説明

デジタル放送記録再生装置

【課題】スクランブルされたデジタル放送番組を記録する際の処理負荷を低減しながら記録した番組については無駄なく再生可能にする。
【解決手段】記録のための再度暗号化された放送ストリームを蓄積する再暗号後記憶手段10と、到来した暗号化された別の放送ストリームを蓄積する再暗号前記憶手段12と、再暗号前記憶手段12に蓄積されている暗号化された放送ストリームをライセンスの有効期限を考慮してローカル再暗号化可能にする再暗号化開始タイミングを算出する再暗号化タイミング判定部13を備え、再暗号前記憶手段12の暗号化された放送ストリームを、再暗号化開始タイミングに基づいてデスクランブラ3に与えて復号した後、当該復号された放送ストリームをローカルに再暗号化させて再暗号後記憶手段10に再蓄積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクランブルされたデジタル放送番組の記録時等に掛かる処理負荷を軽減するデジタル放送記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送やBSデジタル放送などで、特定の視聴者にのみ放送番組を提供するシステムのことを限定受信システム(Conditional Access System;CAS)と呼んでいる。デジタル放送では、コンテンツ保護の観点や有料放送としての特性を保つために、放送波として、あるいは高速通信ネットワークを介して送信する放送番組にスクランブル(暗号化)が適用されている。デジタル放送受信機としては、CASのライセンスに基づいてスクランブル鍵を入手して、スクランブル鍵を用いて受信信号をデスクランブル(復号)しデジタル放送ストリーム(以下、単に「放送ストリーム」とする)にして映像、音声などの情報を分離している(例えば非特許文献1参照)。一方、デジタル放送記録再生装置においては、スクランブルされた放送番組を受信してHDD(ハードディスクドライブ)等の記録メディアに蓄積することになるが、スクランブル鍵が定期的に変更されるため、スクランブルされた番組を受信した場合、一旦復号した後、再度暗号化してから記録メディアに蓄積するという処理方法を採っている。しかし、記録処理時には装置に高い負荷が掛かるため、負荷軽減が課題となっていた。
【0003】
上記課題に対する取り組みとして、デジタル放送記録再生装置において、スクランブルされたデジタル放送を記録する際に、スクランブルが掛ったまま装置に格納し、ユーザが視聴していない時間帯やユーザ操作により記録されたストリームを読み出し復号した後、もう一度記録再生手段に格納するという技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、デジタル放送記録再生装置において、スクランブルされたデジタル放送を記録する際に、スクランブル鍵Ksを含むECM(Entitlement Control Message;共通情報)とコンテンツ情報を、暗号化されたまま記録し、ワーク鍵Kwが切り替わった後も一定期間1つ前のワーク鍵Kwを第2の記憶手段に保持しておくことにより、記録した暗号化情報をワーク鍵Kwが切替わった後も一定期間復号して再生する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
一方、記録した番組の再生の際に、早送り再生や巻き戻し再生などの所謂トリックプレイを行う場合、ストリームデータを解析して早送りや巻き戻し再生に必要な情報を取得するが、ストリームが暗号化されていると一旦復号して解析する処理が必要になり、高速な処理ができないという問題あった。そのため、デジタル放送記録再生装置において、スクランブルされたデジタル放送を記録する際にECMパケットのインデックス番号をキーとしたECMインデックステーブルを作成して格納しておき、再生時にはデータブロック選択部で指定されたインデックスECMを高速に検索することによりトリックプレイを実現するという技術がある(例えば特許文献3参照)。また、受信した一部、または全てのビットストリームをパーシャルTSとしてスクランブルされたまま記録し、1回目の再生時にインデックス情報を解析して管理テーブルを生成し、2回目以降の再生時にトリックプレイができるようにする技術がある。(例えば特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−154014号公報(図1、8図)
