説明

デンドロン側鎖を持つジアミン化合物およびこれを用いて製造される液晶アラインメント物質

【課題】 新規なデンドロン側鎖を持つジアミン化合物、ならびにこのジアミン化合物を用いて製造された液晶アラインメント物質を提供する。
【解決手段】 特に、このジアミン化合物はポリアミド酸の調製に使用された後、液晶アラインメント物質の製造に使用される。この液晶アラインメント物質によれば、液晶のプレチルト角の調整が容易であるとともに、液晶の構造特性が良好である。特に、LCDパネル製造工程での洗浄溶媒に対する優れた化学的耐性をこの液晶アラインメント物質が示すことにより、液晶の構造特性は洗浄後であっても劣化しないという点において、本品は効果を奏している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンドロン側鎖を持つジアミン化合物、ならびにこのジアミン化合物を用いて製造される液晶(LC)アラインメント物質に関する。より詳細には、本発明は、デンドロン側鎖をジアミン化合物内に導入することによりLCアラインメント物質を提供する技術に関するものであり、当該物質においては液晶のプレチルト角の調整が容易であり、液晶のアラインメント特性が良好であり、かつ、洗浄中におけるこのアラインメント物質の化学的耐性が優れている。
【背景技術】
【0002】
通常、従来の液晶アラインメントフィルム用ポリイミド樹脂は、例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)またはビフタル酸二無水物(BPDA)等の芳香族二無水物、ならびに、例えばパラ−フェニレンジアミン(p−PDA)、メタ−フェニレンジアミン(m−PDA)、4,4−メチレンジアミン(MDA)、2,2−ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)、メタ−ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(m−BAPS)、パラ−ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(p−BAPS)、4,4−ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)または4,4−ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HF−BAPP)等の芳香族ジアミンをモノマーとした重縮合により調整される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
芳香族二無水物ならびにジアミンにより製造されるポリイミド液晶アラインメントフィルムは、熱安定性、化学的耐性、機械的特性等の点で優れている。しかしながら、ポリイミド液晶アラインメントフィルムは、電荷移動錯体の形成および電気光学特性の乏しさゆえに、透過性および安定性が乏しいという問題点を有している。この問題を解決するための試みとして、特開平11−84391号公報には、脂環式二無水物モノマーまたは脂環式ジアミンの導入が記載されており、また、特開平06−136122号公報には、液晶プレチルト角の増大および液晶安定性の改善のために側鎖を有する官能性ジアミンまたは側鎖を有する官能性二無水物が開示されている。さらに、液晶分子をフィルムの表面に対して垂直に配列することが可能な垂直アラインメント型で、LCDパネルを水平アラインメント(VA)モードで構築するための構造フィルムが開発されている(米国特許第5,420,233号参照)。
【0004】
近年、液晶ディスプレイ装置の市場は拡大を続けており、高品質のディスプレイ装置に対する需要が続いている。さらに、大画面の液晶ディスプレイ装置に関する技術はめざましい進歩を遂げてきており、高い生産性を有するアラインメントフィルムの製造が強く求められている。したがって、例えばLCD製造工程における不備が僅かであり、電気光学特性が優れており、そして信頼性が高いなど、各種液晶ディスプレイ装置に要求される、様々な特性を十分に満たすことができるような高性能の液晶アラインメントフィルムの開発が、今もなお、引き続いて当該技術分野において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術における上述の問題点を解決すべく、本発明者は熱心かつ重点的に研究に取り組んだ。その結果、本発明者は、デンドロン側鎖を有する官能性ジアミンを用いて製造された液晶アラインメント物質が、液晶のプレチルト角の容易な調整およびアラインメントの均性を実現化するとともに、洗浄中における優れた化学的耐性を示すことを発見し、本発明を成し遂げるに至った。
【0006】
とりわけ、本発明のひとつの特徴によれば、下式1で示されるジアミン化合物が提供される。
式1
【0007】
【化7】

式中、
Aは、単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、
Bは、単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、
置換基Cは、それぞれ独立して単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基Dは、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基で、少なくとも一個のハロゲン原子により置換されていてもよく、あるいは下式2で示される官能基であり、
式2
【0008】
【化8】

式中、
置換基C’は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D’は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基、あるいは下式3で示される官能基であり、
式3
【0009】
【化9】

式中、
置換基C”は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D”は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基、あるいは下式4で示される官能基であり、
式4
【0010】
【化10】

