す異方性光学的フィルムに対する要求がある。例えば、負の分散の複屈折材料で作製された1/4波長フィルムは大部分が色消しとなる。そのような1/4波長フィルムを利用する反射型LCDなどの装置は、着色されていない暗状態を有することとなる。現在のところ、この効果を達成するために、そのような装置は2枚の位相差フィルムを使用しなければならない。
【0003】
そのような負の分散の複屈折フィルムの分散能は多くの方法で決定できるが、しかしながら、1つの一般的な方法は、450nmで光学的リターデーションを測定し、これを550nmで測定した光学的リターデーションによって割る(R450/R550)ことである。負のリターデーション分散フィルムの軸上リターデーションが550nmにおいて137.5nmであり、R450/R550の値が0.82の場合、可視光の全ての波長に対して、そのようなフィルムは大部分が1/4波長となり、このフィルムを例えば円偏光子として使用する液晶ディスプレイ装置(LCD:liquid crystal display)は、実質的に黒色の外観を有することとなる。一方、軸上が137.5nmで作製されたフィルムが通常の正の分散(典型的には、R450/R550=1.13)を有すると、1つの波長(550nm)に対してのみ1/4波長となり、このフィルムを例えば円偏光子として使用するLCD装置は、紫色の外観を有することとなる。この情報を表すもう一つの方法は、複屈折における変化を波長の関数としてプロットすることである。図1に、商業的に入手可能な反応性メソゲンRM257(メルク社、ダルムスタット市、ドイツ国)より作製され重合されたフィルムについて、波長に対する典型的な複屈折のプロットを示す。この化合物についてR450/R550は、ほぼ1.115である。
【0004】
棒形状で光学的に異方性の分子より形成された異方性の光学的フィルムにおいて、リターデーション分散の原因は、異方性分子の2つの屈折率n、n(ただし、nは長分子軸に平行な方向における「異常屈折率」であり、nは長分子軸に垂直な方向における「通常屈折率」である)が波長により異なる割合で変化し、可視波長スペクトルの青色端に向かってnがnよりも急速に変化するという事実による。低いかまたは負のリターデーション分散の材料を調製する1つの方法は、n分散が増加されn分散が減少された分子を設計することである。これを図2に概略的に示す。そのような取り組みは、負の複屈折および正の分散を有するLCならびに正の複屈折および負の分散を有する化合物を与えることによって先行技術において示されてきた。
【0005】
化合物が重合性であるか、または、例えば、重合性メソゲン化合物(「反応性メソゲン(reactive mesogen)」または「RM」としても既知)を含む重合性ホスト材料と混合されている場合、負の分散の異方性光学的ポリマーフィルムを調製することが可能である。これは、それの中間相において重合性材料を均一に配向させ、例えば、熱またはUV照射に曝露することで、その場で重合し、それによって、巨視的に均一な配向を恒久的に固定することにより容易に行うことができる。適切な重合方法は当業者に既知であり、文献に記載されている。
【0006】
負または反転リターデーション分散の特性を示す異方性フィルムに形成することのできる分子が、先行技術において開示されてきた。例えば、特開2005−208416号公報(特許文献1)および国際特許出願公開第2006/052001号パンフレット(特許文献2)には、「カルド」核基を有する化合物を主として基礎とする重合性材料が開示されている。
【0007】
負の複屈折を示すとして特許請求されている別のクラスの化合物が米国特許第6,139,771号明細書(特許文献3)に記載されている。これらの化合物は、一般的に、アセチレンまたはビス−アセチレン架橋基により接続された2つの棒形状メソゲン基から成る。架橋基は分子の棒形状部分上のベンゼン環を使用して2つの棒形状基に接続されており、結果として、架橋はロッドに対して、ほぼ60°の角度を有する。
【0008】
米国特許第6,203,724号明細書(特許文献4)には、一般に、高度に分散性の架橋基により接続された2つの棒形状メソゲン基から成る分子が開示されている。架橋は、シクロヘキサン環の軸方向の位置を介して棒形状基に接続されている。
【0009】
国際特許出願公開第2005/085222号パンフレット(特許文献5)および国際特許出願公開第2006/137599号パンフレット(特許文献6)には、より高い屈折率の架橋部分によって接続された2つのより低い屈折率の部分を有する分子が開示されている。架橋は、縮合5員ヘテロ環式環を介して、大部分がロッドに接続されている。
【0010】
高度に分極可能な架橋にロッドが接続されている上述の文献に記載の化合物においては、最大で2つのロッドのみが重合性架橋基に接続されている。
【0011】
しかしながら、文献において開示される材料の多くは、例えば、標準的な工業的プロセスにおける加工には適していない熱的特性、標準的な工業的プロセスにおいて一般に使用される溶媒中での限定的な溶解性などの欠点を有するか、または、標準的な工業的プロセスにおいて一般に使用されるホストRM材料と適合しないか、または製造には高価過ぎる。
【0012】
特開2005−208414号公報(特許文献7)には、中央のディスコチック基に共有結合されている棒形状基を含む分子が開示されている。しかしながら、該文献で具体的に開示される化合物においては、棒形状分子はエステル基を介してディスコチック環に接続されている。そのようなエステル基が存在することにより、該環に対して少なくとも2つの方向に回転する自由度がロッドに与えられる。このため、平均してロッドおよびディスクが互いに正しい方向を維持する可能性が低下し、よって、所望の光学的効果を最大とできることが妨げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−208416号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第2006/052001号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,139,771号明細書
【特許文献4】米国特許第6,203,724号明細書
【特許文献5】国際特許出願公開第2005/085222号パンフレット
【特許文献6】国際特許出願公開第2006/137599号パンフレット
【特許文献7】特開2005−208414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、先行技術の材料の欠点を有しておらず、LC配合物において使用するために改良された化合物と、負の分散を有するポリマーフィルムとを提供する目的を有する。
【0015】
特に、低いかまたは負の分散を示し、また、低減されたコストで入手でき溶解性および熱的特性などの特性も改良された化合物に対する要求がある。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、専門家が入手可能で負の分散を有する材料およびポリマーフィルムの蓄積を広げることである。他の目的は、以下の記載より専門家には直ちに明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、本発明において特許請求される通りの化合物、材料およびフィルムを提供することにより達成できることが見出された。
【0018】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0019】
【化1】

式中、
Dはディスコチック基であるか、または、(B)と共にディスコチック基を形成しており、
zは3〜10の整数、非常に好ましくは、3、4、5または6であり、
Bは、それぞれの出現において互いに独立に、高い分極率を有する2価の基であり、好ましくは、−C≡C−、−CY=CY−および置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族基から成る群より選択され、
1、2は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、CNまたはRであり、
qは、それぞれの出現において互いに独立に、0または1〜10の整数、好ましくは、0、1、2、3、4、5または6であり、
Mは、式IIの基であり、
【0020】
【化2】

