説明

データ伝送方式

【課題】 大幅な設計工数の低減及びコストの削減を図るとともに、無線接続(無線LAN化)を容易かつ安価に実現する。
【解決手段】 ホスト側機器50又はペリフェラル側機器60に対してデータDの授受を行うデータ授受手段4と、このデータ授受手段4から付与されたデータフレームFuに、少なくとも通信制御に使用し、かつ有線伝送方式におけるインタフェース情報Ndを挿入するプロトコル変換を行うことにより無線LAN規格に準拠した無線Rにより送信し、かつ無線LAN規格に準拠した無線Rの受信によりプロトコル変換したデータフレームFuをデータ授受手段4に付与する無線通信手段5とを、ホスト側機器50とペリフェラル側機器60の一方又は双方に備え、ホスト側機器50の有線接続ポート51とペリフェラル側機器60の有線接続ポート61間を無線通信を介してデータ伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト側機器の有線接続ポートとペリフェラル側機器の有線接続ポートを利用してデータ伝送を行うデータ伝送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン(パーソナルコンピュータ)の使用環境では、パソコン(ホスト側機器)に対して、例えば、プリンタ(ペリフェラル側機器)を接続する場合、図10に示すように、パソコン50とプリンタ60にそれぞれ備えるUSBポート51uと61u間を、USBケーブル40により接続するのが一般的であり、このようなUSBケーブル40を用いた有線伝送手段をはじめ、10/100Base−T(イーサネット(登録商標))等の優れたネットワークプロトコルを用いた有線伝送手段が普及することにより、機器間通信は確実に高速化へ移行している。
【0003】
一方、有線接続に対して、機器間を無線接続して通信を行う無線LANも普及しつつあるが、無線LANの場合、無線LAN規格として、通常、IEEE802.11等の標準規格が用いられ、ホスト側機器とペリフェラル側機器間の接続やアクセスポイントへの接続を行うための複雑な設定、例えば、ESS−ID・WEP暗号鍵・認証方式などの各種設定が利用者に強いられる難点がある。
【0004】
このため、従来より無線LANの接続を簡易化するための接続方法も提案されており、例えば、特開2005−286783号公報には、無線LAN環境への接続を行う際に利用者が行うべき設定操作を最小限とし、かつセキュリティを確保した無線LAN接続方法が開示されている。この接続方法によれば、無線LAN環境への接続に必要な情報を事前に無線LANアクセスポイントに設定しておき、ユーザが接続先のESS−IDと自身の認証情報を入力すると、無線LANクライアントソフトは自動的に接続先より接続に必要な情報を取得し、無線LANカードへ取得した情報を自動的に設定するとともに、さらに、無線LANにおける認証規格であるIEEE802.1xを用いたユーザ認証を自動的に行い、無線LAN環境への接続を確立するものである。
【特許文献1】特開2005−286783号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の無線LANは、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、既に多くの分野で使用されている有線接続による機器間接続の技術資産は、膨大な量になっているが、新たに無線LANを導入する場合、従来の有線接続による技術資産を生かすことができず、メーカーサイドにおいては、複雑で膨大な技術開発が必要になるなど、大幅な設計工数及びコストアップを強いられる。
【0007】
第二に、無線LANにより接続する場合、無線LAN専用のドライバソフトが必要になるとともに、無線LANの設定も大変となる。上述した従来例のようにある程度簡易化する接続方法も提案されているが、基本は変わらないため、利用者にとって解りにくく、設定操作から解放されることはない。結局、ユーザーサイドにとっては、利便性に難があるとともに、新たな無線LAN機器の購入も強いられる。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したデータ伝送方式の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るデータ伝送方式は、上述した課題を解決するため、ホスト側機器50の有線接続ポート51とペリフェラル側機器60の有線接続ポート61を接続してホスト側機器50とペリフェラル側機器60間のデータ伝送を行うに際し、ホスト側機器50又はペリフェラル側機器60に対してデータDの授受を行うデータ授受手段4と、このデータ授受手段4から付与されたデータフレームFuに、少なくとも通信制御に使用し、かつ有線伝送方式におけるインタフェース情報Ndを挿入するプロトコル変換を行うことにより無線LAN規格に準拠した無線Rにより送信し、かつ無線LAN規格に準拠した無線Rの受信によりプロトコル変換