説明

データ記憶装置及びこれを備えた移動体通信端末

【課題】 データ記憶装置が実際に落下しているか否かを高い精度で認識し、実際には落下していないにも関わらずデータ書き込みや読み出しを停止させてしまう事態の発生を抑制することである。
【解決手段】 本データ記憶装置は、データを記憶するデータ記憶手段と、そのデータ記憶手段に対してデータの書き込み及び読み出しを行うデータ処理手段と、そのデータ記憶手段に生じる加速度を計測する加速度計測手段とを備えている。本装置のデータ処理手段は、加速度計測手段により計測した加速度の絶対値が重力加速度の絶対値を中心とした規定範囲内である期間が一定時間継続したとき、データ記憶手段に対するデータの書き込み又は読み出しを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを記憶するデータ記憶手段とこのデータ記憶手段に対してデータの書き込み及び読み出しを行うデータ処理手段とを備えたデータ記憶装置、及び、このデータ記憶装置を有する移動体通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のデータ記憶装置としては、例えば、ヘッドを用いてディスク(データ記憶手段)上に磁気的にデータを記録するもの、レーザ光によりディスク面を変形させたりディスク面の光学的特性を変化させたりしてデータを記録するもの、半導体メモリ(データ記憶手段)に電気的にデータを記録するものなどがある。このようなデータ記憶装置は、一般に、データの書き込み中や読み出し中に衝撃を受けると、様々な不具合を引き起こす。例えば、正確なデータの書き込みや読み出しを行えなくなったり、すでに記憶されている記憶データが破壊されたり、データ記憶手段自体が破損したりする。
【0003】
特許文献1には、ディスクに対するデータの書き込み中に外部からの衝撃が加わっても、隣接トラックへの誤書き込みを阻止し得るディスク記憶装置が開示されている。このディスク記憶装置は、3方向の加速度を検出するように配設された3つの加速度センサを有し、これらのセンサからの各出力信号と、加速度方向によらない一定の加速度既定値とを比較する比較部を備える。いずれか1つの出力信号が加速度既定値を超えたと比較部が判断すると、加速度超過信号が書き込み制御回路に送られ、ディスクへの書き込みが禁止される。すなわち、このディスク記憶装置によると、加速度既定値を越える加速度を生じさせるような大きな衝撃が発生した直後に、ディスクへの書き込みが禁止される。上記特許文献1の記載によると、この大きな衝撃が発生しても、この衝撃によりヘッドが隣接トラックに移動してその隣接トラックに対して誤った書き込みが行われるのを阻止できるとしている。
しかし、このディスク記憶装置では、衝撃を検知してからデータ書き込みを停止するので、衝撃が発生してから実際にデータの書き込みが停止するまでにタイムラグが存在する。そのため、衝撃が発生してから実際にデータの書き込みが停止するまでの間に、その衝撃によってヘッドが移動して、例えばヘッドがディスクに接触してディスク面を傷けたり、誤った位置にデータを書き込んだりするおそれがある。したがって、上記特許文献1に開示のディスク記憶装置のように、衝撃を検知してからデータの書き込みを停止するのでは、データの書き込み中や読み出し中に衝撃を受けることで発生する不具合を確実に回避することは困難である。
【0004】
一方、特許文献2には、データ書き込み動作中に携帯電子機器の落下による衝撃を受けたときに、その衝撃で電源が瞬間的に停止してしまい、メモリカード(データ記憶手段)に異常な電流変動が起こってメモリカードが破損するのを防止し得る携帯電子機器が開示されている。この特許文献2には、一例として、その筐体から外部に突出するように付勢された摘みを有する開閉スイッチを備えた携帯電子機器が記載されている。この携帯電子機器は、摘みが内部へ押し込まれると開閉スイッチがオフとなり、摘みが筐体外部へ露出すると開閉スイッチがオンとなる。この携帯電子機器において、例えば、メモリカードに対するデータ書き込み中に、その摘みが内部へ押し込まれるように本携帯電子機器を机上などに置いた状態から、その携帯電子機器が机上から落下したとする。このとき、その落下開始時に摘みが筐体外部へ露出して開閉スイッチがオンになり、これを受けて制御部がメモリカードに対するデータ書き込みを停止させる。このように落下による衝撃を受ける前にデータ書き込みを停止するので、その後に衝撃を受けてもメモリカードに異常な電流変動が起らず、メモリカードの破損を防止できる。
このように、上記特許文献2によれば、携帯電子機器が落下して衝撃を受ける前にデータ書き込みが停止するので、上記特許文献1に開示のディスク記憶装置のようなタイムラグは生じない。したがって、データの書き込み中に衝撃を受けることで発生する不具合を確実に回避することが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平5−198078号公報
