説明

データ読取装置

【課題】ICタグから離間した位置でデータの読み取り精度向上を迅速に達成する。
【解決手段】データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されたデータを送信するための通信用アンテナを備えた無線ICタグから、離間した位置でデータを読み取るためのデータ読取装置であって、無線ICタグとデータの送受信を行うためのアンテナユニットと、アンテナユニットに接続されたリーダ/ライタ又はリーダ/ライタ制御装置とを有し、リーダ/ライタは、複数のシーケンスからなる所定のアンテナ駆動パターンに従ってアンテナユニットを切り替えながら無線ICタグの読み取りを行い、読み取り結果を情報処理手段に出力することで結果の論理和を生成し、論理和に基づいて無線ICタグの読み取りを再度行うか否か、若しくは読み取り精度が容易に判定可能となり、より迅速な無線ICタグの読み出し完了を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ読取装置に関し、より詳しくは、例えばいわゆるRFIDタグ、無線ICタグのような、無線によりデータを読み取り可能な記憶媒体からデータを読み出すためのデータ読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信技術、情報処理技術の発展に伴い、いわゆる無線ICタグと呼ばれる記憶媒体に種々の情報を持たせておき、この情報を無線により読み出し、物品の管理を行う記述が展開されている。このような技術の例としては、図書館における図書にそれぞれ、当該図書の書名やコードを記憶させたICタグを付し、これを書架近傍に設けたリーダ(読取装置)により読み取ることにより、図書の管理を行うデータ読み取りシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、上記のようなデータ読み取りシステムを用いて、多数のICタグ(例えば、1000個)の読み取りを行うこと、例えば多数の在庫品に付されたICタグを読み取り、在庫管理を行うことも試みられるようになっている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−334198号公報
【特許文献2】特開平2005−306502号公報
【特許文献3】特開平2005−332026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなデータ読み取りシステムは、たとえ読取装置が放射する読取用電波の及ぶ範囲であって、その環境下においてデータの読み取りが困難になったり或いは不可能になったりする領域若しくは箇所が発生することがある。これは、読取用電波が壁や物品などに反射された反射波と直接波とがある箇所において逆位相となり互いに干渉してしまうためである。このような干渉が生じた箇所においては、無線ICタグは読取装置からの読み取り用電波を受信することができず、その結果無線ICタグからのデータ読み取りが失敗することになる。
【0006】
また、複数の読取装置や読取装置のためのアンテナが設けられている場合には、各アンテナから放出される読取用電波が互いに干渉し合い、上記と同じく干渉が生じた箇所においては無線ICタグからのデータ読み取りが失敗することになる。
【0007】
また、多数の無線ICタグの読み取りを、複数の読取装置や読取装置のためのアンテナが設けられている場合には、読み取りができなかった読み取り装置及びそのアンテナを特定し、すべての読取装置や読取装置のためのアンテナにおいて読み取りが成功するまで、読み取りを再試行する必要があるが、読み取り成功までに時間がかかってしまうと、移動中の無線ICタグを見失うなどの不都合が生ずる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、複数のアンテナをそれぞれ備えた、複数の読取装置を有するデータ読取装置において、複数のアンテナにおける読み取りの精度向上を迅速に達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明は以下の特徴を有している。
本発明にかかるデータ読取装置は、データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されたデータを送信するための通信用アンテナを備えた記憶媒体(例えば、無線ICタグ)から、離間した位置でデータを読み取るためのデータ読取装置として提案される。
【0010】
このデータ読取装置は、記憶媒体とデータの送受信を行うための複数のアンテナ手段(例えば、アンテナユニット)をそれぞれが有する、複数の制御手段(例えば、リーダ/ライタ)と、複数の制御手段に接続された情報処理手段(例えば、リーダ/ライタ制御装置)とを有し、制御手段は、複数のシーケンスからなる所定のアンテナ駆動パターンに従って、アンテナ手段を切り替えながら記憶媒体の読み取りを行い、各シーケンスにおける読み取り結果を情報処理手段に出力し、情報処理手段は、各アンテナ手段について各シーケンスにおける読み取り結果の論理和を生成し、論理和に基づいて記憶媒体の読み取りを再度行うか否かを判定する。
【0011】
かかるデータ読取装置によれば、読み取り結果の論理和に基づいて読み取りの成否若しくは精度が容易に判定可能となり、より迅速な無線ICタグの読み出し完了を実現できる。
【0012】
また、上記のデータ読取装置において、情報処理手段は、論理和に基づいて記憶媒体の読み取りを再度行う際に駆動させるアンテナ手段を特定し、当該アンテナ手段を用いた読み取りを行うよう対応する制御手段に指示を行うようにしてもよい。
【0013】
かかるデータ読取装置によれば、読み取りが成功しなかったアンテナのみを再度駆動させるため、さらに迅速な無線ICタグの読み出し完了を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のアンテナをそれぞれが備えた、複数の読取装置を有するデータ読取装置において、すべてのアンテナにおける読み取りの成功を迅速に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】データ読取装置の基本的構成の例を示す機能ブロック図。
【図2】複数のアンテナユニットを有しているデータ読取装置1の構成例を示す機能ブロック図。
【図3】複数のリーダ/ライタ、アンテナユニットを有しているデータ読取装置1の構成例を示す機能ブロック図。