したデータフレームFuをデータ授受手段4に付与する無線通信手段5とを、ホスト側機器50とペリフェラル側機器60の一方又は双方に備え、ホスト側機器50の有線接続ポート51とペリフェラル側機器60の有線接続ポート61間を無線通信を介してデータ伝送するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、データ授受手段4及び無線通信手段5を内蔵するとともに、ホスト側機器50の有線接続ポート51又はペリフェラル側機器60の有線接続ポート61に接続可能な接続ポート部2,3を有するデータ伝送用モジュール1(1h,1p)を備え、このデータ伝送用モジュール1(1h,1p)を、ホスト側機器50の有線接続ポート51とペリフェラル側機器60の有線接続ポート61の一方又は双方に接続することができる。一方、インタフェース情報Ndは、データフレームFuのオリジナルコードエリアAfに挿入することができるとともに、このインタフェース情報Ndには、USBプロトコルデータを用いることができる。他方、無線通信手段5には、有線伝送方式における少なくともインターフェイス情報Ndを収集する情報収集機能F1を設けることができるとともに、無線LAN規格に準拠した無線通信を実行するための設定を自動で行う自動設定機能F2を設けることができる。また、接続ポート部2,3には、少なくとも、USBポート2u,3u、IEEE802.3標準規格に準拠する接続ポートを含ませることができるとともに、無線LAN規格には、少なくともIEEE802.11を含む無線LAN標準規格を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係るデータ伝送方式によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 既に多くの分野で使用されている有線接続による機器間接続の膨大な技術資産を生かして無線接続(無線LAN化)を実現できるため、メーカーサイドにおいては、複雑で膨大な技術開発を回避することができ、これにより、大幅な設計工数の低減及びコストの削減を図ることができる。
【0013】
(2) 無線LAN専用のドライバソフトが不要になるとともに、無線LANの設定を不要或いは著しい簡略化を図れるため、ユーザーサイドの利便性を飛躍的に向上させることができるとともに、既存機器の活用等により無線接続(無線LAN化)を極めて容易かつ安価に実現することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、データ授受手段4及び無線通信手段5を内蔵するとともに、ホスト側機器50の有線接続ポート51又はペリフェラル側機器60の有線接続ポート61に接続可能な接続ポート部2,3を有するデータ伝送用モジュール1(1h,1p)を備え、このデータ伝送用モジュール1(1h,1p)を、ホスト側機器50の有線接続ポート51とペリフェラル側機器60の有線接続ポート61の一方又は双方に接続するようにすれば、本発明に係るデータ伝送方式を容易かつ効果的に実施することができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、インタフェース情報Ndを、データフレームFuのオリジナルコードエリアAfに挿入すれば、既存のデータフレームを利用して容易に実施することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、インタフェース情報Ndに、USBプロトコルデータを用いれば、特に、USBケーブルに代える無線接続(無線LAN化)を容易かつ有効に実現できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、無線通信手段5に、有線伝送方式における少なくともインターフェイス情報Ndを収集する情報収集機能F1を設けるとともに、無線LAN規格に準拠した無線通信を実行するための設定を自動で行う自動設定機能F2を設ければ、本発明に係るデータ伝送方式を確実かつ有効に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係るデータ伝送方式の実施に用いるデータ伝送用モジュール1の構成について、図2〜図5を参照して説明する。
【0020】
図2は、データ伝送用モジュール1の外観を示す。モジュール1は、ケーシング11を備え、このケーシング11の側面に、接続ポート部2,3を構成する二タイプのUSBポート(USBコネクタ)2u,3uを配設する。この場合、一方のUSBポート(例えば、Mini−Bコネクタ)2uは、パソコン等のホスト側機器50のUSBポート51uに接続するとともに、他方のUSBポート(例えば、Aコネクタ)3uは、プリンタ等のペリフェラル側機器60のUSBポート61uに接続する。モジュール1に、このようなホスト側機器50のUSBポート51u及びペリフェラル側機器60のUSBポート61uに接続可能な二タイプのUSBポート2u,3uを設ければ、単一タイプのモジュール1を、ホスト側機器50とペリフェラル側機器60の双方に兼用できる利点がある。