【特許文献2】特開2003−18262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献2に開示の携帯電子機器では、上記開閉スイッチがオンのときに携帯電子機器が落下していると制御部が認識するようになっている。そのため、例えば、利用者が机上に置かれた携帯電子機器を持ち上げただけで、開閉スイッチがオンになって携帯電子機器が落下していると制御部が誤認識してしまい、データ書き込みを停止させてしまう。また、例えば、開閉スイッチがオフにならないように利用者が携帯電子機器を机上に置いてしまった場合も、携帯電子機器が落下していると制御部が誤認識し、データ書き込みを停止させてしまう。このように、上記特許文献2に開示の携帯電子機器では、開閉スイッチがオフになるように携帯電子機器を机上などに置いた状態からその携帯電子機器が机上から落下するという非常に限定的な状況下でしか、携帯電子機器が落下していることを制御部が正確に認識できない。すなわち、上記特許文献2に開示の携帯電子機器は、本携帯電子機器が実際に落下しているか否かを認識する精度が悪く、実際には落下していないにも関わらずデータ書き込みを停止させてしまうという問題を有していた。
また、上記特許文献2には、利用者が机上に置かれた携帯電子機器を持ち上げたことを制御部が認識するために、上記開閉スイッチと同様の構成を有する補助スイッチを携帯電子機器のグリップ部分に設けた例も開示されている。この例によれば、利用者が机上に置かれた携帯電子機器を持ち上げる際にそのグリップ部分を握っていれば補助スイッチがオフとなり、上記開閉スイッチがオンであっても携帯電子機器が落下していないと制御部が認識して、データ書き込みを停止させない。しかし、例えば利用者が携帯電子機器のグリップ部分を握らずに把持したときには、やはり携帯電子機器が落下していると制御部が誤認識してしまい、データ書き込みを停止させてしまう。したがって、この例であっても、上述した問題が依然として存在する。
【0007】
なお、上記特許文献2には、上記開閉スイッチの代わりに加速度センサを設けた例も記載されている。しかし、この特許文献2の記載によると、携帯電子機器の本体に加わった加速度を検知すると、落下検知信号が制御部へ出力され、制御部は、この落下検知信号により携帯電子機器が落下中であることを認識するとしている。しかし、単に加速度を検知するだけでは、落下していないときの携帯電子機器本体に加わる加速度、例えば利用者が携帯電話機を把持して移動させたときの加速度と、落下中の携帯電子機器本体に加わる加速度とを区別することができない。したがって、この例であっても、上述した問題が依然として存在する。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、実際に落下しているか否かを高い精度で認識し、実際には落下していないにも関わらずデータ書き込みや読み出しを停止させてしまう事態の発生を抑制することができるデータ記憶装置及びこれを備えた移動体通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、データを記憶するデータ記憶手段と、該データ記憶手段に対してデータの書き込み及び読み出しを行うデータ処理手段とを備えたデータ記憶装置において、加速度を計測する加速度計測手段を有し、上記データ処理手段は、該加速度計測手段により計測した加速度の絶対値が重力加速度の絶対値を中心とした規定範囲内である期間が一定時間継続したとき、上記データ記憶手段に対するデータの書き込み又は読み出しを停止することを特徴とするものである。
データ記憶装置が静止した状態から、その姿勢のまま自由落下すると、本データ記憶装置には、重力加速度に等しい加速度が生じる。しかし、実際にデータ記憶装置が自由落下する際には、その姿勢のまま自由落下する場合よりも、データ記憶装置が回転(自転)しながら落下する場合の方がはるかに多い。回転しながら落下する場合、加速度計測手段の計測位置がその回転中心からズレていると、その加速度計測手段により計測される加速度の絶対値は、重力加速度の絶対値を中心としてその回転周期で変動する。また、加速度計測手段の計測精度によっては多少の計測誤差が生じることも考慮しなければならない。よって、本請求項のデータ記憶装置においては、データの書き込み又は読み出しを停止させるのは、加速度計測手段により計測した加速度の絶対値が重力加速度の絶対値を中心とした規定範囲内であるという第1の条件を満たす場合に限っている。この規定範囲は、本データ記憶装置の利用態様に応じて予測される自由落下時の回転速度、加速度計測手段の計測精度などを考慮して、適宜設定される。