【図4】(A)は、ある閉鎖された空間にリーダ/ライタ及びアンテナユニットが配置された場合の電界パターン及びデッドスポットを示す図、(B)はアンテナの放射特性が変更された後の電界パターン及びデッドスポットを示す図。
【図5】アンテナユニットからの距離とアンテナユニットが放出する電波の電界強度の関係を示すグラフ。
【図6】隣接する2つの空間に4つのアンテナユニットを設けているデータ読取装置1の例を示す図。
【図7】図6に示す配置において、隣接するリーダ/ライタからの直接波による読取妨害(干渉)の発生する例を示す図。
【図8】(A)は、本データ読取装置1の動作例を示す図、(B)は(A)の動作に続く、本データ読取装置1の動作例を示す図。
【図9】(A)は、図8(B)に続く、本データ読取装置1の動作例を示す図、(B)は図9(A)の動作に続く、本データ読取装置1の動作例を示す図。
【図10】連続する3つの空間に配置されるデータ読取装置1の例を示す図。
【図11】図10に示すデータ読取装置の動作例を示すタイミングチャート。
【図12】N個の無線ICタグの読み取りに要する時間を示すグラフ。
【図13】データ読取装置が無線ICタグの読み取り対象とする読み取り対象領域の例を示す図。
【図14】エリアにおけるアンテナユニット,これらアンテナユニットに接続されたリーダ/ライタの配置例を示す図。
【図15】第2の実施の形態にかかるデータ読取装置の構成例を示すブロック図。
【図16】第2の実施の形態にかかるデータ読取装置の動作を示すフローチャート。
【図17】6つのシーケンスで構成されるアンテナ駆動パターンのデータ例を示す図。
【図18】シーケンスS1が実行された後に、リーダ/ライタ制御装置が記憶している読み取り結果データの構成例を示す図
【図19】すべてのシーケンスS1〜S6実行後にリーダ/ライタ制御装置が記憶している読み取り結果データの構成例を示す図
【図20】読み取り結果データに基づいて生成されたOR(論理和)データの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上述した課題を解決するため、データ読取装置から放射される読取用電波の干渉により生ずる読取不可能若しくは困難な箇所/領域の発生を回避し、ICタグの位置に関わらすデータ読み取りが可能なデータ読取装置を提供することにあり、以下の特徴を有している。
【0017】
すなわち、本発明にかかるデータ読取装置は、データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されたデータを送信するための通信用アンテナを備えた記憶媒体(例えば、無線ICタグ)から、離間した位置でデータを読み取るためのデータ読取装置として提案される。
【0018】
このデータ読取装置は、記憶媒体とデータの送受信を行うための複数のアンテナ手段(例えばアンテナユニット)と、各アンテナ手段に接続された制御手段(例えば、リーダ/ライタ又はリーダ/ライタ制御装置)とを有し、各アンテナ手段はその放射特性(例えば、電界パターン、ビーム方向、ビーム幅)を制御手段からの命令に応じて変更可能であることを特徴としている。
【0019】
本データ読取装置によれば、アンテナ手段の放射特性を変更することにより、直接波或いは反射波によるデッドスポットの発生防止若しくは発生位置の変更を行うことにより、いずれの場所に記憶媒体が存在していても、デッドスポットによる読み取り不能を回避でき、その結果読み落としすることなくデータの読み出しを行うことができる。
【0020】
上記データ読取装置はさらに以下の特徴を有しても良い。すなわち、制御部は、各アンテナ手段の指向性を互いに連携して可変させることをさらなる特徴として、データ読取装置は備えていても良い。
【0021】
かかるデータ読取装置によれば、記憶媒体から送信される微弱な電波を他のアンテナ手段から放射される電波が妨害することがないため、いずれの位置に存在する記憶媒体であっても、読み落としすること(無線ICタグの読み出しエラーの発生)なくデータの読み出しを行うことができる。
【0022】
上記データ読取装置はさらに以下の特徴を有しても良い。すなわち、制御部は、複数のアンテナ手段を順次駆動させることにより、アンテナ手段から放射される電波の方向を可変にすることをさらなる特徴として、データ読取装置は備えていても良い。
【0023】
かかるデータ読取装置によれば、隣接する空間において複数のアンテナ手段からデータ読み取り用の電波を放射する場合であっても、記憶媒体から送信される微弱な電波を他のアンテナ手段から放射される電波が妨害することがないため、いずれの位置に存在する記憶媒体であっても、読み落としすることなくデータの読み出しを行うことができる。
【0024】
上記データ読取装置はさらに以下の特徴を有しても良い。すなわち、複数のアンテナのうち同時に2以上を駆動させ、同時に駆動されるアンテナは異なるビーム方向であることをさらなる特徴として、データ読取装置は備えていても良い。
【0025】
かかるデータ読取装置によれば、隣接する空間において複数のアンテナからデータ読み取り用の電波を放射する場合であっても、記憶媒体から送信される微弱な電波を他のアンテナ手段から放射される電波が妨害することがないため、いずれの位置に存在する記憶媒体であっても、読み落としすることなくデータの読み出しを行うことができる。
【0026】
[1.第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、上記した特徴を有する本発明の第1の実施形態について説明する。
[1.1.基本構成]
まず、本実施の形態におけるデータ読取装置の基本的構成の例を説明する。
【0027】
図1は、データ読取装置の基本的構成の例を示す機能ブロック図である。
データ読取装置1は、リーダ/ライタ制御装置10と、このリーダ/ライタ制御装置10に接続されたリーダ/ライタ20と、リーダ/ライタ20に接続されたアンテナユニット30とで構成される。
【0028】
リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20に読み取り動作を実行する様命令し、また、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40から読み取ったデータを送信する様命令し、リーダ/ライタ20から受け取ったデータを記憶し、所定の情報処理(例えば、在庫状況の一覧表示など)を行う機能を有する。リーダ/ライタ制御装置10は、例えば、コンピュータや各種コントローラなどである。
【0029】
