説明

デバイスの移行方式、デバイスの移行方法、移行制御装置、及びプログラム

【課題】 移行元と移行先のターゲットデバイスに同じデバイス番号を設定して要求を同時実行することにより、デバイス番号を読み替える手段を不要としてホストデバイスのハードウェア量を削減するとともにアクセス時間を短縮し、移行処理時間を短縮すること。
【解決手段】 ターゲットデバイス10はホストデバイス20から発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき要求を実行し、リード系の要求に対しては現用状態のときのみに応答し、移行制御部30は、デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイス10Aから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイス10Bをデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイス10Bへの移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイス10Aを予備状態に、ターゲットデバイス10Bを現用状態に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデバイスの移行方式、デバイスの移行方法、移行制御装置、及びプログラムに関し、特に、現用のデバイスの機能を予備のデバイスに移行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のターゲットデバイスは自身のデバイス番号がターゲットデバイスのボード上でクランプされて変更不能に設定されているため、現用ターゲットデバイスで予め決められた事象であるエラーが発生した場合の現用ターゲットデバイスから予備ターゲットデバイスへの移行処理を、ホストデバイス側でデバイス番号を読み替える機能を設けることにより実現している。
【0003】
デバイス番号を読み替える機能は、例えば、移行を実行したとき移行元のターゲットデバイスのデバイス番号と移行先のターゲットデバイスのデバイス番号とを関連づけてテーブルに登録し、要求元からの要求に含まれる宛先デバイス番号でテーブルを参照し登録があればデバイス番号を読み替えることにより実現している。
【0004】
また、特開平4−225631号公報の発明は、複数のチャネル送受信制御部がそれぞれタイムスロット番号とチャネル番号を保持するレジスタを備え、障害が発生したチャネル送受信制御部0のタイムスロット番号とチャネル番号を予備のチャネル送受信制御部12のレジスタに設定することを記載している。ただし、同公報の段落0016に記載されるように予備のチャネル送受信制御部12のレジスタの設定に伴って障害が発生したチャネル送受信制御部0を切り離している。
【0005】
【特許文献1】特開平4−225631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現用ターゲットデバイスを予備ターゲットデバイスに移行する場合、従来の方法ではホストデバイスにデバイス番号を読み替えるための手段を設ける必要があり、ホストデバイスのハードウェア量が増加するという問題があった。また、デバイス番号を読み替える処理によりターゲットデバイスへのアクセス時間が増えるという問題があった。
【0007】
特開平4−225631号公報の発明は、障害が発生したチャネル送受信制御部0のチャネル番号を予備のチャネル送受信制御部12のレジスタに設定することを記載しているが、設定すると同時に障害が発生したチャネル送受信制御部0を切り離している。
【0008】
デバイスの種類によっては移行に伴って移行元のデバイスが保持する情報を移行先のデバイスに移動することが必要となる。例えばデバイスが主記憶を構成するメモリ装置の場合、移行元のメモリ装置に記憶されたデータは移行先のメモリ装置に複写する必要があり、障害が発生した移行元のメモリ装置を即座に切り離すことはできないという問題がある。しかしながら、特開平4−225631号公報の発明はこの問題を解決する方法を開示していない。
【0009】
また、デバイスの移行処理でデータの複写が必要となる場合、運用を一時中断して複写処理を行うと複写処理中に本来運用において実行されるべき処理が停止してしまう。従って、データの複写処理と本来の運用処理は並行して実行できることが望ましい。データの複写処理と本来の運用処理を並行して実行するためには、メモリ装置に対するライト系要求を移行元のメモリ装置と移行先のメモリ装置に同時に実行させる必要がある。
【0010】
従来の方法では、メモリ装置に対するライト系要求を移行元のメモリ装置宛の要求と移行先のメモリ装置宛の要求にして2回実行する必要があったため、ライト系要求の実行処理時間が増えてしまうという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解決したデバイスの移行方式、デバイスの移行方法、移行制御装置、及びプログラムを提供することにあり、このために、移行元と移行先のターゲットデバイスに同じデバイス番号を設定して同一要求を並列実行することにより、デバイス番号を読み替える手段を不要としてホストデバイスのハードウェア量を削減するとともにアクセス時間を短縮し、移行処理中のライト系要求の処理時間を短縮するという課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1のデバイスの移行方式は、ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更することを特徴とする。
【0013】
本発明の第2のデバイスの移行方式は、ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更することを特徴とする。
