説明

データ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラム

【課題】FAXデータの転送先である端末装置の画面サイズが小さい場合でも、ユーザにFAXデータの内容を認識させることができるデータ処理装置を提供する。
【解決手段】複合機では、ファクシミリ通信によってFAXデータが受信されると(S1)、FAXデータの画像解析が行われる(S7)。FAXデータから有効範囲が特定され(S9:YES)、且つ、その有効範囲が閾値以上であれば(S11:YES)、FAXデータの余白削除および画像合成が行われたのち(S13、S15)、FAXデータの内容をスクロール表示する動画ファイルが生成される(S17)。動画ファイルが添付された電子メールが、転送先の端末装置に送信される(S23)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ通信によって受信した画像データを、他の端末装置に転送可能なデータ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリ通信によって受信した画像データ(以下、FAXデータ)を、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの小型端末に転送可能なファクシミリ装置が知られている。例えば、このようなファクシミリ装置は、FAXデータを小型端末で表示可能な静止画フォーマット(例えば、PDF、JPEG、TIFFなど)に変換し、その変換済データを電子メールの添付ファイルとして小型端末に転送する。小型端末のユーザは、ファクシミリ装置から受信した電子メールの添付ファイルを展開することで、FAXデータの内容を適宜閲覧することができる。
【0003】
一般に、小型端末の画面サイズは、FAXデータの一般的な原稿サイズ(例えば、A4)と比べて小さい。小型端末でFAXデータの内容を閲覧する場合、ユーザはキー操作によって画面をスクロールさせる必要があり、煩雑であった。そこで、FAXデータを電子メールで転送する場合に、FAXデータのサイズ変更やデータ圧縮を行うようにした画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−141023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の画像処理装置では、小型端末でFAXデータの全体表示が可能となる。しかしながら、小型端末でFAXデータの全体表示が行われた場合、画面上に表示される絵柄や文字などのサイズが小さくなる。この場合、ユーザは、FAXデータの詳細な内容を認識できないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、FAXデータの転送先である端末装置の画面サイズが小さい場合でも、ユーザにFAXデータの内容を認識させることができるデータ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るデータ処理装置は、ファクシミリ通信によって画像データを受信するデータ受信手段と、前記データ受信手段によって前記画像データが受信された場合、前記画像データの所定範囲を所定方向にスクロール表示する動画ファイルを生成するデータ生成手段と、前記データ生成手段によって生成された前記動画ファイルを、外部の端末装置が接続可能な記憶手段に保存する処理、および、ネットワークを介して前記端末装置に送信する処理の少なくとも一方を実行するデータ出力手段とを備えている。
【0008】
第1態様によれば、ファクシミリ通信によって画像データが受信されると、画像データをスクロール表示する動画ファイルが生成されて、記憶手段および端末装置の少なくとも一方に出力される。端末装置にて動画ファイルが再生されると、画像データの所定範囲が所定方向にスクロール表示される。したがって、端末装置の画面サイズが小さい場合でも、画面をスクロールさせる操作の負担を抑制しつつ、ユーザに画像データの内容を認識させることができる。
【0009】
第1態様において、前記画像データのボディ部に含まれる余白部分を特定し、前記ボディ部のうちで前記余白部分とは異なる部分を前記所定範囲に設定する範囲設定手段を備えてもよい。これによれば、動画ファイルは、画像データのボディ部に含まれる余白部分を除いた所定範囲をスクロール表示する。したがって、動画ファイルの再生時に表示される余白部分を小さくして、画面に表示されるボディ部の実データ部分を見やすくすることができる。
【0010】
第1態様において、前記範囲設定手段によって設定された前記所定範囲の画像サイズが所定値以上であるか否かを判断するサイズ判断手段を備え、前記データ生成手段は、前記サイズ判断手段によって前記所定範囲の画像サイズが前記所定値以上であると判断された場合に、前記動画ファイルを生成してもよい。これによれば、所定範囲の画像サイズがスクロール表示に適している場合に動画ファイルが生成されるため、端末装置で再生される動画ファイルを見やすくすることができる。
【0011】
第1態様において、前記画像データは、行単位で構成された文字情報を含む文書データであり、前記画像データに含まれる前記文字情報が横書きおよび縦書きのいずれであるかを判断する文字状態判断手段を備え、前記データ生成手段は、前記文字状態判断手段によって横書きであると判断された場合に、左右方向にスクロール表示する前記動画ファイルを生成する一方、前記文字状態判断手段によって縦書きであると判断された場合に、上下方向にスクロール表示する前記動画ファイルを生成してもよい。これによれば、動画ファイルは、画像データに含まれる文字情報を横書きまたは縦書きに応じた方向でスクロール表示する。したがって、動画ファイルの再生時に、ユーザは文字情報を読み取るために視線を動かす必要がなく、画像データの内容を容易に認識することができる。
【0012】
第1態様において、前記データ生成手段は、前記所定範囲を全て表示するまで、前記所定方向と直交する方向に表示範囲を順次移動させながら、前記所定方向へのスクロール表示を繰り返す前記動画ファイルを生成し、前記動画ファイルの表示範囲は、複数行の前記文字情報を含み、且つ、少なくとも前回または次回の前記所定方向へのスクロール表示で表示される前記文字情報の一部を含んでもよい。これによれば、動画ファイルは、少なくとも前回または次回のスクロール表示で表示される文字情報の一部が含めて、複数行の文字情報をスクロール表示する。したがって、動画ファイルの再生時に、ユーザは現在のスクロール表示の対象となっている行と併せて前後の行を目視できるため、画像データの内容を容易に認識することができる。
【0013】
第1態様において、前記端末装置の画面サイズを含む表示画面条件を記憶する条件記憶手段と、前記データ受信手段によって前記画像データが受信された場合、前記画像データの転送先となる前記端末装置に対応する前記表示画面条件を、前記条件記憶手段から取得する条件取得手段とを備え、前記データ生成手段は、前記条件取得手段によって取得された前記表示画面条件に含まれる前記画面サイズに応じて、前記動画ファイルを生成してもよい。これによれば、端末装置の画面サイズがスクロール表示に適している場合に動画ファイルが生成されるため、端末装置で再生される動画ファイルを見やすくすることができる。