リーダ/ライタ20は、制御部21と、制御部21に接続された送受信部22とを有ししている。制御部21は、リーダ/ライタ制御装置10からの命令を受け取り、これに応じて送受信部22を駆動させ、また送受信部22から出力されたデータ(無線ICタグ40から読み取ったもの)をリーダ/ライタ制御装置1に渡す機能を有している。
【0030】
送受信部22は、アンテナユニット30を介して無線ICタグ40と無線により交信を行う機能を有する。送受信部22は、変調部23と復調部24とを有している。変調部23は、制御部21から受け取った所定のコマンド、リクエスト、命令などの情報に応じた信号を所定の変調方式で変調してキャリア波を生成する。復調部24は、無線ICタグ40が記憶しているデータに応じた信号に基づいて所定の変調方式で変調されたキャリア波を復調し、当該データに応じた信号を取り出し、制御部21に渡す。
【0031】
アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20、より詳しくは変調部23から受け取ったキャリア波を空中に放射し、電波を無線ICタグ40に向けて放射すると共に、無線ICタグから放射されたキャリア波を受信し、このキャリア波をリーダ/ライタ20、より詳しくは復調部24に供給する。アンテナユニット30は、送信用アンテナ/受信用アンテナとこれを保護するためのケースで構成されている。アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20とは別体の装置になっており、リーダ/ライタ20とはケーブルなどで接続される。従って、アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20から離れた場所であっても設置できる様になっている。また、別の構成例としては、リーダ/ライタ20に接続される複数のアンテナユニット30のうちの一つのアンテナユニットをリーダ/ライタ20内に組み込む構成としても本実施の形態は成立する。
【0032】
無線ICタグ40は、メモリ41と、制御部42と、送受信部43と、アンテナ44とを有している。メモリ41は、商品情報、発送者情報などの識別コードなど、読み取り対象となる情報を記憶している記憶装置である。制御部42は、リーダ/ライタ20からのコマンド、リクエスト、命令などを解釈し、これに応答する動作を実行する。送受信部43は、リーダ/ライタ20と同様に変調部(図略)、復調部(図略)を有しており、リーダ/ライタ20と交信を行うために信号の変調/復調を行う。アンテナ44はリーダ/ライタ20からのキャリア波を受信し、これを送受信部43に給電すると共に、送受信部43からの変調されたキャリア波を受け取り、これをリーダ/ライタ20に受信させる様、空中に放射する。
【0033】
本データ読取装置1は、複数のアンテナユニット30を有し、これら複数のアンテナユニット30を切り替えて使用する構成としてもよい。
【0034】
図2は、複数のアンテナユニット30を有しているデータ読取装置1の構成例を示す機能ブロック図である。このデータ読取装置1は、N個のアンテナユニット301、302、…、30Nがリーダ/ライタ20に接続されている。リーダ/ライタ20はアンテナ切替部25を有しており、アンテナ切替部25は制御部21からの制御に応じてN個のアンテナユニット301、302、…、30Nと送受信部22とを選択的に接続し、所望のアンテナユニット30を用いて無線ICタグ40との交信を行う。なお、本図において、図1に示す構成と同一の部材、構成要素については、図1と同一の参照符号を付し、これらの説明は省略することとする。
【0035】
図3は、複数のリーダ/ライタ20,アンテナユニット30を有しているデータ読取装置1の構成例を示す機能ブロック図である。このデータ読取装置1においては、N個のリーダライタ201、…、20Nがリーダ/ライタ制御装置10に接続されており、N個のアンテナユニット301、…、30Nが対応するリーダ/ライタ201、…、20Nに接続されている。リーダ/ライタ制御装置10はリーダ/ライタ201、…、20Nを互いに独立して動作させる様にリーダ/ライタ201、…、20Nを制御できる。その結果、このデータ読取装置1は、リーダ/ライタ201、…、20Nに選択的に命令を送ることにより、N個のアンテナユニット301、302、…、30Nから所望のアンテナユニット30を選択して無線ICタグ40との交信を行うことができる。なお、本図において図1に示す構成と同一の部材、構成要素については、 図1と同一の参照符号を付し、これらの説明は省略することとする。
【0036】
[1.2.デッドスポットの発生とその解消]
次に、データ読取装置1を使用した場合に、環境条件によって生じうる、読取用電波の干渉により生ずる読取不可能若しくは困難な箇所/領域(以下、デッドスポットと呼ぶ)について説明する。
【0037】
図4(A)は、ある閉鎖された空間(例えば倉庫やビルの一室)400にリーダ/ライタ20及びアンテナユニット30が配置された場合の電界パターン及びデッドスポットを示す図である。リーダ/ライタ20から変調されたキャリア波の供給を受けたアンテナユニットは電波を空中に放出する。アンテナユニット30に格納されたアンテナ(図略)は、特有の放射の方向特性を有し、この水平方向における方向特性を電界パターン401として図示する。また、アンテナユニット30のビーム方向を矢印406により示す。
【0038】
アンテナユニット30から放出された電波は、様々な方向に向けて放出される。空間400内のある位置Pには、アンテナユニット30から直接到達する電波である直接波402Aが到達すると共に、アンテナユニット30から空間400の壁に向かった別の直接波403Aが、壁によって反射されて生じた反射波404Aも到達する。このとき、反射波404Aは、十分な電界強度を有した状態で位置Pに到達する。そのため電波の波長と、直接波402A及び反射波404Aの進行距離の関係によっては、直接波402A及び反射波404Aが逆位相となり、互いに打ち消しあって位置P周辺にデッドスポット405Aが発生する。
【0039】
一方、空間400内の別の地点である位置Qにおいても、アンテナユニット30から直接到達する電波である直接波402Bが到達すると共に、アンテナユニット30から空間400の壁に向かった別の直接波403Bが、壁によって反射されて生じた反射波404Bも到達する。しかし、別の直接波403Bの電界強度は弱く、従ってその反射波404Bの電界強度も弱い状態となる。そのため、直接波402Bと反射波404Bが位置Qにおいて逆位相となっても、直接波402Bが打ち消されることはなく位置Q周辺にデッドスポットは生じていない。
【0040】
