説明

トイレブース

【課題】個室スペースSの内外にデッドスペースを生じることなく、内部の壁面を有効に利用する。
【解決手段】長方形の個室スペースSの一方の長辺側に前方側の出入口Pと後方側の戸袋パネル11とを設け、出入口Pには、戸袋パネル11に収納する吊戸20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、個室スペースの内外にデッドスペースを生じることがなく、内部の壁面を有効に利用することができるトイレブースに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば建築物の内部に設置するトイレブースは、長方形の個室スペースの短辺側に出入口を設け、内開き式または外開き式のドアを介して出入口を開閉するのが普通である(たとえば特許文献1、2)。多人数用のトイレを構築する場合に、トイレ全体をコンパクトにまとめることができるからである。
【0003】
しかし、ドアは、開閉用の扇形のデッドスペースを個室スペースの内側または外側に生じるため、使い勝手がよくないという欠点がある。そこで、各個室スペースの短辺側の出入口に対し、外側に円弧状に湾曲する吊戸を設置することが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−353402号公報
【特許文献2】特開2006−274590号公報
【特許文献3】特開2003−239617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、外側に湾曲する吊戸は、円形軌道に沿って開閉するものであり、必ずしも一般的でないため、開閉操作時に強い異和感を生じることが否めない。また、このものは、吊戸自体の開閉操作が重くなりがちである上、個室スペース内の出入口側の角部分に無駄なデッドスペースを生じることが避けられないという問題もあった。
【0005】
なお、直線移動形の一般的な吊戸や引戸は、トイレブース用として殆ど使用されない。これらの吊戸や引戸は、個室スペースの短辺側の出入口を半分しか開放することができず、実用性に欠けるからである。加えて、吊戸や引戸は、個室スペースを区画する壁パネルの内側に設置するとすれば、内部の壁面をペーパホルダなどの取付面として有効利用することができず、壁パネルの外側に設置するとすれば、トイレブース自体の外観が見苦しくなることが避けられない。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の実情に鑑み、個室スペースの長辺側に出入口を設け、戸袋パネルに収納する吊戸を使用することによって、使い勝手がよく、個室スペースの内外にデッドスペースを生じることがない上、内部の壁面をも有効に利用することができるトイレブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、長方形の個室スペース内の一方の短辺側に便器を前向きに設置し、個室スペースの一方の長辺側には、前方側の出入口と後方側の戸袋パネルとを設け、出入口には、後方側に開く片開き式の吊戸を設置し、吊戸は、戸袋パネルに収納して出入口を開放することをその要旨とする。
【0008】
なお、出入口の戸先側には、吊戸、戸袋パネルと同一直線上の戸当りパネルを設けることができ、戸当りパネルは、仕切りパネルを介して前方側に隣接するトイレブースの戸袋パネルと一体に形成することができる。
【0009】
ただし、この発明において、前後とは、個室スペース内に設置する便器の前後方向に一致させていうものとする。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、出入口は、長方形の個室スペースの一方の長辺の前方側に設けられており、後方側に開く吊戸を介して開閉することができる。また、吊戸は、出入口を開放するとき、後方側の戸袋パネルに収納される。そこで、戸袋パネルの内面は、ペーパホルダなどの取付面として有効に利用することができる上、吊戸は、個室スペースの内外に無駄なデッドスペースを生じることがなく、トイレブースの外観を損うおそれもない。
【0011】
なお、トイレブースは、建物の壁を利用して個室スペースの隣接する二辺を形成するように、建物の隅部分に設置してもよく、建物の壁を利用して個室スペースの一方の長辺を形成するように、建物の壁に沿って設置してもよい。また、これらのトイレブースは、仕切りパネルを介して複数を前後に縦続して設置してもよい。さらに、トイレブースは、出入口、戸袋パネルを設ける一方の長辺側を除く三辺を適切な仕切りパネルで形成し、屋内または屋外に単独設置することも可能である。
【0012】
出入口の戸先側に幅狭の戸当りパネルを設ければ、閉鎖状態の吊戸の戸先側を適切に位置決めし、開放操作をし易くすることができる。特に、個室スペースの前端を建物の壁によって区画する場合であっても、閉鎖時の吊戸の戸先側は、戸当りパネルの幅相当だけ建物の壁から離れているから、開放操作時に戸先側の把手を握り易い上、全体外観を一層向上させることができる。
【0013】
複数のトイレブースを前後に縦続して設置するとき、前方側のトイレブースの戸袋パネルの後端部分を後方側のトイレブースの戸当りパネルとして利用することにより、別体の戸当りパネルを製作する必要がない。すなわち、戸当りパネルは、前方側に隣接するトイレブースの戸袋パネルと一体に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0015】
トイレブース10は、長方形の個室スペースS内に便器Bを設置し、個室スペースSの一方の長辺側に戸袋パネル11、吊戸20を設けてなる(図1、図2)。ただし、図1、図2において、トイレブース10、10は、直角に屈曲する建物の壁W、Wを利用して、床F、天井Cを有する図示しない建物の隅部分に前後に縦続して設置されている。
