説明

データ処理システム、データ処理方法およびデータ処理プログラム

【課題】所定のソフトウェアが起動している状態で通信端末が操作されるとき、これに伴うデータ処理の少なくとも一部を通信ネットワーク上の他の装置に代行させるデータ処理システム、方法およびプログラムを得ること。
【解決手段】ユーザは操作入力手段11aを用いて通信端末11を操作すると、第1のデータ処理装置12は動作するソフトウェアの種類とデータ量に応じて、その送られてきたデータを処理するか判別する。処理した場合には、処理結果送信手段12cで結果を通信端末11に戻す。第1のデータ処理装置12はデータを断片化して他の装置に処理を分散させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続した通信端末がそのデータ処理の効率を高めるようにしたデータ処理システム、データ処理方法およびデータ処理プログラムに関する。本発明は特に携帯電話機等の小型の携帯情報端末に好適なデータ処理システム、データ処理方法およびデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報端末が広く普及しており、これらの機能も高度化している。このような携帯情報端末は、小型であるために搭載する電池も小型のものとなる。このため、商用電源を使用するデスクトップ型のパーソナルコンピュータと比べると、データ処理の能力を落とさざるを得ない。
【0003】
この一方で、携帯情報端末にもデスクトップ型のパーソナルコンピュータと同様のアプリケーションソフトウェア(以下、単にソフトウェアという。)を搭載して、両者の間で互換性のあるデータ処理を行うニーズが高まっている。しかしながら、携帯情報端末に高性能なデータ処理を行わせようとすると、過負荷状態となって満足な処理が行えなくなる場合がある。たとえば、携帯情報端末で動画の再生を行おうとすると、画像がコマ送り状になってしまい、動画のスムーズな再生が行えないといった現象が発生する場合がある。特に、複数のソフトウェアを同時に起動したような場合には、1つのソフトウェアに割り当てられる処理能力が低下する関係で、画像のコマ送りや再生が一時停止してしまうといった現象が発生しやすくなる。
【0004】
ところで、データ処理をサーバ側に集中させることでユーザが使用する端末の処理能力不足を補うシンクライアントシステムが、従来から本発明の関連技術として提案されている(たとえば特許文献1参照)。関連技術では、シンクライアントサーバが周辺機器データを周辺機器に対して要求する。周辺機器はこの要求に応じて周辺機器データを入力して送信する。この際に、周辺機器はシンクライアントサーバの要求に応じる形で送信するので、そのデータ量を削減することができる。たとえば、周辺機器データとして特定の帳票をスキャンする場合に、住所の記載部分や印鑑の捺印部分等の必要な部分のみを抽出してシンクライアントサーバに送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−323660号公報(第0024段落、第0029段落、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この関連技術では、シンクライアントサーバ側の要求に応じて周辺機器側が周辺機器データを送信するので、周辺機器がシンクライアントサーバと予め取り決めた周辺機器データに対象が限定される。したがって、文書を作成したり映像を再現するといった通常のソフトウェアの実行に関するデータ処理については、携帯情報端末自体が処理をすべて行うことになり、過負荷によりデータ処理が遅延するという問題を解消することができない。
【0007】
なお、以上の説明では携帯情報端末としての問題を指摘したが、同様の問題は携帯用でない通信端末についても同様に存在する。
【0008】
そこで本発明の目的は、所定のソフトウェアが起動している状態で通信端末が操作されるとき、これに伴うデータ処理の少なくとも一部を通信ネットワーク上の他の装置が肩代わりすることのできるデータ処理システム、データ処理方法およびデータ処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、(イ)所定のアプリケーションソフトウェアが起動した状態で入力操作を受け付ける操作入力手段と、この操作入力手段により受け付けた操作データおよびこれに付帯する処理データが存在する場合のその処理データを特定の宛先に送信するデータ送信手段と、操作データの処理結果を受信する処理結果受信手段と、この処理結果受信手段により受信した処理結果を自装置の処理結果として出力する出力手段とを備えた通信端末と、(ロ)この通信端末の前記したデータ送信手段から送られてきた操作データおよびこれに付帯する処理データが存在する場合のその処理データを受信するデータ受信手段と、このデータ受信手段の受信したデータを用いて前記した所定のアプリケーションソフトウェアの起動の下でデータ処理を行い処理結果を出力する処理結果出力手段と、この処理結果出力手段の出力する処理結果を前記した通信端末に送信する処理結果送信手段とを備えた第1のデータ処理装置とをデータ処理システムが具備する。
【0010】
また、本発明では、(イ)通信ネットワークに接続された所定の通信端末からアプリケーションソフトウェアを特定した処理データを受信する処理データ受信ステップと、(ロ)この処理データ受信ステップで受信した処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力ステップと、(ハ)この処理結果出力ステップで出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する処理結果送信ステップとをデータ処理方法が具備する。
【0011】
更に本発明では、(イ)アプリケーションソフトウェアを特定した処理データを通信ネットワークに接続された所定の通信端末から受信する処理データ受信ステップと、(ロ)この処理データ受信ステップで受信した処理データを前記した所定の通信端末以外の他の任意数の通信端末に処理を分担させるか否かを判別する分担適否判別ステップと、(ハ)この分担適否判別ステップで分担させないと判別したとき前記したアプリケーションソフトウェアを起動させて処理し前記した処理データ受信ステップで受信した全処理データについて処理結果を出力する一方、分担させると判別したときでその一部を分担させるときには残りの処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力ステップと、(ニ)この処理結果出力ステップで出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する処理結果送信ステップと、(ホ)前記した分担適否判別ステップで分担を行うと判別したとき前記した処理データ受信ステップで受信した全処理データを前記した任意数の通信端末に断片化して送信しこれらの処理を行わせる断片化データ送信手段とをデータ処理方法が具備する。
