説明

ディフューザ

【課題】流れの剥離を抑制して圧力損失を最小限に抑え、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができるディフューザを提供する。
【解決手段】ディフューザ10は、入口11近傍の内壁面に、気流を周方向に取り囲むように気流発生装置40が配置されている。気流発生装置40は、流路の内壁の所定位置に配置され、固体からなる誘電体および誘電体を介して離間して配置された一対の電極から構成される気流発生部と、一対の電極間に電圧を印加可能な放電用電源とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路断面が徐々に増加するディフューザに関し、特に、流路内における流れを制御可能なディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
ディフューザは、流体の運動エネルギを圧力エネルギに変換する装置であり、流路出口に向かって流路断面が徐々に増加する広がり管である。ディフューザの役割は、最小限の圧力損失で流体を通過させ、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことにある。通常、ディフューザは、流路断面積が小さな配管と流路断面積が大きな配管とを接続する際に、急激な流路断面積の増大による圧力損失を抑制するために、流路断面積が小さな配管と流路断面積が大きな配管との間に介在される。
【0003】
このようにディフューザを介在させる場合、ディフューザの広がり角度が10度程度に小さく構成されているときには、圧力損失を最小限に抑え、ディフューザとしての機能を十分に発揮することができるが、所望の流路断面積まで拡大するのにディフューザを長くする必要があり、広い設置スペースを必要とする。一方、ディフューザの広がり角度を上記角度よりも大きくすると、ディフューザの長さは短くすることができるが、流れが壁面から剥離することにより圧力損失が増加し、さらに流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができず、ディフューザとしての機能を十分に発揮することができない。
【0004】
そこで、ディフューザの壁面に沿って噴流を強制的に供給し、この二次的な流れによって、全体の流れパターンを変えて流れの剥離を遅らせ、さらにコア流れを壁面方向に広げてより大きな静圧回復を図った技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−162715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の圧力損失を抑制する技術では、ディフューザの壁面に沿って噴流を供給しなければならず、これを実現する装置が煩雑になり、さらに装置が高価になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、流れの剥離を抑制して圧力損失を最小限に抑え、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができるディフューザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、主流方向に徐々に流路の断面積が増加するディフューザであって、前記流路の内壁の所定位置に配置され、固体からなる誘電体および当該誘電体を介して離間して配置された一対の電極から構成される気流発生部と、前記一対の電極間に電圧を印加可能な電圧印加機構とを具備することを特徴とするディフューザが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のディフューザによれば、流れの剥離を抑制して圧力損失を最小限に抑え、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のディフューザを備えた流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態のディフューザを備えた他の流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。
【図3】誘電体バリア放電により気流を発生させる気流発生装置を模式的に示した斜視図である。
【図4】図3のA−A断面を示した図である。
【図5】複数の電極を設ける場合における、誘電体バリア放電により気流を発生させる気流発生装置の断面を模式的に示した図である。
【図6】誘電体バリア放電により気流を発生させる気流発生装置の断面を模式的に示した図である。
【図7】コロナ放電により気流を発生させる気流発生装置の断面を模式的に示した図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態のディフューザに係り、他の形状のディフューザを備えた流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態のディフューザを備えた流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態のディフューザ10を備えた流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。図2は、本発明に係る第1の実施の形態のディフューザ10を備えた他の流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。図3は、誘電体バリア放電により気流を発生させる気流発生装置40を模式的に示した斜視図である。図4は、図3のA−A断面を示した図である。図5は、複数の電極42を設ける場合における、誘電体バリア放電により気流を発生させる気流発生装置40の断面を模式的に示した図である。図6は、誘電体バリア放電により気流を発生させる気流発生装置40の断面を模式的に示した図である。図7は、コロナ放電により気流を発生させる気流発生装置40の断面を模式的に示した図である。図8は、本発明に係る第1の実施の形態のディフューザに係り、他の形状のディフューザ70を備えた流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。