【特許文献2】特開平10−241287号公報(図1、図2)
【特許文献3】特開2004−247036号公報(図3、図4、図7、図8)
【特許文献4】特開2007−258820号公報(図1−図6)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「1−8−5 デジタル放送に対応した限定受信システム」標準技術集、特許庁、http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/bidirectional_video/18_5.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、利用頻度が高い装置の場合、ユーザが視聴していない時間帯は少なく、記録した全ての番組をその暗号鍵が変更されるまでの期間内に処理できるか分からないという問題がある。また、ユーザ指定で再暗号を行う方法では、ユーザがその操作を忘れて再暗号化されないという問題がある。また、特許文献2の技術では、ワーク鍵Kwが2回切替ると過去の(2回前のKwで)記録した番組が視聴できなくなり、長期にわたり保存した記録番組が見られなくなるという問題がある。さらに、特許文献3の技術では、デジタル放送記録時にストリームを解析してECMインデックステーブルを生成するため、その処理負荷が高くなる問題点がある。さらにまた、特許文献4の技術では、1回目の再生時にはスムーズなトリックプレイができないか或いは処理負荷が重くなるという問題がある。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、スクランブルされたデジタル放送番組を記録する際の処理負荷を低減しながら記録した番組については無駄なく再生可能にするデジタル放送記録再生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るデジタル放送記録再生装置は、受信した限定受信システムが適用されたデジタル放送番組の暗号化された放送ストリームを復号するデスクランブラと、復号された放送ストリームをローカルに再度暗号化するローカル再暗号化処理部と、再度暗号化された放送ストリームを蓄積する再暗号後記憶手段と、蓄積されたローカルの再暗号化された放送ストリームを復号して再生データにするローカル復号部と、限定受信システムのライセンス情報に基づいて放送ストリームに多重されているECMを復号してスクランブル鍵を取り出しデスクランブラに設定する限定受信処理部と、デスクランブラおよび/もしくはローカル再暗号化処理部が或る放送ストリームの処理中に、到来した別の暗号化されたままの放送ストリームを蓄積する再暗号前記憶手段とを備えたデジタル放送記録再生装置において、再暗号前記憶手段に蓄積されている暗号化された放送ストリームをライセンスの有効期限を考慮してローカル再暗号化可能にする再暗号化開始タイミングを算出する再暗号化タイミング判定部を備え、再暗号前記憶手段に蓄積されている暗号化された放送ストリームを、再暗号化開始タイミングに基づいてデスクランブラに与えて復号した後、当該復号された放送ストリームをローカル再暗号化処理部によりローカルに再暗号化して再暗号後記憶手段に再蓄積させるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、限定受信システムが適用されてコンテンツ保護されたデジタル放送番組を、記録時には復号せずに暗号化されたままの放送ストリームで信号鍵データを含めて再暗号前記憶手段に蓄積しておき、この蓄積された放送ストリームがその後しばらく再生されなかった場合には、その蓄積放送ストリームを限定受信システムのライセンス有効期限より前に復号して、ローカルに再スクランブルをかけて本来の記録媒体である再暗号後記憶手段に再蓄積するようにしている。したがって、デスクランブラやローカル再暗号化処理部のリソースが空いているときに再暗号化して本来の記録用HDD等に移しかえ記録できるため、装置に掛かる処理負荷を分散できる。