【0021】
また、12は、ケーシング11の上面に配設した作動ランプを示す。なお、モジュール1の作動電源は、USBポート2uの直流電源ラインから得ることができるが、外部電源を利用できるようにしてもよく、この場合には、ケーシング11の側面に、ACアダプタからのDC出力コードを接続するためのコネクタを配設する。図3は、モジュール1の内部構造を示す。ケーシング11の内部には、電子回路基板13を配設するとともに、基板にプリントしたアンテナ部15a,15bを配設する。このアンテナ部15a,15bは、ダイバーシティアンテナを構成する。なお、16…は、電子回路基板13を支持する支持部又はアンテナ部15a,15bを支持する支持材を示す。
【0022】
図4は、モジュール1のハードウェア構成をブロック図により示す。モジュール1は、CPU21を備え、このCPU21には、バスライン22を介してデータバッファ用のRAM23及び処理プログラム格納用のROM24を接続する。また、USBポート2uは、インタフェース25を介してバスライン22に接続するとともに、USBポート3uは、インタフェース26を介してバスライン22に接続する。さらに、USBポート2uとインタフェース25間及びUSBポート3uとインタフェース26間には、それぞれ接続検出部27,28を接続し、各接続検出部27,28は判定部29に接続する。これにより、USBポート2u,3uの接続状態を判別する接続検出手段6が構成される。また、この判定部29は、二タイプのUSBポート2u,3uの双方が接続状態になったことを検出したなら、無線通信手段5とデータ授受手段4を遮断し、データ授受手段4に接続される二タイプのUSBポート2u,3u間を接続するポート切換手段7を備えている。一方、バスライン22には、無線LAN機能を有する無線LANチップセット30を接続するとともに、ベンダID,プロダクトID及びMACアドレスに係わるデータを格納するID格納部31を接続する。
【0023】
これらのハードウェア構成及びROM24に格納した処理プログラムにより、USBポート2u又は3uに接続したホスト側機器50又はペリフェラル側機器60に対してデータDの授受を行うデータ授受手段4が構成されるとともに、このデータ授受手段4から付与されたデータDをプロトコル変換して、無線LAN規格に準拠した無線Rにより送信し、かつ無線LAN規格に準拠した無線Rの受信により、プロトコル変換したデータDをデータ授受手段4に付与する無線通信手段5が構成される。この場合、無線LAN規格には、IEEE802.11の標準規格を用いる。また、この無線通信手段5には、有線伝送方式における少なくともインターフェイス情報Ndを収集する情報収集機能F1を設けるとともに、無線LAN規格に準拠した無線通信を実行するための設定を自動で行う自動設定機能F2を設ける。
【0024】
無線通信手段5における具体的なプロトコル変換は次のように行う。図5は、使用するデータフレームFuを示す。このフレームFuは、「フレーム制御」エリア,「デュレーション/ID」エリア,「第一アドレス」エリア,「第二アドレス」エリア,「第三アドレス」エリア,「シーケンス制御」エリア,「第四アドレス」エリア,「DSAP」エリア,「SSAP」エリア,「コントロール」エリア,「オリジナルコード」エリアAf,「タイプ」エリア,データDを有する「データ」エリア,「FCS」エリアを有しており、プロトコル変換は、このフレームFuの「オリジナルコード」エリアAfに、少なくとも通信制御に使用し、かつ有線伝送方式(USBケーブル伝送方式)におけるインタフェース情報(USBプロトコルデータ)Ndを挿入することにより、リンクコントロールフレームを定義する方法を用いる。なお、「フレーム制御」エリアから「第四アドレス」エリアまでは、IEEE802.11に準拠するMACヘッダを構成するとともに、「DSAP」エリアから「コントロール」エリアまでは、IEEE802.2LLCに準拠し、さらに、「オリジナルコード」エリアAf及び「タイプ」エリアは、IEEE802.2SNに準拠する。また、各エリアの上に表示した数字はバイト数である。
【0025】
これにより、例えば、ペリフェラル側機器60が、ホスト側機器50から有線伝送方式(USBケーブル伝送方式)におけるインタフェース情報Ndを挿入したデータフレームFuを無線Rにより受信すれば、ペリフェラル側機器60は、ホスト側機器50に対して恰もUSBケーブル(有線)により接続されているように動作することができる。なお、有線伝送方式時のデータDは、無線LANに用いるフレームのデータエリアにセットされる。また、無線伝送は、無線LAN標準規格(IEEE802.11)を用いるため、無線LANに用いるベンダID,プロダクトID及びMACアドレスに係わるデータは、予め工場出荷時にID格納部31に登録されたデータを用いる。
【0026】
