デンプンナノコンポジット材料
一態様として本発明はデンプン及び疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を提供する。他の態様として本発明は上述の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を含む材料から作製される包装を提供する。このナノコンポジット材料は改良された機械的及びレオロジー特性並びに水分取込及び/又は損失速度が低いという点で低減された水分への感受性を有する。他の態様として本発明は、上述の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であり、水性ゲルの形態にあるデンプンを溶融混合装置内で疎水性粘土と混合する工程を含む方法を提供する。さらなる態様において本発明は、実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であり、デンプンを疎水性粘土と混合してマスターバッチを形成する工程(マスターバッチ方法)と、このマスターバッチをさらなるデンプンと混合する工程を含む方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してナノコンポジット材料に関する。より具体的には、本発明は、デンプン、および実質的に剥離化された疎水性粘土(クレイ)を含むナノコンポジット材料に関する。本発明はまた、このようなナノコンポジット材料の調製方法にも関する。
【0002】
特定の一態様において、本発明は、包装材料として使用するのに適したナノコンポジット材料に関し、本明細書において以後、その用途に関して本発明を記述するのが好都合であろう。しかしながら、本発明はその用途のみに限定されずに、他の用途に適用できることを理解されたい。
【背景技術】
【0003】
下記の考察は、本発明の理解を促進する意図のものである。しかしながら、この考察において言及されるいずれの事柄も、本出願の優先権主張日において公表され、知られ、当業者の知識の一部となっていたものであると認識し、または認めるものではないことを理解されたい。
【0004】
熱可塑性材料は、通常、炭化水素原料から調製される。それらの製造および分解に関連した環境問題のために、代替材料が開発されている。
【0005】
一選択肢は、熱可塑性材料を製造するのにデンプンなどの天然ポリマーを使用することである。天然ポリマーは、再生可能な供給源に由来し、元来生分解性である。
【0006】
未改質の低アミロースデンプンと、未改質もしくは親水性の粘土とから製造したナノコンポジットが開示されている。
【0007】
米国特許第6,811,599号明細書(特許文献1)は、天然ポリマーと、可塑剤と、層構造を有する剥離された粘土とを含む生分解性の熱可塑性材料を開示する。その記述は、天然ポリマーと適合させるため粘土の有機改質剤を選択する必要性に言及する。このことは、親水性粘土が望ましいことを示唆している。この材料についての問題点は、部分的な剥離化しか得られなかったことである。
【0008】
Macromolecular Materials and Engineering 2002,287,(8),553〜558における「Preparation and properties of biodegradable thermoplastic starch/clay hybrids(生分解性熱可塑性デンプン/粘土混合物の調製と特性)」と題するH Parkらによる論文(非特許文献1)は、ナトリウムモンモリロナイト未改質粘土(CLOISITE(登録商標)Na+)および有機改質粘土(CLOISITE(登録商標)6A、10Aおよび30B)の両者を主成分とするデンプン系ナノコンポジットを開示する。最も望ましい機械的性質は、未改質粘土によって得られ、粘土構造の剥離化もしくは膨張はほとんど観察されなかった。
【0009】
Carbohydrate Polymers 2005,61,(4),455〜463における「Thermoplastic starch−clay nanocomposites and their characteristics(熱可塑性デンプン−粘土ナノコンポジット及びその特性)」と題するB Q ChenおよびJ R G Evansによる論文(非特許文献2)は、グリセロール−可塑化熱可塑性デンプンを主成分とするナノコンポジットを開示する。使用した粘土は、ナトリウムモンモリロナイト、ナトリウムヘクトライト、ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウムクロリドで改質したナトリウムヘクトライトおよびカオリナイトであった。試料は、2段ロールミルを使用し溶融処理することにより調製した。共に親水性である未改質モンモリロナイトおよびヘクトライト粘土だけが部分的に剥離化を示すと報告された。
【0010】
Composite Interfaces 2006,13,(1),1〜17における「Thermoplastic starch/layered silicate composites:structure,interaction,properties(熱可塑性デンプン/層状ケイ酸塩コンポジット:構造、相互作用、特性)」と題するK Bagdiらによる論文(非特許文献3)は、グリセロール−可塑化コムギデンプンを主成分とする粘土(ナノ)コンポジットの調製を開示する。使用した粘土はナトリウムモンモリロナイト、およびアミノヨードデカン酸で改質した粘土(NANOFIL(登録商標)784)、ステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドで改質した粘土(NANOFIL(登録商標)804)、またはジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで改質した粘土(NANOFIL(登録商標)948)であった。粘土は膨張せず、もしくは限定的な膨張のみ観察された。
【0011】
Carbohydrate Polymers 2005,59,(4),467〜475における「Rheology of starch−clay nanocomposites(デンプン−粘土ナノコンポジットのレオロジー)」と題するB Chiouらによる論文(非特許文献4)は、熱可塑性デンプン−粘土ナノコンポジットのレオロジーを考察する(使用した粘土はCLOISITE(登録商標)Na+、CLOISITE(登録商標)30B、10Aおよび15Aであった。)。コムギデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよびワックス様トウモロコシデンプンを含む種々のデンプンが調査された。
【0012】
国際出願公開公報WO2005/068364(特許文献2)は、ナノ粘土向け挿入物(インターカレーション物;intercalant)としてのデンプンおよび改質デンプンを特許請求の範囲に記載している。この方法は、水に優しい粘土の特性を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,811,599号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/068364号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H Parkら、「Preparation and properties of biodegradable thermoplastic starch/clay hybrids」、Macromolecular Materials and Engineering 2002,287,(8),553〜558
【非特許文献2】B Q ChenおよびJ R G Evans、「Thermoplastic starch−clay nanocomposites and their characteristics」、Carbohydrate Polymers 2005,61,(4),455〜463
【非特許文献3】K Bagdiら、「Thermoplastic starch/layered silicate composites:structure,interaction,properties」、Composite Interfaces 2006,13,(1),1〜17
【非特許文献4】B Chiouら、「Rheology of starch−clay nanocomposites」、Carbohydrate Polymers 2005,59,(4),467〜475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
デンプン、および高剥離度を有する粘土を主成分とするナノコンポジット材料であって、例えば高度の透明性、改良された機械的およびレオロジー特性、ならびに/または低減された水分(湿気)への感受性を含む、改良された性質を有するナノコンポジット材料が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ナノコンポジット材料の調製における疎水性粘土の使用が、得られた材料の性質、すなわち、透明性、柔軟性、引張強度、耐衝撃性および/または引張特性を含む性質において、驚くべきレベルの改良をもたらすことが見出された。
【0017】
したがって一態様において、本発明は、デンプン、および疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む、実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を提供する。
【0018】
疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土(本明細書において以後「疎水性粘土」という)は、0.1重量%〜5重量%、より好ましくは0.1重量%〜3重量%、また最も好ましくは0.5重量%〜2重量%の量で存在することが好ましい。
【0019】
このような長鎖アルキルアンモニウムイオンを含む好ましい粘土には、CLOISITE(登録商標)20AおよびCLOISITE(登録商標)25Aが含まれる。
【0020】
好ましくは、このナノコンポジット材料には、1種もしくは複数の可塑剤、および/またはポリビニルアルコールなどの、しかしそれらに限定されない1種もしくは複数の水溶性ポリマー、および/または1種もしくは複数の加工助剤が含まれる。
【0021】
デンプンは、他の適切な、ポリビニルアルコールを含むポリマーならびにポリラクチドおよびポリカプロラクトンなどのポリエステルとブレンドできる。使用されるブレンドは、要求される機能的および機械的特性によって、改質することができる。
【0022】
このナノコンポジット材料は、5重量%と30重量%の間の、より好ましくは5重量%〜15重量%の、また最も好ましくは8重量%〜12重量%の水分含量を有することが好ましい。
【0023】
このナノコンポジット材料は、例えば、硬質の熱可塑性包装用トレイ、びん、軟質フィルムおよびバリヤフィルムなどの射出成形製品、ならびに生体適合材料として使用できる。したがって他の態様において、本発明は、上述の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を含む材料から作製される包装を提供する。
【0024】
このナノコンポジット材料は、改良された機械的およびレオロジー特性、ならびに水分取り込みおよび/または損失の速度が低いという点で低減された水分への感受性を有する。このナノコンポジット材料は、より高い溶融物強度を有し、このため発泡成形またはフィルムブロー成形などの加工におけるその使用を促進し、また改良された経時特性ならびに低減された気体および水透過性を有する。
【0025】
このナノコンポジット材料の改良された性状により、可塑剤および/または加工助剤への必要性が低くなる。特に、本発明のナノコンポジット材料が、以前に開示された他の材料よりも可塑性であるので、添加される可塑剤の量を節減できる。
【0026】
このナノコンポジット材料は改良された透明性を有し、それが剥離化のしるしである。この材料は調製過程の間に透明になり、その透明度のレベルは調製後、所望の水分含量まで乾燥すると上昇し続ける。この材料は、老化(あるいは劣化;retrogradation)の速度が遅いので長期間にわたって透明のままである。
【0027】
他の態様において、本発明は、上述の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、水性ゲルの形態にあるデンプンを溶融混合装置内で疎水性粘土と混合する工程を含む方法を提供する。適切な溶融混合装置には押出し成形機が含まれる。好ましくは、粘土は粉末の形態である。
【0028】
さらなる態様において、本発明は実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、デンプンを疎水性粘土と混合してマスターバッチを形成する工程(本明細書において以後「マスターバッチ方法」という)と、このマスターバッチをさらなるデンプンと混合する工程とを含む方法を提供する。マスターバッチはストランドとして集め、さらなる加工において使用するため、乾燥およびペレット化(造粒)できる。マスターバッチは、第2のおよびその後の工程において、さらなるデンプンと混合することが好ましい。第2の工程は、第1の工程に続いて直ちに、または期間をおいた後で実行することができる。第1工程と第2工程の間の時間的期間は3カ月未満、またより好ましくは2カ月未満とすることが好ましい。
【0029】
マスターバッチ方法は、マスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程の前に、マスターバッチを再水和させる工程を含むことが好ましい。
【0030】
マスターバッチ方法は、マスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程の前に、得られたマスターバッチを粉砕および/または摩砕して粉末とする工程を含むことが好ましい。
【0031】
より一般的には、本発明は、ナノコンポジット材料の調製方法であって、デンプンを粘土と混合してマスターバッチを形成する工程と、このマスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程とを含む方法を提供する。好ましくは、粘土は、5重量%から70重量%の間の量でマスターバッチ中に存在する。
【0032】
工程内にマスターバッチを含むことは、多くの利点を有する。マスターバッチ濃縮物は、取扱いおよび貯蔵するのが容易であり、また原料粘土または粘土スラリーよりも容易に押出し機中に供給できる。マスターバッチの使用はまた、その後の工程において操作者をナノ粘土の粉じんに曝露する可能性をも小さくする。マスターバッチは3カ月を超えて、また、もしかすると無期限に、水分含量15重量%未満の比較的乾燥した状態で貯蔵することができ、使用前に再水和させることができる。最も注目に値するのは、ワンステップ調製と比較した場合、マスターバッチ方法が剥離化の改善につながることである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法において使用できる1つの適切な押出し成形機の概略図である。