【0013】
図1に示すように、第1の実施の形態のディフューザ10は、小断面積の上流側流送管20と大断面積の下流側流送管30との間を連結し、主流方向すなわち下流側流送管30方向に、徐々に流路断面積を増加させている。また、ディフューザ10内であって、ディフューザ10の入口11近傍の内壁面には、気流を周方向に取り囲むように気流発生装置40が配置されている。この気流発生装置40は、ディフューザ10の入口11近傍における内壁面の周方向に所定の間隔をあけて複数配置されることが好ましい。このように、ディフューザ10の入口11近傍の内壁面に気流発生装置40を配置することで、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができる。なお、本発明に係るディフューザ10に導かれる流体は気体である。また、ディフューザ10の流路断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形、矩形などで構成される。
【0014】
また、下流側流送管30を備えない場合には、下流側流送管30を有する場合に比べて、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことが困難となる。しかしながら、このような場合には、図2に示すように、ディフューザ10内であって、ディフューザ10の出口12近傍における内壁面の周方向に所定の間隔をおいて気流発生装置40を複数配置することが好ましい。これによって、下流側流送管30を備えない場合においても、流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことが可能となる。なお、この場合、ディフューザ10の出口12近傍に気流発生装置40を配置することで、ディフューザ10の出口12の流路断面において十分に一様に分布した流れが得られる場合には、ディフューザ10の入口11近傍に気流発生装置40が配置しなくてもよい。
【0015】
ここで、ディフューザ10の入口11近傍および出口12近傍に配置する気流発生装置40は、内壁面の周方向に所定の間隔をおいて、かつ主流方向に複数段配置してもよい。
【0016】
また、気流発生装置40は、流れの剥離が発生する位置または流れの剥離が発生する位置の近傍でかつ上流側の位置に対応する内壁面にさらに配置してもよい。このように気流発生装置40を配置することで、流れの剥離を抑制することができ、ディフューザ10内における圧力損失を抑制することができる。
【0017】
ここで、気流発生装置40の構成について説明する。
【0018】
まず、誘電体バリア放電を生じさせて気流を発生させる気流発生装置40について説明する。
【0019】
図3および図4に示すように、気流発生装置40は、誘電体41の表面と同一面に露出された電極42と、この電極42と誘電体41の表面からの距離を異にし、かつ誘電体41の表面と水平な方向にずらして離間され、誘電体41内に埋没された電極43と、ケーブル44を介して電極42、43間に電圧を印加する放電用電源45とを備えている。
【0020】
誘電体41は、公知な固体の誘電材料で構成される。誘電体41を構成する材料として具体的には、電気的絶縁材料である、例えば、アルミナ、ガラス、マイカ、シリコン・ゴム、テフロン(登録商標)などの無機絶縁物、ポリイミド、エポキシなどの有機絶縁物などが挙げられるが、これらに限られるものではなく、気流発生装置40が使用される環境下において公知な固体の誘電材料から適宜に選択される。
【0021】
電極42、43は、棒状や板状等の導電性材料で構成され、例えば、銅板等で構成される。電極42、43として銅板を用いることで、電極42、43の厚さを薄くすることができ、電極42、43および誘電体41で構成される気流発生部の厚さを数百μm以下に構成することが容易に可能となる。このように、電極42、43および誘電体41で構成される気流発生部の厚さを薄くすることができるので、気流発生部は、ディフューザ10の内壁面上に設置されても、流れに影響を及ぼすことはない。なお、図1および図2に示すように、気流発生部の厚さに対応してディフューザ10の内壁面に凹部を設け、この凹部に気流発生部を設置し、気流発生部がディフューザ10の内壁面と同一面に露出されるように配置されることがより好ましい。また、図4に示した気流発生装置40では、電極42を誘電体41の表面と同一面に露出するように構成されているが、電極42の厚さを薄くすることができるので、例えば、電極42を誘電体41の表面上に配置してもよい。
【0022】
放電用電源45は、電圧印加機構として機能し、電極42、43間に電圧を印加するものである。放電用電源45からは、例えば、正極性および/または負極性の電圧を断続的に出力するパルス状の出力電圧、正極性および負極性のパルス状の電圧を交互に出力する交番電圧、交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する出力電圧などが出力される。また、放電用電源45は、例えば、出力電圧に強弱をつけて出力するなど、電圧値を調整しながら電極42、43間に電圧を印加してもよい。具体的には、例えば、所定のデューティー比で正極性および負極性の電圧を交互に断続的に出力する際、初めから2パルスは高出力とし、それに続く2パルスをその半分の出力とし、この高出力の2パルスとその半分の出力の2パルスの組み合わせを繰り返し印加する制御などが挙げられる。なお、これに限られるものではなく、電圧の制御は、使用条件や用途などに応じて適宜に設定可能である。