次に、このように構成するデータ伝送用モジュール1の使用方法及び動作を含む本実施形態に係るデータ伝送方式について、図1〜図6を参照して説明する。
【0027】
データ伝送用モジュール1を使用することにより、有線接続したシステムを簡単に無線接続に変更することができ、これがモジュール1の基本的な使用方法となる。以下、この使用方法について、図6を参照して説明する。図6には、パソコン(ホスト側機器)50とこのパソコン50に接続するプリンタ(ペリフェラル側機器)60を示す。パソコン50及びプリンタ60には、それぞれUSBポート51u及び61uを備えており、このパソコン50とプリンタ60は、図10に示すように、USBケーブル40により接続されていたものとする。したがって、この場合、パソコン50には、USBドライバ及びプリンタドライバに係わるプログラムがインストールされている。
【0028】
このシステムにおいて、パソコン50とプリンタ60を無線接続に変更する場合には、まず、USBケーブル40を取り外す。一方、モジュール1を二台、即ち、図6に示すように、モジュール1hと1pを用意する。この場合、モジュール1hと1pは、ペア(セット)であり、それぞれのID格納部31には、対応する専用のベンダID,プロダクトID,MACアドレスが登録されている。そして、一方のモジュール1hをUSBケーブル45を用いてパソコン50に接続するとともに、他方のモジュール1pをUSBケーブル46を用いてプリンタ60に接続する。この場合、パソコン50に対しては、モジュール1hにおけるUSBポート2uを用いるとともに、プリンタ60に対しては、モジュール1pにおけるUSBポート3uを用いる。
【0029】
以上により、接続(変更)が完了する。このように、有線接続(USB接続)から無線接続(コードレス化)に極めて容易に変更することができる。したがって、利用者は、特別な設定を行うことなく使用することができるとともに、実質的には、無線LANと同等の使い勝手が実現される。
【0030】
次に、このようなモジュール1h,1pを用いたデータ伝送方式の具体的な動作について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、パソコン50にモジュール1hを接続すれば、モジュール1hはパソコン50に接続したことを検出し、パソコン50側のモジュール1hとして動作を開始する(ステップS1)。また、プリンタ60にモジュール1pを接続すれば、モジュール1pはプリンタ60に接続したことを検出し、プリンタ60側のモジュール1pとして動作を開始する(ステップS2)。これにより、パソコン50側のモジュール1hは、パソコン50を認識し、これにより、ペリフェラル側機器の検索(監視)を行う(ステップS3)。
【0032】
また、プリンタ60側のモジュール1pは、プリンタ60を認識し、プリンタ60に対して有線伝送方式(USBケーブル伝送方式)におけるインタフェース情報(USBプロトコルデータ)Ndを要求するとともに、プリンタ60からインタフェース情報Ndを取得する(ステップS4,S5)。そして、モジュール1pは、インタフェース情報Ndを取得したなら、パソコン50側のモジュール1hに対して接続要求(仮接続要求)を送信する(ステップS6)。パソコン50側のモジュール1hが、プリンタ60側のモジュール1pからの仮接続要求を受信したなら仮接続を許可する(ステップS7)。以上、ステップS1からステップS7までの処理が、有線伝送方式における少なくともインターフェイス情報Ndを収集する情報収集機能F1による処理となる。
【0033】
これにより、パソコン50とプリンタ60は仮接続されるため、プリンタ60側のモジュール1pは、取得した有線伝送方式におけるインタフェース情報Ndを、パソコン50側のモジュール1hに送信する(ステップS8)。パソコン50側のモジュール1hは、インタフェース情報Ndを取得することにより、このインタフェース情報Ndに基づいてパソコン50に接続する(ステップS9,S10)。また、プリンタ60のモジュール1pは、無線LANによりインタフェース情報Ndに基づく接続条件によりパソコン50側のモジュール1hと接続するとともに、パソコン50側のモジュール1hは、無線LANによりインタフェース情報Ndに基づく接続条件によりプリンタ60側のモジュール1pと接続する(ステップS11,S12)。以上、ステップS8〜ステップS12までの処理が、無線LAN規格に準拠した無線通信を実行するための設定を自動で行う自動設定機能F2による処理となる。
【0034】
この結果、パソコン50側のモジュール1hとプリンタ60側のモジュール1pは、正規の接続状態となり、以後、無線LANによる正規の通信処理が行われる(ステップS13,S14)。この場合、パソコン50及びプリンタ60から見た場合、恰もUSBケーブルによる有線接続と同じ状態で通信処理が行われる。即ち、パソコン50からプリンタ60にデータDを送信する際には、モジュール1hは、データDを有するデータフレームFuに有線伝送方式のインターフェース情報Ndを挿入し、プロトコル変換したデータフレームFuを、無線LANチップセット30から無線Rにより送信を行う。他方、プリンタ60のモジュール1pは、無線LANチップセット30による無線Rの受信により、受信したデータフレームFuをプロトコル変換し、データDをプリンタ60に転送する。なお、プリンタ60からパソコン50にデータDを送信する場合も同様に行われる。