【0012】
更にまた、本発明では、コンピュータに、データ処理プログラムとして、(イ)通信ネットワークに接続された所定の通信端末からアプリケーションソフトウェアを特定した処理データを受信する処理データ受信処理と、(ロ)この処理データ受信処理で受信した処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力処理と、(ハ)この処理結果出力処理で出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する処理結果送信処理とを実行させる。
【0013】
また、本発明では、コンピュータに、データ処理プログラムとして、(イ)アプリケーションソフトウェアを特定した処理データを通信ネットワークに接続された所定の通信端末から受信する処理データ受信処理と、(ロ)この処理データ受信処理で受信した処理データを前記した所定の通信端末以外の他の任意数の通信端末に処理を分担させるか否かを判別する分担適否判別処理と、(ハ)この分担適否判別処理で分担させないと判別したとき前記したアプリケーションソフトウェアを起動させて処理し前記した処理データ受信処理で受信した全処理データについて処理結果を出力する一方、分担させると判別したときでその一部を分担させるときには残りの処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力処理と、(ニ)この処理結果出力処理で出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する処理結果送信処理と、(ホ)前記した分担適否判別処理で分担を行うと判別したとき前記した処理データ受信処理で受信した全処理データを前記した任意数の通信端末に断片化して送信しこれらの処理を行わせる断片化データ送信処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、所定のアプリケーションソフトウェアが起動した状態で通信端末が本来扱うべきデータを同様のアプリケーションソフトウェアの起動状態で予め定めたデータ処理装置が代わって処理し処理結果を通信端末に送り返すことにした。これにより、その通信端末の負担を軽減したり、その通信端末自体のハードウェアの構成を簡略化することができる。
【0015】
また、所定の場合には前記した予め定めたデータ処理装置が受信した処理データを他の任意数の通信端末に処理を分担させることにした。これにより、予め定めたデータ処理装置自体のデータ処理能力が低い場合であっても、本来データを処理すべき通信端末のその処理データの処理の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のデータ処理システムのクレーム対応図である。
【図2】本発明のデータ処理方法のクレーム対応図である。
【図3】本発明の他のデータ処理方法のクレーム対応図である。
【図4】本発明のデータ処理プログラムのクレーム対応図である。
【図5】本発明の他のデータ処理プログラムのクレーム対応図である。
【図6】本発明の実施の形態によるデータ処理システムの概要を表わしたシステム構成図である。
【図7】本実施の形態におけるユーザ端末の構成の概要を表わしたブロック図である。
【図8】本実施の形態におけるシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータの機能的な構成を表わしたブロック図である。
【図9】本実施の形態におけるグリッドコンピューティングに参加する録画装置の機能的な構成を表わしたブロック図である。
【図10】本実施の形態における各装置のデータ処理の分担の大枠を示した説明図である。
【図11】本実施の形態におけるユーザ端末によるソフトウェアの初期設定の様子を表わした流れ図である。
【図12】本実施の形態におけるシンクライアントサーバ側のソフトウェア初期設定処理の様子を表わした流れ図である。
【図13】本実施の形態のユーザ端末管理部におけるユーザ端末の記憶領域の一部を表わした説明図である。
【図14】本実施の形態における初期設定が行われた後のシンクライアントサーバのユーザ端末に対するデータ処理の様子を表わした流れ図である。
【図15】本実施の形態におけるユーザ端末が他のデータ処理装置のデータ処理結果を受信する処理の様子を表わした流れ図である。
【図16】本発明のデータ処理システムの一変形例を表わしたシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明のデータ処理システムのクレーム対応図を示したものである。本発明のデータ処理システム10は、通信端末11と、第1のデータ処理装置12を備えている。通信端末11は、操作入力手段11aと、データ送信手段11bと、処理結果受信手段11cと、出力手段11dを備えている。第1のデータ処理装置12は、データ受信手段12aと、処理結果出力手段12bと、処理結果送信手段12cを備えている。ここで、操作入力手段11aは、所定のアプリケーションソフトウェアが起動した状態で入力操作を受け付ける。データ送信手段11bは、操作入力手段11aにより受け付けた操作データおよびこれに付帯する処理データが存在する場合のその処理データを特定の宛先に送信する。処理結果受信手段11cは、操作データの処理結果を受信する。出力手段11dは、処理結果受信手段11cにより受信した処理結果を自装置の処理結果として出力する。また、データ受信手段12aは、通信端末11のデータ送信手段11bから送られてきた操作データおよびこれに付帯する処理データが存在する場合のその処理データを受信する。処理結果出力手段12bは、データ受信手段12aの受信したデータを用いて前記した所定のアプリケーションソフトウェアの起動の下でデータ処理を行い処理結果を出力する。処理結果送信手段12cは、処理結果出力手段12bの出力する処理結果を前記した通信端末に送信する。
【0018】
図2は、本発明のデータ処理方法のクレーム対応図を示したものである。本発明のデータ処理方法20は、処理データ受信ステップ21と、処理結果出力ステップ22と、処理結果送信ステップ23を備えている。ここで、処理データ受信ステップ21では、通信ネットワークに接続された所定の通信端末からアプリケーションソフトウェアを特定した処理データを受信する。処理結果出力ステップ22では、処理データ受信ステップ21で受信した処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する。処理結果送信ステップ23では、処理結果出力ステップ22で出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する。
【0019】