【0023】
ここで、1つの気流発生装置40に複数の電極42を配置して、複数の気流発生部を構成する場合には、図5に示すように、電極43を複数の電極42に対応する位置まで広範囲に延設し、電極42の気流を発生させない側の端縁部を誘電体46で覆って構成してもよい。これによって、誘電体46で覆われた側の端縁部では、誘電体バリア放電を生じず、他方の電極42の端縁部でのみ誘電体バリア放電が発生し、気流を発生させることができる。なお、誘電体46は、上記した誘電体41を構成する材料と同一の材料で構成される。
【0024】
また、図6に示すように、気流発生装置40は、誘電体41内に埋設された電極42と、この電極42と誘電体41の表面からの距離を同じにし、かつ誘電体41の表面と水平な方向にずらして離間され、誘電体41内に埋設された電極43と、ケーブル44を介して電極42、43間に電圧を印加する放電用電源45とを備えてもよい。ここで、電極42と電極43とは、断面形状が異なるように構成されている。このように、断面形状の異なる電極42、電極43を用いることで、双方の電極42、43が誘電体41の表面から同じ距離に配置されても、一方の方向のみに気流を発生させることができる。なお、電極42および電極43は、それぞれ断面形状が異なるように構成されていればよく、図6に示す電極形状に限られるものではない。
【0025】
ここで、上記した誘電体バリア放電を生じさせて気流を発生させる気流発生装置40によって気流が発生する現象について、図4を参照して説明する。
【0026】
放電用電源45から電極42と電極43との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、電極42と電極43との間に放電が発生する。気流発生装置40では、電極42と電極43との間に誘電体41を介在させているので、いわゆる誘電体バリア放電が発生する。この放電によって生成された電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。すなわち、電極間に電圧を印加することで電極付近に気流50を発生させることができる。この気流50の大きさや向きは、電極に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティー比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。誘電体バリア放電は、高温下や含塵環境下においても安定であるから、本実施の形態に係るディフューザの動作も安定に行うことができる。
【0027】
なお、上記したような誘電体バリア放電においては、電極42、43間に直流電圧を印加すると、放電の進展とともに誘電体41の表面に電荷が蓄積して電極42、43間の電界が緩和され、最終的には電界が空間の電離を維持できなくなり、放電が停止するため、電極42、43間に、パルス状の正負の両極性電圧である交番電圧や交流電圧を印加する必要がある。このように電極42、43間に交番電圧または交流電圧を印加することで、持続的に誘電体バリア放電を行うことが可能となる。
【0028】
次に、コロナ放電を生じさせて気流を発生させる気流発生装置40について説明する。
【0029】
図7に示すように、気流発生装置40は、誘電体60の表面に配置された電極61と、この電極61に所定の距離をあけて対向させて誘電体60の表面に配置された電極62と、ケーブル44を介して電極61、62間に電圧を印加する放電用電源45とを備えている。
【0030】
なお、誘電体60、電極61、62は、前述した誘電体41、電極42、43と同じ材料で構成される。また、放電開始電圧を下げるために、電極61および電極62の少なくとも一方の電極は、他方の電極に向かって鋭角に突出していることが好ましい。また、電極61、62は、誘電体60の表面と同一面に露出するように配置されてもよい。
【0031】
ここで、上記したコロナ放電を生じさせて気流を発生させる気流発生装置40によって気流が発生する現象について、図7を参照して説明する。
【0032】
放電用電源45から電極61と電極62との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、電極61と電極62との間に放電が発生する。放電は、初期においては、電極近傍だけに電離領域が限定されたコロナ放電となる。電極61と電極62との形状等が同一でない場合には、一方の電極のみにコロナ放電が発生することもある。
【0033】
放電用電源45からの電圧をさらに増加させていくと、双方の電極間を短絡させるアーク放電に移行する。アーク放電下では、気流発生用の電極や絶縁材の熱的な損傷が大きくなるので、この領域に遷移しない電圧を印可することが好ましい。
【0034】
コロナ放電が生じている状態では、電極近傍で電離によって生じた電子またはイオンは、対向する電極との間に形成されている電界によって加速される。この電子またはイオンが気体分子に衝突することで運動量が気体分子に移行する。すなわち、電極間に電圧を印加することで電極付近に気流50を発生させることができる。この気流50の大きさや向きは、電極に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティー比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。
【0035】
上記したような大気圧下におけるコロナ放電においては、電極表面への電荷の蓄積は考慮しなくてよいので、電極61、62間に直流電圧を印加することが好適であるが、交流電圧を印加しても気流誘起現象は実現可能である。