【0014】
第1態様において、前記条件取得手段によって取得された前記表示画面条件に含まれる前記画面サイズで、前記画像データの全体を表示可能な全体画像を生成する全体画像生成手段を備え、前記データ生成手段は、前記全体画像生成手段によって生成された前記全体画像を含む前記動画ファイルを生成してもよい。これによれば、ユーザは動画ファイルの再生時に全体画像を参照することで、画像データの全体的な構成を把握することができる。
【0015】
第1態様において、前記データ出力手段は、前記画像データのヘッダ部に含まれる識別情報を、前記動画ファイルの識別情報として付与してもよい。これによれば、ユーザは動画ファイルの識別情報を参照することで、画像データのヘッダ部の内容を把握することができる。
【0016】
第1態様において、送信元の識別情報である送信元情報を記憶する送信元記憶手段と、前記画像データのヘッダ部に含まれる前記送信元情報が、前記送信元記憶手段に記憶されているか否かを判断する送信元判断手段とを備え、前記データ生成手段は、前記送信元判断手段によって前記送信元情報が記憶されていると判断された場合に、前記動画ファイルを生成してもよい。これによれば、画像データの送信元に対応する送信元情報が登録されている場合に、動画ファイルが生成される。したがって、ユーザとの関係で重要な送信元から受信した画像データを、ユーザは動画ファイルとして閲覧することができる。
【0017】
第1態様において、前記データ出力手段は、前記動画ファイルを添付した電子メール、または、前記動画ファイルに接続可能なアドレス情報を含む電子メールを、前記端末装置に送信してもよい。これによれば、電子メールを受信可能な端末装置に、動画ファイルを出力することができる。
【0018】
本発明の第2態様に係るデータ処理方法は、ファクシミリ通信によって画像データを受信するデータ受信ステップと、前記データ受信ステップによって前記画像データが受信された場合、前記画像データの所定範囲を所定方向にスクロール表示する動画ファイルを生成するデータ生成ステップと、前記データ生成ステップによって生成された前記動画ファイルを、外部の端末装置が接続可能な記憶手段に保存する処理、および、ネットワークを介して前記端末装置に送信する処理の少なくとも一方を実行するデータ出力ステップとを備えている。
【0019】
第2態様によれば、ファクシミリ通信によって画像データが受信されると、画像データをスクロール表示する動画ファイルが生成されて、記憶手段および端末装置の少なくとも一方に出力される。端末装置にて動画ファイルが再生されると、画像データの所定範囲が所定方向にスクロール表示される。したがって、端末装置の画面サイズが小さい場合でも、画面をスクロールさせる操作の負担を抑制しつつ、ユーザに画像データの内容を認識させることができる。
【0020】
本発明の第3態様に係るデータ処理プログラムは、コンピュータを、ファクシミリ通信によって画像データを受信するデータ受信手段、前記データ受信手段によって前記画像データが受信された場合、前記画像データの所定範囲を所定方向にスクロール表示する動画ファイルを生成するデータ生成手段、前記データ生成手段によって生成された前記動画ファイルを、外部の端末装置が接続可能な記憶手段に保存する処理、および、ネットワークを介して前記端末装置に送信する処理の少なくとも一方を実行するデータ出力手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
第3態様によれば、ファクシミリ通信によって画像データが受信されると、画像データをスクロール表示する動画ファイルが生成されて、記憶手段および端末装置の少なくとも一方に出力される。端末装置にて動画ファイルが再生されると、画像データの所定範囲が所定方向にスクロール表示される。したがって、端末装置の画面サイズが小さい場合でも、画面をスクロールさせる操作の負担を抑制しつつ、ユーザに画像データの内容を認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るネットワークシステムの全体構成図である。
【図2】複合機1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】EEPROM23の記憶領域を示す図である。
【図4】第1実施形態のFAX転送処理を示すフローチャートである。
【図5】FAXデータ60の一例を示す図である。
【図6】FAXデータ60の有効範囲63を特定する場合を説明するための図である。
【図7】合成画像70の一例を示す図である。
【図8】動画化処理を示すフローチャートである。
【図9】合成画像70から文字情報を取り込む場合を説明するための図である。
【図10】第1実施形態のデータ受信処理を示すフローチャートである。
【図11】動画ファイル90の再生時における表示画像の流れを説明するための図である。
【図12】第2実施形態に係るネットワークシステムの全体構成図である。
【図13】第2実施形態のFAX転送処理を示すフローチャートである。
【図14】データ仲介処理を示すフローチャートである。
【図15】第2実施形態のデータ受信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0024】
本発明の第1実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。図1に示すように、第1実施形態に係るネットワークシステムでは、プリンタ、ファクシミリ、電話機、コピー機等の機能を併せ持つ複合機1が、公衆回線4およびLAN(Local Area Network)7に接続されている。複合機1は、公衆回線4を介して、FAX機2との間でファクシミリ通信を行ったり、電話機3との間で音声通信を行ったりすることができる。複合機1は、LAN7に接続されている端末装置(図1では、PC6)との間で、データ通信を行うことができる。
【0025】
さらに、複合機1は、LAN7を介して、インターネット8に接続可能である。複合機1は、インターネット8に接続されている端末装置(図1では、携帯電話5)との間で、電子メールなどのデータ通信を行うことができる。携帯電話5は、公知の携帯電話と同様であり、画面51および操作キー52の他、図示しないCPU、ROM、RAM、EEPROM、マイク、スピーカ、通信制御部などを備える。
【0026】
図2を参照して、複合機1について説明する。複合機1には、複合機1の制御を司るCPU20が設けられている。CPU20には、ROM21、RAM22、EEPROM23、液晶ディスプレイ(LCD)25、および操作キー26が、バスを介して接続されている。ROM21は、複合機1を動作させるための各種プログラム等を記憶する。ROM21に記憶されているプログラムは、CPU20に後述のFAX転送処理(図4参照)を実行させるプログラムを含む。RAM22は、各種のデータを一時的に記憶する。EEPROM23は、FAX機2から受信したFAXデータや、FAXデータの転送を行うか否かを示すフラグ情報(以下、FAX転送フラグ)などを記憶するが、詳細は後述する。
【0027】
CPU20には、LAN7に対する通信接続を制御するLANコントローラ29、紙媒体に印刷を行う記録部28、紙媒体から情報を読み取るスキャナ部24、および、音声信号とデジタルデータとを変換するモデム41が、バスを介して接続されている。モデム41には、公衆回線4に対する通信接続を制御する回線制御部42が接続されている。回線制御部42には、音声を入出力するハンドセット43が接続されている。