【0035】
次に、本発明の変更実施形態に係るデータ伝送方式、特に、データ伝送方式を実施する際のシステム形態の変更例について、図7〜図9を参照して説明する。
【0036】
図7は、前述したモジュール1hと1pを使用した際の無線接続から有線接続に変更する場合を示す。図7(a)は、図6に示すシステムにおいて、無線接続した場合を示している。これに対して、図7(b)に示すように、モジュール1hの空USBポート3uとモジュール1pの空USBポート2u間を、USBケーブル47により接続することにより、USBケーブル47を用いた通常の有線接続(USB接続)に変更することができる。この場合、各モジュール1h,1pには、ポート切換手段7…を備えるため、例えば、一方のモジュール1hにおける二タイプのUSBポート2uと3uの双方が接続状態になったことを検出したなら、無線通信手段5とUSBポート2u(3u)間を遮断し、二タイプのUSBポート2uと3u間を接続する処理を行う。これにより、無線接続(無線LAN)と有線接続を容易に切換えることができ、ユーザーサイドの更なる利便性向上に寄与できる。
【0037】
図8は、パソコン50に無線LAN機能71を内蔵する場合を示す。この場合、一台のモジュール1を用意し、プリンタ60に接続する。これにより、モジュール1は、プリンタサーバとして機能する。なお、72は、パソコン50の無線LAN機能71と通信を行うアクセスポイントである。ところで、この場合、モジュール1がアクセスポイント72と通信できるように無線LANの設定が必要になる。したがって、モジュール1のID格納部31には、予めMACアドレスのみを登録し、このMACアドレスを利用して無線LAN設定を行う。
【0038】
具体的な設定は、次のように行うことができる。まず、パソコン50のUSBポートとモジュール1における空USBポート2uをUSBケーブルにより接続する。プリンタ60の電源はOFFにするとともに、パソコン50の電源をONにして設定モードを起動させる。この設定モードにより、ID格納部31からMACアドレスを取得し、このMACアドレスを利用して、無線LAN機能71を備えるパソコン50により認識できるように設定する。このような設定は、例えば、二台目のプリンタ60を追加する場合等に有効である。なお、このような設定方法は、モジュール1におけるROM24の書換等にも利用できる。
【0039】
図9は、モジュール1を接続したパソコン50に対して、通常のプリンタ60を接続する場合を示す。この場合、基本的には、図7(b)と同様の接続となり、パソコン50側のモジュール1の空USBポート3uとプリンタ60に備えるUSBポート61uをUSBケーブル47により接続すればよい。
【0040】
よって、このような本実施形態に係るデータ伝送方式によれば、既に多くの分野で使用されている有線接続による機器間接続の膨大な技術資産を生かして無線接続(無線LAN化)を実現できるため、メーカーサイドにおいては、複雑で膨大な技術開発を回避することができ、これにより、大幅な設計工数の低減及びコストの削減を図ることができる。また、無線LAN専用のドライバソフトが不要になるとともに、無線LANの設定を不要或いは著しい簡略化を図れるため、ユーザーサイドの利便性を飛躍的に向上させることができるとともに、既存機器の活用等により無線接続(無線LAN化)を極めて容易かつ安価に実現することができる。
【0041】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0042】
例えば、実施形態では、別途構成したデータ伝送用モジュール1(1h,1p)を利用した場合を示したが、ホスト側機器50又はペリフェラル側機器60に回路として組込む場合を排除するものではない。また、インタフェース情報Ndを、データフレームFuのオリジナルコードエリアAfに挿入するとともに、インタフェース情報Ndとして、USBプロトコルデータを用いた場合を示したが、これらの例示に限定されるものではない。一方、ホスト側機器50としてパソコンを例示したが、モバイル装置などの各種コンピューティング装置を適用できる。さらに、ペリフェラル側機器60としてプリンタを例示したが、イメージスキャナ等の各種コンピュータ周辺機器を適用できる。他方、接続ポート部2,3として、USBポート2u,3uを例示したが、IEEE802.3標準規格に準拠する接続ポート等に対しても同様に適用できる。また、モジュール1(1h,1p)は、USBケーブルを利用してホスト側機器50或いはペリフェラル側機器60に接続する場合を示したが、USBメモリのように、USBケーブルを介在させることなくホスト側機器50或いはペリフェラル側機器60のUSBポートに直接接続するタイプとして構成してもよい。さらに、無線LAN規格は、IEEE802.11をはじめ、他の認証規格による無線LAN規格であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るデータ伝送方式の動作を説明するためのフローチャート、