図3は、本発明の他のデータ処理方法のクレーム対応図を示したものである。本発明のデータ処理方法30は、処理データ受信ステップ31と、分担適否判別ステップ32と、処理結果出力ステップ33と、断片化データ送信手段34を備えている。ここで、処理データ受信ステップ31では、アプリケーションソフトウェアを特定した処理データを通信ネットワークに接続された所定の通信端末から受信する。分担適否判別ステップ32では、処理データ受信ステップ31で受信した処理データを前記した所定の通信端末以外の他の任意数の通信端末に処理を分担させるか否かを判別する。処理結果出力ステップ33では、分担適否判別ステップ32で分担させないと判別したとき前記したアプリケーションソフトウェアを起動させて処理し処理データ受信ステップ31で受信した全処理データについて処理結果を出力する。またこの一方で、分担させると判別したときでその一部を分担させるときには残りの処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する。処理結果送信ステップ34では、処理結果出力ステップ33で出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する。断片化データ送信手段34では、分担適否判別ステップ32で分担を行うと判別したとき処理データ受信ステップ31で受信した全処理データを前記した任意数の通信端末に断片化して送信しこれらの処理を行わせる。
【0020】
図4は、本発明のデータ処理プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明のデータ処理プログラム40は、コンピュータに、処理データ受信処理41と、処理結果出力処理42と、処理結果送信処理43を実行させるようにしている。ここで、処理データ受信処理41では、通信ネットワークに接続された所定の通信端末からアプリケーションソフトウェアを特定した処理データを受信する。処理結果出力処理42では、処理データ受信処理41で受信した処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する。処理結果送信処理43では、処理結果出力処理42で出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する。
【0021】
図5は、本発明の他のデータ処理プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明のデータ処理プログラム50は、コンピュータに、処理データ受信処理51と、分担適否判別処理52と、処理結果出力処理53と、処理結果送信処理54と、断片化データ送信処理55を実行させるようにしている。ここで、処理データ受信処理51では、アプリケーションソフトウェアを特定した処理データを通信ネットワークに接続された所定の通信端末から受信する。分担適否判別処理52では、処理データ受信処理51で受信した処理データを前記した所定の通信端末以外の他の任意数の通信端末に処理を分担させるか否かを判別する。処理結果出力処理53では、分担適否判別処理52で分担させないと判別したとき前記したアプリケーションソフトウェアを起動させて処理し処理データ受信処理51で受信した全処理データについて処理結果を出力する。また、一方、分担させると判別したときでその一部を分担させるときには残りの処理データを前記したアプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する。処理結果送信処理54では、処理結果出力処理53で出力した処理結果を前記した所定の通信端末に送信する。断片化データ送信処理55では、分担適否判別処理52で分担を行うと判別したとき処理データ受信処理51で受信した全処理データを前記した任意数の通信端末に断片化して送信しこれらの処理を行わせる。
【0022】
<発明の実施の形態>
【0023】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図6は、本発明の実施の形態によるデータ処理システムの概要を表わしたものである。本実施の形態のデータ処理システム100で、携帯電話機等のユーザ端末101は、ルータ等のネットワーク接続機器102に接続されている。ネットワーク接続機器102は、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103の他に、家庭内や小規模事業所内の幾つかのネットワーク機器と接続されている。これらのネットワーク機器としては、一例として、録画装置104、エアーコンディショナ(エアコン)105およびゲーム端末(ゲーム機)106を挙げることができる。これらは、共に有線あるいは無線でネットワーク接続機器102と接続し、内蔵する図示しないCPU(Central Processing Unit)で、データ処理を行い、処理結果を通信することができる。
【0025】
このデータ処理システム100で、パーソナルコンピュータ103と、録画装置104、エアーコンディショナ105およびゲーム端末106は、グリッドコンピューティング(grid computing)システム108を構成している。一般的なグリッドコンピューティングシステム108では、インターネット等の広域のネットワーク上にあるコンピュータ資源を用いて、複合したコンピュータシステムとして利用する。本実施の形態では、家庭内や小規模事業所内に存在するコンピュータ資源をグリッドコンピューティングシステム108として直接的に利用する。パーソナルコンピュータ103は、この小規模な通信ネットワークに接続された比較的高度なデータ処理装置として、シンクライアントサーバの役割を担っている。
【0026】
図7は、ユーザ端末の構成の概要を表わしたものである。ユーザ端末101は、CPU(Central Processing Unit)121と、このCPU121が実行する制御プログラムを格納したメモリ122を備えた主制御部123を有している。主制御部123は、データバス等のバス124を通じてユーザ端末101内の各部を制御する。このうち、通信制御部125は、図6に示したネットワーク接続機器102を介してパーソナルコンピュータ103等の各種のデータ処理装置と通信を行う。シンクライアント対応部126は、本実施の形態でシンクライアントサーバの役割を担うパーソナルコンピュータ103に所定のデータ処理を行う段階で接続し、シンクライアントとして対応させる部分である。断片化データ集計部127は、図6に示したグリッドコンピューティングシステム108に参加する録画装置104等のデータ処理装置から送られてくる断片化されたデータを集計して、まとまったデータに統合する部分である。
【0027】
ディスプレイ128は、液晶ディスプレイ等の表示装置から構成され、データ処理の結果等の視覚的な情報を表示する。操作入力部129は、キースイッチやポインティングデバイスからなり、ユーザ側の操作を入力するデバイスである。基本機能部130は、ユーザ端末101としてのその他の機能をまとめたものである。たとえば、ユーザ端末101が携帯電話機の場合には、通話のためのスピーカやマイクロフォン、カメラ等の回路部品の総称となる。
【0028】
