説明

デポ型注射剤組成物とその調製方法

少なくとも1種の活性物質を場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤と共に含む新規なデポ型注射剤組成物が、好ましくは少なくとも二つの成分を含む多成分系の形態で提供され、この組成物はその投与を必要とする対象への投与時に体液と接触すると注射部位においてin situゲル状デポ剤もしくはインプラントを形成する。このような組成物の調製方法および使用方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、最小限のバースト放出しか起こさない新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物を提供する。この組成物は再構成可能(reconstitutable)な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、好ましくは少なくとも二つの成分を含む多成分系の形態であり、活性物質の放出を長期間持続的に行なう。本発明はこのような組成物の調製方法および使用方法も開示する。好ましくは上記組成物は、特に慢性の疾患に関連して治療効果を高め、その結果患者のコンプライアンスは向上する。
【背景技術】
【0002】
薬物投与の際、活性物質(薬物)の治療的血中濃度を長期間維持し得る制御放出もしくは持続放出性製剤を用いることがしばしば望ましい。制御放出性製剤は、患者に便利でそのコンプライアンスも向上するように投与頻度を低下させ、また副作用の重篤度および発生頻度も低下させる。制御放出もしくは持続放出性製剤は、実質的に一定の血中濃度を維持し、特に1日に数回投与される通常の即時放出性製剤に関連する薬物の血中濃度変動を回避することにより、通常の即時放出性製剤よりも優れた治療プロファイルをもたらし得る。注射薬物の放出時間を延長し、それによって薬物の作用を長時間持続させたり毒性の発現を抑えたりすることも望ましい場合が多い。体内で容易に溶解する製剤は普通、急速に吸収されて突然有効薬物のバーストを起こすが、薬理活性物質は徐々に放出される方が望ましい。「バースト」放出の結果往々にして、有益物質の全部ではないとしてもその大部分がごく短期間で、例えば数時間または1、2日で放出されてしまう。制御放出性組成物を提供する試みは幾つも為されているが、所望期間にわたる徐放出、組織液中での安定性、低毒性、調製再現性、および組成物に関連する望ましくない物理的、生化学的、または有毒な作用の排除を実現するといった、長期作用型の非経口製剤に関する課題を解決し得たものは無い。
【0003】
患者のコンプライアンスが問題である時の有望な対処法の一つに、薬物組成物を長期作用型製剤が得られるように、すなわち1回の投与で薬物が長期間持続的に放出される製剤が得られるように設計することが有る。そうすることで、患者が遵守しなければならない投与計画が簡略化され、頻繁な投与を求める厳しいスケジュールの下で起こる、コンプライアンスが得られない事態は減少する。上記のような製剤の一例として、注射により筋肉内および皮下を始め様々な経路で投与可能なデポ製剤が挙げられる。デポ型注射剤は具体的には、非経口持続放出性製剤の通例として、薬物を数日、数週間、数ヵ月、さらには数年にも及ぶ長期間持続的に放出するように製剤化される。
【0004】
薬物の送達に注射式インプラントを用いることは周知である。1980年代以降、生分解性と非生分解性との両方のインプラントが市販されている。その例には、乳癌治療に用いられるゴセレリンのポリラクチド−コ−グリコリド製剤であるZoladex(R)、および非生分解性のシリコーン製避妊装置であるNorplant(R)が含まれる。微細マイクロ粒子状の注射製剤も周知であり、その一例に、前立腺癌治療に用いられるロイプロリド製剤のLupron Depot(R)が有る。既製送達系はその投与に欠点を有する。Zoladex(R)のような円柱体の埋め込みには比較的大きい内径を有する注射針が必要である。しかし、マイクロ粒子またはナノ粒子を含む注射製剤のin vivo投与に用いる注射針はそれより小径のものでよい。最近、液体として注射されるがin vivoで固形製剤に変化する製剤が開発されており、「in situゲル化系」と呼称される。この製剤は内径の小さい注射針で筋肉内または皮下に注射することができ、また生体適合性の溶媒しか用いなくてよい。
【0005】
アロマターゼ阻害剤は、組織におけるエストロゲン合成を阻害するべく体系的に作用する一連の化合物である。この化合物は、副腎性アンドロゲン(アンドロステンジオンおよびテストステロン)のエストロゲン(エストロゲンおよびエストラジオール)への変換を触媒する酵素アロマターゼを阻害することによりエストロゲン生合成を妨げる。従って、閉経後女性のホルモン応答性乳癌の有望な治療法として、上記化合物の開発には以前から関心が向けられている。アナストロゾール(ARIMIDEX(R))は進行性乳癌の治療に有効な、高感受性でかつ十分許容される非ステロイド系アロマターゼ阻害剤である。ドネペジルとその塩は、認知症および注意欠陥障害を含めた様々な障害の治療に適用される。特に塩酸ドネペジルは、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対する対症療法に医薬活性物質として用いられ、現在商品名ARICEPT(R)の下に、1日1回経口投与される5mgおよび10mg用量のフィルムコーティング錠に製剤化されている。
【0006】
特許文献1は、生体適合性ポリマーと、該ポリマーを溶解させて粘稠なゲルを形成する溶媒と、有益物質と、粘稠ゲル中に分散した液滴相の形態の乳化剤とを含むデポ型注射剤ゲル組成物を開示している。特許文献2では、生分解性ヒドロゲル連続相と、規定のマイクロ粒子を含む粒状不連続相と、少なくとも粒状不連続相中に存在する、送達されるべき物質とを含む二相ポリマー性物質送達組成物が特許請求されている。この文献は、生活性物質の放出がマイクロ粒子相のみによってか、またはマイクロ粒子とゲルマトリックスとの両方において調節されることを記載している。当該発明は逆熱ゲル化型のマトリックスを開示している。この発明はしかし、注射が容易で、デポ型注射剤として用いられる再構成懸濁液組成物中に非水和セルロース系ポリマーを用いて溶媒を消失させた結果注射部位においてポリマー性ヒドロゲルが形成されることを、明確な解説により開示してはいない。
【0007】
特許文献3は、可溶化されたかまたはされていないアリール複素環化合物と、液状賦形剤とを含むデポ型注射製剤調製用医薬キットに係わり、前記液状賦形剤は粘度調節剤を含み、アリール複素環化合物が可溶化されていない場合は可溶化剤も含む。特許文献1は、生体適合性ポリマーと、該ポリマーを溶解させて粘稠なゲルを形成する溶媒と、有益物質と、粘稠ゲル中に分散した液滴相の形態の乳化剤とを含むデポ型注射剤ゲル組成物を開示している。特許文献4は活性物質およびキャリアー材料を含む非経口投与用組成物に係わり、キャリアー材料は平均直径1nmから100μmの球形マイクロ粒子であり、この粒子は少なくともその一部が、非水溶性の線状多糖から成る。特許文献5は、対象に非経口投与される製剤であって、少なくとも1種の水混和性溶媒と、少なくとも1種のゲル化剤と、少なくとも1種の活性物質とを含み、ゲル化剤が粒状で、溶媒中に懸濁することを特徴とする製剤を開示している。しかし、当該発明は、生分解性マイクロ粒子中に放出制御粒子形態の薬物と共に分散させたゲル化系を同時に用いることによって薬物放出パターンを二重に調節することは開示していない。
【0008】
特許文献6はナノ粒子状のオランザピン注射剤組成物を開示しており、この組成物は、約1週間以上の治療効果を生じる有効平均粒径を有するオランザピンナノ粒子と、少なくとも1種の表面安定剤と、製薬学的に許容されるキャリアーとを含む。特許文献7は、生理的pHを下回る等電点を有するポリペプチドのイオン性固体錯体と、アニオン性キャリアー分子とを含む医薬製剤を開示している。特許文献8はデポ型注射剤組成物を開示しており、この組成物は生侵食性の生体適合性ポリマーと、25℃での水混和性が7%以下であり、前記ポリマーを可塑化して共にゲルを形成するのに有効な量で存在する芳香族アルコール溶媒と、実質的に低級アルコールから成る群から選択され、チキソトロピー組成物の形成に有効なチキソトロピー付与量でポリマー溶液と混合されたチキソトロピー付与剤であって、前記量が溶媒およびチキソトロピー付与剤の合計重量の15重量%を下回るチキソトロピー付与剤と、有益物質とを含む。特許文献9は、医薬活性化合物および親油性対イオンを含む塩と、薬剤学的に許容される溶媒とを含む組成物に係わり、前記塩および溶媒は溶液を形成し、組成物を水へ注入すると塩の少なくとも一部は析出する。特許文献10は、可溶化されたジプラシドンを含む粘稠な、またはin situで粘稠となるデポ型注射製剤を開示している。可溶ジプラシドン−シクロデキストリン凍結乾燥複合体を、モノステアリン酸アルミニウムゲル化ゴマ油などの非水性粘度調節剤、ならびにステアリン酸およびN−メチルピロリドンなどのin situゲル化系中に懸濁させる。特許文献11および特許文献12は、アナストロゾール、ポリラクチドポリマーまたはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー、および溶媒を含むin situゲル化および埋め込み製剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20020034532号
【特許文献2】米国特許第6287588号
【特許文献3】米国特許出願公開第20040146562号
【特許文献4】ドイツ特許第DE19847593号
【特許文献5】米国特許出願公開第20050153841号
【特許文献6】米国特許出願公開第20060154918号
【特許文献7】米国特許出願公開第20060193825号
【特許文献8】米国特許出願公開第20040024069号
【特許文献9】米国特許出願公開第2005163859号
【特許文献10】米国特許出願公開第20040138237号
【特許文献11】国際公開第WO200726145号
【特許文献12】国際公開第WO200726138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特にポリ(ラクチド/グリコリド)ポリマーを用いた生物活性物質またはポリペプチドの1〜2ヵ月送達系を得るべく、制御放出の研究が進められている。しかし、そのような系のほとんどは以下の問題点を一つ以上伴う。すなわち、カプセル化率が低かったり、大量の「バースト放出」が起こり、その後「無放出」または「遅滞段階」を経てポリマーの分解に至ったりする。通常、前記ポリマーからの放出は約4週間から約数ヵ月にわたり生起させる。加えて、このような放出を実現するために通常かなり大量の高分子量疎水性ポリマーが用いられ、その結果しばしば、活性コア放出後長期にわたって投与部位にポリマーが残留する。本発明は、従来技術に伴う制約を軽減する新規なin situゲル化デポ剤もしくはインプラント組成物を提供する。
【0011】
薬物濃度を持続させる製剤組成物を提供する試みは、活性物質の放出を長期間行なわせるために生分解性材料を用いることを含め幾つか開示されている。従来技術において開示された持続放出性非経口組成物の多くは、通常「バースト」と呼称される、投与後最初の24時間にわたる生物活性物質の大量放出を起こす恐れが有る。このバーストにより生物活性物質の濃度が望ましくないほどに上昇しかねず、その場合には有毒作用が生じ、および/またはその後の物質放出が僅かとなって活性物質濃度が治療的濃度を下回る。従って、例えば活性物質のバースト放出を低減することにより放出動態を適正に制御でき、活性物質の放出を長期間、例えば1週間、1ヵ月、または3ヵ月以上継続でき、しかも容易に注射可能である持続放出性非経口デポ剤組成物を提供することの必要性は依然として存在する。また、特に長期間使用されるデポ型注射剤組成物であって、臨床的に許容され、有効で、かつ安全であり、病的状態を惹起する恐れが小さく、費用対効果に優れるものの必要性も未だ満たされていない。上記のような組成物により、相当長期の治療期間中薬物を毎日投与しなくてもよくなるので、患者のコンプライアンスは著しく改善される。本発明は、従来技術に伴う制約を軽減する新規なin situゲル化デポ剤もしくはインプラント組成物を提供する。
【0012】
本発明は、最小限のバースト放出しか起こさない新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物であって、少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、好ましくは少なくとも二つの成分を含む多成分系の形態であり、活性物質の放出を長期間持続的に行なう組成物を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、活性物質のバースト放出が最小限となる新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物であって、この製剤が対象へ非経口投与された時に有効量の活性物質が少なくとも1週間にわたり持続的に放出され、および/または活性物質のバースト放出が標準的な製剤に比べて低減される組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物であって、組成物のホスト生体への投与直後に固形または半固形のデポ剤ゲルもしくはインプラントが形成されるのに十分な生理的水性環境内で粘度上昇剤が次第に膨潤することで実質的に凝集性のゲル様塊が形成され、その結果活性物質のバーストが最小限となる組成物を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、活性物質のバースト放出が最小限となる新規な二成分系in situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物を提供することを目的とし、この組成物は製剤総重量に基づき約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の生分解性ポリマーと、約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに約0.1〜約99.8% w/wの1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、前記生分解性ポリマーは平均分子量約1,000〜約200,000ドルトンのポリラクチドポリマー、ポリグリコリドポリマー、またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーであり、この組成物は活性物質の放出を長期間持続的に行なう。