式中、個々の基は、複数出現する場合は互いに独立に、以下の意味を有し、
は、以下の環から成る群より選択され、
【0021】
【化3】

それらの鏡像を含み、ただし、環Uは軸方向の結合を介して基−(B)−に結合されており、これらの環における1個または2個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよく、環Uは置換されていてもよく、
1、2は、それぞれ互いに独立に、CHまたはSiHであり、
は、CまたはSiであり、
1、2は、それぞれ互いに独立に、非芳香族、芳香族またはヘテロ芳香族炭素環式またはヘテロ環式基より選択され、該基は置換されていてもよく、ただし、−(A−Z−U−(Z−A−は非芳香族基よりも多数の芳香族基を含有せず、好ましくは、1個より多い芳香族基を含有せず、
1、2は、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CH−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CY=CY−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合であり、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子のアルキルであり、
mおよびnは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3または4であり、ただし、m+nは0より大きく、
1〜3は、それぞれ互いに独立に、H、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、P−Sp−、置換されていてもよいシリル、1〜40個のC原子のカルビルまたはヒドロカルビル(該基は置換されていてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい)より選択される同一または異なる基であるか、または、PまたはP−Sp−を表すか、または、PまたはP−Sp−で置換されており、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。
【0022】
これらの化合物は液晶材料において負の光学的分散を誘発または増進する能力を有し、負の分散を示すポリマーフィルムの製造のために使用できる。
【0023】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの1種類以上の化合物を含むLC配合物に関する。
【0024】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの1種類以上の化合物、および1種類以上の更なる化合物を含み、ただし、該化合物の少なくとも1種類は重合性である重合性LC配合物に関する。
【0025】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの化合物またはLC配合物を、好ましくは、それのLC相において配向された状態で薄膜の形態で重合して得ることができる複屈折ポリマーに関する。
【0026】
本発明は、更に、R450/R550が1未満の複屈折ポリマーフィルムに関し、ただし、R450は450nmの波長における光学的軸上リターデーションであり、R550は550nmの波長における光学的軸上リターデーションであり、前記フィルムは上および下で記載される通りの1種類以上の化合物またはLC配合物を重合して得ることができる。
【0027】
本発明は、更に、光学的、電子的および電気光学的部品および装置において、好ましくは、負の光学的分散を有する光学的フィルム、リターダーまたはコンペンセータにおける上および下で記載される通りの化合物、LC配合物およびポリマーの使用に関する。
【0028】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの化合物、LC配合物またはポリマーを含む光学的、電子的または電気光学的部品または装置に関する。
【0029】
前記装置および部品としては、限定することなく、電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、非線形光学(NLO:non−linear optic)装置、光学情報記憶装置、電子装置、有機半導体、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)装置、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、有機レーザーダイオード(O−レーザー:organic laser diode)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサー装置、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基材、導電性パターン、光導電体、電子写真用途、電子写真記録、有機記憶装置、バイオセンサー、バイオチップ、複数の波長において同様の位相シフトを必要とする光電子装置、複合CD/DVD/HD−DVD/ブルーレイ、読み出し、書き込み、再書き込みデータ記憶システム、またはカメラが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】先行技術の反応性メソゲンより作製され重合されたフィルムについて、波長に対する複屈折のプロットを示す。
【図2】n分散が増加されn分散が減少されたことを示す、低いかまたは負のリターデーション分散のモデル分子の波長に対する屈折率のプロットを示す。
【図3a】負の光学的分散の化合物について、波長に対する複屈折のプロットを示す。
【図3b】正の光学的分散の化合物について、波長に対する複屈折のプロットを示す。
【図4】本発明による化合物の構造を例示的および概略的に図解する。
【図5】先行技術による化合物の構造を例示的および概略的に図解する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<用語の定義>
用語「液晶」、「メソモルフィック化合物」または「メソゲニック化合物」(略して「メソゲン」とも言う)は、温度、圧力および濃度の適切な条件下において、中間相として、または、特にLC相として存在できる化合物を意味する。非両親媒性メソゲン化合物は、例えば、1個以上のカラミチック、バナナ形状またはディスコチックのメソゲン基を含む。
【0032】
用語「カラミチック」は、棒または板/ラス形状の化合物または基を意味する。用語「バナナ形状」は、共線的ではない態様により半剛直性の基を介して2個の、通常はカラミチックのメソゲン基が連結されている曲がった基を意味する。
【0033】
用語「ディスコチック」は、円板またはシート形状の化合物または基を意味する。
【0034】
用語「メソゲン基」は液晶(LC:liquid crystal)相挙動を誘発する能力を有する基を意味する。メソゲン基、特に、非両親媒性タイプのものは、通常、カラミチックまたはディスコチックの何れか一方である。メソゲン基を含む化合物は、必ずしもそれ自体がLC相を示す必要はない。それらが他の化合物との混合物中においてのみ、またはメソゲン化合物またはそれらの混合物が重合された場合にLC相挙動を示すことも可能である。簡潔のため、以下において用語「液晶」を、メソゲンおよびLC材料の両方に用いる。
【0035】
カラミチックメソゲン化合物は、通常、カラミチック、即ち、それぞれ互いに直接または架橋基を介して接続されている1個以上の芳香族または脂環式基から成る棒またはラス形状のメソゲン基を含み、ロッドの短い端末につながっている末端基を含んでいてもよく、ロッドの長い側につながっている1個以上のラテラル(横方向)基を含んでいてもよく、ただし、これらの末端およびラテラル(横方向)基は、通常、例えば、カルビルまたはヒドロカルビル基、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシなどの極性基、または重合性基より選択される。
【0036】
ディスコチックメソゲン化合物は、通常、ディスコチック、即ち、例えば、トリフェニレンなどの、例えば、1個以上の縮合芳香族または脂環式基から成る比較的平らな円板またはシート形状のメソゲン基を含み、メソゲン基につながっており、上述の末端およびラテラル(横方向)基より選択される1個以上の末端基を含んでいてもよい。
【0037】
液晶およびメソゲンに関連する用語および定義の概要につては、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.PelzlおよびS.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。
【0038】
用語「反応性メソゲン」(RM:reactive mesogenn)は、重合性メソゲンまたは液晶化合物を意味する。
【0039】
1個の重合性基を有する重合性化合物は「一反応性」化合物とも呼ばれ、2個の重合性基を有する化合物は「二反応性」化合物とも呼ばれ、2個より多い重合性基を有する化合物は「多反応性」化合物とも呼ばれる。重合性基を持たない化合物は、「非反応性」化合物とも呼ばれる。
【0040】
用語「スペーサー」または「スペーサー基」は下で「Sp」とも呼ばれ、当業者に既知であり、文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。他に明言しない限り、用語「スペーサー」または「スペーサー基」は、上および下で、重合性メソゲン化合物(「RM」)においてメソゲン基および重合性基(1つまたは多数)を接続している屈曲性の有機基を表す。
【0041】
用語「フィルム」としては、機械的に安定な、剛直または柔軟な、自己支持性または自立性フィルム、ならびに支持基板上または2つの基板間の被膜または層が挙げられる。
【0042】
用語「パイ共役」は、sp混成のC原子を主に含有し、またはsp混成でもよく、ヘテロ原子で置き換えられていてもよい基を意味する。最も単純な場合で、これは、例えば、C−C一重結合と二重結合、または三重結合を交互に有する基であるが、1,3−または1,4−フェニレンなどの基も挙げられる。また、この意味において、例えば、アリールアミン、アリールホスフィンおよび特定のヘテロ環(即ち、N、O、PまたはS原子を介する共役)などの基も挙げられる。
【0043】
用語「カルビル基」は、非炭素原子を一切伴わない(例えば、−C≡C−など)か、またはN、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの少なくとも1個の非炭素原子が混在(例えば、カルボニルなど)してもよいかのいずれかで、少なくとも1個の炭素原子を含む任意の一価または多価有機基部分構造を意味する。用語「ヒドロカルビル基」は、1個以上のH原子を追加的に含有し、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどのヘテロ原子を1個以上含有してもよいカルビル基を表す。また、3個以上のC原子鎖を含むカルビルまたはヒドロカルビル基は、直線状、分岐状および/または環状(スピロおよび/または縮合環を含む。)でもよい。
【0044】
分子レベルにおいて、液晶の複屈折は分極率の異方性(Δα=α−α)に依存する。「分極率」は、原子または分子中の電子分布を歪めることができる容易さを意味する。電子の数がより多く、電子雲がより拡散するほど分極率は増加する。分極率は、例えば、Jpn.J.Appl.Phys.42巻、(2003年)3463頁に記載される方法を使用して計算できる。
【0045】
液晶または複屈折材料の層の、ある波長における「光学的リターデーション」R(λ)(nmにおいて)は、その波長における複屈折率Δn(λ)および層厚みd(nmにおいて)の積として、式
R(λ)=Δn(λ)・d
に従い定義される。
【0046】
光学的リターデーションRは、複屈折材料を通過する際にS偏光およびP偏光が進む光路長の違いをナノメータで表す。「軸上」リターデーションとは、サンプル表面に対して垂直入射におけるリターデーションを意味する。
【0047】
用語「負の(光学的)分散」は、波長(λ)の増加に伴い複屈折率(Δn)の大きさも増加する反転複屈折分散を示す複屈折または液晶材料または層を言う。即ち、|Δn(450)|<|Δn(550)|またはΔn(450)/Δn(550)<1であり、ただし、Δn(450)およびΔn(550)は、それぞれ450nmおよび550nmの波長で測定された材料の複屈折率である。対照的に、「正の(光学的)分散」は、|Δn(450)|>|Δn(550)|またはΔn(450)/Δn(550)>1を有する材料または層を意味する。また、例えば、A.Uchiyama、T.Yatabe「Control of Wavelength Dispersion of Birefringence for Oriented Copolycarbonate Films Containing Positive and Negative Birefringent Units」J.Appl.Phys.42巻、6941〜6945頁(2003年)も参照。
【0048】
これを図3aに概略的に示す。
【0049】
ある波長における光学的リターデーションは、上記[R(λ)=Δn(λ)・d]の通り、複屈折率および層厚みの積として定義されるため、光学的分散は、比Δn(450)/Δn(550)により「複屈折分散」として、または、比R(450)/R(550)により「リターデーション分散」のいずれかとして表現でき、ただし、R(450)およびR(550)は、それぞれ450nmおよび550nmの波長で測定された材料のリターデーションである。波長によって層厚みdは変化しないため、R(450)/R(550)はΔn(450)/Δn(550)に等しい。よって、負または反転分散の材料または層はR(450)/R(550)<1または|R(450)|<|R(550)|を有し、正または正常分散の材料または層はR(450)/R(550)>1または|R(450)|>|R(550)|を有する。
【0050】
本発明において、他に明言しない限り、「光学的分散」はリターデーション分散、即ち、比(R(450)/R(550)を意味する。
【0051】
材料のリターデーション(R(λ))は分光エリプソメータ、例えば、J.A.Woollam社製M2000分光エリプソメータを使用して測定できる。この装置は、典型的には、370nm〜2000nmの波長範囲にわたって、複屈折サンプル、例えば、石英の光学的位相差をナノメータで測定できる。このデータより、材料の分散(R(450)/R(550)またはΔn(450)/Δn(550))を計算することが可能である。
【0052】
これらの測定を行うための方法は、2006年10月、N.SinghによるNational Physics Laboratory(ロンドン、英国)、表題「Spectroscopic Ellipsometry、Part1−Theory and Fundamentals、Part 2−Practical Examples and Part 3−measurements」で提示された。J.A.Woollam社(リンカーン市、ネブラスカ州、アメリカ合衆国)によって出版されたRetardation Measurement(RetMeas)Manual(2002年)and Guide to WVASE(2002年)(Woollam Variable Angle Spectroscopic Ellipsometer)に記載される測定手順に従う。他に明言しない限り、この方法を、本発明で記載される材料、フィルムおよび装置のリターデーションを決定するために使用する。
【0053】
<本発明の詳細な記載>
上で引用した先行技術文献は、重合性LCを使用する負の分散のフィルムを作製する一般的な実現可能性を示している。しかしながら、負の分散の添加剤が良好な溶解性および熱的特性を示すことに対する要求に加え、また、これらの添加剤が最終的なLC混合物において最小の濃度で所望の光学的効果を示すことも望まれる。従って、LCホスト混合物に増加された負の分散を与える入手可能な化合物を有することが望まれる。
【0054】
ここで、本発明の発明者らは、負の分散の化合物の分子構造を改変することで、このことを達成できることを見出した。例えば、米国特許第6,203,724号明細書で開示される通りの先行技術に典型的で、低い分極性の2個の棒形状基(該基はシクロヘキサン環から本質的に成る。)の間で、典型的には1個の芳香族環および2個のアルキニル基と共に高い分極性の架橋を含む化合物を、図4に示す。高い分極性の架橋は、該分子から形成されるフィルムが負の複屈折分散を示すことを可能にさせる重要な構成要素であることが見出された。ロッドに対する架橋の運動の自由度を制限することで、負の分散の添加剤の効果が増大されるはずである。更に、図4における矢印によって概略的に図解される通り、架橋内の芳香族環が面内および面外に回転する自由度を有する場合、架橋のこの部分がnおよびnの両者に寄与し得る。よって、架橋のnに対する寄与を限定することで、負の分散の添加剤の効果が増大されるはずである。分子の中央の高い分極性の部分のそれぞれの周りの3個以上のロッドと共に、任意の芳香族環の大部分は、nに対する分子の寄与が最大となるように配向することとなる。加えて、中央の芳香族環につながるロッドの数を増やすことにより、また、分子のLC特性の増加も助けられるはずである。
【0055】
まとめると、先行技術の化合物よりも改良された性能を本発明による構造的に改変された化合物が示すであろうと期待するには、以下の理由がある。
【0056】
1.ロッドに対する架橋の運動の自由度を制限することで、負の分散の添加剤の効果が増大することとなる。従って、適切に置換された軸方向のシクロヘキサン連結基を介して、2個の構造部分を連結することにより、エステル基を介して構造部分を連結するよりも良好にこの効果が達成されるはずである。
【0057】
2.架橋が及ぼすnに対する寄与を限定することで、負の分散のドーパントの効果が増大することとなる。更に、2個よりも3個のロッドで配向の大部分を固定することにより、任意の芳香族環が面外に回転する自由度を制限することによって、nに対する配向の寄与を最小とする一方で、nに対する配向の寄与が最大となるはずである。
【0058】
3.中央の環につながるロッドの数を増やすことにより、分子の液晶特性の増加が助けられるはずである。
【0059】
上の改変は、本発明による式Iの化合物を提供することによって実現された。これらの化合物は、一般に、図5において例示的および概略的に示される通り、2つの区別される分子の部分:中央のディスコチック核(1)、例えば、環構造または2個以上の環を含む基と、それを囲む3個以上の棒形状基(2)とから成る。該システムの分子配置によって、棒形状の分子部分の長軸に対して垂直に環の面が主に維持される確率が増加する。棒形状基(2)は、好ましくは、シクロヘキサン環などの低い分極性の基から大部分がなる。ロッドの末端に、重合性基(3)がつながっていてもよい。重合性基の分布はランダムで、また、それらは、全て、分子の同じ側でもよい。重合性基の数は、1個まで減らしてもよい。分子の中央部分(1)は、例えば、芳香族環などの高い分極性の基から大部分が成る。ロッド(2)は、ラテラル(横方向)基を介して核(1)に接続されている。ロッド(2)を核(1)に接続しているラテラル(横方向)基は、核に対してロッドが旋回する自由度をラテラル(横方向)基が制限するように選択される。全体として、分子は、分子の長軸において低い複屈折と、分子のラテラル(横方向)部分(即ち、ディスコチック核)において高い複屈折とを有することとなる。
【0060】
式Iの化合物において、ディスコチック基Dは、好ましくは、ベンゼン(該基は、好ましくは、3価、4価または6価である。)またはトリフェニレン(該基は、好ましくは、6価である。)を表す。非常に好ましくは、ディスコチック基Dは、以下の式から成る群より選択される。
【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
【化6】

