説明

データ生成装置、方法およびプログラム

【課題】仮想センサデータの信頼性を向上させることが可能なデータ生成装置、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】複数の実センサから実センサデータを取得する取得部と、実センサが安定状態であるか否かを判定する判定部と、複数の実センサデータのうち、前記判定部により安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する生成部と、を備えるデータ生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ生成装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様なセンサを利用し、人や物の位置および状況等に即した機器制御を提供するコンテキストアウェアアプリケーション(AP)の開発が進められている。このようなアプリケーションを利用して、例えば所定の状態が検知された場合、ユーザに通知するといったサービスを構築することができる。
【0003】
なお、コンテキストアウェアAPは、通常、単一のセンサから取得されるセンサ値(センサデータ)や、該センサ値から算出される不快指数などに基づいて、機器を制御する。複数のセンサを用いて機器を制御するには、予め複雑なロジックを予めコンテキストアウェアAPに装備しておく必要があった。
【0004】
ここで、下記非特許文献1では、複数のセンサから取得されたセンサ値に基づいて仮想センサデータを生成し、生成した仮想センサデータをコンテキストアウェアAPに提供する仮想センササービスが提案されている。仮想センササービスを利用することにより、新たな実センサが追加されても、コンテキストアウェアAPの設定を変更する必要はなく、ユーザは、新たな実センサを仮想センササービスに追加登録するだけでよいので、容易に新規サービスを構築することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「センササービスのマッシュアップを実現するサービス指向基盤の提案」電子情報通信学会 技術研究報告. IN,情報ネットワーク 109(276),23−28,2009−11−05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実センサを追加した際に、仮想センサデータの信頼性が下がってしまうことがある。例えば、温度センサを設置する際に、作業者が温度センサに触れるなどして室温とかけ離れた温度が検知されたり、加速度センサの設置中に想定外の加速度が検知されたりすることがある。また、新規に追加された実センサの応答速度が遅い場合、追加センサを設置した直後に、設置前の環境におけるセンサ値に基づいた仮想センサデータが生成されてしまう。
【0007】
このような設置作業中や設置直後において計測された異常値に基づいて仮想センサデータが算出されてしまうと、コンテキストアウェアAPは状況に即した機器制御を行うことができない。また、コンテキストアウェアAPは、実センサの追加や削除、実センサの応答速度等の特性について把握しないので、提供される仮想センサデータが急激に変化した場合でも、コンテキストアウェアAPは単に値が変化したものとみなし、変化した値に応じて機器制御を行ってしまう。
【0008】
このように、仮想センサデータの信頼性が下がってしまうと、コンテキストアウェアAPが誤った状況判断をしてしまうという問題が生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、仮想センサデータの信頼性を向上させることが可能な、新規かつ改良されたデータ生成装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の実センサから実センサデータを取得する取得部と、実センサが安定状態であるか否かを判定する判定部と、複数の実センサデータのうち、前記判定部により安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する生成部と、を備えるデータ生成装置が提供される。
【0011】
また、前記判定部は、起動開始後一定時間経過している実センサを安定状態と判定してもよい。
【0012】
また、前記一定時間は、実センサの種別に応じて決定されてもよい。
【0013】
また、前記判定部は、実センサデータが示す値のぶれが所定の値以下である実センサを安定状態と判定してもよい。
【0014】
また、前記判定部は、実センサ起動開始後の実センサデータが示す値のぶれが所定の値以下である実センサを安定状態と判定してもよい。
【0015】