【0028】
本実施形態では、ユーザは操作キー26を用いて、複合機1にFAXデータの転送を行うか否かを設定することができる。例えば、ユーザは外出する際に操作キー26を用いて、複合機1にFAX転送モードを設定する。複合機1にFAX転送モードが設定されると、EEPROM23に記憶されているFAX転送フラグが「ON」にセットされる。複合機1は、一の端末装置からFAXデータを受信したときに、FAX転送フラグが「ON」に設定されていれば、そのFAXデータを他の端末装置に転送する。以下では、複合機1がFAX機2からFAXデータを受信した場合に、そのFAXデータが複合機1から携帯電話5に転送される場合を例示する。
【0029】
図3を参照して、EEPROM23が有する各種記憶領域のうち、FAXデータの転送に関する記憶領域について説明する。EEPROM23は、FAXデータ記憶エリア231、送信元情報記憶エリア232、転送先情報記憶エリア233、および変換済データ記憶エリア234を有している。FAXデータ記憶エリア231は、複合機1がファクシミリ通信によって受信したFAXデータを記憶する領域である。
【0030】
送信元情報記憶エリア232は、複合機1との間でファクシミリ通信が行われる端末装置に関する情報(以下、送信元情報と称する。)を記憶する領域である。複合機1は、送信元情報記憶エリア232に送信元情報が登録されている端末装置からFAXデータを受信した場合に、FAXデータの転送を実行する。ユーザは、FAXデータの送信元となる端末装置(以下、送信元端末と称する。)を、操作キー26を用いて送信元情報記憶エリア232に登録することができる。本実施形態では、FAX機2のユーザ名や電話番号などを示す送信元情報が、送信元情報記憶エリア232にあらかじめ登録されている。
【0031】
転送先情報記憶エリア233は、複合機1からFAXデータが転送される端末装置に関する情報(以下、転送先情報と称する。)を記憶する領域である。複合機1は、転送先情報記憶エリア233に転送先情報が登録されている端末装置に、FAXデータを転送する。ユーザは、FAXデータの転送先となる端末装置(以下、転送先端末と称する。)を、操作キー26を用いて転送先情報記憶エリア233に登録することができる。本実施形態では、携帯電話5のユーザ名、メールアドレス、画面サイズ(画面51の表示可能サイズ)、対応データ形式などを示す転送先情報が、転送先情報記憶エリア233にあらかじめ登録されている。
【0032】
本実施形態の複合機1は、FAXデータをそのまま携帯電話5に転送するのではなく、FAXデータを携帯電話5で表示するのに適したデータに変換し、その変換済データを携帯電話5に転送する。変換済データ記憶エリア234は、複合機1にて生成された変換済データを記憶する。変換済データについては、別途後述する。
【0033】
図4〜図9を参照して、第1実施形態に係る複合機1で実行されるFAX転送処理を説明する。FAX転送処理(図4)は、先述のFAX転送フラグが「ON」に設定されている状態において、送信元端末(本実施形態では、FAX機2)との間でファクシミリ通信が開始されると、CPU20によって実行される。
【0034】
図4に示すように、第1実施形態のFAX転送処理では、まずファクシミリ通信によってFAXデータが受信される(S1)。ステップS1で受信されたFAXデータは、FAXデータ記憶エリア231に保存される。本実施形態では、図5に示すFAXデータ60を、複合機1がFAX機2から受信する。FAXデータ60は、A4サイズの文書データであり、ヘッダ部61およびボディ部62を含む。ヘッダ部61は、送信日時、ページ番号、文書名などの関連情報を含む。ボディ部62は、文書本体を構成する部分であり、行単位で構成された文字情報を含む。
【0035】
ステップS1の実行後、FAXデータの送信元が、複合機1に登録されているか否かが判断される(S3)。具体的には、ステップS1で受信されたFAXデータの送信元端末に対応する送信元情報が、送信元情報記憶エリア232に記憶されているか否かが判断される。FAXデータの送信元が登録されていない場合(S3:NO)、FAX転送処理(図4)が終了される。つまり、未登録の送信元端末から受信したFAXデータは、例えばダイレクト広告やいたずら文書のように重要度が低いものと考えられるため、FAXデータの転送は行われない。
【0036】
一方、FAXデータの送信元が登録されている場合(S3:YES)、送信元端末のユーザは、例えば知人、友人、親族など、複合機1のユーザに関係のある人物であることを示す。この場合、転送先情報記憶エリア233に記憶されている転送先情報が、RAM22に読み出される(S5)。ステップS5に読み出された転送先情報が示す端末装置が、FAXデータの転送先に設定される。本実施形態では、送信元情報記憶エリア232にFAX機2の送信元情報が登録されているため、転送先情報記憶エリア233から携帯電話5の転送先情報が読み出され、携帯電話5がFAXデータ60の転送先に設定される。
【0037】
ステップS5の実行後、ステップS1で受信されたFAXデータの画像解析が実行される(S7)。ステップS7の画像解析では、公知の手法によって、FAXデータのヘッダ部およびボディ部が特定される。ボディ部について、文字方向(縦書きまたは横書き)、文字列数(つまり、行数)、余白部分などが特定される。ボディ部のうちで余白部分とは異なる部分(つまり、実データ部)が、FAXデータの有効範囲に設定される。本実施形態では、図6に示すように、FAXデータ60が画像解析されて、ボディ部62から余白部分を除いた文字情報の表示領域が有効範囲63に設定される。
【0038】
ステップS7の解析結果に基づいて、FAXデータの有効範囲が特定されたか否かが判定される(S9)。FAXデータの有効範囲が特定された場合(S9:YES)、その有効範囲が閾値以上であるか否かが判断される(S11)。具体的には、FAXデータの有効範囲の画像サイズが、ステップS5で読み出された転送先情報が示す画面サイズに対して所定比率(例えば、300%)以上であれば、その有効範囲は閾値以上であると判断される(S11:YES)。本実施形態では、FAXデータ60の有効範囲63の画像サイズは、携帯電話5の画面サイズに対して300%以上である。
【0039】
FAXデータの有効範囲が閾値以上である場合(S11:YES)、FAXデータに含まれる実データ部(すなわち、文字情報)の画像サイズが、携帯電話5の画面サイズに比べて非常に大きいことを示す。この場合、例えば携帯電話5がFAXデータを原サイズのままで画面51に表示すると、ユーザが操作キー52を用いて表示画面のスクロールさせる操作の負担が大きい。また、携帯電話5がFAXデータを縮小して画面51に表示すると、文字情報が小さくなりすぎて読み取りにくくなる。そこで、次のようにFAXデータの動画化に係る処理が実行される。
【0040】
すなわち、FAXデータのボディ部から余白部分が削除され(S13)、ボディ部の実データ部のみを含む画像が合成される(S15)。本実施形態では、図7に示すように、FAXデータ60のボディ部62(図5参照)から余白部分が削除されて、有効範囲63(図6参照)のみを含む合成画像70が生成される。ステップS15の実行後、FAXデータを動画化した動画ファイルを生成する動画化処理が実行されるが(S17)、詳細は後述する。
