説明

ディーゼル機関用低粘性燃料油組成物

【課題】 特定の化合物を特定量配合させることにより、エーテル系化合物の低粘度・低潤滑性を補い、燃料噴射系の摩耗・焼き付きを防止し、かつプランジャのクリアランスへの固着もなく、再溶解性しやすい性質を併せ持つディーゼル機関用低粘性燃料油組成物を提供する。
【解決手段】 沸点が90℃以下で、かつ30℃動粘度が0.7mm/s以下であるエーテル系化合物に、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸およびカルボン酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を10〜1000mg/L配合して成るディーゼル機関用低粘性燃料油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に関し、詳細には、ディーゼルエンジンの摩耗・焼き付き防止、固着防止に効果があり、また再溶解性を可能とする特定の化合物を配合したディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境的見地から、内燃機関、特にディーゼルエンジンにおいては排出ガス中の粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)といった環境汚染物質の排出量の大幅な低減が求められている。このために、エンジンの改良、燃料噴射制御の精密化とともに、酸化触媒、NOx還元触媒、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)等の後処理装置の採用等によるディーゼルエンジンの排出ガスのクリーン化が進められている。
一方、排出ガスのクリーン化において従来使用されていた燃料以外からの対策として、低粘性化合物、例えばエーテル系化合物、特にジメチルエーテル(DME)に適したディーゼルエンジンの開発が挙げられる。DMEをディーゼルエンジンに適用した場合、含酸素燃料であるためにスモークが発生しない、セタン価が高く圧縮着火が容易、硫黄分を含まないのでEGRによるNOx低減が容易かつ触媒被毒が起きにくい、また、液化しやすいのでハンドリングが良好等の長所を有する(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、エーテル系化合物のような低粘性化合物は粘性が低いため、ディーゼルエンジンに供給した際には、プランジャのクリアランスなどから低粘性化合物のリークが多い、燃料噴射系の摩耗・焼き付きが発生しやすい等の課題がある。
【非特許文献1】小田、遠藤 外,「DMEディーゼルエンジンの噴霧形成特性と燃焼特性」,第17回内燃機関シンポジウム,2002年,p.29
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、エーテル系化合物をはじめとする低粘性化合物において、ディーゼル機関用燃料噴射系の摩耗・焼き付きを防止し、かつプランジャのクリアランスの固着もなく、再溶解が可能な特定の化合物を配合したディーゼル機関用低粘性燃料油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下で規定する特定のエーテル系化合物に、特定のカルボン酸ユニットを有する化合物を配合させることにより、潤滑性に優れ、かつ耐摩耗性、再溶解性に優れた低粘性燃料油組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物は、燃料供給ラインやプランジャ部分に潤滑性を必要とするディーゼルエンジンを対象として使用することが好ましい。
【0005】
すなわち、本発明は、沸点が90℃以下で、かつ30℃動粘度が0.7mm/s以下であるエーテル系化合物に、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸およびカルボン酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を10〜1000mg/L配合して成るディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に関する。
また本発明は、前記エーテル系化合物が、ジメチルエーテル(DME)、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)およびエチル−tert−ブチルエーテル(ETBE)から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする前記記載のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に関する。
また本発明は、前記カルボン酸ユニットの炭素鎖が直鎖炭化水素基であることを特徴とする前記記載のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に関する。
また本発明は、前記カルボン酸アルキルエステルがカルボン酸メチルエステルであることを特徴とする前記記載のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に関する。
【0006】
以下、本発明の内容をさらに詳細に説明する。
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に用いられるエーテル系化合物は、沸点が90℃以下で、かつ30℃動粘度が0.7mm/s以下のエーテル系化合物である。