高い分極率を有する基(B)は、1個以上のサブ基B(該基は、パイ共役直線状基、芳香族およびヘテロ芳香族基より選択される。)から、好ましくは主に、非常に好ましくは排他的に成る。
【0064】
好ましくは、基(B)は、1個以上のサブ基B(120°以上の結合角、好ましくは180°の角度を有する基より選択される。)から、非常に好ましくは排他的に成る。適切で好ましいサブ基Bとしては、限定することなく、−C≡C−基などのsp−混成C原子を含む基、または、例えば、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,6−ジイルまたはチエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイルなどの、それと隣接する基にパラ位で接続されている二価の芳香族基が挙げられる。
【0065】
また、基(B)において、qは0でもよく、その場合は(B)は単結合であり、対応する基Mがディスコチック基に直接つながる。
【0066】
しかしながら、好ましくは、式Iの化合物は、少なくとも1個、より好ましくは、少なくとも2個の基(B)(ただし、qは0と異なる。)を含む。それぞれのqが0と異なる式Iの化合物が更に好ましい。
【0067】
基(B)は、好ましくは、ほぼ180°の結合角を有するサブ基Bから成る直線状の基であり、sp−混成C原子を介して(即ち、ほぼ109°の結合角で)カラミチック化合物に連結されている。それにより、主としてカラミチックメソゲン基Mの長軸がディスコチック基Dの環面に対して垂直な構造を達成することが可能となる。
【0068】
パイ共役を有するサブ基Bから本質的に成る基(B)は、高い誘電率および高い屈折率を有する。メソゲン基Mを低い誘電率および低い屈折率を有するように選択すると、結果として、化合物は、それらの正確な構造に依存して、図3aで概略的に示される通り正の複屈折および負の分散、または、図3bで概略的に示される通り正の分散を伴って負の複屈折を示すかのいずれかとなる。
【0069】
参考として、通常のカラミチック材料は正の複屈折および正の分散を有する。波長が短くなるほどΔnの大きさが減少する材料を入手することが望ましく、正の分散および負の複屈折の両者を有する化合物をホスト材料と混合することができ、(ドーパントおよびホストの濃度に依存して)正の分散を伴う正の複屈折から負の分散を伴う正の複屈折まで変化する分散の範囲を有する混合物を与える。
【0070】
サブ基Bは、好ましくは、120°以上の結合角、好ましくは180°の角度を有する基より選択される。−C≡C−基、または、例えば、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,6−ジイルまたはチエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイルなどの、それと隣接する基にパラ位で接続されている二価の芳香族基が非常に好ましい。
【0071】
更に可能なサブ基Bとしては、−CH=CH−、−CY=CY−および−CH=CR−が挙げられ、ただし、Y、Y、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0072】
好ましくは、式Iにおける架橋基−(B)−は、−C≡C−、置換されていてもよい1,4−フェニレンおよび置換されていてもよい9H−フルオレン−2,7−ジイルから成る群より選択される1個以上の基を含む。サブ基、または式IにおけるBは、好ましくは、−C≡C−、置換されていてもよい1,4−フェニレンおよび置換されていてもよい9H−フルオレン−2,7−ジイルから成る群より選択され、ただし、フルオレン基において、9位のH原子はカルビルまたはヒドロカルビル基で置き換えられていてもよい。
【0073】
非常に好ましくは、式Iにおける架橋基−(B)−は、−C≡C−、−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−C≡C−、
【0074】
【化7】

から成る群より選択され、
式中、rは、0、1、2、3または4であり、Lは下に記載される通りの意味を有する。
【0075】
式IIにおける環Uは、好ましくは、
【0076】
【化8】