【0014】
本発明の第3のデバイスの移行方式は、本発明の第1又は第2のデバイスの移行方式において、前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する処理を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の第4のデバイスの移行方式は、本発明の第1又は第2のデバイスの移行方式において、前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行制御部が前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻すことを特徴とする。
【0016】
本発明の第5のデバイスの移行方式は、ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記バスは要求の宛先を要求に含まれる宛先デバイス番号で指定し、
前記移行制御部は、現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBにターゲットデバイスAと同じデバイス番号を設定してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、
前記ターゲットデバイスA及びBは、移行処理中にデータの返送を伴わないライト系の要求を前記ホストデバイスから受けると、受けた要求を同時に実行することを特徴とする。
【0017】
本発明の第1のデバイスの移行方法は、ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更することを特徴とする。
【0018】
本発明の第2のデバイスの移行方法は、ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更することを特徴とする。
【0019】
本発明の第3のデバイスの移行方法は、本発明の第1又は第2のデバイスの移行方法において、前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する処理を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の第4のデバイスの移行方法は、本発明の第1又は第2のデバイスの移行方法において、前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行制御部が前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻すことを特徴とする。
【0021】
本発明の第5のデバイスの移行方法は、ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記バスは要求の宛先を要求に含まれる宛先デバイス番号で指定し、
前記移行制御部は、現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBにターゲットデバイスAと同じデバイス番号を設定してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、
前記ターゲットデバイスA及びBは、移行処理中にデータの返送を伴わないライト系の要求を前記ホストデバイスから受けると、受けた要求を同時に実行することを特徴とする。
【0022】
本発明の第1の移行制御装置は、バスで接続するホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更することを特徴とする。
【0023】
本発明の第2の移行制御装置は、自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、バスで接続するホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更することを特徴とする。
【0024】
本発明の第3の移行制御装置は、本発明の第1又は第2の移行制御装置において、前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する処理を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の第4の移行制御装置は、本発明の第1又は第2の移行制御装置において、前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻すことを特徴とする。
【0026】
本発明の第1のプログラムは、バスで接続されたホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更する手順と、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始する手順と、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更する手順とをコンピュータに実行させる。
【0027】
本発明の第2のプログラムは、自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、バスで接続するホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始する手順と、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更する手順とをコンピュータに実行させる。
【0028】
本発明の第3のプログラムは、本発明の第1又は第2のプログラムにおいて、前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する手順をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0029】