このようなエーテル系化合物からなる低粘性の燃料油基材は、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)等の排出ガス中の環境汚染物質を低減することには有効である。しかしながら、かかる化合物は、粘性が低く、単独では潤滑性に乏しいため、燃料噴射系の摩耗・焼き付き・プランジャのクリアランスの固着等、エンジン面における耐久性の点で問題を有している。本発明では、特定の化合物を配合することにより、かかる問題点を解消することができる。
なお、沸点は溶剤ポケットブック(有機合成化学協会編集,オーム社発行,1997年,48頁)に記載されている蒸気圧測定法により測定される値であり、30℃動粘度は、Physical and Thermodynamic Properties of Pure Chemicals Data Compilation(Taylor&Fransis,1993年)のPartI(Page V−I)に記載の計算式およびPartI〜IIIに記載のパラメータを用いて求められた値を指す。
【0007】
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物に用いられるエーテル系化合物としては、具体的には、ジメチルエーテル(DME)、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)、エチル−tert−ブチルエーテル(ETBE)などが挙げられる。なかでも、排出ガスのクリーン化の一環としてエンジン技術との最適化が着目されているDMEが特に好ましい。
【0008】
エーテル系化合物の純度については特に限定するものではないが、本発明で用いる特定の化合物からなる配合剤の効果を十分発揮させるために、潤滑性阻害防止、後処理触媒被毒防止等の観点から、酸素非含有炭化水素化合物の濃度は10質量%以下、アルコールの濃度は1質量%以下、水分濃度は1質量%以下、アルデヒド濃度は1質量%以下、ギ酸およびそのエステル濃度は1質量%以下、硫黄分は5質量ppm以下であることが望ましい。
なお、酸素非含有炭化水素化合物、アルコール、アルデヒド、ギ酸およびそのエステル濃度はガスクロマトグラフ、水分はJIS K2275「原油及び石油製品−水分試験方法」のカールフィッシャー式電量滴定法、硫黄分はJIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の微量電量滴定式酸化法により測定される値である。
【0009】
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物は、前述のエーテル系化合物に、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸およびカルボン酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を特定量配合することにより得られる。カルボン酸ユニットの炭素数は4〜18であることが必要であり、炭素数が4より小さいと被膜形成能力が小さく、潤滑性向上効果が得られない。一方、カルボン酸ユニットの炭素数が18より大きいとプランジャのクリアランスの固着を起こす恐れがあるので好ましくない。かかる理由から、カルボン酸ユニットの炭素数は6〜16であることが好ましく、8〜14であることがより好ましい。
また、カルボン酸ユニットの炭素鎖は、直鎖炭化水素基であることがより好ましい。炭素鎖が分岐している場合は、皮膜が形成されにくく、十分な潤滑性向上効果が得られないことから好ましくない。
なお、本発明においていうカルボン酸ユニットとは、カルボン酸(RCOOH)およびカルボン酸アルキルエステル(RCOOR’)におけるRCO−(Rは炭化水素基である。)を意味し、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸とは、炭素数が4〜18のカルボン酸のことであり、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸アルキルエステルとは、炭素数が4〜18のカルボン酸から誘導されるカルボン酸アルキルエステルのことである。
【0010】
本発明に用いられるカルボン酸の具体例としては、酪酸(CCOOH)、吉草酸(CCOOH)、カプロン酸(C11COOH)、カプリル酸(C15COOH)、カプリン酸(C19COOH)、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、リノレン酸(C1729COOH)、リノール酸(C1731COOH)、オレイン酸(C1733COOH)、ヘキサデセン酸(C1529COOH)等が挙げられる。
【0011】
これらのカルボン酸は化学的合成手法により製造しても良く、また動物脂質部や植物種子等を原料にして生成される脂肪酸より製造しても良い。
化学的合成手法としては、特に限定されるものではないが、Jones試薬を用いた一級アルコールの酸化、塩基性酸化銀を用いたアルデヒドの酸化、過マンガン酸カリウム水溶液を用いた1−アルケンの酸化的開裂、Grignard試薬を用いたハロゲン化アルキル化合物のカルボキシル化等が挙げられる。
動物脂質部としては、牛脂、牛乳脂質(バター)、豚油、羊油、鯨油、魚油、肝油等が、植物種子としては、ココヤシ、パームヤシ、オリーブ、べにばな、菜種、米ぬか、ひまわり、綿実、とうもろこし、大豆、ごま等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるカルボン酸アルキルエステルとしては、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、カルボン酸を塩酸、硫酸、芳香族カルボン酸、Lewis酸等の酸性溶液下で、アルキルアルコールと直接反応させてエステル化合物を得る方法などが挙げられる。