また、長期にわたり視聴していない記録番組であっても、ワーク鍵が切り替る前に移しかえ記録されているため、その後ワーク鍵が切り替っても正常に再生視聴することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるデジタル放送記録再生装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る長期にわたり未再生の再暗号前記録番組の再暗号化開始タイミングの算出方法を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2によるデジタル放送記録再生装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3によるデジタル放送記録再生装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係るインデックス情報管理部がトリックプレイのインデックス情報を取得するためのシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるデジタル放送記録再生装置の機能構成を示すブロック図である。
図1において、通信処理部1は、ネットワークを通じて配信される放送ストリーム(データパケット)を受信する手段である。ストリーミング受信処理部2は、通信処理部1から受信した放送ストリームを入力し、ジッタ吸収、パケットロス検出、順序入替り検出・訂正などのストリームの受信処理を行う手段である。デスクランブラ3は、ストリーミング受信処理部2からのデジタルがスクランブルされている場合に復号を行う手段である。デマルチプレクサ4は、復号されたデジタルから、オーディオデータ、ビデオデータ、字幕データ、ECMデータなどを分離する手段である。限定受信処理部(CAS)8は、デマルチプレクサ4から分離されたECMデータを、通信処理部1を経由で取得したライセンスデータに基づいて復号してスクランブル鍵を取り出し、スクランブル鍵をデスクランブラ3に設定する手段である。音声デコーダ5は、デマルチプレクサ4で分離されたオーディオデータを音声出力にデコードする手段である。映像デコーダ6は、デマルチプレクサ4で分離されたビデオデータを映像出力にデコードする手段である。字幕デコーダ7は、デマルチプレクサ4で分離された字幕データを字幕出力にデコードする手段である。
【0013】
以上は、CASの一般的なデジタル放送受信機が備えている機能部である。次に、この実施の形態1のデジタル放送記録再生装置に係る機能部について説明する。
ローカル再暗号化処理部9は、デジタル放送番組を記録する際にデスクランブラ3から出力された復号後のデジタルを再度暗号化する手段である。再暗号後記憶手段10は、HDD等からなるストレージ装置で、ローカル再暗号化処理部9で暗号化されたデジタルを永続的に蓄積する手段である。ローカル復号部11は、記録した番組を再生する際に、再暗号後記憶手段10の再暗号化されたデジタルを復号する手段である。再暗号前記憶手段12は、ストリーミング受信処理部2からのスクランブルが掛かったままの放送ストリームを永続的に蓄積する手段である。なお、再暗号前記憶手段12も、再暗号後記憶手段10と同様にHDD等からなるストレージ装置であるが、物理的には再暗号後記憶手段10と同一のストレージ装置を共用するものでもよい。再暗号化タイミング判定部13は、再暗号前記憶手段12に蓄積されている暗号化された放送ストリームを、ライセンスデータで指定されるライセンス有効期限を考慮してローカル再暗号化可能にする再暗号化開始タイミングを算出する手段である。制御部20は、ユーザ操作入力、各種検知センサの出力、各部からの制御指示を受け、制御対象とする各部に対応する動作を行わせる制御信号を与える手段である。
【0014】
次に、動作について説明するが、まず、デジタル放送受信機としてのデジタル放送番組を受信視聴する一般動作について説明する。なお、ここで説明するデジタル放送は、通信ネットワークを介して提供される所謂IPTV(Internet Protocol Television)サービスを例に説明するが、電波による放送ストリーム受信の場合にも同様に適用できるものである。また、このことは、以下の他の実施の形態においても同様である。
ユーザ操作や予約視聴のために、ある放送番組を受信する場合、一般的に放送はIPマルチキャスト配信されており、通信処理部1は該当番組が配信されているマルチキャストへの受信要求を行うことによって、その放送ストリームを受信できるようになる。仮に、放送がユニキャスト配信で提供されている場合には、通信処理部1はユニキャスト配信の受信要求を行い、放送ストリームを受信する。