一方で、データ記憶装置が自由落下していない場合でも、例えば、利用者が本データ記憶装置を鉛直方向下方に向かって移動させたり、本データ記憶装置が鉛直方向上下に振動したりすると、重力加速度の絶対値を中心とした規定範囲内にある加速度が。加速度計測手段により瞬間的に計測されることもある。そのため、上記第1の条件だけでは、データ記憶装置が自由落下しているか否かを正確に認識することはできない。ここで、データの書き込み中や読み出し中に衝撃を受けたときに発生し得る上述した不具合の発生確率は、一般に、その衝撃の大きさが大きいほど高まる傾向にある。よって、不具合の発生確率が高い大きな衝撃を効果的に抑制できれば、その不具合の発生を大幅に抑制することができる。そして、このような大きな衝撃は、ある程度高い位置から落下したときに生じる。したがって、落下を開始してから地面や床等に衝突するまでの時間が比較的長い自由落下さえ認識できれば、上記不具合の発生を大幅に抑制できる。
そこで、本請求項のデータ記憶装置においては、上記第1の条件に加え、この第1の条件を満たす期間が一定時間継続するという第2の条件を用い、これらの条件を満たしたときにはじめてデータの書き込み又は読み出しを停止させる。これにより、上記既定範囲及び上記一定期間を適宜設定することで、データ記憶装置が自由落下していないにもかかわらず加速度が規定値以下のゼロに近い値であると瞬間的に計測される場合を排除できる。なお、上記一定期間は、データの書き込み又は読み出しに関して採用する装置構成などによって決まる衝撃耐性に応じて適宜設定される。例えば、10cmまでの高さからならデータ書き込み時又はデータ読み出し時に自由落下してもその衝撃に耐えられる装置構成であれば、上記一定期間を0.14秒程度に設定すればよい。この設定により、10cmを越える高さからの自由落下をその衝撃前に精度よく認識することが可能である。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1のデータ記憶装置において、上記加速度計測手段は、互いに直交する3軸方向の加速度成分をそれぞれ計測するものであり、上記データ処理手段が用いる上記加速度の絶対値は、該加速度計測手段により計測した各加速度成分を合成したものの絶対値であることを特徴とするものである。
データ記憶装置が回転(自転)しながら落下する場合、その回転の向きを予測することは不可能であり、また、自由落下中のデータ記憶装置に生じる加速度の向きはその回転周期で変化する。そのため、加速度計測手段が、1方向の加速度しか計測できないものや、互いに直交する2方向の加速度しか計測できないものであると、自由落下中のデータ記憶装置に生じる加速度の絶対値を正確に計測することができない。本請求項2のデータ記憶装置では、加速度計測手段として、互いに直交する3軸方向の加速度成分をそれぞれ計測するものを用い、計測した各加速度成分を合成したものの絶対値を上記加速度の絶対値として利用して、データの書き込み又は読み出しを停止させる。よって、データ記憶装置が回転しながら落下する場合でも、その衝撃前により精度よく自由落下を認識することができる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のデータ記憶装置を有することを特徴とするものである。
この移動体通信端末としては、PDC(Personal Digital Cellular)方式、GSM(Global System for Mobile Communication)方式、TIA(Telecommunications Industry Association)方式等の携帯電話機、IMT(International Mobile Telecommunications)−2000で標準化された携帯電話機、TD−SCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)方式の一つであるTD−SCDMA(MC:Multi Carrier)方式の携帯電話機、PHS(Personal Handyphone Service)、自動車電話機等の電話機が挙げられる。また、この移動体通信端末としては、表示手段を有し、利用者に把持された状態で使用されるものであればよく、上記電話機のほか、電話機能を有しないPDA(Personal Digital Assistance)等の移動型の移動体通信端末なども含まれる。
【発明の効果】
【0012】
以上、請求項1乃至3の発明によれば、実際に落下しているか否かを高い精度で認識することができる結果、実際には落下していないにも関わらずデータの書き込みや読み出しを停止させてしまう事態の発生を抑制することができるという優れた効果が奏される。