また、前記生成部は、前記複数の実センサデータが示す値のうち、前記判定部により安定状態と判定された実センサであって、かつ同じ属性を有する実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成してもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の実センサから実センサデータを取得するステップと、実センサが安定状態であるか否かを判定するステップと、複数の実センサデータのうち、前記判定するステップにより安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成するステップと、を含むデータ生成方法が提供される。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の実センサから実センサデータを取得する処理と、実センサが安定状態であるか否かを判定する処理と、複数の実センサデータのうち、前記判定する処理により安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、仮想センサデータの信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態によるデータ生成システムの全体構成を示す図である。
【図2】通常のデータ生成システムについて説明するための図である。
【図3】通常のデータ生成システムにおける各センサデータを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるデータ生成システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による実センサDBの一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による状態判定DBの一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態によるセンサノード追加時の動作処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態によるデータ生成システムにおける各センサデータを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態によるセンサノード切断時の動作処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.データ生成システムの概要
2.基本構成
3.動作処理
3−1.追加時
3−2.切断時
3−3.変形例
4.まとめ
【0022】
本発明は、一例として「2.基本構成」〜「3.動作処理」において詳細に説明するような形態で実施され得る。また、本発明の実施形態によるデータ生成装置10は、
(A)複数の実センサから実センサデータを取得する取得部(センサデータ受信部12)と、
(B)実センサが安定状態であるか否かを判定する判定部(実センサ管理部13)と、
(C)複数の実センサデータのうち、前記判定部により安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する生成部(仮想センサデータ生成部16)と、
を備える。
【0023】
このような構成を有するデータ生成装置10を用いたデータ生成システムについて、まず概要を説明してから、基本構成および動作処理について説明する。
【0024】
<1.データ生成システムの概要>
図1は、本発明の実施形態によるデータ生成システムの全体構成を示す図である。図1に示したように、本実施形態によるデータ生成システムは、実センサを有するセンサノード21A〜C、データ生成装置10、コンテキストアウェアアプリケーション(AP)により制御される照明装置41および空調装置43を備える。ここで、照明装置41および空調装置43は、各装置内にコンテキストアウェアAPを実装する。照明装置41および空調装置43は、コンテキストアウェアAPにより制御される装置の一例として挙げたものであり、本実施形態の構成は図1に示す例に限定されない。
【0025】
データ生成装置10は、複数のセンサノードから取得した各センサデータに基づいて仮想センサデータを生成し、コンテキストアウェアAPに送信する。そして、コンテキストアウェアAPは、仮想センサデータに基づいて機器制御を行う。例えば、コンテキストアウェアAPを装備する空調装置43は、仮想センサデータ(室温)に応じて空調制御を行う。
【0026】
(本発明に至る過程)
ここで、通常のデータ生成システムについて図2を参照して説明する。図2に示すように、部屋Aの仮想温度センサ73は、部屋Aの複数の温度センサ71〜72から取得したセンサデータ(実センサデータ)に基づいて仮想センサデータを生成し、生成した仮想センサデータをコンテキストアウェアAP75に送信する。そして、コンテキストアウェアAP75は、仮想センサデータに基づいて機器(図示せず)を制御する。
【0027】
このようなデータ生成システムにおいて、仮想温度センサ73は、各温度センサから送信される全実センサデータに基づいて仮想センサデータを生成しているので、例えば温度センサ72から異常値が送信された場合も、これに基づいて仮想センサデータを生成してしまうという問題があった。以下、図3を参照して具体的に説明する。
【0028】
図3は、仮想温度センサ77が生成する仮想センサデータe、温度センサ71の実センサデータdおよび温度センサ72の実センサデータfを示す図である。なお、仮想センサデータは複数の実センサデータに含まれる検知結果の値を平均した平均値である。図3に示すように、tの時点では、仮想温度センサ73は、温度センサ71の実センサデータdのみを取得するので、当該実センサデータdを仮想センサデータeとする。