【0015】
通信処理部1により受信された放送ストリームは、ストリーミング受信処理部2に渡される。ストリーミング受信処理部2では、ネットワーク上での揺らぎ(ジッタ)を吸収するために、ある程度のデータをバッファリングすると共に、データパケットの欠落やパケット順序の入れ替わりをチェックする。そして、パケットロスや入替りを検出した場合には、再送要求やエラー訂正、あるいは入替りの修正を行う。次に、ストリーミング受信処理部2でバッファリングされ上記訂正等の処理が行われた放送ストリームは、ストリームを構成しているデータパケットに含まれる時間情報(タイムスタンプ)に従ってデスクランブラ3へ入力される。
【0016】
放送ストリームはコンテンツ保護や有料放送の観点からスクランブルされていることが多い。この暗号を解くための鍵は、スクランブル鍵としてECMデータ内に暗号化され、放送ストリームに多重されて送られている。そのため、番組視聴や記録に先立ち、放送ストリームに含まれるECMデータはデマルチプレクサ4からフィルタリングされて限定受信処理部8に伝送される。限定受信処理部8では、予め取得しているライセンスデータ(ワーク鍵)を使ってECMデータを復号して、復号したECMデータからスクランブル鍵を取り出し、このスクランブル鍵をデスクランブラ3にセットする。ECMデータの中のスクランブル鍵は定期的(例えば10秒毎)に変更されるが、この変更のタイミングに応じて上記ECMデータの復号からスクランブル鍵のセットの動作を繰り返す。
デスクランブラ3では、セットされたスクランブル鍵を用いて放送ストリームを復号し、後段のデマルチプレクサ4に復号後の放送ストリームを渡す。デマルチプレクサ4は、映像、音声、字幕、カルーセルが多重化されたストリームからオーディオデータ、ビデオデータ、字幕データをそれぞれ分離して、それぞれの対応するデコーダ5,6,7に渡す。各デコーダはデコード処理を行って映像と音声を出力する。これによりユーザによる番組視聴が可能となる。
【0017】
次に、現在視聴中の放送番組あるいは予め予約していた1つの番組だけを記録する場合の動作について説明する。
記録動作の場合においても、デスクランブラ3が放送ストリームを復号して出力するところまでは、前述した一般的な放送視聴の動作と同様である。放送番組を記録する場合、デスクランブラ3で復号された放送ストリームをそのまま蓄積すると不正利用される危険性が高くなるため、装置内で再度暗号化してスクランブルが掛かったデータにして蓄積する構成にしている。すなわち、デスクランブラ3で復号された放送ストリームはローカル再暗号化処理部9に渡され、再び暗号化された後、再暗号後記憶手段10に蓄積される。この様にして所望の1つの番組が記録される。
【0018】
次に、上述のように1つの放送番組を記録処理している状態において、さらに到来した別の放送番組をも記録する場合の動作について説明する。
前述した通り、放送番組を記録する場合には不正利用防止のために再暗号化を行わなければならない。そのため、デスクランブラ3とローカル再暗号化処理部9を使用するが、同時に処理できる放送ストリーム数には限りがある。ここでは、デスクランブラ3またはローカル再暗号化処理部9、或いはその両方が同時には1つの放送ストリームしか処理できない場合について説明する。
上記1つ目の放送番組の記録処理中に、別の2番目の放送番組も記録することになった場合、2番目の放送番組の放送ストリームは再暗号化することはできないため、ストリーミング受信処理部2から出力される暗号化されたままの放送ストリームは、復号されず再暗号前記憶手段12へ蓄積される。これにより、1つ目の放送番組を記録中にでも、別の2つ目の放送番組をも記録することが可能になる。通信処理部1とストリーミング受信処理部2の処理能力が高ければ、さらに複数の別々の放送番組も同時に再暗号前記憶手段12に蓄積することにより複数番組の同時記録も可能になる。
【0019】
次に、記録した番組を再生視聴する動作について説明する。
まず、再暗号後記憶手段10に蓄積されている記録番組については既に再暗号化されているので、ローカル復号部11に与えて復号され、復号された放送ストリームはデマルチプレクサ4へ送られ、以降再生処理される。