本発明の第4のプログラムは、本発明の第1又は第2のプログラムにおいて、前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行制御部が前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻す手順をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、移行元と移行先のターゲットデバイスに同じデバイス番号を設定して同一要求を並列実行することにより、デバイス番号を読み替える手段を不要としてホストデバイスのハードウェア量を削減できるとともにアクセス時間を短縮でき、移行処理中のライト系要求の処理時間を短縮できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の最良の形態の構成を示した図である。図1を参照すると、本発明はホストデバイス20と複数のターゲットデバイス10とこれらを接続するバス40とこれらの障害処理や移行処理の際に使用される障害用バス41を含む。
【0032】
なお、図1ではターゲットデバイス10としてターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bとターゲットデバイス10Cの3つが接続されているが接続数を限定するものではない。また、ターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bとターゲットデバイス10Cを特に区別せずにいう場合単にターゲットデバイス10と表現する。この他についても同様に表現する。
【0033】
バス40はホストデバイス20とターゲットデバイス10との間でデータやアドレスや要求内容を転送する伝送路であり、各ターゲットデバイス10毎に設定されたデバイス番号により宛先を特定している。要求は要求パケットとして転送され、リード系の要求の応答としてリードデータが応答される。バス技術については広く知られており、具体的なバス40の回路的な構成については記載しないし限定もしない。
【0034】
図2はバス40で転送される要求パケットの構成の一例を示した図である。図2を参照すると、要求パケットはヘッダ部とデータ部で構成される。ヘッダ部はリードやライト等の要求内容を指定するコマンドとアドレスを含み、アドレスは宛先デバイス番号とデバイス内アドレスで構成される。要求者は宛先としてターゲットデバイス10のデバイス番号を宛先デバイス番号として要求パケットを生成することにより、要求を宛先のターゲットデバイス10に実行させることができる。
【0035】
障害用バス41は、バス40と比べて一般的には低速の伝送路として実現され、ターゲットデバイス10からの予め決められた事象の1つであるエラー発生の通知や、移行制御部30からターゲットデバイス10に対するデバイス番号やフラグ13の設定変更のために使用される。障害用バス41ではターゲットデバイス10を特定する情報としてデバイス番号ではなく、実装位置を示すスロット番号のような固定値を用いることができる。なお、具体的なバスの構成については特に限定しない。
【0036】
ターゲットデバイス10は、主記憶用のメモリ装置や、入力装置や出力装置や通信装置等を制御する入出力制御装置や、磁気記憶装置や光記憶装置等の外部記憶装置を制御する制御装置等があるが、図1ではターゲットデバイス10はメモリ装置として説明する。なお、ターゲットデバイス10の装置の種類が混在していてもかまわないが、本発明を適用するためには現用のターゲットデバイス10の種類と同じ予備用のターゲットデバイス10を接続する必要がある。
【0037】
ターゲットデバイス10は、制御部11と、番号保持部12と、フラグ13と比較部15と、パケット保持部14を共通に含む。図1の場合、ターゲットデバイス10がメモリ装置であるのでさらにエラー検出訂正部16とメモリ部17とを含んでいる。なお、メモリ装置以外のターゲットデバイス10においてもエラー検出訂正部16に代わるエラーを検出するための手段を含むことができる。
【0038】
制御部11はターゲットデバイス10の動作を制御するものであり、バス40や障害用バス41とのインターフェースを制御する機能や要求を受信して解読し実行する機能や障害を処理する機能等を含むが、詳細については動作の説明にて記載する。制御部11はハードウェア回路のみで実現してもよいし、制御部11専用のプロセッサを搭載して低速でも影響の少ない処理や長手順の処理等の一部をプログラムで実現してもよく、特に限定しない。また、制御部11はエラー検出訂正部16で検出されたエラーの他にターゲットデバイス10で発生したエラーを検出する機能を含むこともできる。
【0039】
番号保持部12はターゲットデバイス10に設定されたデバイス番号を保持する手段であり、専用のレジスタで実現してもよいし制御部11で使用可能な記憶手段に確保された専用の領域で実現してもよい。
【0040】
フラグ13は、ターゲットデバイス10が使用中の状態(現用状態という)か使用中でない状態(予備状態という)かを示すフラグであり、専用のフリップフロップで実現してもよいし制御部11で使用可能な記憶手段に確保された専用の領域で実現してもよい。なお、フラグ13は、値が“1”(オン)のとき現用状態で、値が“0”(オフ)のとき予備状態とするが、“0”と“1”を逆に定義してもかまわないし、“0”と“1”以外の値で定義してもかまわない。
【0041】
パケット保持部14は、バス40から受信した要求パケットを保持するものであり、専用のレジスタで実現する。ただし、メモリ装置のように高速性を必要とされる装置でない場合には要求パケットの宛先デバイス番号以外の部分を制御部11で使用可能な記憶手段に確保された専用の領域により実現してもかまわない。
【0042】
