説明

ディスプレイ装置用保護板及びその製造方法

【課題】不良品の発生につながり易い段差の発生を防止できるディスプレイ装置用保護板を提供する。
【解決手段】ディスプレイ装置13の表示面を保護する保護板1であって、第1透明フィルム2と、第1透明フィルム2の一方の面上に形成された印刷層3と、第1透明フィルム2の一方の面上に印刷層3を覆うように形成された透明接着充填層4と、透明接着充填層4の第1透明フィルム2と反対側の面上に貼着された第2透明フィルム5と、第2透明フィルム5の透明接着充填層4と反対側の面上に形成された透明粘着層6とを有するディスプレイ装置用保護板1である。透明接着充填層4は第1透明フィルム2と第2透明フィルム5とによって挟まれているので、透明接着充填層4に段差を低く抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置の表示面を保護するディスプレイ装置用保護板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置は画像を表示する装置であり、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機EL(Electro Luminescence)装置等である。ディスプレイ装置の表示面にはタッチパネルが付設されることがあるが、このタッチパネルがディスプレイ装置に付設される場合にはこのタッチパネルもディスプレイ装置の構成要素である。
【0003】
ディスプレイ装置の表示面は、ガラス板の表面又はプラスチックフィルムの表面である。なお、一般的には、厚さの薄い板状部材を「フィルム」と言い、厚さの厚い板状部材を「シート」と言うが、本明細書において「フィルム」と言った場合には一般的な「シート」をも含む概念とする。
【0004】
(空間を持った従来例)
従来、ディスプレイ装置用保護板(以下、単に保護板ということがある)の主たる構成要素である透明フィルムとLCD(Liquid Crystal Device:液晶表示装置)とを貼り合わせる際、又はその透明フィルムとタッチパネルとを貼り合わせる際、周辺部分である額縁部分のみを両面テープで貼り合わせることがあった。
【0005】
こうして形成された構造は、内部が空間であるということから、エアギャップ構造と呼ばれることがある。この構造においては、内部の空間(すなわち、空気層)の存在により、ディスプレイ装置の視認性が悪くなるという問題があった。
【0006】
(OCAで空間を埋めた従来例)
上記の視認性の問題を解消するため、従来、図4(a)に示すように、透明フィルム102の面上に印刷層103を形成して加飾印刷フィルム108を形成し、その加飾印刷フィルム108にOCA(Optical Clear Adhesive:光学透明粘着剤)両面テープ106を貼着して成るディスプレイ装置用保護板101が知られている。図4(a)の加飾印刷フィルム108は、図4(b)に示すように、OCA両面テープ層106によってディスプレイ装置113の表面、例えばガラス板の表面に貼着される。
【0007】
なお、本明細書では、人手によって剥離可能な貼着状態を「粘着」といい、人手によって剥離不能な貼着状態を「接着」といい、状態の如何を問わず貼り付いている状態を「貼着」と言うことにする。
【0008】
このディスプレイ装置用保護板101では、ディスプレイ装置113と透明フィルム102との間に空間が存在しておらず、透明なOCA両面テープ層106が全面にわたって設けられるので、ディスプレイ装置113と透明フィルム102との間が空間であった従来装置に比べて視認性が向上している。しかしながら、この従来の保護板101においては、これをディスプレイ装置113の表面に貼着した際に、OCA両面テープ層106が印刷層103の厚さ分だけディスプレイ装置113になじむことにより、図4(c)に示すように、透明フィルム102の表面に段差D1が発生していた。段差D1が発生すると、保護板101を含めたディスプレイ装置113の表面の外観、例えばフラット性が損なわれる結果になっていた。
【0009】
段差D1を解消又は軽減するためには、透明フィルム102を厚くするか、OCA両面テープ層106を厚くする必要がある。しかしながら、このように透明フィルム102やOCA両面テープ層106を厚くすると、保護板101を含めたディスプレイ装置113の全体が厚くならざるを得なかった。
【0010】