【0016】
本発明は、少なくとも二つの成分を含み、成分1は少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーとを含み、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤も含む、好ましくはマイクロ粒子またはナノ粒子状の易分散性組成物の形態であり、成分2は少なくとも1種の水混和性または水不混和性溶媒を場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤と共に含む成分1再構成用液状賦形剤の形態である新規なデポ型注射剤組成物であって、成分1および2のいずれか一方または両方中に存在する少なくとも1種の粘度上昇剤を含む組成物を提供することを目的とする。粘度上昇剤は成分1および2のいずれか一方または両方中に非水和形態で存在する。
【0017】
本発明は、新規なデポ型注射剤組成物であって、少なくとも二つの成分を含み、成分1は少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含む生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子の形態であり、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子はその一部または全部が粘度上昇剤中に埋没し、粘度上昇剤は体液との接触時に水和し、生分解性マイクロ粒子周囲にゲルを形成することにより放出調節剤として作用する組成物を提供することを目的とする。
【0018】
本発明は、新規なデポ型注射剤組成物であって、少なくとも二つの成分を含み、成分1は少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含む生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子の形態であり、粘度上昇剤はマイクロ粒子またはナノ粒子安定剤、活性物質放出調節剤、および/またはゲル形成剤として作用する生体適合性セルロース系ポリマーである組成物を提供することを目的とする。
【0019】
本発明は、体内で固形または半固形の生分解性ゲルもしくはインプラントをin situ形成するための流動性組成物をもたらす新規なデポ型注射剤組成物の提供も目的とし、前記流動性組成物は少なくとも1種の生分解性ポリマー、少なくとも1種の粘度上昇剤、および場合によっては少なくとも1種の生体適合性溶媒を含み、生体適合性溶媒は生分解性ポリマーおよび/または粘度上昇剤の少なくとも一部を可溶化し、また該溶媒は水性体液中に混和または分散可能で、体内に置かれると組成物から体液中へ消散、拡散または浸出し得、その際生分解性ポリマーおよび/または粘度上昇剤は凝固もしくは析出してゲルもしくはインプラントを形成する。
【0020】
本発明は、上記新規な注射剤組成物を調製する方法であって、活性物質を含むマイクロ粒子またはナノ粒子、および該マイクロ粒子またはナノ粒子を投与前に再構成できる液状賦形剤を調製することを含む方法を提供することも目的とする。
【0021】
本発明は、生体においてデポ剤ゲルもしくはインプラントをin situ形成する方法であって、in situゲル化製剤を本明細書に記載した方法に従って調製し、この製剤を体内に配置し、液状賦形剤を分散または消散させて固形またはゲルのインプラントを生成させることを含む方法を提供することも目的とする。
【0022】
本発明は、本明細書に記載した新規組成物から生分解性デポ剤ゲルもしくはインプラントを、それを必要とする対象の体内でin situ形成するのに好適な医薬キットであって、活性物質を含み、場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤も含むマイクロ粒子を収容した装置と、液状賦形剤および場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤を収容した装置とを含み、これら二つの装置の内容物が対象の体内への投与前に互いに混合し得るように装置から排出される医薬キットを提供することも目的とする。
【0023】
本発明は、本明細書に記載したin situゲル化デポ製剤もしくはインプラント製剤を哺乳動物、特にヒトの、活性物質で治療可能な状態の治療用である医薬の製造に使用する方法を提供することも目的とする。
【0024】
本発明による組成物の使用方法であって、有効量の該組成物をそれを必要とする対象/患者に投与することを含む方法の提供も本発明の目的である。
【発明の効果】
【0025】
好ましくは、組成物は対象、特にヒトまたは動物に注射によって投与され、投与された組成物は医薬活性物質を所望の長期にわたって放出する薬物デポ剤を形成し、それによって特に慢性の疾患に関連して治療効果を高め、その結果患者のコンプライアンスは向上する。
【0026】
本発明の新規な組成物は好ましくは活性物質を特定の組織に局在させ、それによって当該組織に関連して治療効果を高める。本発明の組成物は、疾患または障害の予防、改善または治療を必要とする対象においてそのような目的で用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、最小限のバースト放出しか起こさない新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物であって、少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、好ましくは少なくとも二つの成分を含む多成分系の形態であり、活性物質の放出を長期間持続的に行なう組成物を提供する。以下の記載中特に断らない限り、活性物質は常にその薬剤学的に許容される塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、誘導体、またはこれらの混合物を包含するものとする。本明細書中に用いた「再構成可能」という語は、マイクロ粒子またはナノ粒子が投与前に水性、水−アルコール性または油性の液状賦形剤中に分散させ易いことを意味する。
【0028】
一実施形態において本発明は、最小限のバーストしか起こさない新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物であって、この製剤が対象へ非経口投与された時に有効量の活性物質が少なくとも1週間にわたり持続的に放出され、および/または活性物質のバースト放出が標準的な製剤に比べて低減される組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態において本発明は、新規なin situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物であって、組成物のホスト生体への投与直後に固形または半固形のデポ剤ゲルもしくはインプラントが形成されるのに十分な生理的水性環境内で粘度上昇剤が次第に膨潤することで実質的に凝集性のゲル様塊が形成され、その結果活性物質のバースト放出が最小限となる組成物を提供する。本発明の組成物は、in vivo投与時に形成されるin situゲル状マトリックス中に埋没する活性物質のマイクロ粒子またはナノ粒子を含み、従って二重の薬物放出制御機構、すなわち生分解性ポリマーと、体液と接触した粘度上昇性ポリマーのゲル化により形成されるゲル状マトリックスとによる制御放出を実現する。
【0030】
本発明は新規な注射剤組成物を提供し、この組成物は少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、好ましくは少なくとも二つの成分、すなわち成分1および成分2を含む多成分系の形態である。
【0031】
好ましい実施形態において本発明は、活性物質のバースト放出が最小限となる新規な二成分系in situゲル化デポもしくはインプラント型注射剤組成物を提供し、この組成物は製剤総重量に基づき約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の生分解性ポリマーと、約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに約0.1〜約99.8% w/wの1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化される。前記生分解性ポリマーは平均分子量約1,000〜約200,000ドルトンのポリラクチドポリマー、ポリグリコリドポリマー、またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーである。この組成物は活性物質の放出を長期間持続的に行なう。
【0032】
本発明はその一実施形態において、活性物質および少なくとも1種の生分解性ポリマーを約1:100から約100:1の活性物質対生分解性ポリマー比で含む新規な注射剤組成物を提供する。
【0033】
現在、疾患/障害の予防および/または治療のために中期乃至長期投与を要する薬物の幾つかは毎日投与用の経口製剤として入手可能である。前記予防や治療を必要とする患者は、最適の治療効果が得られる望ましい治療的血漿中濃度を実現するべく薬物を毎日服用しなければならない。しかし、特に治療が長期にわたるか、生涯の半ばまたは終わりまで続く場合には、投薬を毎日行なうこのような投与計画に対して患者のコンプライアンスは得難い。従って、製剤組成物の毎日投与を不要とすることにより患者のコンプライアンス/患者にとっての利便性を改善し、患者に最適の治療効果をもたらす、上記のような活性物質の持続放出性製剤が求められており、このような製剤を本発明は注射剤組成物の形態で提供する。
【0034】
本発明の新規な注射剤組成物は薬物の投与頻度を低下させ、しかも、血漿中濃度−時間プロファイルの変動を有効に均すことにより副作用の少ない優れた治療効果を及ぼす。最も重要であるのは、本発明の持続放出性製剤は、癌、精神病といった慢性疾患/障害の長期治療を受けている患者の「生活の質」を改善することである。
【0035】
有効量の少なくとも1種の活性物質を含む本発明の新規な注射剤組成物は、投与に適し、かつ注射時に最小限の痛みしか生じない、実質的に僅かな量で投与すればよい。また、本発明のin situゲル化デポ剤もしくはインプラント組成物は、in vivo投与時にデポ剤が形成される間デポ剤からの薬物分配が徐々に行なわれるように設計され、その結果活性物質の初期「バースト」放出は驚くべく僅かとなる。このことは副作用の恐れを軽減すると共に、活性物質を長期間持続的に放出する上でのデポ剤の「寿命」を長引かせる。
【0036】
新規なデポ型注射剤組成物は、ポリラクチドポリマー、ポリグリコリドポリマー、あるいはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーといった高分子量の疎水性ポリマーが実質的に少量しか用いられなくても活性物質を長期間持続的に放出することができ、従って活性コア放出後に投与部位に残留するポリマーは減少する。さらに、本発明の組成物は、対象へのin vivo投与時にシステムが機能しなかったために用量が一気に放出される事態が回避されるか、または実質的に減少するように製剤化される。
【0037】
別の実施形態において、本発明の新規なデポ型注射剤組成物は液状賦形剤中に分散した複数群のマイクロ粒子またはナノ粒子を含み得、その際賦形剤は、in vivo投与時に活性物質粒子を捕捉したデポ剤が形成された後異なる特定の時間間隔で活性物質が放出されるように構成される。一実施形態によれば、生分解性ポリマーと粘度上昇剤との相対比率を変更することにより、本発明の組成物からの活性物質のバースト放出の時間および量を変えることができる。
【0038】
一実施形態において、本発明の組成物はin vivo投与時に実質的に均質なスポンジ様ゲルもしくはインプラントを形成し、ゲル同様のコンシステンシーを従来技術による装置よりも長期間維持して活性物質の長期送達を可能にする。しかも、デポ剤ゲルもしくはインプラントの表面の孔は、埋め込み直後のインプラントに体液由来の水分が進入するのを制限することでバースト現象を制御する。
【0039】
ポリマー組成物をゲル状注射剤として投与する場合、粘稠なゲルを適度な力で注射針から押し出せるようにポリマー溶解レベルと得られるゲル粘度との兼ね合いが必要となり、また起こり得るバースト現象との兼ね合いも必要となる。高粘度のゲルは、甚だしいバースト現象を伴わずに有益物質を送達することを可能にするが、注射針からの押し出しが困難になりかねない。そこで本発明の組成物は、非水和形態で存在する粘度上昇剤を含むように設計され、この粘度上昇剤は投与前の再構成時には膨潤せず、または注射剤組成物を望ましくないほど粘稠にせず、注射針からの注射を容易にする。同時に、活性物質の望ましくない初期「バースト」放出は防止されるか実質的に最小限となり、なぜなら注射剤組成物中の水和していない粘度上昇剤がin vivo投与後徐々に水和し、膨潤してゲル様の凝集塊を形成するからである。活性物質はこの塊を通して徐々に放出され、その結果薬物放出が長期間持続する。
【0040】
一実施形態において、本発明による組成物は単発的な初期バースト放出を起こさず、最初から徐々に放出を行ない、この放出は必要かつ十分な持続放出プロファイル(循環濃度)へ向けて規則的に安定する。活性物質のin vivo放出の継続性はこの種の製剤の重要な利点であり、なぜなら患者の体内を循環する薬物量が治療効果を得るのに十分なレベルに維持され得、循環する活性物質の濃度は初期バーストが起こらないので極端に変動せず、治療上要求される濃度以上に保たれるからである。このような放出プロファイル特性を有する製剤を用いれば、治療間隔を長くし、また投与頻度を低下させて、特に中期乃至長期の病的状態の治療に対する患者のコンプライアンスを改善できることを、本発明の発明者等は発見した。
【0041】