なお、図4(A)では、一カ所のみデッドスポット405Aを図示したが、複数箇所でデッドスポットが発生しうる。かかるデッドスポット405Aに無線ICタグ40が位置した場合には、無線ICタグ40は、リーダ/ライタ20との交信ができず、その結果リーダ/ライタ20はデッドスポット405内に位置する無線ICタグ40からのデータの読み取りができない。
【0041】
図5は、ある条件下におけるアンテナユニット30からの距離とアンテナユニットが放出する電波の電界強度の関係を示すグラフである。図中、曲線501は、デッドスポットの発生がないと仮定した場合の電界強度を示す。また、曲線502は、デッドスポットの発生を考慮した場合の電界強度を示す。また、直線503は、無線ICタグ40が受信可能な電波の最低電界強度を示す。
【0042】
デッドスポットの発生がないと仮定した場合は、アンテナユニット30からの距離が離れるにつれて電界強度はなだらかに減少していく。一方、実際にはデッドスポットが発生するため、曲線502のような電界強度の変化が起こる。この場合、領域504においては、本来は直線503が示す最低電界強度を上回る電波の領域であるため、リーダ/ライタ20は無線ICタグ40からのデータ読み取りができるはずであるが、実際には、曲線502が示す様に、無線ICタグ40が受け取る電波の電界強度が直線503が示す最低電界強度を下回るため、無線ICタグ40からのデータ読み取りができない領域となる。すなわち、領域504はデッドスポットとなる。
【0043】
図4(B)は、図4(A)の状態で生じたデッドスポット405Aを解消するため、アンテナユニット30の放射特性を変化させた状態を示す図である。アンテナユニット30に搭載するアンテナは、リーダ/ライタ20若しくはリーダ/ライタ制御装置10の制御によりその放射特性を可変できるアンテナ、例えばフェイズドアレイ・アンテナとする。
【0044】
図4(B)に示す例では、アンテナの放射特性を変化させたことにより、ビーム方向406及び電界パターン401が変えられた状態である。電界パターン401が変位するため、位置P、位置Qに到達する反射波の電界強度も変化する。すなわち、位置Pに到達する反射波404Aの電界強度は弱くなり、一方位置Qに到達する反射波404Bの電界強度は強まる。その結果、この例では位置P周辺のデッドスポット405Aは消滅するが、位置Q周辺に新たなデッドスポット405Bが発生する。
【0045】
位置Pに置かれている無線ICタグ40は、図4(A)の状態においては読み取り不可能であるが、アンテナユニットの放射特性を変更し、図4(A)の状態になった後は、読み取り可能となる。
【0046】
本実施の形態にかかるデータ読取装置1は、例えば図4(A)、図4(B)ようにアンテナの放射特性を変更しながら無線ICタグ40の読み取り処理を行うことにより、デッドスポット405における読み取り不可能状態を回避しつつ、無線ICタグ40の読み取り処理を行うことができる。
【0047】
また、変形例として、2以上のアンテナユニット30を順次又は同時に駆動させるようにデータ読取装置1を構成しても良い。このときの条件として、各アンテナユニット30の電界パターンが重ならないか、或いは重なる領域が最小になる様にそれぞれのアンテナの放射特性(ビーム方向、ビーム幅など)を変更させる様に、リーダ/ライタ制御装置1が各アンテナユニット30の駆動制御を行う様にしても良い。
【0048】
[1.3.直接波による干渉発生の回避]
無線ICタグ40の読み取りには、複数のアンテナを用いることもある。倉庫などの広い領域内の無線ICタグ40の読み取りには、有効通信距離の関係から広い領域を小区画に分割して、小区画毎に複数のアンテナを設けて無線ICタグ40の読み取りを行うこともある。また、複数の部屋に無線ICタグ40を付した物品が格納されている場合にも、各部屋に複数のアンテナを設けて無線ICタグ40の読み取りを行う。
【0049】
図6は、隣接する2つの空間400A,400B(小区画や部屋などに相当する)のそれぞれに4つのアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4を設けているデータ読取装置1の例を示す図である。アンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4はリーダ/ライタ20A、20Bに接続され、リーダ/ライタ20A、20Bはリーダ/ライタ制御装置10によって制御される。リーダ/ライタ制御装置10はリーダ/ライタ20A、20Bを中継してアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4を独立して駆動(電波の放射、受信)させることができる様になっている。
【0050】
また、図6において、アンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4は、空間400A、400Bの中心に向かって電波を放射するように放射特性が与えられており、そのビーム方向を矢印406A1〜406A4、406B1〜406B4によって示す。
【0051】
図7は、図6に示すアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4の配置において、直接波によるデッドスポットの発生する例を示す図である。今、そのビーム方向が同一方向となるアンテナユニット30A1、30A3、30B1,30B3が同時に駆動されたとする。このとき、アンテナユニットの電波放射強度にもよるが、これらのアンテナユニット30A1、30A3、30B1,30B3が放射する電波は、無線ICタグ40が返す微弱な電波より強力なため、無線ICタグ40が返す微弱な電波を妨害し無線ICタグ40の読み取りができなくなるおそれがある。領域700は、アンテナユニット30A1が放射した電波が無線ICタグ40が返す微弱な電波を妨害し無線ICタグ40の読み取りができなくなるおそれがある領域を示している。すなわち、この領域700においては、上述のような無線ICタグ40の発する電波の妨害が生じて読み取りができないおそれが生ずる。
【0052】
本実施の形態にかかるデータ読取装置1は、上記の様な無線ICタグ40の読取不能若しくは読取不可(読み出しエラーともいう)の発生を回避するため、ビーム方向が同一方向となるアンテナユニットが同時に駆動させない態様で、アンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4を駆動制御することを特徴とする。すなわち、アンテナユニット30が読み取りを行おうとする領域内に、他のアンテナユニット30の発する強い電波が到達し、当該領域内に存在する無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することを回避する。