また、OCA両面テープ層106の柔軟性を高めることにより、段差D1の発生を防止又は軽減できる。しかしながら、この場合には、OCA両面テープ層106を形成しているOCAが側方端からはみ出したり、外部のごみ、塵等がOCAに付着したりして外観を損なうおそれがある。
【0011】
(透明樹脂層で空間を埋めた従来例)
特許文献1の図5によれば、本願の図5に示すように、透明フィルムによって形成された保護板112とディスプレイ装置であるフラットパネルディスプレイ部123との間に、OCAではなく、光硬化性樹脂より成る透明接着樹脂層114を設けて成るディスプレイ装置用保護板111が開示されている。透明接着樹脂層114は、例えば紫外線の照射を受けて硬化させられた後に、両面テープ116によってフラットパネルディスプレイ部123の表面に貼着されている。
【0012】
このディスプレイ装置用保護板111によれば、流動性の高い透明接着樹脂によって透明接着樹脂層114を形成したことにより、段差の発生が解消されることが期待されていた。しかしながら、実際上は、保護板112及び印刷層103の上に透明接着樹脂114を塗布した後、その透明接着樹脂114が硬化するまでの経過時間の間に、図5(b)に示すように、表面張力に起因して印刷層103内で印刷部分がある所と無い所に応じて透明樹脂層114の表面に段差D2が発生して、フラットにならないという現象が生じていた。
【0013】
また、このような段差D2が生じたときに、透明接着樹脂層114に異物や気泡が生じ易く、その場合には、その透明接着樹脂層114を含んでいるディスプレイ装置用保護板111は不良品になってしまうので、生産性に問題が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−176111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のように、従来のディスプレイ装置用保護板においては、印刷層内で印刷部分がある所と無い所に応じて、OCA両面テープ層や透明接着樹脂層に段差が発生し、そのために外観上の不良や、特性上の不良が発生し、その結果、量産性が低くなるという問題があった。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、不良品の発生につながり易い段差の発生を防止できるディスプレイ装置用保護板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板は、ディスプレイ装置の表示面を保護する保護板であって、第1透明フィルムと、当該第1透明フィルムの一方の面上に形成された印刷層と、前記第1透明フィルムの前記一方の面上に前記印刷層を覆うように形成された透明接着充填層と、当該透明接着充填層の前記第1透明フィルムと反対側の面上に貼着された第2透明フィルムと、当該第2透明フィルムの前記透明接着充填層と反対側の面上に形成された透明粘着層とを有することを特徴とする。
【0018】
従来のディスプレイ装置用保護板においては、上記の第2透明フィルムに相当するフィルムが用いられていなかったので、透明接着充填層を硬化させるときに印刷層の厚みに起因してその透明接着充填層に段差が発生していた。これに対し、本発明に係るディスプレイ装置用保護板では、透明接着充填層を第1透明フィルムと第2透明フィルムとで挟んだので、透明接着充填層を硬化させる時に当該透明接着充填層に段差が生じることを防止できる。
【0019】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板において、前記透明接着充填層は光硬化性樹脂によって形成することができる。
光硬化性樹脂は硬化時に収縮して段差を生じ易い。しなしながら、本発明では透明接着充填層を第1透明フィルムと第2透明フィルムとで挟んだので、段差が発生し難い。つまり、本発明は、透明接着充填層を光硬化性樹脂によって形成したときに、特に有効に機能する。)
【0020】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板において、前記第1透明フィルム及び前記第2透明フィルムはポリエステル樹脂によって形成できる。
ポリエステル樹脂にすればフィルムを、容易に、0.3mm以下の厚さに形成できる。厚さを0.3mm以下にすれば、ディスプレイ装置用保護板の厚さを薄くできる。薄くすると印刷層に起因する段差が生じ易いが、本発明のように第2透明フィルムを使用すれば段差の発生を防止できる。