一方、再暗号前記憶手段12に記録された番組を再生する場合には、暗号化されたままの放送ストリームが蓄積されているため、放送視聴と同様に暗号化されたままの放送ストリームはデスクランブラ3に送られて復号され、以降は視聴動作と同様となる。ただし、復号された放送ストリームはデマルチプレクサ4に送ると同時に、ローカル再暗号化処理部9にも送って再暗号化した後、再暗号後記憶手段10に蓄積してもよい。これにより、次回以降の再生では、再暗号後記憶手段10に記録した通常の番組と同様の扱いが可能になる。
【0020】
次に、再暗号前記憶手段12に蓄積され、かつ長期にわたり再生されなかった記録番組に対する再暗号化、蓄積処理について説明する。
まず、ライセンス(ワーク鍵)に関する事情を説明する。再暗号前記憶手段12に蓄積されている暗号化されたままの放送ストリームをデスクランブラ3で復号するときに必要となるワーク鍵は、定期的あるいは不定期に変更される。これを図2より説明する。図2(a)に示すように、「現時点」で使用するワーク鍵をKw1とし、Kw更新周期後に使用するワーク鍵をKw2としている。保持している1つのライセンスには、実際にはデジタル放送の規定により2つのワーク鍵が含まれている。図2(b)において、「現時点」で使用するワーク鍵はKw1であるが、この時点ではライセンスの組として一つ前の周期で使用したワーク鍵Kw0も含んでおり、この1つの組をライセンスVer.0とする。ライセンスには有効期限が有り、これを超えると失効してしまうため、限定受信処理部8は「ライセンスVer.0の有効期限」までに通信処理部1を用いてライセンスを更新する。図2(b)では、限定受信処理部8がライセンスを更新した時に取得するライセンスとしてVer.1を図示しており、Ver.1にはワーク鍵Kw1とKw2が含まれる。従って、「現時点」で再暗号前記憶手段12に記録され、かつ長期にわたり再生されなかった記録番組は、「ライセンスVer.1の有効期限」までの間にワーク鍵Kw1を用いて復号しなければならない。この理由は、仮にライセンスが次のVer.2になると、もはやワーク鍵Kw1が無いため、ECMの復号ができずスクランブル鍵を取得できなくなり、暗号化された放送ストリームの復号ができなくなるためである。
【0021】
そこで、この実施の形態1では、図1において、再暗号化タイミング判定部13を設けている。再暗号化タイミング判定部13では、限定受信処理部8から得られる現在ECMの復号に有効なワーク鍵のバージョンと、そのライセンスの有効期限と、再暗号前記憶手段12に蓄積されている記録番組のデータ容量とから、所定のアルゴリズムに従って図2(c)に示すような「再暗号化開始タイミング」を計算する。このタイミングに従って、再暗号前記憶手段12で蓄積し長期に渡り再生されなかった暗号化されたままの放送ストリームをデスクランブラ3において復号した後、ローカル再暗号化処理部9にてローカルな再暗号化を行い、再暗号後記憶手段10に通常の記録番組と同様に蓄積する。なお、放送番組の視聴や通常の番組記録などで現在、デスクランブラ3やローカル再暗号化処理部9が使われている場合には、その処理が終わるのを待ってローカル再暗号化を行うことでもよいし、ユーザに通知して、どちらの処理を優先するかを選択させてもよい。
【0022】
ここで、上記「再暗号化開始タイミング」を計算する所定のアルゴリズムは、ライセンス有効期限(図2では「ライセンスVer.1の有効期限」)を基点に、再暗号前記憶手段12に蓄積しているデータ容量を再暗号化処理するために必要な時間分遡って開始タイミングとすることでもよいし、利用状況(放送視聴や通常記録)から1日あたりのデスクランブラの利用率を求め、過去のデスクランブラの空き率から再暗号化処理に必要な時間を推定して、上記開始タイミングをさらに早めて行うことも可能である。また、再暗号化開始タイミングの計算は、常時行うことでもよいし、再暗号前記憶手段12に蓄積した時点でその都度番組毎に計算してその再暗号化開始タイミングを記録番組と共に管理することでもよい。この時、別の記録番組の再暗号化開始タイミングを考慮して、さらに遡って再暗号化開始タイミングを設定してスケジュール化することでもよい。
【0023】