【0041】
一方、FAXデータの有効範囲が特定されなかった場合(S9:NO)、または、FAXデータの有効範囲が閾値未満である場合(S11:YES)、FAXデータを静止画化した静止画データを生成する静止画化処理が実行される(S19)。具体的には、FAXデータのデータ形式を、ステップS5で読み出された転送先情報が示す対応データ形式(例えば、JPEG形式、GIF形式、PDF形式など)に変換することで、FAXデータに対応する静止画データが生成される。ステップS19で生成された静止画データは、変換済データ記憶エリア234に変換済データとして保存される。
【0042】
ステップS17またはステップS19の実行後、電子メールの送信設定が実行される(S21)。具体的には、ステップS5で読み出された転送先情報が示すメールアドレスが、電子メールの送信先に設定される。ステップS7で特定されたヘッダ部の内容が、電子メールのタイトル名または変換済データのファイル名に設定される。ステップS17またはステップS19で生成された変換済データが、電子メールの添付ファイルに設定される。ステップS21の実行後、電子メールの送信が実行されて(S23)、FAX転送処理(図4)が終了される。
【0043】
本実施形態では、携帯電話5のメールアドレスが、電子メールの送信先に設定される。ヘッダ部61(図5参照)の内容が、電子メールのタイトル名に設定される。後述の動画ファイル90(図11参照)が、電子メールの添付ファイルに設定される。このように設定された電子メールは、複合機1から携帯電話5に送信される。
【0044】
図8を参照して、動画化処理(S17)の詳細について説明する。動画化処理(S17)では、まずEEPROM23に記憶されている変数Mに「0」が設定される(S51)。ステップS51の実行後、ステップS7の解析結果に基づいて、FAXデータの文字方向が特定され(S53)、FAXデータの行数が特定される(S55)。本実施形態では、FAXデータ60の解析結果に基づいて、文字方向「横書き」および行数「8」が特定される(図5参照)。
【0045】
ステップS55の実行後、FAXデータの全体画像が生成される(S57)。全体画像は、転送先端末が有する表示画面において、FAXデータの画像全体を表示可能な画像データである。具体的には、ステップS5で読み出された転送先情報が示す画面サイズに合わせて、FAXデータの画像サイズを縮小した画像データが生成される。本実施形態では、FAXデータ60の画像全体が携帯電話5の画面51に合わせて縮小表示される全体画像80(図11参照)が生成される。
【0046】
ステップS57で生成された全体画像が、N秒間(例えば、3秒)取り込まれる(S59)。具体的には、RAM22上に展開された全体画像が3秒間取り込まれて、その全体画像を3秒間表示する動画データが生成される。ステップS59で生成された全体画像の動画データは、EEPROM23に時系列で記録される。本実施形態では、全体画像80(図11参照)を3秒間表示する動画データが生成される。
【0047】
ステップS59の実行後、EEPROM23に記憶されている変数Mに「1」加算される(S61)。ステップS15で生成された合成画像のうち、「M」行目および「M+1」行目を含む画像領域が動画データとして取り込まれる(S63)。具体的には、ステップS63では以下の処理が実行される。
【0048】
まず、合成画像に含まれる2行分の文字情報(「M」行目および「M+1」行目)を1フレームとして取込可能な取込幅(つまり、合成画像の文字方向とは直交する方向の長さ)を有する画像取込範囲が設定される。RAM22上に展開された合成画像に対して、画像取込範囲をステップS53で特定された文字方向に沿って移動させつつ、画像取込範囲に含まれる画像領域が連続的に取り込まれる。画像領域の取り込みは、「M」行目に含まれる全ての文字情報が取り込まれるまで、つまり「M」行目に含まれる最後の文字情報が取り込まれるまで継続される。これにより、合成画像に含まれる2行分の文字情報(「M」行目および「M+1」行目)を、複数フレームでスクロール表示する動画データが生成される。
【0049】
ステップS63で生成された2行単位の動画データは、EEPROM23に時系列で記録される。なお、画像読取範囲が合成画像の文字方向に沿って移動する速度は、人間が一方向に文字情報を読み取る速度(例えば、1秒間あたり10文字分)と同程度であることが好適である。これにより、2行単位の動画データの再生時に、画面上でスクロール表示される文字情報を、ユーザが確実かつ円滑に読み取れることができる。
【0050】
ステップS63の実行後、合成画像に含まれる全ての行が取り込まれたか否かが判断される(S65)。具体的には、EEPROM23に記憶されている変数Mが、ステップS55で特定された行数以上であるか否かが判断される。変数Mが行数未満である場合(S65:NO)、ステップS61に処理が戻り、変数Mに「1」加算される。これにより、合成画像に含まれる全ての行が取り込まれるまで、画像読取範囲が1行ずつ移動しながら、2行単位の動画データが複数生成される。
【0051】
本実施形態では、図9に示すように、合成画像70に含まれる横書き8行の文字情報について、まず2行分を読み取り可能な画像読取範囲が設定される。合成画像70に対して画像読取範囲が右方向に移動されながら、1〜2行目の文字情報が取り込まれて、1〜2行目をスクロール表示する動画データが生成される。同様に、2〜3行目の動画データ、3〜4行目の動画データ、4〜5行目の動画データ、・・・が順に生成され、最後に8行目のみをスクロール表示する動画データが生成される。
【0052】
変数Mが行数以上である場合(S65:YES)、合成画像に含まれる全ての行が取り込まれたから、フレーム間の補間処理が実行される(S67)。フレーム間の補間処理は、ステップS63で生成されて時系列で前後に並ぶ各動画データを、公知のフレーム補間技術によって補間する。例えば、時系列で前後に並ぶ動画データごとに、前側の動画データの最終フレームと、後側の動画データの先頭フレームとを補間する補間フレームが生成される。複数の動画データを時系列に再生する場合には、前側の動画データの終了時から後側の動画データの開始時までの間で補間フレームを再生することで、動画全体のスクロール表示をより滑らかにすることができる。
【0053】
ステップS67の実行後、FAXデータをスクロール表示する動画ファイルが生成される(S69)。具体的には、EEPROM23に記憶されている複数の動画データを、ステップS67で生成された補間フレームを含めて時系列で合成した動画ファイルが生成される。このとき、ステップS5で読み出された転送先情報が示す対応データ形式(例えば、MPEG形式、AVI形式など)で、動画ファイルが生成される。ステップS69で生成された動画ファイルは、変換済データ記憶エリア234に変換済データとして保存される。
【0054】
本実施形態では、EEPROM23に記憶されている順に、全体画像80の動画データ、1〜2行目の動画データ、2〜3行目の動画データ、3〜4行目の動画データ、・・・8行目の動画データがひとつに合成された動画ファイル90(図11参照)が生成される。ステップS69の実行後、動画化処理(図8)が終了されて、FAX転送処理(図4)に処理が戻る。