特に、請求項2の発明によれば、データ記憶装置が回転しながら落下する場合でも、その衝撃前により精度よく自由落下を認識することができ、上記事態の発生を効果的に抑制することができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を移動体通信端末としての携帯電話機に適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図2は、上記携帯電話機20の外観を示す正面図であり、図3は、その携帯電話機20のハードウェア構成を示す概略構成図である。
この携帯電話機20は、クラムシェル(折り畳み)タイプの携帯電話機であり、システムバス200、CPU201、RAM202やROM203等からなる内部制御装置、入力装置204、出力装置205、携帯電話用通信装置206、加速度センサ207、地磁気センサ208を備えている。CPU201やRAM202等の構成要素は、システムバス200を介して、互いに各種データや後述のプログラムの命令等のやり取りを行っている。上記入力装置204は、データ入力キー(テンキー、*キー、#キー)21、通話開始キー22、終話キー23、スクロールキー24、多機能キー25、マイク26などから構成されている。上記出力装置205は、表示手段としての液晶ディスプレイ(LCD)27、スピーカ28等から構成されている。上記携帯電話用通信装置206は、携帯電話通信網10を介して他の携帯電話機やインターネット上のサーバ装置と通信するためのものである。
【0014】
上記加速度センサ207は、データ入力キーが設けられた操作面に対して平行な面内で互いに直交する2方向(図2中、X軸方向及びY軸方向)に向かう加速度αX,αYと、その面の法線方向(図2中、Z軸方向)に向かう加速度αZとを検出する加速度計測手段としての3軸の加速度センサである。この加速度センサ207は、携帯電話機20の内部に設けられた図示しない回路基板上に実装されており、上記加速度αX,αY,αZを検出できる公知のものを用いることができる。
また、上記地磁気センサ208は、上記X軸、Y軸、Z軸からなる3次元座標上における地磁気の磁界強度成分(磁束密度成分)を検知する3軸のセンサである。そして、本実施形態では、この地磁気センサ208の検知結果を利用して、X軸、Y軸及びZ軸のまわりの角度θX,θY,θZを検出する。具体的には、地磁気の方向が、基準となる地磁気の方向(基準方向)に対して変化したときの変化量を、X軸、Y軸及びZ軸のまわりの角度θX,θY,θZを用いて検出する。これにより、地磁気の方向が基準方向にあるときの姿勢から携帯電話機がその姿勢を変化させたとき、その変化後の姿勢を各角度θX,θY,θZによって特定することができる。なお、以下の説明では、X軸まわりの角度θXをピッチ角といい、Y軸まわりの角度θYをロール角といい、Z軸まわりの角度θZをヨー角という。また、ここでいうヨー角θZは、上記Y軸を水平面上に投影した水平投影Y軸と北方位との角度を示すものである。よって、このヨー角θZにより、携帯電話機20の水平投影Y軸が向いている方位を把握することができる。この地磁気センサ208も、携帯電話機20の内部に設けられた図示しない回路基板上に実装されている。
なお、上記加速度センサ207及び上記地磁気センサ208は、携帯電話機20の本体とは別体の装置として構成してもよい。この場合、上記加速度センサ207及び上記地磁気センサ208については、これらのセンサ207,208を備えた外部装置を、携帯電話機20の本体と一体になるように接続する。
【0015】
図4は、上記携帯電話機20の主要部を抽出して示したブロック図である。
この携帯電話機20は、無線通信手段としての電話通信部211及びデータ通信部212、操作手段としての操作部213、データ処理手段及びデータとしての主制御部215、出力部216、センサ検知部217、データ記憶手段としての記憶部218等を備えている。
【0016】
上記電話通信部211は、他の携帯電話機や固定電話機と電話通信を行うために、携帯電話通信網10の基地局と無線通信を行うものであり、上述のハードウェア構成上の携帯電話用通信装置206等に対応する。
上記データ通信部212は、上記電話通信部211と同様に、上述のハードウェア構成上の携帯電話用通信装置206等に対応する。このデータ通信部212は、携帯電話機通信網10を介して他の携帯電話機とメールのやり取りを行ったり、携帯電話機通信網10からゲートウェイサーバを介して、インターネット等の外部の通信ネットワークに接続し、インターネット上での電子メールのやり取りやWebページの閲覧等を行ったりするためのものである。
上記操作部213は、ユーザー1により操作される上述のテンキー21、通話開始キー22、終話キー23等で構成されている。この操作部213を操作することにより、ユーザーは、携帯電話機20に対してURL等のデータを入力したり、電話着信の際に通話の開始及び終了を行ったりすることができる。
