説明

データ記録装置及びデータ記録装置の時刻校正方法

【課題】連続的な時間変化による時刻校正を可能にするデータ記録装置及びデータ記録装置の時刻校正方法を実現する。
【解決手段】内部基準クロック30が発生する一定周期の発振信号を規定数カウントすることにより時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じて内部時刻を計時する内部時計40と、地震の揺れを測定した地震波データとともに内部時計40が計時する内部時刻データを記録する加速度検出器20を有する地震計100において、地震計100は内部時計40の時刻校正のためにGPS信号を受信し、GPS信号に応じた標準時刻と内部時計40が計時する内部時刻とのずれ量とずれ方向を検出するとともに、そのずれ量とずれ方向に応じて発振信号の規定数を変更することにより、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように連続的な時間変化による時刻校正を行うこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記録装置及びデータ記録装置の時刻校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震の振動に関する地震波データを記録する地震計において、地震を観測した時刻であって地震波データを記録した時刻をより正確なものとするために、地震計に内蔵される内部時計を、GPS(Global Positioning System)信号を利用して自動的に時刻校正する地震計が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−148678号公報
【特許文献2】特開2001−215283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の場合、真の時刻からずれている内部時計の時刻を校正する際、その時刻校正のタイミングにおいて内部時計の時刻が瞬時に真の時刻となるため、図3に示すように、内部時計が刻んだ時間が非連続的になってしまう。
この時刻校正タイミングに地震波データを記録してしまうと、地震波データの波形データの連続性が保てないため、その波形データの信頼性が得られず、震度やSI値(Spectrum Intensity値)の計算に不都合が生じてしまうという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、連続的な時間変化による時刻校正を可能にするデータ記録装置及びデータ記録装置の時刻校正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
基準器が発生する一定周期の発振信号を規定数カウントすることに基づき時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じた時刻を計時する内部時計と、所定のデータを測定する測定器と、を備え、前記測定器が測定したデータとともに前記内部時計が計時する時刻を記録するデータ記録装置であって、
所定の標準時刻信号を取得する標準時刻信号取得手段と、
前記標準時刻信号取得手段により取得された標準時刻信号に応じた標準時刻と前記内部時計が計時する内部時刻とのずれ量と、前記標準時刻に対する前記内部時刻のずれ方向とを検出する時刻ずれ検出手段と、
前記時刻ずれ検出手段により検出されたずれ量及びずれ方向に応じて、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更する規定数変更手段と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデータ記録装置において、
前記規定数変更手段は、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ方向が前記標準時刻に対し前記内部時刻が進んでいる場合は前記規定数を増やし、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ方向が前記標準時刻に対し前記内部時刻が遅れている場合は前記規定数を減らすとともに、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が大きいほど前記規定数の増減幅を大きくし、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が小さいほど前記規定数の増減幅を小さくする変更を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のデータ記録装置において。
前記測定器は地震の振動を測定する機器であり、当該データ記録装置は、前記測定器が測定した振動とその振動とともに記録された時刻とに基づき、地震の揺れに関する地震データを算出する計算手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、
基準器が発生する一定周期の発振信号を規定数カウントすることに基づき時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じた時刻を計時する内部時計と、所定のデータを測定する測定器と、を備え、前記測定器が測定したデータとともに前記内部時計が計時する時刻を記録するデータ記録装置の時刻校正方法であって、
所定の標準時刻信号を取得する標準時刻信号取得工程と、
前記標準時刻信号取得工程において取得された標準時刻信号に応じた標準時刻に対する内部時計が計時する内部時刻の一次関数を設定する関数設定工程と、
前記関数設定工程において設定された一次関数の傾きが1以上である場合、その傾きが1以下となるように前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更し、前記関数設定工程において設定された一次関数の傾きが1以下である場合、その傾きが1以上となるように、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更する規定数変更工程と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のデータ記録装置の時刻校正方法において、