【0055】
図10および図11を参照して、第1実施形態に係る携帯電話5で実行されるデータ受信処理を説明する。データ受信処理(図10)は、電子メールの送信元である端末装置(本実施形態では、複合機1)との間でデータ通信が開始されると、携帯電話5のCPUによって実行される。
【0056】
図10に示すように、第1実施形態のデータ受信処理では、まずデータ通信によって電子メールが受信される(S71)。ステップS71で受信された電子メールは、携帯電話5のEEPROMに保存される。ステップS71の実行後、電子メールの閲覧指示があるか否かが判断される(S73)。例えばユーザが携帯電話5の操作キー52を用いて電子メールを選択した場合、電子メールの閲覧指示ありと判断される(S73:YES)。電子メールの閲覧指示がない場合(S73:NO)、データ受信処理(図10)が終了される。
【0057】
本実施形態では、携帯電話5は複合機1から電子メールを受信する。先述のように、電子メールのタイトル名には、FAXデータ60のヘッダ部61の内容が設定されている。携帯電話5のユーザは、画面51に表示された電子メールのタイトル名を閲覧するだけで、ヘッダ部61に記載された内容を把握することができる。
【0058】
電子メールの閲覧指示があった場合(S73:YES)、ユーザによって選択された電子メールの添付ファイルが、動画ファイルであるか否かが判断される(S75)。添付ファイルが動画ファイルである場合(S75:YES)、その動画ファイルが再生される(S77)。具体的には、携帯電話5のROMから動画ファイルを再生するアプリケーションが読み出され、画面51で動画ファイルが再生される。
【0059】
本実施形態では、複合機1から受信した電子メールには、動画ファイル90が添付されている。携帯電話5で動画ファイル90が再生されると、図11に示すように、画面51にFAXデータ60の画像内容がスクロール表示される。なお、図11に示す時間t1〜t4は、動画ファイル90の再生時間tの流れを示している。
【0060】
動画ファイル90の再生時には、まず全体画像80の動画データが3秒間表示される(時間t1参照)。全体画像80の表示が終了すると、合成画像70から取り込まれた1〜2行目の動画データが、1行目の先頭位置から文字方向(図11では右方向)にスクロール表示される(時間t2参照)。1行目の終端位置まで表示されると(時間t3参照)、2〜3行目の動画データが、2行目の先頭位置から上記と同様にスクロール表示される(時間t4参照)。以下、3〜4行目の動画データ、4〜5行目の動画データ・・・、8行目の動画データが、順にスクロール表示される。
【0061】
このように、動画ファイル90の再生時には、まず全体画像80が表示されるため、ユーザはFAXデータ60の全体的な構成を把握することができる。次に、合成画像70に含まれる文字情報が文字方向に沿ってスクロール表示されるため、ユーザは文字情報を読み取るために視線を動かす必要がない。したがって、ユーザは携帯電話5でスクロール操作を行うことなく、FAXデータ60の詳細な内容を読み取ることができる。
【0062】
また、動画ファイル90の再生時には、次回のスクロール表示時に表示される行を含む2行単位で、文字情報のスクロール表示が実行される。つまり、現在のスクロール表示で表示される文字情報は、次回のスクロール表示で表示される文字情報の一部と重複している。したがって、ユーザは、現在のスクロール表示の対象となっている行の文字情報と併せて、次行の文字情報も目視可能である。したがって、FAXデータ60に含まれる文字情報の見落としを抑制でき、かつFAXデータ60が示す内容を容易かつ正確に把握させることができる。
【0063】
さらに、動画ファイル90の再生時は、FAXデータ60のボディ部62に含まれる余白部分を除いた有効範囲63がスクロール表示される。したがって、動画ファイル90の再生時に表示される余白部分を小さくして、画面51に表示されるボディ部62の実データ部分(つまり、文字情報)を見やすくすることができる。
【0064】
先述したように、動画ファイル90は、人間が一方向に文字情報を読み取る速度でスクロール表示を実行することで、ユーザに文字情報を確実かつ円滑に読み取らせることができる。一方、人間が文字情報を読み取る速度には個人差があることから、動画ファイル90の再生時にユーザが操作キー52を操作することで、スクロール表示の速度を調整できるようにしてもよい。
【0065】
ステップS77の実行後、動画ファイルの再生が終了したか否かが判断される(S79)。例えば、動画ファイルが最終データまで再生された場合や、ユーザによって動画ファイルの再生中止が指示された場合は、動画ファイルの再生が終了したと判断される(S79:YES)。この場合、データ受信処理(図10)が終了される。動画ファイルの再生が終了していない場合は(S79:NO)、ステップS77に処理が戻り、動画ファイルの再生が継続される。
【0066】
一方、添付ファイルが動画ファイルでない場合には(S75:NO)、添付ファイルは静止画データであるか否かが判断される(S81)。添付ファイルが静止画データである場合(S81:NO)、その静止画データが表示される(S83)。具体的には、携帯電話5のROMから静止画データを再生するアプリケーションが読み出され、画面51で静止画データが表示される。
【0067】
ステップS83の実行後、静止画データの表示が終了したか否かが判断される(S85)。例えば、ユーザによって静止画データの表示中止が指示された場合は、静止画データの表示が終了したと判断される(S85:YES)。この場合、データ受信処理(図10)が終了される。静止画データの表示が終了していない場合は(S85:NO)、ステップS83に処理が戻り、静止画データの表示が継続される。なお、添付ファイルが携帯電話5で出力不可能なデータである場合や、電子メールに添付ファイルがない場合などは、添付ファイルは動画ファイルおよび静止画データのいずれでもないと判断される(S81:NO)。この場合も、データ受信処理(図10)が終了される。
【0068】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、複合機1は、送信元端末(FAX機2)からFAXデータを受信すると、そのFAXデータをスクロール表示する動画ファイルを生成して、転送先端末(携帯電話5)に送信する。転送先端末(携帯電話5)は、複合機1から受信した動画ファイルが再生されると、FAXデータの有効範囲を文字方向にスクロール表示する。したがって、転送先端末(携帯電話5)の画面サイズが小さい場合でも、画面をスクロールさせる操作の負担を抑制しつつ、ユーザにFAXデータの内容を認識させることができる。
【0069】
本発明の第2実施形態について、図12〜図15を参照して説明する。以下では、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
【0070】
図12に示すように、第2実施形態に係るネットワークシステムは、第1実施形態に係るネットワークシステムの構成に加えて、ファイルサーバ9がインターネット8に接続されている。複合機1は、インターネット8を介してファイルサーバ9との間でデータ通信を行うことができる。本実施形態では、複合機1にて受信されたFAXデータは、ファイルサーバ9を介して転送先端末に転送される。