より選択され、
式中、Rは式Iにおいて定義される通りである。
【0077】
基Mは、好ましくは、カラミチックメソゲン基、非常に好ましくは、棒形状のメソゲン基である。
【0078】
好ましくは、基Mは、芳香族またはヘテロ芳香族環、および非芳香族、例えば、全または部分飽和の炭素環式またはヘテロ環式基より選択される1種類以上の基を含み、前記基は直接または連結基を介してそれぞれ互いに連結されている。
【0079】
好ましくは、基Mは、それらが低い分極率を示すように選択される。これは、例えば、直接または連結基を介して接続されている、好ましくは主に非芳香族、最も好ましくは全飽和の炭素環式またはヘテロ環式基を含むメソゲン基を使用することで達成でき、ただし、「主に」は、それぞれのメソゲン基が不飽和または芳香族環よりも多い飽和環を含み、非常に好ましくは、1個よりも多い不飽和または芳香族環を含まないことを意味する。
【0080】
全ての基Mが同一である式Iの化合物が特に好ましい。
【0081】
1個以上の基Mにおいて、非常に好ましくは、それぞれの基Mにおいて、サブ基−(Z−A−Rおよび−(Z−A−Rが、それぞれ互いに異なる式Iの化合物が更に好ましい。
【0082】
中央の環Uに連結されている基AまたはAの少なくとも一方がシクロヘキシレンである式Iの化合物が更に好ましく、非常に好ましくは、前記基AまたはAは直接Uにつながっており、即ち、Uおよび前記基AまたはAの間の対応する基ZまたはZは単結合である。
【0083】
1、2などの芳香族基は、単核、即ち、1個のみの芳香族環を有していても(例えば、フェニルまたはフェニレンなど)、多核、即ち、2個以上の縮合環を有していても(例えば、ナフチルまたはナフチレンなど)よい。25個までのC原子を有する単環式、二環式または三環式の芳香族またはヘテロ芳香族基が特に好ましく、また、該基は縮合環を含んでいてもよく、置換されていてもよい。
【0084】
好ましい芳香族基としては、限定することなく、ベンゼン、ビフェニレン、トリフェニレン、[1,1’:3’,1”]ターフェニル−2’−イルエン、ナフタレン、アントラセン、ビナフチレン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどが挙げられる。
【0085】
好ましいヘテロ芳香族基としては、限定することなく、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの6員環、およびカルバゾール、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントライミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ジチエノピリジン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合系、または、それらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
1〜4などの非芳香族炭素環式およびヘテロ環式環としては、飽和(「完全に飽和」とも言う)、即ち、それらは単結合で接続されたC原子またはヘテロ原子のみを含有するもの、および、不飽和(「部分的に飽和」とも言う)、即ち、それらは二重結合で接続されたC原子またはヘテロ原子も含有するものが挙げられる。また、非芳香族環は、好ましくは、Si、O、NおよびSより選択される1個以上のヘテロ原子も含んでよい。
【0087】
非芳香族炭素環式およびヘテロ環式基は、単核、即ち、1個のみの環を有するもの(例えば、シクロヘキサンなど)、または、多核、即ち、2個以上の縮合環を有するもの(例えば、デカヒドロナフタレンまたはビシクロオクタンなど)のいずれでもよい。完全に飽和している基が特に好ましい。更に、25個までのC原子を有する単環式、二環式または三環式の非芳香族基が好ましく、該基は縮合環を含んでいてもよく、置換されていてもよい。5員、6員、7員または8員の炭素環式環が非常に好ましく、ただし、1個以上のC原子はSiで置き換えられていてもよく、および/または、1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、および/または、1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよく、それら全ては置換されていてもよい。
【0088】
好ましい非芳香族基としては、限定することなく、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの5員環、シクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの6員環、シクロヘプタンなどの7員環、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノ−インダン−2,5−ジイルなどの縮合系、または、それらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
好ましくは、A1、2などの非芳香族および芳香族環は、トランス−1,4−シクロヘキシレンおよび1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンより選択される。
【0090】
非常に好ましくは、メソゲン基Mは1個より多い芳香族環を含まない。
【0091】
mおよびnが0、1または2、特に、mおよびnの一方が1で他方が0または1である式IおよびIIの化合物が非常に好ましい。
【0092】
本発明のカラミチック化合物において、Z1、2などの、メソゲン基における芳香族および非芳香族環式基を接続している連結基は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CH−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CY=CY−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合より、非常に好ましくは、−COO−、−OCO−および単結合より選択される。
【0093】
本発明のカラミチック化合物において、基B、U、A1、2およびR1〜3上の置換基は「L」とも呼ばれ、好ましくは、P−Sp−、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)OR、−C(=O)R、−NR00、−OH、−SF、置換されていてもよいシリル、1〜12個、好ましくは1〜6個のC原子のアリールまたはヘテロアリール、および、1〜12個、好ましくは1〜6個のC原子の直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシより選択され、ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよく、ただし、RおよびR00は式Iにおいて定義される通りであり、Xはハロゲンである。
【0094】
好ましい置換基Lは、F、Cl、CN、NOまたは1〜12個のC原子の直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし、アルキル基はペルフルオロ化されていてもよい。)、または、P−Sp−より選択される。
【0095】
非常に好ましい置換基は、F、Cl、CN、NO、CH、C、C(CH、CH(CH、CHCH(CH)C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OCまたはP−Sp−、特には、F、Cl、CN、CH、C、C(CH、CH(CH、OCH、COCHまたはOCF、最も好ましくは、F、Cl、CH、C(CH、OCHまたはCOCHまたはP−Sp−より選択される。
【0096】
【化9】

式中、Lは、それぞれ独立に、上で与えられる意味の1つを有する。
【0097】
カルビルおよびヒドロカルビル基R1〜3は、好ましくは、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子の直鎖状、分岐状または環状アルキルより選択され、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、YおよびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNであり、RおよびR00は、それぞれ互いに独立に、H、または置換されていてもよい1〜20個のC原子の脂肪族または芳香族炭化水素である。
【0098】
非常に好ましくは、RおよびRは、C〜C20−アルキル、C〜C20−オキサアルキル、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C20−チオアルキル、C〜C20−シリル、C〜C20−エステル、C〜C20−アミノ、C〜C20−フルオロアルキルより選択される。
【0099】
は、好ましくは、Hまたはメチルである。
【0100】
アルキルまたはアルコキシ基、即ち、末端CH基が−O−によって置き換えられている場合、直鎖状でも分枝状でもよい。それは、好ましくは、直鎖状で2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有し、従って、好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、またはオクトキシ、更に、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0101】
オキサアルキル、即ち、1個のCH基が−O−によって置き換えられている場合、好ましくは、例えば、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、2−メトキシエチル)、2−、3−、または4−オキサペンチル、2−、3−、4−、または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニルまたは2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0102】
1個以上のCH基が−CH=CH−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。それは、好ましくは、直鎖状で2〜10個のC原子を有し、従って、好ましくは、ビニル、プロパ−1−、またはプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−またはブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−またはペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−またはヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−またはヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−またはオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−またはノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−またはデカ−9−エニルである。
【0103】
特に好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特に、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までのC原子を有する基が一般に好ましい。
【0104】
1個のCH基が−O−により、および1個が−CO−により置き換えられているアルキル基において、これらの基は、好ましくは、隣り合っている。従って、これらの基は、一緒となってカルボニルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を形成する。好ましくは、この基は直鎖状で、2〜6個のC原子を有している。それは、従って、好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0105】
2個以上のCH基が−O−および/または−COO−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状または分岐状でよい。それは、好ましくは、直鎖状で、3〜12個のC原子を有する。従って、それは、好ましくは、ビス−カルボキシ−メチル、2,2−ビス−カルボキシ−エチル、3,3−ビス−カルボキシ−プロピル、4,4−ビス−カルボキシ−ブチル、5,5−ビス−カルボキシ−ペンチル、6,6−ビス−カルボキシ−ヘキシル、7,7−ビス−カルボキシ−ヘプチル、8,8−ビス−カルボキシ−オクチル、9,9−ビス−カルボキシ−ノニル、10,10−ビス−カルボキシ−デシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス−(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0106】
CNまたはCFで一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは、直鎖状である。CNまたはCFによる置換は、任意の所望の位置でよい。
【0107】
ハロゲンによって少なくとも一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは、直鎖状である。ハロゲンは、好ましくは、FまたはClで、多置換の場合、好ましくは、Fである。また、結果として生じる基はペルフルオロ化された基も含む。一置換の場合、FまたはCl置換は任意の所望の位置でよいが、好ましくはω位である。末端F置換を有する特に好ましい直鎖状の基の例は、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルである。しかしながら、Fの他の位置が除外されるものではない。
【0108】
およびR00は、好ましくは、H、1〜12個のC原子の直鎖状または分岐状のアルキルより選択される。
【0109】
−CY=CY−は、好ましくは、−CH=CH−、−CF=CF−または−CH=C(CN)−である。
【0110】
ハロゲンは、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、FまたはClである。
【0111】
1〜3は、アキラルでもキラル基でもよい。特に好ましいキラル基は、例えば、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。2−ヘキシル、2−オクチル、2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルおよび1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシが非常に好ましい。
【0112】
好ましいアキラルな分岐状の基は、イソプロピル、イソブチル(即ち、メチルプロピル)、イソペンチル(即ち、3−メチルブチル)、イソプロポキシ、2−メチル−プロポキシおよび3−メチルブトキシである。
【0113】
重合性基Pは、ラジカル性またはイオン性連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に関与できるか、または、例えば、縮合または付加により、ポリマーに類似の反応においてポリマー主鎖上へグラフトできる基である。ラジカル性、カチオン性またはアニオン性重合などの連鎖重合反応のための重合性基が特に好ましい。C−C二重または三重結合を含む重合性基、およびオキセタン類またはエポキシド類などの開環反応により重合できる重合性基が非常に好ましい。
【0114】
適切で好ましい重合性基としては、限定することなく、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0115】
【化10】