図8は、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータの機能的な構成を表わしたものである。図6と共に説明する。パーソナルコンピュータ103は、CPU141と、このCPU141が実行する各種プログラムを格納したメモリ142を備えた主制御部143を有している。主制御部143は、データバス等のバス144を通じてパーソナルコンピュータ103内の各部を制御する。このうち、通信制御部145は、図6に示したネットワーク接続機器102を介してユーザ端末101やグリッドコンピューティングに参加する録画装置104等のデータ処理装置と通信を行う。
【0029】
ユーザ端末管理部146は、本実施の形態のデータ処理システムを実現するためにユーザ端末101についての各種の管理を実行する。グリッドコンピューティング構成部147は、本実施の形態でネットワーク接続機器102と接続して、グリッドコンピューティングによってデータ処理に参加するデータ処理装置を登録すると共に、これらの管理を行う。これらのデータ処理装置は、狭義には録画装置104、エアーコンディショナ105およびゲーム端末106であるが、ネットワーク接続機器102を介してLAN(Local Area Network)やインターネットに接続された他のデバイスも含めてよい。更に、グリッドコンピューティングによってデータ処理に参加する通信機器には、ネットワーク接続機器102自体や、この図に示していないがネットワーク接続機器102に接続された他のユーザ端末を含めてもよい。たとえば本実施の形態のデータ処理システム100が家庭内で使用されるものであるとすると、ユーザ端末101以外の家族のユーザ端末(携帯電話機)もグリッドコンピューティングを構成するデータ処理装置としてデータ処理に参加させることができる。
【0030】
作業実行部148は、シンクライアントサーバとしてユーザ端末101の本来処理すべきデータ処理を代わって実行する部分である。操作内容判別部149は、ユーザ端末101でユーザが行ったデータ処理のための操作内容をソフトウェアとの関係でチェックする。そして、ユーザ端末101の操作により生じるデータ処理をユーザ端末101自体が行うべきものか、シンクライアントサーバ等の他のデータ処理手段が行うべきものかを判別する。
【0031】
この判別の基準の1つは、ユーザ端末101のみがデータ処理を行った場合に、不都合な遅延が生じるか否かである。たとえば、リアルタイム性のある音楽の再生をユーザ端末101が行うものとする。このためのデータ処理をユーザ端末101からシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103に依頼したとする。すると、パーソナルコンピュータ103がユーザ端末101からデータを受け取って処理し、これをユーザ端末101に返す処理が行われることになり、処理時間に遅延が生じてリアルタイム性が害される危険がある。したがって、時間当たり比較的少量の処理データが発生する場合には、ユーザ端末101自体のみで処理を行うことが好ましい。
【0032】
ところが、リアルタイム性のある音楽の再生のためのデータであっても、時間当たり大量のデータが発生したとすると、ユーザ端末101のみで処理を行うと大幅な遅延が生じる場合がある。このような場合には、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103に処理を依頼した方が処理の時間的な変動がなくなり、処理が安定することになる。また、時間当たりのデータ量が更に増加したような場合には、グリッドコンピューティングシステムを活用して、録画装置104等の他のデータ処理装置までデータ処理に参加させた方が好ましい結果が得られる場合がある。
【0033】
この一方で、文書の作成やメモ帳の編集の際のデータ処理のようにリアルタイム性がそれほど要求されない場合には、ユーザ端末101がパーソナルコンピュータ103にデータ処理の代行を依頼しても不都合が生じることが少ない。もちろん、そのようなリアルタイム性が低い場合であっても、時間当たり大量にデータ処理が発生する場合には、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103に処理を依頼することは有効である。グリッドコンピューティングシステムを活用することも同様に有効である。
【0034】
本実施の形態では、家庭や小さな事業所に存在するデータ処理装置だけでシンクライアントサーバやグリッドコンピューティングシステムを実現し、ユーザ端末101の負荷の軽減と、データ処理の迅速化を図ることにしている。これについては、後に具体例を説明する。パーソナルコンピュータ103の構成部品の説明に戻る。
【0035】
データ量判別部150は、ユーザ端末101がデータ処理を行うべきかの判断基準の1つとなる時間当たりの処理するデータ量を判別する。処理作業選択部151は、ユーザ端末101側で発生したデータ処理をどのデバイスが行うかの判別を行う。作業結果管理部152は、パーソナルコンピュータ103が行ったデータ処理の結果をユーザ端末101に送信する管理を行う。データ断片化部153は、グリッドコンピューティングに参加する録画装置104等の他のデータ処理装置に処理データを分割して割り当てるために、処理データを断片化する部分である。
【0036】
図9は、グリッドコンピューティングに参加する録画装置の機能的な構成を表わしたものである。本実施の形態では、録画装置104、エアーコンディショナ105およびゲーム端末106を狭義のグリッドコンピューティングに参加させているが、これらの基本的な構成は実質的に同一である。そこで、図9では録画装置104の構成のみを示し、エアーコンディショナ105およびゲーム端末106の構成の図示および説明は省略する。
【0037】
録画装置104は、CPU161と、このCPU161が実行する各種プログラムを格納したメモリ162を備えた主制御部163を有している。主制御部163は、データバス等のバス164を通じて録画装置104内の各部を制御する。このうち、通信制御部165は、図6に示したネットワーク接続機器102を介してユーザ端末101等の各種のデバイスと通信を行う。
【0038】
作業実行部166は、グリッドコンピューティングに参加する通信装置としてユーザ端末101側のデータ処理を実行する部分である。作業結果管理部167は、録画装置104が行ったデータ処理の結果をユーザ端末101に送信する管理を行う。録画装置104が行ったデータ処理の結果は、図8に示したシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103がとりまとめてユーザ端末101に送信してもよい。本実施の形態では、図7に示したユーザ端末101に断片化データ集計部127を設けており、個々のデータ処理装置が単独に断片化した処理データの処理結果を送信できるようにしている。
【0039】
基本機能部168は、録画装置104としてのその他の機能をまとめたものである。たとえば、テレビジョン用のチューナやDVD(Digital Versatile Disc)等の記憶媒体に対するデータの読出部や書込部の総称となる。図6に示したエアーコンディショナ105等の他のデータ処理装置も、それぞれ独自の基本機能部を備えることになる。