【0071】
ファイルサーバ9は、公知のファイルサーバと同様であり、図示しないCPU、ROM、RAM、EEPROM、ハードディスク(HDD)、通信制御部などを備える。本実施形態では、ファイルサーバ9の電源がON状態である間は、ファイルサーバ9のCPUが後述のデータ仲介処理(図14)を継続的に実行する。
【0072】
図13を参照して、第2実施形態に係る複合機1で実行されるFAX転送処理を説明する。第2実施形態のFAX転送処理では、まず第1実施形態のステップS1〜S19と同様の処理が実行され(S101〜S119)、変換済データ記憶エリア234(図5参照)に変換済データが保存される。ステップS117またはステップS119で生成された変換済データは、ファイルサーバ9にアップロードされる(S121)。具体的には、ファイルサーバ9にアップロード要求が送信される。複合機1とファイルサーバ9との間で通信が確立されると、複合機1からファイルサーバ9に変換済データがアップロードされる。
【0073】
図14を参照して、第2実施形態に係るファイルサーバ9で実行されるデータ仲介処理のうち、変換済データのアップロードに関する処理を説明する。データ仲介処理では、変換済データのアップロード要求ありか否かが判断される(S151)。ファイルサーバ9がアップロード要求を受信している場合(S151:YES)、要求元の端末装置との間で通信が確立されて、その端末装置から変換済データが受信される(S153)。ステップS153で受信された変換済データは、ファイルサーバ9のHDDに保存される。
【0074】
ステップS153の実行後、変換済データの保存先URL(Uniform Resource Locator)が設定される(S155)。保存先URLは、ファイルサーバ9のHDDに保存された変換済データのリソース位置を特定する情報である。ステップS155で設定された保存先URLは、要求元の端末装置に返信される(S157)。ステップS157の実行後、または、アップロード要求がない場合(S151:NO)、後述のステップS159に処理が進む。
【0075】
FAX転送処理(図13)に戻り、ステップS121の実行後、ファイルサーバ9から保存先URLが受信されて(S123)、第1実施形態のステップS21と同様にメール送信設定が実行される(S125)。ただし、ステップS125のメール送信設定では、電子メールの添付ファイル設定に替えて、ステップS123で受信された保存先URLが電子メールのボディ部に設定される。ステップS125の実行後、電子メールの送信が実行されて(S127)、FAX転送処理(図13)が終了される。
【0076】
本実施形態では、複合機1は、FAX機2からFAXデータ60を受信すると、そのFAXデータ60に基づいて動画ファイル90を生成して、ファイルサーバ9にアップロードする(S101〜S121)。ファイルサーバ9は、複合機1からアップロードされた動画ファイル90を保存して、動画ファイル90の保存先URLを複合機1に返信する(S151:YES、S153〜S157)。複合機1は、動画ファイル90の保存先URLを受信して、その保存先URLが設定された電子メールを携帯電話5に送信する(S123〜S127)。
【0077】
図15を参照して、第2実施形態に係る携帯電話5で実行されるデータ受信処理を説明する。第2実施形態のデータ受信処理では、第1実施形態のステップS71と同様に電子メールが受信される(S201)。ステップS201の実行後、保存先URLへの接続指示があるか否かが判断される(S203)。例えばユーザが携帯電話5の操作キー52を用いて、電子メールのボディ部に示される保存先URLを選択した場合、保存先URLへの接続指示ありと判断される(S203:YES)。
【0078】
保存先URLへの接続指示がある場合(S203:YES)、変換済データのダウンロードが実行される(S205)。具体的には、保存先URLへの接続要求(つまり、保存先URLに位置する変換済ファイルのダウンロード要求)が、ファイルサーバ9に送信される。携帯電話5とファイルサーバ9との間で通信が確立されると、ファイルサーバ9から携帯電話5に変換済データがダウンロードされる。
【0079】
図14を参照して、第2実施形態に係るファイルサーバ9で実行されるデータ仲介処理のうち、変換済データのダウンロードに関する処理を説明する。データ仲介処理では、変換済データのダウンロード要求ありか否かが判断される(S159)。ファイルサーバ9がダウンロード要求を受信している場合(S159:YES)、ダウンロード要求によって指定された保存先URLの変換済データが、ファイルサーバ9のHDDから読み出される(S161)。ステップS161の実行後、要求元の端末装置との間で通信が確立されて、その端末装置にステップS161で読み出された変換済データが送信される(S163)。
【0080】
FAX転送処理(図13)に戻り、ステップS205の実行後、ファイルサーバ9から動画ファイルを受信したか否かが判断される(S207:YES)。受信データが動画ファイルである場合(S207:YES)、その動画ファイルが再生される(S209)。ステップS209の実行後、第1実施形態のステップS79と同様に、動画ファイルの再生が終了したか否かが判断される(S211)。動画ファイルの再生が終了していない場合(S211:NO)、ステップS209に処理が戻り、動画ファイルの再生が継続される。
【0081】
本実施形態では、携帯電話5のROMに、ファイルサーバ9から送信される動画ファイルを受信しながら同時に再生を行なう、所謂ストリーミング方式のアプリケーションが記憶されている。ステップS209では、携帯電話5のROMからストリーミング方式のアプリケーションが読み出され、画面51で動画ファイルがストリーミング方式で再生される。これにより、携帯電話5における動画ファイルの再生処理を迅速にすることができる。
【0082】
一方、ファイルサーバ9から動画ファイルを受信していない場合(S207:NO)、ファイルサーバ9から静止画データを受信したか否かが判断される(S213)。受信データが静止画データである場合(S213:YES)、第1実施形態のステップS83〜S85と同様に、静止画データが表示されて(S215)、静止画データの表示が終了したか否かが判断される(S217)。静止画データの表示が終了していない場合(S217:NO)、ステップS215に処理が戻り、静止画データの表示が継続される。
【0083】
動画ファイルの再生が終了した場合(S211:YES)、または、静止画データの表示が終了した場合(S217:YES)、データ受信処理(図14)が終了される。なお、ファイルサーバ9から携帯電話5で出力不可能なデータを受信した場合や、ファイルサーバ9からダウンロードされたデータがない場合などは、ファイルサーバ9から動画ファイルおよび静止画データのいずれも受信していないと判断される(S213:NO)。この場合も、データ受信処理(図14)が終了される。
【0084】