式中、
置換基C”’は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D”’は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基である。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、ジアミン化合物を共重合することにより調製されたポリアミド酸、脂環式二無水物、芳香環式二無水物、ならびに任意により、芳香環式ジアミンおよび/またはシロキサンをベースとするジアミンが提供される。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、ポリアミド酸を完全または部分的にイミド化することによって調製される可溶性ポリイミドが提供される。
【0013】
本発明の他の特徴によれば、ポリアミド酸と可溶性ポリイミドの混合物が提供される。
【0014】
本発明の他の特徴によれば、可溶性ポリアミド酸またはその混合物を溶媒中に溶解し、基板上に溶液をコーティングし、コーティングされた溶液を全体的または部分的にイミド化することにより製造される液晶アラインメントフィルムが提供される。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、液晶アラインメントフィルムを含有する液晶ディスプレイ装置が提供される。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は下式1で示される官能性ジアミン化合物が提供される。
【0018】
【化11】

式中、
Aは、単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、
Bは、単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、
置換基Cは、それぞれ独立した単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基Dは、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基で、少なくとも一個のハロゲン原子により置換されていてもよく、あるいは下式2で示される官能基であり、
【0019】
【化12】

式中、
置換基C’は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D’は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基、あるいは下式3で示される官能基であり、
【0020】
【化13】

式中、
置換基C”は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D”は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基、あるいは下式4で示される官能基であり、
【0021】
【化14】

式中、
置換基C”’は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D”’は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基である。
【0022】
官能性ジアミン化合物の具体例には下式5および6で示される化合物が含まれる。
式5
【0023】
【化15】

式6
【0024】
【化16】

しかしながら、式5および式6の化合物は説明のために記載したに過ぎず、本発明による官能性ジアミンの構造がこれらに限定されるというわけではない。
【0025】
本発明の官能性ジアミンモノマーは、その側鎖中に、スペーサーとして作用するベンゼン環骨格を有していることから、立体障害の発生がより少ない。すなわち、この構造上の効果がジアミンモノマーの反応性の減少を最小限に抑え、側鎖方向における液晶分子のアラインメントに関与し、ならびに製造されるアラインメントフィルムの化学的耐性を改善しており、従って洗浄に対する抵抗性の改善に大きく貢献している。加えて、多数のアルキル基を同時に側鎖に導入してデンドロン構造を形成することが可能であり、たとえジアミンモノマーが低含有量であってもプレチルト角の拡大を生じる。官能性ジアミンモノマーのこれらの特性は、液晶のプレチルト角を安定させるとともに、製造されるアラインメントフィルムの表面に対し垂直方向に液晶分子を並べる。
【0026】
本発明は、デンドロン側鎖、脂環式二無水物、芳香環式二無水物、ならびに任意により、芳香環式ジアミンおよび/またはシロキサンをベースとするジアミンを有する官能性ジアミンを共重合することにより調製されたポリアミド酸を提供する。
【0027】
ポリアミド酸は、従来の共重合方法を用いて酸二無水物およびジアミン化合物から調製される。これらの共重合方法は、ポリアミド酸の調製に使用可能である限り、特に限定されるものではない。ポリアミド酸が官能性ジアミン単位を含有することから、液晶のプレチルト角の調製が容易であるとともに、液晶の配置が均一となる。官能性ジアミンモノマーの含有量によりプレチルト角が変化するため、芳香環式ジアミンまたはシロキサンをベースとするジアミンを用いずに官能的ジアミンのみを使用して、液晶の形態に従ってポリアミド酸を調製することが可能である。その後、このようにして調製されたポリアミド酸は、液晶アラインメントフィルムの製造に使用することが可能である。つまり、芳香環式ジアミンまたはシロキサンをベースとするジアミンは任意の成分である。したがって、ポリアミド酸中における式1の官能性ジアミンの含有量は、ジアミンモノマーの総量に対し0.1〜100モル%、好ましくは0.5モル%〜30モル%であり、より好ましくは1モル%〜20モル%の範囲である。
【0028】
ポリアミド酸の調製に使用される好ましい芳香環式ジアミンの例には、パラ−フェニレンジアミン(p−PDA)、4,4−メチレンジアミン(MDA)、4,4−オキシジアニリン(ODA)、メタ−ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(m−BAPS)、パラ−ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(p−BAPS)、2,2−ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)および2,2−ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HF−BAPP)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明によるポリアミド酸の調製に使用される、シロキサンをベースとするジアミンは、下式7に示される構造を有している:
式7
【0030】
【化17】