【0017】
上記主制御部215は、上記電話通信部211、データ通信部212、出力部216、センサ検知部217、記憶部218を制御するものであり、上述のシステムバス200、CPU201やRAM202等で構成されている。この主制御部215は、データ処理手段として機能し、記憶部218のRAM202に対するデータ(プログラムを含む)の書き込み及び読み出し、並びに、記憶部218のROM203からのデータの読み出しを行う。また、主制御部215は、ROM203から読み出したデータに従い、上記電話通信部211や上記データ通信部212等の通信制御などを行う。
【0018】
上記出力部216は、上述の液晶ディスプレイ27、スピーカ28等からなる出力装置205等で構成されている。出力部216は、上記データ通信部212で受信したWebページ画面を液晶ディスプレイ27に表示する。また、この出力部216の液晶ディスプレイ27は、上記電話通信部211やデータ通信部212で情報を着信した旨をユーザーに報知するときに用いられる。具体的には、その情報を着信すると、主制御部215により、出力部216の液晶ディスプレイ27に着信報知画像を表示したり、スピーカ28から着信音を出力させたりする。
【0019】
上記センサ検知部217は、上述の加速度センサ207や地磁気センサ208等で構成されている。このセンサ検知部217は、上記主制御部215の制御の下で動作し、その検知データは主制御部215が取得する。検知データである加速度αX,αY,αZのデータ、ピッチ角θX、ロール角θY及びヨー角θZのデータは、記憶部218のRAM202に記憶される。
また、携帯電話機20の姿勢が変わると、その姿勢の変化後における磁界強度成分(磁束密度成分)がセンサ検知部217を構成する地磁気センサ208によって検知される。センサ検知部217は、地磁気センサ208で検知された検出信号から姿勢変化後のそれぞれの角度θx,θY,θZを算出する。算出した各角度θx,θY,θZのデータは、加速度αx,αY,αZの場合と同様に、主制御部215へ出力され、主制御部215によってRAM202内に保存される。
また、携帯電話機20の向きが変わると、その向きの変化後における磁界強度成分(磁束密度成分)がセンサ検知部217を構成する地磁気センサ208によって検知される。センサ検知部217は、地磁気センサ208で検知された検出信号から向きの変化後におけるヨー角θZを算出する。算出したヨー角θZのデータも、同様に、主制御部215へ出力され、主制御部215によってRAM202内に保存される。
【0020】
なお、RAM202へ保存する加速度αx,αY,αZや各角度θx,θY,θZのデータを、主制御部215がセンサ検知部217から取得する方法としては、次のようなものが挙げられる。例えば、主制御部215からセンサ検知部217へリクエストを送り、これに応じてセンサ検知部217が出力したデータを主制御部215が受信する取得方法である。また、例えば、リクエストがなくてもセンサ検知部217が連続的に出力するデータを、主制御部215が適宜受信する取得方法を採用してもよい。本実施形態では、センサ検知部217が連続的に出力するデータを、主制御部215が適宜受信する取得方法を採用する。
【0021】
上記記憶部218は、上述のRAM202やROM203などによって構成されている。この記憶部218のRAM202やROM203には、本携帯電話機におけるデータ処理に必要なデータが記憶されており、そのデータは必要に応じてCPU201やRAM202中の作業エリアに呼び出されて使用される。ここで、RAM202は、一般に広く利用されているデータ書き換え可能な不揮発性半導体メモリからなる。このような半導体メモリは、データの書き込み中や読み出し中に衝撃を受けると、正確なデータの書き込みや読み出しを行えなくなったり、すでに記憶されている記憶データが破壊されたり、メモリ自体が破損したりするという不具合が生じるおそれがある。ユーザー1が持ち歩いたり、手に持って取り扱ったりする携帯電話機20においては、これをユーザー1の不注意等によって落下させてしまい、強い衝撃が加わってしまうことが多い。この強い衝撃がデータの書き込み中や読み出し中に加わると、半導体メモリは、データの書き込み中や読み出し中に衝撃を受けると、上述した不具合が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、以下に説明するように、携帯電話機20が落下しているか否かを精度良く検知して、落下による衝撃が加わる前にデータの書き込みや読み出しを停止する。
【0022】
以下、本発明の特徴部分である、記憶部218のRAM202に対する主制御部215のデータ書込処理について説明する。なお、記憶部218のRAM202又はROM203に対する主制御部215のデータ読み出し処理についても同様である。