【0040】
ところで本実施の形態のデータ処理システム100では、既に説明したようにソフトウェアの種類と処理するデータ量との関係から、所定の場合にユーザ端末101が本来行う処理をシンクライアントサーバ等のデータ処理装置が代行する。ここでは、説明を分かりやすくするために、ユーザ端末101が携帯電話機である場合を考える。携帯電話機は、その機能が高度化しているものの、データ処理の能力は、デスクトップ型あるいはノート型のパーソナルコンピュータ103よりもかなり低い場合が一般的である。
【0041】
そこで携帯電話機が幾つかのソフトウェアを並行して処理しているとき、あるいはこのような処理が併存する可能性があるときには、シンクライアントサーバ等のデータ処理装置を用いて処理を分散することが有効である。
【0042】
図10は、本実施の形態における各装置のデータ処理の分担の大枠を示したものである。ここでは、図6に示すユーザ端末101がネットワーク接続機器102に接続されていることを前提とする。
【0043】
ユーザ端末101が実行する可能性のあるソフトウェアをリアルタイム性の高いソフトウェアと、リアルタイム性の低いソフトウェアに2分する。リアルタイム性の高いソフトウェアは、動画の再生や音楽の再生を行うようなソフトウェアである。リアルタイム性の低いソフトウェアは、文書の作成を行うようなソフトウェアである。これらの仕分けは、工場出荷時にユーザ端末101の性能に応じて初期設定しておき、ユーザの判断によって変更できるようにしておけばよい。ユーザが追加したソフトウェアについては、ユーザがどちらかに区分けする。区分けに際しては、必ずしもリアルタイムの要求度が高いか否かで判断せず、ユーザ端末101側で動作させたときに、より快適な使用が可能かを加味してもよい。
【0044】
リアルタイム性の高いソフトウェアとして区分けされたものについては、単位時間あたり扱うデータ量が小さいときユーザ端末101自体がこれを処理する。これは、ユーザ端末101からパーソナルコンピュータ103に処理データを送って、その結果をユーザ端末101に返送する時間的な遅延を排除するためである。ここでいうデータ量とは、処理データそのものの量と、ユーザが操作入力部129(図7)を操作する際に発生する操作データの量の合計値である。操作データは、たとえばメモ帳や動画再生ツールなどを動かすのに必要なデータ量をいう。
【0045】
しかしながら、処理データの量が増加すると共にユーザ端末101の処理が遅延する。そこで、データ量がある閾値を超えた「データ量中」の場合には、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103が処理を行う。更にデータ量が増加して他の閾値を超えた「データ量大」の場合には、パーソナルコンピュータ103だけでなく録画装置104等のデータ処理装置もデータ処理に参加する。
【0046】
リアルタイム性の低いソフトウェアとして区分けされたものについては、ユーザ端末101がデータ処理そのものを行わない。ユーザ端末101は、図7に示すシンクライアント対応部126や断片化データ集計部127でデータ処理の結果をまとめて、ディスプレイ128に表示したり、音声で出力する等の処理のみを行う。パーソナルコンピュータ103は、「データ量小」および「データ量中」の場合にリアルタイム性の低いソフトウェアのデータ処理を一手に引き受ける。そして、処理能力に限界が生じる「データ量大」の場合には、パーソナルコンピュータ103だけでなく録画装置104等のデータ処理装置もデータ処理に参加させる。「データ量小」、「データ量中」および「データ量大」の仕分けに使用する閾値は、リアルタイム性の高いソフトウェアと低いソフトウェアで別のものを使用してもよい。
【0047】
図11は、ユーザ端末によるソフトウェアの初期設定の様子を表わしたものである。この処理は、図7に示すユーザ端末101のメモリ122に格納された制御プログラムを実行することで実現する。図6および図7と共に説明する。
【0048】
ユーザ端末101はユーザの操作によって処理ソフト設定モードに設定されたら(ステップS201:Y)、ユーザによるソフトウェアの名称と、リアルタイム性の有無(高低)とデータ量の閾値(2種類)の入力が可能な状態となる(ステップS202)。主制御部123は、この状態で操作入力部129の図示しない登録キーと中止キーのいずれが押下されるかを待機している(ステップS203、ステップS204)。ユーザが登録を中止する中止キーを押したことを検出した場合(ステップS203:N、ステップS204:Y)、主制御部123は登録を行うことなく、処理を終了する(エンド)。
【0049】
一方、ユーザが登録キーを押下したことが検出された場合(ステップS203:Y)、主制御部123はステップS202で入力されたソフトウェアの名称とリアルタイム性の有無およびデータ量の閾値(2種類)をシンクライアントサーバに送信する(ステップS205)。シンクライアントサーバは、パーソナルコンピュータ103である。
【0050】
この時点でディスプレイ128には、次の登録のための入力を行うか、処理を終了するかを問う表示が行われる(ステップS206、ステップS207)。ユーザが次の登録のための入力を選択したことが検出された場合(ステップS206:Y)、処理がステップS202に戻る。ユーザが処理を終了することを選択した場合には(ステップS206:N、ステップS207:Y)、処理ソフト設定モードが終了する(エンド)。
【0051】
図12は、シンクライアントサーバ側のソフトウェア初期設定処理の様子を表わしたものである。この処理は、図8に示すシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103のメモリ142に格納された制御プログラムを実行することで実現する。図6および図8と共に説明する。
【0052】
通信制御部165は各種のデータを受信するが、図11で説明した処理ソフト設定用データを受信すると(ステップS231:Y)、図12のステップS205で送信されてきたソフトウェアの名称とリアルタイムの有無(高低)および2種類の閾値をユーザ端末管理部146の該当するユーザ端末の記憶領域に登録して(ステップS232)、処理が終了する(エンド)。このとき、同じソフトウェアについて登録されたデータがあれば、これを上書きする。これにより、ユーザによるデータの修正が可能になる。なお、ステップS231で、受信したデータが処理ソフト設定用データでない場合(N)、そのデータの種類に応じた他の処理が実行されることになる。
【0053】