CH=CW−(O)k1−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−が挙げられ、ただし、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子のアルキル、特に、H、ClまたはCHであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子のアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルであり、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子のオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子のアルキルであり、Pheは1,4−フェニレン(好ましくは、上で定義される通りの1個以上の基L(P−Sp−の意味は除く)で置換されていてもよい。)であり、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1である。
【0116】
非常に好ましい重合性基は、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0117】
【化11】

(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−より選択され、ただし、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子のアルキル、特に、H、F、ClまたはCHであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子のアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルであり、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子のオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子のアルキルであり、Pheは1,4−フェニレン(好ましくは、上で定義される通りの1個以上の基L(P−Sp−の意味は除く)で置換されていてもよい。)であり、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1である。
【0118】
最も好ましい重合性基は、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−、CH=CF−COO−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0119】
【化12】

より選択される。
【0120】
重合は、通常の専門家に既知で、文献、例えば、D.J.Broer;G.Challa;G.N.Mol、Macromol.Chem、1991年、192巻、59頁に記載される方法に従い、行うことができる。
【0121】
スペーサー基Spは、好ましくは、P−Sp−がP−Sp’−X’−となるように、式Sp’−X’から選択され、式中、
Sp’は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよい1〜20個のC原子、好ましくは、1〜12個のC原子のアルキレンであり、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子のアルキルであり、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNである。
【0122】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0123】
典型的な基Sp’は、例えば、−(CHp1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)p1−であり、ただし、p1は2〜12の整数、q1は1〜3の整数、およびRおよびR00は上で与えられる意味を有する。
【0124】
特に好ましい基Sp’は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシ−ブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチル−イミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。更に、キラルなスペーサー基が好ましい。
【0125】
スペーサー基Spなしで重合性基がメソゲン基に直接結合している化合物が更に好ましい。
【0126】
2個以上の基P−Sp−を有する化合物の場合、重合性基Pおよびスペーサー基Spは同一でも異なっていてもよい。
【0127】
もう一つの好ましい実施形態において、カラミチック化合物は、2個以上の重合性基PまたはP−Sp−(多官能重合性基)で置換されている1個以上の末端基R1、2または置換基LまたはRを含む。このタイプの適切な多官能重合性基は、例えば、米国特許第7,060,200号明細書または米国特許出願公開2006/172090号公報で開示されている。以下の式より選択される1個以上の多官能重合性基を含む化合物が非常に好ましい。
【0128】
【化13】

式中、
alkylは、直鎖状または分岐状で1〜12個のC原子を有するアルキレン(無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、RおよびR00は上で与えられる意味を有する。)であるか、または、単結合を表し、
aaおよびbbは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3、4、5または6であり、
X’は、上で定義される通りであり、および
1〜5は、それぞれ互いに独立に、上でPに対して与えられる意味の1つを有する。
【0129】
式Iの好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0130】
【化14】

【0131】
【化15】

【0132】
【化16】

式中、Mは上および下で定義される通りであり、フェニレン環は、上で定義される通りの1個以上の基Lで置換されていてもよい。
【0133】
基Mは、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0134】
【化17】

式中、R”およびR”’は、それぞれ互いに独立に、上で与えられるRの意味の1つを有し、Zは、それぞれの出現において互いに独立に、上で与えられるZの意味の1つを有する。好ましくは、1個以上のR”およびR”’、非常に好ましくは、両方の基R”および/または両方の基R”’が、P−またはP−Sp−を表す。Zは、好ましくは、−COO−、−OCO−または単結合である。フェニル環は、上で定義される通りの1個以上、好ましくは1個または2個の基Lで置換されていてもよい。
【0135】
これらの好ましい化合物におけるP−Sp−は、好ましくは、P−Sp’−X’であり、ただし、X’は、好ましくは、−O−、−COO−または−OCOO−である。Zは、好ましくは、−COO−、−OCO−または単結合である。
【0136】
式Iの化合物は、それ自身は既知で、文献および、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載されている方法に従うか、または、類似して合成できる。特に適切な方法は、米国特許第6,203,724号明細書で開示されている。また、合成の更に適切な方法は、下および例においても記載されている。
【0137】
式Iの化合物は、一般に、例えば、ACS Symposium Series(2001年)798巻(Anisotropic Organic Materials)、195〜205頁に記載される通り、最初に、ブチルリチウム存在下において、適切に置換されたアセチレン、例えば、(トリメチルシリル)アセチレンを、適切なシクロヘキサノンと反応させることによって合成できる。結果として生じる3級アルコールを適切なカルボン酸とエステル化することで、エステル生成物が生じる。次いで、J Org.Chem.1997年、62巻、7471頁またはTetrahedron Lett.1993年、6403頁のいずれかに記載される通りの方法に類似し、パラジウムを触媒とするカップリング反応を経由して、軸方向アセチレン置換基を、式D(B−G)の反応性ディスコチック誘導体(式中、D、BおよびZは式Iの意味を有し、Gは適切な反応性基または離脱基、例えば、臭素またはヨウ素である。)にカップリングする。
【0138】
重要な中間体を作製する方法を、下のスキーム1に例示的に示す。
【0139】
【化18】

中間体1を、上のスキーム1に示される通り調製する。ブチルリチウム存在下においてケトン1.1をトリメチルアセチレンと反応させ、次いで、水酸化カリウムを使用してTMS基を除去することにより、2段階で化合物1.3を調製する。次いで、DCCおよび触媒量のDMAPの存在下において、化合物1.3を適切なカルボン酸と反応させる。
【0140】
中間体1の典型的な例を下に示す。
【0141】
【化19】

次いで、好ましくは、薗頭反応において、中間体1(例えば、化合物1.4または1.5)を、ハロゲン化されたディスコチック基とカップリングする。例えば、適切な触媒、例えば、Pd(PPh3)ClなどのPd(II)触媒の存在下、および、例えば、トリエチルアミンなどの塩基の存在下において、1,3,5−トリヨードまたは1,3,5−トリブロモベンゼンまたは下で述べる通りの他のディスコチック基と中間体1をカップリングできる。
【0142】
上および下で記載される通り、式Iの化合物を調製する方法は、本発明のもう一つの態様である。以下の工程を含む方法が特に好ましい。
【0143】
a)ブチルリチウム存在下において、適切に置換されたアセチレンを、置換されていてもよいシクロヘキサノンと反応させる工程と、
b)それにより形成された異性体を分離する工程と、
c)工程b)の単離された異性体の3級アルコールを、適切な芳香族または脂肪族カルボン酸でエステル化する工程と、
d)結果として生じる化合物を、その軸方向のアセチレン置換基を介して芳香族環にカップリングする工程。
【0144】
ディスコチック基D1〜D6は先行技術において良く知られている。ディスコチック基D7〜D11は、下に引用される文献で記載される方法に従うか、または、類似して調製できる。
【0145】
D7:米国特許出願公開第2008/087879号公報参照(1,4,7,10−テトラブロモコロネンなどのテトラブロモコロネン類の合成が記載されている)。
【0146】
D8:下に示す通りの異性体2,8,15−トリヨード−5,6,11,12,17,18−ヘキサアザトリナフチレンおよび2,8,14−トリヨード−5,6,11,12,17,18−ヘキサアザトリナフチレンの合成は、国際特許出願公開第2005/123737号パンフレットに記載されている。
【0147】
D9:2,7,12−トリブロモトルキセンの合成が、A.W.Amickら、J.Org.Chem.2007年、72巻(9号)、3412〜3418頁およびB.Gomez−Lorら、Eur.J.Org.Chem.2001年、11巻、2107〜2114頁に記載されている。
【0148】
【化20】