比較部15はパケット保持部14に保持される要求パケットの宛先デバイス番号部分と番号保持部12のデバイス番号とを比較して一致か否かを制御部11に通知する比較器である。
【0043】
メモリ部17はメモリー素子で構成され、データを記憶する機能を有し、制御部11の指示に従ってデータを読み出したり書き込んだりする。アドレスはパケット保持部14に保持されるデバイス内アドレス部分で与えられ、書込データはエラー検出訂正部16から与えられる。
【0044】
エラー検出訂正部16は、メモリ部17への書込の際に、書込データから2ビットエラー検出と1ビットエラー訂正を行うためのエラー検出訂正コードを生成して書込データに付加し、メモリ部17からの読み出しの際にエラー検出訂正コードを利用してエラー検出とエラー訂正を行って読み出しデータを生成する。
【0045】
ホストデバイス20は、ターゲットデバイス10に対して要求をするデバイスであり、例えばプロセッサであったり、プロセッサと主記憶との間でメモリアクセスを制御する装置であったり、プロセッサと入出力制御装置との間でアクセス制御する装置であったりするが特に限定しない。ホストデバイス20は、要求部21を含む。
【0046】
要求部21はバス40と障害用バス41と接続し、ホストデバイス20からターゲットデバイス10に対する要求を要求パケットとして生成してバス40に出力する。要求の種類は、リード要求のようにターゲットデバイス10が要求を実行した結果を返送するリード系の要求と、要求を実行した結果の返送を伴わないライト系の要求に分類される。
【0047】
また、要求部21は移行制御部30から障害用バス41を介して指示を受けると、指示に従って要求パケットを生成してバス40に出力する。この機能により移行制御部30はターゲットデバイス10に対しホストデバイス20が通常行う通常アクセスと同じ機能のアクセスを実行することができる。なお、要求部21は、移行制御部30の指示により要求パケットを作成する処理についてはホストデバイス20が要求する要求パケットを生成する処理と衝突しないように順序よく処理する。
【0048】
移行制御部30は、障害用バス41と接続し、ターゲットデバイス10からエラー通知を受けると予め決められた手順で障害処理と移行処理を実行する。移行制御部30は移行処理で必要とするターゲットデバイス10へのアクセスをする場合、障害用バス41を介してホストデバイス20の要求部21へ指示して要求パケットを作成させて実行し、番号保持部12やフラグ13の変更は障害用バス41を介して実行する。
【0049】
また、移行制御部30はシステム全体の障害や運用の管理を行うために設けた移行制御装置(例えばサービスプロセッサやシステム管理用のボードのような装置)を利用して実現することができ、この場合移行制御部30専用のハードウェアを追加することなく移行制御装置に移行制御部30の機能を実現するプログラムを追加だけで実現することもできる。この場合に追加するプログラムとは、後述の動作の説明で記載する移行制御部30が実行する手順をコンピュータの1つである移行制御装置に実行させるプログラムである。
【0050】
次に、本発明を実施するための最良の形態の動作について図面を参照して説明する。ここではターゲットデバイス10Aで予め決められた事象として訂正可能な1ビットエラーが発生し、これを検出した移行制御部30が予備のターゲットデバイス10Bに移行処理して、予備と現用を切り換える障害処理の動作について説明する。以降の説明においてターゲットデバイス10A〜Cのデバイス番号の初期値はそれぞれ“01”、“03”、“02”としてデバイス番号保持部12A〜Cに設定され、フラグ13A〜Cの初期値は“オン”、“オフ”、“オンであるものとする。すなわちターゲットデバイス10Bは予備として設定されている。
【0051】
なお、ターゲットデバイス10A、10Bはメモリ装置であり、切換を行うためにはメモリ部17Aの記憶内容をメモリ部17Bに複写する移行処理が必要となる。この他にもターゲットデバイス10Aの初期設定情報や構成情報のような設定データも移行処理により複写する必要があるがこれらの動作についてはメモリ部17の移行処理と同様であるので説明を省略する。ただし、設定データによっては障害用バス41を利用して実現してもよい。
【0052】
まず、ホストデバイス20からターゲットデバイス10Aへのリード要求の処理においてメモリの1ビットエラーが発生するまでの動作について説明する。要求部21が宛先デバイス番号を“01”としてリード系の要求パケットを生成し発送すると、ターゲットデバイス10A〜Cがそれぞれバス40を介して要求パケットを受信してパケット保持部14A〜Cに保持する。
【0053】
制御部11A〜Cはそれぞれパケット保持部14A〜Cに保持する要求パケットの宛先デバイス番号“01”と番号保持部12A〜Cに保持する自身のデバイス番号“01”、“03”、“02”とを比較部15A〜Cで比較する。この場合制御部11Aのみが一致となるのでターゲットデバイス10Aがこの要求を処理し、ターゲットデバイス10B〜Cはこの要求を実行しない。
【0054】
制御部11Aは、要求パケット内のコマンドを解読した際にフラグ13の状態を調べ、フラグ13の状態に応じて受信したコマンドを実行する。ターゲットデバイス10がメモリ装置の場合フラグ13が“オフ”であれば、ライト系の要求は処理するがリード要求は同一のデバイス番号を持つ動作中のターゲットデバイス10の動作を妨害しないように要求元への応答動作は抑止する。メモリ装置以外の場合はターゲットデバイス10の種類に従って個別に同一のデバイス番号を持つ動作中のターゲットデバイス10を妨害しないように動作を制限するようにする。制限の内容はターゲットデバイス10の種類に応じて決めることができる。
【0055】