本発明はその一実施形態において、活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含む新規な注射剤組成物であって、投与前に水性、水−アルコール性または油性の液状賦形剤で再構成され得る生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化される組成物を提供する。この新規な組成物は、in vivo投与時に体液と接触するとデポ剤を形成し、その結果活性物質の放出を長期間持続的に行なうin situゲル化組成物もしくはインプラント組成物の形態を取る。本発明の新規な組成物は活性物質を少なくとも7日間、好ましくは少なくとも15日から6ヵ月以上の間持続的に放出し得る。
【0042】
本発明はその一形態において、少なくとも二つの成分を含み、成分1は少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーとを含み、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤も含む、好ましくはマイクロ粒子またはナノ粒子状の易分散性組成物の形態であり、成分2は少なくとも1種の水混和性または水不混和性溶媒を場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤と共に含む成分1再構成用液状賦形剤の形態である新規なデポ型注射剤組成物であって、成分1および2のいずれか一方または両方中に存在する少なくとも1種の粘度上昇剤を含む組成物を提供する。粘度上昇剤は成分1および2のいずれか一方または両方中に非水和形態で存在する。
【0043】
別の実施形態において本発明は、少なくとも二つの成分を含むデポ型注射剤組成物であって、成分1は少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含む生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子の形態であり、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子はその一部または全部が粘度上昇剤中に埋没し、粘度上昇剤は体液との接触時に水和し、生分解性マイクロ粒子周囲にゲルを形成することにより放出調節剤として作用する組成物を提供する。或る形態では、粘度上昇剤はマイクロ粒子またはナノ粒子安定剤、活性物質放出調節剤、および/またはゲル形成剤として作用する生体適合性セルロース系ポリマーである。
【0044】
一実施形態において、新規なデポ型注射剤組成物は少なくとも二つの成分を含み、その際成分1は易分散性組成物を含み、この組成物は好ましくは、少なくとも1種の活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、場合によってはさらに、所望の薬物放出特性を有するマイクロ粒子またはナノ粒子をもたらすチャンネル形成剤とを含むマイクロ粒子またはナノ粒子の形態であり、成分2は成分1再構成用の液状賦形剤である。この組成物は成分1および2のいずれか一方または両方中に存在する少なくとも1種の粘度上昇剤を含み、体液と接触すると好ましくは注射部位においてin situゲルを形成する。
【0045】
本発明は、体内で固形または半固形の生分解性ゲルもしくはインプラントをin situ形成し得る流動性の新規なデポ型注射剤組成物を提供する。別の実施形態において本発明は、水性賦形剤または油性賦形剤といった好適な液状賦形剤中に溶解、分散または懸濁した活性物質およびPLGAポリマー含むin situゲル化組成物を提供する。本発明の組成物が水または体液と接触すると、ポリマーおよび活性物質の両方が析出し、その後活性物質を内包したゲルもしくはインプラントが形成される。このゲルもしくはインプラントから後に活性物質が長期間拡散して、所望の薬理作用をもたらす。さらに別の実施形態において、活性物質はマイクロスフェア、ナノスフェア、リポソーム、リポスフェア、ミセル等といった粒子にカプセル化その他の手段で内包され得、あるいはまたポリマーキャリアーに結合されてもよい。別の実施形態において、注射剤組成物の調製に有用な活性物質のマイクロ粒子またはナノ粒子は、活性物質を含む溶液または懸濁液の噴霧乾燥を含む方法によって製造される。さらに別の実施形態において、マイクロ粒子またはナノ粒子を含む本発明の注射剤組成物は、無針注射器を用いて非経口、経皮、経粘膜または皮下的経路から送達可能である。
【0046】
本発明の活性物質は、単独でかまたは組み合わせて用いられるアドレナリン作動薬; 副腎皮質ステロイド; 副腎皮質抑制薬; 嫌酒薬; アルドステロンアンタゴニスト; アミノ酸; 同化薬; 蘇生薬; 鎮痛薬; アンドロゲン; 麻酔薬; 食欲低下薬; 下垂体前葉抑制薬; 駆虫薬; 抗ざ瘡薬; 抗アドレナリン作動薬; 抗アレルギー薬; 抗アメーバ薬; 抗アンドロゲン; 抗貧血薬; 抗狭心症薬; 抗不安薬; 抗関節炎薬; 抗喘息薬; 抗アテローム性動脈硬化症薬; 抗菌薬; 抗胆石症薬; 抗胆石形成薬; 抗コリン作動薬; 血液凝固阻止薬; 抗コクシジウム薬; 抗痙攣薬; 抗鬱薬; 抗糖尿病薬; 止瀉薬; 抗利尿薬; 解毒薬; 鎮吐薬; 抗癲癇薬; 抗エストロゲン; 抗線維素溶解薬; 抗真菌薬; 抗緑内障薬; 抗血友病薬; 抗出血薬; 抗ヒスタミン薬; 抗高脂血症薬; 抗高リポタンパク血症薬; 抗高血圧症薬; 抗低血圧症薬; 抗感染薬; 抗炎症薬; 抗微生物薬; 抗片頭痛薬; 抗黴薬、制吐薬、抗新生物薬、抗好中球減少症薬、抗強迫薬; 抗寄生虫薬; 抗パーキンソン症候群薬; 蠕動減少薬; 抗ニューモシスティス薬; 増殖抑制薬; 抗前立腺肥大症薬; 抗原虫薬; 鎮痒薬; 抗精神病薬; 抗リウマチ薬; 抗住血吸虫薬; 抗分泌薬; 鎮痙薬; 抗血栓症薬; 鎮咳薬; 抗潰瘍薬; 抗尿石症薬; 抗ウイルス薬; 良性前立腺過形成治療薬; 血中グルコース調整剤; 骨吸収抑制剤; 気管支拡張薬; 炭酸脱水酵素阻害剤; 心抑制薬; 心保護薬; 強心薬; 心血管薬; 催胆薬; コリン作動薬; コリンエステラーゼ不活性化剤; コクシジウム抑制薬; 向知性薬; 抑制薬; 利尿薬; ドパミン作動薬; 酵素阻害剤; エストロゲン; 線維素溶解薬; 蛍光物質; 酸素フリーラジカルスカベンジャー; 胃腸運動誘起剤; グルココルチコイド; 性腺刺激成分; 体毛成長刺激薬; 止血薬; ヒスタミンH受容体アンタゴニスト; ホルモン; コレステロール低下薬; 血糖降下薬; 脂質低下薬; 降圧薬; 免疫薬; 免疫調節薬; 免疫調整薬; 免疫賦活薬; 免疫抑制薬; インポテンス治療補助剤; 阻止薬; 角質溶解薬; LNRHアゴニスト; ルテオリジン; 記憶補助剤; 精神活動強化薬; 気分調整薬; 粘液溶解薬; 散瞳薬; 鼻鬱血除去薬; 神経筋遮断薬; 神経保護薬; NMDAアンタゴニスト; 非ホルモン性ステロール誘導体; 子宮収縮薬; プラスミノーゲン活性化因子; 血小板活性化因子アンタゴニスト; 血小板凝集阻止薬; 卒中後および頭部外傷後治療薬; 相乗因子; プロゲスチン; プロスタグランジン; 前立腺肥大阻止薬; プロチロトロピン; 向精神薬; 肺表面活性剤; 放射性物質; 調整薬; 弛緩薬; 再分配剤; 硬化薬; 鎮静薬; 催眠鎮静薬; 選択的アデノシンA1アンタゴニスト; セロトニンアンタゴニスト; セロトニン阻害薬; セロトニン受容体アンタゴニスト; ステロイド; 多発性硬化症対症薬; 甲状腺ホルモン; 抗甲状腺薬; 甲状腺ホルモン擬似物質; トランキライザー; 筋萎縮性側索硬化症治療薬; 脳虚血治療薬; ページェット病治療薬; 不安定狭心症治療薬; 尿酸排泄薬; 血管収縮薬; 血管拡張薬; キサンチンオキシダーゼ阻害剤、およびこれらの薬物の製薬学的に許容される塩、エステル、アミド、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、代謝産物、またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。
【0047】
好ましくは本発明の活性物質は、抗新生物薬、モノクローナル抗体、免疫療法薬もしくは放射線療法薬、または生体応答調節物質を含む群から非限定的に選択された抗悪性腫瘍薬である。好適な生体応答調節物質に、インターロイキン、インターフェロンα、βまたはδ、および腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホカインおよびサイトカインが含まれる。異常な細胞増殖に起因する障害の治療に有用であるその他の化学療法薬として、単独でかまたは組み合わせて用いられるアルキル化剤、例えばメクロレタミン、シクロホスファミド、メルファランおよびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード; タムスロシン; ブスルファンなどのアルキルスルホネート; カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシンなどのニトロソウレア; ダカルバジンなどのトリアゼン; 葉酸類似体、例えばメトトレキセートなどの代謝拮抗物質; フルオロウラシルおよびシタラビンなどのピリミジン類似体; メルカプトプリンおよびチオグアニンなどのプリン類似体; パクリタキセル、ドセタキセルまたはPNU−1とったタキサン; 天然物、例えばビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンデシンなどのビンカアルカロイド; エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン: ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびマイトマイシンなどの抗生物質; L−アスパラギナーゼなどの酵素; 白金の錯化合物、例えばシスプラチンなどの様々な物質; ヒドロキシ尿素などの置換尿素; プロカルバジンなどのメチルヒドラジン誘導体; ミトタンおよびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制薬; 副腎皮質ステロイド、例えばプレドニゾンなどのホルモンおよびアンタゴニスト; カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メトキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン; ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールなどのエストロゲン; タモキシフェンおよびアナストロゾールなどの抗エストロゲン; プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロンなどのアンドロゲン; ジプラシドンなどの抗鬱薬; リスペリドンなどの抗精神病薬、またはこれらの薬物の製薬学的に許容される塩、水和物、多形体、エステルおよび誘導体などが挙げられる。
【0048】
本発明の一実施形態において、新規なデポ型注射剤組成物は少なくとも二成分系であり、その際成分1は易分散性組成物を含み、この組成物は好ましくは、活性物質として少なくとも1種の抗悪性腫瘍薬、好ましくはアロマターゼ阻害剤、さらに好ましくはアナストロゾール、もしくはその塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、誘導体、またはこれらの混合物を単独で、または他の活性物質と組み合わせて含み、かつ少なくとも1種の生分解性ポリマーを場合によっては少なくとも1種のチャンネル形成剤と共に含むマイクロ粒子の形態であり、成分2は成分1再構成用の水性、水−アルコール性または油性液状賦形剤である。この注射剤組成物は、成分1および2のいずれか一方または両方中に存在する少なくとも1種の粘度上昇剤を含む。
【0049】
本発明の一実施形態において、新規なデポ型注射剤組成物は少なくとも二成分系であり、その際成分1は易分散性組成物を含み、この組成物は好ましくは、活性物質としてリスペリドンまたはドネペジルといった少なくとも1種の抗精神病薬もしくはその塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、誘導体、またはこれらの混合物を単独で、または他の活性物質と組み合わせて含み、かつ少なくとも1種の生分解性ポリマーを場合によっては少なくとも1種のチャンネル形成剤と共に含むマイクロ粒子の形態であり、成分2は成分1再構成用の水性、水−アルコール性または油性液状賦形剤である。この注射剤組成物は、成分1および2のいずれか一方または両方中に存在する少なくとも1種の粘度上昇剤を含む。
【0050】
本発明の一実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリラクチド、例えばポリ(D,L−ラクチド)すなわちPLAなどの乳酸主体のポリマー; ポリグリコリド(PGA)、例えばDurect社のLactel(R)などのグリコール酸主体のポリマー; ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)すなわちPLGA(Boehringer社のResomer(R) RG−504、Resomer(R) RG−502、Resomer(R) RG−504H、Resomer(R) RG−502H、Resomer(R) RG−504S、Resomer(R) RG−502S、Durent社のLactel(R)); ポリ(ε−カプロラクトン)などのポリカプロラクトンすなわちPCL(Durent社のLactel(R)); ポリ酸無水物; ポリ(セバシン酸)SA; ポリ(リシノール酸)RA; ポリ(フマル酸)FA; ポリ(脂肪酸ダイマー)FAD; ポリ(テレフタル酸)TA; ポリ(イソフタル酸)IPA; ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}メタン)CPM; ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}プロパン)CPP; ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}ヘキサン)CPH; ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル{CHDM:シス/トランス−シクロヘキシルジメタノール、HD:1,6−ヘキサンジオール、DETOU:(3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロウンデカン)}; ポリジオキサノン; ポリヒドロキシブチレート; ポリアルキレンオキサレート; ポリアミド; ポリエステルアミド; ポリウレタン; ポリアセタール; ポリケタール; ポリカーボネート; ポリオルトカーボネート; ポリシロキサン; ポリホスファゼン; スクシネート; ヒアルロン酸; ポリ(リンゴ酸); ポリ(アミノ酸); ポリヒドロキシバレレート; ポリアルキレンスクシネート; ポリビニルピロリドン; ポリスチレン; 合成セルロース; ポリアクリル酸; ポリ酪酸; ポリ吉草酸; ポリエチレングリコール; ポリヒドロキシセルロース; キチン; キトサン; ポリオルトエステルおよびコポリマー、ターポリマー; ジメチルイソソルビド; コレステロール、レシチンといった脂質; ポリ(グルタミン酸−コ−グルタミン酸エチル)など、またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。