【0149】
【化21】

D10:米国特許出願公開第2005/048313号公報参照(3,6,9,12−テトラハロゲン化アンタントレンの合成が記載されている)。
【0150】
D11:「Columnar mesophase formation of cyclohexa−m−phenylene−based macrocycles」、W.Pisulaら、「Chemistry−An Asian Journal」(2007年)、2巻(1号)、51〜56頁、出版社:Wiley−VCH Verlag社、CODEN:CAAJBI、ISSN:1861−4728;CAN147:395541、AN2007:94977参照(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’,5’’’’’−ヘキサヨードヘキサ−m−フェニレンの合成が記載されている)。
【0151】
上および下で記載される通りの式Iの化合物を調製する方法、そこで使用されそれによって得られる新規な中間体、および、式Iの化合物を調製するための中間体の使用は、本発明の更なる態様である。
【0152】
好ましくは、以降「ゲスト成分」または「ゲスト化合物」と呼ぶ式Iの1種類以上の化合物を含み、更に、以降「ホスト成分」または「ホスト混合物」と呼び、単一の化合物または化合物の混合物のいずれでも構わないLC材料、好ましくは、ネマチック相を有する重合性LCホスト混合物を含むLC配合物を重合することで本発明による複屈折ポリマーフィルムを調製する。用語「ゲスト」および「ホスト」は、最終LC混合物におけるゲスト成分の量が50重量%を超え、最終LC混合物におけるホスト成分の量が50重量%未満となる可能性を除外するものではない。
【0153】
本発明による複屈折ポリマーフィルムは、好ましくは、正の複屈折および負(または「反転」)の分散を有する。
【0154】
ホスト成分は、好ましくは、正の複屈折および正(または「正常」)の分散を有する。
【0155】
ゲスト成分は、好ましくは
(1)550nmにおいて負の複屈折および正常(正)の複屈折分散、または
(2)550nmにおいて正の複屈折および反転(負)の複屈折分散を有する。この場合、ゲスト成分が450nmにおいて負の複屈折を有するのであれば、Δn(450)/Δn(550)は負となり得る。
【0156】
本発明のもう一つの態様は、上および下で記載される通りの1種類以上のゲスト化合物と、1種類以上の追加の化合物(該化合物は、好ましくは、メソゲンまたは液晶および/または重合性である。)とを含む重合性配合物、好ましくは、重合性LC配合物である。非常に好ましくは、LC配合物は、反応性メソゲン(RM)より選択され、最も好ましくは、一反応性および二反応性のRMより選択される1種類以上の追加の化合物を含む。これらの追加の化合物は、重合性LCホスト成分を構成する。
【0157】
好ましくは、本発明によるポリマーフィルムは架橋されており、重合性ゲスト化合物および/または重合性ホスト成分は、2個以上の重合性基を有する(二反応性または多反応性)少なくとも1種類の化合物を含む。
【0158】
重合性LC配合物(ゲストおよびホスト成分の両者を含む)における本発明のゲスト化合物(1種類または複数種類)の濃度は、好ましくは、5〜90重量%、非常に好ましくは、30〜70重量%である。
【0159】
重合性LCホスト配合物の追加のRMは、それ自身は既知で、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載されている方法によって調製できる。適切なRMは、例えば、国際特許出願公開第93/22397号パンフレット、欧州特許第0 261 712号明細書、ドイツ国特許第195 04 224号明細書、国際特許出願公開第95/22586号パンフレット、国際特許出願公開第97/00600号パンフレット、米国特許第5,518,652号明細書、米国特許第5,750,051号明細書、米国特許第5,770,107号明細書および米国特許第6,514,578号明細書で開示されている。特に適切で好ましいRMの例を、以下のリストに示す。
【0160】
【化22】

【0161】
【化23】

【0162】
【化24】

【0163】
【化25】

【0164】
【化26】

【0165】
【化27】

式中、
は、複数出現する場合は互いに独立に、重合性基、好ましくは、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
およびBは、複数出現する場合は互いに独立に、1,4−フェニレン(該基は、1個、2個、3個または4個の基Lで置換されていてもよい。)またはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
は、複数出現する場合は互いに独立に、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
は、1個以上、好ましくは1〜15個のC原子を有し、フッ素化されていてもよいアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、または、YまたはP−(CH−(O)−であり、
は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR01−、−NR01−CO−、−NR01−CO−NR01−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR01−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
は、F、Cl、CN、NO、OCH、OCN、SCN、SF、1〜4個のC原子を有し、フッ素化されていてもよいアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、または、1〜4個のC原子を有し、モノフッ素化、オリゴフッ素化またはポリフッ素化されたアルキルまたはアルコキシであり、
01、02は、それぞれ互いに独立に、H、RまたはYであり、
は、2−メチルブチル、2−メチルオクチル、2−メチルブトキシまたは2−メチルオクトキシなどの、4個以上、好ましくは、4〜12個のC原子を有するキラルなアルキルまたはアルコキシ基であり、
Chは、コレステリル、エストラジオール、または、メンチルまたはシトロネリルなどのテルペノイド基より選択されるキラル基であり、
Lは、複数出現する場合は互いに独立に、H、F、Cl、CNまたは1〜5個のC原子を有し、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
tは、複数出現する場合は互いに独立に、0、1、2または3であり、
uおよびvは、それぞれ互いに独立に、0、1または2であり、
wは、0または1であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に、0または同一または異なって1〜12の整数であり、
zは0または1であり、隣接するxまたはyが0の場合、zは0であり、
ただし、ベンゼンおよびナフタレン環は、1個以上の同一または異なる基Lで追加的に置換されていてもよい。
【0166】
特に好ましくは、重合性LCホスト成分はアキラルな化合物のみを含有し、キラルな化合物は含有しない。
【0167】
更に好ましくは、重合性LCホスト成分は、式MR3、MR4、MR7、MR8、MR9、MR10、MR18、MR27、DR6、DR7、DR8、DR9およびDR10、更には、DR1およびDR5より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0168】
更に好ましくは、重合性LCホスト成分は、以下の式より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0169】
【化28】

【0170】
【化29】

式中、P、R、x、y、およびzは、上で定義される通りである。
【0171】
更に好ましくは、重合性LCホスト成分は、以下の式より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0172】
【化30】