【0013】
かかるアルキルアルコールとしては、炭素数1〜4の1価アルコールであることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。アルキルアルコールの炭素数が4より大きい場合や、エチレングリコール、グリセロールに代表される多価アルコールの場合には、得られるカルボン酸エステルの分子量が大きくなるため、プランジャのクリアランスの固着を起こす恐れがあるので好ましくない。なお、アルキルアルコールの種類としては、メタノール、エタノールが好ましく、エステル化合物としての再溶解性の点で特にメタノールが好ましい。
【0014】
本発明に用いられるカルボン酸アルキルエステルの具体例としては、酪酸メチルエステル(CCOOCH)、吉草酸メチルエステル(CCOOCH)、カプロン酸メチルエステル(C11COOCH)、カプリル酸メチルエステル(C15COOCH)、カプリン酸メチルエステル(C19COOCH)、ラウリン酸メチルエステル(C1123COOCH)、ミリスチン酸メチルエステル(C1327COOCH)、パルミチン酸メチルエステル(C1531COOCH)、ステアリン酸メチルエステル(C1735COOCH)、リノレン酸メチルエステル(C1729COOCH)、リノール酸メチルエステル(C1731COOCH)、オレイン酸メチルエステル(C1733COOCH)、ヘキサデセン酸メチルエステル(C1529COOCH)、酪酸エチルエステル(CCOOC)、吉草酸エチルエステル(CCOOC)、カプロン酸エチルエステル(C11COOC)、カプリル酸エチルエステル(C15COOC)、カプリン酸エチルエステル(C19COOC)、ラウリン酸エチルエステル(C1123COOC)、ミリスチン酸エチルエステル(C1327COOC)、パルミチン酸エチルエステル(C1531COOC)、ステアリン酸エチルエステル(C1735COOC)、リノレン酸エチルエステル(C1729COOC)、リノール酸エチルエステル(C1731COOC)、オレイン酸エチルエステル(C1733COOC)、ヘキサデセン酸エチルエステル(C1529COOC)等が挙げられる。なかでも、再溶解性の点でカルボン酸メチルエステルであることが好ましい。
【0015】
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物は、沸点が90℃以下で、かつ30℃動粘度が0.7mm/s以下であるエーテル系化合物に、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸およびカルボン酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を、10〜1000mg/L配合することにより得られる。配合量が10mg/L未満だと配合剤の配合効果が不十分であり、基材の低粘性に起因する燃料油組成物の低潤滑性を改善することができない。一方、1000mg/Lより多いとディーゼル機関においてプランジャのクリアランスの固着を起こす恐れがあるので好ましくない。なお、配合量は、低粘性燃料油組成物の潤滑性を向上させる点から25mg/L以上が好ましく、50mg/L以上がより好ましい。一方、プランジャのクリアランスでの固着防止の点から、700mg/L以下が好ましく、500mg/L以下がより好ましい。
【0016】
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物においては、本発明の効果を妨げない限りにおいて、ディーゼル機関用燃料油に通常添加される酸化防止剤、芳香剤等の任意の添加剤を適宜配合することができる。これらの添加剤としては、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、メルカプタン類、スルフィド類、吉草酸エステル等の付臭剤などを挙げることができる。これらの添加剤は、単独または数種類を組み合わせて添加することができる。添加量も任意であるが、これらの任意添加剤の合計添加量は、ディーゼル機関用低粘性燃料油組成物の全量基準で、有効成分濃度として0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物は、特定のエーテル系化合物に、特定のカルボン酸および/またはカルボン酸アルキルエステルを特定量配合することにより、エーテル系化合物の低粘度、低潤滑性を補い、燃料噴射系の摩耗・焼き付きを防止し、かつプランジャのクリアランスでの固着もなく、再溶解が可能で、高い熱効率特性や排出ガス浄化性能を併せて満足するものである。
【実施例】
【0018】
以下に実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0019】
[実施例1〜13および比較例1〜9]
市販のDME、ETBEまたはMTBEのエーテル系化合物基材に対して、特定のカルボン酸またはカルボン酸アルキルエステルを添加して、ディーゼル機関用低粘性燃料油組成物を調製した(実施例1〜13)。
一方、市販のDMEまたはETBEに対して、炭素数が4〜10のアルコール、アミン、軽油用市販潤滑性向上剤A(カルボン酸系A)、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、軽油用市販潤滑性向上剤B(エステル系B)を添加して、ディーゼル機関用低粘性燃料油組成物を調製した(比較例1〜9)。
使用したDME、ETBEおよびMTBEの性状を表1に示す。また、各実施例および比較例のエーテル系化合物と配合剤との組み合わせ、濃度などを表2に示す。