本実施形態では、携帯電話5は、複合機1から保存先URLが設定された電子メールを受信する(S201)。ユーザが保存先URLへの接続指示を行うと、保存先URLに位置する動画ファイル90が、ファイルサーバ9から携帯電話5にダウンロードされる(S203:YES、S205、S159:YES、S161〜S163)。携帯電話5は、ファイルサーバ9からダウンロードされた動画ファイル90を、画面51にてストリーミング方式で再生する(S209〜S211)。このとき、画面51では、第1実施形態と同様にFAXデータ60の画像内容がスクロール表示される(図11参照)。
【0085】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、複合機1は、送信元端末(FAX機2)からFAXデータを受信すると、そのFAXデータをスクロール表示する動画ファイルを生成して、ファイルサーバ9に送信する。ファイルサーバ9は、複合機1から受信した動画ファイルに保存先URLを設定して、複合機1に保存先URLを返信する。複合機1は、ファイルサーバ9から受信した保存先URLを、転送先端末(携帯電話5)に送信する。転送先端末(携帯電話5)は、複合機1から受信した保存先URLに接続することで動画ファイルを再生して、FAXデータの有効範囲を文字方向にスクロール表示する。したがって、転送先端末(携帯電話5)の画面サイズが小さい場合でも、画面をスクロールさせる操作の負担を抑制しつつ、ユーザにFAXデータの内容を認識させることができる。
【0086】
上記実施形態において、ステップS1またはステップS101を実行するCPU20が、本発明の「データ受信手段」にそれぞれ相当する。ステップS17またはステップS117(図8に示す動画化処理)を実行するCPU20が、本発明の「データ生成手段」にそれぞれ相当する。ステップS21〜S23またはステップS121、S125〜S127を実行するCPU20が、本発明の「データ出力手段」にそれぞれ相当する。ステップS1またはステップS101が、本発明の「データ受信ステップ」にそれぞれ相当する。ステップS17またはステップS117(図8に示す動画化処理)が、本発明の「データ生成ステップ」にそれぞれ相当する。ステップS23またはステップS121、S127が、本発明の「データ出力ステップ」にそれぞれ相当する。
【0087】
ステップS7またはステップS107を実行するCPU20が、本発明の「範囲設定手段」にそれぞれ相当する。ステップS11またはステップS111を実行するCPU20が、本発明の「サイズ判断手段」にそれぞれ相当する。ステップS53を実行するCPU20が、本発明の「文字状態判断手段」に相当する。転送先情報記憶エリア233が、本発明の「条件記憶手段」に相当する。ステップS5またはステップS105を実行するCPU20が、本発明の「条件取得手段」にそれぞれ相当する。ステップS57を実行するCPU20が、本発明の「全体画像生成手段」に相当する。ステップS3またはステップS103を実行するCPU20が、本発明の「送信元判断手段」にそれぞれ相当する。
【0088】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。例えば、第1実施形態では、複合機1から転送先端末に、変換済データが添付された電子メールが送信される場合を例示した。これに替えて、複合機1から転送先端末に、保存先URLが設定された電子メールが送信されてもよい。
【0089】
具体的には、複合機1のFAX転送処理(図4参照)では、ステップS17またはステップS19の実行後に、ステップS155が実行される。これにより、変換済データ記憶エリア234に保存された変換済データに、第2実施形態と同様に保存先URLが設定される。ステップS21〜S23では、保存先URLが設定された電子メールが、転送先端末に送信される。さらに、複合機1では、ステップS159〜S163が実行される。これにより、複合機1では、ダウンロード要求を受信すると転送先端末に変換済データが送信される。転送先端末では、第2実施形態と同様にデータ受信処理が実行され(図15参照)、複合機1からダウンロードされた変換済データが出力される。
【0090】
第2実施形態では、複合機1で変換済データが生成され、ファイルサーバ9に変換済データが保存される場合を例示した。これに替えて、ファイルサーバ9で直接FAXデータが受信されて、変換済データが生成および保存されてもよい。具体的には、ファイルサーバ9が、FAXデータを直接受信するためのFAXモデムを備え、FAX転送処理(図13参照)を実行する。この場合、ステップS121〜S123に替えて、ファイルサーバ9のHDDに変換済データが保存され、その変換済データに保存先URLが設定される。なお、第1実施形態についても同様に、複合機1に代えて、ファイルサーバ9がFAX転送処理(図4参照)を実行するようにしてもよい。
【0091】
また、複合機1からファイルサーバ9にFAXデータが転送され、ファイルサーバ9で変換済データが生成および保存が行われてもよい。具体的には、複合機1のFAX転送処理(図4参照)では、ステップS101に替えて、FAXデータがファイルサーバ9に転送される。ファイルサーバ9が、EEPROM23と同様の記憶領域を備え、ステップS101〜S119を実行し、さらにステップS155〜S157を実行する。複合機1では、変換済データの転送後、ステップS123〜S127が実行される。これにより、複合機1は、ファイルサーバ9にFAXデータを転送するだけで、ファイルサーバ9から変換済データの保存先URLを取得することができる。
【0092】
上記実施形態では、動画化処理(図8参照)において、次回のスクロール表示の対象となる次行を含むように、2行単位でスクロール表示を行う動画ファイルが生成される。これに替えて、前回のスクロール表示の対象となる前行を含むように、2行単位でスクロール表示を行う動画ファイルが生成されてもよい。また、3行以上の単位でスクロール表示を行う動画ファイルが生成されてもよい。3行以上の単位でスクロール表示を行う動画ファイルは、スクロール表示の対象となる行から数行前まで、および、スクロール表示の対象となる行から数行後までの少なくとも一方を含むようにスクロール表示を行ってもよい。つまり、動画ファイルは、少なくとも前回または次回のスクロール表示で表示される文字情報の一部が含めて、複数行の文字情報をスクロール表示できればよい。
【0093】
さらに、動画化処理(図8参照)において、文字情報を行単位で含むFAXデータに基づいて動画ファイルが生成されているが、他の画像データに基づいて動画ファイルが生成されてもよい。例えば、画像処理によって文字情報が認識できなかった画像データ、または、文字情報が構成する行を認識できなかった画像データに対して、ステップS63にて次のような処理を行ってもよい。
【0094】
すなわち、画像データに対して画像読取範囲(一例として、縦10センチ×横7センチ)を所定方向(例えば、右方向)に移動させつつ、画像読取範囲に含まれる画像領域を連続的に取り込む。画像読取範囲が画像データの右端まで到達した場合、画像読取範囲を所定幅(一例として、3センチ)だけ所定方向と直交する方向(例えば、下方向)に移動させたのち、再び所定方向に移動させて画像領域を取り込む。このような処理によって生成された動画ファイルは、少なくとも前回または次回のスクロール表示で表示される画像情報と一部が重複するように、画像情報をスクロール表示することができる。
【0095】