【0173】
【化31】

【0174】
【化32】

【0175】
【化33】

好ましくは、重合性LCホスト成分の重合性化合物は、低い複屈折率を有し、非常に好ましくは、一反応性または二反応性のRMの化合物より選択される。
【0176】
0.01〜0.2、非常に好ましくは、0.04〜0.16の複屈折率の絶対値を有する重合性ホスト成分が特に好ましい。
【0177】
本発明によるポリマーLCフィルムの一般的な調製は通常の専門家に既知であり、文献、例えば、D.J.Broer;G.Challa;G.N.Mol、Macromol.Chem、1991年、192巻、59頁に記載されている。典型的には、重合性LC材料(即ち、化合物または混合物または配合物)を基板上にコーティングまたはそうでなければ塗布し、そこで均一な方向に配向させ、例えば、熱または化学線照射に曝露して、好ましくは光重合により、非常に好ましくはUV−光重合により、選択された温度で、それのLC相において、その場で重合し、LC分子の配向を固定する。必要に応じて、LC材料をせん断またはアニールする、基板の表面処理、またはLC材料に界面活性剤を添加するなどの追加的な手段により均一な配向を促進できる。
【0178】
基板として、例えば、ガラスまたは石英シートまたはプラスチックフィルムを使用できる。重合前および/または重合中および/または重合後において、被覆された材料の最表面上に第2の基板を配置することも可能である。重合後、基板を取り除いても取り除かなくても構わない。2つの基板を使用して化学線照射により硬化する場合、少なくとも一方の基板は、重合のために使用される化学線照射に対して透過性でなければならない。等方性または複屈折性の基板を使用できる。重合後に重合されたフィルムから基板を取り除かない場合、好ましくは等方性基板を使用する。
【0179】
適切で好ましいプラスチック基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethyleneterephthalate)またはポリエチレン−ナフタレート(PEN:polyethylene−naphthalate)などのポリエステルのフィルム、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinylalcohol)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)またはトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)、非常に好ましくは、PETまたはTACフィルムである。複屈折性基板としては、例えば、一軸延伸プラスチックフィルムを使用できる。PETフィルムは、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社より商標名Melinex(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0180】
重合性材料は、スピンコートまたはブレードコートなどの従来のコーティング技術により、基板上に塗布できる。また、従来の印刷技術によっても基板に塗布でき、それらは、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、リールツーリール印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷、ロトグラビア印刷、フレキソ印刷、インタリオ印刷、パッド印刷、熱シール印刷、インクジェット印刷またはスタンプまたは印刷板を利用する印刷など専門家に既知である。
【0181】
また、重合性材料を適切な溶媒に溶解することも可能である。次いで、この溶液を、例えば、スピンコートまたはプリントまたは他の既知の技術により、基板上にコーティングまたは印刷し、重合前に溶媒を蒸発させる。多くの場合、溶媒の蒸発を促進するために、混合物を加熱することが適切である。溶媒としては、例えば、標準的な有機溶媒を使用できる。溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン類;メチル、エチルまたはブチルアセテートまたはメチルアセトアセテートなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール類;トルエンまたはキシレンなどの芳香族溶媒;ジ−またはトリ−クロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;PGMEA(プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)などのグリコール類またはそれらのエステル類、γ−ブチロラクトンなどより選択できる。また、上の溶媒の2元または3元以上の混合物を使用することもできる。
【0182】
重合性LC材料の初期配向(例えば、平面配向)は、例えば、基板をラビング処理する、コーティング中または後に材料をせん断する、重合前に材料をアニールする、配向層を塗布する、コーティングされた材料に磁界または電界を印加する、または、材料に表面活性化合物を添加することで達成できる。配向技術の総説は、例えば、I.Sage、「Thermotropic Liquid Crystals」中、G.W.Gray編、John Wiley & Sons社、1987年刊、75〜77頁;およびT.UchidaおよびH.Seki、「Liquid Crystals−Applications and Uses、第3巻」中、B.Bahadur編、World Scientific Publishing社、Singapore、1992年刊、1〜63頁に与えられている。配向材料および技術の総説は、J.Cognard、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、78巻、補足1(1981年刊)、1〜77頁に与えられている。
【0183】
LC分子の特定の表面配向を促進する1種類以上の界面活性剤を含む重合性材料が特に好ましい。適切な界面活性剤は、例えば、J.Cognard、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、78巻、補足1、1〜77頁(1981年刊)に記載されている。平面配向のための好ましい配向剤は、例えば、非イオン性界面活性剤、好ましくは、商業的に入手可能なFluorad FC−171(登録商標)(3M社製)またはZonyl FSN(登録商標)(デュポン社製)などのフッ化炭素界面活性剤、英国特許第2 383 040号明細書に記載される通りの多重ブロック界面活性剤または欧州特許第1 256 617号明細書に記載される通りの重合性界面活性剤である。
【0184】
また、基板上に配向層を塗布し、この配向層上に重合性材料を提供することも可能である。適切な配向層は、例えば、米国特許第5,602,661号明細書、米国特許第5,389,698号明細書または米国特許第6,717,644号明細書に記載される通りのラビングされたポリイミドまたは光配向で調製された配向層など当該技術において既知である。
【0185】
また、重合に先立ち、重合性LC材料を昇温して、好ましくはその重合温度でアニールすることによって、配向を誘発または改良することも可能である。
【0186】
重合は、例えば、重合性材料を熱または化学線照射に曝露することで達成される。化学線照射とは、UV光、IR光または可視光などの光の照射、X線またはガンマ線の照射またはイオンまたは電子などの高エネルギー粒子の照射を意味する。好ましくは、重合をUV照射により行う。化学線照射の線源としては、例えば、単一のUVランプまたはUVランプのセットを使用できる。高いランプパワーを使用すれば、硬化時間を短縮できる。化学線照射のもう1つの可能な線源は、例えば、UV、IRまたは可視光レーザーなどのレーザーである。
【0187】
重合は、好ましくは、化学線照射の波長で吸収のある開始剤の存在下で行われる。この目的のためには、重合性LC材料は、好ましくは、1種類以上の開始剤を、好ましくは、0.01〜10%、非常に好ましくは、0.05〜5%の濃度で含む。例えば、UV光を利用する重合の場合、UV照射下で分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用できる。アクリレートまたはメタクリレート基の重合には、好ましくは、ラジカル光開始剤が使用される。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基の重合には、好ましくは、カチオン性の光開始剤が使用される。また、加熱されると分解して重合を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル性光開始剤は、例えば、商業的に入手可能なIrgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy社、Basel市、スイス国)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えば、UVI6974(Union Carbide社)である。
【0188】
また、重合性材料は、望ましくない自発的な重合を予防するため、例えば、商業的に入手可能なIrganox(登録商標)(Ciba Geigy社、Basel市、スイス国)などの安定剤または禁止剤を1種類以上含んでもよい。
【0189】
硬化時間は、重合性材料の反応性、コーティング層の厚み、重合開始剤のタイプおよびUVランプの出力にとりわけ依存する。硬化時間は、好ましくは5分以下、非常に好ましくは3分以下、最も好ましくは1分以下である。大量生産には、30秒以下の短い硬化時間が好ましい。
【0190】
好ましくは、重合は、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気内で行う。
【0191】
また、重合性材料は、重合のために使用される照射の波長に調整された吸収最大を有する色素、例えば、4,4”−アゾキシアニソールまたはTinuvin(登録商標)色素(Ciba社製、Basel市、スイス国)などの特にUV色素を1種類以上含んでもよい。
【0192】
もう1つの好ましい実施形態において、重合性材料は1種類以上の一反応性で重合性の非メソゲン性化合物を、好ましくは、0〜50%、非常に好ましくは、0〜20%の量で含む。典型的な例は、アルキルアクリレート類またはアルキルメタクリレート類である。
【0193】
もう1つの好ましい実施形態において、二反応性または多反応性で重合性のメソゲン性化合物に代えるか加えて、重合性材料は1種類以上の二反応性または多反応性で重合性の非メソゲン性化合物を、好ましくは0〜50%、非常に好ましくは0〜20%の量で含む。二反応性の非メソゲン性化合物の典型的な例は、1〜20個のC原子のアルキル基を有するアルキルジアクリレート類またはアルキルジメタクリレート類である。多反応性の非メソゲン性化合物の典型的な例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリトリトールテトラアクリレートである。
【0194】
また、ポリマーフィルムの物理的特性を改変するために、1種類以上の連鎖移動剤を重合性材料に加えることも可能である。チオール化合物、例えば、ドデカンチオールなどの一官能性チオール類またはトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)などの多官能性チオール類が特に好ましい。例えば、国際特許出願公開第96/12209号パンフレット、国際特許出願公開第96/25470号パンフレットまたは米国特許第6,420,001号明細書中に開示される通りのメソゲンまたはLCチオール類が特に好ましい。連鎖移動剤を使用することで、ポリマーフィルム中の束縛されていないポリマー鎖の長さおよび/または2つの架橋間のポリマー鎖の長さを制御できる。連鎖移動剤の量を増加すると、ポリマーフィルム中のポリマー鎖長は減少する。
【0195】
また、重合性材料は、重合体バインダーまたは重合体バインダーを形成できる1種類以上のモノマーおよび/または1種類以上の分散助剤を含むこともできる。適切なバインダーおよび分散助剤は、例えば、国際特許出願公開第96/02597号パンフレットで開示されている。好ましくは、しかしながら、重合性材料は、バインダーまたは分散助剤を含まない。
【0196】
重合性材料は、例えば、触媒、増感剤、安定剤、禁止剤、連鎖移動剤、共反応性モノマー、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、粘着剤、流動性改良剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、色素、顔料またはナノ粒子などの1種類以上の添加剤を追加的に含んでもよい。
【0197】
本発明によるポリマーフィルムの厚みは、好ましくは、0.3〜5ミクロン、非常に好ましくは、0.5〜3ミクロン、最も好ましくは、0.7〜1.5ミクロンである。配向層としての使用には、0.05〜1、好ましくは0.1〜0.4ミクロンの厚みの薄膜が好ましい。
【0198】
本発明のポリマーフィルムおよび材料は、例えば、LCD中において広視野角におけるコントラストおよび輝度を改良し、色度を低減するために、リターデーションまたはコンペンセーションフィルムとして使用できる。それはLCDのスイッチ可能なLCセルの外側または、通常、ガラス基板である基板間で使用でき、スイッチ可能なLCセルを形成し、スイッチ可能なLC媒体を含有する(セル内用途)。
【0199】
本発明のポリマーフィルムおよび材料は従来のLCディスプレイ中、例えば、DAP(deformation of aligned phases:配向相の変形)、ECB(electrically controlled birefringence:電気制御複屈折)、CSH(colour super homeotropic:有色スーパーホメオトロピック)、VA(vertically aligned:垂直配向)、VANまたはVAC(vertically aligned nematicまたはcholesteric:垂直配向ネマチックまたはコレステリック)、MVA(multi−domain vertically aligned:複数領域垂直配向)、PVA(patterned vertically aligned:パターン化垂直配向)またはPSVA(polymer stabilised vertically aligned:ポリマー安定化垂直配向)モードなどの垂直配向のディスプレイ;OCB(optically compensated bend cellまたはoptically compensated birefringence:光学的補償ベンドセルまたは光学的補償複屈折)、R−OCB(reflective OCB:反射OCB)、HAN(hybrid aligned nematic:ハイブリッド配向ネマチック)またはパイ−セル(π−cell)モードなどのベンドまたはハイブリッド配向のディスプレイ;TN(twisted nematic:ツイストネマチック)、HTN(highly twisted nematic:高度ツイストネマチック)、STN(super twisted nematic:スーパーツイストネマチック)、AMD−TN(active matrix driven TN:アクティブマトリクス駆動TN)モードなどのツイスト配向のディスプレイ;IPS(in plane switching:面内スイッチング)モードのディスプレイ、または光学的等方相においてスイッチするディスプレイで使用できる。
【0200】
本発明の層、フィルムおよび材料は、好ましくは、光学的一軸フィルム(Aプレート、Cプレート、負のCプレート、Oプレート)、例えば、ツイスト1/4波長箔(QWF:quarter wave foil)、色消しリターダー、色消しQWFまたは半波長箔(HWF:half wave foil)などのツイスト光学的リターダー、および光学的二軸フィルムより選択される各種タイプの光学的フィルム用に使用できる。層および材料におけるLC相構造は、コレステリック、スメクチック、ネマチックおよびブルー相より選択できる。層におけるLC材料の配向は、ホメオトロピック、スプレイ、チルト、平面およびブルー相配向より選択できる。層は均一に配向しても、または異なる配向のパターンを示しても構わない。
【0201】
フィルムは、LCDの視野角増大のための光学的コンペンセーションフィルムとして、または輝度増強フィルムにおける部品として、更には、反射型または半透過型LCDにおける色消し素子として使用できる。更に好ましい用途および装置としては、
−複合CD/DVD/HD−DVD/ブルーレイなどで、読み出し、書き込み、再書き込みのデータ記憶システムを含む、複数の波長において同様の位相シフトを必要とする光電子装置におけるリターディング部品、
−カメラなどの光学的装置用の色消しリターダー、
−OLEDおよびLCDを含むディスプレイ用の色消しリターダー
が挙げられる。
【0202】
以下の例は、本発明を制限することなく説明することを意図している。また、以下に記載される方法、構造および特性は、本発明において特許請求されているが、先述の明細書または例において明らかには記載されていない材料にも適用または転用できる。
【0203】
上および下において、パーセンテージは重量パーセントである。全ての温度は摂氏度で与えられる。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点を表し、Tgはガラス転移温度を表す。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは転移温度を表す。Δnは589nmおよび20℃において測定される光学異方性(Δn=n−n、ただし、nは分子の長軸に平行な屈折率を表し、nはそれに垂直な屈折率を表す)を表す。他に明言しない限り、光学的および電気光学的データは20℃で測定される。
【0204】
本明細書の記載および請求項において、他に明言しない限り、リターデーションおよび分散は上記の通りの方法によって決定される。
【0205】
他に明言しない限り、上および下で与えられる通りの重合性混合物の成分のパーセンテージは混合重合性混合物中の固形分の総量を言うもので、即ち、溶媒を含まない。
【実施例】
【0206】
<例1>
化合物1(ただし、Rはn−プロピルである。)を下記の通り調製する。中間体1.4をスキーム1において記載される方法により調製し、次いで、薗頭の条件下において1,3,5−トリヨードベンゼンと反応させて、1を与える。
【0207】
【化34】