以上のように、この実施の形態1によれば、限定受信システムが適用されてコンテンツ保護されたデジタル放送番組を、記録時には復号せずに暗号化されたままの放送ストリームで信号鍵データを含めて再暗号前記憶手段12に蓄積しておき、この蓄積された放送ストリームがその後しばらく再生されなかった場合には、その蓄積放送ストリームを限定受信システムのライセンス有効期限より前に復号して、ローカルに再スクランブルをかけて本来の記録媒体である再暗号後記憶手段10に再蓄積するようにしている。したがって、デスクランブラ3やローカル再暗号化処理部9のリソースが空いているときにローカルに再暗号化して本来の記録用HDD等に移しかえできるため、装置に掛かる処理負荷を分散できる。また、長期にわたり視聴していない記録番組であっても、ワーク鍵が切り替る前に移しかえ記録されているため、その後ワーク鍵が切り替っても正常に再生視聴することが可能になる。
【0024】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、デスクランブラ3とローカル再暗号化処理部9のリソースが空いているときに再暗号前記憶手段12の記録番組を復号し再暗号化して再暗号後記憶手段10に移しかえ記録するようにしたものであるが、この実施の形態2では、デスクランブラ3やローカル再暗号化処理部9が使われているような場合にも、デスクランブラ3を用いず復号してローカルな再暗号化を行えるようにすることについて提案する。
図3は、この発明の実施の形態2によるデジタル放送記録再生装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、原則としてその説明は省略するものとする。この実施の形態2が実施の形態1と異なっている点は、実施の形態1の構成にS/W(ソフトウェア)デスクランブル手段14を追加したことである。
S/Wデスクランブル手段14は、再暗号前記憶手段12から受信した暗号化されたままの記録番組を読み出してS/W処理でデスクランブルを行う手段であり、本装置のCPUによるS/W処理による機能を示したものである。
【0025】
次に、動作について説明するが、デジタル放送を記録し再生開始するまでの基本的な部分の動作は実施の形態1と同様であるのでその説明は省略する。ここでは、再暗号前記憶手段12に蓄積され、かつ長期にわたって再生されなかった番組に対処する実施の形態2の処理についてのみ説明する。
図3において、再暗号化タイミング判定部13では、限定受信処理部8から得られる現在ECMの復号に有効なワーク鍵のバージョンと、そのライセンスの有効期限と、再暗号前記憶手段12に蓄積されている記録番組のデータ容量とから、所定のアルゴリズムに従って「再暗号化開始タイミング」を計算する。このタイミングになると、再暗号前記憶手段12に蓄積されている受信したスクランブルが掛かったままの放送ストリームをデスクランブラ3で復号して、ローカル再暗号化処理部9にてローカルに再暗号を行い、再暗号後記憶手段10に通常の記録番組と同様に蓄積する。ここまでは、実施の形態1と同様である。しかし、ここでは、放送番組の視聴や通常の番組記録などでデスクランブラ3やローカル再暗号化処理部9が使われている場合には、S/Wデスクランブル手段14を起動させることによって再暗号前記憶手段12に蓄積されていた暗号化された放送ストリームを復号し、再暗号化できるように動作する。
【0026】
通常の視聴や記録再生の場合には、リアルタイム性が要求されるため一般にH/W(ハードウェア)でデスクランブルを行う必要があるが、ローカル再暗号化の場合には、必ずしもリアルタイムに処理する必要は無いため、装置のCPUの空きによってローカル再暗号を行えばよい。この時の処理は、H/W処理に比べ遅くなるため、前述の再暗号化開始タイミングの計算の際に、処理遅延を考慮して開始タイミングを早めるアルゴリズムを追加してもよい。
【0027】
以上のように、この実施の形態2によれば、再暗号化タイミング判定部13で算出した再暗号化開始タイミングに基づいて、再暗号前記憶手段12に蓄積していた暗号化された放送ストリームを復号してローカルに再暗号化して再暗号後記憶手段10に再蓄積する際に、再暗号前記憶手段12に蓄積していた暗号化されたままの放送ストリームの復号をデスクランブラ3で行わずにS/Wデスクランブル手段14で行うようにしている。したがって、頻繁に別の番組の視聴や記録を行うためにデスクランブラ3やローカル再暗号化処理部9が使用される率が高い場合でも、長期にわたり視聴していない記録番組であっても、ワーク鍵が切り替る前にローカル再暗号化処理を行い本来の記録用HDD等に移しかえできるため、その後ワーク鍵が切り替っても正常に再生視聴することが可能になる。
【0028】
実施の形態3.