【0021】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板において、前記第1透明フィルム及び前記第2透明フィルムはポリエチレンテレフタレートによって形成できる。
第1透明フィルム等をポリエチレンテレフタレートにすれば、第1透明フィルム等を、容易に、0.3mm以下の厚さに形成できる。
【0022】
次に、本発明に係るディスプレイ装置用保護板の製造方法は、ディスプレイ装置の表示面を保護する保護板を製造するための製造方法であって、第1透明フィルム上に印刷層を形成して成る加飾印刷フィルムをロール状に巻かれた状態から引き出し、第2透明フィルム上に透明粘着層を形成して成る粘着フィルムテープをロール状に巻かれた状態から引き出し、引き出された前記加飾印刷フィルムと引き出された前記粘着フィルムテープとを透明接着充填材によって貼り合わせ、その貼り合わせ後に前記透明接着充填材を硬化させて保護板を形成し、当該保護板をロール状に巻き取ることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板の製造方法によれば、以上に記載した構成のディスプレイ装置用保護板を安定して正確に製造できる。さらに、ロール間で張力が作用している状態で作業が行われるので、第1透明フィルム及び第2透明フィルムの厚さが0.3mm以下のように薄い場合でも、ディスプレイ装置用保護板を安定して正確に製造できる。
【0024】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板の製造方法において、前記透明接着充填材は光硬化性樹脂とすることができ、さらに前記透明接着充填材の硬化は光の照射によって行うことができる。この構成は、ロール間で処理を行う製法、すなわちロール to ロールの製法に適している。
【発明の効果】
【0025】
従来のディスプレイ装置用保護板においては、本発明における第2透明フィルムに相当するフィルムが用いられていなかったので、透明接着充填層を硬化させるときに印刷層の厚みに起因してその透明接着充填層に段差が発生していた。これに対し、本発明に係るディスプレイ装置用保護板では、透明接着充填層を第1透明フィルムと第2透明フィルムとで挟んだので、透明接着充填層を硬化させる時に当該透明接着充填層に段差が生じることを防止できる。
【0026】
本発明に係るディスプレイ装置用保護板の製造方法によれば、本発明に係るディスプレイ装置用保護板を安定して正確に製造できる。さらに、処理対象であるフィルム構造体をロール間で張力を作用させながら作業が行われるので、第1透明フィルム及び第2透明フィルムの厚さが0.3mm以下のように薄い場合でも、ディスプレイ装置用保護板を安定して正確に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るディスプレイ装置用保護板の一実施形態を示しており、(a)は縦断面図であり、(b)は平面図である。
【図2】本発明に係るディスプレイ装置用保護板の製造方法を実現できる製造装置を示す側面図である。
【図3】図2の製造装置の主要部分におけるフィルム構造体を平面的に示す図である。
【図4】従来のディスプレイ装置用保護板の一例を示す断面図である。
【図5】従来のディスプレイ装置用保護板の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(ディスプレイ装置用保護板の実施形態)
以下、本発明に係るディスプレイ装置用保護板を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0029】
図1は、本発明に係るディスプレイ装置用保護板の一実施形態の断面構造を示している。本実施形態に係るディスプレイ装置用保護板1は、第1透明フィルム2と、印刷層3と、高透明接着充填層4と、第2透明フィルム5と、OCA両面テープ層等といった透明粘着層6とを有している。第1透明フィルム2と印刷層3とは加飾印刷フィルム8を構成している。第2透明フィルム5と粘着層6とは粘着フィルムテープ9を構成している。ディスプレイ装置用保護板1は、粘着層6によってディスプレイ装置13の表示面上に貼着されている。
【0030】
ディスプレイ装置13は、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機EL装置等である。タッチパネルが付設される場合は、ディスプレイ装置13はタッチパネルを含んだ装置である。ディスプレイ装置13の表面には、光学フィルム、ガラス等が配置される。
【0031】