前記標準時刻信号取得工程は、所定の時間間隔毎に行われ、
前記規定数変更工程は、次の標準時刻信号取得工程のタイミングまでの間に、傾きが1の基準一次関数に、前記関数設定工程において設定された一次関数が交差する傾きとなるように、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のデータ記録装置の時刻校正方法において、
前記規定数変更工程において変更された規定数に応じた一次関数が、傾きが1の基準一次関数に交差するタイミングを判断する交差判断工程と、
前記交差判断工程において判断されたタイミングに、前記一次関数の傾きが1となるように、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更する交差時規定数変更工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、データ記録装置は、基準器が発生する一定周期の発振信号を内部時計が規定数カウントすることに基づき時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じて内部時計が内部時刻を計時することができ、測定器が測定したデータとともに内部時計が計時する内部時刻を記録することができる。
そして、データ記録装置は、その内部時計の時刻校正のために標準時刻信号を取得し、その標準時刻信号に応じた標準時刻と、内部時計が計時する内部時刻とのずれ量とずれ方向とを検出することができ、そのずれ量及びずれ方向に応じて内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更することができる。
【0012】
つまり、データ記録装置において、基準器が発生する一定周期の発振信号を内部時計が規定数カウントすることに基づき、その内部時計が計時する時間速度を設定するようになっているので、標準時刻と内部時刻とにずれが生じた場合には、標準時刻と内部時刻とのずれ量及びずれ方向に応じて内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更することにより、内部時計が計時する時間速度を調整して、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことが可能になる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、データ記録装置において、時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ方向が標準時刻に対し内部時刻が進んでいる場合は、内部時計がカウントする発振信号の規定数を増やすことによって、内部時計が計時する時間速度を遅くするようにして、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように調整することができる。また、時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ方向が標準時刻に対し内部時刻が遅れている場合は、内部時計がカウントする発振信号の規定数を減らすことによって、内部時計が計時する時間速度を速くするようにして、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように調整することができる。
また、時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が大きいほど、内部時計がカウントする発振信号の規定数の増減幅を大きくする変更を行うことによって、速やかな時刻校正を行うことができる。また、時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が小さいほど、内部時計がカウントする発振信号の規定数の増減幅を小さくする変更を行うことによって、穏やかな時刻校正を行うことができる。
【0014】
具体的には、データ記録装置は、内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更する処理である、内部時計の分周比率を変更する処理を実行することにより、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、データ記録装置は、その測定器が測定した地震の振動に関するデータを記録することができるとともに、その振動データとともに記録された時刻データとに基づき、地震の揺れに関する地震データである震度やSI値などを算出することができる。
特に、データ記録装置は、連続的な時間変化による時刻校正を行うことができるため、地震の振動データを記録する際に内部時刻が非連続的になることがないので、記録された振動データや、算出された地震データを信頼性の高いものにすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、データ記録装置は、基準器が発生する一定周期の発振信号を内部時計が規定数カウントすることに基づき時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じて内部時計が内部時刻を計時することができ、測定器が測定したデータとともに内部時計が計時する内部時刻を記録することができる。
そして、そのデータ記録装置の時刻校正方法によれば、その内部時計の時刻校正のために標準時刻信号を取得し、その標準時刻信号に応じた標準時刻に対する内部時計が計時する内部時刻の一次関数を設定することができ、その設定された一次関数の傾きに応じて内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更することができる。
【0017】