制御部11Aは、フラグ13Aが“オン”のため制限することなくリード要求を実行すし、要求パケット内のデバイス内アドレスをメモリ部17に供給して読み出しを指示する。リード系要求を解読した際にフラグ13がオフ状態であれば予備であるため制御部11はその時点で動作を終了し要求パケットを無効としてもかまわないが、本実施の形態では読み出し動作までは実行し応答動作を抑止するものとする。
【0056】
メモリ部17から読み出されたデータに1ビットエラーがあった場合、エラー検出訂正部16Aはメモリ部17から読み出されたデータとエラー検出訂正コードを解読して1ビットエラーを検出するとともにエラー検出訂正コードにより1ビットエラーを訂正して正しい読み出しデータを生成する。同時にエラー検出訂正部16Aは1ビットエラーの発生を制御部11Aに通知する。
【0057】
制御部11Aは読み出しデータをバス40を介してホストデバイス20へ返送する。また、制御部11Aは1ビットエラーの発生を障害用バス41を介して移行制御部30に通知する。図1では読み出しデータをパケット保持部14Aに一旦保持して返送するようにしているが、エラー検出訂正部16から直接バス40へ出力してもよいし、別のバッファを設けてバッファに一旦保持してからバス40へ出力してもよく限定しない。
【0058】
なお、フラグ13Aがオフ状態であれば制御部11Aは読み出しデータの返送は実行せず、1ビットエラーの発生の通知のみを行う。このようにフラグ13がオフ状態でもメモリ部17を読み出してエラー検出を行うことにより、予備のターゲットデバイス10のエラー発生状況を監視することが可能となる。
【0059】
移行制御部30は1ビットエラーの発生の通知をターゲットデバイス10Aから受信すると予め決められた条件を参照して条件を満足すればターゲットデバイス10Aを予備のターゲットデバイス10Bに切り換える障害処理を実行する。なお、移行制御部30は障害の発生を図示しない表示装置に表示し図示しない入力装置からターゲットデバイス10の切換の指示が入力されたことにより、ターゲットデバイス10Bへの切り換え動作を開始するようにしてもかまわない。すなわち切り換えの契機をオペレータから与えられるようにしてもよい。
【0060】
図3は移行制御部30によるターゲットデバイス10の障害処理と移行処理の動作を示したフローチャートである。図3を参照して詳細に説明すると、移行制御部30はエラーの発生通知を受けると予備のターゲットデバイス10が存在するか調べ(S51)、予備がなければ切り換え動作は実行しない。
【0061】
予備があるか否かの判断は次のようにする。移行制御部30は図示しないが各制御部11に保持されるスロット番号とデバイスの種類を示すコードとフラグ13の内容を調べ、エラーが発生したデバイスとデバイスの種類が同じでフラグ13がオフのターゲットデバイス10が存在すればこれをエラー発生したターゲットデバイス10の予備デバイスと判断する。この場合、ターゲットデバイス10Bが予備と判断される。なお、予備のターゲットデバイス10が複数存在する場合、移行制御部30は切り換え対象とするターゲットデバイス10を予め決められた方法により決定すればよい。ターゲットデバイス10が全て同種類で構成される場合は単にフラグ13がオフのターゲットデバイス10があればこれを予備と判断できる。
【0062】
予備が存在すれば、移行制御部30はエラー内容と予め決められた条件とを照合して、ターゲットデバイス10の切り換え条件が成立するか判断し(S52、S53)、条件が成立すればステップS54に進んで切り換え処理を開始し、条件が成立しなければ切り換え処理は実行しない。
【0063】
予め決められた条件とはエラー内容毎に定義され、例えば次のようなものである。1ビットエラーの場合であれば、1ビットエラーの発生回数が設定値を超えるという条件や、1ビットエラーの発生頻度が設定値を超えるという条件であり、発生回数や発生頻度に関係なく発生したときという条件であってもよい。1ビットエラーの発生回数が条件となる場合移行制御部30は1ビットエラーの発生回数を計数し保持しておくよう動作する。また、予め決められた条件は障害処理を開始する条件も含むようにし、例えばオペレータの指示が入力されたことにより開始するように設定してもかまわない。
【0064】
条件が成立した場合、移行制御部30は障害用バス41を介してエラーが発生したターゲットデバイス10Aの番号保持部12Aからターゲットデバイス10Aのデバイス番号“01”を読み出し、障害用バス41を介して読み出したデバイス番号を切り換え先の予備のターゲットデバイス10Bの番号保持部12Bに書き込む(S54)。これにより、番号保持部12Bの内容は“03”から“01”に変更される。
【0065】
この時点で、ターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bは同じデバイス番号“01”が設定され、フラグ13Aは“オン”でフラグ13Bは“オフ”となっている。従って、この状態で宛先デバイス番号を“01”とした要求パケットをホストデバイス20が発送すると、ターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bの双方が要求パケットを実行しようとするが、応答を必要とするリード系の要求の場合はターゲットデバイス10Aのみが応答し、ターゲットデバイス10Bは応答を抑止する。
【0066】
次に移行制御部30はデバイスの種類に基づいて移行処理が必要か判断する(S55)。メモリ装置の場合すでに述べたような移行処理が必要なのでステップS56へ進むが、移行処理が不要な場合は移行処理を実行せず終了する。
【0067】
ステップS56で移行制御部30は移行処理を実行する。移行処理は、移行元のターゲットデバイス10Aのメモリ部17Aに記憶されているデータ(移行データという)を読み出して移行先のターゲットデバイス10Bのメモリ部17Bへ書き込む処理である。なお、移行データはメモリ部17内のデータのみではなくターゲットデバイス10に設定された構成情報のようなデータも含まれる。このような設定情報はメモリ装置に限らずターゲットデバイス10では多くの場合必要な情報である。