なお、本明細書において、接着充填層4は「接着充填材4」と呼ぶことがある。また、粘着層6は「粘着材6」と呼ぶことがある。また、OCA両面テープ層は、「OCA両面テープ」と呼ぶことがある。
【0032】
ディスプレイ装置用保護板1は、加飾印刷フィルム8と粘着フィルムテープ9とを接着充填材4によって貼り付けて一体化することによって形成されている。以上の構成の結果、接着充填層4は第1透明フィルム2と第2透明フィルム5とによって挟持されている。接着充填層4を形成している接着充填材4は光硬化性樹脂によって形成されている。
【0033】
第1透明フィルム2は、例えばポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートによって形成されている。印刷層3は、例えば、スクリーン印刷法により第1透明フィルム2の一方(図1の下方)の表面に印刷されている。印刷層3は、図1(b)に示すように平面的に見て、枠状に形成された黒色領域11と、黒色領域11によって囲まれた透明領域12とによって構成されている。ディスプレイ装置13の表示面に表示される画像は透明領域12を通して外部から視認される。
【0034】
印刷層3は、単層(すなわち1層)のこともあるし、複数層のこともある。印刷層3に模様が無かったり、模様が簡単だったりする場合には、印刷層3を単層とすることができる。また、印刷層3が複数色であったり、複雑な模様を有する場合には、印刷層3を複数層とすることができる。
【0035】
第2透明フィルム5の一方の表面に粘着材6が貼着されている。第2透明フィルム5は、例えばポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートによって形成されている。粘着材6は、粘着剤だけによって形成されていて基材を有していない無芯のテープである。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はポリエーテル系粘着剤が用いられる。
【0036】
本実施形態において、第1透明フィルム2及び第2透明フィルム5は薄く形成されている。一般に、フィルムがアクリル系樹脂やポリカーボネート等によって形成される場合には、そのフィルムの厚さは0.3mmを超える場合が多い。これに対し、本実施形態では、フィルム2及びフィルム5をポリエチレンテレフタレートによって形成することにより、それらのフィルム2,5の厚さを0.3mm以下、好ましくは0.2mm以下に設定している。ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、フィルムの厚さを0.3mm以下にすることは容易である。
【0037】
各要素の具体的な寸法は、例えば、次のように設定される。
第1透明フィルム2: 55μm
印刷層3: 20μm
接着充填層4(印刷層3から上の部分): 5μm
粘着フィルムテープ9: 35〜50μm
合計の厚さは、115〜130μmである。
これらの寸法から明らかなように、本実施形態のディスプレイ装置用保護板1は非常に薄く設定されており、それ故、保護板1を含めたディスプレイ装置13の全体の厚さが非常に薄くなっている。
【0038】
図5(a)に示した従来のディスプレイ装置用保護板111のように、接着樹脂層114を1つの透明フィルム112だけに貼着した場合には、図5(b)に符号D2で示すように表面張力に起因して段差が形成されてしまう。これに対し、図1(a)に示す本実施形態においては、接着充填層4の表裏両面が、それぞれ、第1透明フィルム2と第2透明フィルム5とに貼着された状態でそれらのフィルム2,5よって挟持されている。このため、印刷層3において印刷部分がある所と無い所とに対応して接着充填層4に段差が発生することが無くなった。そしてこれにより、ディスプレイ装置用保護板1に関して外観上の不良や、特性上の不良が発生することを防止でき、その結果、量産性を高く維持できるようになった。
【0039】
(ディスプレイ装置用保護板についてのその他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0040】
例えば、図1に示した実施形態では第1透明フィルム2をポリエチレンテレフタレートから成る1枚の樹脂フィルムとしたが、これに代えて、1枚の樹脂フィルムの表面にハードコート層が形成された状態のフィルムとすることもできる。
【0041】