次に、実施例1〜13及び比較例1〜9の各燃料油組成物について、以下に示す各種試験を行った。
【0020】
(潤滑性評価)
JPI−5S−50−98に準拠した装置(PCS社製HFRR試験装置)において、試料容器と測定温度を変更することによって、表3に示す試験条件で摩耗痕径を測定した。
まず試料を試料浴に入れ、25℃に保持する。試験鋼球を試験鋼球固定台に固定して、水平方向に取り付けた試験円板に荷重(2N)をかけて押しつける。試験円板と接触しながら往復運動する部分が、試料浴内で完全に試料に浸漬した状態で、試験鋼球を50Hzで75分間振動させ、試験鋼球に発生した摩耗痕径の水平方向(X値)と垂直方向(Y値)を標準水蒸気圧での値に換算し、潤滑性の尺度とする。単位はマイクロメーター(μm)である。試料容器および測定温度は、エーテル系化合物の揮発性が高いことを考慮し、測定中の揮発損失を防止するために変更した。潤滑性の良否は、ベース燃料のエーテル化合物単体に対して摩耗痕径の改善幅(Δ:エーテル化合物単体の摩耗痕径−ディーゼル機関用低粘性燃料油組成物の摩耗痕径)が200μm以上あれば良(○)、200μm未満の場合または添加量が1000mg/Lより多いときは否(×)と判断した。
本条件で配合剤を配合しないときのWS1.4は、MTBEが954μm、ETBEが709μmであった。
実施例1〜9および比較例1〜5の潤滑性評価結果を表4に示す。実施例の燃料油組成物は、いずれも摩耗痕径の改善幅が200μm以上と、良好な潤滑性向上効果を示したのに対し、比較例の燃料油組成物は、配合剤の配合量が多くても改善幅は200μm未満であり、潤滑性向上効果がみられないことが分かる。
【0021】
(焼き付き性能評価)
焼き付き試験は、表5に示す試験条件で、一定のすべり速度で荷重を漸増させて焼き付き限界を調べた。評価装置はASTM D2714に準拠し、液化DME評価用に改良した装置(米国ファレックス社製ブロックオンリング試験装置)を用いた。
まず圧力容器内に35mmΦのリングをセットし、幅6.35mmの金属ブロックをリングに押しあてた後、摺動面を試料で満たす。次に、すべり速度2.0m/sでリングを回転させ、荷重を2分ごとに0.1kNずつ増加させる。そして、摩擦係数、金属ブロック温度の急激な上昇があったときを焼き付きと判断し、焼き付いたときの焼き付き荷重、焼き付き面圧から焼き付き性能を評価する。ただし、焼き付く前に、燃料の液温上昇による圧力制限で試験が終了した場合は、終了時の荷重、面圧を焼き付き荷重、焼き付き面圧とする。焼き付き荷重、焼き付き面圧が大きいほど焼き付き性能は良い。焼き付き性能の判定は、焼き付きが認められなかったとき、または市販軽油と比べて焼き付き荷重や焼き付き面圧が同等、あるいは値が大きかったときを良好(○)、値が小さかったときを不良(×)とし、その結果を表6に示す。
市販軽油(2号相当)を本条件で測定したときの焼き付き荷重は1.83kN、焼き付き面圧は770MPaであった。
実施例10の燃料油組成物は市販軽油とほぼ同等の焼き付き性能を有しているのに対し、市販のカルボン酸系Aの潤滑性向上剤を用いた比較例4の燃料油組成物は焼き付き荷重、焼き付き面圧とも値が悪いことが分かる。
【0022】
(再溶解性評価)
カルボン酸ユニットを有する化合物または市販のエステル系潤滑性向上剤10mgをスクリュー瓶に採取後、ETBE10mLを添加し(配合剤濃度で1000mg/L)、静置状態での溶解性を目視で観察した。ETBE添加後60秒以内に溶解した場合を再溶解性良好、300秒経過しても完全に溶解せず、振とうが必要な場合を再溶解性不良と判断した。その結果を表7に示す。
実施例の燃料油組成物はいずれも配合剤の再溶解性が良好であるのに対し、比較例の燃料油組成物は再溶解性が不十分であり、ディーゼルエンジンに用いた場合、プランジャのクリアランスが固着する可能性が高いことが分かる。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

【0029】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が90℃以下で、かつ30℃動粘度が0.7mm/s以下であるエーテル系化合物に、カルボン酸ユニットの炭素数が4〜18であるカルボン酸およびカルボン酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を10〜1000mg/L配合して成るディーゼル機関用低粘性燃料油組成物。
【請求項2】
エーテル系化合物が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルおよびエチル−tert−ブチルエーテルから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物。
【請求項3】
カルボン酸ユニットの炭素鎖が直鎖炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物。
【請求項4】
カルボン酸アルキルエステルがカルボン酸メチルエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル機関用低粘性燃料油組成物。

【公開番号】特開2006−2014(P2006−2014A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178898(P2004−178898)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度石油公団 「天然ガス有効利用技術」の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】