つまり、データ記録装置において、基準器が発生する一定周期の発振信号を内部時計が規定数カウントすることに基づき、その内部時計が計時する時間速度を設定するようになっているので、標準時刻と内部時刻とにずれが生じたために、設定された一次関数の傾きが1からずれた場合には、その傾きのずれに応じて内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更することにより、内部時計が計時する時間速度を調整して、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことが可能になる。
具体的には、設定された一次関数の傾きが1以上であって、標準時刻に対し内部時刻が進んでいる場合は、内部時計がカウントする発振信号の規定数を増やすことによって、内部時計が計時する時間速度を遅くするようにして、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように調整することができる。また、設定された一次関数の傾きが1以下であって、標準時刻に対し内部時刻が遅れている場合は、内部時計がカウントする発振信号の規定数を減らすことによって、内部時計が計時する時間速度を速くするようにして、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように調整することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、データ記録装置の時刻校正方法によって、所定の時間間隔毎に標準時刻信号を取得するとともに、次の標準時刻信号を取得するタイミングまでの間に、傾きが1の基準一次関数に、設定された一次関数が交差する傾きとなるように、内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更することができるので、ずれてしまった内部時刻が標準時刻に確実に近付くように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことが可能になる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は5に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、内部時計がカウントする発振信号の規定数が変更されたことに応じた一次関数が、傾きが1の基準一次関数に交差するタイミングに、その一次関数の傾きが1となるように、内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更することができるので、ずれてしまった内部時刻が標準時刻に一致し、また内部時刻の時間速度が標準時刻の時間速度に一致するように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るデータ記録装置及びデータ記録装置の時刻校正方法の実施形態を図面を参照して説明する。
なお、本実施の形態においては、データ記録装置として、地震を観測して地震の震度を測定する地震計について説明する。
【0021】
地震計100は、図1に示すように、標準時刻信号であるGPS信号を受信して取得する標準時刻信号取得手段としてのGPS受信機10と、地震に関するデータを測定する測定器である加速度検出器20と、一定周期の発振信号を発生する基準器である内部基準クロック30と、地震計100内において地震計用の時刻を計時する内部時計40と、上記各部を制御するCPU50等を備えている。
そして、地震計100は、加速度検出器20が測定する地震に関するデータとともに、内部時計40が計時する時刻を記録するデータ記録装置である。
【0022】
GPS受信機10は、GPSアンテナ11を備えており、GPSアンテナ11を介してGPS衛星から送信されるGPS信号を受信する。
そして、GPS受信機10は、GPS信号に含まれる標準時刻情報に基づいて、「年月日時分秒」を示す時刻データであるシリアル信号と、GPSパルス信号を内部時計40に発信する。
【0023】
加速度検出器20は、地震計100が設置された地点の振動や揺れを検出して、その検出した振動や揺れに関する加速度を地震波データとしての電気信号に変換し、CPU50に出力する。
なお、加速度検出器20には、内部基準クロック30からサンプリングクロック信号が入力されており、加速度検出器20が検出した振動や揺れに関する地震波データに、地震発生時刻を示す時刻データを付与するようになっている。
【0024】
内部基準クロック30は、例えば、1ppm程度の周波数精度を有する水晶発振器を備えており、一定周期の発振信号を常に内部時計40に出力する。
【0025】
内部時計40は、内部基準クロック30の水晶発振器から入力された発振信号の周波数を変換して、内部時計40における時間速度を設定するためのクロック信号を生成させるカウンタ回路(分周器)であって、そのクロック信号に応じた内部時刻を計時する。
例えば、内部時計40は、規定数が10000である10000分周である場合、内部基準クロック30の発振信号を10000カウントすることを1単位とし、100単位分カウントした際に1秒であるという100Hzのクロック信号を生成する。そして、内部時計40は、そのクロック信号が刻む1秒を所定の時間速度として内部時刻を計時する。なお、10000分周が10001分周となるとその時間速度は1分周分遅くなり、10000分周が9999分周となるとその時間速度は1分周分速くなる。
【0026】
また、内部時計40は、GPS受信機10により取得されたGPS信号に応じた標準時刻と内部時計40自身が計時する内部時刻とのずれ量と、標準時刻に対する内部時刻のずれ方向とを検出する時刻ずれ検出手段として機能する。そして、検出したずれ量及びずれ方向に関する時刻ずれデータをCPU50に出力する。
具体的には、時刻ずれ検出手段としての内部時計40は、例えば、GPS信号に応じた標準時刻と内部時計40自身が計時する内部時刻とを比較し、標準時刻に対して内部時刻が何秒ずれているか(ずれ量)、標準時刻に対して内部時刻が進んでいるか遅れているか(ずれ方向)を検出し、その時刻ずれデータをCPU50に出力する。
【0027】