上記実施形態では、第1透明フィルム2がフィルム単体であって、そのフィルム単体の厚さを55μmに設定した。しかしながら、第1透明フィルム2の厚さは0.3mm以下、好ましくは0.2mm以下の任意の値に設定することができる。第1透明フィルム2がハードコート層を含む場合は、ベース材料となるフィルムの厚さを0.3mm以下、好ましくは0.2mm以下に設定することができる。
【0042】
上記の実施形態では、第1透明フィルム2及び第2透明フィルム5をポリエチレンテレフタレートによって形成したが、これらのフィルム2,5は、厚さを薄く形成できること及び接着充填材4との貼着性が良好であることの要件を充足できる材料であれば、ポリエチレンテレフタレート以外のプラスチックを適用できる。
【0043】
(ディスプレイ装置用保護板の製造方法の実施形態)
次に、図1に示したディスプレイ装置用保護板1を製造するための製造方法について説明する。図2はその製造方法を実現するための製造装置の一実施形態を模式的に示している。
【0044】
この製造装置は、加飾印刷フィルムの繰出しステージ16と、透明接着充填材の塗布ステージ17と、粘着フィルムテープの繰出しステージ18と、フィルム貼合せステージ19と、透明接着充填材の硬化ステージ20と、そしてフィルム巻取りステージ21といった各ステージを有している。
【0045】
加飾印刷フィルムの繰出しステージ16には、ロール状に巻き取られている加飾印刷フィルム8が置かれている。加飾印刷フィルム8は、図1(a)に示したように、ポリエチレンテレフタレート等から成る第1透明フィルム2に印刷層3が形成されたフィルムである。ロール状の加飾印刷フィルム8は、例えば、ロール状の第1透明フィルム2から当該第1透明フィルム2を直線的に繰り出し、その直線状の第1透明フィルム2に対してスクリーン印刷を施して印刷層3を形成して加飾印刷フィルム8を形成し、その加飾印刷フィルム8をロール状に巻き取ることによって形成できる。
【0046】
透明接着充填材の塗布ステージ17には、光硬化性樹脂である透明接着充填材4を貯留したタンク24と、第1転写ロール25と、第2転写ロール26と、送りロール27といった各構成要素が含まれている。第1転写ロール25の周囲の適所には、その第1転写ロール25の外周面に取り出される接着充填材の厚さを規制するためのドクターブレード28が設けられている。第2転写ロール26と送りロール27との間隔K1は投入する加飾印刷フィルムの最厚部に対しプラス10μm〜100μmに設定されている。
【0047】
粘着フィルムテープの繰出しステージ18には、ロール状に巻き取られている粘着フィルムテープ9が置かれている。粘着フィルムテープ9は、図1(a)に示したように、ポリエチレンテレフタレート等から成る第2透明フィルム5の片面に粘着層6が形成された透明粘着フィルムテープである。
【0048】
フィルム貼合せステージ19には、第1レべリングロール31と、第2レべリングロール32とが設けられている。第1レベリングロール31と第2レベリングロール32との間隔K2は、投入材料の全てを足した最厚部よりも低く設定されている。ロール状の粘着フィルムテープ9から繰り出された粘着フィルムテープ9が第1レベリングロール31の外周面に巻かれている。
【0049】
透明接着充填材の硬化ステージ20には、照明装置、具体的にはランプ、より具体的にはUV(紫外線)ランプ33が設けられている。フィルム巻取りステージ21には巻取りロール34が設けられている。UVランプ33からの光照射を受けて接着充填材4が硬化したフィルム構造体、すなわちディスプレイ装置用保護板1が巻取りロール34によってロール状に巻き取られる。
【0050】
以上から明らかなように、本実施形態の製造方法では、ロール状のフィルム素材8及びロール状のフィルム素材9のそれぞれから繰り出されたフィルムが所定の処理を受けた後に巻取りロール34に巻き取られるという、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式の搬送構造に従ってフィルム素材が搬送される。
【0051】
以下、上記構成のディスプレイ装置用保護板の製造装置の動作について説明する。なお、図3の(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ、図2において矢印A,B,C,Dで示す部分におけるフィルム構造体の平面的な構成を示している。以下の説明においては、必要に応じて図3を参照する。
【0052】
