説明

デハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法、塩素化エチレンの浄化剤及び浄化方法

【課題】デハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を調製することができる方法と、この細菌を用いた塩素化エチレン浄化剤と、塩素化エチレン汚染土壌又は地下水の浄化方法を提供する。
【解決手段】デハロコッコイデス属細菌と連鎖菌とを主菌体とするコンソーシアを集積培養して作製した嫌気状態の培養液に対して、嫌気条件で培養液を重力又は遠心力により分離して上澄液を取得する第1分画工程と、嫌気条件で培養液を孔径3μm〜100μmの膜で膜濾過して透過液を得る第2分画工程のいずれか一方又は両方を行うことによりデハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を得ることを特徴とするデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法。この培養液よりなる塩素化エチレン浄化剤。この塩素化エチレン浄化剤を用いた土壌及び/又は地下水中の塩素化エチレン浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化エチレン分解菌の1つであるデハロコッコイデス属細菌の培養液の調製方法と、この細菌を用いた塩素化エチレン浄化剤と、塩素化エチレン汚染土壌又は地下水の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化エチレンに汚染された土壌や地下水の浄化方法として、分解菌の少ないサイトについても迅速に処理できるバイオオーグメンテーション技術が期待されている。バイオオーグメンテーションによる塩素化エチレン処理は、予め培養された塩素化エチレン分解菌を土壌や地下水中に注入して塩素化エチレンを脱塩素するというものである。
【0003】
バイオオーグメンテーションを日本国内で利用する上では、経済産業省と環境省の「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」の要件を満たす微生物を調整し利用することが望ましく、バイオオーグメンテーションに利用する微生物は「高度に限定された微生物で構成され、その構成が継続的に安定していること」「優占であること」という条件を満たす必要がある。
【0004】
優占度を上げるための方法として、デハロコッコイデス属細菌が一般の細菌より小型であることを利用して、膜濾過で分画して占有度を上げた培養液を得る調製方法が知られている(特開2009−213427)。
【0005】
しかし、この方法では、デハロコッコイデス属細菌の回収率は、高くても15%と低いものであった。この原因は、膜濾過で分画する際にデハロコッコイデス属細菌も膜に捕獲されてしまうためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−213427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであって、デハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を調製することができる方法と、この細菌を用いた塩素化エチレン浄化剤と、塩素化エチレン汚染土壌又は地下水の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法は、デハロコッコイデス属細菌と連鎖菌とを主菌体とするコンソーシアを集積培養して作製した嫌気状態の培養液に対して、嫌気条件で培養液を重力又は遠心力により分離して上澄液を取得する第1分画工程と、嫌気条件で培養液を孔径3μm〜100μmの膜で膜濾過して透過液を得る第2分画工程のいずれか一方又は両方を行うことによりデハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を得ることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2のデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法は、請求項1において、第1分画工程の後に第2分画工程を行うことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3のデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