図13は、ユーザ端末管理部におけるユーザ端末の記憶領域の一部を表わしたものである。図8に示したユーザ端末管理部146には、ユーザ端末101ごとに、ソフトウェア名称と、リアルタイム性の有無と、2種類の閾値としての第1および第2の閾値が書き込まれる。たとえば、図6で説明しているユーザ端末101がユーザ端末Xであるものとする。文書作成ソフトウェアAについては、リアルタイム性がなし(無)とされる。この場合には、「データ量小」と「データ量中」の間を仕切る第1の閾値は設定されない。これは、「データ量小」と「データ量中」の双方の場合にシンクライアントサーバが処理を行うからである。「データ量中」と「データ量大」の間を仕切る第2の閾値は、デフォルト値あるいはユーザの入力したTHAHに設定される。表計算ソフトウェアBについても同様に第2の閾値THBHが設定される。
【0054】
動画再生ソフトウェアCについては、リアルタイム性がある(有)と設定されている。また、この場合には、「データ量小」と「データ量中」の間を仕切る第1の閾値THCLと「データ量中」と「データ量大」の間を仕切る第2の閾値THCHが設定されている。音楽再生ソフトウェアDについてもリアルタイム性がある(有)と設定され、また、第1の閾値THDLと第2の閾値THDHが設定されている。
【0055】
図14は、以上のように初期設定が行われた後のシンクライアントサーバのユーザ端末に対するデータ処理の様子を表わしたものである。図6〜図8および図13と共に説明する。
【0056】
ユーザ端末101は、予め定めたソフトウェアを起動すると、これを実行するに際してネットワーク接続機器102を介してシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103に接続する。この状態で、ユーザがユーザ端末101の操作入力部129を操作すると、これに伴って処理データがシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103に送られてくる。これらの処理データは、「.doc」、「.xls」、「.txt」のような拡張子の種類によって、どのソフトウェアが使用されるかを判別することができる。
【0057】
パーソナルコンピュータ103が処理データを受信すると(ステップS251:Y)、データ量判別部150がその処理データについてのデータ量を判別する(ステップS252)。処理作業選択部151は、そのデータファイルに付された拡張子を基にして、ユーザ端末101が使用しているソフトウェアを判別し、ユーザ端末管理部146の記憶領域に格納されている第1および第2の閾値を基にして、データ処理を行う場所を判別する(ステップS253)。そして、判別した場所でデータ処理が行われるようにアレンジする(ステップS254、ステップS255)。
【0058】
たとえば、パーソナルコンピュータ103に送られてきたファイルの拡張子が「.doc」でこれが文書作成ソフトウェアAを示しているとする。この場合には、ユーザ端末管理部146の記憶領域に格納されている記憶内容より第2の閾値THAHが読み出される。そして、文書作成ソフトウェアAのデータ量が第2の閾値THAH以下であればシンクライアントとしてのパーソナルコンピュータ103のみがデータ処理を行う(ステップS254:N、ステップS255:Y、ステップS256)。そして、作業結果をパーソナルコンピュータ103からユーザ端末101に送信して(ステップS257)、シンクライアントサーバとしての処理を終了する(リターン)。
【0059】
次に、拡張子が「.avi」に代表される動画ファイルがユーザ端末101からパーソナルコンピュータ103に送信された場合を説明する。拡張子が「.avi」の処理データをパーソナルコンピュータ103が受信すると(ステップS251:Y)、データ量判別部150が処理データのデータ量を判別する(ステップS252)。処理作業選択部151は、拡張子「.avi」からこれが動画再生ソフトウェアCであると判別し、これをどの場所で処理するかを判別する(ステップS253)。
【0060】
まず、処理データのデータ量が第1の閾値THCL以下であった場合には、ユーザ端末101で処理を行うものと判別する(ステップS254:Y)。この場合、処理データを受信したパーソナルコンピュータ103はデータ処理を行わない。そこでパーソナルコンピュータ103は、ユーザ端末101にその処理データを返送(または廃棄)して、その処理を行うことを指示して(ステップS258)、処理をステップS251に戻す(リターン)。
【0061】
次に、拡張子が「.avi」に代表される動画ファイルのデータ量が第1の閾値THCLを超えて、かつ第2の閾値THCH以下である場合を説明する。この場合、処理作業選択部151はシンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103のみが処理を行うものと判別する(ステップS254:N、ステップS255:Y)。したがって、この場合にはステップS256でデータ処理が行われ、その作業結果がユーザ端末101に送信されることになる(ステップS257)。
【0062】
最後に、拡張子が「.avi」に代表される動画ファイルのデータ量が第2の閾値THCHも超えている場合を説明する。この場合、処理作業選択部151はパーソナルコンピュータ103だけでなく、録画装置104、エアーコンディショナ105およびゲーム端末106もデータ処理の対象にする(ステップS255:N)。そこで、データ断片化部153は、CPUを備えグリッドコンピューティングに参加するこれらのデータ処理装置に対して、それぞれの処理能力に応じて断片化された処理データを送信して(ステップS259)、処理をステップS251に戻す(リターン)。この例の場合、録画装置104、エアーコンディショナ105およびゲーム端末106は、それぞれの作業結果を、ネットワーク接続機器102を介してユーザ端末101に送信することになる。
【0063】
図15は、ユーザ端末が他のデータ処理装置のデータ処理結果を受信する処理の様子を表わしたものである。図6および図7と共に説明する。
【0064】
ユーザ端末101は、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103あるいはグリッドコンピューティングに参加する録画装置104等のデータ処理装置からのデータ処理の結果の受信を待機している(ステップS271)。データ処理の結果を受信したら(Y)、それがひとまとまりのデータを断片化した断片化データであるかをそのデータに付加された付加データから判別する(ステップS272)。本実施の形態では、パーソナルコンピュータ103のみがユーザ端末101の送信したデータを一手に引き受けてデータ処理を行う場合には、これが分かる付加データを付加してユーザ端末101に送信するようになっている。また、グリッドコンピューティングシステムで複数のデータ処理装置が断片化してデータ処理を行う場合には、これが分かる他の付加データを付加してユーザ端末101に送信するようになっている。
【0065】