CPU50は、図示しないROM等の記憶手段に記憶される規定数変更プログラムを実行することによって、内部時計40から入力されたずれ量及びずれ方向に関する時刻ずれデータに応じて、内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する規定数変更手段として機能する。
具体的には、規定数変更手段としてのCPU50は、内部時計40から入力された時刻ずれデータが、標準時刻に対し内部時刻が進んでいるデータである場合は規定数を増やす変更を、また、内部時計40から入力された時刻ずれデータが、標準時刻に対し内部時刻が遅れているデータである場合は規定数を減らす変更を行うための制御指令を内部時計40に出力する制御を実行する。
また、規定数変更手段としてのCPU50は、内部時計40から入力された時刻ずれデータにおけるずれ量(例えば、ずれ量の値である秒数)が大きいほど規定数の増減幅を大きくする変更を、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が小さいほど規定数の増減幅を小さくする変更を行うための制御指令を内部時計40に出力する制御を実行する。
なお、規定数変更手段としてのCPU50が変更する規定数の増減幅は、例えば、ずれ量0.01秒に付き±1のように、地震計100の内部時計40に必要な精度に応じて予め設定されている。
【0028】
また、CPU50は、図示しないROM等の記憶手段に記憶される地震計算プログラムを実行することによって、加速度検出器20から入力された地震波データと、その地震波データ観測時に内部時計40によって計時された時刻データとに基づき、地震の揺れに関する地震データ(例えば、震度やSI値など地震に関するデータ)を算出する計算手段として機能する。
なお、計算手段としてのCPU50が、地震の揺れに関する地震データである震度やSI値などを算出するための計算処理は、従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0029】
次に、本発明に係る地震計100の時刻校正方法について、図2を参照して説明する。
地震計100は、所定の時間間隔毎に時刻校正を行うようになっており、例えば、1分毎に時刻校正を行う。そして、内部時計40の規定数は10000に設定されている。
【0030】
図2に示すように、標準時刻に対応する0分のタイミングにおいて時刻校正を行うためにGPS信号を受信した際、そのGPS信号に応じた標準時刻と、内部時計40が計時する内部時刻は一致している。
この場合、CPU50は、規定数を10000に維持する。
【0031】
次いで、標準時刻に対応する1分のタイミングにおいて時刻校正を行うためにGPS信号を受信した際、そのGPS信号に応じた標準時刻に対して内部時計40が計時する内部時刻は遅れている。
この時の遅れが0.0002秒であると内部時計40がCPU50に時刻ずれデータを出力すると、CPU50は、規定数を9998に減らす変更処理(分周比率変更処理)を行い、内部時計40の時間速度を速める制御を実行する。
そして、内部時計40は、設定変更された規定数に応じたクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じた内部時刻を計時することによって、内部時刻が徐々に標準時刻(例えば、基準ラインによって示される標準時刻)に近付く、連続的な時間変化を伴う時刻校正が行われることとなる。
【0032】
次いで、標準時刻に対応する2分のタイミングにおいて時刻校正を行うためにGPS信号を受信した際、そのGPS信号に応じた標準時刻に対して内部時計40が計時する内部時刻は進んでいる。
この時の進みが0.0001秒であると内部時計40がCPU50に時刻ずれデータを出力すると、CPU50は、規定数を10001に増やす変更処理(分周比率変更処理)を行い、内部時計40の時間速度を遅らせる制御を実行する。
そして、内部時計40は、設定変更された規定数に応じたクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じた内部時刻を計時することによって、内部時刻が徐々に標準時刻に近付く連続的な時間変化を伴う時刻校正が行われることとなる。
【0033】
このように、本発明に係る地震計100は、1分毎に行う時刻校正処理において、内部時計40の分周比率を変更する処理を実行することにより、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことができる。
特に、内部基準クロック30の水晶発振器は、環境温度に応じて膨張/収縮してしまうことにより、その水晶発振器が発振する発振信号に狂いが生じてしまうことが避けられないが、地震計100における時刻校正処理は、内部時計40の分周比率を変更する処理であるため、水晶発振器の発振信号に狂いが生じてしまった場合であっても、好適に時刻校正を行うことが可能になる。
従って、地震計100が記録する地震波データとともに記録される時刻データの信頼性が向上することとなって、地震波データや、その地震波データに基づく地震の震度情報の信頼性も向上する。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、時刻ずれ検出手段としての内部時計40は、GPS信号に応じた標準時刻に対する内部時計40自身が計時する内部時刻の一次関数を設定し、その一次関数の傾きを時刻ずれデータとしてCPU50に出力する関数設定制御を実行することも可能である。
具体的には、時刻ずれ検出手段としての内部時計40が関数設定制御を実行する場合、例えば、標準時刻をX、内部時刻をYとする一次関数Y=aX+bを設定して、その傾きaをCPU50に出力することとなる。
なお、内部時刻にずれがなく、内部時計40が標準時刻と一致する正確な時間を計時している場合、その一次関数の傾きaの値はa=1となる。
【0035】