法は、請求項1又は2において、該連鎖菌がトリココッカス属細菌であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記コンソーシアはクエン酸及び/又はクエン酸塩を主炭素成分とする培地を用いて嫌気条件で培養されたものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の塩素化エチレン浄化剤は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の調製方法により得られたデハロコッコイデス属細菌培養液よりなるものである。
【0013】
請求項6の土壌及び/又は地下水中の塩素化エチレン浄化方法は、請求項5に記載の塩素化エチレン浄化剤を土壌及び/又は地下水に添加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
デハロコッコイデス属細菌とその共生菌として連鎖状の球菌が優位であるトリココッカス属細菌を含むコンソーシアを集積培養して作製した嫌気状態の培養液に対して、嫌気条件で培養液を重力又は遠心力により分離して上澄液を取得する第1分画工程及び/又は嫌気条件で培養液を孔径3μm〜100μmの膜で膜濾過して透過液を得る第2分画工程でデハロコッコイデス属細菌を全く又は殆ど捕捉することなくトリココッカス属細菌を相当量除去することにより、デハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を高い回収率で得ることができる。
【0015】
この培養液よりなる浄化剤を用いることにより、塩素化エチレン汚染土壌/地下水に対して高効率でバイオオーグメンテーションを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明のデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法は、デハロコッコイデス属細菌と連鎖菌とを主菌体とするコンソーシアを集積培養して作製した嫌気状態の培養液に対して、嫌気条件で培養液を重力又は遠心力により分離して上澄液を取得する第1分画工程と、嫌気条件で培養液を孔径3μm〜100μmの膜で膜濾過して透過液を得る第2分画工程のいずれか一方又は両方を行うことによりデハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を得るものである。
【0018】
[コンソーシア]
トリココッカス属細菌は、土や川など環境中に広く存在する。トリココッカス属細菌とデハロコッコイデス属細菌を含む土壌や地下水を採取し、適切な培地を用いて嫌気条件で培養することで目的とするコンソーシアを得ることができる。トリココッカス属細菌の割合としては全菌の95%以上、さらに望ましくは98%〜99.5%であることが望ましい。
【0019】
植種源としての地下水や土壌は、バイオスティミュレーションによる汚染の浄化が進行し且つ浄化の過程において塩素化エチレン分解細菌が顕著に増殖している汚染現場から採取されたものが好ましい。採取した地下水及び/又は土壌を培養容器に収容する。植種源として地下水を用いる場合、そのまま培養容器に投入してもよいが、水等で希釈した後に投入してもよい。また、植種源として土壌を用いる場合、そのまま培養容器に投入し液体培地中に懸濁してもよいが、適当な溶媒(例えば、水)に懸濁した後に培養容器に収容してもよい。
【0020】
培養容器は、培地に対して安定であることが好ましい。培地に塩素化エチレンを含有させるため、培養容器はガラス製であることが好ましい。
【0021】
植種源を培養容器に収容した後、有機栄養源としてクエン酸、酵母エキス等が添加される。なお、発明者らは、クエン酸又はクエン酸塩を主要炭素源として継続培養を行うと、トリココッカス属細菌を再現性良く集積できることを見出した。特に培地はクエン酸及びクエン酸塩の少なくとも一方を培養時の濃度として0.1〜20g/L含むことが望ましい。また、培地に酵母エキスを培養時の濃度として1〜1000mg/L程度含有させると成長促進効果があり望ましい。ビタミン類を添加しても良い。デハロコッコイデス属細菌の増殖のために、培地に塩素化エチレン類を加える。塩素化エチレンは、PCE(テトラクロロエチレン)、TCE(トリクロロエチレン)、cis−1,2−DCE(ジクロロエチレン)、VC(塩化ビニル)等を利用でき、培養時の濃度として1〜100mg/L(10〜1000μM)、特に1〜10mg/L(10〜100μM)程度含有することが好ましい。培養温度は15〜30℃、特に25〜30℃が好ましい。培地のpHは6.0〜8.5程度の中性域であることが望ましい。静置培養あるいは10〜100rpm程度の緩速攪拌を行う。デハロコッコイデス属細菌の増殖をさらに促進させるためには分子状水素を添加しても良い。