1.3の合成は文献に記載されており、例えば、米国特許出願公開第1999−0452166号公報を参照。トランス−4’−プロピル−[1,1’−ビシクロヘキシル]−4−オン(1.1)は商業的に入手可能である。1.1をトリメチルシリルアセチレンおよびブチルリチウムに反応させ、トランス,トランス−4’−プロピル−4−[2−(トリメチルシリル)エチニル]−[1,1’−ビシクロヘキシル]−4−オール(1.2)を調製した。該反応により2種類の異性体が生成し、カラムクロマトグラフィーによってトランス−トランス異性体を単離する。1.2をメタノール中、水酸化カリウムと反応させ、(トランス,トランス)−4−エチニル−4’−プロピル−[1,1’−ビシクロヘキシル]−4−オール(1.3)を調製する。
【0208】
<1.4の合成>
3級アルコール、即ち、化合物3の撹拌されているジクロロメタン溶液に、トリフルオロ酢酸無水物および4−[6−(3−クロロプロピオニルオキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸のジクロロメタン中の予め混合された溶液を加えた。25℃において一晩撹拌後、反応混合物を水で希釈し、有機層を分離した。水層をDCMで抽出後、pHが中性となるまで、合わされた有機物を炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用し、石油エーテル(40〜60℃)20%DCMで溶出して材料を精製し、黄色味の白色固体を得た(NMRは期待されるシグナルを示す。98%収率)。
【0209】
<1の合成>
72時間、窒素下で50℃において撹拌しながら加熱する前に、テトラヒドロフラン中のエステル化合物1.4、1,3,5−トリヨードベンゼン、CuI、Pd(PPhClおよびトリエチルアミンを丸底フラスコに充填し、超音波処理した。冷却後、希HClを加えて反応混合物を酸性とし、有機層を分離し、水洗した。硫酸ナトリウムを使用して有機層を乾燥し、濃縮して、褐色の油分を与えた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用し、酢酸エチル−石油エーテル(40〜60℃)(1:10)で溶出して、油分を精製した。生成物を含有する画分を回収し、暗褐色の固体を与え、それをジクロロメタン中に再溶解し、−20℃まで予め冷却され攪拌されているアセトニトリルに加えた。暗褐色の沈殿を回収し、酢酸エチル/変性エタノールより再結晶して、黄色の固体を与えた(HPLCにより96.1%、22%収率)。
【0210】
<例2>
Nature(1999年)、398巻、796〜799頁に記載される方法を経由して、1,3,5−トリス[(4−ヨードフェニル)エチニル]ベンゼンを調製する。薗頭の条件下において、例1の化合物1.4を1,3,5−トリス[(4−ヨードフェニル)エチニル]ベンゼンと反応させて、下に示す通りの化合物2を与える。
【0211】
【化35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
Dはディスコチック基であるか、または、(B)と共にディスコチック基を形成しており、
zは3〜10の整数であり、
Bは、それぞれの出現において互いに独立に、高い分極率を有する2価の基であり、好ましくは、−C≡C−、−CY=CY−および置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族基から成る群より選択され、
1、2は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、CNまたはRであり、
qは、それぞれの出現において互いに独立に、0または1〜10の整数であり、
Mは、式IIの基であり、
【化2】

式中、個々の基は、複数出現する場合は互いに独立に、以下の意味を有し、
は、以下の環から成る群より選択され、
【化3】

それらの鏡像を含み、ただし、環Uは軸方向の結合を介して基−(B)−に結合されており、これらの環における1個または2個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよく、環Uは置換されていてもよく、
1、2は、それぞれ互いに独立に、CHまたはSiHであり、
は、CまたはSiであり、
1、2は、それぞれ互いに独立に、非芳香族、芳香族またはヘテロ芳香族炭素環式またはヘテロ環式基より選択され、該基は置換されていてもよく、ただし、−(A−Z−U−(Z−A−は非芳香族基よりも多数の芳香族基を含有せず、好ましくは、1個より多い芳香族基を含有せず、
1、2は、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CH−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CY=CY−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合であり、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子のアルキルであり、
mおよびnは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3または4であり、ただし、m+nは0より大きく、
1〜3は、それぞれ互いに独立に、H、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、P−Sp−、置換されていてもよいシリル、1〜40個のC原子のカルビルまたはヒドロカルビル(該基は置換されていてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい)より選択される同一または異なる基であるか、または、PまたはP−Sp−を表すか、または、PまたはP−Sp−で置換されており、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。)
【請求項2】
Dが以下のサブ式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化4】

【化5】

【化6】

【請求項3】
−(B)−が、−C≡C−、−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−C≡C−および下式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【化7】

(式中、rは、0、1、2、3または4であり、Lは、P−Sp−、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)OR、−C(=O)R、−NR00、−OH、−SF、置換されていてもよいシリル、1〜12個のC原子のアリール、および1〜12個のC原子の直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシより選択され、ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよく、ただし、RおよびR00は請求項1において定義される通りであり、Xはハロゲンである。)
【請求項4】
以下のサブ式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【化8】

【化9】

【化10】

(式中、Mは請求項1において定義される通りであり、フェニレン環は1個以上の基L(請求項3において定義される通りである。)で置換されていてもよい。)
【請求項5】
基Mは、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【化11】

(式中、R”およびR”’は、それぞれ互いに独立に、請求項1のRの意味の1つを有し、Zは、それぞれの出現において互いに独立に、請求項1のZの意味の1つを有する。)
【請求項6】
式IIにおける環Uは、下式より選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【化12】

(式中、Rは式Iにおいて定義される通りである。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物、および1種類以上の更なる化合物を含み、ただし、該化合物の少なくとも1種類は重合性である重合性LC配合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはLC配合物を、それのLC相において配向された状態で薄膜の形態で重合して得ることができる複屈折ポリマーフィルム。
【請求項9】
1未満のR450/R550(ただし、R450は450nmの波長における光学的軸上リターデーションであり、R550は550nmの波長における光学的軸上リターデーションである。)を有することを特徴とする請求項8に記載の複屈折ポリマーフィルム。
【請求項10】
光学的、電子的および電気光学的部品および装置における、好ましくは、負の光学的分散を有する光学的フィルム、リターダーまたはコンペンセータにおける請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、LC配合物およびポリマーフィルムの使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、LC配合物またはポリマーフィルムを含む光学的、電子的または電気光学的部品または装置。
【請求項12】
電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、非線形光学(NLO:non−linear optic)装置、光学情報記憶装置、電子装置、有機半導体、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)装置、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、有機レーザーダイオード(O−レーザー:organic laser diode)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサー装置、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基材、導電性パターン、光導電体、電子写真用途、電子写真記録、有機記憶装置、バイオセンサー、バイオチップ、複数の波長において同様の位相シフトを必要とする光電子装置、複合CD/DVD/HD−DVD/ブルーレイ、読み出し、書き込み、再書き込みデータ記憶システム、またはカメラより選択されることを特徴とする請求項11に記載の装置または部品。
【請求項13】
Aプレート、Cプレート、負のCプレートまたはOプレートより選択される光学的一軸フィルム、ツイスト光学的リターダー、ツイスト1/4波長箔(QWF:quarter wave foil)、光学的二軸フィルム、色消しリターダー、色消しQWFまたは半波長箔(HWF:half wave foil)、コレステリック、スメクチック、ネマチックまたはブルー相を有するフィルム、ホメオトロピック、スプレイ、チルト、平面またはブルー相配向を有するフィルム(該フィルムは均一に配向しているか、または、異なる配向のパターンを示す)であることを特徴とする請求項11に記載の光学的部品。
【請求項14】
LCDの視野角増大のための光学的コンペンセーションフィルム、輝度増強フィルムにおける部品、または反射型または半透過型LCDにおける色消し素子であることを特徴とする請求項11に記載の光学的部品。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
a)ブチルリチウム存在下において、適切に置換されたアセチレンを、置換されていてもよいシクロヘキサノンと反応させる工程と、
b)それにより形成された異性体を分離する工程と、
c)工程b)の単離された異性体の3級アルコールを、適切な芳香族または脂肪族カルボン酸でエステル化する工程と、
d)結果として生じる化合物を、その軸方向のアセチレン置換基を介して芳香族環にカップリングする工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−500234(P2012−500234A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523315(P2011−523315)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005171
【国際公開番号】WO2010/020312
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】