この実施の形態3では、トリックプレイの処理負荷を低減する手段について提案する。
図4は、この発明の実施の形態3によるデジタル放送記録再生装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、原則としてその説明は省略するものとする。この実施の形態3が実施の形態1と異なっている点は、実施の形態1の構成にインデックス情報管理部15を追加したことである。
インデックス情報管理部15は、通信処理部1を経由してネットワークに接続した他の装置からトリックプレイに必要なインデックス情報を取得し管理する手段である。
【0029】
次に、動作について説明するが、デジタル放送を記録し再生開始するまでの基本的な部分の動作は実施の形態1および実施の形態2と同様であるのでその説明は省略する。ここでは、本装置で記録した番組の再生時に早送り再生、早戻し再生などのトリックプレイを行うときの動作を説明する。
再生が開始された後、ユーザ操作などによりトリックプレイが指示されると、トリックプレイに必要なインデックス情報をインデックス情報管理部15から取得する。インデックス情報は、周知のように、蓄積した放送ストリームデータの中で、複数存在するランダム再生が可能なインデックス(GOP(Group Of Pictures)先頭やアクセスユニット先頭など)の相対的なバイト位置やインデックス番号、タイムスタンプ情報などである。
【0030】
図5は、インデックス情報管理部15が通信処理部1を経由してインデックス情報を取得する場合のシステム構成を示す。図5において、IPTVデジタル放送設備104は、ネットワーク103を介してこの発明のデジタル放送記録再生装置101A,101Bおよびインデックス情報提供サーバ105に放送ストリームを配信する。インデックス情報提供サーバ105は、放送ストリームを受信してトリックプレイに必要なインデックス情報を生成し、生成したインデックス情報をネットワーク103に接続されたデジタル放送記録再生装置101A,101Bへ提供している。
【0031】
インデックス情報提供サーバ105では、ネットワーク103を通じてサービス提供されている全放送チャンネルを常時受信してインデックス情報を生成する。デジタル放送記録再生装置101Aでは、トリックプレイに先立ち、自装置の再暗号前記憶手段12に放送ストリームを蓄積完了した直後にインデックス情報管理部15が通信処理部1を通じてインデックス情報提供サーバ105からインデックス情報を取得する。この時課題になるのは、インデックス情報提供サーバ105で記録したインデックス情報では、厳密には記録開始の時間がずれているので、デジタル放送記録再生装置101A自身に蓄積した放送ストリームの各インデックスの記憶手段上のバイト位置と、取得したインデックス情報に記載されている該当インデックスのバイト位置が合致しない場合が考えられるということである。そのため、各データパケットに付随するタイムスタンプ情報(TTS)によりズレを求め、デジタル放送記録再生装置101Aは、自身の記憶手段上のバイト位置の補正を行う。
【0032】
デジタル放送記録再生装置101Aが放送ストリームを再暗号後記憶手段10に蓄積するとき(通常の番組記録の場合)には、ローカル再暗号化処理を行うので、一旦デスクランブルするためインデックス情報の生成が自身で可能であり、その場合は外部装置から取得するのではなく、自身で生成したインデックス情報をインデックス情報管理部15で記録管理することでもよい。
また、他のデジタル放送記録再生装置101Bが通常記録をしている該当記録番組のインデックス情報を保持している場合には、該装置101Bから取得することでもよい。
さらに、デジタル放送記録再生装置が取得するインデックス情報を、デジタル放送サービスを行う業者が生成し、IPTVデジタル放送設備からネットワークを介して提供する形態でもよい。
【0033】