【0022】
トリココッカス属細菌は培養条件によって単球菌となったり連鎖状(短鎖状、糸状、塊状を含む)の細胞構造となったりすることが知られている(Int.J.Syst.Evol.Microbiol.(2002),52,1113-1126)。本発明の培養条件では後述するように沈降により単球菌であるデハロコッコイデス属細菌と容易に分離されることから連鎖状のトリココッカス属細菌が優位になっていると推察される。
【0023】
デハロコッコイデス属細菌は、偏性嫌気性微生物であるため、酸素の存在下では速やかに死滅する。従って、地下水や土壌の採取、移送、培養容器への添加等の一連の操作において、嫌気性条件を保持することが好ましい。培地の環境を嫌気性とするためには、硫化ナトリウム及び塩化第一鉄を培地に添加することが好ましい。デハロコッコイデス属細菌を集積培養する場合、培地中の硫化ナトリウム及び塩化第一鉄の濃度は、それぞれ5mg/L〜500mg/L程度が好ましい。
培地には嫌気度を調べるための指示薬であるレサズリンが添加されてもよい。
【0024】
デハロコッコイデス属細菌を集積培養する場合、塩素化エチレンがエチレンに分解されるまで培養を行うのが好ましい。塩素化エチレン及びその分解中間物質(例えばシス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニル)の検出は、例えば、培養容器中の気相を少量採取し、ガスクロマトグラフィー分析することにより行われる。
【0025】
培養終了後、培養液を、継代培養用の培地が収容された別の培養容器に移植する。この培地は、先程の添加成分と同様に、クエン酸、酵母エキス、硫化ナトリウム、塩素化エチレン、及び塩化第一鉄を含有するとともに、所定の無機塩類を含有することが好ましい。
【0026】
継代培養は、塩素化エチレン及び分解中間物質(例えばシス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニル)のいずれもが検出されなくなるまで、先程の培養と同様の条件で行われる。このような継代培養を、継続的に行うことにより、トリココッカス属細菌及びデハロコッコイデス属細菌を含むコンソーシアが生成する。デハロコッコイデス属細菌の分離にはコンソーシアをこのまま利用してもよいが、得られたコンソーシアを植種源として大型フラスコや醗酵槽を用いて培養したものを使用することができる。培地や培養方法は先ほどの集積培養と同様の条件でよい。
【0027】
[デハロコッコイデス属細菌の分離]
培養の攪拌を止め、重力分離(自然沈降で沈殿させること)又は遠心分離により、デハロコッコイデス属細菌とトリココッカス属細菌を分離することができる。デハロコッコイデス属細菌等の単球菌と、連鎖状のトリココッカス属細菌とは、細胞の大きさを利用して容易に分離が可能である。嫌気条件とするため培地成分に塩化鉄と硫化ナトリウムを添加したときは、培地作成段階で硫化鉄が生成するのでトリココッカス属菌を硫化鉄のフロックとともに共沈させても良い。顕微鏡で観察するとトリココッカス属細菌は硫化鉄のフロックと凝集塊を形成しているケースが多く、デハロコッコイデス属細菌より凝集し易い性状も持つと考えられ、これによりトリココッカス属細菌を選択的に分離することができると考えられる。
【0028】
重力分離又は遠心分離の前に凝集剤を培地に添加してもよい。凝集剤としては、塩鉄、PAC、有機ポリマー等を利用することができるが、これに限定されない。凝集剤を用いる場合も連鎖状のトリココッカス属細菌の細胞の大きさによりトリココッカス属細菌が凝集フロックを作りやすい。遠心分離は、連続式、回分式のいずれでもよい。またサイクロンといった簡易装置を利用することもできる。
【0029】