ユーザ端末101が受信したデータが断片化データではなかった場合(ステップS272:Y)、シンクライアント対応部126は受信データをユーザ端末101がデータ処理したはずの処理結果として置き換える(ステップS273)。そして、この得られたデータ処理の結果を基にしてディスプレイ128に表示を行ったり、基本機能部130の図示しないスピーカを駆動して音声を出力する等の出力処理を行って(ステップS274)、処理をステップS271に戻す(リターン)。これにより、ユーザ端末101は該当するソフトウェアをユーザ端末101自体が実行しているのと同様の出力処理を実現することができる。
【0066】
一方、主制御部123がステップS272で断片化データを受信していると判別した場合、断片化データ集計部127が受信した断片化データを集計する処理を行う(ステップS275)。具体的には、パーソナルコンピュータ103や録画装置104、エアーコンディショナ105あるいはゲーム端末106から順次受信される断片化データをメモリ122のバッファ領域に順次格納して繋ぎ合わせる。そして、処理の対象となる所定単位のデータの集計が終了していない場合は(ステップS276:N)、ステップS271に戻って処理を待機することになる。処理の対象となる所定単位のデータの集計が終了したら(ステップS276:Y)、その所定単位のデータとしての受信データを自端末の処理結果として置き換える(ステップS273)。このようにして得られたデータ処理の結果を基にして出力処理を行うことになる(ステップS274)。
【0067】
以上のようにして、シンクライアントサーバのみを使用した場合でも、グリッドコンピューティングシステム108を使用した場合でも、ユーザ端末101が単独でデータ処理を行ったと同一のデータ処理を実現することができる。しかも、本実施の形態ではグリッドコンピューティングシステム108としてパーソナルコンピュータ103以外のリソース(データ処理装置)を併用することで、サーバの能力に縛られないシンクライアント機能を提供することができる。
【0068】
また、本実施の形態のデータ処理システム100では、家庭や小規模な事業所でシンクライアント機能を活用しようとしたときに負荷が高い作業が発生しても、作業内容に応じて家庭や事業所内のデータ処理装置を全体的に活用することで、最適なデータ処理を得ることができる。
【0069】
更に本実施の形態でグリッドコンピューティングシステム108を活用する場合には、パーソナルコンピュータ103上ですべての処理を行わず、他のデータ処理装置との間でデータ処理が分散される。このため、データの全体像が把握しにくくなり、情報漏洩のリスクが減少する。もちろん、家庭内や事業所内といった閉じた通信ネットワークでデータ処理を行うことができるので、この点でもセキュリティを確保することができる。
【0070】
この一方で、インターネット等の通信ネットワークを利用して、たとえば動画の再生を行う場合、動画をサーバ上で処理しユーザ端末101に返すとなると、ユーザ端末101上での画面表示がスムーズに行われないといった問題が生じる。本実施の形態では、動画の操作はユーザ端末101上で行う。これによりサーバ上で行った際の問題を解消することができる。ただし、動画の再生をユーザ端末101上で行う場合、動画のデータ容量が大きかったりするとやはり負荷が大きく、動作が遅くなることがある。そこで、動画のデータ容量が小さいものはユーザ端末101上で処理を行うが、大容量の動画に関してはグリッドコンピューティングシステムを使用し、データ処理の手助けをする。これにより、ユーザ端末101上でも問題なく動画の再生を行うことができる。
【0071】
なお、以上説明した実施の形態では、ユーザがユーザ端末101の初期設定を行って、ユーザ端末101がネットワーク接続機器102に接続した後のユーザによる操作を自動化したが、これに限るものではない。たとえば、ユーザがネットワーク接続機器102に接続してソフトウェアの選択を行うたびに、データ処理を代行するシンクライアントサーバやグリッドコンピューティングシステムとして使用するデータ処理装置を指定するようにしてもよい。このような指定は、シンクライアントサーバとしてのパーソナルコンピュータ103上で行うことも可能である。シンクライアントサーバ上でユーザ端末101のデータ処理を代行する操作を行う場合には、そのままその作業に移ればよい。
【0072】
<発明の変形可能性>
【0073】
図16は、本発明のデータ処理システムの一変形例を表わしたものである。この変形例のデータ処理システム300では、図6に示したグリッドコンピューティングシステム108と同様の構成の第1〜第Mのグリッドコンピューティングシステム1081〜108Mを備えている。ユーザ端末101と有線または無線で接続された自装置側データ処理装置301は、第1〜第Mのグリッドコンピューティングシステム1081〜108Mにおけるネットワーク接続機器1021〜102Mと有線または無線で接続されている。自装置側データ処理装置301は、先の実施の形態におけるパーソナルコンピュータ103としての機能と、ネットワーク接続機器1021〜102Mと通信する機能を備えている。自装置側データ処理装置301は、必ずしも第1〜第Mのグリッドコンピューティングシステム1081〜108Mとスター状に接続している必要はない。図示しないLANケーブルを介して、自装置側データ処理装置301と各ネットワーク接続機器1021〜102Mが並列に接続していてもよい。
【0074】
この変形例のデータ処理システム300でユーザ端末101は、自装置側データ処理装置301をシンクライアントサーバとして用いて自身のデータ処理の少なくとも一部を代行させることができる。自装置側データ処理装置301は、自身の処理能力との関係で第1〜第Mのグリッドコンピューティングシステム1081〜108Mに、少なくとも一部のデータ処理を代行させることができる。
【0075】
この変形例のデータ処理システム300では、このようにユーザ端末101が大規模なグリッドコンピューティングのネットワークに接続するので、処理能力の一層の向上と安定化を実現することができる。
【0076】
なお、以上説明した実施の形態では、インターネット等の広域の通信ネットワークに接続されないデータ処理システムを説明したが、広域の通信ネットワークに接続することが可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
10、100、300 データ処理システム
11 通信端末
11a 操作入力手段
11b データ送信手段
11c 処理結果受信手段
11d 出力手段
12 第1のデータ処理装置
12a データ受信手段
12b 処理結果出力手段
12c 処理結果送信手段
20、30 データ処理方法
21、31 処理データ受信ステップ
22、33 処理結果出力ステップ
23 処理結果送信ステップ
32 分担適否判別ステップ
34 断片化データ送信手段
40、50 データ処理プログラム
41、51 処理データ受信処理
42、53 処理結果出力処理
43、54 処理結果送信処理
52 分担適否判別処理
55 断片化データ送信処理
101 ユーザ端末
102 ネットワーク接続機器
103 パーソナルコンピュータ(シンクライアントサーバ)
104 録画装置
105 エアーコンディショナ