【0029】
そして、図3に示すように、温度センサ72が追加されるtの時点から、温度センサ72の実センサデータfが仮想温度センサ73に送信される。ここで、温度センサ72の設置作業中に作業者が温度センサ72に触れる等して、温度センサ72において異常値が検知される場合がある。しかしながら、このような異常値も温度センサ72の実センサデータとして仮想温度センサ73に送信されるので、図3のtの時点において、仮温度想センサ73は異常値に基づいた仮想センサデータeを生成してしまう。
【0030】
また、実センサの応答速度が遅いと、設置直後は設置前の計測値に近い値を出力するので、温度センサ72が追加されたtの直後は、実センサデータfが正確な値を示さず、その結果、仮想センサデータも正確な値とはならない。
【0031】
このように、仮想温度センサ73が生成する仮想センサデータは信頼性が低いという問題があった。
【0032】
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態によるデータ生成システムを創作するに至った。本発明の実施形態によるデータ生成システムは、安定状態の実センサから取得した実センサデータを用いて仮想センサデータを生成することで、仮想センサデータの信頼性を向上させることが可能である。以下、このような本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
<2.基本構成>
本発明の実施形態によるデータ生成システムは、上述したように、実センサから取得したセンサデータに基づいて仮想センサデータを生成し、生成した仮想センサデータをコンテキストウェアAP40に送信する。このような本実施形態によるデータ生成システムの基本構成について、以下図4を参照して説明する。
【0034】
図4は、本実施形態によるデータ生成システムの構成を示すブロック図である。図4に示すように、データ生成システムは、複数のセンサノード21、データ生成装置10、およびコンテキストウェアAP40を有する。
【0035】
[2−1.センサノード21]
センサノード21は、通信部22および実センサ23を有する。通信部22は、データ生成装置10と接続し、データを送信する機能を有する。具体的には、通信部22は、実センサ23のIDや種別等の実センサ情報、および実センサ23が検知した実センサデータをデータ生成装置10に送信する。また、通信部22とデータ生成装置10の接続は、有線であってもよいし、無線であってもよい。また、通信部22は、ゲートウェイ装置(図示せず)を介してデータ生成装置10と接続してもよい。実センサ23は、温度センサ、照度センサ、湿度センサ等の検知部である。
【0036】
[2−2.データ生成装置10]
データ生成装置10は、センサデータ受信部12、実センサ管理部13、仮想センサデータ生成部16、および仮想センサデータ送信部17を有する。
【0037】
(センサデータ受信部12について)
センサデータ受信部12は、センサノード21から実センサデータを取得する。センサデータ受信部12は、取得した実センサデータを仮想センサデータ生成部16に出力する。また、センサデータ受信部12は、実センサデータから、センサノード21が有する実センサ23のIDや種別等の実センサ情報を取得する。センサデータ受信部12は、取得した実センサ情報を実センサ管理部13に出力する。
【0038】
(実センサ管理部13について)
実センサ管理部13は、データ生成装置10と接続する各センサノード21の実センサ23の情報を管理し、実センサの状態を判定する。具体的には、実センサデータベース(DB)14および状態判定データベース(DB)15を有する。
【0039】
実センサDB14は、各センサノード21から取得した実センサ情報、仮想センサとの関連付け、および実センサ23の状態等、実センサ23に関する情報を格納する。図5に、実センサDB14の一例を示す。
【0040】
図5に示すように、実センサDB14は、「実センサID」、「実センサ種別」、「位置」、「仮想センサ」、および「状態」の項目を有する。「実センサID」は、センサノード21のMAC(Media Access Control)アドレス、製造番号、およびこれらを組み合わせたもの等、個々の実センサを識別するための識別子である。
【0041】
「実センサ種別」は、温度センサや湿度センサといったセンサの種類を示す情報である。なお、同種のセンサであってもメーカや製品によって特性が異なる場合は、特性の違いを識別できるよう、センサ種別をさらに分類してもよい。
【0042】
「位置」は、実センサ23が設置されている位置を示す情報(位置情報)である。位置情報は、センサノード21から送信される実センサ情報に含まれていてもよいし、実センサ管理部13が特定してもよい。なお、センサノード21が移動して位置情報が更新される場合もある。位置情報は、図5に示す例の他、さらに詳細な情報であってもよい。例えば、位置情報は、部屋1の入口付近、奥、窓付近、下、上などであってもよい。このような位置情報は、後述する仮想センサのグループ化で利用される。