培養液又は重力分離又は遠心分離の上澄液を大孔径の膜に通水してデハロコッコイデス属細菌とトリココッカス属細菌を分離することもできる。膜の孔径はトリココッカス属細菌を捕獲できてデハロコッコイデスを捕獲しない必要があり、3〜100μm、特に3〜50μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。大孔径の膜を用いることにより、膜濾過速度も大きいものとなる。大孔径の膜としてはプレフィルターや濾紙或いは不織布でもよく、デハロコッコイデス属細菌と連鎖状のトリココッカス属細菌の細胞長を利用して分離できる方法であれば良い。なお、前述の特開2009−213427のように孔径の小さな膜で上澄液を濾過した場合、デハロコッコイデス属細菌も捕獲してしまうのに対して、大孔径の膜で濾過することにより、デハロコッコイデス属細菌を透過させて高回収率にて回収することができる。なお本発明によってデハロコッコイデス属細菌の回収率を80%以上、特に実質的に90〜100%の回収率にて回収することができる。
本発明では、重力分離又は遠心分離による分画方法と、膜を利用した分画方法とは組み合わせて処理することができる。そして、重力分離又は遠心分離をした後に膜濾過することにより高度に分画できる上に、膜寿命を長期化できるので好ましい。
【0030】
前述した経済産業省と環境省の指針により、コンソーシアを構成する微生物群の中で、相当微生物の占有度が最も高いことが望ましい。占有度はコンソーシア中の他の微生物の種類や量に依存するが、本発明ではデハロコッコイデス属細菌の占有度を20%以上とすることができ、さらには重力分離又は遠心分離をした後に膜濾過する方式を取ることにより占有度50%以上を達成することができる。
【0031】
なお、デハロコッコイデス属細菌培養液よりなる浄化剤は、現場で調製されてもよく、研究所や工場などで調製されてもよい。デハロコッコイデス属細菌は嫌気性菌であるため、培養液の調製工程では、系内を窒素パージするとともにフッ素樹脂等の酸素透過性の低い配管や空気の混入がない気密性の高い遠心分離機や膜ユニット、ポンプを用いることにより嫌気条件を保ち、また培養液タンクはタンク内を窒素パージして密閉することで嫌気条件を維持する必要がある。
【0032】
このようにして得られた培養液が塩素化エチレンの浄化剤として用いられる。この浄化剤を用いて塩素化エチレン汚染土壌又は地下水を浄化するには、この浄化剤を必要に応じ水で希釈して土壌中に注入したり、汲み上げた地下水に添加した後、この地下水を地中に圧入する。
【実施例】
【0033】
塩素化エチレンにより汚染された土壌及び地下水の浄化がバイオスティミュレーションにより行われている3箇所の現場から、地下水を採取した。地下水100mLをそれぞれ容積155mLのガラス製バイアルに入れ、下記に示される培地成分を添加し、窒素/二酸化炭素混合(体積比8/2)ガスで気相を置換した。
<地下水へ添加した培地成分>
(OH)(COOH):500mg/L
(NHHPO :6mg/L
酵母エキス :100mg/L
NaS・9HO :50mg/L
FeCl・4HO :50mg/L
【0034】
更に、シスージクロロエチレン(DCE)を液中濃度が約10mg/Lとなるように添加し、同様に塩化ビニル(VC)を液中濃度が約6mg/L程度となるよう添加した後、ポリテトラフルオロエチレンで被覆されたブチルゴム栓によりバイアルを密閉した。
【0035】
続いて、このバイアルを30℃の温度下で50rpmで緩やかに攪拌しつつ培養を開始した。バイアルの気相200μLを定期的に引き抜き、ガスクロマトグラフを用いて塩素化エチレン類の濃度を各々測定した。塩素化エチレン類が検出されなくなったことを確認した後、培地の水相を採取した。採取した水相1mLを、下記に示される組成の合成培地を収容する別のバイアルに植え継いだ。同様の手順で、合成培地への植え継ぎを計5回行う継代培養を行った。なお、地下水A、CはVCを添加して集積を行い、地下水BはDCEを添加して集積を行った。また、地下水A,Bは酵母エキスを添加して集積を行い、地下水Cは酵母エキスを添加せずに集積した。
<合成培地の組成>
(OH)(COONa):500mg/L
酵母エキス :10mg/L
CaCl・2HO :15mg/L
NaHCO :2520mg/L
Tris :2290mg/L
レサズリン :1mg/L
CDCE :6mg/L
MgCl・6HO :500mg/L
NaCl :500mg/L
KHPO :200mg/L
NHCl :300mg/L
KCl :300mg/L
NaS・9HO :480mg/L
FeCl・4HO :200mg/L
MnCl・4HO :1mg/L
CoCl・2HO :1.9mg/L
ZnCl :0.7mg/L
CuSO・5HO :0.04mg/L
BO :0.06mg/L
NiCl・6HO :0.25mg/L
NaMoO・2HO :0.44mg/L
濃塩酸 :1μL/L
【0036】