また、規定数変更手段としてのCPU50は、時刻ずれ検出手段としての内部時計40が関数設定制御を実行して設定した一次関数(Y=aX+b)の傾きaが入力された場合であって、その傾きaが1以上である場合、一次関数の傾きが1以下となるように内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する制御を実行する。また、その傾きaが1以下である場合、一次関数の傾きが1以上となるように内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する制御を実行する。
具体的には、規定数変更手段としてのCPU50は、内部時計40から入力された傾きaの値が1以上である場合、内部時刻は標準時刻に対して進んでいるため規定数を増やす変更を、また、内部時計40から入力された傾きaの値が1以下である場合、内部時刻は標準時刻に対して遅れているため規定数を減らす変更を行うための制御指令を内部時計40に出力する制御を実行する。なお、規定数変更手段としてのCPU50が変更する規定数の増減幅は、例えば、傾きの変化0.01(100分の1)に付き±1のように、地震計100の内部時計40に必要な精度に応じて予め設定されている。
特に、規定数変更手段としてのCPU50は、所定の時間間隔毎にGPS信号を受信して時刻校正を行う地震計100において、次のGPS信号を受信するタイミングまでの間に、傾きの値が1の基準一次関数Y=X(図2に示す基準ライン)に交差する一次関数を設定するため、その一次関数の傾きaの値を設定するように、内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する制御を実行する。
【0036】
また、CPU50は、図示しないROM等の記憶手段に記憶される交差判断プログラムを実行することによって、規定数変更手段としてのCPU50により変更された規定数に応じた一次関数が、傾きが1の基準一次関数に交差するタイミングを判断する交差判断手段として機能する。
【0037】
また、CPU50は、図示しないROM等の記憶手段に記憶される交差時規定数変更プログラムを実行することによって、交差判断手段としてのCPU50によって判断されたタイミングに、その一次関数の傾きが1となるように、内部時計がカウントする発振信号の規定数を変更する交差時規定数変更手段として機能する。
具体的には、交差時規定数変更手段としてのCPU50は、交差判断手段としてのCPU50によって判断されたタイミングに、例えば、規定数を10000とする変更処理を行う。
【0038】
そして、地震計100が行う、図2に示される時刻校正において、標準時刻に対応する1分のタイミングにおいて時刻校正を行うためにGPS信号を受信して(標準時刻信号取得工程)、内部時計40は、GPS信号に応じた標準時刻(X)に対する内部時計40が計時する内部時刻(Y)の一次関数(Y=aX+b)を設定し(関数設定工程)、その一次関数の傾きaである時刻ずれデータをCPU50に出力する。
この一次関数の傾きa(一次関数の傾きa)がa=0.9998であり、内部時刻が遅れていると、CPU50は、規定数を9998に減らす変更処理を行い、内部時計40の時間速度を速める制御を実行する(規定数変更工程)。
特に、CPU50は、次にGPS信号を受信するタイミングであって、標準時刻に対応する2分のタイミング(図2参照)までの間に、傾きの値が1の基準一次関数Y=X(図2に示す基準ライン)に、内部時計40が設定する一次関数が交差するように、その一次関数の傾きaの値を設定するように、内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する制御を実行する。
【0039】
また、地震計100が行う、図2に示される時刻校正において、標準時刻に対応する2分のタイミングにおいて時刻校正を行うためにGPS信号を受信して(標準時刻信号取得工程)、そのGPS信号に応じた標準時刻(X)に対する内部時刻(Y)の一次関数(Y=aX+b)を設定し(関数設定工程)、その一次関数の傾きaである時刻ずれデータをCPU50に出力する。
この一次関数の傾きa(一次関数の傾きa)がa=1.0001であり、内部時刻が進んでいると、CPU50は、規定数を10001に増やす変更処理を行い、内部時計40の時間速度を遅らせる制御を実行する(規定数変更工程)。なお、CPU50は、次にGPS信号を受信するタイミングであって、標準時刻に対応する3分のタイミングまでの間に、傾きの値が1の基準一次関数Y=X(図2に示す基準ライン)に、内部時計40が設定する一次関数が交差するように、その一次関数の傾きaの値を設定するように、内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する制御を実行する。
【0040】
このように、標準時刻(X)に対する内部時刻(Y)の一次関数(Y=aX+b)における傾きaを調整する制御であっても同様に、ずれてしまった内部時刻が徐々に標準時刻に近付くように、連続的な時間変化による時刻校正を行うことができる。
【0041】
なお、CPU50が、標準時刻に対応する1.75分のタイミングにおいて、内部時計40が設定する一次関数が、傾きの値が1の基準一次関数Y=X(図2に示す基準ライン)に交差すると判断した場合、その内部時刻に関する一次関数の傾きが1となるように、内部時計40がカウントする内部基準クロック30の発振信号の規定数を変更する制御を実行してもよい。
この場合、ずれてしまった内部時刻を標準時刻に一致させるとともに、内部時計40(内部時刻)の時間速度を標準時刻の時間速度に一時的にでも一致させることができる。
【0042】
また、以上の実施の形態においては、データ記録装置として、地震に関するデータを記録する地震計100を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、時刻データとともに測定データを記録するデータ記録装置であれば、その他の計測装置であってもよい。
【0043】
また、以上の実施の形態においては、GPS信号に応じた標準時刻に基づく時刻校正を行うとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ラジオ電波における時報信号や、タイムコード入りの長波標準電波に基づく時刻校正を行うようにしてもよい。