【0036】
次に、図1に示した、上記した気流発生装置40を備えたディフューザ10内における流体の流れについて説明する。
【0037】
ディフューザ10は、流体の運動エネルギを圧力エネルギに変換するものであり、ディフューザ10おいて、流路断面全体に亘ってこの圧力エネルギへの変換が均一に行われること、すなわち、流路断面全体に流れを広げ、かつ流路断面に垂直な方向の速度分布を均一にすることが望まれている。しかしながら、ディフューザ10の広がり角度によっては、中心軸上にコア流れが形成され、その外側に再循環流が形成されることがあり、流路断面全体に流れを広げ、かつ流路断面に垂直な方向の速度分布を均一にすることが困難な場合がある。また、ディフューザ10内の内壁面付近の流れは、内壁面との摩擦により次第に速度エネルギを失い、ついには停止することがある。その後は圧力の逆勾配による逆流によって、内壁面から流れが剥離して圧力損失が発生する。
【0038】
そこで、本発明に係るディフューザ10では、ディフューザ10の入口11近傍の内壁に気流発生装置40を配置し、ディフューザ10の入口11近傍において、気流発生装置40によって発生した気流によって、ディフューザ10に流入した気体の流れをディフューザ10の内壁面方向に広げている。具体的には、図1に示すように、気流発生装置40によってディフューザ10の入口11近傍の内壁面に沿って、気流50を発生させることで、この気流50が流体F1を流引し、流体F1の流れを内壁面方向に広げ、ディフューザ10の内壁面に沿う流体F1の流れを形成する。なお、図2に示すように、ディフューザ10の出口12近傍の内壁面に気流発生装置40を配置した場合においても、ディフューザ10の入口11近傍の内壁面に気流発生装置40を配置した場合と同様に、流体F1の流れを内壁面方向に広げ、ディフューザ10の内壁面に沿う流体F1の流れを形成する。
【0039】
また、ディフューザ10の広がり角、断面形状、入口11および出口12の面積比等の仕様に応じて、流れの剥離が発生する位置または流れの剥離が発生する位置の近傍でかつ上流側の位置に対応する内壁に気流発生装置40を配置することが好ましい。これによって、流れの剥離の発生原因となる圧力の逆勾配による逆流の形成を抑制し、流れの剥離による圧力損失を抑制することができる。
【0040】
ここで、ディフューザの形状は、上記した以外にも、例えば図8に示すように、ディフューザ70の入口71から徐々に湾曲しつつ主流方向に、徐々に流路断面積が増加する形状のディフューザ70も存在する。この形状を有するディフューザ70では、特に湾曲部における流体の剥離が生じやすい。そこで、このディフューザ70では、図8に示すように、湾曲部付近の、流れの剥離が発生する位置または流れの剥離が発生する位置の近傍でかつ上流側の位置に気流発生装置40を配置することが好ましい。これによって、湾曲部における流れの剥離が抑制され、ディフューザ70内における圧力損失を抑制することができる。なお、このディフューザ70においても、上記したディフューザ10と同様に、ディフューザ70内であって、ディフューザ70の入口71近傍や出口近傍の内壁に気流発生装置40を配置し、ディフューザ70の入口71近傍や出口近傍において、ディフューザ70に流入した流れをディフューザ70の内壁面方向に広げるように構成してもよい。
【0041】
上記したように、第1の実施の形態のディフューザ10によれば、ディフューザ10の入口11近傍や出口12近傍の内壁に気流発生装置40を配置し、気流発生装置40によって発生した気流によって、ディフューザ10に流入した流れをディフューザ10の内壁面方向に広げることができる。これによって、ディフューザ10内における流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができ、ディフューザとしての機能を十分に発揮することができる。
【0042】
また、第1の実施の形態のディフューザ10によれば、ディフューザ10の広がり角、断面形状、入口11および出口12の面積比等の仕様に応じて、流れの剥離が発生する位置または流れの剥離が発生する位置の近傍でかつ上流側の位置に対応する内壁に気流発生装置40を配置して気流を発生させることで、流れの剥離の発生原因となる圧力の逆勾配による逆流の形成を抑制することができる。これによって、流れの剥離による圧力損失を抑制することができ、ディフューザとしての機能を十分に発揮することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明に係る第2の実施の形態のディフューザ100を備えた流路の主流方向に沿う断面を模式的に示した図である。なお、第1の実施の形態のディフューザ10と同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0044】
図9に示すように、第2の実施の形態のディフューザ100は、入口102が小断面積の上流側流送管110と連結し、主流方向、すなわち出口方向に、徐々に流路断面積が増加するディフューザ本体101と、このディフューザ本体101の入口102のすぐ下流側からディフューザ本体101の出口103にかけて、ディフューザ本体101の中心軸を中心として外側に広がる方向に設置された複数の案内筒104と、この案内筒104によって区切られて形成された複数の各流路105の内壁面の所定位置に配置された気流発生装置40とを備えている。また、この案内筒104によって区切られて形成された複数の各流路105は、流路断面積が各流路105における主流方向に徐々に増加するように構成されている。
【0045】