【図2】実施例30〜36によるCLOISITE(登録商標)20Aの基準となる広角X線散乱(WAXS)グラフである。
【図3】実施例30〜36によるR1についての、また、1%および2%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットのWAXSパターンのグラフである。
【図4】実施例30〜36による3%および5%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットについてのWAXSパターンのグラフである。
【図5】実施例30〜36によるCLOISITE(登録商標)20Aのサーモグラムである。
【図6A】実施例30〜36による、R1およびCLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについての熱重量測定微分質量曲線のグラフである。
【図6B】実施例30〜36による、R1およびCLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについての熱重量測定微分質量曲線のグラフである。
【図7】倍率50K(5万倍)における実施例53による2%CLOISITE(登録商標)20Aの透過型電子顕微鏡(TEM)による顕微鏡写真である。
【図8】倍率50K(5万倍)における実施例54による2%CLOISITE(登録商標)25AのTEM顕微鏡写真である。
【図9】倍率50K(5万倍)における実施例55による2%CLOISITE(登録商標)Na+のTEM顕微鏡写真である。
【図10】倍率115K(115000倍)における実施例53による2%CLOISITE(登録商標)20AのTEM顕微鏡写真である。
【図11】倍率115K(115000倍)における実施例54による2%CLOISITE(登録商標)25AのTEM顕微鏡写真である。
【図12】倍率115K(115000倍)における実施例55による2%CLOISITE(登録商標)Na+のTEM顕微鏡写真である。
【図13】実施例56〜60による2%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットについてのWAXSパターンのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
その最も単純な形態において、本発明の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料は、デンプンおよび疎水性粘土のみからなる。当技術分野の配合者により理解されるように、本発明のナノコンポジット材料を調製する間に、可塑剤および加工助剤を含む、多くの追加的化合物を添加することができる。
【0035】
本明細書において使用される場合、「実質的に剥離化された(substantially exfoliated)」ナノコンポジット材料とは、大部分の粘土凝塊物(アグロメレート)がタクトイド(紡錘体;tactoids)および個々の粘土層にまでバラバラに分離されている材料を意味する。前記タクトイドは、可視光の波長未満の大きさを有し、このため材料が透明に見え、視覚的に識別できる粘土粒子をほとんど有しないようなものであることが好ましい。前記タクトイドは、2〜10層の間の粘土層を含み、100nmと300nmの間の横方向の大きさを有することがより好ましい。
【0036】
本明細書において使用される場合、「粘土(clay)」とは、剥離化されて、ナノ粒子となることが可能な合成もしくは天然の層状ケイ酸塩である。好ましい粘土には、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、雲母(マイカ)、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト(ledikite)、マガダイト、ケニヤアイト(kenyaite)、スチーブンサイト(stevensite)、ヴォルコンスコイトまたはそれらの混合物が含まれる。
【0037】
「疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土(hydrophobically modified layered silicate clay)」または「疎水性粘土(hydrophobic clay)」とは、ヒドロキシルまたはカルボキシルなどの極性置換基が長鎖アルキルに結合していない、長鎖アルキルアンモニウムイオン(例えばモノ−もしくはジ−C12〜C22アルキルアンモニウムイオンなど)の、長鎖アルキル基を含む界面活性剤との交換により改質された粘土であることが好ましい。適切な粘土の例には、Southern Clay Industries社からのCLOISITE(登録商標)20AまたはCLOISITE(登録商標)25Aが含まれる。CLOISITE(登録商標)20A中の長鎖アルキルアンモニウムイオンは式1において示され、またCLOISITE(登録商標)25A中の長鎖アルキルアンモニウムイオンは式2において示される。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
CLOISITE(登録商標)20Aにおける界面活性剤には、2つの疎水性水素化獣脂長鎖が含まれ、ヒドロキシルまたはカルボキシルなどの極性置換基は含まれない。CLOISITE(登録商標)25A中の界面活性剤には、1つの疎水性水素化獣脂長鎖、および炭素原子6個の長さである第2の分子鎖が含まれる。やはり、この改質剤にはヒドロキシルまたはカルボキシル置換基は含まれない。
【0041】
不適切な界面活性剤の例には、CLOISITE(登録商標)Na+およびCLOISITE(登録商標)30Bが含まれ、CLOISITE(登録商標)30Bは式3において示される。
【0042】
【化3】
【0043】
CLOISITE(登録商標)30Bは、極性ヒドロキシル基を有するので不適切である。CLOISITE(登録商標)Na+は、長鎖アルキル有機改質剤を何ら含まないので不適切である。
【0044】
適切なホスホニウムイオンまたは適切な非イオン性界面活性剤などの他の改質剤も使用することができる。
【0045】
疎水性粘土は予備形成でき、または、未改質粘土および改質剤からナノコンポジットまたはナノコンポジットマスターバッチを製造する間に、その場で(in situ)形成できる。
【0046】
デンプンは、トウモロコシ(メイズ)デンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、キャッサバデンプン、アロールート(くずうこん)デンプンまたはサゴデンプンなどの天然もしくは誘導体化デンプンとすることができる。デンプンは、アミロペクチン、アミロースおよび他の少量成分からなる。低アミロースデンプンも使用できるが、高アミロースデンプンが好ましい。誘導体化デンプンには、アセチル化デンプンもしくはデンプンコハク酸エステル、またはカルボキシメチル化デンプンなどのエステル、およびヒドロキシアルキル化デンプン、好ましくはヒドロキシプロピル化デンプンなどのエーテルが含まれる。誘導体化デンプンは、エポキシド、環状ラクトン、環状カーボネート、環状および非環状無水物とのデンプンの反応生成物として形成することができる。50%を超えるアミロースレベルを有するヒドロキシプロピル化デンプン、例えばGELOSE(登録商標)A939(Penford社)またはECOFILM(登録商標)(National Starch & Chemical Company社)などの高アミロースヒドロキシプロピル化デンプンまたは同等のデンプンが好ましい。製品およびその加工性について要求される性状に基づいて最も適正なデンプンが選択されるべきである。デンプンは、5重量%〜99重量%の量で存在することが好ましい。
【0047】
デンプンのおかげで存在する水分が可塑剤として作用できるが、必要な場合、任意の他の適切な疎水性もしくは親水性可塑剤も工程中に導入できる。適切な可塑剤には、ポリオールが含まれ、1種または複数のポリ(ビニルアルコール)(ELVANOL(登録商標)など)、ソルビトール、マルチトール、グリセロール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールとすることができる。
【0048】
適切な加工助剤には、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸およびラウリン酸などの、C12〜C22脂肪酸およびそれらの塩が含まれる。
【0049】
ナノコンポジット材料形成の方法は、乾燥粉末として、水もしくは可塑剤で湿らせた粉末として、水性スラリーとして、またはデンプンをベース(基材)とするマスターバッチとして疎水性粘土を直接添加することにより実行することができる。ナノコンポジット材料形成の方法は、マスターバッチ方法として実行されることが好ましい。第一に、デンプン、疎水性粘土、1種もしくは複数の可塑剤、および任意に1種もしくは複数の加工助剤または他の成分を混合する工程により、粘土を5重量%〜70重量%を含有するデンプン−粘土マスターバッチが調製される。
【0050】
このマスターバッチをストランドとして集め、第二の工程で使用するために乾燥およびペレット化(造粒)できる。マスターバッチを長期間貯蔵しようとする場合、好ましくは5重量%から15重量%の間の低い水分含量を有することが好ましい。マスターバッチは、水を添加することにより再水和させ、好ましくは15重量%から30重量%の間にあり、より好ましくは20重量%から30重量%の間にある水分含量を有するように釣り合わせる。
【0051】
その後、このマスターバッチをさらなるデンプンおよび任意に可塑剤および加工助剤と混合する工程により、粘土0.1重量%〜5重量%を含有するナノコンポジット材料が調製される。
【0052】
この材料は、押出し成形することができる。押出し成形の好ましい条件は120℃からと140℃の間の最高温度、ならびに1気圧から4気圧の間の圧力である。
【0053】
この方法には、改質されたデンプン、粘土、または粘土マスターバッチ、および任意の他の乾燥成分を予備混合して、混合物を製造する工程が含まれる。この工程は、任意の従来のミキサーで実行することができる。この混合物を、スクリュー押出し機中に導入し、スクリューのせん断作用と、バレルへの外部加熱の適用とにより高温にさらすことができる。温度は、約120℃〜約180℃の範囲まで上げることができる。材料は、共回転もしくは逆回転2軸押出し機または選択された設計の1軸押出し機を使用して、押出し配合(混合)によって最も良好に製造される。少なくとも約5もしくは約10バール(1バール=100kPa)の押出し成形圧力、また少なくとも約80rpmもしくは約100rpmのスクリュー速度による、2軸スクリュー共回転配合(混合)である。
【0054】
最初のバレル区分における液体噴射などによって、デンプンを「ゼラチン(ゲル)化し(gelatinising)」(脱構造化(デストラクチャリング;destructurising)、クッキング(cooking)、またはメルティングとも呼ばれる)、ポリマー質ゲル構造とするため、押出し成形の開始と実質的に同時に、水分を導入することができる。デンプンは、水分と、高温と、スクリューによりもたらされるせん断力との組み合わせ作用によって、クッキングされた。水分はまた、ポリ(ビニルアルコール)などの、添加されたいずれの他の水溶性ポリマーをも溶解し、また最終製品における可塑剤として作用し、それにより材料を軟化させ、モジュラスおよび脆性を低下させる役割を果たすこともできる。次いで、溶融物および/または脱構造化(デストラクチャリング)されたデンプンのナノコンポジット配合物は、ダイに向かって推進され、前方に移動する間に、通気する必要なしで発泡を防止するため温度を下げることができる。別法として、工程の間に配合物に発泡剤を添加できる。水分は、全混合物または他の混合物の約10重量%〜50重量%、好ましくは約20重量%〜40重量%、より好ましくは約22重量%〜40重量%、またはより一層好ましくは約25重量%〜35重量%の計算濃度まで添加できる。デンプンのクッキングの間およびそれに続いて、押出し機は、ナノコンポジット組成物を混合および均質化する役割を果たす。押出し機内の典型的な滞留時間は、温度プロファイルおよびスクリュー速度に応じて1分から2.5分の間である。
【0055】
理論に固執するわけではないが、粘土が疎水性となるように改質することによって、粘土粒子をより容易にバラバラにすることが可能になると推測される。このことが、得られたナノコンポジット材料で観察される高レベルの剥離化をもたらしている可能性がある。
【実施例】
【0056】
材料
CLOISITE(登録商標)20A、Southern Clay Industries社からのジメチルジ(水素化獣脂)四級アンモニウムクロリドにより改質した天然モンモリロナイト;
CLOISITE(登録商標)25A、Southern Clay Industries社からのジメチル2−エチルヘキシル(水素化獣脂)アンモニウムメチルサルフェートにより改質した天然モンモリロナイト;
CLOISITE(登録商標)93A、Southern Clay Industries社からのメチルジ(水素化獣脂)アンモニウムバイサルフェートにより改質した天然モンモリロナイト;
GELOSE(登録商標)A939、高アミロースのトウモロコシデンプン、プロピレンオキシドとの反応により改質されたGELOSE(登録商標)80(アミロース含量:約80%引用値)であり、6.5重量%のヒドロキシプロピル置換体を生成したもの(GELOSE(登録商標)A939は、Penford社、オーストラリアから入手した);
ECOFILM(登録商標)、高アミロースのトウモロコシデンプン、プロピレンオキシドとの反応により改質されたHYLON(登録商標)VII(アミロース含量:約70%引用値)であり、6.5重量%のヒドロキシプロピル残基を生じた(ECOFILM(登録商標)は、National Starch and Chemical Company社から入手した);
ポリ(ビニルアルコール)、デュポン社からのELVANOL(登録商標);
ステアリン酸、Palm−Oleo BHD社からのPALMERA(登録商標)。
【0057】
設備(装置)
粘土−デンプンマスターバッチ調製のために、温度制御されたバレル帯域10か所、非加熱帯域3か所、および冷却された供給ブロックを含む2軸押出し機を使用した。材料は、重量フィーダーを経由して押出し機中に供給した。押出し機は、共回転(かみ合せ自己ワイピング)方式で運転した。溶融物温度は、バレルに沿った3つの位置およびダイの中で監視した。1つの適切な押出し機の概略図を図1に示す。
【0058】
デンプンおよび粘土は、C1におけるホッパーを通ってバレル内に供給した。水は、C4における液体ポンプ(L)を通ってバレル内に噴射された。C5〜C9の温度域はクッキング域であり、これらの帯域内で完全なゼラチン化を完了すべきである。ダイまたはシートダイは、C11以後にある。10か所の加熱域およびダイの温度プロファイルを、次のように制御した:
【0059】
【表1】
【0060】
以下の表において挙げた割合は、重量百分率である。それらは乾燥重量ではない。それらは、材料中に含有される水分を含む。GELOSE(登録商標)A939の典型的な水分含量は11重量%(重量/重量%)である。
【0061】
粘土−デンプンマスターバッチの加工は、実験室規模の共回転2軸押出し機で行った。全体的なスクリュー構造は:直径27mm、L/D比48、および最大回転速度1200rpmであった。材料は、重量フィーダーを経由して押出し機中に供給した。押出し機内において、材料は搬送、給水、ブレンド、圧縮、混合、搬送、混合、圧縮、混合、搬送、および圧縮の段階を経た。溶融物温度は、バレルに沿った3つの位置およびダイの中で監視した。温度プロファイルを、次のように制御した:
【0062】
【表2】
【0063】
接触加熱型熱成形機を使用して、配合物の範囲から製造されたシートからトレイを熱成形した。重要な熱成形条件は次の通りであった:加熱時間1秒、加熱通気時間0.5秒、成形時間1秒、成形通気時間0.4秒、熱成形温度125℃、および金型加熱温度21℃。
【0064】
下記の実施例は、本発明によるマスターバッチの製造方法、および前記マスターバッチを使用して形成されたナノコンポジットの製造方法を明示する。
【0065】
実施例1および2
表3として一覧にしたこれらの実施例は、粘土−デンプンマスターバッチの調製を実証する。
【0066】
下記の手順が典型的なものである:
10%粘土マスターバッチ(CLOISITE(登録商標)25A)の調製
GELOSE(登録商標)A939(16.2kg)、PVOH(1.62kg)、ステアリン酸(180g)およびCLOISITE(登録商標)25A(2kg)をタンブルミキサー内で2時間混合した。混合した粉末は、3.5kg/時の速度でオーガーを通って重量フィーダーを経由し押出し機の主供給ホッパーに供給された。温度プロファイルは、表1に示した通りに設定された。水は、26g/分の流速で液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物ストランドを集め、1晩空気乾燥し、ペレット化した。
【0067】
【表3】
【0068】
実施例3〜5
表4として一覧にしたこれらの実施例は、10%粘土マスターバッチからのデンプンナノコンポジットシート(2%CLOISITE(登録商標)25A)の調製を実証する。
下記の手順が典型的なものである:
GELOSE(登録商標)A939(9kg)、PVOH(0.9kg)、ステアリン酸(0.1kg)を含むデンプン混合物を調製し、タンブルミキサー内で2時間混合した。乾燥マスターバッチペレット(上記実施例1より)をタンブルミキサー内で1晩水和させて(水は、2mL/分の流速でミキサー内に添加した。)、およそ26%の最終水分含量に到達させた。温度プロファイルは、第2の押出し成形について表1に示した通りに設定された。スクリュー速度は162rpmであった。デンプン混合物は、2.8kg/時の速度で主ホッパーに、重量フィーダーを経由し供給された。水和したマスターバッチペレットは、700g/時の速度で主ホッパーに、第2の重量フィーダーを経由し供給された。水は、26g/分の流速で噴射された。押出し物シートを集め、2時間空気乾燥し、圧延し、プラスチック袋内で貯蔵した。
【0069】
【表4】
【0070】
疎水性粘土で調製したこれらの実施例は、CLOISITE(登録商標)を含まない対照と比較し、並外れた透明度および実質的により高い溶融物強度を有していた。この特性改良は、より疎水性のCLOISITE(登録商標)25Aで調製したコンポジットにおいて最も顕著であった。
【0071】
実施例6〜8
表5として一覧にしたこれらの実施例は、粘土−デンプンマスターバッチの調製を実証する。
【0072】
デンプンコンポジット調製の手順(CLOISITE(登録商標)20A)
10%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチの調製
下記の手順が典型的なものである:
GELOSE(登録商標)A939(16.2kg)、PVOH(1.62kg)、ステアリン酸(180g)をミキサー内で2時間混合した。混合した粉末は、3.15kg/時の速度でホッパーを通って重量フィーダーを経由しバレル内に供給された。CLOISITE(登録商標)20Aは、350g/時の流速でホッパーを通ってバレル内に供給された。温度プロファイルは、マスターバッチについて表1に示した通りに設定された。水は、26g/分の流速で液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物ストリング(strings)を集め、1晩空気乾燥し、ペレット化した。
【0073】
ソルビトール、エリスリトールおよびキシリトールなどの可塑剤を粉末に添加することができ、その後粉末をバレル内に供給した。
【0074】
【表5】
【0075】
実施例9〜15
表6における実施例は、5%粘土マスターバッチからのデンプンコンポジットシートの調製を実証する。
【0076】
乾燥マスターバッチペレットをミキサー内で1晩水和させて、およそ26%の最終水分含量に到達させた。水は、2ml/分の流速でミキサー内に添加した。混合した粉末は、2.8kg/時の速度でホッパーを通って、重量フィーダーを経由しバレル内に供給された。水和したマスターバッチペレットは、700g/時の速度で、フィーダーを経由しバレル内に供給された。温度プロファイルは、第2の押出し成形について表1に示した通りに設定した。水は、27g/分の流速で、液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物シートを集め、2時間空気乾燥し、圧延してコイルとし、貯蔵した。
【0077】
【表6】
【0078】
粘土により調製したこれらの実施例は、CLOISITE(登録商標)を含まない対照に対して、並外れた透明度および実質的により高い溶融物強度を有していた。この特性改良は、より疎水性の粘土であるCLOISITE(登録商標)20AおよびCLOISITE(登録商標)25Aで調製した試料について最も顕著であった。
【0079】
実施例16〜17
この実施例は、50%粘土−デンプンマスターバッチの調製を実証し、表7として一覧にしている。
【0080】
下記の手順が典型的なものである:
デンプンコンポジット調製の手順(CLOISITE(登録商標)25A)
GELOSE(登録商標)A939(9.0kg)、PVOH(0.9kg)、ステアリン酸(100g)およびCLOISITE(登録商標)25A(10.0kg)を回転ミキサー内で2時間混合した。混合した粉末は、3.5kg/時の速度で重量フィーダーを経由しバレル内に供給された。温度プロファイルは、マスターバッチについて表1に示した通りに設定した。水は、25g/分の流速で液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物ストランドを集め、1晩空気乾燥し、ペレット化した。
【0081】
【表7】
【0082】
実施例18〜29:CLOISITE(登録商標)Na+およびCLOISITE(登録商標)20Aの比較における透明度
【0083】
【表8】
【0084】
配合物R1は、ナノ粘土を含まないコンポジットであり、これらの実施例において比較の目的のため使用される。
【0085】
「発明を実施するための形態」において考察したように、CLOISITE(登録商標)20Aは、CLOISITE(登録商標)Na+よりも著しく疎水性である。
【0086】
実施例18〜29は、疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土CLOISITE(登録商標)20Aを含む配合物が、より親水性の粘土CLOISITE(登録商標)Na+を含む配合物または粘土を含有しない配合物のいずれよりも著しく透明であることを実証する。
【0087】
1008nm・分−1で800〜200nmの波長範囲にわたって紫外線・可視スペクトルを得た。透過率を記録し、式:A=−log(T)により吸光度に関係付けた。透明度は、350〜800nmの透過光に基づいて計算し、100%透過光で除した。光吸収係数(OAC;optical absorbance coefficient)は、試験片の厚さについて正規化することにより決定した。コンポジットとして同一日に(または連続して)製造したR1と、OACを比較した。相対的変化を表9に掲げる。
【0088】
【表9】
【0089】
CLOISITE(登録商標)Na
全てのCLOISITE(登録商標)NaナノコンポジットはOACの上昇を示し、同一日に製造したR1と比較して透明度の低下を示した。R1のOACは543m−1であった。1%のCLOISITE(登録商標)Naを含むと、OACは614m−1となり、すなわちOACが上昇し、したがって透明度の低下をもたらした。
【0090】
最悪の場合、3%CLOISITE(登録商標)Naコンクリートミキサー方法により、OACは42%まで上昇した。3%CLOISITE(登録商標)Naフィーダーおよび5%CLOISITE(登録商標)Naは、同様にかなり大きな値であった。2%CLOISITE(登録商標)Naはコンクリートミキサー調製物と比較してより低いOACを示し、R1よりも5%高かった。
【0091】
CLOISITE(登録商標)20A
同一日に製造したR1と比較した場合、全ての組成物にわたって、OACの低下により示される透明度の著しい改善が観察された。表9に掲げたR1のOACは394m−1であった。CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについて、OAC低下として少なくとも21〜49%の改善が得られている。最も透明なものは1および5%CLOISITE(登録商標)20Aであり、それぞれ260m−1および288m−1のOACを有していた。2〜3%のCLOISITE(登録商標)20Aの添加は、300〜310m−1の同様なOACを示した。3%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについて、コンクリートミキサー方法は、より良好なコンシステンシー(consistency)、および測定された透明度のより低い変動を提供した。これは、押出し機へのより均質な投入に帰することができる。
【0092】
考察
CLOISITE(登録商標)Naの導入は、シート材料で観察される透明度の低下および明らかな黄色をもたらした。逆に、約5%までの量でCLOISITE(登録商標)20Aを含有すると、シートの透明度を上昇させる点で有益であることが判明した。1〜2%CLOISITE(登録商標)20Aにより、改善は最も顕著であった。
【0093】
実施例30〜36:CLOISITE(登録商標)20Aの機械的引張特性
機械的引張実験により、CLOISITE(登録商標)20Aの添加がシート材料の機械的引張特性を改良することを実証する。
【0094】
シートを細片(25mmX200mm)に切断した。それぞれの細片について厚さ測定を4回行った。ASTM D882により機械的引張試験を行った。2kNロードセルにより、伸長速度10mm・分−1を用いた。試験前に、50%および25%相対湿度で48時間、熱可塑性コンポジットを調湿した。平均試験片厚さは250μmであった。コンポジット当り最少n=10の反復試験片について統計的解析を行った。熱可塑性デンプンフィルムの引張試験は、機械方向(機械の流れ方向;machine direction)(MD)、および押出し成形方向に対して横方向(transverse to the direction of extrusion)(TD)の両方について行った。これらの結果を表10に示す。
【0095】
【表10】
【0096】
環境の相対湿度が50%から25%まで低下すると、可塑化水の減少のため、CLOISITE(登録商標)20AシートおよびR1シートの両方についてE−モジュラス(伸長係数)値およびFmax値の有意な上昇が見出され、一方全シートについて破断伸びの値の有意な低下が見出された。
【0097】
CLOISITE(登録商標)20Aの添加は、破断伸びが機械方向および横方向で同様になることから示されるように、より等方性のシートを提供した。例えば、R1について、機械方向の破断伸び値対横方向の破断伸び値の比率は5〜6であったが、一方CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシートについての比率は1〜2の間であった(表10)。
【0098】
CLOISITE(登録商標)20Aの添加は、50%RHから25%RHへの湿度変化についての機械的性能の許容度を幾分向上させた(表10)。機械方向において、R1について50%RH対25%RHの破断伸び値の比率は3であったが、一方コンポジットシートについての比率は1.67〜2.58の間であった。横方向において、R1について50%RH対25%RHの破断伸び値の比率は2.37〜2.52であったが、一方コンポジットシートについての比率は1.58〜2.43の間であった。
【0099】
実施例30〜36:CLOISITE(登録商標)20AのWAXS(広角X線散乱)
WAXS(広角X線散乱)実験は、1%もしくは2%CLOISITE(登録商標)20Aを含む配合物が実質的に剥離化されたものであることを実証する。
【0100】
CLOISITE(登録商標)20Aについての基準WAXSパターンを、図2に示す。図3は、R1についての、また、1%および2%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットについてのWAXSパターンを示す。それらのパターンは、粘土によるピークを全く示さず、剥離化された構造が得られていることを示す。図4は、3%および5%ナノコンポジットについてのパターンを示す。3%CLOISITE(登録商標)20A(コンクリート)ナノコンポジットについて得られたWAXSパターンは、粘土ピークが全く観察されなかったことから、高度の剥離化を示唆している。3%CLOISITE(登録商標)20A(フィーダー)および5%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットは、2θが4.6°において小さなピークを示す。このことは、コンクリートミキサーによる方法では粘土のより大きい剥離化が生じたことを示唆する。
【0101】
実施例30〜36:CLOISITE(登録商標)20Aの熱重量測定
熱重量測定実験は、CLOISITE(登録商標)20Aを有する配合物が、高い熱安定性および低い質量損失速度を有することを実証する。
【0102】
図5は、CLOISITE(登録商標)20Aのサーモグラムを提供する。3つの質量損失段階、すなわち、最初に約38℃、次に315℃における主分解、続いて629℃における幅広い損失が生じた。質量損失は、水分減少およびさらに有機改質剤の分解に帰することができる。
【0103】