【0051】
好ましくは、生分解性ポリマーは乳酸主体のポリマーであり、さらに好ましくはポリラクチドまたはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)すなわちPLGAである。生分解性ポリマーは好ましくは成分1の約10〜約98% w/wの量で存在する。乳酸主体のポリマーの乳酸対グリコール酸モノマー比は100:0からおよそ0:100まで、好ましくは100:0からおよそ10:90までであり、またその平均分子量は約1,000〜200,000ドルトンである。生分解性ポリマーの選択および量が、用いる活性物質の性質および量、組成物の所望粒径、用途、使用期間などに左右される点は重要であろう。別の実施形態において、本発明の成分1は、チャンネル形成剤、油性成分、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、またはこれらの混合物を含む群から非限定的に選択された添加剤を付加的に含む。
【0052】
本発明の別の実施形態において、マイクロ粒子またはナノ粒子を調製する方法は好ましくはo/w型乳化とその後の溶媒蒸発とを含む。本発明のマイクロ粒子またはナノ粒子は油性相を含み、この油性相は、エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、ハロゲン化炭化水素(例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン)、エーテル(例えばエチルエーテル、イソプロピルエーテル)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)、カーボネート(例えば炭酸ジエチル)、またはこれらの混合物などといった、好ましくは沸点の低い一連の水不混和性溶媒の中から選択されるが、それらに限定はされない。マイクロ粒子またはナノ粒子の調製では、油性液滴を合体させないよう一層安定化するのに好適な乳化剤を用い、この乳化剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノならびにトリラウリル、パルミチル、ステアリルおよびオレイルエステル; ソルビタン脂肪酸エステル(SPAN(R)); ポリソルベート(Tween(R))、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、レシチン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(Cremophor(R))、特に好適なポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor(R)EL)およびポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor(R)RH40); トコフェロール; コハク酸トコフェリルポリエチレングリコール(ビタミンE TPGS); パルミチン酸トコフェロールおよび酢酸トコフェロール; ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(Pluronic(R)またはPoloxamer(R))など、またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。マイクロ粒子またはナノ粒子の調製に場合によっては用いられる好適なチャンネル形成剤は、ポリグリコール、エチルビニルアルコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン、N−メチルピロリドン、デキストリンおよび/または加水分解デンプンなどの多糖類、糖類、糖アルコールなど、またはこれらの混合物を含む群から非限定的に選択される。
【0053】
本発明の一実施形態において、成分1の粘度上昇剤はヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムとその誘導体といったセルロース誘導体、ビニルポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマーまたはコポリマー(Pluronics(R))、グリコサミノグリカン、カンテン、ペクチン、アルギン酸、デキストラン、デンプンおよびキトサンなどの多糖類、タンパク質、ポリ(酸化エチレン)、アクリルアミドポリマー、ポリヒドロキシ酸、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、合成セルロース、ポリアクリル酸、ポリ酪酸、ポリ吉草酸、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、およびコポリマー、誘導体など; またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。好ましくは、粘度上昇剤は高粘度品質のカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロースである。粘度上昇剤は成分1および2のいずれか一方または両方中に、好ましくは組成物の約0.1〜約50重量%、さらに好ましくは約0.5〜約50重量%の量で存在する。
【0054】
本発明の別の実施形態において、液状賦形剤(成分2)は水および場合によっては水混和性溶媒を含む水性賦形剤であり、水混和性溶媒は、好ましくは水混和性アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールまたはプロピレングリコール; ジメチルスルホキシド; ジメチルホルムアミド; 水混和性エーテル、例えばテトラヒドロフラン; 水混和性ニトリル、例えばアセトニトリル; 水混和性ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン; アミド、例えばジメチルアセトアミド; プロピレングリコール; グリセリン; ポリエチレングリコール400; グリコフロール(テトラグリコール)など; またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。好ましくは、本発明に有用な水混和性溶媒はグリセリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはこれらの混合物の中から選択される。
【0055】
本発明の別の実施形態において、本発明の液状賦形剤は油性賦形剤であり、この賦形剤は、トウモロコシ油、アーモンド油、ヒマワリ油、ラッカセイ油、オリーブ油、ヒマシ油、大豆油、ベニバナ油、綿実油などといった植物油、または中鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸エステル、ジメチルイソソルビドなどといった親油性化合物を含む群から非限定的に選択された少なくとも1種の油性成分を含み、場合によってはさらに、アニオン性、カチオン性、非イオン性または双性イオン性界面活性剤を含む群から選択された界面活性剤および/または1種以上の他の製薬学的に許容される添加剤を含む。液状賦形剤(成分2)が水性賦形剤である場合は粘度上昇剤を成分2中に存在させることが好ましく、液状賦形剤(成分2)が油性賦形剤である場合は粘度上昇剤を成分1中に存在させることが好ましいという点は重要であろう。本発明の別の実施形態において、成分2の水不混和性溶媒は酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、クロロホルムなど、またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。本発明の別の実施形態において、本発明の液状賦形剤は、パーフルオロオクタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカンなどといったパーフルオロカーボン、セボフルラン、デスフルラン、イソフルランなどといった揮発性麻酔薬、またはこれらの混合物を含む群から非限定的に選択された少なくとも1種のフルオロカーボン成分を含む。
【0056】
一実施形態において、本発明の成分2は、コサーファクタント、溶媒/共溶媒、水、油性成分、親水性溶媒、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、緩衝剤、pH調節剤、浸透圧調整剤、等張化剤、もしくは当該技術分野で公知の水混和性溶媒に溶解する他の添加剤、またはこれらの混合物を含む群から非限定的に選択された1種以上の物質を付加的に含む。本発明の一実施形態において、コサーファクタントはポリエチレングリコール; 「ポロクサマー」として知られるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー; モノラウリン酸デカグリセリルおよびモノミリスチン酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル; モノステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル; モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TWEEN(R)); モノステアリン酸ポリオキシエチレンなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル; ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル; ポリオキシエチレンヒマシ油、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの硬化ヒマシ油; その他、またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。本発明の一実施形態において、溶媒/共溶媒はプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG300、400、600等)、グリセロール、エタノールといったアルコール、トリアセチン、ジメチルイソソルビド、グリコフロール、炭酸プロピレン、水、ジメチルアセトアミドなど、またはこれらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定はされない。好ましくは、用いる溶媒はエタノールとする。溶媒/共溶媒の選択および量は主として活性物質の溶解度に左右される。エタノールなどの水溶性溶媒を用いて組成物を調製すると、注射された組成物から溶媒が急速に拡散して、長期の薬物送達に適した高粘度デポ剤を残す点は重要であろう。好適な消泡剤には、例えばシリコンエマルジョンやセスキオレイン酸ソルビタンが含まれる。本発明の組成物において他の成分の変質を防止または軽減する成分として好適な安定剤には、グリシン、α−トコフェロールまたはアスコルベート、BHA、BHTなどやこれらの混合物といった酸化防止剤が含まれる。好適な張度調整剤には、例えばマンニトール、塩化ナトリウム、およびグルコースが含まれる。好適な緩衝剤には、例えば好適なカチオンを伴う酢酸塩、リン酸塩、およびクエン酸塩が含まれる。しかし、本発明の組成物中に用いられる添加剤のなかには複数の目的に適うものも有ると理解されよう。
【0057】
一実施形態において本発明は、本明細書に記載した新規組成物から生分解性デポ剤ゲルもしくはインプラントを、それを必要とする対象の体内でin situ形成するのに好適な医薬キットを提供し、このキットは活性物質マイクロ粒子および場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤を収容した装置と、液状賦形剤および場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤を収容した装置とを含む。二つの装置の内容物は対象の体内への投与前に互いに混合し得るように装置から排出される。
【0058】
一実施形態において本発明は、成分1が乾燥散剤であり、成分2は液状賦形剤である新規なデポ型注射剤組成物を提供する。成分1を成分2で再構成することで非経口懸濁液剤が得られ、この液剤は筋肉内または皮下に注射されると注射部位において、活性物質を長期間持続的に放出するデポ剤として機能するヒドロゲルを形成する。その結果、当該活性物質のための毎日の投与計画は簡略化される。さらに、形成されたin situヒドロゲルが活性物質の放出に対して一次的なバリアーとなる一方で、生分解性ポリマーを基剤とする薬物マイクロ粒子またはナノ粒子からは二次的なバリアーが予想され、このような構成から、活性物質を長期間持続的に放出して望ましい治療的濃度を実現する、活性物質のための有効なデポ剤が注射部位に配置されることになる。活性物質放出速度をin situゲル化組成物と、該ゲル化組成物中に分散した活性物質の生分解性粒状形態とにより二重に調節できることは本発明の利点の一つである。本明細書中に用いた「in situゲル化組成物」という語は、好ましくはマイクロ粒子またはナノ粒子状である薬物と、生分解性ポリマーと、場合によってはさらに粘度上昇剤とを含む組成物であって、液状賦形剤で任意に再構成し、注射液剤として患者に送達されるが、in vivo投与されると固化し、固形のデポ剤組成物となるものを意味する。
【0059】