【0068】
具体的な移行処理について説明すると、移行制御部30は予め決められたデータサイズを単位としてターゲットデバイス10Aから移行データを順に読み出してターゲットデバイス10Aの同じアドレスに書き戻す動作を要求部21に繰り返し指示して実行させ、全てのメモリ部17Aのデータ移行が終わるまで(S57)続ける。
【0069】
この場合、移行制御部30はデバイス番号 “01”に対してあるアドレスから予め決められたデータサイズのデータを読み出して同じアドレスに書き戻すように動作する。ターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bはデバイス番号がともに同じ“01”となっておりターゲットデバイス10Aのフラグ13Aがオンでフラグ13Bがオフのため、読み出しはターゲットデバイス10Aで実行され、書込はターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bで並列して同時に実行される。これにより、ターゲットデバイス10Aの移行データがターゲットデバイス10Bに移行される。
【0070】
全ての移行データの移行が終了すると(S57)、移行制御部30はフラグ13Aをオフとしフラグ13Bをオンとして(S58)、ターゲットデバイス10Aを現用から予備に切り換え、ターゲットデバイス10Bを予備から現用に切り換える。これ以降はリード系要求に対してターゲットデバイス10Bが応答し、ターゲットデバイス10Aは応答しなくなる。
【0071】
移行処理の実行中にはホストデバイス20から通常アクセス要求が発送されるが、ライト系の要求はターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bの双方で実行されるため、移行処理中の通常アクセスによる移行後のデータの更新を正常に反映することができる。
【0072】
また、現用・予備の切り換え後も、ライト系の要求に対してはターゲットデバイス10Bと並列にターゲットデバイス10Aも処理を行うので、メモリ部17Aとメモリ部17Bとは同じ内容に保持される。従って、切り換え後に現用状態となったターゲットデバイス10Bで1ビットエラーが発生した場合、即座にターゲットデバイス10Aを現用に戻すように切り換えることもできる。
【0073】
すなわち、移行制御部30は切り換え後に現用状態となったターゲットデバイス10Bで予め決められた事象の1つである1ビットエラーが発生した場合、ターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bはともにデバイス番号が“01”となっておりメモリ部17Aとメモリ部17Bの内容も一致しているため、移行処理を省略してフラグ13Aをオン(現用状態)に戻し、フラグ13Bをオフ(予備状態)に戻すことにより切り換えを実行できる。
【0074】
また移行制御部30がステップS56を実行中、ホストデバイス20はデバイス番号“01”に対する通常アクセスによる要求を実行することができる。通常アクセスによる要求とは移行制御部30が障害処理と移行処理のために要求部21に指示して発行するアクセス要求でなく、エラーが発生しなくてもシステム運用に当たり実行されるアクセスで生成される要求のことである。この通常アクセスによる要求は1データサイズ毎の移行処理中を避けて1データサイズ毎の移行処理の間に実行するようにホストデバイス20により制御される。すなわち1データサイズの移行処理の読み出しの状態で同アドレスに対する書込要求を実行することにより書き込んだデータが移行処理の書き戻しにより誤って上書きされることを防止するためである。なお、リード系の要求であれば1単位の移行処理中に実行してもかまわない。
【0075】
また移行制御部30がステップS56を実行中、通常アクセスによる要求がリード系要求の場合、リードデータはターゲットデバイス10Aから応答される。通常アクセスによる要求がライト系要求の場合、ライト系要求はターゲットデバイス10Aとターゲットデバイス10Bで並列して実行される。従って移行処理途中の状態において通常アクセスによる要求は正常に実行されるとともに、移行元のターゲットデバイス10Aと移行先のターゲットデバイス10Bの双方で実行され、メモリ部17Aとメモリ部17Bの内容は同じ内容が維持される。
【0076】
このように、本発明においては、移行先のターゲットデバイス10のデバイス番号を変更するとともにフラグ13を変更するだけでターゲットデバイス10を予備に切り換えることができるので、ホストデバイス20はターゲットデバイス10を切り換えるための特別な手段を設ける必要がなく、ハードウェア量の増加やアクセス時間の低下等を回避できる。
【0077】
また、本発明においては、移行処理中の通常アクセスによるライト系要求の処理を移行前のターゲットデバイス10と移行後のターゲットデバイス10の双方に実行させるための特別な処理も不要となり、移行処理の処理時間を短縮することができる。ここでいう特別な処理とは、例えば移行前のデバイス番号に対するライト系要求を検出した場合、ホストデバイス20が移行後のデバイス番号に対するライト系要求を生成して実行する処理であり、このような処理をしないと切り換え時のメモリ部17の内容を一致させることができない。
【0078】
或いは、ここでいう特別な処理とは、ホストデバイス20とターゲットデバイス10とバス40にマルチキャスト機能を設けることである。例えば、図2の要求パケットに第2のデバイス番号を指定する領域を定義し、ホストデバイス20が移行元のデバイス番号に加えて移行先のデバイス番号を要求パケットに組み込んで送出し、ターゲットデバイス10は比較部15を2つ設けて要求パケット内の2つのデバイス番号をそれぞれ比較しいずれかが一致したら処理を実行するように構成しなければならない。