【0053】
図8(A)(B)、図9(A)(B)に、上記空間400A,400Bにおいての無線ICタグ40の読取不能若しくは読取不可発生を回避しながら無線ICタグの読み取りを行うデータ読取装置1の動作例を示す。
【0054】
本データ読取装置1は、まず図8(A)に示す様に、空間400Aにおいては、アンテナユニット30A1のみ駆動させ、同時に空間400Bにおいては、アンテナユニット30B2のみ駆動させる。このとき、アンテナユニット30A1、アンテナユニット30B2のビーム方向は異なっているため、空間400A,400Bのいずれにおいても一方のアンテナユニット30から放射された電波が、他方のアンテナユニット30が読み取りを行おうとしている領域に強い電界強度で到達することはなく、その結果、当該領域における無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することを回避できる。
【0055】
次に、本データ読取装置1は、図8(B)に示す様に、空間400Aにおいてアンテナユニット30A2のみ駆動させ、同時に空間400Bにおいてアンテナユニット30B3のみ駆動させる。このとき、アンテナユニット30A2、アンテナユニット30B3のビーム方向は異なっているため、空間400A,400Bのいずれにおいても、一方のアンテナユニット30から放射された電波が、他方のアンテナユニット30が読み取りを行おうとしている領域に強い電界強度で到達することはなく、その結果、当該領域における無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することを回避できる。
【0056】
次に、本データ読取装置1は、図9(A)に示す様に、空間400Aにおいてアンテナユニット30A3のみ駆動させ、同時に空間400Bにおいてアンテナユニット30B4のみ駆動させる。このとき、アンテナユニット30A3、アンテナユニット30B4のビーム方向は異なっているため、空間400A,400Bのいずれにおいても一方のアンテナユニット30から放射された電波が、他方のアンテナユニット30が読み取りを行おうとしている領域に強い電界強度で到達することはなく、その結果、当該領域における無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することを回避できる。
【0057】
最後に、本データ読取装置1は、図9(B)に示す様に、空間400Aにおいてアンテナユニット30A4のみ駆動させ、同時に空間400Bにおいてアンテナユニット30B1のみ駆動させる。このとき、アンテナユニット30A4、アンテナユニット30B1のビーム方向は異なっているため、空間400A,400Bのいずれにおいても一方のアンテナユニット30から放射された電波が、他方のアンテナユニット30が読み取りを行おうとしている領域に強い電界強度で到達することはなく、その結果、当該領域における無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することを回避できる。
【0058】
以上のようにアンテナユニット30を駆動制御することにより、各空間400A,400Bのために設けられたすべてのアンテナユニット30を駆動させつつ、他のアンテナユニット30が発する電波が、アンテナユニット30が読み取りを行おうとしている領域に強い電界強度で到達することはなく、その結果、当該領域における無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することを回避できる。
【0059】
なお、アンテナユニット30は方形の空間において対角線方向にビーム方向が向く様に設けられてもよく、この場合には互いに対角線方向に隣接する空間において、ビーム方向が同一方向となるアンテナユニットが同時に駆動させない態様で、アンテナユニット30を駆動制御すればよい。
【0060】
上記のアンテナユニットの駆動制御は、3以上の空間が隣接している場合であっても有効である。図10は、連続する3つの空間400A,400B、400C(小区画や部屋などに相当する)における無線ICタグ40の読み取りを行うデータ読取装置1の例を示している。このデータ読取装置1は、3つの空間400A,400B、400Cそれぞれに4つのアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4、30C1〜30C4を設けている。アンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4、30C1〜30C4はリーダ/ライタ20A、20B、20Cに接続され、リーダ/ライタ20A、20B、20Cはリーダ/ライタ制御装置10によって制御される。リーダ/ライタ制御装置10はリーダ/ライタ20A、20B、20Cを中継してアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4、30C1〜30C4を独立して駆動(電波の放射、受信)させることができる様になっている。
【0061】
また、図10において、アンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4、30C1〜30C4は、空間400A、400B、400Cの中心に向かって電波を放射する様放射特性が与えられており、そのビーム方向を矢印406A1〜406A4、406B1〜406B4、406C1〜406C4によって示す。
【0062】
図11は、図10に示すデータ読取装置1の動作例を示す、タイミングチャートであって、リーダ/ライタ制御装置10によるアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4、30C1〜30C4の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【0063】