以上のように、この実施の形態3によれば、再暗号前記憶手段12と再暗号後記憶手段10に蓄積した放送ストリームのトリックプレイに必要なインデックス情報を、インデックス情報管理部15により同じ放送ストリームを扱う外部装置から取得して利用するので、スクランブルされたまま放送ストリームを蓄積する記録形態でも、トリックプレイを行うことが容易となり、処理負荷を低減したトリックプレイが可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 通信処理部、2 ストリーミング受信処理部、3 デスクランブラ、4 デマルチプレクサ、5 音声デコーダ、6 映像デコーダ、7 字幕デコーダ、8 限定受信処理部、9 ローカル再暗号化処理部、10 再暗号後記憶手段、11 ローカル復号部、12 再暗号前記憶手段、13 再暗号化タイミング判定部、14 S/Wデスクランブル手段、15 インデックス情報管理部、20 制御部、101A,101B デジタル放送記録再生装置、103 ネットワーク、104 IPTVデジタル放送設備、105 インデックス情報提供サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した限定受信システムが適用されたデジタル放送番組の暗号化された放送ストリームを復号するデスクランブラと、
復号された放送ストリームをローカルに再度暗号化するローカル再暗号化処理部と、
前記再度暗号化された放送ストリームを蓄積する再暗号後記憶手段と、
前記蓄積されたローカルの再暗号化された放送ストリームを復号して再生データにするローカル復号部と、
限定受信システムのライセンス情報に基づいて放送ストリームに多重されているECMを復号してスクランブル鍵を取り出し前記デスクランブラに設定する限定受信処理部と、
前記デスクランブラおよび/もしくは前記ローカル再暗号化処理部が或る放送ストリームの処理中に、到来した別の暗号化されたままの放送ストリームを蓄積する再暗号前記憶手段とを備えたデジタル放送記録再生装置において、
前記再暗号前記憶手段に蓄積されている暗号化された放送ストリームを前記ライセンスの有効期限を考慮してローカル再暗号化可能にする再暗号化開始タイミングを算出する再暗号化タイミング判定部を備え、
前記再暗号前記憶手段に蓄積されている暗号化された放送ストリームを、前記再暗号化開始タイミングに基づいて前記デスクランブラに与えて復号した後、当該復号された放送ストリームを前記ローカル再暗号化処理部によりローカルに再暗号化して前記再暗号後記憶手段に再蓄積させることを特徴とするデジタル放送記録再生装置。
【請求項2】
再暗号化開始タイミングは、ライセンスの有効期限から一定期間前に設定されたことを特徴とする請求項1記載のデジタル放送記録再生装置。
【請求項3】
再暗号化開始タイミングは、ライセンスの有効期限と、再暗号前記憶手段の記憶容量に基づいて算出されたことを特徴とする請求項1記載のデジタル放送記録再生装置。
【請求項4】
再暗号化開始タイミングは、ライセンスの有効期限と、再暗号前記憶手段に蓄積されたデータ量に基づいて算出されたことを特徴とする請求項1記載のデジタル放送記録再生装置。
【請求項5】
再暗号化開始タイミングは、ライセンスの有効期限と、再暗号前記憶手段に蓄積されたデータ量と、当該装置の利用状況に基づいて算出されたことを特徴とする請求項1記載のデジタル放送記録再生装置。
【請求項6】
再暗号前記憶手段に蓄積していた暗号化された放送ストリームを再暗号化開始タイミングに基づいて再暗号化する際に行う復号を、デスクランブラを介さずにソフトウェア処理によるデスクランブル手段で行うことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のデジタル放送記録再生装置。
【請求項7】
再暗号前記憶手段と再暗号後蓄積手段に蓄積した放送ストリームのトリック再生に必要なインデックス情報を、前記放送ストリームを扱う外部装置から取得するインデックス情報管理部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のデジタル放送記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−212883(P2010−212883A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55334(P2009−55334)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】