別の実施形態において、本発明の成分2は、身体プロセスでの同化により容易に注射部位から運び去られ、その結果注射部位にポリマーゲル物質を残す1種以上の水混和性溶媒または共溶媒を含む。本発明の別の形態では、成分2の組成物は好ましくは、粘度を上昇させるポリマー物質を非水和粒子の形態に維持することで注射用再構成懸濁液剤の粘度上昇を防止し、このことは製剤中に用いられる粘度上昇性ポリマーの濃度が高い場合にも容易な注射を可能にする。
【0060】
一実施形態において、二成分系の成分1はマトリックス系として調製される生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に関わり、その際マトリックス系は活性物質と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、マトリックス系の生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子間に捕捉された、放出調節剤として作用する1種以上の親水セルロース系生体適合性ポリマーと、場合によってはさらに1種以上の医薬用添加剤とを含む。親水セルロース系生体適合性ポリマーは体液と接触すると速やかに水和して生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子の周囲にゲルを形成し、その後水和が進むとゲル層は侵食され、捕捉されていたセルロース系生体適合性ポリマーが水和し、溶解することで生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子マトリックスに、そこから薬物が放出されるチャンネルが形成される。マイクロ粒子またはナノ粒子の生分解も生起する。この構成は、洗浄および濾別/遠心工程のような製造工程が無くなることによりマイクロ粒子またはナノ粒子の製造時間が短縮されるという利点をもたらす。本発明は、非経口製剤用として許容されないポリビニルアルコール(PVA)などの乳濁液安定剤を用いずに生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子を調製する新規な方法も開示する。成分1は、好適な液状賦形剤すなわち成分2で再構成される易分散性組成物を構成する。一実施形態において、成分2は成分1の再構成に用いられる、好ましくは液状の賦形剤の形態であり、該賦形剤は少なくとも1種の水不混和性溶媒(例えば油)を、場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤と共に含む。別の好ましい実施形態では、成分2は成分1の再構成に用いられる、好ましくは液状の賦形剤の形態であり、該賦形剤は少なくとも1種の油と、少なくとも1種の界面活性剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含む。一実施形態において、成分2は、少なくとも1種の水混和性溶媒を場合によっては1種以上の添加剤と共に含む成分1再構成用液状賦形剤の形態である。
【0061】
本発明は、マトリックスの形態の生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子を、乳濁液安定剤、薬物放出調節剤、およびゲル形成剤の特性など複数の特性を具えたセルロース系生体適合性ポリマーを用いて調製する新規な方法も開示する。一実施形態では、マイクロ粒子またはナノ粒子調製時にカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などのセルロース系ポリマーが乳濁液安定剤として用いられ、形成された個々のマイクロ粒子またはナノ粒子を捕捉する。このポリマーは非経口使用が承認されているので、除去する必要は無い。このポリマーは粘度上昇剤としても作用する。
【0062】
本発明の一実施形態では、ゲルマトリックスとして感温性の生体適合性ポリマーを用いてもよく、例えば、生理的温度(約37℃)でゲルとなり、生理的温度より高いかまたは低い温度では液体となる熱ゲル化特性を有するブロックコポリマーなら適用可能であろう。逆熱ゲル化特性を有するゲルの場合、ブロックコポリマーはゲル化温度より低温で液体となり、ゲル化温度以上でゲルとなる。通常の熱ゲル化特性を有するブロックコポリマーはそれとは逆に、ゲル化温度より高温で液体となり、ゲル化温度以下でゲルとなる。逆熱ゲル化特性を有する生体適合性ブロックコポリマーを用いれば、タムスロシンまたはレトロゾールを含有するマイクロ粒子を室温など、生理的温度以下の温度でブロックコポリマー中に存在させることができる。このブロックコポリマーは冷却されると水溶性になるので、マイクロ粒子またはナノ粒子を溶液に添加しさえすればよい。さらに、投与され、ゲル状となったブロックコポリマー溶液はマイクロ粒子またはナノ粒子を保持し得る。
【0063】
別の実施形態において、本発明の組成物中に存在する粘度上昇剤はその一部または全部が生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子中に捕捉されており、体液と接触すると水和して生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子周囲にゲルを形成することにより放出調節剤として作用する。或る実施形態では粘度上昇剤は、マイクロ粒子またはナノ粒子安定剤、活性物質放出調節剤、および/またはゲル形成剤として作用する生体適合性セルロース系ポリマーである。本発明の組成物は、注射後デポ剤もしくはインプラントが形成されると直ちに放出速度が低下し、すなわち僅かな「初期バースト」しか起こさない。なぜなら、「初期バースト」が甚だしいと生物活性物質の濃度が望ましくないほどに上昇しかねず、その場合には有毒作用が生じ、および/またはその後の物質放出が僅少となって活性物質濃度が治療的濃度を下回り、その結果組成物が長期間不適当な状態に陥るからである。本発明の新規なデポ型注射剤組成物を説明するために、本発明の発明者等は、活性物質としてアナストロゾールを含有する改良組成物を開発した。
【0064】
4種のアナストロゾールi.m.デポ剤組成物(後出の実施例1〜4にそれぞれ開示された組成物F−1、F−2、F−3およびF−4)を用い、雌のウサギにおいて薬物動態試験を行なった。単回投与量5mg/kgをi.m.投与し、アナストロゾールの血漿中濃度(ng/ml)を60日間(F−3およびF−4)および10日間(F−1およびF−2)LC/MSを用いて評価した。製剤F−1、F−2、F−3およびF−4を試験するのに16羽のウサギを4グループに分けて用いた。血液の採取は次のような時間間隔で、すなわち第1日の0、1、2、4、8および12時、第2〜7日の0および8時、ならびに第8、9、10、13、14、16、18、21、24、27、30、35、40、45、50および60日の0時に行なった。全投与グループの薬物動態(PK)パラメーター、特にCmaxを評価し、F−3およびF−4についてはAUC(初期のAUC0−1dayおよび60日後のAUC0−60days)を計算した。データを表1、2および3に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
用いた組成物(F−1、F−2、F−3およびF−4)のいずれにおいても初期「バースト」は僅かであり、アナストロゾールは長期間持続的に放出された。最後の試料採取時点すなわち10日後に得られた平均血漿中濃度はそれぞれ10.38±9.03ng/ml(F−1)および5.47±1.13ng/ml(F−2)であった。最後の試料採取時点すなわち60日後に得られた平均血漿中濃度およびAUC0−60daysはそれぞれ4.24±3.55ng/mlおよび10583.4±5029.0hrng/ml(F−3)ならびに3.67±1.30ng/mlおよび9323.2±1046.1hrng/ml(F−4)であった。F−1、F−2、F−3およびF−4について得られたCmax(すなわちグループに属するウサギに関し、総ての試料採取時間間隔および全試験期間を考慮して求めた最高血漿中濃度)はそれぞれ172.75±40.93ng/ml、127.75±19.69ng/ml、116.8±21.23ng/mlおよび84.03±4.39ng/mlであった。F−3およびF−4のCmaxの著しい相違は、共溶媒組成物(F−3)と比較して油組成物(F−4)が低いCmaxしかもたらさず、従って僅かなバーストしか起こさなかったことを示している。F−3とF−4とは、用いられたマイクロスフェア(すなわち成分1)は同じだが稀釈剤組成物(すなわち成分2)が異なるという点は留意されよう。同じマイクロ粒子(成分1)と異なる稀釈剤(成分2)とを含み、かつ粘度上昇性ポリマーを含有するかまたは含有しない組成物F−1およびF−2が異なるCmax値を与えることも観察された。稀釈剤(液状賦形剤)としての油をin situゲル化ポリマー(粘度上昇剤)と共に含む組成物F−2は、水性稀釈剤(液状賦形剤)を含み、in situゲル化ポリマー(粘度上昇剤)は含まない組成物F−1に比べ低いCmaxしかもたらさなかった。従ってこの試験から、in situゲル化成分(粘度上昇剤)のような(マイクロ粒子中の生分解性ポリマー以外の)特別なマイクロ粒子成分、および稀釈剤系(液状賦形剤)を組み込むことで実質的に薬物放出の調節を補助し、僅かなバースト、従って僅かな血漿中濃度プロファイル変動しか伴わない薬物放出を実現できるとの結論が得られた。
【0069】
本発明の別の実施形態において、本明細書に記載した成分1および成分2を含む組成物は成分3と呼称される少なくとも1種の別の成分を付加的に含み得る。この第3の、あるいはさらにほかの成分はキャリアー/賦形剤または溶媒を稀釈する流体を含んでいてもよく、該流体は注射剤組成物を稀釈もしくは安定化するのに、または何らかの方法でin situ形成されたデポ剤からの活性物質の持続放出を実現するという所期の目的を達成容易にするのに必要となり得るものである。一実施形態において本発明は、生体適合性かつ生分解性のポリマーのマトリックスによって実質的に構成された活性物質のマイクロ粒子またはナノ粒子を提供し、このマイクロ粒子またはナノ粒子は液状賦形剤中で実質的に均一に分布するように再構成され、該マイクロ粒子またはナノ粒子が生理的水性環境内に置かれると前記活性物質が少なくとも1日掛けて少しずつ連続的に放出され、第一段階の加速放出は減少するか、または実質的に無くなる。
【0070】
本発明の一実施形態において、注射剤組成物はマイクロ粒子またはナノ粒子の調製に有用である熱ゲル化ポリマーを付加的に含み、その際熱ゲル化ポリマーはマイクロ粒子またはナノ粒子の内部に存在しても外部に存在してもよく、あるいはまたその一部が内部に、一部が外部に存在してもよい。本発明の別の実施形態では、組成物は架橋した重合性モノマーの網状構造から成るin situゲル状またはゲル様構造体もしくはインプラントを形成し、前記網状構造は体液の水性環境内で網状構造内凝集体を形成する。さらに別の実施形態において、in situゲルは温度、pH、およびイオン条件などのin vivo条件の一つ以上の変化に可逆的に応答する。特に、in situゲルは大量の治療薬を吸収または可溶化して、生理的条件下に実質的に線形かつ持続的な治療薬放出を行なうことができる。
【0071】
一実施形態において本発明は、少なくとも1種の活性物質と、乳酸主体の生体適合性ポリマーと、トリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、安息香酸ベンジル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、ならびにこれらの混合物から成る群から選択された、乳酸主体の生体適合性ポリマーと共に流動性ゲルを形成するポリマー溶媒と、流動性ゲル中に分散液滴相の形態で分散した所与量の乳化剤とを含む非経口投与用デポ剤組成物を提供し、その際乳化剤はポリマー溶媒との組み合わせにおいてポリマー溶液にチキソトロピーを付与し、この乳化剤はエタノール、イソプロピルアルコール、およびこれらの混合物から成る群から選択され、また活性物質は流動性ゲル中に均質に溶解または分散する。上記デポ剤組成物は、活性物質を実質的に長期にわたって放出するべく構成されている。
【0072】
一実施形態において、注射のための再構成時にさほど粘稠とならないことは本発明の注射剤組成物の利点である。多くの場合、粘度上昇性ポリマーが注射の間実質的に非水和形態に留まり、標準径の注射針を用いる容易な注射を可能にする。注射の際、上記ポリマーは水性体液により水和されて実質的に粘稠なゲルを注射部位に形成し、それによって生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子からの活性物質の初期バースト放出に備える一次バリアーを創出し、かつ後には生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子系からの活性物質の持続放出を実現する。このように上記ポリマーは、活性物質が長期間持続的に放出されるように薬物放出を調節する上での選択肢を提供する。専門的な知識および技術を具えた本発明の発明者等は、活性物質のいわゆる「バースト」放出を実質的に免れ、活性物質を長期間持続的に放出する新規なデポ型注射剤組成物を調製するべく多大の実験を重ねた。
【0073】
本発明の組成物は、1回分量の該組成物を含むデポ剤が少なくとも約6ヵ月もの間継続して組成物を患者もしくは対象に放出できるほど十分安定である。活性物質の放出は、最長で約1週間、約2週間、約3週間、約1ヵ月、約2ヵ月、約3ヵ月、約4ヵ月、約5ヵ月、約6ヵ月、またはそれ以上などといった択一的期間にわたる。
【0074】
2種以上の本発明によるインプラントまたはマイクロ粒子製剤を組み合わせて用いれば、ポリマーの選択および/またはマイクロ粒子中への活性物質の装入を適宜行なうことにより様々な放出プロファイルを実現することができる。このことは、疾患によっては治療上有利であり得る。例えば、活性物質の初期用量を多くし、後の治療では用量を少なくすることが望ましい場合が有る。このような用量調節は、活性物質の初期放出速度が高い第1のインプラントまたはマイクロ粒子製剤と、比較的一定の放出速度を有する第2のインプラントまたはマイクロ粒子製剤とを選択することによって達成し得る。活性物質が2種の製剤から累積的に放出されることにより、初期用量が多くなる一方その後の治療期間では実質的に一定の放出速度が得られる。あるいはまた、2種以上のインプラントまたはマイクロ粒子製剤を適宜選択することにより、全治療期間を通じて実質的に零次である(すなわち実質的に一定である)累積的活性物質放出を実現することができる。第1および第2のインプラント/マイクロ粒子製剤から放出される活性物質の放出プロファイルは、例えばラクチド対グリコリド比、および/またはポリラクチドもしくはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)の分子量、および/またはインプラントへの活性物質負荷、および/または粘度上昇性ポリマーの量を変更することにより制御可能である。