106 ゲーム端末
108 グリッドコンピューティングシステム
121、141、161 CPU
122、142、162 メモリ
123、143、163 主制御部
125、145、165 通信制御部
126 シンクライアント対応部
127 断片化データ集計部
129 操作入力部
146 ユーザ端末管理部
147 グリッドコンピューティング構成部
148、166 作業実行部
150 データ量判別部
151 処理作業選択部
152、167 作業結果管理部
153 データ断片化部
301 自装置側データ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のアプリケーションソフトウェアが起動した状態で入力操作を受け付ける操作入力手段と、この操作入力手段により受け付けた操作データおよびこれに付帯する処理データが存在する場合のその処理データを特定の宛先に送信するデータ送信手段と、操作データの処理結果を受信する処理結果受信手段と、この処理結果受信手段により受信した処理結果を自装置の処理結果として出力する出力手段とを備えた通信端末と、
この通信端末の前記データ送信手段から送られてきた操作データおよびこれに付帯する処理データが存在する場合のその処理データを受信するデータ受信手段と、このデータ受信手段の受信したデータを用いて前記所定のアプリケーションソフトウェアの起動の下でデータ処理を行い処理結果を出力する処理結果出力手段と、この処理結果出力手段の出力する処理結果を前記通信端末に送信する処理結果送信手段とを備えた第1のデータ処理装置
とを具備することを特徴とするデータ処理システム。
【請求項2】
前記第1のデータ処理装置は、前記データ受信手段の受信したデータの少なくとも一部を通信ネットワーク上の他のデータ処理装置としての所定数の第2のデータ処理装置に送信してデータ処理を代行させるデータ処理再代行手段を具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項3】
前記通信端末の前記処理結果受信手段は、前記第2のデータ処理装置のそれぞれに割り当てられたデータ処理の結果を個別に受信する処理結果個別受信手段と、この処理結果個別受信手段の受信したデータ処理の結果を集計する集計手段を具備することを特徴とする請求項2記載のデータ処理システム。
【請求項4】
前記データ受信手段の受信したデータの量を予め定めた閾値と比較するデータ量比較手段と、このデータ量比較手段の比較したデータ量が前記閾値を超えるとき前記第2のデータ処理装置に前記データ受信手段の受信したデータの少なくとも一部を送信する処理データ分配手段を具備することを特徴とする請求項2記載のデータ処理システム。
【請求項5】
前記第1のデータ処理装置は、前記データ受信手段によって受信したデータがリアルタイムに処理結果を出力する必要があるものとして予め設定した特定のアプリケーションソフトウェアに係わるときそのデータ量の多少に応じてデータ処理を行うか否かを判別するデータ処理適否判別手段を具備することを特徴とする請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項6】
通信ネットワークに接続された所定の通信端末からアプリケーションソフトウェアを特定した処理データを受信する処理データ受信ステップと、
この処理データ受信ステップで受信した処理データを前記アプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力ステップと、
この処理結果出力ステップで出力した処理結果を前記所定の通信端末に送信する処理結果送信ステップ
とを具備することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項7】
アプリケーションソフトウェアを特定した処理データを通信ネットワークに接続された所定の通信端末から受信する処理データ受信ステップと、
この処理データ受信ステップで受信した処理データを前記所定の通信端末以外の他の任意数の通信端末に処理を分担させるか否かを判別する分担適否判別ステップと、
この分担適否判別ステップで分担させないと判別したとき前記アプリケーションソフトウェアを起動させて処理し前記処理データ受信ステップで受信した全処理データについて処理結果を出力する一方、分担させると判別したときでその一部を分担させるときには残りの処理データを前記アプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力ステップと、
この処理結果出力ステップで出力した処理結果を前記所定の通信端末に送信する処理結果送信ステップと、
前記分担適否判別ステップで分担を行うと判別したとき前記処理データ受信ステップで受信した全処理データを前記任意数の通信端末に断片化して送信しこれらの処理を行わせる断片化データ送信手段
とを具備することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
通信ネットワークに接続された所定の通信端末からアプリケーションソフトウェアを特定した処理データを受信する処理データ受信処理と、
この処理データ受信処理で受信した処理データを前記アプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力処理と、
この処理結果出力処理で出力した処理結果を前記所定の通信端末に送信する処理結果送信処理
とを実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
アプリケーションソフトウェアを特定した処理データを通信ネットワークに接続された所定の通信端末から受信する処理データ受信処理と、
この処理データ受信処理で受信した処理データを前記所定の通信端末以外の他の任意数の通信端末に処理を分担させるか否かを判別する分担適否判別処理と、
この分担適否判別処理で分担させないと判別したとき前記アプリケーションソフトウェアを起動させて処理し前記処理データ受信処理で受信した全処理データについて処理結果を出力する一方、分担させると判別したときでその一部を分担させるときには残りの処理データを前記アプリケーションソフトウェアを起動させてその処理結果を出力する処理結果出力処理と、
この処理結果出力処理で出力した処理結果を前記所定の通信端末に送信する処理結果送信処理と、
前記分担適否判別処理で分担を行うと判別したとき前記処理データ受信処理で受信した全処理データを前記任意数の通信端末に断片化して送信しこれらの処理を行わせる断片化データ送信処理
とを実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−108087(P2011−108087A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263874(P2009−263874)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】