【0044】
また、以上の実施の形態においては、地震計100は、GPS信号に基づく標準時刻(X)を基準に内部時刻(Y)のずれ量を検出するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、内部時計40が計時する内部時刻(Y)を基準に標準時刻(X)を取得し、その取得した標準時刻に内部時刻を合わせるためのずれ量を検出するようにしてもよい。
【0045】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る地震計の要部構成を示すブロック図である。
【図2】地震計における内部時計を時刻校正した際の時間変化を示す説明図である。
【図3】従来の地震計における内部時計を時刻校正した際の時間変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 GPS受信機(標準時刻信号取得手段)
20 加速度検出器(測定器)
30 内部基準クロック(基準器)
40 内部時計(時刻ずれ検出手段)
50 CPU(規定数変更手段、計算手段、交差判断手段、交差時規定数変更手段)
100 地震計(データ記録装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準器が発生する一定周期の発振信号を規定数カウントすることに基づき時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じた時刻を計時する内部時計と、所定のデータを測定する測定器と、を備え、前記測定器が測定したデータとともに前記内部時計が計時する時刻を記録するデータ記録装置であって、
所定の標準時刻信号を取得する標準時刻信号取得手段と、
前記標準時刻信号取得手段により取得された標準時刻信号に応じた標準時刻と前記内部時計が計時する内部時刻とのずれ量と、前記標準時刻に対する前記内部時刻のずれ方向とを検出する時刻ずれ検出手段と、
前記時刻ずれ検出手段により検出されたずれ量及びずれ方向に応じて、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更する規定数変更手段と、
を備えることを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
前記規定数変更手段は、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ方向が前記標準時刻に対し前記内部時刻が進んでいる場合は前記規定数を増やし、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ方向が前記標準時刻に対し前記内部時刻が遅れている場合は前記規定数を減らすとともに、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が大きいほど前記規定数の増減幅を大きくし、前記時刻ずれ検出手段によって検出されたずれ量が小さいほど前記規定数の増減幅を小さくする変更を行うことを特徴とする請求項1に記載のデータ記録装置。
【請求項3】
前記測定器は地震の振動を測定する機器であり、当該データ記録装置は、前記測定器が測定した振動とその振動とともに記録された時刻とに基づき、地震の揺れに関する地震データを算出する計算手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ記録装置。
【請求項4】
基準器が発生する一定周期の発振信号を規定数カウントすることに基づき時間速度を設定するためのクロック信号を生成し、そのクロック信号に応じた時刻を計時する内部時計と、所定のデータを測定する測定器と、を備え、前記測定器が測定したデータとともに前記内部時計が計時する時刻を記録するデータ記録装置の時刻校正方法であって、
所定の標準時刻信号を取得する標準時刻信号取得工程と、
前記標準時刻信号取得工程において取得された標準時刻信号に応じた標準時刻に対する内部時計が計時する内部時刻の一次関数を設定する関数設定工程と、
前記関数設定工程において設定された一次関数の傾きが1以上である場合、その傾きが1以下となるように前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更し、前記関数設定工程において設定された一次関数の傾きが1以下である場合、その傾きが1以上となるように、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更する規定数変更工程と、
を備えることを特徴とするデータ記録装置の時刻校正方法。
【請求項5】
前記標準時刻信号取得工程は、所定の時間間隔毎に行われ、
前記規定数変更工程は、次の標準時刻信号取得工程のタイミングまでの間に、傾きが1の基準一次関数に、前記関数設定工程において設定された一次関数が交差する傾きとなるように、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更することを特徴とする請求項4に記載のデータ記録装置の時刻校正方法。
【請求項6】
前記規定数変更工程において変更された規定数に応じた一次関数が、傾きが1の基準一次関数に交差するタイミングを判断する交差判断工程と、
前記交差判断工程において判断されたタイミングに、前記一次関数の傾きが1となるように、前記内部時計がカウントする前記発振信号の規定数を変更する交差時規定数変更工程と、
を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のデータ記録装置の時刻校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−292662(P2007−292662A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122307(P2006−122307)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】