【0043】
「仮想センサ」は、各実センサが、どの仮想センサの生成に利用されるかを示す情報である。図5に示すように、実センサごとに仮想センサの項目を設けることで、実センサを利用する仮想センサごとにグループ化できる。
【0044】
また、仮想センサのグループ化は、後述する仮想センサデータ生成部16に設定される仮想センサデータの生成プログラムに利用される実センサごとに、グループ化される。具体的には、後述するように、仮想センサデータ生成部16から、実センサを指定する情報を含む「実センサ指定情報」が出力されるので、これにより指定される実センサをグループ化する。例えば、仮想センサ1の実センサ指定情報が「位置:部屋1」である場合、図5に示すように、ID1およびID2の実センサが仮想センサ1にグループ化される。
【0045】
また、仮想センサのグループは、仮想センサデータ生成部16からの通知に応じて更新される。例えば、コンテキストアウェア40が新たに追加された場合、コンテキストアウェア40で利用する仮想センサデータの生成プログラムが仮想センサデータ生成部16に新たに設定されるので、実センサDB14では、新たな生成プログラムで利用する実センサをグループ化する。また、上述したように、実センサの位置が移動した場合等、グループ化の基準としていた事項(例えば、属性)が変化した場合、仮想センサのグループが更新される。
【0046】
なお、データ生成装置10が生成する仮想センサデータが1つの場合は、「仮想センサ」の項目はなくてもよい。
【0047】
また、一の実センサが、複数の仮想センサに利用される場合は、かかる一の実センサの仮想センサの項目において「仮想センサ1」および「仮想センサ2」と登録される。
【0048】
また、「仮想センサ」の項目は、コンテキストアウェアAPの制御対象である機器の動作モードが変更した場合等に応じた階層を設けてもよい。これにより、例えば、空調装置43が通常モードの場合は仮想センサ1、足元モードの場合は仮想センサ1−1、省エネモードの場合は仮想センサ1−2等、動作モードに応じて実センサの組み合わせを異ならせることができる。
【0049】
「状態」は、実センサの状態を示す情報である。実センサの状態とは、実センサによる検知結果が安定である安定状態、実センサによる検知結果が不安定である不安定状態、および外部(他の実センサ等)との通信が切断した切断状態等である。実センサ管理部13は、センサデータ受信部12がセンサノード21から取得した実センサ情報に基づいて実センサの状態を判定し、「状態」の項目に登録する。
【0050】
具体的には、実センサ管理部13は、状態判定DB15に基づいて安定/不安定状態を判定する。状態判定DB15は、実センサの種別ごとに、実センサの状態を判定するための情報が格納されている。
【0051】
図6に、本実施形態による状態判定DB15の一例を示す。図6に示すように、状態判定DB15には、実センサ種別ごとに予め安定稼動状態遷移時間が設定される。安定稼動状態遷移時間は、実センサが起動してから安定稼動状態に遷移するまでの時間である。例えば、図6に示すように、温度センサや湿度センサのように応答時間が長い実センサの値は大きく、照度センサのように応答時間が短い実センサの値は小さくなる。
【0052】
実センサ管理部13は、センサノード21からの起動通知に基づいて起動時刻を把握し、起動時刻からの経過時間が図6に示す安定稼動状態遷移時間を経過する前は「不安定状態」、経過した後は「安定状態」と判定し、実センサDB14の「状態」項目に登録する。
【0053】
また、実センサ管理部13は、センサノード21から切断信号が送信された場合に、切断状態と判定する。若しくは、実センサ管理部13は、センサノード21からの実センサデータの定期送信が無かった場合に、切断状態と判定してもよい。また、実センサ管理部13は、接続するセンサノード21の実センサ23の状態を定期的に確認し(ヘルスチェック)、実センサ23が切断したか否かを把握してもよい。
【0054】
実センサ管理部13は、上述した実センサDB14を有し、実センサIDと、実センサの状態を示す状態情報を仮想センサデータ生成部16に出力する。
【0055】
(仮想センサデータ生成部16について)
仮想センサデータ生成部16は、センサデータ受信部12から出力された実センサデータに基づいて仮想センサデータを生成する。本実施形態による仮想センサデータ生成部16は、実センサ管理部13から出力された実センサIDおよび状態情報に基づいて、仮想センサデータに利用する実センサデータを選択する。
【0056】
より具体的には、仮想センサデータ生成部16は、状態情報が「安定」の実センサIDの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する。仮想センサデータ生成部16は、状態情報が「不安定」や「切断」の実センサIDの実センサデータは用いない。このように、本実施形態による仮想センサデータ生成部16は、センサデータ受信部12から出力された実センサデータのうち、安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する。