【0079】
また、以上の説明では、予め決められた事象として訂正可能な1ビットエラーを例に説明したが、訂正不能な2ビットエラーが発生した場合についても本発明を適用できる。訂正可能エラーの場合エラー検出訂正部16により即座にエラーの修復ができるためエラーの発生の報告のみで、エラーを修復するための処理を必要としないが、訂正不能なエラーの場合よく知られるようにそのエラーを修復する処理が必要となる。
【0080】
このエラー修復処理はよく知られているので説明は省略するが、例えば訂正不能エラーが発生する前の状態に戻して再実行する処理となる。移行制御部30は移行処理を開始する前に移行先の(予備の)ターゲットデバイス10のデバイス番号を移行元の(現用の)ターゲットデバイス10のデバイス番号に更新することにより、修復処理の有無にかかわらず移行処理中のライト系要求を同時に処理できる。
【0081】
また、以上の説明では、移行制御部30をホストデバイス20と独立して実装する構成を示したが、図4のように移行制御部30をホストデバイス20内に実装してもよい。この構成では、移行制御部30とホストデバイス20との間を障害用バス41で接続する必要はなく、特に移行制御装置を持たないシステムでは低コストで実現できる。
【0082】
また、以上の説明では、ターゲットデバイス10Aの障害通知により切り換え処理と移行処理を起動するようにしたが、オペレータの指示により起動するようにしてもよい。その場合、障害通知を受けると移行制御部30はエラー発生を図示しない表示装置に表示させ、オペレータからの操作を待って切り換えと移行の処理を開始するようにする。従って、番号保持部12に設定する新たなデバイス番号をターゲットデバイス10に設けたディップスイッチで可能とし、オペレータがディップスイッチを変更した後に障害処理と移行処理を起動することもできる。例えば予備のターゲットデバイス10が複数あり予めスケジュールできない或いはその時点の状況に応じて柔軟に管理をしたい場合でも、オペレータの操作により切り換えの実行の有無や予備ターゲットデバイス10の割当等も柔軟に実行できる。
【0083】
また、以上の説明では、ターゲットデバイス10としてメモリ装置を例に説明したが、メモリ装置以外のターゲットデバイス10でも、移行データが存在すれば移行処理においてメモリ装置と同様の効果を得ることができ、移行処理を必要としない場合でもターゲットデバイス10を切り換えるための手段をホストデバイス20内に設けなくともよくなることは変わらない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示した図である。
【図2】本発明のバス40で転送される要求パケットの構成を示した図である。
【図3】本発明のターゲットデバイス10の切り換えと移行の動作を示したフローチャートである。
【図4】本発明の移行制御部30をホストデバイス20から独立させた構成を示した図である。
【符号の説明】
【0085】
10 ターゲットデバイス
11 制御部
12 番号保持部
13 フラグ
14 パケット保持部
15 比較部
16 エラー検出訂正部
17 メモリ部
20 ホストデバイス
21 要求部
30 移行制御部
40 バス
41 障害用バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更することを特徴とするデバイスの移行方式。
【請求項2】
ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更することを特徴とするデバイスの移行方式。
【請求項3】
前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する処理を含むことを特徴とする請求項1又は2のデバイスの移行方式。
【請求項4】
前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行制御部が前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻すことを特徴とする請求項1又は2のデバイスの移行方式。
【請求項5】
ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記バスは要求の宛先を要求に含まれる宛先デバイス番号で指定し、
前記移行制御部は、現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBにターゲットデバイスAと同じデバイス番号を設定してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、
前記ターゲットデバイスA及びBは、移行処理中にデータの返送を伴わないライト系の要求を前記ホストデバイスから受けると、受けた要求を同時に実行することを特徴とするデバイスの移行方式。
【請求項6】
ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更することを特徴とするデバイスの移行方法。
【請求項7】
ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記ターゲットデバイスは、自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、前記ホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御し、
前記移行制御部は、前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更することを特徴とするデバイスの移行方法。
【請求項8】
前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する処理を含むことを特徴とする請求項6又は7のデバイスの移行方法。