式中、nは1〜10の整数である。
【0031】
使用される芳香環式ジアミンおよび/またはシロキサンをベースとするジアミンの量は、ジアミンモノマーの総量に対して0〜99.9モル%、好ましくは70〜99.5モル%、さらに好ましくは80〜99モル%の範囲である。
【0032】
本発明によるポリアミド酸の調製に用いられる芳香環式二無水物は、液晶分子を一方向に並べるために行われる、ラビング処理工程(rubbing process)への耐性を有するように、200℃ないしそれを超える高温プロセッシング工程への熱耐性を有するように、ならびに化学物質への耐性を有するように、厚さ約0.1μmの耐性アラインメントフィルムを生じる。
【0033】
このような芳香環式二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフタル酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)およびヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6−FDA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
芳香環式二無水物の含有量は、二無水物モノマーの総量に対して10モル%〜95モル%、好ましくは50モル%〜90モル%の範囲である。使用される芳香環式二無水物が10モル%未満の場合には、製造されるアラインメントフィルムにおける機械的特性および耐熱性が乏しい。一方、使用される芳香環式二無水物が80モル%を超える場合には、電気的特性、例えば電圧保持率が悪化する。
【0035】
本発明によるポリアミド酸の調製に使用される脂環式二無水物は、例えば、一般的な有機溶媒中における不溶性、電荷移動錯体の形成に起因する可視領域の低透過性、高い極性に起因する電気工学特性の乏しさといった、ポリアミド酸等の分子構造により発生する問題を解決するものである。
【0036】
脂環式二無水物の例には、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)および1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
脂環式二無水物の含有量は、二無水物モノマーの総量に対して5モル%〜90モル%、好ましくは10モル%〜50モル%の範囲である。
【0038】
本発明のポリアミド酸は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、およびテトラヒドロフラン(THF)等の、一般的な非プロトン性の極性溶媒における溶解性に優れている。脂環式二無水物の導入、ならびに3個のベンゼン環の間における大きな立体反発に起因している三次元構造中の官能性ジアミンの立体効果に対して、ポリアミド酸の優れた溶解性が多大に貢献していると考えられている。近年、液晶ディスプレイ装置は、大規模、高解像度および高品質となってきているために、アラインメント物質の印刷適正は重要となってきている。こうした環境の下、官能性ジアミンが液晶アラインメントフィルムの製造に使用された場合、良好な溶解性は基板上の印刷適正に対してプラスの作用を有する。
【0039】
本発明のポリアミド酸は、好ましくは数平均分子量が10,000〜500,000g/モルである。ポリアミド酸がイミド化された場合、イミド化率またはポリアミド酸の構造に依存して200〜350℃のガラス転移温度を有する。
【0040】
本発明は、ポリアミド酸を溶媒中に溶解し、基板上に溶液をコーティングし、コーティングされた溶液を全体的または部分的にイミド化することにより製造される、液晶アラインメントフィルムを提供するものである。
【0041】
あるいは、本発明の液晶アラインメントフィルムは、可溶性ポリアミドのみを用いて製造することが可能であり、これは、ポリアミド酸またはポリアミド酸と可溶性ポリアミドとの混合物を全体的または部分的にイミド化することにより製造される。
【0042】
アラインメントフィルムは、可視光線領域において90%またはそれ以上の透過性、液晶のアラインメントの均質性、ならびに1°〜90°の範囲内における液晶プレチルト角の調整の容易性を示す。加えて、このアラインメントフィルムは、官能性ジアミンを含有しているため、例えば低屈折率および低誘電率といった、電気光学特性の改善を示す。
【発明の効果】
【0043】
上記により明らかであるように、本発明は、液晶のアラインメント特性が良好であり、液晶のプレチルト角の調製が容易である。そして洗浄中におけるアラインメント物質の化学的耐性が優れた液晶アラインメント物質を提供するものである。
【0044】
本発明の好ましい態様について、説明のために記述したが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲を逸脱することのない、様々な改変、付加および置換が可能であることは、当該技術分野の当業者により理解されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
ここで本発明を、以下の実施例を参照しながら、さらに詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は説明のために示されるものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0046】
調製例1
(1)3,4,5−トリ(n−ドデシルオキシ)ベンゾイル・クロライド
【0047】
【化18】