【0075】
さらに別の実施形態において本発明は、上述した新規な注射剤組成物を調製する方法を提供し、この方法は活性物質のマイクロ粒子またはナノ粒子、および該マイクロ粒子またはナノ粒子を投与前に再構成できる液状賦形剤を調製することを含む。
【0076】
さらに別の実施形態において、本発明による組成物調製方法は、
i) 活性物質を生分解性ポリマーと混合してマイクロ粒子またはナノ粒子を形成する工程、
ii) 工程(i)のマイクロ粒子またはナノ粒子を場合によっては粘度上昇剤と混合し、および/または場合によっては1種以上の添加剤と混合して成分1を製造する工程、
iii) 液状賦形剤を場合によっては粘度上昇剤および/または他の添加剤と混合して成分2を製造する工程、および
iv) 投与前に成分1と成分2とを混合して所望の組成物を得る工程
を含む。
【0077】
さらに別の実施形態において、本発明による組成物調製方法は、
i) 活性物質および生分解性ポリマーを水不混和性溶媒中に溶解または分散させる工程、
ii) 工程(i)の溶液を乳化剤水溶液で均質化し、溶媒を蒸発させてマイクロ粒子またはナノ粒子を形成し、マイクロ粒子またはナノ粒子を洗浄および冷凍乾燥する工程、
iii) 工程(ii)のマイクロ粒子またはナノ粒子を場合によっては粘度上昇剤と混合し、および/または場合によっては1種以上の添加剤と混合して成分1を製造する工程、
iv) 液状賦形剤を場合によっては粘度上昇剤および/または他の添加剤と混合して成分2を製造する工程、および
v) 投与前に成分1と成分2とを混合して所望の組成物を得る工程
を含む。
【0078】
さらに別の実施形態において、本発明による組成物調製方法は、
i) 活性物質および生分解性ポリマーを適当な溶媒に溶解させ、噴霧乾燥してマイクロ粒子またはナノ粒子を形成する工程、
ii) マイクロ粒子またはナノ粒子を適当な凍結保護物質の存在下に冷凍乾燥する工程、
iii) 工程(ii)のマイクロ粒子またはナノ粒子を場合によっては粘度上昇剤と混合して成分1を製造する工程、
iv) 液状賦形剤を場合によっては粘度上昇剤および/または他の添加剤と混合して成分2を製造する工程、および
v) 投与前に成分1と成分2とを混合して好適な注射製剤組成物を得る工程
を含む。
【0079】
さらに別の実施形態において本発明の発明者等は、マイクロ粒子またはナノ粒子を調製する過程で均質化を、好ましくはUltra Turraxホモジナイザーを用いて所定の速度、例えば約15000rpmで特定の時間、例えば約30秒間行なうと、得られるマイクロ粒子がより優れた形状および特性を具えることを見いだした。また、マイクロ粒子またはナノ粒子の洗浄を、遠心と残留物の新鮮水中への再懸濁とを繰り返して溶媒および乳化剤を除去することで行なったところ、かなり硬質で、優れた形状を具え、かつ実質的に多孔質でない、きわめて優れたマイクロ粒子またはナノ粒子が得られた。好適なホモジナイザーと、最適化した圧力、サイクル数、供給材料の流速といった処理パラメーターとを用いて乳濁液を調製すれば、所定の粒径、形状その他の望ましい特徴を具えたマイクロ粒子を製造できると理解されよう。均質化は、アンカーまたはパドル型攪拌子を具備したマグネチックスターラーまたはオーバーヘッドスターラーを用いて両相を激しく攪拌することによっても行なった。乳化段階において、バッチサイズに関わる攪拌速度、攪拌子および容器の形状および寸法といった変数を正確に制御すれば、所望の形状および寸法を具えたマイクロ粒子が得られる。形成したマイクロ粒子を、クロスフローもしくはタンジェンシャルフロー濾過システム(Pall Corporation製Minimate(R) TFF)を用いて洗浄することも望ましく、この場合にはマイクロ粒子懸濁液の濾過による濃縮と新鮮水での稀釈とを繰り返すことでマイクロ粒子を洗浄する。
【0080】
本発明の一実施形態において、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子の調製では、所定の形状および粒径分布を有し、ポリマーマトリックス中に捕捉された所定量の活性医薬物質を含有するマイクロ粒子またはナノ粒子を実質的に再現可能な方法で製造することを可能にするような処理パラメーターを採用する。好ましい一実施形態において本発明に採用される、w/o、o/w、w/o/wおよびo/w/o型乳化、より好ましくはo/w型乳化によりマイクロ粒子またはナノ粒子を製造する方法は、当該技術分野で公知の溶媒蒸発法である。マイクロ粒子またはナノ粒子の製造に用いる様々な材料は、通常用いられる化合物の中から選択する。
【0081】
別の実施形態において、o/w型乳化法では活性物質および生分解性ポリマーを「油性相」と考えられる水不混和性溶媒に溶解させ、溶液を、乳化剤を含有する「水性相」で均質化した。得られた乳濁液を場合によっては真空下に、場合によっては適度に加熱しつつ攪拌したところ、内在した有機溶媒が攪拌中に蒸発したあとに、油性相由来の生分解性ポリマーの硬化により形成されたマイクロ粒子またはナノ粒子の懸濁液が残された。用いた乳化剤および有機溶媒は共に製造過程で消失し、従って最終生成物中には全く、または許容限界内の量でしか存在しなかった。本発明の一方法では、有機溶媒を攪拌または加熱により蒸発させて除去し、乳化剤は水での洗浄によって除去した。乳化剤は油性液滴の、合体に対する安定性を高める。水性相の乳化剤濃度は、マイクロ粒子中の薬物分布および放出プロファイルに大きく影響する。析出する生分解性ポリマーを微細な独立分散粒子として維持するため、場合によっては水性相に乳化剤を添加した。
【0082】
本発明の別の実施形態では、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子を噴霧乾燥法または凍結乾燥法で製造する。望ましいマイクロ粒子またはナノ粒子を得るべく組成物中に適当量の凍結保護物質を用い、それによって組成物の、再構成用稀釈剤(賦形剤)中への易分散性を高める。ラクトン、トレハロース、スクロース、またはマンニトールといった凍結保護物質は、好ましくは噴霧乾燥または凍結乾燥時に生分解性薬物マイクロ粒子と共に組成物に含有させる。
【0083】
本発明の一実施形態において、マイクロ粒子は好ましくは球形である。マイクロ粒子の平均粒径は、当該技術分野で公知の好適方法で測定して約1〜約250ミクロン、好ましくは約2〜約150ミクロン、さらに好ましくは約10〜約100ミクロンであり、従ってマイクロ粒子は標準径の注射針を用いて対象に投与することができる。粒径分布の幅が狭いほど、マイクロ粒子の液状賦形剤中への再分散性が高くなり、またマイクロ粒子からの薬物放出のパターンがより良く再現されることも観察された。一実施形態において、本発明の注射剤組成物は平均粒径が好ましくは約1000nmから約2000nmまでである活性物質含有ナノ粒子の形態であり、このナノ粒子は賦形剤中に懸濁させ、特定の疾患部位を標的として送達され、活性物質を長期間持続的に放出する。
【0084】
一実施形態において、本発明の組成物は、動物であれヒトであれ対象に対して好ましくは筋肉内投与、皮内投与、皮膚投与もしくは皮下投与することができる。具体的には、本発明による非経口組成物は、特に腹腔内、関節内、包内、頸管内、頭蓋内、管内、硬膜内、病変内、眼内、小室内、壁内、術中、頭頂内、腹膜内、胸膜内、肺内、髄腔内、胸腔内、気管内、鼓室内、子宮内、または経皮といった投与経路のいずれから投与してもよい。好ましい実施形態では、組成物は筋肉内または皮下投与可能な非経口組成物の形態である。
【0085】
一実施形態において本発明によるin situゲル化組成物は、活性物質を直接標的に送達し得、標的エリアにおける活性物質の制御放出によって短期または長期の治療を実現し得る。組成物の適用は侵襲的な手術および/または適用を含めた、活性物質を哺乳動物などの対象にin vivo導入するのに必要な手段のいずれによってもよいが、好ましくは注射による。本発明の組成物を送達する非経口的経路は好ましくは、皮下、筋肉内、眼窩内、包内、髄腔内、胸骨内といった経路から成る群から選択される。in vivo形成されたデポ剤は、粘稠物質、ゲルもしくは半固体、およびこれらの組み合わせから成る群から選択された物質と同様のコンシステンシーを有する。デポ剤から活性物質が放出される速度は、初期粒径、製剤中のゲルのレベル、活性物質の量、製剤中の付加的物質のレベル、対象、対象の代謝、投与部位、およびこれらの組み合わせなどの要因の一つ以上の変化に基づき変動するかもしれない。
【0086】
重要な実施形態において、本発明の組成物により形成されるデポ剤は活性物質マイクロ粒子またはナノ粒子を比較的短時間でデポ剤自体の中に取り込み、自由なマイクロ粒子またはナノ粒子がデポ剤から運び去られる前に凝固プロセスによって実質的に捕捉されるようにする。本明細書では「デポ剤」を、活性物質の放出が長期間行なわれるように注射部位近傍に保持される(好ましくは活性物質を含有する)物質と定義する。一実施形態において、デポ剤は対象のin vivo環境内で次第に侵食され/溶解し、その際に活性物質を対象体内へ放出する。本発明は、注射部位からの漏出が最小限にしか、または全く起こらないという利点も有する。製剤のゲル化特性は活性物質マイクロ粒子またはナノ粒子を注射部位近傍で結合する。その結果、注射箇所からの製剤の逆流が回避され、活性物質を無駄にするという望ましくない事態を阻止することができ、また創傷/投与エリアが清浄に保たれる。加えて、マイクロ粒子またはナノ粒子とポリマー送達系との組み合わせはまた、ドラッグデリバリーシステムの設計融通性を高めて個々の要求に沿わせる。設計融通性の向上したドラッグデリバリーシステムは、薬物溶解速度およびゲルマトリックス侵食速度の変更によって放出プロファイルおよび個別送達系を変更または改善した。
【0087】
さらに別の実施形態において本発明は、生体においてデポ剤ゲルもしくはインプラントをin situ形成する方法であって、in situゲル化製剤を本明細書に記載した方法によって調製し、この製剤を体内に配置し、液状賦形剤を分散または消散させて固形またはゲルのインプラントを生成させることを含む方法を提供する。本発明のさらに別の実施形態では、本明細書に記載したin situゲル化製剤を哺乳動物、特にヒトの、活性物質によって治療可能な状態の治療用である医薬の製造に使用する方法が提供される。
【0088】
さらに別の実施形態において本発明は、本発明による組成物の使用方法であって、有効量の該組成物をそれを必要とする対象/患者に投与することを含む方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明による組成物を疾患/障害の予防、改善および/または治療用である医薬の製造に使用する方法が提供される。
【0089】
上述した例示的実施形態は本発明を限定せず、むしろそのあらゆる形態を説明するものである。従って本発明においては、当業者が本明細書の記載から導き得る多くの変形を実施細部に加えることが可能である。そのような変形および変更は総て本発明の範囲内であると考えられる。
【実施例1】
【0090】
(F−1)
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. アナストロゾール 30.0mg
2. ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25
270.0mg
3. ポリビニルアルコール 22.5mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロメタン 2.4ml
(製造過程で消失)
5. 精製水 5.4ml
(製造過程で消失)
6. マンニトール 60.0mg
成分2
1. カルボキシメチルセルロースナトリウム 30mg
2. 精製水 1.5ml
【0091】
手順:
i) ポリビニルアルコールを精製水に攪拌下に溶解させ、かつ連続攪拌により室温まで冷却して溶液を調製した。
ii) アナストロゾールおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25をジクロロメタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルアルコール溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロメタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を水で洗浄してポリビニルアルコールを除去した。洗浄は約5℃での遠心と、残留物の新鮮精製水中への再懸濁とを繰り返すことで行なった。
v) 最後に得られた残留物をマンニトール溶液中に分散させ、凍結乾燥して、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)中に捕捉されたアナストロゾールのマイクロ粒子の自由流動粉末を得た。
vi) 調製したマイクロ粒子を好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) カルボキシメチルセルロースナトリウムと精製水とを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。
【実施例2】
【0092】
(F−2)
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. アナストロゾール 30.0mg
2. ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25
270.0mg
3. ポリビニルアルコール 22.5mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロメタン 2.4ml
(製造過程で消失)
5. 精製水 5.4ml
(製造過程で消失)
6. マンニトール 60.0mg