図6Aおよび図6Bは、R1およびCLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットの熱重量測定微分質量曲線を示す。表11はシートについての抽出データを掲げる。2つの異なる日に製造したR1は、主として第3の分解段階において、サーモグラムでのいくらかの差異を示した。表11に掲げるように、1%および2%CLOISITE(登録商標)20Aでは全ての段階において質量損失速度が遅くなった。
【0104】
コンポジット3%(コンクリート)では、3%(フィーダー)ナノコンポジットと比較して、全ての分解段階でより高い質量損失速度を示すように思われた。5%ナノコンポジットは、他のナノコンポジットおよびR1に比べてより高い熱安定性および全体的により低い質量損失速度を示した。
【0105】
コンポジット2%CLOISITE(登録商標)20Aは、最適の性質:すなわち、低い質量損失速度(微分曲線におけるより幅広いピーク)、およびR1よりも高い熱安定性を示すように思われた。
【0106】
【表11】
【0107】
実施例37〜43:CLOISITE(登録商標)20Aの加工、熱成形および落下試験
実施例37〜43は、CLOISITE(登録商標)20Aを含むトレイが、より透き通っており、極めてより良好な落下試験性能を有していたことを実証する。
【0108】
マスターバッチペレットを粉砕して、粉末とした。下記のシートを押出し成形した:
実施例37−R1、
実施例38−R1、1%20A、
実施例39−R1、2%20A、
実施例40−R1、3%20A(フィーダー2によりマスターバッチを添加した)、
実施例41−R1、
実施例42−R1、3%20A(コンクリートミキサー内でマスターバッチをデンプンと混合した)、
実施例43−R1、5%20A。
それぞれのシートの配合を表12に要約する。
【0109】
【表12】
【0110】
全てのナノコンポジットシートおよびR1シートは、およそ130℃の温度で押出し成形した。加工条件を表13に要約する。
【0111】
【表13】
【0112】
それぞれの実施例についての出力速度は7〜15kg/時であり、それぞれの実施例についての押出し機速度は450rpmであった。
【0113】
トレイの熱成形
熱成形機を使用して、厚さ約250μm(0.25mm)のシートからトレイを熱成形し、13.5×13.5cmのチョコレート用トレイとした。重要な熱成形条件は次の通りであった:加熱時間1秒、加熱通気時間0.5秒、成形時間1秒、成形通気時間0.4秒、熱成形温度125℃、および金型加熱温度21℃。
【0114】
全てのCLOISITE(登録商標)20Aシートは、対照であるR1と同様な熱成形特性を有していた。CLOISITE(登録商標)20Aシートから作製したトレイは、対照であるR1から作製したシートよりも透き通っていた。
【0115】
落下試験
落下試験のため、チョコレート片の重量合計125gに相当する成形プラスチック片でトレイの空間を満たし、充填したトレイは、二次カートン包装内に包装し、相対湿度条件に応じて0.9mまたは1.5mいずれかの高さから落下させた。50%RH(および23℃)における落下試験は1.5mの高さから行い、一方35%RHでは包装したトレイを0.9mの高さから落下させた。それぞれの試行について合計10枚のトレイを落下させた。その後損傷したトレイを下記の尺度および定義により評価した。ここで、それぞれのトレイは、適用可能な評価区分の最高の数(最悪の性能)に当てはめている。
【0116】
下記の表14において、クラック(き裂)はトレイの端部または内側から走っているものを示し;破片はトレイの端部から失われた断片であり;破片の大きさは、失われた部分の最大寸法であって、いかなる関連するクラックを含まず;穴はトレイの中央に生じたものであり;分離断片は、トレイから75%以上が離脱した大きな破片であった。
【0117】
【表14】
【0118】
【表15】
【0119】
表15に示したように、CLOISITE(登録商標)20Aシートから作製した全てのトレイは、R1よりも極めて良好な落下試験性能を有していた。R1については、75%〜80%のトレイが落下試験に不合格であったが、全ての2%CLOISITE(登録商標)20A、3%CLOISITE(登録商標)20A(コンクリートミキサー)および5%CLOISITE(登録商標)20Aトレイが落下試験に合格した。
【0120】
実施例44〜47:大量生産押出し機(ENTEK(登録商標)103)で行った試行
実施例44〜47は、CLOISITE(登録商標)20Aを含むトレイが、より透き通っており、極めてより良好な落下試験性能を有することを実証する。
【0121】
マスターバッチペレットを粉砕して、粉末とした。下記のシートを押出し成形した:
実施例44−R1、
実施例45−R1、2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例46−R1、2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例47−R1、2%CLOISITE(登録商標)20A。
【0122】
それぞれの実施例についての出力速度は210kg/時であり、それぞれの実施例についての押出し機スクリュー速度は225rpmであった。
【0123】
【表16】
【0124】
【表17】
【0125】
【表18】
【0126】
対照(実施例44)におけるヘイズ(曇り)結果は、シート内に複数のマルタ十字形物(Maltese Crosses)が存在するため通常のものよりも高かった。
【0127】
実施例48〜52:パイロット規模押出し機(ENTEK(登録商標)27)で行った試行
実施例48〜52は、CLOISITE(登録商標)20Aを含むトレイが、より透き通っており、極めてより良好な落下試験性能を有することを実証する。
【0128】
マスターバッチペレットを粉砕して、粉末とした。下記のシートを押出し成形した:
実施例48−R1、
実施例49−R1、純粋なCLOISITE(登録商標)20A(マスターバッチとしなかったもの)として添加した2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例50−R1、50%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチとして添加した2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例51−R1、
実施例52−R1、25%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチとして添加した2%CLOISITE(登録商標)20A。
【0129】
それぞれの実施例についての出力速度は16kg/時であり、それぞれの実施例についての押出し機スクリュー速度は395rpmであった。
【0130】
【表19】
【0131】
【表20】
【0132】
【表21】
【0133】
実施例53〜55:TEM(透過型電子顕微鏡)解析
実施例53〜55においてTEM(透過型電子顕微鏡)解析を用いて、CLOISITE(登録商標)20AまたはCLOISITE(登録商標)25Aを使用する場合、実質的剥離化が達成されることを実証した。また剥離度を親水性CLOISITE(登録商標)Naと比較する。それぞれの場合、CLOISITE(登録商標)2%の濃度を用い、実施例44〜47において概説した手順に従って試験片を調製した。
【0134】
図7および10はCLOISITE(登録商標)20Aに関し、図8および11はCLOISITE(登録商標)25Aに関し、また図9および12はCLOISITE(登録商標)Naに関する。図7、8および9において、倍率は50K(5万倍)であり、投影面積は2.58μm2である。図10、11および12において、倍率は115K(115000倍)であり、投影面積は0.48μm2である。
【0135】
表22に示されるように、図7、8および9におけるTEM画像を解析した。
【0136】
【表22】
【0137】
実施例56〜60:WAXSによる2%CLOISITE(登録商標)20A直接ナノコンポジットシートの解析
実施例56〜60は、2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシート粉末のWAXS解析を行ったものであり、これらのシートは50%マスターバッチについて、または粘土の直接添加により調製した。
【0138】
図13は、50%マスターバッチから調製した2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシート粉末、CLOISITE(登録商標)20Aの直接添加により調製した2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシート粉末のWAXSパターンを示す。2000単位ずつ下げて、それぞれの曲線に適応させた目盛りを引いている。表23は、関連するd−間隔(格子面間隔)値を示す。2%CLOISITE(登録商標)20Aの直接添加によって作製した全てのシートは、残留タクトイド内における粘土小板間でのデンプンのインターカレーションのため、粘土小板の膨張を示した。50%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチペレットから作製したシートは、粘土小板の最大の膨張を示した(d−間隔は23.2Åから40.5Åまで増加した。)。直接添加によって作製した2%の20ACLOISITE(登録商標)シートは、より小さい膨張を示す。50%マスターバッチからの2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについて観察されたより大きい膨張についての可能な説明は、この材料が2回押出し成形されている点とすることができる。マスターバッチ成形で1回、およびナノコンポジットシートの成形で再度である。ナノコンポジットシートからは、より高い相対的結晶化度値(デンプン領域から)は観察されなかった。しかしながら、全てのナノコンポジットシートはV−型およびE−型結晶構造の生成を示している。
【0139】
【表23】
【0140】
実施例61:R1中の10%CLOISITE(登録商標)25A
R1中の10%CLOISITE(登録商標)25Aマスターバッチに基づくナノコンポジットシートの調製手順を、以下に例示する:
工程1.CLOISITE(登録商標)25Aが1.5重量%の最終希釈組成物を作製するため、既知の少量(およそ6g)のCLOISITE(登録商標)25Aマスターバッチから試料採取し、160℃で10分間、その水分含量を測定した。
【0141】
工程2.CLOISITE(登録商標)25Aマスターバッチの水分含量に応じて、既知の重量の水を添加して、既知の重量のマスターバッチをおよそ20重量%の値まで水和させるため、既知の重量の水を添加し、タンブラーミキサー内に60分間浸漬した。
【0142】
工程3.タンブラーミキサーに、既知量のA939(粉末、概略水分:10.5%)、PVOHおよびステアリン酸を添加して、最終バッチ重量15kgとし、30分間混合した。
【0143】
工程4.CLOISITE(登録商標)25Aナノコンポジット材料を加工するのに使用する温度プロファイルを、CLOISITE(登録商標)20Aについての温度プロファイルと同様とした。
【0144】
工程5.およそ220〜250μmの厚さを有するシート材料を作製した。これらのシートを使用して、熱成形トレイを作製した(およそ130℃)。
【0145】
結論
これらの実施例に従って調製したナノコンポジット材料は高剥離度を呈し、改良された機械的およびレオロジー特性、ならびに低減された水分への感受性を有していた。それらの材料は改良された透明性を有し、2カ月を超える間、透明のままであった。
【0146】
CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットは、透明度に関して7%までの改善を有してCLOISITE(登録商標)Naと比較してより良好な総合的特性をもたらす。より良好な等方性形態を示した粘土のより良好な分散性および剥離度のため、機械および横方向における機械的性質がより良好な許容度を有しており、そのことは熱成形過程において有益となるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してナノコンポジット材料に関する。より具体的には、本発明は、デンプン、および実質的に剥離化された疎水性粘土(クレイ)を含むナノコンポジット材料に関する。本発明はまた、このようなナノコンポジット材料の調製方法にも関する。
【0002】
特定の一態様において、本発明は、包装材料として使用するのに適したナノコンポジット材料に関し、本明細書において以後、その用途に関して本発明を記述するのが好都合であろう。しかしながら、本発明はその用途のみに限定されずに、他の用途に適用できることを理解されたい。
【背景技術】
【0003】
下記の考察は、本発明の理解を促進する意図のものである。しかしながら、この考察において言及されるいずれの事柄も、本出願の優先権主張日において公表され、知られ、当業者の知識の一部となっていたものであると認識し、または認めるものではないことを理解されたい。
【0004】
熱可塑性材料は、通常、炭化水素原料から調製される。それらの製造および分解に関連した環境問題のために、代替材料が開発されている。
【0005】
一選択肢は、熱可塑性材料を製造するのにデンプンなどの天然ポリマーを使用することである。天然ポリマーは、再生可能な供給源に由来し、元来生分解性である。
【0006】
未改質の低アミロースデンプンと、未改質もしくは親水性の粘土とから製造したナノコンポジットが開示されている。
【0007】
米国特許第6,811,599号明細書(特許文献1)は、天然ポリマーと、可塑剤と、層構造を有する剥離された粘土とを含む生分解性の熱可塑性材料を開示する。その記述は、天然ポリマーと適合させるため粘土の有機改質剤を選択する必要性に言及する。このことは、親水性粘土が望ましいことを示唆している。この材料についての問題点は、部分的な剥離化しか得られなかったことである。
【0008】
Macromolecular Materials and Engineering 2002,287,(8),553〜558における「Preparation and properties of biodegradable thermoplastic starch/clay hybrids(生分解性熱可塑性デンプン/粘土混合物の調製と特性)」と題するH Parkらによる論文(非特許文献1)は、ナトリウムモンモリロナイト未改質粘土(CLOISITE(登録商標)Na+)および有機改質粘土(CLOISITE(登録商標)6A、10Aおよび30B)の両者を主成分とするデンプン系ナノコンポジットを開示する。最も望ましい機械的性質は、未改質粘土によって得られ、粘土構造の剥離化もしくは膨張はほとんど観察されなかった。
【0009】