図11に示す様に、4個一組のアンテナユニット30A1〜30A4、30B1〜30B4、30C1〜30C4は、周期T1で同一組のいずれかのアンテナユニットが駆動し、その駆動時間はT2(但し、T2≦T1/N、Nはアンテナユニットの組数)である。図11に示す例では、リーダ/ライタ制御装置10又はリーダ/ライタ20Aは、まず最初に空間400Aにおいてアンテナユニット30A1を時間T2だけ駆動し、同時に空間400Cにおいてアンテナユニット30C1を時間T2だけ駆動する(時刻t1)。このとき、アンテナユニット30A1、30C1から放射される強い電波によって、無線ICタグ40が発する微弱な電波の妨害が生ずるおそれのある空間400Bでは、いずれのアンテナユニット30も駆動させない。そのため、いずれの空間400A,400B,400Cにおいても、アンテナユニット30が発する電波が無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することによる無線ICタグ40の読取不能若しくは読取不可は発生しない。
【0064】
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、アンテナユニット30A1、30C1の駆動時間T2が終了した後、空間400Bにおいてアンテナユニット30B1を時間T2だけ駆動させる(時刻t2)。このとき、アンテナユニット30B1から放射される電波による干渉が生ずるであろう空間400A、400Cでは、いずれのアンテナユニット30も駆動させない。そのため、いずれの空間400A,400B,400Cにおいても、アンテナユニット30が発する電波が無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することによる無線ICタグ40の読み出しエラーは発生しない。
【0065】
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、アンテナユニット30B1の駆動時間T2が終了した後であって、先の時刻t1から時間T1だけ経過した時刻t3において、空間400Aにおいてアンテナユニット30A2を、空間400Cにおいてアンテナユニット30C2をそれぞれ同時に時間T2だけ駆動する。このとき、アンテナユニット30A2、30C2から放射される電波による干渉が生ずるであろう空間400Bでは、いずれのアンテナユニットも駆動させない。そのため、いずれの空間400A,400B,400Cにおいてもアンテナユニット30が発する電波が無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することによる無線ICタグ40の読み出しエラーは発生しない。なお、アンテナユニット30A2、30C2の放射特性(例えば、ビーム方向が空間400Bとは異なる方向に向いている)によっては、空間400Bにアンテナユニット30A2、30C2からの直接波が及ばないため、空間400Bのいずれかのアンテナユニットを駆動させても良い。
【0066】
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、アンテナユニット30A2、30C2の駆動時間T2が終了した後であって、先の時刻t2から時間T1だけ経過した時刻t4において、空間400Bにおいてアンテナユニット30B2を時間T2だけ駆動する。このとき、アンテナユニット30B2から放射される電波による妨害(干渉)が生ずるであろう空間400A,400Cでは、いずれのアンテナユニットも駆動させない。そのため、いずれの空間400A,400B,400Cにおいてもアンテナユニット30が発する電波が無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することによる無線ICタグ40の読み出しエラーは発生しない。なお、アンテナユニット30B2の放射特性(例えば、ビーム方向が空間400A,400Cとは異なる方向に向いている)によっては、空間400A、400Cにアンテナユニット30B2からの直接波が及ばないため、空間400A,400Cのいずれかのアンテナユニットを駆動させても良い。
【0067】
以下同様の方法で、順次アンテナユニット30の駆動制御を行うことにより、他のアンテナユニット30が発する電波が無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することによる無線ICタグ40の読み出しエラーを回避することが可能となる。
【0068】
なお、上記のデータ読取装置1では、アンテナユニット30の駆動タイミングによってリーダ/ライタ20と無線ICタグ40との電波干渉の発生を防ぐとしたが、リーダ/ライタ20と無線ICタグ40との交信に複数の周波数若しくはチャネルが使用可能である場合は、駆動タイミングと周波数の選択若しくは変更を組み合わせることにより、他のアンテナユニット30が発する電波が無線ICタグ40が発する微弱な電波を妨害することによる無線ICタグ40の読み出しエラーを回避する構成としても本発明は成立する。
【0069】
[2.第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態は、複数のアンテナユニットをそれぞれが備えた、複数のリーダ/ライタを有するデータ読取装置において、すべてのアンテナにおける読み取り精度の向上を迅速に達成するものである。
【0070】
図12は、N(例えば、1000)個の無線ICタグの読み取りに要する時間を示すグラフである。一つの無線ICタグの読み取りに要する時間がすべて同じであるならば、直線1201のようなグラフとなるはずである。しかしながら、現実には曲線1202のようなグラフとなり、残タグ数の多い前半の状態では無線ICタグの読み取りに要する時間が比較的かかり、残タグ数の少なくなった後半の状態では無線ICタグの読み取りに要する時間が比較的短くなるが、すべての無線ICタグ読み取り完了に要するトータル時間は、直線1201に示す時間よりもかかってしまう。
【0071】
本実施の形態が目指すところは、曲線1203が示すように、残タグ数の多い前半の状態では無線ICタグの読み取りに要する時間を比較的短く押さえ、すべての無線ICタグ読み取り完了に要するトータル時間を、直線1201に示す時間より短くすることにある。
【0072】
[2.1.エリア、アンテナユニット、リーダ/ライタ]
次に、本実施の形態におけるデータ読取装置1の構成について説明する。
図13は、データ読取装置1が無線ICタグの読み取り対象とする読み取り対象領域の例を示す。読み取り対象領域1301は、データ読取装置1によって無線ICタグの読み取りが行われる空間であって、例えば、複数階層からなる倉庫などである。読み取り対象領域1301は、複数のエリア1302に分割されている。なお、エリア1302は集合住宅の一室のように、物理的に他のエリアと区画されていてもよいし、倉庫内の巨大な空間のうちある一部のように物理的に他のエリアと区画されていないものでもかまわない。
【0073】