【0023】
図1は、記憶部218のRAM202に対する主制御部215のデータ書込処理の流れを示すフローチャートである。
例えば、ユーザー1が携帯電話通信網10を介して画像データやアプリケーションプログラム等のデータをダウンロードしたとする。このような場合、主制御部215では、そのダウンロードしたデータを記憶部218のRAM202へ保存するためにデータ書込処理が発生する(S1)。データ書込処理が発生すると、主制御部215は、まず、センサ検知部217によって検知される加速度αX,αY,αZのデータを連続的に取得するサンプリング処理を開始する(S2)。その後、主制御部215は、加速度αX,αY,αZのデータを1組として予め決められた組数をサンプリングしたら、各組について、加速度αX,αY,αZのデータにより特定されるX軸、Y軸、Z軸の加速度成分を合成した加速度の絶対値を算出する(S3)。そして、主制御部215は、算出した加速度の絶対値のすべてが予め決められた既定範囲内であるか否かを判断する(S4)。この判断において既定範囲内であると判断すると、主制御部215は、携帯電話機20が自由落下していると認識する。これにより、主制御部215は、データ書込処理を停止するとともに(S10)、液晶ディスプレイ27上にデータ書込処理を停止した旨の通知画面を表示させるべく、出力部216に対して表示命令を出力する(S11)。これにより、落下の衝撃による不具合発生を防止するためにデータ書込処理を停止した旨が、ユーザー1に報知される。
【0024】
ここで、携帯電話機20が一定の姿勢で自由落下しているときは、加速度センサ207により計測される加速度の絶対値は理論的には重力加速度の絶対値に等しい。しかし、実際に携帯電話機20が自由落下する際には、一定の姿勢で自由落下する場合よりも、回転(自転)しながら落下する場合の方がはるかに多い。回転しながら落下する場合、加速度センサ207の設置箇所がその回転中心からズレていると、その加速度センサ207の検知データから得られる加速度の絶対値は、重力加速度の絶対値を中心としてその回転周期で変動する。また、加速度センサ207の計測精度によっては多少の計測誤差が生じることもあり、この誤差も考慮しなければならない。よって、本実施形態では、上記規定範囲を、携帯電話機20が自由落下する際に通常生じ得る範囲内の回転速度に応じた加速度変動と、上記加速度センサ207の計測誤差とを考慮して、設定した。
また、携帯電話機20が回転しながら落下する場合、その回転の向きを予測することは不可能であり、また、自由落下中の携帯電話機20に生じる加速度の向きはその回転周期で変化する。そのため、1方向の加速度しか計測できないものや、互いに直交する2方向の加速度しか計測できない加速度センサを用いたのでは、自由落下中の携帯電話機20に生じる加速度の絶対値を正確に計測することができない。よって、本実施形態では、互いに直交する3軸方向の加速度成分をそれぞれ計測する加速度センサ207を用いている。そして、計測した各加速度成分を合成したものの絶対値を、携帯電話機20に生じる加速度の絶対値として認識する。これにより、データ記憶装置が回転しながら自由落下する場合でも、その自由落下を精度よく認識することができる。
また、1回のサンプリング処理においてサンプリングされる加速度データの組数、すなわち、加速度のサンプリング期間(一定期間)は、データの書込対象となるRAM202の構成や書込方式などの装置構成によって決まる衝撃耐性に応じて設定される。本実施形態においては、データの書込対象であるRAM202は広く利用されている半導体メモリであり、おおよそ30cmまでの高さからならデータ書き込み時又はデータ読み出し時に自由落下してもその衝撃に耐えられる装置構成になっている。30cmの高さから自由落下したときにその携帯電話機20が床や地面に衝突するまでに要する時間は約0.25秒であるので、本実施形態では、サンプリング処理が終了してからデータ書込処理が実際に停止するまでの処理時間を考慮して、上記サンプリング期間を0.2秒に設定している。そして、本実施形態では、センサ検知部217からの加速度データの出力間隔は0.02秒であるため、1回のサンプリング処理においてサンプリングされる加速度データの組数は、10個に設定されている。
【0025】
上記S4の判断において既定範囲内でないと判断した場合、主制御部215は、携帯電話機20が自由落下していないと認識し、記憶部218のRAM202に対してデータ書込処理を開始する(S5)。これにより、データが順次RAM202の所定のメモリ領域に書き込まれていく。主制御部215は、データ書込処理を開始した後も、このデータ書込処理が終了するまで(S9)、上記S2〜上記S4の処理と同様に、加速度のサンプリング処理、加速度の絶対値の算出、算出した加速度の絶対値のすべてが既定範囲内であるか否かの判断を行う(S6〜S8)。この判断において、この判断において既定範囲内であると判断すると、主制御部215は、携帯電話機20が自由落下していると認識する。これにより、主制御部215は、データ書込処理を停止するとともに(S10)、液晶ディスプレイ27上にデータ書込処理を停止した旨の通知画面を表示させるべく、出力部216に対して表示命令を出力する(S11)。これにより、落下の衝撃による不具合発生を防止するためにデータ書込処理を停止した旨が、ユーザー1に報知される。