【0057】
仮想センサデータ生成を行うための具体的な生成プログラムは、仮想センサデータ生成部16に設定される。生成プログラムには、仮想センサデータの具体的な生成方法や、利用する実センサを指定する情報である実センサ指定情報が含まれる。仮想センサデータの具体的な生成方法としては、例えば複数の実センサデータに含まれる検知結果の値の平均値、中央値、または最頻値などを、仮想センサデータとして生成することが挙げられる。
【0058】
生成プログラムが設定されると、仮想センサデータ生成部16は、実センサ指定情報を実センサ管理部13に通知する。実センサ指定情報は、実センサID、実センサ種別、若しくは位置情報等の属性などである。これにより、実センサ管理部13では、実センサ指定情報に基づいて実センサをグループ化する。
【0059】
属性は、位置情報の他、実センサのメーカ(ただし、精度や特性が大きく異なる場合は属性として利用しない)、実センサの所有者若しくはアクセス権限などであってもよい。実センサの所有者若しくはアクセス権限といった属性に基づいてグループ化することで、特定の人にコンテキストアウェアAP40による機器制御サービスを提供することができる。
【0060】
また、このように属性で実センサを指定することで、実センサIDを個々に指定することなく、複数の実センサを指定することができる。
【0061】
例えば、仮想センサデータ生成部16は、仮想センサ1の生成プログラムで利用される実センサ指定情報が「実センサ種別;温度センサ」および「位置;部屋1」である旨を実センサ管理部13に通知する。実センサ管理部13は、実センサDB14をチェックし、図5に示すように、該当する実センサの「仮想センサ」の項目に「センサ1」と登録する。
【0062】
仮想センサデータ生成部16に設定される生成プログラムは、予め設定されていてもよいし、コンテキストウェアAP40と接続した際にコンテキストウェアAP40により設定されてもよい。
【0063】
また、仮想センサデータ生成部16は、生成した仮想センサデータを仮想センサデータ送信部17に出力する。
【0064】
(仮想センサデータ送信部17について)
仮想センサデータ送信部17は、仮想センサデータ生成部16から出力された仮想センサデータをコンテキストウェアAP40に送信する。仮想センサデータ送信部17とコンテキストウェアAP40の接続は、有線であってもよいし、無線であってもよい。また、仮想センサデータ送信部17は、ゲートウェイ装置(図示せず)を介してコンテキストウェアAP40と接続してもよい。
【0065】
[2−3.コンテキストウェアAP40]
コンテキストウェアAP40は、データ生成装置から出力された仮想センサデータに基づいて機器を制御する。図1を参照して説明した概要において、制御対象である各機器(照明装置41および空調装置43)にコンテキストアウェアAPが実装されるとしたが、本発明の実施形態によるコンテキストウェアAP40は図1に示す例に限定されない。例えば、データ生成装置および各機器と接続する機器制御装置(図示しない)にコンテキストウェアAP40を実装してもよい。
【0066】
また、コンテキストウェアAP40は、制御対象機器の起動時等に、仮想センサデータ生成に利用する実センサをグループ化するための実センサ識別情報をデータ生成装置10に送信する。
【0067】
以上、本実施形態によるデータ生成システムの基本構成について詳細に説明した。続いて、本実施形態によるデータ生成システムの動作処理について具体的に説明する。
【0068】
<3.動作処理>
本実施形態によるデータ生成システムのデータ生成装置10は、複数のセンサノード21と接続し、各センサノード21から取得した実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する。このようなデータ生成システムにおける動作処理について、図面を参照して詳細に説明する。
【0069】
[3−1.実センサ追加時]
図7は、本実施形態によるデータ生成システムにおいてセンサノード21が追加された場合の動作処理を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップS101において、センサノード21は、実センサ23が起動したことを示すウェークアップ信号をセンサデータ受信部12に送信する(起動通知)。
【0070】
次いで、ステップS102において、センサデータ受信部12は、ウェークアップ信号を実センサ管理部13に転送する。
【0071】
次に、ステップS103において、実センサ管理部13は、ウェークアップ信号の該当実センサIDについて、安定稼動状態遷移時間(図6に示す状態判定DB参照)で終了するよう不安定状態タイマーをセットする。また、実センサ管理部13は、実センサDB14の該当実センサIDにおいて、「状態:不安定」と登録する。
【0072】
続いて、ステップS104において、実センサ管理部13は、該当実センサIDと、「不安定」を示す状態情報を、仮想センサデータ生成部16に出力する。
【0073】