【図2】同データ伝送方式の実施に用いるデータ伝送用モジュールのハードウェア構成を示すブロック回路図、
【図3】同モジュールの外観斜視図、
【図4】同モジュールの内部構造を示す断面図、
【図5】本発明の最良の実施形態に係るデータ伝送方式に用いるデータフレームの構成図、
【図6】同データ伝送方式を実施するためのシステム構成図、
【図7】本発明の変更実施形態に係るシステム構成図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係るデータ伝送方式を実施するためのシステム構成図、
【図9】本発明の他の変更実施形態に係るシステム構成図、
【図10】背景技術に係る有線伝送方式を実施するためのシステム構成図、
【符号の説明】
【0044】
1 データ伝送用モジュール
1h データ伝送用モジュール
1p データ伝送用モジュール
2 接続ポート部
2u USBポート
3 接続ポート部
3u USBポート
4 データ授受手段
5 無線通信手段
50 ホスト側機器
51 有線接続ポート
60 ペリフェラル側機器
61 有線接続ポート
D データ
R 無線
Fu データフレーム
Nd インタフェース情報
Af オリジナルコードエリア
F1 情報収集機能
F2 自動設定機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト側機器の有線接続ポートとペリフェラル側機器の有線接続ポートを接続して前記ホスト側機器と前記ペリフェラル側機器間のデータ伝送を行うデータ伝送方式において、前記ホスト側機器又は前記ペリフェラル側機器に対してデータの授受を行うデータ授受手段と、このデータ授受手段から付与されたデータフレームに、少なくとも通信制御に使用し、かつ有線伝送方式におけるインタフェース情報を挿入するプロトコル変換を行うことにより無線LAN規格に準拠した無線により送信し、かつ無線LAN規格に準拠した無線の受信によりプロトコル変換した前記データフレームを前記データ授受手段に付与する無線通信手段とを、前記ホスト側機器と前記ペリフェラル側機器の一方又は双方に備え、前記ホスト側機器の有線接続ポートと前記ペリフェラル側機器の有線接続ポート間を無線通信を介してデータ伝送することを特徴とするデータ伝送方式。
【請求項2】
前記データ授受手段及び前記無線通信手段を内蔵するとともに、前記ホスト側機器の有線接続ポート又は前記ペリフェラル側機器の有線接続ポートに接続可能な接続ポート部を有するデータ伝送用モジュールを備え、このデータ伝送用モジュールを、前記ホスト側機器の有線接続ポートと前記ペリフェラル側機器の有線接続ポートの一方又は双方に接続することを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。
【請求項3】
前記インタフェース情報は、前記データフレームのオリジナルコードエリアに挿入することを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。
【請求項4】
前記インタフェース情報は、USBプロトコルデータを用いることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。
【請求項5】
前記無線通信手段は、有線伝送方式における少なくともインターフェイス情報を収集する情報収集機能を備えることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。
【請求項6】
前記無線通信手段は、前記無線LAN規格に準拠した無線通信を実行するための設定を自動で行う自動設定機能を備えることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。
【請求項7】
前記接続ポート部には、少なくとも、USBポート、IEEE802.3標準規格に準拠する接続ポートを含むことを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。
【請求項8】
前記無線LAN規格は、少なくともIEEE802.11を含む無線LAN標準規格であることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−142524(P2007−142524A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329782(P2005−329782)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】