7. カルボキシメチルセルロースナトリウム 45.0mg
成分2
1. ラッカセイ油 1.425ml
2. ポリソルベート80 0.075ml
【0093】
手順:
i) ポリビニルアルコールを精製水に攪拌下に溶解させ、かつ連続攪拌により室温まで冷却して溶液を調製した。
ii) アナストロゾールおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25をジクロロメタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルアルコール溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロメタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を水で洗浄してポリビニルアルコールを除去した。
v) 最後に得られた残留物をマンニトール溶液中に分散させ、凍結乾燥して、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)中に捕捉されたアナストロゾールのマイクロ粒子の自由流動粉末を得た。
vi) 調製したマイクロ粒子をカルボキシメチルセルロースナトリウムとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) ラッカセイ油とポリソルベート80とを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。
【実施例3】
【0094】
(F−3)
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. アナストロゾール 30.0mg
2. ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25
600.0mg
3. ポリビニルアルコール 50.0mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロメタン 5.0ml
(製造過程で消失)
5. 精製水 10.0ml
(製造過程で消失)
6. マンニトール 60.0mg
7. カルボキシメチルセルロースナトリウム 63.0mg
成分2
1. プロピレングリコール 1.26ml
2. グリセリン 0.63ml
3. リン酸緩衝食塩液 pH7.4 0.21ml
【0095】
手順:
i) ポリビニルアルコールを精製水に攪拌下に溶解させ、かつ連続攪拌により室温まで冷却して溶液を調製した。
ii) アナストロゾールおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25をジクロロメタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルアルコール溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロメタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を水で洗浄してポリビニルアルコールを除去した。
v) 最後に得られた残留物をマンニトール溶液中に分散させ、凍結乾燥して、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)中に捕捉されたアナストロゾールのマイクロ粒子の自由流動粉末を得た。
vi) 調製したマイクロ粒子をカルボキシメチルセルロースナトリウムとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) プロピレングリコールと、グリセリンと、リン酸緩衝食塩液 pH7.4とを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。
【実施例4】
【0096】
(F−4)
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. アナストロゾール 30.0mg
2. ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25
600.0mg
3. ポリビニルアルコール 50.0mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロメタン 5.0ml
(製造過程で消失)
5. 精製水 10.0ml
(製造過程で消失)
6. マンニトール 60.0mg
7. カルボキシメチルセルロースナトリウム 63.0mg
成分2
1. ラッカセイ油 2.01ml
2. ポリソルベート80 0.09ml
【0097】
手順:
i) ポリビニルアルコールを精製水に攪拌下に溶解させ、かつ連続攪拌により室温まで冷却して溶液を調製した。
ii) アナストロゾールおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)75/25をジクロロメタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルアルコール溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロメタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を水で洗浄してポリビニルアルコールを除去した。
v) 最後に得られた残留物をマンニトール溶液中に分散させ、凍結乾燥して、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)中に捕捉されたアナストロゾールのマイクロ粒子の自由流動粉末を得た。
vi) 調製したマイクロ粒子をカルボキシメチルセルロースナトリウムとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) ラッカセイ油とポリソルベート80とを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。
【実施例5】
【0098】
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. ドネペジル 100.0mg
2. ポリ(ε−カプロラクトン) 700.0mg
3. ポリビニルピロリドン 240.0mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロエタン 10.0ml
(製造過程で消失)
5. 注射用水 24.0ml
(製造過程で消失)
6. スクロース 17.0mg
7. ヒドロキシエチルセルロース 45.0mg
成分2
1. プロピレングリコール 1.4ml
2. グリセリン 0.4ml
3. エタノール 0.2ml
【0099】
手順:
i) ポリビニルピロリドンを注射用水に連続攪拌によって溶解させ、ポリビニルピロリドン溶液を調製した。
ii) ドネペジルおよびポリ(ε−カプロラクトン)をジクロロエタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルピロリドン溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロエタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を注射用水で洗浄してポリビニルピロリドンを除去した。
v) 工程(iv)で最後に得られた残留物をスクロース溶液中に分散させ、凍結乾燥して、ドネペジルのマイクロ粒子を含む自由流動粉末を得た。
vi) 工程(v)のマイクロ粒子をヒドロキシエチルセルロースとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) プロピレングリコールと、エタノールと、グリセリンとを混合して成分2を調製した。
【実施例6】
【0100】
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. リスペリドン 37.5mg
2. ポリ(リシノール酸) 700.0mg
3. ペンタエリトリトール 240.0mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロエタン 10.0ml
(製造過程で消失)
5. 注射用水 24.0ml
(製造過程で消失)
6. マンニトール 17.0mg
7. カルボキシメチルセルロースナトリウム 45.0mg
成分2
1. プロピレングリコール 1.5ml
2. エタノール 0.5ml
【0101】
手順:
i) ペンタエリトリトールを注射用水に溶解させてペンタエリトリトール溶液を調製した。
ii) リスペリドンおよびポリ(リシノール酸)をジクロロエタンに溶解させ、得られた透明溶液をペンタエリトリトール溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロエタンを蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を注射用水で洗浄してペンタエリトリトールを除去した。
v) 工程(iv)で最後に得られた残留物をマンニトール溶液中に分散させ、凍結乾燥して、リスペリドンのマイクロ粒子を含む自由流動粉末を得た。
vi) 工程(v)のマイクロ粒子をカルボキシメチルセルロースナトリウムとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) プロピレングリコールとエタノールとを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。
【実施例7】
【0102】
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. ジプラシドン 50.0mg
2. ポリ(ラクチド−コ−グリコリド) 300.0mg
3. ポリビニルピロリドン 200.0mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロメタン 40.0ml
(製造過程で消失)
5. 注射用水 100.0ml
(製造過程で消失)
6. マンニトール 17.0mg
7. メチルセルロース 30.0mg
成分2
1. プロピレングリコール 1.5ml
2. グリセリン 0.5ml
【0103】
手順:
i) ポリビニルピロリドンを注射用水に連続攪拌によって溶解させ、ポリビニルピロリドン溶液を調製した。
ii) ジプラシドンおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)をジクロロメタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルピロリドン溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロメタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を注射用水で洗浄してポリビニルピロリドンを除去した。
v) 工程(iv)で最後に得られた残留物をマンニトール溶液中に分散させ、凍結乾燥して、ジプラシドンのマイクロ粒子を含む自由流動粉末を得た。
vi) 工程(v)のマイクロ粒子をメチルセルロースとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) プロピレングリコールとグリセリンとを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。
【実施例8】
【0104】
通し番号 成分 量/1回量
成分1
1. アリピプラゾール 100.0mg
2. ポリ(ラクチド−コ−グリコリド) 600.0mg
3. ポリビニルアルコール 200.0mg
(製造過程で消失)
4. ジクロロメタン 40.0ml
(製造過程で消失)
5. 注射用水 100.0ml
(製造過程で消失)
6. メチルセルロース 50.0mg
成分2
1. プロピレングリコール 1.7ml
2. グリセリン 0.3ml
【0105】
手順:
i) ポリビニルアルコールを注射用水に連続攪拌下に溶解させ、ポリビニルアルコール溶液を調製した。
ii) アリピプラゾールおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)をジクロロメタンに溶解させ、得られた透明溶液をポリビニルアルコール溶液に、均質化を行ないながら添加した。
iii) 工程(ii)の乳濁液を攪拌してジクロロメタンを完全に蒸発させ、あとに残されたマイクロ粒子の懸濁液を得た。
iv) 工程(iii)のマイクロ粒子を注射用水で洗浄してポリビニルアルコールを除去した。洗浄は、5℃において2500rpmで5分間行なう遠心と、残留物の新鮮注射用水中への再懸濁とを繰り返すことで行なった。
v) 工程(iv)で最後に得られた残留物を凍結乾燥して、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)中に捕捉されたアリピプラゾールのマイクロ粒子の自由流動粉末を得た。
vi) 工程(v)のマイクロ粒子をメチルセルロースとブレンドし、好適なバイアルまたはプレフィルドシリンジに充填した(成分1)。
vii) プロピレングリコールとグリセリンとを混合して成分2を調製し、バイアルに充填した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小限のバースト放出しか起こさない新規な注射剤組成物であって、少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、好ましくは少なくとも二つの成分を含む多成分系の形態であり、in vivo投与時に体液と接触するとin situゲル化デポ剤もしくはインプラントを形成し、その結果活性物質の放出を長期間持続的に行なう組成物。
【請求項2】