次いで、ステップS105において、仮想センサデータ生成部16は、仮想センサデータを生成する際に、仮想センサに利用する実センサのグループに含まれていても、「不安定」と通知された実センサ23の実センサデータは利用しない。
【0074】
次に、ステップS106において、ステップS103でセットした不安定状態タイマーが終了すると、実センサ管理部13は、実センサDB14の該当実センサIDにおいて、「状態:安定」と登録する。
【0075】
続いて、ステップS107において、実センサ管理部13は、該当実センサIDと、「安定」を示す状態情報を、仮想センサデータ生成部16に出力する。
【0076】
次いで、ステップS108において、仮想センサデータ生成部16は、仮想センサデータを生成する際に、仮想センサに利用する実センサのグループに含まれていても、かつ「安定」と通知された実センサ23の実センサデータを利用する。
【0077】
このように仮想センサデータ生成部16は、実センサ管理部13から通知された実センサの状態に応じて利用する実センサデータを選択する。次に、仮想センサデータ生成部16が取り扱う実センサデータ、および生成する仮想センサデータについて、図8を参照して説明する。
【0078】
図8は、ID1の温度センサの実センサデータa、仮想センサ1のセンサデータb、およびID2の温度センサの実センサデータcを示す図である。なお、仮想センサデータは、各実センサ23(1又は2以上の実センサ23)の検知結果の値を平均した平均値である。上記検知結果の値は、上記実センサデータに含まれている。
【0079】
ここで、図8に示すように、tの時点でID2の温度センサが追加されても、仮想センサデータ生成部16は、安定稼動状態遷移時間24(例えば30秒、図6参照)が経過するtの時点まで実センサデータcを仮想センサ生成に利用しない。本実施形態による仮想センサデータ生成部16は、同じ属性を有する実センサ(例えば「部屋1」に属する実センサ)であって、かつ安定状態と判定された実センサを利用して仮想センサデータを生成するところ、例えばtの時点においてID2の温度センサは「不安定」状態と判定される。よって、tの時点における仮想センサデータb(実センサデータに含まれる検知結果の値の平均値)は、実センサデータaの値と同じになる。
【0080】
そして、安定稼動状態遷移時間24が経過した後の例えばtの時点では、ID2の温度センサは「安定」状態と判定される。上述したように、仮想センサデータ生成部16は、同じ属性の(例えば「部屋1」に属する)実センサであって、かつ安定状態と判定された実センサを利用する。よって、図8に示すように、tの時点では、ID1の温度センサの実センサデータaおよびID2の温度センサの実センサデータcを利用した仮想センサデータb(平均値)が生成される。
【0081】
このように、本実施形態によるデータ生成システムにおいて、仮想センサデータ生成部16は、「安定」状態の実センサの実センサデータを利用して仮想センサデータを生成することにより、仮想センサデータの信頼性を向上させることができる。続いて、実センサが切断された場合の動作処理について図9を参照して説明する。
【0082】
[3−2.実センサ切断時]
図9は、本実施形態によるデータ生成システムにおいてセンサノード21が切断された場合の動作処理を示すフローチャートである。図9に示すように、ステップS111において、センサノード21は、実センサ23が切断したことを示す切断信号をセンサデータ受信部12に送信する。
【0083】
次いで、ステップS112において、センサデータ受信部12は、切断信号を実センサ管理部13に転送する。
【0084】
次に、ステップS113において、実センサ管理部13は、切断信号に基づいて、実センサDB14の該当実センサIDにおいて、「状態:切断」と登録する。
【0085】
若しくは、上記ステップS111〜S113に代えて、実センサ管理部13が、接続するセンサノード21の実センサ23の状態を確認するヘルスチェックを定期的に行い、実センサ23が切断したか否かを把握してもよい。
【0086】
続いて、ステップS114において、実センサ管理部13は、該当実センサIDと、「切断」を示す状態情報を、仮想センサデータ生成部16に出力する。
【0087】
次いで、ステップS115において、仮想センサデータ生成部16は、仮想センサデータを生成する際に、仮想センサに利用する実センサのグループに含まれている実センサ23からの実センサデータを取得していても、「切断」と通知された実センサ23の実センサデータは利用しない。
【0088】
このように、本実施形態によるデータ生成システムにおいて、仮想センサデータ生成部16は、「切断」状態の実センサの実センサデータを利用しないことで、生成する仮想センサデータの信頼性をより向上させることができる。
【0089】
[3−3.変形例]
上述した実施形態では、実センサ管理部13は、実センサの安定/不安定状態を、図6に示す安定稼動状態遷移時間に基づいて判定していたが、本発明の実施形態における安定/不安定状態の判定は図6に示す例に限定されない。例えば、実センサ管理部13は、実センサデータに含まれる検知結果の値のぶれが所定の値以下の場合に「安定」と判定してもよい。
【0090】