【請求項9】
前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行制御部が前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻すことを特徴とする請求項6又は7のデバイスの移行方法。
【請求項10】
ホストデバイスとバスで接続する複数の同種のターゲットデバイスと、ターゲットデバイスの移行処理を制御する移行制御部を有し、
前記バスは要求の宛先を要求に含まれる宛先デバイス番号で指定し、
前記移行制御部は、現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBにターゲットデバイスAと同じデバイス番号を設定してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、
前記ターゲットデバイスA及びBは、移行処理中にデータの返送を伴わないライト系の要求を前記ホストデバイスから受けると、受けた要求を同時に実行することを特徴とするデバイスの移行方法。
【請求項11】
バスで接続するホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更し、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更することを特徴とする移行制御装置。
【請求項12】
自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、バスで接続するホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始し、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更することを特徴とする移行制御装置。
【請求項13】
前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する処理を含むことを特徴とする請求項11又は12の移行制御装置。
【請求項14】
前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻すことを特徴とする請求項11又は12の移行制御装置。
【請求項15】
バスで接続されたホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対しては現用状態のときに応答し予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
デバイス番号Aが設定されている現用状態のターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、予備状態のターゲットデバイスBのデバイス番号をデバイス番号Aに変更する手順と、ターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始する手順と、前記移行処理が終了したときにターゲットデバイスAを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBを現用状態に変更する手順とをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項16】
自身のデバイス番号を保持するデバイス番号保持部と、自身が現用状態か予備状態かを示すフラグとを有し、バスで接続するホストデバイスから発送された要求に含まれる宛先デバイス番号が前記デバイス番号保持部に保持される自身のデバイス番号と一致したとき前記発送された要求を実行し、データの返送を必要とするリード系の要求に対してはフラグが現用状態のときに応答しフラグが予備状態のときには応答しないように前記要求の実行を制御する複数のターゲットデバイスに対して、
前記フラグが現用状態を示しデバイス番号Aが設定されているターゲットデバイスAから予め決められた事象の発生を検出すると、前記フラグが予備状態のターゲットデバイスBに対してデバイス番号保持部に保持するデバイス番号をデバイス番号Aに変更してターゲットデバイスAが保持するデータをターゲットデバイスBに移行する移行処理を開始する手順と、移行処理が終了したときにターゲットデバイスAのフラグを予備状態に変更するとともにターゲットデバイスBのフラグを現用状態に変更する手順とをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項17】
前記ターゲットデバイスはデータを記憶するメモリ部を有し、前記移行処理はターゲットデバイスAのメモリ部のデータをターゲットデバイスBのメモリ部に複写する手順をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項15又は16のプログラム。
【請求項18】
前記移行処理の終了後も前記ターゲットデバイスAのデバイス番号をデバイス番号Aのままとし、前記移行処理の終了後に前記ターゲットデバイスBで予め決められた事象が発生したときに前記移行処理をせずに前記ターゲットデバイスAを現用状態に戻し、前記ターゲットデバイスBを予備状態に戻す手順をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項15又は16のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−83757(P2008−83757A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259916(P2006−259916)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】