得られた培養液の細菌相を、16SrDNAを対象とする末端制限酵素切断断片長多型(Terminal−Restriction Fragment Length Polymorphism:T−RFLP)解析、デハロコッコイデス属細菌(DHC菌)、トリココッカス属細菌(T菌)および全細菌の16SrDNAを対象としたリアルタイムPCR解析により評価した。用いたDNAプライマーを表1及び配列表に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
その結果、全てのサンプルにおいて全細菌に占めるトリココッカス属細菌(T菌)の割合は98%以上であり、デハロコッコイデス属細菌(DHC菌)の割合は、1%程度であることが判明した(表2)。また、16SrDNA由来のPCR産物よりダイレクトシークエンシングを行い、塩基配列より微生物の同定を行った結果、3試料とも、Tricococcus属に属する細菌であることを確認した。この結果より、少なくともクエン酸を単一炭素原とする培地として集積培養を行うことで、T菌を優占種とするコンソーシアを調整できることがわかった。
【0039】
【表2】

【0040】
続いて、得られたコンソーシアを一昼夜、恒温槽内で静置し、トリココッカス属細菌を培地成分由来の硫化鉄のフロックと共に沈降分離した。
【0041】
また、攪拌停止後の上澄み液をさらに孔径5μmのPVDF膜(Durapore:日本ミリポア製)で膜濾過した。
【0042】
このときの、(i)攪拌停止後の上澄み液と、(ii)上澄み液を膜濾過した濾過液のそれぞれについてTRFLP解析とリアルタイムPCR解析とを実施した。この結果を表2に示す。
【0043】
<(i)の解析結果>
表2に見られるように攪拌停止前の培養液ではT菌の割合が98%以上でDHC菌の割合は1%程度であったが、一晩静置して硫化鉄とともにT菌を重力沈降せしめた結果、上澄み液中のT菌の濃度は攪拌停止前の1〜3%程度となり、全菌に対するDHC菌の割合は27〜38%と上昇した。また、このときDHC菌の回収率は概ね100%であった。
【0044】
<(ii)の解析結果>
上澄み液をさらに孔径5μmの膜で膜濾過した結果、T菌の割合は著しく低下し、DHC菌の割合は52〜57%となった。また、膜濾過の前後の培養液中のDHC菌の濃度はどのサンプルでもほぼ等しく、DHC菌が膜に捕捉されることなく概ね100%の回収率で回収できることがわかった。つまりコンソーシアの中からDHC菌以外の菌のみを実質的に減量することができた。なお、従来技術(特開2009−213427の実施例)では、回収率は12%程度と非常に低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デハロコッコイデス属細菌と連鎖菌とを主菌体とするコンソーシアを集積培養して作製した嫌気状態の培養液に対して、
嫌気条件で培養液を重力又は遠心力により分離して上澄液を取得する第1分画工程と、
嫌気条件で培養液を孔径3μm〜100μmの膜で膜濾過して透過液を得る第2分画工程
のいずれか一方又は両方を行うことによりデハロコッコイデス属細菌の占有度の高い培養液を得ることを特徴とするデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法。
【請求項2】
請求項1において、第1分画工程の後に第2分画工程を行うことを特徴とするデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、該連鎖菌がトリココッカス属細菌であることを特徴とするデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記コンソーシアはクエン酸及び/又はクエン酸塩を主炭素成分とする培地を用いて嫌気条件で培養されたものであることを特徴とするデハロコッコイデス属細菌培養液の調製方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の調製方法により得られたデハロコッコイデス属細菌培養液よりなる塩素化エチレン浄化剤。
【請求項6】
請求項5に記載の塩素化エチレン浄化剤を土壌及び/又は地下水に添加することを特徴とする土壌及び/又は地下水中の塩素化エチレン浄化方法。

【公開番号】特開2011−244769(P2011−244769A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123085(P2010−123085)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】