図14は、ある一つのエリア1302におけるアンテナユニット30,これらアンテナユニット30に接続されたリーダ/ライタ20の配置例を示す図である。この例では、一つの立方体状のエリア1302に、立方体の各面に一つずつアンテナユニット30が配置されている。6個のアンテナユニット30はエリア1302に配置された一つのリーダ/ライタ20に接続される。リーダ/ライタ20は、図示していないリーダ/ライタ制御装置に接続される。図13に示す各エリア1302は、すべて同じようにアンテナユニット30,リーダ/ライタ20が配置されている。
【0074】
図15は、本実施の形態におけるデータ読取装置1の構成例を示すブロック図である。読み取り対象領域1301は複数のエリア1302に分かれており、各エリア1302には、6つのアンテナユニット30と、これらアンテナユニット30に接続されたリーダ/ライタ20が設けられている。すべてのリーダ/ライタ20は、リーダ/ライタ制御装置10に接続されており、各アンテナユニットの駆動はリーダ/ライタ制御装置10によって指令される。
【0075】
[2.2.動作例]
次に、本実施の形態にかかるデータ読取装置1の読み取り動作について説明する。図16は、本実施の形態にかかるデータ読取装置1の動作を示すフローチャートである。この例では、データ読取装置1は、以下の構成を有するものとして説明する。このフローチャートで説明するデータ読取装置1は、ある読み取り対象領域1301に含まれる6つのエリア(前述のエリア1302に相当する)A1〜A6に存在する無線ICタグ40を読み取るためのデータ読取装置1である。各エリアA1〜A6には、一つずつリーダ/ライタ(リーダ/ライタ20に相当する)R1〜R6が設けられている。リーダ/ライタR1〜R6は、リーダ/ライタ制御装置10に接続され、リーダライタ制御装置10のコントロールに従って、読み取り動作を行う。リーダ/ライタR1〜R6はそれぞれ6つのアンテナユニット(アンテナユニット30に相当する)a〜fを有している。
【0076】
データ読取装置1による読み取り動作が開始されると、リーダ/ライタ制御装置10は、予め定めたアンテナ駆動パターンに従って、リーダ/ライタR1〜R6に読み取り動作を行うよう命令する。アンテナ駆動パターンは、複数のシーケンス(この例では、6つのシーケンス)S1〜S6で構成されている。各シーケンスには、どのリーダ/ライタにどのアンテナユニットによって読み取り動作を行わさせるかが記述されている。データ読取装置1、より詳しくはリーダ/ライタ制御装置10は、シーケンスS1〜S6を順番に実行することにより、上記アンテナ駆動パターンに従ったデータの読み取りを行う。なお、どのリーダ/ライタのどのアンテナユニットを用いるのかは、第1の実施の形態と同様に、直接波の干渉による読み取りエラーを回避できるように定められる。
【0077】
図17に、第1から第6までの6つのシーケンスS1〜S6で構成されるアンテナ駆動パターンのデータ例を示す。図に示す例では、アンテナ駆動パターンは、6つのシーケンスに対応する6つのデータ列で構成されている。それぞれのシーケンスは、どのアンテナユニットを駆動し、どのアンテナユニットは駆動させないかを示すデータであって、各アンテナユニット毎に「0」又は「1」が記述されたデータ列で記述されている。
【0078】
ここで「1」はそのシーケンスにおいて該当するアンテナを駆動させることを示しており、「0」は逆にそのシーケンスにおいて該当するアンテナを駆動させないことを示している。例えば、第1のシーケンスS1においては、「1」に対応するアンテナユニットは、リーダ/ライタR1のアンテナユニットa、リーダ/ライタR2のアンテナユニットb、リーダ/ライタR3のアンテナユニットc、リーダ/ライタR4のアンテナユニットd、リーダ/ライタR5のアンテナユニットe、リーダ/ライタR6のアンテナユニットfの6つのアンテナユニットが駆動され、他の30のアンテナユニットは駆動されない。以下、第2から第6までのそれぞれのシーケンスも、どのアンテナユニットを駆動し、どのアンテナユニットは駆動させないかを示すように「1」「0」で構成されたデータ列となっている。なお、この例では、第1から第6のシーケンスを実行することにより、すべてのリーダ/ライタR1〜R6のすべてのアンテナユニットa〜fがいずれかのシーケンスにおいて一度駆動されるようになっている。
【0079】
さて、データ読取装置1が読み取り動作を開始すると、データ読取装置1、より詳しくはリーダ/ライタ制御装置10は、予め定めた第1のシーケンスS1に基づいて、リーダ/ライタR1〜R6にどのアンテナユニットa〜fを駆動させるのかを指示する(S10)。各リーダ/ライタR1〜R6はこの指示に従って、指定されたアンテナユニットを駆動して読み取り動作を行う。読み取り動作実行の後、各リーダ/ライタR1〜R6は、そのシーケンスにおける読み取り動作が成功したか否かをリーダ/ライタ制御装置10に通知する。
【0080】
リーダ/ライタR1〜R6から読み取り動作が成功したか否かについての通知を受けたリーダ/ライタ制御装置10は、第1のシーケンスS1における各アンテナユニットについて読み取り結果データを生成し、これを記憶する(S20)。図18は、シーケンスS1が実行された後に、リーダ/ライタ制御装置10が記憶している読み取り結果データの構成例を示す図である。読み取り結果データは、シーケンスの結果ごとに一つのデータ列(「シーケンス結果データ列」と呼ぶ)を有している。各シーケンス結果データ列は、アンテナユニットa〜f毎に「0」又は「1」が記述されたデータ列で記述されている。シーケンス結果データ列においては、該当シーケンスにおいて読み取り動作が成功したアンテナユニットについては「1」が記述され、該当シーケンスにおいて駆動されたが読み取り動作が成功しなかったアンテナユニット、及び駆動されなかったアンテナユニットについては、「0」が記述されている。なお、図中網掛けを伏した「0」は、当該シーケンスにおいて駆動されたが読み取り動作が成功しなかったことを示している。なお、図18に示す例では、シーケンスS2〜S6については未実行の状態であるため、データ列には「0」「1」は記述されていない。
【0081】
図16に戻り、データ読取装置1の読み取り動作の説明を続ける。
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、先に実行したシーケンスに続くシーケンスに基づいて、リーダ/ライタR1〜R6にどのアンテナユニットa〜fを駆動させるのかを指示する(S30)。この指示を受けたリーダ/ライタR1〜R6から読み取り動作が成功したか否かについての通知がリーダ/ライタ制御装置10に返される。
【0082】