コンデンサを取り付けた丸底フラスコ中で1モルの(1)をDMF中に溶解し、3.9モルの炭酸カリウムをこれに加えた。得られた混合物を十分に撹拌した。3.1モルの(2)を撹拌した混合物に加えた後、少しずつフラスコの反応温度を上げて70℃とした。その後、反応混合物を80℃に保ちながら反応を24時間続けた。反応完了の後、温度を室温へと下げた。反応溶液を純水に注いで沈殿物を形成した。この沈殿物をろ過し、そして洗浄を繰り返して純正品(3)を得た。製品(3)をエタノールに溶解した後、水酸化ナトリウムをこれに加えた。エタノール溶液を4時間還流して酸誘導体(4)を得た。塩化チオニルと共に4時間還流することにより、酸誘導体(4)をアシル化に供して3,4,4−トリドデシルオキシベンゾイル・クロライド(5)を得た。
【0048】
(2)12Gl−AG−テルフェニルジアミンの調製
【0049】
【化19】

十分に乾燥させた丸底フラスコ中に、1モルのジブロモ安息香酸(6)を充填した後、これにTHFを加えて酸(6)を溶解した。この溶液にDCCおよびDMAPを加えた後、フラスコの温度を0℃に冷却した。冷却溶液に1.1モルのアミノフェノールをゆっくりと加えて、反応溶液を30分間反応させて中間体(8)を形成した。中間体(8)をTHF中に溶解し、触媒としてTEAをこれに加えた。この溶液に化合物(5)を加えた。得られた混合物を室温にて3時間反応させて中間体(9)を得た。次に、十分に洗浄して乾燥させた丸底フラスコの内部に存在する水分と酸素を真空除去し、代わりに不活性ガスとしてアルゴン(Ar)をフラスコに充填した。中間体(9)をフラスコに投入した後、DMEをこれに加えて中間体(9)を溶解した。触媒としてパラジウムリン酸および炭酸ナトリウムを溶液に加えて、その後2.2モル等量のアミノボロン酸(10)をこれに加えた。得られた混合物を均質となるように溶解し、フラスコの温度を80℃に上げた。80℃を保持しながら、この溶液を24時間反応させた。反応完了後、カラムクロマトグラフィーおよび再結晶により反応溶液を精製し、最終製品である12Gl−AG−テルフェニルジアミンを得た。
【0050】
H−NMRスペクトルを用いて最終製品の構造を特定し、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて熱的特性を評価した。この結果をそれぞれ図1および図2に示す。
【実施例1】
【0051】
撹拌器、サーモスタット、窒素注入装置およびコンデンサを取り付けた四ツ首フラスコに、窒素を通過させながら0.99モルの4,4−メチレンジアミンおよび0.01モルの12Gl−AG−テルフェニルジアミン(デンドロンジアミン、式5)を投入し、次にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をこれに加えた。得られた混合物を溶解した。この溶液に、固体状態の0.5モルの5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(DOCDA)および0.5モルのピロメリット二無水物(PMDA)を加えた。得られた混合物を強力に撹拌した。この時点で固体含有率は15重量%であった。温度を25℃未満に保持しながら、反応混合物を24時間反応させてポリアミド酸溶液を調製した。
【0052】
アラインメントフィルムの化学的耐性を評価するために、ITOガラス基板(10cm×10cm)上にポリアミド酸溶液を厚さが0.1μmとなるようにスピンコートし、70℃および210℃にて硬化し、ラビング処理を行なってアラインメントフィルムを作製した。その後、アラインメントフィルムの表面をイソプロピルアルコールおよび純水で十分に洗浄した後、アラインメントフィルムを取り付けてLCDテストセルを組み立てた。これに1〜2Vの電圧を加えてLCDテストセルを作動させて、LCDテストセルのステインの形成を観察した。その結果を表1に示す。
【0053】
さらに、アラインメント特性を評価し、ラビングによる液晶のプレチルト角を測定するために、厚さが0.1μmとなるようにポリアミド酸溶液を二枚のITOガラス基板に塗布し、210℃で硬化して2枚のアラインメントフィルムを作製した。同時に、アラインメントフィルムの端部における拡張性および硬化特性を、視診により、または光学顕微鏡を用いて観察してアラインメントフィルムの印刷適正を評価した。また一方で、アラインメントフィルムの表面をラビング機を用いてラビング処理し、一方の配列処理フィルムのラビング処理方向が、もう一方の配列方向フィルムの処理方向とは反対方向となるように、アラインメントフィルムを互いに並行に配置し、この2枚のアラインメントフィルムを接着して、セル間隙が50μmとなる液晶セルを組み立てた。液晶セルに液晶分子を充填した後、光学顕微鏡の下で垂直に偏向した液晶のアラインメント特性を観察し、液晶のプレチルト角を結晶回転(crystal rotation)法で測定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0054】
0.98モルの4,4−メチレンジアニリンおよび0.02モルの12Gl−AG−テルフェニルジアミンを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を調整した。実施例1に記載の手順に従って、液晶のアラインメント特性を評価し、液晶のプレチルト角を測定し、アライメントフィルムの化学的耐性を評価した。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0055】
0.95モルの4,4−メチレンジアニリンおよび0.05モルの12Gl−AG−テルフェニルジアミンを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を調整した。実施例1に記載の手順に従って、液晶のアラインメント特性を評価し、液晶のプレチルト角を測定し、アライメントフィルムの化学的耐性を評価した。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0056】
0.92モルの4,4−メチレンジアニリンおよび0.08モルの12Gl−AG−テルフェニルジアミンを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を調整した。実施例1に記載の手順に従って、液晶のアラインメント特性を評価し、液晶のプレチルト角を測定し、アラインメントフィルムの化学的耐性を評価した。その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0057】
0.85モルの4,4−メチレンジアニリンおよび0.15モルの12Gl−AG−テルフェニルジアミンを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を調整した。実施例1に記載の手順に従って、液晶のアラインメント特性を評価し、液晶のプレチルト角を測定し、アラインメントフィルムの化学的耐性を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
0.9モルの4,4−メチレンジアニリンおよび0.1モルの2,4−ジアミノフェノキシヘキサデカンを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を調整した。実施例1に記載の手順に従って、液晶のアラインメント特性を評価し、液晶のプレチルト角を測定し、アラインメントフィルムの化学的耐性を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例2)
0.85モルの4,4−メチレンジアニリンおよび0.15モルの2,4−ジアミノフェノキシヘキサデカンを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を調整した。実施例1に記載の手順に従って、液晶のアラインメント特性を評価し、液晶のプレチルト角を測定し、アラインメントフィルムの化学的耐性を評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