組成物のホスト生体への投与直後に固形または半固形のデポ剤ゲルもしくはインプラントが形成されるのに十分な生理的水性環境内で粘度上昇剤が次第に膨潤することで実質的に凝集性のゲル状塊が形成され、その結果活性物質のバースト放出が最小限となる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が製剤総重量に基づき約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の生分解性ポリマーと、約0.1〜約95% w/wの少なくとも1種の粘度上昇剤と、場合によってはさらに約0.1〜約99.8% w/wの1種以上の製薬学的に許容される添加剤とを含み、再構成可能な生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子に製剤化され、前記生分解性ポリマーは平均分子量約1,000〜約200,000ドルトンのポリラクチドポリマー、ポリグリコリドポリマー、またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーであり、前記組成物は活性物質の放出を長期間持続的に行なう請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
活性物質がアナストロゾール、ドネペジル、アリピプラゾール、オランザピン、リスペリドン、およびジプラシドンを含む群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
マイクロ粒子の平均粒径が約1〜約250ミクロンであり、ナノ粒子の平均粒径は約1000〜約2000nmである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも二つの成分すなわち成分1および成分2を含む多成分系である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
二つの成分を含む新規なデポ型注射剤組成物であり、成分1は少なくとも1種の活性物質もしくはその製薬学的に許容される塩、誘導体、異性体、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、またはこれらの混合物と、少なくとも1種の生分解性ポリマーとを含み、場合によってはさらに1種以上の製薬学的に許容される添加剤も含む、好ましくはマイクロ粒子またはナノ粒子状の易分散性組成物の形態であり、成分2は少なくとも1種の水混和性または水不混和性溶媒を場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤と共に含む成分1再構成用液状賦形剤の形態であり、成分1および2のいずれか一方または両方中に存在する少なくとも1種の粘度上昇剤を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
粘度上昇剤が非水和形態で存在する請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子の一部または全部が粘度上昇剤中に埋没し、粘度上昇剤は体液との接触時に水和し、生分解性マイクロ粒子周囲にゲルを形成することにより放出調節剤として作用する請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
生分解性ポリマーが乳酸主体のポリマー; グリコール酸主体のポリマー; ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド); ポリカプロラクトン; ポリ酸無水物; ポリ(セバシン酸); ポリ(リシノール酸); ポリ(フマル酸); ポリ(脂肪酸ダイマー); ポリ(テレフタル酸); ポリ(イソフタル酸); ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}メタン); ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}プロパン); ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}ヘキサン); ポリアミン; ポリウレタン; ポリエステルアミド; ポリオルトエステル; ポリジオキサノン; ポリヒドロキシブチレート; ポリアルキレンオキサレート; ポリアミド; ポリエステルアミド; ポリウレタン; ポリアセタール; ポリケタール; ポリカーボネート; ポリオルトカーボネート; ポリシロキサン; ポリホスファゼン; スクシネート; ヒアルロン酸; ポリ(リンゴ酸); ポリ(アミノ酸); ポリヒドロキシバレレート; ポリアルキレンスクシネート; ポリビニルピロリドン; ポリスチレン; 合成セルロース; ポリアクリル酸; ポリ酪酸; ポリ吉草酸; ポリエチレングリコール; ポリヒドロキシセルロース; キチン; キトサン; ポリオルトエステルおよびコポリマー、ターポリマー; ジメチルイソソルビド; コレステロール、レシチンといった脂質; ポリ(グルタミン酸−コ−グルタミン酸エチル)など、またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
乳酸主体のポリマーがポリラクチドまたはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーの乳酸対グリコール酸モノマー比が100:0からおよそ10:90までであり、平均分子量は約1,000〜200,000ドルトンである請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
成分1が、チャンネル形成剤、油性成分、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、またはこれらの混合物を含む群から選択された添加剤を付加的に含む請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
乳化剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル; ソルビタン脂肪酸エステル; ポリソルベート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、レシチン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体; トコフェロール; コハク酸トコフェリルポリエチレングリコール; パルミチン酸トコフェロールおよび酢酸トコフェロール; ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
チャンネル形成剤がポリグリコール、エチルビニルアルコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン、N−メチルピロリドン、多糖類、糖類、糖アルコール、またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
粘度上昇剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムとその誘導体といったセルロース誘導体、ビニルポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリマーまたはコポリマー(Pluronics(R))、グリコサミノグリカン、カンテン、ペクチン、アルギン酸、デキストラン、デンプンおよびキトサンなどの多糖類、タンパク質、ポリ(酸化エチレン)、アクリルアミドポリマー、ポリヒドロキシ酸、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、合成セルロース、ポリアクリル酸、ポリ酪酸、ポリ吉草酸、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、およびコポリマー、誘導体など; またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
粘度上昇剤がカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロースである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
液状賦形剤(成分2)が水および場合によっては水混和性溶媒を含む水性賦形剤であり、水混和性溶媒は水混和性アルコール; ジメチルスルホキシド; ジメチルホルムアミド; 水混和性エーテル; 水混和性ニトリル; 水混和性ケトン; アミド; プロピレングリコール; グリセリン; ポリエチレングリコール400; グリコフロール(テトラグリコール); またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項19】
水混和性溶媒がグリセリン、エタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール、またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
液状賦形剤が少なくとも1種の油性成分を含む油性賦形剤であり、油性成分はトウモロコシ油、アーモンド油、ヒマワリ油、ラッカセイ油、オリーブ油、ヒマシ油、大豆油、ベニバナ油、綿実油などといった植物油、またはジメチルイソソルビドなどの親油性化合物を含む群から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項21】
成分2がコサーファクタント、共溶媒、親水性溶媒、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、緩衝剤、pH調節剤、浸透圧調整剤、等張化剤のうちのいずれか1種または2種以上の混合物を付加的に含む請求項7に記載の組成物。
【請求項22】
熱ゲル化またはヒドロゲル化ポリマーを付加的に含む請求項1から21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
対象に筋肉内投与、皮内投与、皮膚投与もしくは皮下投与、腹腔内投与、関節内投与、包内投与、頸管内投与、頭蓋内投与、管内投与、硬膜内投与、病変内投与、眼内投与、小室内投与、壁内投与、術中投与、頭頂内投与、腹膜内投与、胸膜内投与、肺内投与、髄腔内投与、胸腔内投与、気管内投与、鼓室内投与、子宮内投与、または経皮投与可能である請求項1から22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の注射剤組成物を調製する方法であって、マイクロ粒子またはナノ粒子、および該マイクロ粒子またはナノ粒子を投与前に再構成できる液状賦形剤を調製することを含む方法。
【請求項25】
請求項1から22のいずれかに記載の注射剤組成物を調製する方法であって、
i) 活性物質を生分解性ポリマーと混合してマイクロ粒子またはナノ粒子を形成する工程、
ii) 工程(i)のマイクロ粒子またはナノ粒子を場合によっては粘度上昇剤と混合し、および/または場合によっては1種以上の添加剤と混合して成分1を製造する工程、
iii) 液状賦形剤を場合によっては粘度上昇剤および/または他の添加剤と混合して成分2を製造する工程、および
iv) 投与前に成分1と成分2とを混合して所望の組成物を得る工程
を含む方法。
【請求項26】
請求項1から22のいずれかに記載の注射剤組成物を調製する方法であって、
i) 活性物質および生分解性ポリマーを水不混和性溶媒中に溶解または分散させる工程、
ii) 工程(i)の溶液を乳化剤水溶液で均質化し、溶媒を蒸発させてマイクロ粒子またはナノ粒子を形成し、マイクロ粒子またはナノ粒子を洗浄および冷凍乾燥する工程、
iii) 工程(ii)のマイクロ粒子またはナノ粒子を場合によっては粘度上昇剤と混合し、および/または場合によっては1種以上の添加剤と混合して成分1を製造する工程、
iv) 液状賦形剤を場合によっては粘度上昇剤および/または他の添加剤と混合して成分2を製造する工程、および
v) 投与前に成分1と成分2とを混合して所望の組成物を得る工程
を含む方法。
【請求項27】
請求項1から22のいずれかに記載の注射剤組成物を調製する方法であって、
i) 活性物質および生分解性ポリマーを適当な溶媒に溶解させ、噴霧乾燥してマイクロ粒子またはナノ粒子を形成する工程、
ii) マイクロ粒子またはナノ粒子を適当な凍結保護物質の存在下に冷凍乾燥する工程、
iii) 工程(ii)のマイクロ粒子またはナノ粒子を場合によっては粘度上昇剤と混合して成分1を製造する工程、
iv) 液状賦形剤を場合によっては粘度上昇剤および/または他の添加剤と混合して成分2を製造する工程、および
v) 投与前に成分1と成分2とを混合して好適な注射製剤組成物を得る工程
を含む方法。
【請求項28】
生体においてデポ剤ゲルもしくはインプラントをin situ形成する方法であって、請求項1に記載のin situゲル化製剤を調製し、この製剤を体内に配置し、液状賦形剤を分散または消散させて固形またはゲルのインプラントを生成させることを含む方法。
【請求項29】
請求項1に記載の新規組成物から生分解性デポ剤ゲルもしくはインプラントを、それを必要とする対象の体内でin situ形成するのに好適な医薬キットであって、少なくとも1種の活性物質を含み、場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤も含むマイクロ粒子を収容した装置と、液状賦形剤および場合によっては1種以上の製薬学的に許容される添加剤を収容した装置とを含み、これら二つの装置の内容物が対象の体内への投与前に互いに混合し得るように装置から排出される医薬キット。
【請求項30】
請求項1に記載のin situゲル化製剤もしくはインプラント組成物を哺乳動物、特にヒトの状態の治療用である医薬の製造に使用する方法。
【請求項31】
請求項1に記載の組成物の使用方法であって、有効量の該組成物をそれを必要とする対象/患者に投与することを含む方法。
【請求項32】
実質的に本願明細書に記載し、かつ実施例により詳述した医薬組成物および医薬組成物調製方法。

【公表番号】特表2010−505819(P2010−505819A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531014(P2009−531014)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/IN2007/000454
【国際公開番号】WO2008/041245
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(500445631)パナセア バイオテック リミテッド (29)
【Fターム(参考)】