リーダ/ライタ制御装置10は、当該シーケンスにおける各アンテナユニットについて読み取り結果データを生成し、これを記憶する(S40)。
【0083】
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、予め定められたアンテナ駆動パターンに含まれるすべてのシーケンスを実行したか否かを判定する(S50)。すべてのシーケンスを実行していないと判定した場合(S50,No)、リーダ/ライタ制御装置10は、次のシーケンスについてS30、S40の処理を繰り返す。一方、すべてのシーケンスを実行したと判定した場合(S50,Yes)、リーダ/ライタ制御装置10は、記憶している読み取り結果データに基づいて、OR(論理和)データを生成する。
【0084】
図19は、すべてのシーケンスS1〜S6実行後にリーダ/ライタ制御装置10が記憶している読み取り結果データの構成例を示す図である。図示のように、すべてのデータ列に読み取り結果を示す「0」又は「1」が記述されている。上記OR(論理和)データは、アンテナユニット毎に「0」又は「1」が記述されたデータ列であって、各アンテナユニット毎に読み取り結果データの各シーケンス結果を示す「0」「1」の論理和をとり、その論理和を記述したデータである。図20に、図19の読み取り結果データに基づいて生成されたOR(論理和)データの例を示す。上記OR(論理和)データは、各シーケンス結果を示す「0」「1」の論理和であるため、少なくとも一つのシーケンスにおいて読み取りが成功したことを示す「1」が記述されたアンテナユニットについては、「1」が記述され、一方いずれのシーケンスにおいても読み取りが成功したことを示す「1」が記述されていないアンテナユニットについては「0」が記述されることとなる。図に示すOR(論理和)データの例では、リーダ/ライタR1のアンテナユニットb、リーダ/ライタR2のアンテナユニットb、リーダ/ライタR3のアンテナユニットe、リーダ/ライタR4のアンテナユニットbについて「0」が記述され、他のアンテナユニットについてはすべて「1」が記述されている。すなわち、リーダ/ライタR1のアンテナユニットb、リーダ/ライタR2のアンテナユニットb、リーダ/ライタR3のアンテナユニットe、リーダ/ライタR4のアンテナユニットbについて読み取りが成功していない。
【0085】
図16に戻り、データ読取装置1の読み取り動作の説明を続ける。
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、上記OR(論理和)データに基づいて、測定精度を算出する(S70)。この例では、測定精度=読み取り成功したアンテナユニット数(OR(論理和)データに記述された「1」の個数)/当該アンテナ駆動パターンにおいて駆動対象となるすべてのアンテナユニットの個数×100(%)とする。具体的にこの例では、測定精度=32/36×100≒88.9%となる。
【0086】
次に、リーダ/ライタ制御装置10は、S70において算出した測定精度が所定の測定精度を超えたか否かを判定する(S80)。算出した測定精度が所定の精度を超えている場合(S80,Yes)には、読み取り動作は終了する。一方、算出した測定精度が所定の精度を超えていない場合(S80,No)には、再度S10に戻り、S70までの処理を算出した測定精度が所定の精度を超えるまで繰り返す。
【0087】
なお、S10からS70を繰り返す際に、上記シーケンスに基づいてアンテナユニットの駆動を行うのではなく、OR(論理和)データに「0」が記載されたアンテナユニットのみ駆動させるようにすれば、さらに所定の測定精度に達するまでの時間を短縮させることが期待できる。
【0088】
[2.3.その他]
一つの読み取り対象領域1301を複数のエリア1302からなるエリアグループに分割して、各エリアグループに対して、図16に示す読み取り動作を実行するようにしても本実施の形態は成立する。
【0089】
例えば、一つの読み取り対象領域1301が、それぞれが立方体状のエリア1302を3行3列3段の27個のエリアで構成されるとして、1行3個を一つのエリアグループとしてこのエリアグループに図16に示す読み取り動作を実行する。すなわち、一つの読み取り対象領域1301を9個のエリアグループに分け、各エリアグループに対して読み取り動作を実行する。あるいは、1段9個のエリア1302を一つのエリアグループとして各エリアグループに対して読み取り動作を実行する。どのようにエリアグループを定めるかは、電波状況などの要因によって適宜定めることが考えられる。
【符号の説明】
【0090】
1 … データ読取装置
10 … リーダ/ライタ制御装置
20 … リーダ/ライタ
30 … アンテナユニット
40 … 無線ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されたデータを送信するための通信用アンテナを備えた記憶媒体から、離間した位置でデータを読み取るためのデータ読取装置であって、
前記記憶媒体とデータの送受信を行うための複数のアンテナ手段をそれぞれが有する、複数の制御手段と、
前記複数の制御手段に接続された情報処理手段と
を有し、
前記制御手段は、複数のシーケンスからなる所定のアンテナ駆動パターンに従って、アンテナ手段を切り替えながら前記記憶媒体の読み取りを行い、各シーケンスにおける読み取り結果を情報処理手段に出力し、
前記情報処理手段は、各アンテナ手段について各シーケンスにおける読み取り結果の論理和を生成し、論理和に基づいて前記記憶媒体の読み取りを再度行うか否かを判定する
ことを特徴とする、データ読取装置。
【請求項2】
前記情報処理手段は、前記論理和に基づいて前記記憶媒体の読み取りを再度行う際に駆動させるアンテナ手段を特定し、当該アンテナ手段を用いた読み取りを行うよう対応する制御手段に指示を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の、データ読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−259107(P2010−259107A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176686(P2010−176686)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2006−39527(P2006−39527)の分割
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】