上記実施形態では、転送先情報記憶エリア233に転送先情報が登録されている端末装置が、FAXデータの転送先に設定される(ステップS5、S105)。転送先情報記憶エリア233に複数の転送先情報が登録されている場合、各転送先情報にそれぞれ対応する端末装置(例えば、携帯電話5およびPC6)の全てがFAXデータの転送先に設定されてもよい。また、転送先情報記憶エリア233に転送先情報が登録されている端末装置のうちで、ユーザが操作キー26を用いて指定した端末装置のみが、FAXデータの転送先に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 複合機
2 FAX機
4 公衆回線
5 携帯電話
8 インターネット
9 ファイルサーバ
20 CPU
21 ROM
22 RAM
23 EEPROM
26 操作キー
29 LANコントローラ
42 回線制御部
51 画面
52 操作キー
60 FAXデータ
61 ヘッダ部
62 ボディ部
63 有効範囲
70 合成画像
80 全体画像
90 動画ファイル
231 FAXデータ記憶エリア
232 送信元情報記憶エリア
233 転送先情報記憶エリア
234 変換済データ記憶エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファクシミリ通信によって画像データを受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段によって前記画像データが受信された場合、前記画像データの所定範囲を所定方向にスクロール表示する動画ファイルを生成するデータ生成手段と、
前記データ生成手段によって生成された前記動画ファイルを、外部の端末装置が接続可能な記憶手段に保存する処理、および、ネットワークを介して前記端末装置に送信する処理の少なくとも一方を実行するデータ出力手段とを備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記画像データのボディ部に含まれる余白部分を特定し、前記ボディ部のうちで前記余白部分とは異なる部分を前記所定範囲に設定する範囲設定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記範囲設定手段によって設定された前記所定範囲の画像サイズが所定値以上であるか否かを判断するサイズ判断手段を備え、
前記データ生成手段は、前記サイズ判断手段によって前記所定範囲の画像サイズが前記所定値以上であると判断された場合に、前記動画ファイルを生成することを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記画像データは、行単位で構成された文字情報を含む文書データであり、
前記画像データに含まれる前記文字情報が横書きおよび縦書きのいずれであるかを判断する文字状態判断手段を備え、
前記データ生成手段は、前記文字状態判断手段によって横書きであると判断された場合に、左右方向にスクロール表示する前記動画ファイルを生成する一方、前記文字状態判断手段によって縦書きであると判断された場合に、上下方向にスクロール表示する前記動画ファイルを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記データ生成手段は、前記所定範囲を全て表示するまで、前記所定方向と直交する方向に表示範囲を順次移動させながら、前記所定方向へのスクロール表示を繰り返す前記動画ファイルを生成し、
前記動画ファイルの表示範囲は、複数行の前記文字情報を含み、且つ、少なくとも前回または次回の前記所定方向へのスクロール表示で表示される前記文字情報の一部を含むことを特徴とする請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記端末装置の画面サイズを含む表示画面条件を記憶する条件記憶手段と、
前記データ受信手段によって前記画像データが受信された場合、前記画像データの転送先となる前記端末装置に対応する前記表示画面条件を、前記条件記憶手段から取得する条件取得手段とを備え、
前記データ生成手段は、前記条件取得手段によって取得された前記表示画面条件に含まれる前記画面サイズに応じて、前記動画ファイルを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記条件取得手段によって取得された前記表示画面条件に含まれる前記画面サイズで、前記画像データの全体を表示可能な全体画像を生成する全体画像生成手段を備え、
前記データ生成手段は、前記全体画像生成手段によって生成された前記全体画像を含む前記動画ファイルを生成することを特徴とする請求項6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記データ出力手段は、前記画像データのヘッダ部に含まれる識別情報を、前記動画ファイルの識別情報として付与することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項9】
送信元の識別情報である送信元情報を記憶する送信元記憶手段と、
前記画像データのヘッダ部に含まれる前記送信元情報が、前記送信元記憶手段に記憶されているか否かを判断する送信元判断手段とを備え、
前記データ生成手段は、前記送信元判断手段によって前記送信元情報が記憶されていると判断された場合に、前記動画ファイルを生成することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記データ出力手段は、前記動画ファイルを添付した電子メール、または、前記動画ファイルに接続可能なアドレス情報を含む電子メールを、前記端末装置に送信することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項11】
ファクシミリ通信によって画像データを受信するデータ受信ステップと、
前記データ受信ステップによって前記画像データが受信された場合、前記画像データの所定範囲を所定方向にスクロール表示する動画ファイルを生成するデータ生成ステップと、
前記データ生成ステップによって生成された前記動画ファイルを、外部の端末装置が接続可能な記憶手段に保存する処理、および、ネットワークを介して前記端末装置に送信する処理の少なくとも一方を実行するデータ出力ステップとを備えたことを特徴とするデータ処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、
ファクシミリ通信によって画像データを受信するデータ受信手段、
前記データ受信手段によって前記画像データが受信された場合、前記画像データの所定範囲を所定方向にスクロール表示する動画ファイルを生成するデータ生成手段、
前記データ生成手段によって生成された前記動画ファイルを、外部の端末装置が接続可能な記憶手段に保存する処理、および、ネットワークを介して前記端末装置に送信する処理の少なくとも一方を実行するデータ出力手段として機能させることを特徴とするデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−160118(P2011−160118A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19088(P2010−19088)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】