図2の部分Aにおいて、ロール状の加飾印刷フィルム8から加飾印刷フィルム8が直線状に繰り出される(図3(A)参照)。繰り出された加飾印刷フィルム8の印刷層3側の表面に第2転写ロール26によって透明接着充填材4をコーティング、すなわち塗布する(図2の部分B:図3(B)参照)。これにより、印刷層3によって第1透明フィルム2の面上に形成されている段差に透明接着充填材4が充填される。透明接着充填材4の塗布高さは、ロール間間隔K1によって一定に管理される。
【0053】
その後、加飾印刷フィルム8はフィルム貼合せステージ19へ搬送される。フィルム貼合せステージ19では、粘着フィルムテープの繰出しステージ18から送り出された粘着フィルムテープ9が、第1レベリングロール31と第2レベリングロール32との協働によって、加飾印刷フィルム8の透明接着充填材4側の面上に貼着、すなわちラミネートされる(図2の部分C;図3(C)参照)。このときのフィルム全体の厚さは、ロール間間隔K2のラミネート圧によって一定に管理される。
【0054】
以上のようにして形成された積層フィルム体は、次に、透明接着充填材の硬化ステージ20にへ搬送される。この硬化ステージ20において、UVランプ33から発光された紫外線が粘着フィルムテープ9側から積層フィルム体へ照射される。これにより、透明接着充填材4が硬化し、加飾印刷フィルム8と粘着フィルムテープ9とが一体化する。これにより、ディスプレイ装置用保護板1が形成され(図2の部分D:図3(D)参照)。こうして形成された保護板1は巻取りロール34に巻き取られる。なお、粘着フィルムテープ9の粘着材6の外側表面にはセパレータ、すなわち剥離フィルムが貼着されている。
【0055】
以上の処理において、透明接着充填材4は、第2転写ロール26すなわちロールコータにて印刷層3を平面的に覆える程度の量だけ印刷層3の平面領域内の中央部にコーティングされる。そしてその後、透明接着充填材4は、一定の間隔K2で対向している第1レベリングロール31と第2レベリングロール32とによって、加飾印刷フィルム8及び粘着フィルムテープ9を介して押し付けられる。これにより、透明接着充填材4は中央部から外側へと押し出され、その結果、透明接着充填材4は可能な限り薄く形成される。
【0056】
本実施形態では、フィルム貼合せステージ19によって各層をラミネートした直後に、樹脂硬化ステージ20においてUV照射によって透明接着充填材4を硬化させるようにしたので、量産性及び安定性が向上した。
【0057】
本実施形態では、ロール・ツー・ロール方式でフィルムを搬送するようにしたので、透明接着充填材4のコーティング、各フィルム要素のラミネート、フィルム構造体の厚さ調整、及び透明接着充填材4の硬化処理の一連の処理を1ライン上にて行うことができ、しかも各種の処理を行っている最中にフィルム構造体に適切な張力を付与することができ、それ故、異物や気泡の発生を防ぐことができる。
【0058】
本実施形態では、第1レベリングロール31と第2レベリングロール32とによる、厚さK2(図2参照)の間隔調整と圧力調整とにより、各構成要素の材料に厚みのバラつきがあっても、第1レベリングロール31と第2レベリングロール32とを通過した後のディスプレイ装置用保護板1の総厚を一定に管理することが可能であり、その結果、安定した性能のディスプレイ装置用保護板1の製造が可能となった。
【0059】
本実施形態では、ディスプレイ装置13の表面に貼り付けられる粘着材6においても、予め第2透明フィルム5に粘着剤を塗布して粘着フィルムテープ9として構成されているため、粘着層6の厚さや粘度を抑制でき、その結果、粘着層6の端面からのはみ出しや塵、ごみ等の付着を効果的に抑えることが可能となった。
【0060】
従来のディスプレイ装置用保護板においては粘着フィルムテープ9が用いられていなかった。そのため、透明接着充填材4が硬化するまでの間に透明接着充填材4の粘度に起因して表面張力が作用して、印刷層3内で印刷がされた部分と印刷がされていない部分とに対応して接着充填材4に段差が生じることがあった。これに対し、本実施形態では、透明接着充填材4がUV照射によって硬化する間、その接着充填材4は粘着フィルムテープ9内の第2透明フィルム5に粘着して支持されているので、接着充填材4に段差が生じることが無い。このため、接着充填材4を薄くしても段差の発生を防止できる。
【0061】