【0026】
なお、本実施形態では、データ書込処理が発生した後にサンプリング処理を開始しているが、このサンプリング処理の開始時期は特に限定されず、例えばデータ書込処理が発生する前から行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、半導体メモリからなるRAM202に対するデータ書込処理又はデータ読出処理を例に挙げたが、データの書き込み中や読み出し中に自然落下による衝撃を受けると不具合が生じ得るデータ記憶手段であれば、他のデータ記憶手段に対するデータ書込処理又はデータ読出処理においても同様の効果を得ることができる。また、このデータ記憶手段としては、本実施形態のRAM202にように本体に対して固定的に設けられる内部記憶装置であっても、本体に対して着脱可能なメモリーカード等の外部記憶装置であってもよい。この外部記憶装置の具体例としては、SDメモリーカード、CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)メモリーカード、スマートメディア、メモリースティック、MMC(マルチメディアカード)等が挙げられる。内部記憶装置としては、ハードディスク装置や、CD−ROMやDVD−ROMなどの光ディスク装置などが挙げられる。なお、ハードディスク装置のようにヘッドを記録面(ディスク面)に近接させてデータの書き込みや読み出しを行う装置構成においては、単にデータ書込処理を停止するだけでなく、ヘッドを支持するアームを固定したり、ヘッドを記録面から外れた位置へ待避させたりするのが望ましい。
また、本発明は、上述した携帯電話機20に限らず、広く、データの書き込み中や読み出し中に自然落下による衝撃を受けると不具合が生じ得るデータ記憶手段を備えたデータ記憶装置に対して有用である。特に、ユーザー1が持ち歩いたり手に持って取り扱ったりする移動体通信端末においては、ユーザー1の不注意等によって自由落下してしまう事態が多いので、これに適用するのが有益である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の携帯電話機におけるRAMに対する主制御部のデータ書込処理の流れを示すフローチャート。
【図2】同携帯電話機の外観を示す正面図。
【図3】同携帯電話機のハードウェア構成を示す概略構成図。
【図4】同携帯電話機の主要部を抽出して示したブロック図。
【符号の説明】
【0028】
20 携帯電話機(移動体通信端末)
207 加速度センサ(加速度計測手段)
215 主制御部
217 センサ検知部
218 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶するデータ記憶手段と、
該データ記憶手段に対してデータの書き込み及び読み出しを行うデータ処理手段とを備えたデータ記憶装置において、
加速度を計測する加速度計測手段を有し、
上記データ処理手段は、該加速度計測手段により計測した加速度の絶対値が重力加速度の絶対値を中心とした規定範囲内である期間が一定時間継続したとき、上記データ記憶手段に対するデータの書き込み又は読み出しを停止することを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項2】
請求項1のデータ記憶装置において、
上記加速度計測手段は、互いに直交する3軸方向の加速度成分をそれぞれ計測するものであり、
上記データ処理手段が用いる上記加速度の絶対値は、該加速度計測手段により計測した各加速度成分を合成したものの絶対値であることを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項3】
請求項1又は2のデータ記憶装置を有することを特徴とする移動体通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−11892(P2006−11892A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189151(P2004−189151)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(501440684)ボーダフォン株式会社 (654)
【Fターム(参考)】