Carbohydrate Polymers 2005,61,(4),455〜463における「Thermoplastic starch−clay nanocomposites and their characteristics(熱可塑性デンプン−粘土ナノコンポジット及びその特性)」と題するB Q ChenおよびJ R G Evansによる論文(非特許文献2)は、グリセロール−可塑化熱可塑性デンプンを主成分とするナノコンポジットを開示する。使用した粘土は、ナトリウムモンモリロナイト、ナトリウムヘクトライト、ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウムクロリドで改質したナトリウムヘクトライトおよびカオリナイトであった。試料は、2段ロールミルを使用し溶融処理することにより調製した。共に親水性である未改質モンモリロナイトおよびヘクトライト粘土だけが部分的に剥離化を示すと報告された。
【0010】
Composite Interfaces 2006,13,(1),1〜17における「Thermoplastic starch/layered silicate composites:structure,interaction,properties(熱可塑性デンプン/層状ケイ酸塩コンポジット:構造、相互作用、特性)」と題するK Bagdiらによる論文(非特許文献3)は、グリセロール−可塑化コムギデンプンを主成分とする粘土(ナノ)コンポジットの調製を開示する。使用した粘土はナトリウムモンモリロナイト、およびアミノヨードデカン酸で改質した粘土(NANOFIL(登録商標)784)、ステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドで改質した粘土(NANOFIL(登録商標)804)、またはジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで改質した粘土(NANOFIL(登録商標)948)であった。粘土は膨張せず、もしくは限定的な膨張のみ観察された。
【0011】
Carbohydrate Polymers 2005,59,(4),467〜475における「Rheology of starch−clay nanocomposites(デンプン−粘土ナノコンポジットのレオロジー)」と題するB Chiouらによる論文(非特許文献4)は、熱可塑性デンプン−粘土ナノコンポジットのレオロジーを考察する(使用した粘土はCLOISITE(登録商標)Na+、CLOISITE(登録商標)30B、10Aおよび15Aであった。)。コムギデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよびワックス様トウモロコシデンプンを含む種々のデンプンが調査された。
【0012】
国際出願公開公報WO2005/068364(特許文献2)は、ナノ粘土向け挿入物(インターカレーション物;intercalant)としてのデンプンおよび改質デンプンを特許請求の範囲に記載している。この方法は、水に優しい粘土の特性を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,811,599号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/068364号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H Parkら、「Preparation and properties of biodegradable thermoplastic starch/clay hybrids」、Macromolecular Materials and Engineering 2002,287,(8),553〜558
【非特許文献2】B Q ChenおよびJ R G Evans、「Thermoplastic starch−clay nanocomposites and their characteristics」、Carbohydrate Polymers 2005,61,(4),455〜463
【非特許文献3】K Bagdiら、「Thermoplastic starch/layered silicate composites:structure,interaction,properties」、Composite Interfaces 2006,13,(1),1〜17
【非特許文献4】B Chiouら、「Rheology of starch−clay nanocomposites」、Carbohydrate Polymers 2005,59,(4),467〜475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
デンプン、および高剥離度を有する粘土を主成分とするナノコンポジット材料であって、例えば高度の透明性、改良された機械的およびレオロジー特性、ならびに/または低減された水分(湿気)への感受性を含む、改良された性質を有するナノコンポジット材料が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ナノコンポジット材料の調製における疎水性粘土の使用が、得られた材料の性質、すなわち、透明性、柔軟性、引張強度、耐衝撃性および/または引張特性を含む性質において、驚くべきレベルの改良をもたらすことが見出された。
【0017】
したがって一態様において、本発明は、デンプン、および疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む、実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を提供する。
【0018】
疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土(本明細書において以後「疎水性粘土」という)は、0.1重量%〜5重量%、より好ましくは0.1重量%〜3重量%、また最も好ましくは0.5重量%〜2重量%の量で存在することが好ましい。
【0019】
このような長鎖アルキルアンモニウムイオンを含む好ましい粘土には、CLOISITE(登録商標)20AおよびCLOISITE(登録商標)25Aが含まれる。
【0020】
好ましくは、このナノコンポジット材料には、1種もしくは複数の可塑剤、および/またはポリビニルアルコールなどの、しかしそれらに限定されない1種もしくは複数の水溶性ポリマー、および/または1種もしくは複数の加工助剤が含まれる。
【0021】
デンプンは、他の適切な、ポリビニルアルコールを含むポリマーならびにポリラクチドおよびポリカプロラクトンなどのポリエステルとブレンドできる。使用されるブレンドは、要求される機能的および機械的特性によって、改質することができる。
【0022】
このナノコンポジット材料は、5重量%と30重量%の間の、より好ましくは5重量%〜15重量%の、また最も好ましくは8重量%〜12重量%の水分含量を有することが好ましい。
【0023】
このナノコンポジット材料は、例えば、硬質の熱可塑性包装用トレイ、びん、軟質フィルムおよびバリヤフィルムなどの射出成形製品、ならびに生体適合材料として使用できる。したがって他の態様において、本発明は、上述の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を含む材料から作製される包装を提供する。
【0024】
このナノコンポジット材料は、改良された機械的およびレオロジー特性、ならびに水分取り込みおよび/または損失の速度が低いという点で低減された水分への感受性を有する。このナノコンポジット材料は、より高い溶融物強度を有し、このため発泡成形またはフィルムブロー成形などの加工におけるその使用を促進し、また改良された経時特性ならびに低減された気体および水透過性を有する。
【0025】
このナノコンポジット材料の改良された性状により、可塑剤および/または加工助剤への必要性が低くなる。特に、本発明のナノコンポジット材料が、以前に開示された他の材料よりも可塑性であるので、添加される可塑剤の量を節減できる。
【0026】
このナノコンポジット材料は改良された透明性を有し、それが剥離化のしるしである。この材料は調製過程の間に透明になり、その透明度のレベルは調製後、所望の水分含量まで乾燥すると上昇し続ける。この材料は、老化(あるいは劣化;retrogradation)の速度が遅いので長期間にわたって透明のままである。
【0027】
他の態様において、本発明は、上述の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、水性ゲルの形態にあるデンプンを溶融混合装置内で疎水性粘土と混合する工程を含む方法を提供する。適切な溶融混合装置には押出し成形機が含まれる。好ましくは、粘土は粉末の形態である。
【0028】
さらなる態様において、本発明は実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、デンプンを疎水性粘土と混合してマスターバッチを形成する工程(本明細書において以後「マスターバッチ方法」という)と、このマスターバッチをさらなるデンプンと混合する工程とを含む方法を提供する。マスターバッチはストランドとして集め、さらなる加工において使用するため、乾燥およびペレット化(造粒)できる。マスターバッチは、第2のおよびその後の工程において、さらなるデンプンと混合することが好ましい。第2の工程は、第1の工程に続いて直ちに、または期間をおいた後で実行することができる。第1工程と第2工程の間の時間的期間は3カ月未満、またより好ましくは2カ月未満とすることが好ましい。
【0029】
マスターバッチ方法は、マスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程の前に、マスターバッチを再水和させる工程を含むことが好ましい。
【0030】
マスターバッチ方法は、マスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程の前に、得られたマスターバッチを粉砕および/または摩砕して粉末とする工程を含むことが好ましい。
【0031】
より一般的には、本発明は、ナノコンポジット材料の調製方法であって、デンプンを粘土と混合してマスターバッチを形成する工程と、このマスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程とを含む方法を提供する。好ましくは、粘土は、5重量%から70重量%の間の量でマスターバッチ中に存在する。
【0032】
工程内にマスターバッチを含むことは、多くの利点を有する。マスターバッチ濃縮物は、取扱いおよび貯蔵するのが容易であり、また原料粘土または粘土スラリーよりも容易に押出し機中に供給できる。マスターバッチの使用はまた、その後の工程において操作者をナノ粘土の粉じんに曝露する可能性をも小さくする。マスターバッチは3カ月を超えて、また、もしかすると無期限に、水分含量15重量%未満の比較的乾燥した状態で貯蔵することができ、使用前に再水和させることができる。最も注目に値するのは、ワンステップ調製と比較した場合、マスターバッチ方法が剥離化の改善につながることである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法において使用できる1つの適切な押出し成形機の概略図である。
【図2】実施例30〜36によるCLOISITE(登録商標)20Aの基準となる広角X線散乱(WAXS)グラフである。
【図3】実施例30〜36によるR1についての、また、1%および2%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットのWAXSパターンのグラフである。
【図4】実施例30〜36による3%および5%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットについてのWAXSパターンのグラフである。
【図5】実施例30〜36によるCLOISITE(登録商標)20Aのサーモグラムである。
【図6A】実施例30〜36による、R1およびCLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについての熱重量測定微分質量曲線のグラフである。
【図6B】実施例30〜36による、R1およびCLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについての熱重量測定微分質量曲線のグラフである。
【図7】倍率50K(5万倍)における実施例53による2%CLOISITE(登録商標)20Aの透過型電子顕微鏡(TEM)による顕微鏡写真である。
【図8】倍率50K(5万倍)における実施例54による2%CLOISITE(登録商標)25AのTEM顕微鏡写真である。
【図9】倍率50K(5万倍)における実施例55による2%CLOISITE(登録商標)Na+のTEM顕微鏡写真である。
【図10】倍率115K(115000倍)における実施例53による2%CLOISITE(登録商標)20AのTEM顕微鏡写真である。
【図11】倍率115K(115000倍)における実施例54による2%CLOISITE(登録商標)25AのTEM顕微鏡写真である。
【図12】倍率115K(115000倍)における実施例55による2%CLOISITE(登録商標)Na+のTEM顕微鏡写真である。
【図13】実施例56〜60による2%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットについてのWAXSパターンのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
その最も単純な形態において、本発明の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料は、デンプンおよび疎水性粘土のみからなる。当技術分野の配合者により理解されるように、本発明のナノコンポジット材料を調製する間に、可塑剤および加工助剤を含む、多くの追加的化合物を添加することができる。
【0035】
本明細書において使用される場合、「実質的に剥離化された(substantially exfoliated)」ナノコンポジット材料とは、大部分の粘土凝塊物(アグロメレート)がタクトイド(紡錘体;tactoids)および個々の粘土層にまでバラバラに分離されている材料を意味する。前記タクトイドは、可視光の波長未満の大きさを有し、このため材料が透明に見え、視覚的に識別できる粘土粒子をほとんど有しないようなものであることが好ましい。前記タクトイドは、2〜10層の間の粘土層を含み、100nmと300nmの間の横方向の大きさを有することがより好ましい。
【0036】
本明細書において使用される場合、「粘土(clay)」とは、剥離化されて、ナノ粒子となることが可能な合成もしくは天然の層状ケイ酸塩である。好ましい粘土には、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、雲母(マイカ)、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト(ledikite)、マガダイト、ケニヤアイト(kenyaite)、スチーブンサイト(stevensite)、ヴォルコンスコイトまたはそれらの混合物が含まれる。
【0037】
「疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土(hydrophobically modified layered silicate clay)」または「疎水性粘土(hydrophobic clay)」とは、ヒドロキシルまたはカルボキシルなどの極性置換基が長鎖アルキルに結合していない、長鎖アルキルアンモニウムイオン(例えばモノ−もしくはジ−C12〜C22アルキルアンモニウムイオンなど)の、長鎖アルキル基を含む界面活性剤との交換により改質された粘土であることが好ましい。適切な粘土の例には、Southern Clay Industries社からのCLOISITE(登録商標)20AまたはCLOISITE(登録商標)25Aが含まれる。CLOISITE(登録商標)20A中の長鎖アルキルアンモニウムイオンは式1において示され、またCLOISITE(登録商標)25A中の長鎖アルキルアンモニウムイオンは式2において示される。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
CLOISITE(登録商標)20Aにおける界面活性剤には、2つの疎水性水素化獣脂長鎖が含まれ、ヒドロキシルまたはカルボキシルなどの極性置換基は含まれない。CLOISITE(登録商標)25A中の界面活性剤には、1つの疎水性水素化獣脂長鎖、および炭素原子6個の長さである第2の分子鎖が含まれる。やはり、この改質剤にはヒドロキシルまたはカルボキシル置換基は含まれない。
【0041】
不適切な界面活性剤の例には、CLOISITE(登録商標)Na+およびCLOISITE(登録商標)30Bが含まれ、CLOISITE(登録商標)30Bは式3において示される。
【0042】
【化3】
【0043】
CLOISITE(登録商標)30Bは、極性ヒドロキシル基を有するので不適切である。CLOISITE(登録商標)Na+は、長鎖アルキル有機改質剤を何ら含まないので不適切である。
【0044】
適切なホスホニウムイオンまたは適切な非イオン性界面活性剤などの他の改質剤も使用することができる。
【0045】
疎水性粘土は予備形成でき、または、未改質粘土および改質剤からナノコンポジットまたはナノコンポジットマスターバッチを製造する間に、その場で(in situ)形成できる。
【0046】
デンプンは、トウモロコシ(メイズ)デンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、キャッサバデンプン、アロールート(くずうこん)デンプンまたはサゴデンプンなどの天然もしくは誘導体化デンプンとすることができる。デンプンは、アミロペクチン、アミロースおよび他の少量成分からなる。低アミロースデンプンも使用できるが、高アミロースデンプンが好ましい。誘導体化デンプンには、アセチル化デンプンもしくはデンプンコハク酸エステル、またはカルボキシメチル化デンプンなどのエステル、およびヒドロキシアルキル化デンプン、好ましくはヒドロキシプロピル化デンプンなどのエーテルが含まれる。誘導体化デンプンは、エポキシド、環状ラクトン、環状カーボネート、環状および非環状無水物とのデンプンの反応生成物として形成することができる。50%を超えるアミロースレベルを有するヒドロキシプロピル化デンプン、例えばGELOSE(登録商標)A939(Penford社)またはECOFILM(登録商標)(National Starch & Chemical Company社)などの高アミロースヒドロキシプロピル化デンプンまたは同等のデンプンが好ましい。製品およびその加工性について要求される性状に基づいて最も適正なデンプンが選択されるべきである。デンプンは、5重量%〜99重量%の量で存在することが好ましい。
【0047】
デンプンのおかげで存在する水分が可塑剤として作用できるが、必要な場合、任意の他の適切な疎水性もしくは親水性可塑剤も工程中に導入できる。適切な可塑剤には、ポリオールが含まれ、1種または複数のポリ(ビニルアルコール)(ELVANOL(登録商標)など)、ソルビトール、マルチトール、グリセロール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールとすることができる。
【0048】
適切な加工助剤には、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸およびラウリン酸などの、C12〜C22脂肪酸およびそれらの塩が含まれる。
【0049】
ナノコンポジット材料形成の方法は、乾燥粉末として、水もしくは可塑剤で湿らせた粉末として、水性スラリーとして、またはデンプンをベース(基材)とするマスターバッチとして疎水性粘土を直接添加することにより実行することができる。ナノコンポジット材料形成の方法は、マスターバッチ方法として実行されることが好ましい。第一に、デンプン、疎水性粘土、1種もしくは複数の可塑剤、および任意に1種もしくは複数の加工助剤または他の成分を混合する工程により、粘土を5重量%〜70重量%を含有するデンプン−粘土マスターバッチが調製される。
【0050】
このマスターバッチをストランドとして集め、第二の工程で使用するために乾燥およびペレット化(造粒)できる。マスターバッチを長期間貯蔵しようとする場合、好ましくは5重量%から15重量%の間の低い水分含量を有することが好ましい。マスターバッチは、水を添加することにより再水和させ、好ましくは15重量%から30重量%の間にあり、より好ましくは20重量%から30重量%の間にある水分含量を有するように釣り合わせる。
【0051】
その後、このマスターバッチをさらなるデンプンおよび任意に可塑剤および加工助剤と混合する工程により、粘土0.1重量%〜5重量%を含有するナノコンポジット材料が調製される。
【0052】
この材料は、押出し成形することができる。押出し成形の好ましい条件は120℃からと140℃の間の最高温度、ならびに1気圧から4気圧の間の圧力である。
【0053】
この方法には、改質されたデンプン、粘土、または粘土マスターバッチ、および任意の他の乾燥成分を予備混合して、混合物を製造する工程が含まれる。この工程は、任意の従来のミキサーで実行することができる。この混合物を、スクリュー押出し機中に導入し、スクリューのせん断作用と、バレルへの外部加熱の適用とにより高温にさらすことができる。温度は、約120℃〜約180℃の範囲まで上げることができる。材料は、共回転もしくは逆回転2軸押出し機または選択された設計の1軸押出し機を使用して、押出し配合(混合)によって最も良好に製造される。少なくとも約5もしくは約10バール(1バール=100kPa)の押出し成形圧力、また少なくとも約80rpmもしくは約100rpmのスクリュー速度による、2軸スクリュー共回転配合(混合)である。
【0054】
最初のバレル区分における液体噴射などによって、デンプンを「ゼラチン(ゲル)化し(gelatinising)」(脱構造化(デストラクチャリング;destructurising)、クッキング(cooking)、またはメルティングとも呼ばれる)、ポリマー質ゲル構造とするため、押出し成形の開始と実質的に同時に、水分を導入することができる。デンプンは、水分と、高温と、スクリューによりもたらされるせん断力との組み合わせ作用によって、クッキングされた。水分はまた、ポリ(ビニルアルコール)などの、添加されたいずれの他の水溶性ポリマーをも溶解し、また最終製品における可塑剤として作用し、それにより材料を軟化させ、モジュラスおよび脆性を低下させる役割を果たすこともできる。次いで、溶融物および/または脱構造化(デストラクチャリング)されたデンプンのナノコンポジット配合物は、ダイに向かって推進され、前方に移動する間に、通気する必要なしで発泡を防止するため温度を下げることができる。別法として、工程の間に配合物に発泡剤を添加できる。水分は、全混合物または他の混合物の約10重量%〜50重量%、好ましくは約20重量%〜40重量%、より好ましくは約22重量%〜40重量%、またはより一層好ましくは約25重量%〜35重量%の計算濃度まで添加できる。デンプンのクッキングの間およびそれに続いて、押出し機は、ナノコンポジット組成物を混合および均質化する役割を果たす。押出し機内の典型的な滞留時間は、温度プロファイルおよびスクリュー速度に応じて1分から2.5分の間である。
【0055】
理論に固執するわけではないが、粘土が疎水性となるように改質することによって、粘土粒子をより容易にバラバラにすることが可能になると推測される。このことが、得られたナノコンポジット材料で観察される高レベルの剥離化をもたらしている可能性がある。
【実施例】
【0056】
材料
CLOISITE(登録商標)20A、Southern Clay Industries社からのジメチルジ(水素化獣脂)四級アンモニウムクロリドにより改質した天然モンモリロナイト;
CLOISITE(登録商標)25A、Southern Clay Industries社からのジメチル2−エチルヘキシル(水素化獣脂)アンモニウムメチルサルフェートにより改質した天然モンモリロナイト;
CLOISITE(登録商標)93A、Southern Clay Industries社からのメチルジ(水素化獣脂)アンモニウムバイサルフェートにより改質した天然モンモリロナイト;
GELOSE(登録商標)A939、高アミロースのトウモロコシデンプン、プロピレンオキシドとの反応により改質されたGELOSE(登録商標)80(アミロース含量:約80%引用値)であり、6.5重量%のヒドロキシプロピル置換体を生成したもの(GELOSE(登録商標)A939は、Penford社、オーストラリアから入手した);
ECOFILM(登録商標)、高アミロースのトウモロコシデンプン、プロピレンオキシドとの反応により改質されたHYLON(登録商標)VII(アミロース含量:約70%引用値)であり、6.5重量%のヒドロキシプロピル残基を生じた(ECOFILM(登録商標)は、National Starch and Chemical Company社から入手した);
ポリ(ビニルアルコール)、デュポン社からのELVANOL(登録商標);
ステアリン酸、Palm−Oleo BHD社からのPALMERA(登録商標)。
【0057】
設備(装置)
粘土−デンプンマスターバッチ調製のために、温度制御されたバレル帯域10か所、非加熱帯域3か所、および冷却された供給ブロックを含む2軸押出し機を使用した。材料は、重量フィーダーを経由して押出し機中に供給した。押出し機は、共回転(かみ合せ自己ワイピング)方式で運転した。溶融物温度は、バレルに沿った3つの位置およびダイの中で監視した。1つの適切な押出し機の概略図を図1に示す。
【0058】
デンプンおよび粘土は、C1におけるホッパーを通ってバレル内に供給した。水は、C4における液体ポンプ(L)を通ってバレル内に噴射された。C5〜C9の温度域はクッキング域であり、これらの帯域内で完全なゼラチン化を完了すべきである。ダイまたはシートダイは、C11以後にある。10か所の加熱域およびダイの温度プロファイルを、次のように制御した:
【0059】
【表1】
【0060】
以下の表において挙げた割合は、重量百分率である。それらは乾燥重量ではない。それらは、材料中に含有される水分を含む。GELOSE(登録商標)A939の典型的な水分含量は11重量%(重量/重量%)である。
【0061】
粘土−デンプンマスターバッチの加工は、実験室規模の共回転2軸押出し機で行った。全体的なスクリュー構造は:直径27mm、L/D比48、および最大回転速度1200rpmであった。材料は、重量フィーダーを経由して押出し機中に供給した。押出し機内において、材料は搬送、給水、ブレンド、圧縮、混合、搬送、混合、圧縮、混合、搬送、および圧縮の段階を経た。溶融物温度は、バレルに沿った3つの位置およびダイの中で監視した。温度プロファイルを、次のように制御した:
【0062】
【表2】
【0063】
接触加熱型熱成形機を使用して、配合物の範囲から製造されたシートからトレイを熱成形した。重要な熱成形条件は次の通りであった:加熱時間1秒、加熱通気時間0.5秒、成形時間1秒、成形通気時間0.4秒、熱成形温度125℃、および金型加熱温度21℃。
【0064】
下記の実施例は、本発明によるマスターバッチの製造方法、および前記マスターバッチを使用して形成されたナノコンポジットの製造方法を明示する。
【0065】
実施例1および2
表3として一覧にしたこれらの実施例は、粘土−デンプンマスターバッチの調製を実証する。
【0066】
下記の手順が典型的なものである:
10%粘土マスターバッチ(CLOISITE(登録商標)25A)の調製
GELOSE(登録商標)A939(16.2kg)、PVOH(1.62kg)、ステアリン酸(180g)およびCLOISITE(登録商標)25A(2kg)をタンブルミキサー内で2時間混合した。混合した粉末は、3.5kg/時の速度でオーガーを通って重量フィーダーを経由し押出し機の主供給ホッパーに供給された。温度プロファイルは、表1に示した通りに設定された。水は、26g/分の流速で液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物ストランドを集め、1晩空気乾燥し、ペレット化した。
【0067】
【表3】
【0068】
実施例3〜5
表4として一覧にしたこれらの実施例は、10%粘土マスターバッチからのデンプンナノコンポジットシート(2%CLOISITE(登録商標)25A)の調製を実証する。
下記の手順が典型的なものである:
GELOSE(登録商標)A939(9kg)、PVOH(0.9kg)、ステアリン酸(0.1kg)を含むデンプン混合物を調製し、タンブルミキサー内で2時間混合した。乾燥マスターバッチペレット(上記実施例1より)をタンブルミキサー内で1晩水和させて(水は、2mL/分の流速でミキサー内に添加した。)、およそ26%の最終水分含量に到達させた。温度プロファイルは、第2の押出し成形について表1に示した通りに設定された。スクリュー速度は162rpmであった。デンプン混合物は、2.8kg/時の速度で主ホッパーに、重量フィーダーを経由し供給された。水和したマスターバッチペレットは、700g/時の速度で主ホッパーに、第2の重量フィーダーを経由し供給された。水は、26g/分の流速で噴射された。押出し物シートを集め、2時間空気乾燥し、圧延し、プラスチック袋内で貯蔵した。
【0069】
【表4】
【0070】
疎水性粘土で調製したこれらの実施例は、CLOISITE(登録商標)を含まない対照と比較し、並外れた透明度および実質的により高い溶融物強度を有していた。この特性改良は、より疎水性のCLOISITE(登録商標)25Aで調製したコンポジットにおいて最も顕著であった。
【0071】
実施例6〜8
表5として一覧にしたこれらの実施例は、粘土−デンプンマスターバッチの調製を実証する。
【0072】
デンプンコンポジット調製の手順(CLOISITE(登録商標)20A)
10%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチの調製
下記の手順が典型的なものである:
GELOSE(登録商標)A939(16.2kg)、PVOH(1.62kg)、ステアリン酸(180g)をミキサー内で2時間混合した。混合した粉末は、3.15kg/時の速度でホッパーを通って重量フィーダーを経由しバレル内に供給された。CLOISITE(登録商標)20Aは、350g/時の流速でホッパーを通ってバレル内に供給された。温度プロファイルは、マスターバッチについて表1に示した通りに設定された。水は、26g/分の流速で液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物ストリング(strings)を集め、1晩空気乾燥し、ペレット化した。
【0073】
ソルビトール、エリスリトールおよびキシリトールなどの可塑剤を粉末に添加することができ、その後粉末をバレル内に供給した。
【0074】
【表5】
【0075】
実施例9〜15
表6における実施例は、5%粘土マスターバッチからのデンプンコンポジットシートの調製を実証する。
【0076】
乾燥マスターバッチペレットをミキサー内で1晩水和させて、およそ26%の最終水分含量に到達させた。水は、2ml/分の流速でミキサー内に添加した。混合した粉末は、2.8kg/時の速度でホッパーを通って、重量フィーダーを経由しバレル内に供給された。水和したマスターバッチペレットは、700g/時の速度で、フィーダーを経由しバレル内に供給された。温度プロファイルは、第2の押出し成形について表1に示した通りに設定した。水は、27g/分の流速で、液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物シートを集め、2時間空気乾燥し、圧延してコイルとし、貯蔵した。
【0077】
【表6】
【0078】
粘土により調製したこれらの実施例は、CLOISITE(登録商標)を含まない対照に対して、並外れた透明度および実質的により高い溶融物強度を有していた。この特性改良は、より疎水性の粘土であるCLOISITE(登録商標)20AおよびCLOISITE(登録商標)25Aで調製した試料について最も顕著であった。
【0079】
実施例16〜17
この実施例は、50%粘土−デンプンマスターバッチの調製を実証し、表7として一覧にしている。
【0080】
下記の手順が典型的なものである:
デンプンコンポジット調製の手順(CLOISITE(登録商標)25A)
GELOSE(登録商標)A939(9.0kg)、PVOH(0.9kg)、ステアリン酸(100g)およびCLOISITE(登録商標)25A(10.0kg)を回転ミキサー内で2時間混合した。混合した粉末は、3.5kg/時の速度で重量フィーダーを経由しバレル内に供給された。温度プロファイルは、マスターバッチについて表1に示した通りに設定した。水は、25g/分の流速で液体ポンプを通ってバレル内に噴射された。スクリュー速度は162rpmであった。押出し物ストランドを集め、1晩空気乾燥し、ペレット化した。
【0081】
【表7】
【0082】
実施例18〜29:CLOISITE(登録商標)Na+およびCLOISITE(登録商標)20Aの比較における透明度
【0083】
【表8】
【0084】
配合物R1は、ナノ粘土を含まないコンポジットであり、これらの実施例において比較の目的のため使用される。
【0085】
「発明を実施するための形態」において考察したように、CLOISITE(登録商標)20Aは、CLOISITE(登録商標)Na+よりも著しく疎水性である。
【0086】
実施例18〜29は、疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土CLOISITE(登録商標)20Aを含む配合物が、より親水性の粘土CLOISITE(登録商標)Na+を含む配合物または粘土を含有しない配合物のいずれよりも著しく透明であることを実証する。
【0087】
1008nm・分−1で800〜200nmの波長範囲にわたって紫外線・可視スペクトルを得た。透過率を記録し、式:A=−log(T)により吸光度に関係付けた。透明度は、350〜800nmの透過光に基づいて計算し、100%透過光で除した。光吸収係数(OAC;optical absorbance coefficient)は、試験片の厚さについて正規化することにより決定した。コンポジットとして同一日に(または連続して)製造したR1と、OACを比較した。相対的変化を表9に掲げる。
【0088】
【表9】
【0089】
CLOISITE(登録商標)Na
全てのCLOISITE(登録商標)NaナノコンポジットはOACの上昇を示し、同一日に製造したR1と比較して透明度の低下を示した。R1のOACは543m−1であった。1%のCLOISITE(登録商標)Naを含むと、OACは614m−1となり、すなわちOACが上昇し、したがって透明度の低下をもたらした。
【0090】
最悪の場合、3%CLOISITE(登録商標)Naコンクリートミキサー方法により、OACは42%まで上昇した。3%CLOISITE(登録商標)Naフィーダーおよび5%CLOISITE(登録商標)Naは、同様にかなり大きな値であった。2%CLOISITE(登録商標)Naはコンクリートミキサー調製物と比較してより低いOACを示し、R1よりも5%高かった。
【0091】
CLOISITE(登録商標)20A
同一日に製造したR1と比較した場合、全ての組成物にわたって、OACの低下により示される透明度の著しい改善が観察された。表9に掲げたR1のOACは394m−1であった。CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについて、OAC低下として少なくとも21〜49%の改善が得られている。最も透明なものは1および5%CLOISITE(登録商標)20Aであり、それぞれ260m−1および288m−1のOACを有していた。2〜3%のCLOISITE(登録商標)20Aの添加は、300〜310m−1の同様なOACを示した。3%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについて、コンクリートミキサー方法は、より良好なコンシステンシー(consistency)、および測定された透明度のより低い変動を提供した。これは、押出し機へのより均質な投入に帰することができる。
【0092】
考察
CLOISITE(登録商標)Naの導入は、シート材料で観察される透明度の低下および明らかな黄色をもたらした。逆に、約5%までの量でCLOISITE(登録商標)20Aを含有すると、シートの透明度を上昇させる点で有益であることが判明した。1〜2%CLOISITE(登録商標)20Aにより、改善は最も顕著であった。
【0093】
実施例30〜36:CLOISITE(登録商標)20Aの機械的引張特性
機械的引張実験により、CLOISITE(登録商標)20Aの添加がシート材料の機械的引張特性を改良することを実証する。
【0094】
シートを細片(25mmX200mm)に切断した。それぞれの細片について厚さ測定を4回行った。ASTM D882により機械的引張試験を行った。2kNロードセルにより、伸長速度10mm・分−1を用いた。試験前に、50%および25%相対湿度で48時間、熱可塑性コンポジットを調湿した。平均試験片厚さは250μmであった。コンポジット当り最少n=10の反復試験片について統計的解析を行った。熱可塑性デンプンフィルムの引張試験は、機械方向(機械の流れ方向;machine direction)(MD)、および押出し成形方向に対して横方向(transverse to the direction of extrusion)(TD)の両方について行った。これらの結果を表10に示す。
【0095】
【表10】
【0096】
環境の相対湿度が50%から25%まで低下すると、可塑化水の減少のため、CLOISITE(登録商標)20AシートおよびR1シートの両方についてE−モジュラス(伸長係数)値およびFmax値の有意な上昇が見出され、一方全シートについて破断伸びの値の有意な低下が見出された。
【0097】
CLOISITE(登録商標)20Aの添加は、破断伸びが機械方向および横方向で同様になることから示されるように、より等方性のシートを提供した。例えば、R1について、機械方向の破断伸び値対横方向の破断伸び値の比率は5〜6であったが、一方CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシートについての比率は1〜2の間であった(表10)。
【0098】
CLOISITE(登録商標)20Aの添加は、50%RHから25%RHへの湿度変化についての機械的性能の許容度を幾分向上させた(表10)。機械方向において、R1について50%RH対25%RHの破断伸び値の比率は3であったが、一方コンポジットシートについての比率は1.67〜2.58の間であった。横方向において、R1について50%RH対25%RHの破断伸び値の比率は2.37〜2.52であったが、一方コンポジットシートについての比率は1.58〜2.43の間であった。
【0099】
実施例30〜36:CLOISITE(登録商標)20AのWAXS(広角X線散乱)
WAXS(広角X線散乱)実験は、1%もしくは2%CLOISITE(登録商標)20Aを含む配合物が実質的に剥離化されたものであることを実証する。
【0100】
CLOISITE(登録商標)20Aについての基準WAXSパターンを、図2に示す。図3は、R1についての、また、1%および2%CLOISITE(登録商標)20AナノコンポジットについてのWAXSパターンを示す。それらのパターンは、粘土によるピークを全く示さず、剥離化された構造が得られていることを示す。図4は、3%および5%ナノコンポジットについてのパターンを示す。3%CLOISITE(登録商標)20A(コンクリート)ナノコンポジットについて得られたWAXSパターンは、粘土ピークが全く観察されなかったことから、高度の剥離化を示唆している。3%CLOISITE(登録商標)20A(フィーダー)および5%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットは、2θが4.6°において小さなピークを示す。このことは、コンクリートミキサーによる方法では粘土のより大きい剥離化が生じたことを示唆する。
【0101】
実施例30〜36:CLOISITE(登録商標)20Aの熱重量測定
熱重量測定実験は、CLOISITE(登録商標)20Aを有する配合物が、高い熱安定性および低い質量損失速度を有することを実証する。
【0102】
図5は、CLOISITE(登録商標)20Aのサーモグラムを提供する。3つの質量損失段階、すなわち、最初に約38℃、次に315℃における主分解、続いて629℃における幅広い損失が生じた。質量損失は、水分減少およびさらに有機改質剤の分解に帰することができる。
【0103】
図6Aおよび図6Bは、R1およびCLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットの熱重量測定微分質量曲線を示す。表11はシートについての抽出データを掲げる。2つの異なる日に製造したR1は、主として第3の分解段階において、サーモグラムでのいくらかの差異を示した。表11に掲げるように、1%および2%CLOISITE(登録商標)20Aでは全ての段階において質量損失速度が遅くなった。
【0104】
コンポジット3%(コンクリート)では、3%(フィーダー)ナノコンポジットと比較して、全ての分解段階でより高い質量損失速度を示すように思われた。5%ナノコンポジットは、他のナノコンポジットおよびR1に比べてより高い熱安定性および全体的により低い質量損失速度を示した。
【0105】
コンポジット2%CLOISITE(登録商標)20Aは、最適の性質:すなわち、低い質量損失速度(微分曲線におけるより幅広いピーク)、およびR1よりも高い熱安定性を示すように思われた。
【0106】
【表11】
【0107】
実施例37〜43:CLOISITE(登録商標)20Aの加工、熱成形および落下試験
実施例37〜43は、CLOISITE(登録商標)20Aを含むトレイが、より透き通っており、極めてより良好な落下試験性能を有していたことを実証する。
【0108】
マスターバッチペレットを粉砕して、粉末とした。下記のシートを押出し成形した:
実施例37−R1、
実施例38−R1、1%20A、
実施例39−R1、2%20A、
実施例40−R1、3%20A(フィーダー2によりマスターバッチを添加した)、
実施例41−R1、
実施例42−R1、3%20A(コンクリートミキサー内でマスターバッチをデンプンと混合した)、
実施例43−R1、5%20A。
それぞれのシートの配合を表12に要約する。
【0109】
【表12】
【0110】
全てのナノコンポジットシートおよびR1シートは、およそ130℃の温度で押出し成形した。加工条件を表13に要約する。
【0111】
【表13】
【0112】
それぞれの実施例についての出力速度は7〜15kg/時であり、それぞれの実施例についての押出し機速度は450rpmであった。
【0113】
トレイの熱成形
熱成形機を使用して、厚さ約250μm(0.25mm)のシートからトレイを熱成形し、13.5×13.5cmのチョコレート用トレイとした。重要な熱成形条件は次の通りであった:加熱時間1秒、加熱通気時間0.5秒、成形時間1秒、成形通気時間0.4秒、熱成形温度125℃、および金型加熱温度21℃。
【0114】
全てのCLOISITE(登録商標)20Aシートは、対照であるR1と同様な熱成形特性を有していた。CLOISITE(登録商標)20Aシートから作製したトレイは、対照であるR1から作製したシートよりも透き通っていた。
【0115】
落下試験
落下試験のため、チョコレート片の重量合計125gに相当する成形プラスチック片でトレイの空間を満たし、充填したトレイは、二次カートン包装内に包装し、相対湿度条件に応じて0.9mまたは1.5mいずれかの高さから落下させた。50%RH(および23℃)における落下試験は1.5mの高さから行い、一方35%RHでは包装したトレイを0.9mの高さから落下させた。それぞれの試行について合計10枚のトレイを落下させた。その後損傷したトレイを下記の尺度および定義により評価した。ここで、それぞれのトレイは、適用可能な評価区分の最高の数(最悪の性能)に当てはめている。
【0116】
下記の表14において、クラック(き裂)はトレイの端部または内側から走っているものを示し;破片はトレイの端部から失われた断片であり;破片の大きさは、失われた部分の最大寸法であって、いかなる関連するクラックを含まず;穴はトレイの中央に生じたものであり;分離断片は、トレイから75%以上が離脱した大きな破片であった。
【0117】
【表14】
【0118】
【表15】
【0119】
表15に示したように、CLOISITE(登録商標)20Aシートから作製した全てのトレイは、R1よりも極めて良好な落下試験性能を有していた。R1については、75%〜80%のトレイが落下試験に不合格であったが、全ての2%CLOISITE(登録商標)20A、3%CLOISITE(登録商標)20A(コンクリートミキサー)および5%CLOISITE(登録商標)20Aトレイが落下試験に合格した。
【0120】
実施例44〜47:大量生産押出し機(ENTEK(登録商標)103)で行った試行
実施例44〜47は、CLOISITE(登録商標)20Aを含むトレイが、より透き通っており、極めてより良好な落下試験性能を有することを実証する。