ここでは、2つの案内筒104によりディフューザ本体101内を区切って、3つの流路を形成した一例を示しているが、1つの案内筒104によりディフューザ本体101内を区切っても、3つ以上の案内筒104によりディフューザ本体101内を区切ってもよい。また、案内筒104のディフューザ本体101の入口102側の端部は、流路105の入口106における圧力損失を抑制するために、鋭角に形成されることが好ましい。
【0046】
一般に、ディフューザ本体内を案内筒により区切って複数の流路を形成するディフューザは、各流路の出口において流路断面に垂直な方向の速度分布をほぼ均一にすることを狙って構成されている。しかしながら、第1の実施の形態のディフューザ10の場合と同様に、各流路では、各流路の中央における速度が大きくなり、その外側に再循環流が形成されることがあり、流路断面全体に流れを広げ、かつ流路断面に垂直な方向の速度分布を均一にすることが困難な場合がある。また、流路を形成する内壁面付近の流れは、内壁面との摩擦により次第に速度エネルギを失い、ついには停止することがある。その後は圧力の逆勾配による逆流によって、内壁面から流れが剥離して圧力損失が発生する。
【0047】
そこで、本発明に係るディフューザ100では、各流路105の入口106近傍の内壁に気流発生装置40を配置し、各流路105の入口106近傍において、気流発生装置40によって発生した気流によって、各流路105に流入した気体の流れを各流路105の内壁面方向に広げている。具体的には、図9に示すように、気流発生装置40によって各流路105の入口106近傍の内壁面に沿って、気流50を発生させることで、この気流50が流体F1を流引し、流体F1の流れを内壁面方向に広げ、各流路105の内壁面に沿う流体F1の流れを形成する。
【0048】
なお、各流路105の出口103近傍の内壁に気流発生装置40を配置してもよい。このように、各流路105の出口103近傍の内壁に気流発生装置40を配置した場合においても、各流路105の入口106近傍の内壁に気流発生装置40を配置した場合と同様に、流体F1の流れを内壁面方向に広げ、各流路105の内壁面に沿う流体F1の流れを形成する。
【0049】
また、各流路105の断面形状、入口106および出口103の面積比等の仕様に応じて、流れの剥離が発生する位置または流れの剥離が発生する位置の近傍でかつ上流側の位置に対応する内壁に気流発生装置40を配置することが好ましい。これによって、流れの剥離の発生原因となる圧力の逆勾配による逆流の形成を抑制し、流れの剥離による圧力損失を抑制することができる。
【0050】
上記したように、第2の実施の形態のディフューザ100によれば、案内筒104によって区切られた各流路105の入口106近傍や出口103近傍の内壁に気流発生装置40を配置し、気流発生装置40によって発生した気流によって、各流路105に流入した流れを各流路105の内壁面方向に広げることができる。これによって、各流路105における流れを流路断面において一様に分布させた状態で下流側へ導くことができ、ディフューザとしての機能を十分に発揮することができる。
【0051】
また、第2の実施の形態のディフューザ100によれば、各流路105の断面形状、入口106および出口103の面積比等の仕様に応じて、流れの剥離が発生する位置または流れの剥離が発生する位置の近傍でかつ上流側の位置に対応する内壁に気流発生装置40を配置して気流を発生させることで、流れの剥離の発生原因となる圧力の逆勾配による逆流の形成を抑制することができる。これによって、流れの剥離による圧力損失を抑制することができ、ディフューザとしての機能を十分に発揮することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…ディフューザ、11…入口、12…出口、20…上流側流送管、30…下流側流送管、40…気流発生装置、41…誘電体、42,43…電極、44…ケーブル、45…放電用電源、50…気流、F1…流体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流方向に徐々に流路の断面積が増加するディフューザであって、
前記流路の内壁の所定位置に配置され、固体からなる誘電体および当該誘電体を介して離間して配置された一対の電極から構成される気流発生部と、
前記一対の電極間に電圧を印加可能な電圧印加機構と
を具備することを特徴とするディフューザ。
【請求項2】
前記電極のうち、少なくとも一方の電極が、前記内壁の表面との間に誘電体を介在して配置されていることを特徴とする請求項1記載のディフューザ。
【請求項3】
前記気流発生部が、前記所定位置における流路の内壁の周方向に、所定の間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のディフューザ。
【請求項4】
前記所定位置が、流れの剥離が発生する位置、または流れの剥離が発生する位置の近傍かつ上流側であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のディフューザ。
【請求項5】
前記所定位置が、ディフューザ内であって、ディフューザの入口近傍および/またはディフューザの出口近傍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のディフューザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−231928(P2011−231928A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99472(P2011−99472)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【分割の表示】特願2007−194550(P2007−194550)の分割
【原出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】