本発明の上記およびその他の対象、特徴およびその他の効果は、添付の図面に関連する以下の記述を考慮することにより明白に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の調製例1により調整されたジアミン化合物のH-NMRスペクトラムである。
【図2】本発明の調製例1により調整されたジアミン化合物の示差走査熱量測定法(DSC)のサーモグラム図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式1で示されるジアミン化合物。
【化1】

式中、
Aは、単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、
Bは、単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、
置換基Cは、それぞれ独立して単結合、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基Dは、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基であって、少なくとも一個のハロゲン原子により置換されていてもよく、あるいは下式2で示される官能基であり、
【化2】

式中、
置換基C’は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D’は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基であるか、あるいは下式3で示される官能基であり、
【化3】

式中、
置換基C”は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D”は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基であるか、あるいは下式4で示される官能基であり、
【化4】

式中、
置換基C”’は、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−CONH−、または−OCO−であり、かつ、
置換基D”’は、それぞれ独立してC1〜20の直鎖、分岐または環状アルキル基である。
【請求項2】
ジアミン化合物が、下式5または6で示される化合物である、請求項1に記載のジアミン化合物。
【化5】

【化6】

【請求項3】
請求項1に記載のジアミン化合物、脂環式二無水物、芳香環式二無水物、ならびに任意により、芳香環式ジアミンおよび/またはシロキサンをベースとするジアミンを共重合することにより調製されるポリアミド酸。
【請求項4】
ジアミンモノマーの総量を基準とする、請求項1に記載のジアミン化合物の量が0.1〜100モル%であり、芳香環式ジアミンおよびシロキサンをベースとするジアミンの量が0〜99.9モル%である、請求項3に記載のポリアミド酸。
【請求項5】
二無水物モノマーの総量を基準とする、芳香環式二無水物の量が10〜95モル%であり、脂環式二無水物の量が5〜90モル%である、請求項3に記載のポリアミド酸。
【請求項6】
ポリアミド酸の数平均分子量が10,000〜500,000g/モルである、請求項3に記載のポリアミド酸。
【請求項7】
請求項3に記載のポリアミド酸を全体的または部分的にイミド化することにより調整される、可溶性ポリイミド。
【請求項8】
請求項3に記載のポリアミド酸と、請求項7に記載の可溶性ポリイミドとの混合物。
【請求項9】
請求項3に記載のポリアミド酸、請求項7に記載の可溶性ポリイミド、または請求項8に記載の混合物を溶媒中に溶解し、基板上にこの溶液をコーティングし、コーティングされた溶液を全体的または部分的にイミド化することにより製造される液晶アラインメントフィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶アラインメントフィルムを有する液晶ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−516157(P2006−516157A)
【公表日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518285(P2005−518285)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002578
【国際公開番号】WO2005/033248
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(505122313)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Cheil Industries Inc.
【Fターム(参考)】