【0121】
マスターバッチペレットを粉砕して、粉末とした。下記のシートを押出し成形した:
実施例44−R1、
実施例45−R1、2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例46−R1、2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例47−R1、2%CLOISITE(登録商標)20A。
【0122】
それぞれの実施例についての出力速度は210kg/時であり、それぞれの実施例についての押出し機スクリュー速度は225rpmであった。
【0123】
【表16】
【0124】
【表17】
【0125】
【表18】
【0126】
対照(実施例44)におけるヘイズ(曇り)結果は、シート内に複数のマルタ十字形物(Maltese Crosses)が存在するため通常のものよりも高かった。
【0127】
実施例48〜52:パイロット規模押出し機(ENTEK(登録商標)27)で行った試行
実施例48〜52は、CLOISITE(登録商標)20Aを含むトレイが、より透き通っており、極めてより良好な落下試験性能を有することを実証する。
【0128】
マスターバッチペレットを粉砕して、粉末とした。下記のシートを押出し成形した:
実施例48−R1、
実施例49−R1、純粋なCLOISITE(登録商標)20A(マスターバッチとしなかったもの)として添加した2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例50−R1、50%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチとして添加した2%CLOISITE(登録商標)20A、
実施例51−R1、
実施例52−R1、25%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチとして添加した2%CLOISITE(登録商標)20A。
【0129】
それぞれの実施例についての出力速度は16kg/時であり、それぞれの実施例についての押出し機スクリュー速度は395rpmであった。
【0130】
【表19】
【0131】
【表20】
【0132】
【表21】
【0133】
実施例53〜55:TEM(透過型電子顕微鏡)解析
実施例53〜55においてTEM(透過型電子顕微鏡)解析を用いて、CLOISITE(登録商標)20AまたはCLOISITE(登録商標)25Aを使用する場合、実質的剥離化が達成されることを実証した。また剥離度を親水性CLOISITE(登録商標)Naと比較する。それぞれの場合、CLOISITE(登録商標)2%の濃度を用い、実施例44〜47において概説した手順に従って試験片を調製した。
【0134】
図7および10はCLOISITE(登録商標)20Aに関し、図8および11はCLOISITE(登録商標)25Aに関し、また図9および12はCLOISITE(登録商標)Naに関する。図7、8および9において、倍率は50K(5万倍)であり、投影面積は2.58μm2である。図10、11および12において、倍率は115K(115000倍)であり、投影面積は0.48μm2である。
【0135】
表22に示されるように、図7、8および9におけるTEM画像を解析した。
【0136】
【表22】
【0137】
実施例56〜60:WAXSによる2%CLOISITE(登録商標)20A直接ナノコンポジットシートの解析
実施例56〜60は、2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシート粉末のWAXS解析を行ったものであり、これらのシートは50%マスターバッチについて、または粘土の直接添加により調製した。
【0138】
図13は、50%マスターバッチから調製した2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシート粉末、CLOISITE(登録商標)20Aの直接添加により調製した2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットシート粉末のWAXSパターンを示す。2000単位ずつ下げて、それぞれの曲線に適応させた目盛りを引いている。表23は、関連するd−間隔(格子面間隔)値を示す。2%CLOISITE(登録商標)20Aの直接添加によって作製した全てのシートは、残留タクトイド内における粘土小板間でのデンプンのインターカレーションのため、粘土小板の膨張を示した。50%CLOISITE(登録商標)20Aマスターバッチペレットから作製したシートは、粘土小板の最大の膨張を示した(d−間隔は23.2Åから40.5Åまで増加した。)。直接添加によって作製した2%の20ACLOISITE(登録商標)シートは、より小さい膨張を示す。50%マスターバッチからの2%CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットについて観察されたより大きい膨張についての可能な説明は、この材料が2回押出し成形されている点とすることができる。マスターバッチ成形で1回、およびナノコンポジットシートの成形で再度である。ナノコンポジットシートからは、より高い相対的結晶化度値(デンプン領域から)は観察されなかった。しかしながら、全てのナノコンポジットシートはV−型およびE−型結晶構造の生成を示している。
【0139】
【表23】
【0140】
実施例61:R1中の10%CLOISITE(登録商標)25A
R1中の10%CLOISITE(登録商標)25Aマスターバッチに基づくナノコンポジットシートの調製手順を、以下に例示する:
工程1.CLOISITE(登録商標)25Aが1.5重量%の最終希釈組成物を作製するため、既知の少量(およそ6g)のCLOISITE(登録商標)25Aマスターバッチから試料採取し、160℃で10分間、その水分含量を測定した。
【0141】
工程2.CLOISITE(登録商標)25Aマスターバッチの水分含量に応じて、既知の重量の水を添加して、既知の重量のマスターバッチをおよそ20重量%の値まで水和させるため、既知の重量の水を添加し、タンブラーミキサー内に60分間浸漬した。
【0142】
工程3.タンブラーミキサーに、既知量のA939(粉末、概略水分:10.5%)、PVOHおよびステアリン酸を添加して、最終バッチ重量15kgとし、30分間混合した。
【0143】
工程4.CLOISITE(登録商標)25Aナノコンポジット材料を加工するのに使用する温度プロファイルを、CLOISITE(登録商標)20Aについての温度プロファイルと同様とした。
【0144】
工程5.およそ220〜250μmの厚さを有するシート材料を作製した。これらのシートを使用して、熱成形トレイを作製した(およそ130℃)。
【0145】
結論
これらの実施例に従って調製したナノコンポジット材料は高剥離度を呈し、改良された機械的およびレオロジー特性、ならびに低減された水分への感受性を有していた。それらの材料は改良された透明性を有し、2カ月を超える間、透明のままであった。
【0146】
CLOISITE(登録商標)20Aナノコンポジットは、透明度に関して7%までの改善を有してCLOISITE(登録商標)Naと比較してより良好な総合的特性をもたらす。より良好な等方性形態を示した粘土のより良好な分散性および剥離度のため、機械および横方向における機械的性質がより良好な許容度を有しており、そのことは熱成形過程において有益となるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン、および疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む、実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項2】
存在する粘土の全量が、0.1重量%から5重量%の間にある、請求項1に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項3】
存在する粘土の全量が、0.1重量%から3重量%の間にある、請求項1または2に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項4】
存在する粘土の全量が、0.5重量%から2重量%の間にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項5】
2種以上の疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項6】
1種または複数の可塑剤をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項7】
1種または複数の水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項8】
1種または複数の加工助剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項9】
請求項1に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を含む材料から作製された包装。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、水性ゲルの形態にある前記デンプンを、粉末の形態にある前記疎水性粘土と混合する工程を含む方法。
【請求項11】
前記混合する工程が、溶融混合装置内で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、前記デンプンを前記疎水性粘土と混合してマスターバッチを形成する工程および前記マスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程を含む方法。
【請求項13】
前記マスターバッチをさらなるデンプンと混合する前記その後の工程の前に、前記マスターバッチを再水和させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスターバッチをさらなるデンプンと混合する前記その後の工程の前に、前記マスターバッチを粉砕および/または摩砕して粉末とする工程を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記粘土が、5重量%から70重量%の間の量で前記マスターバッチ中に存在する、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
デンプン、および疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む、実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項2】
存在する粘土の全量が、0.1重量%から5重量%の間にある、請求項1に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項3】
存在する粘土の全量が、0.1重量%から3重量%の間にある、請求項1または2に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項4】
存在する粘土の全量が、0.5重量%から2重量%の間にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項5】
2種以上の疎水性に改質された層状ケイ酸塩粘土を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項6】
1種または複数の可塑剤をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項7】
1種または複数の水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項8】
1種または複数の加工助剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料。
【請求項9】
請求項1に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料を含む材料から作製された包装。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、水性ゲルの形態にある前記デンプンを、粉末の形態にある前記疎水性粘土と混合する工程を含む方法。
【請求項11】
前記混合する工程が、溶融混合装置内で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の実質的に剥離化されたナノコンポジット材料の調製方法であって、前記デンプンを前記疎水性粘土と混合してマスターバッチを形成する工程および前記マスターバッチをさらなるデンプンと混合するその後の工程を含む方法。
【請求項13】
前記マスターバッチをさらなるデンプンと混合する前記その後の工程の前に、前記マスターバッチを再水和させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスターバッチをさらなるデンプンと混合する前記その後の工程の前に、前記マスターバッチを粉砕および/または摩砕して粉末とする工程を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記粘土が、5重量%から70重量%の間の量で前記マスターバッチ中に存在する、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図13】
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図13】
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−529220(P2010−529220A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509633(P2010−509633)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000787
【国際公開番号】WO2008/144845
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(502247341)プランティック・テクノロジーズ・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000787
【国際公開番号】WO2008/144845
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(502247341)プランティック・テクノロジーズ・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
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