例えば、温度センサが0.1度単位で計測している場合、数10秒では通常変化が起きないが、温度センサの設置直後は、設置前に置かれていた場所の温度を引きずったり、設置作業者の体温を検知したりすることで、設置場所の温度と離れて温度変化が大きくなる。実センサ管理部13は、変化が大きい(変化が所定の値を上回る)場合、「不安定」と判定し、変化が小さい(変化が所定の値以下)場合、「安定」と判定する。
【0091】
このように、本実施形態によるデータ生成システムにおいて、実センサ管理部13が、実センサデータに含まれる検知結果の値のぶれに基づいて実センサの安定/不安定状態を判定することで、起動開始直後の他、稼動中に何らかの原因により異常値が検知された場合であっても、仮想センサデータの信頼性を維持することができる。
【0092】
<4.まとめ>
以上説明したように、本実施形態によるデータ生成システムによれば、「安定」と判定された実センサの実センサデータを利用して仮想センサデータを生成するので、仮想センサデータの信頼性を向上させることができる。
【0093】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
また、本明細書のデータ生成システムにおける処理を示す各ステップは、必ずしも図示された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、図7に示すS103およびS104は、記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0095】
また、図4に示したデータ生成装置10の各機能ブロックの処理を、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのハードウェアで実現することができる。また、これらハードウェアを、上述したデータ生成装置10の各機能ブロックと同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 データ生成装置
12 センサデータ受信部
13 実センサ管理部
14 実センサDB
15 状態判定DB
16 仮想センサデータ生成部
17 仮想センサデータ送信部
21A〜C センサノード
22 通信部
23 実センサ
40 コンテキストアウェアアプリケーション(AP)
41 照明装置
43 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の実センサから実センサデータを取得する取得部と、
実センサが安定状態であるか否かを判定する判定部と、
複数の実センサデータのうち、前記判定部により安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する生成部と、
を備える、データ生成装置。
【請求項2】
前記判定部は、起動開始後一定時間経過している実センサを安定状態と判定する、請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記一定時間は、実センサの種別に応じて決定される、請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記判定部は、実センサデータが示す値のぶれが所定の値以下である実センサを安定状態と判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記判定部は、実センサ起動開始後の実センサデータが示す値のぶれが所定の値以下である実センサを安定状態と判定する、請求項4に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記複数の実センサデータが示す値のうち、前記判定部により安定状態と判定された実センサであって、かつ同じ属性を有する実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する、請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項7】
複数の実センサから実センサデータを取得するステップと、
実センサが安定状態であるか否かを判定するステップと、
複数の実センサデータのうち、前記判定するステップにより安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成するステップと、
を含む、データ生成方法。
【請求項8】
複数の実センサから実センサデータを取得する処理と、
実センサが安定状態であるか否かを判定する処理と、
複数の実センサデータのうち、前記判定する処理により安定状態と判定された実センサの実センサデータを用いて仮想センサデータを生成する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55570(P2013−55570A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193578(P2011−193578)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】