また、従来のディスプレイ装置用保護板においては、透明接着充填材4に段差が生じることを防止するためにその透明接着充填材4の厚さを厚くする必要があった。顧客のニーズに対応するために印刷層3の印刷部分の高さをさらに一層高くする必要がある場合には、段差の発生を防止するために透明接着充填材4の高さをさらに一層高くしなければならず、この場合には、ディスプレイ装置用保護板1の厚さがさらに一層厚くなり、薄型化の要求に応えることができなかった。これに対し、本実施形態では、粘着フィルムテープ9内の第2透明フィルム5によって接着充填材4を支持したので、接着充填材4に段差が生じることを防止でき、その結果、接着充填材4の厚さを薄く形成できるようになった。そしてその結果、加飾印刷フィルム8従ってディスプレイ装置用保護板1を薄くすることが可能となった。
【0062】
(ディスプレイ装置用保護板の製造方法のその他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明の製造方法を説明したが、本発明の製造方法はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【符号の説明】
【0063】
1.ディスプレイ装置用保護板、 2.第1透明フィルム、 3.印刷層、 4.透明接着充填材(透明接着充填層)、 5.第2透明フィルム、 6.透明粘着層、 8.加飾印刷フィルム、 9.粘着フィルムテープ、 11.黒色領域、 12.透明領域、 13.ディスプレイ装置、 16.加飾印刷フィルムの繰出しステージ、 17.透明接着充填材の塗布ステージ、 18.粘着フィルムテープの繰出しステージ、 19.フィルム貼合せステージ、 20.透明接着充填材の硬化ステージ、 21.フィルム巻取りステージ、 24.タンク、 25.第1転写ロール、 26.第2転写ロール、 27.送りロール、 28.ドクターブレード、 31.第1レべリングロール、 32.第2レべリングロール、 33.UVランプ、 34.巻取りロール、 D1,D2.段差、 K1,K2.ロール間間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ装置の表示面を保護する保護板であって、
第1透明フィルムと、
当該第1透明フィルムの一方の面上に形成された印刷層と、
前記第1透明フィルムの前記一方の面上に前記印刷層を覆うように形成された透明接着充填層と、
当該透明接着充填層の前記第1透明フィルムと反対側の面上に貼着された第2透明フィルムと、
当該第2透明フィルムの前記透明接着充填層と反対側の面上に形成された透明粘着層と、
を有することを特徴とするディスプレイ装置用保護板。
【請求項2】
前記透明接着充填層は光硬化性樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置用保護板。
【請求項3】
前記第1透明フィルム及び前記第2透明フィルムはポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のディスプレイ装置用保護板。
【請求項4】
前記第1透明フィルム及び前記第2透明フィルムはポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項3記載のディスプレイ装置用保護板。
【請求項5】
ディスプレイ装置の表示面を保護する保護板を製造するための製造方法であって、
第1透明フィルム上に印刷層を形成して成る加飾印刷フィルムをロール状に巻かれた状態から引き出し、
第2透明フィルム上に透明粘着層を形成して成る粘着フィルムテープをロール状に巻かれた状態から引き出し、
引き出された前記加飾印刷フィルムと、引き出された前記粘着フィルムテープとを透明接着充填材によって貼り合わせ、
その貼り合わせ後に前記透明接着充填材を硬化させて保護板を形成し、
当該保護板をロール状に巻き取る
ことを特徴とするディスプレイ装置用保護板の製造方法。
【請求項6】
前記透明接着充填材は光硬化性樹脂であり、前記透明接着充填材の硬化は光の照射によって行われることを特徴とする請求項5記載のディスプレイ装置用保護板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−11699(P2013−11699A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143493(P2011−143493)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(592091220)株式会社コスモテック (13)
【出願人】(591134465)株式会社サンパック (6)
【出願人】(591124374)千代田インテグレ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】