【0016】
トイレブース10、10は、仕切りパネル12を介して縦続され、後方側のトイレブース10の後端は、別の仕切りパネル13を介して閉じられている。便器Bは、各個室スペースS内において、一方の短辺側に前向きに設置され、便器Bの前方は、他方の短辺までの間が広く空けられている。また、個室スペースSの壁W側の一方の長辺側には、手摺りHが設置され、他方の長辺側の内部の壁面、すなわち戸袋パネル11の室内側の表面には、ペーパホルダPHが取り付けられている。さらに、個室スペースSの後部の戸袋パネル11側の隅部分には、コーナ形の棚板SPが適当な高さ位置に設置されている。なお、戸袋パネル11の室内側の表面には、図示しない掲示ボードや吊り棚なども設置可能である。
【0017】
各個室スペースSの壁W側でない一方の長辺側には、前方側の出入口Pが開口され、後方側の戸袋パネル11が設けられている。出入口Pには、後方側に開く片開き式の吊戸20が設置され、出入口Pの戸先側には、幅狭の戸当りパネル14が吊戸20、戸袋パネル11と同一直線上に設けられている。ただし、後方側のトイレブース10の戸当りパネル14は、前方側に隣接するトイレブース10の戸袋パネル11と一体に形成されている。吊戸20の戸先側には、開閉用の把手20aが両面に突出して付設されており、把手20aの上方には、閉鎖状態の吊戸20を室内側から施錠するロック22が配置されている。なお、ロック22は、把手20aの近傍に配置すればよく、把手20aは、埋込形として吊戸20の各面に設けてもよい。
【0018】
吊戸20は、前後の吊車23、23を介し、出入口Pの上部のガイドレール23aから前後に移動自在に吊下されている(図3、図4)。ガイドレール23aは、戸袋パネル11の内部にまで延長されており、目板材15aを介して上方の笠木材15によって支持されている。各吊車23の前後には、クッション材が付設され、ガイドレール23aの前端部、後端部には、それぞれ前後の吊車23、23が当接する前後の戸当り23b、23bが組み込まれている。また、ガイドレール23aの前端には、ロック金具22bが組み込まれ、ロック金具22bは、ロック22を介して上方に駆動するロックピン22aを下から係合させることにより、閉鎖状態の吊戸20を開放不能に施錠することができる。
【0019】
各吊車23は、連結ボルト23c、連結金具23dを介して吊戸20の上端の構造材21aに付設されている。ただし、吊戸20は、上下の構造材21a、21b、ペーパハニカムの芯材21cに対して表面材21d、21dを付設して仕上げられている。下の構造材21bには、振れ止め用のガイドローラ24が係合しており、ガイドローラ24は、戸袋パネル11内の戸先側に上向きに設置されている。また、戸袋パネル11内の戸尻側には、戸当り25aが設置され、戸当り25aは、吊戸20の戸尻側のクッション材25bに対応している。
【0020】
戸袋パネル11は、吊戸20を収納可能な間隙を介して設置する2枚1組のパネル11a、11aから構成されている。戸袋パネル11は、床F上の床レール11bに対し、調節ボルト11eを介して高さ調節可能な幅木材11c、目板材11dを介して設置されている。ただし、調節ボルト11eは、床レール11bの上面に突出しており、目板材11dの下面にねじ止めする幅木材11cは、床レール11bに対して上から嵌合され、調節ボルト11eによって支持されている。
【0021】
戸袋パネル11の戸先側の先端は、出入口Pに向けて開口している(図5)。また、出入口Pの戸先側の戸当りパネル14は、戸袋パネル11と同様に構成され、戸当りパネル14の出入口P側の先端は、目板材14a、戸当り材14bを介して閉じられている。そこで、前方側のトイレブース10の戸袋パネル11の後端部分は、そのまま後方側のトイレブース10の戸当りパネル14として利用することができる。なお、吊戸20の戸先には、戸当り材14bに対応するクッション材25cが上下方向に付設されている。
【0022】
戸当りパネル14の壁W側は、たとえば目板材14c、連結材14dと、壁Wにねじ止めするレール14eとを組み合わせて壁Wに支持させることができる(図6(A))。ただし、図6(A)は、図2のX−X線矢視相当要部拡大断面図である。なお、目板材14c、連結材14dは、それぞれ出入口P側の目板材14a、戸当り材14bと同一部材を使用することができる。
【0023】
仕切りパネル12の壁W側は、たとえば壁Wにねじ止めするレール12aと、L字状の連結金具12bとを介して壁Wに支持させることができる(図6(B)〜(D))。ただし、図6(B)は、図1のY−Y線矢視相当要部拡大断面図であり、図6(C)、(D)は、それぞれ同図(B)の一部破断左側面図、同図(C)のZ−Z線矢視相当断面図である。なお、仕切りパネル12の上端には、チャンネル状の笠木12cが付設されており、連結金具12bは、笠木12cに収納されている。他の仕切りパネル13の壁W側も、同様にして壁Wに連結することができる。
【0024】
各トイレブース10において、全閉状態の吊戸20(図3、図5の各実線)は、把手20aを介して後方側に駆動して出入口Pをほぼ全開に開くことができる(同図の各二点鎖線)。また、全開状態の吊戸20は、前方側に駆動して出入口Pを全閉に閉じることができる。なお、吊戸20の下端部は、開閉動作の全行程に亘り、ガイドローラ24を介して振れ止めされている。吊戸20は、戸袋パネル11に収納することにより出入口Pを開放するから、戸袋パネル11の個室スペースS内の表面は、ペーパホルダPHなどの取付面として有効に利用することができる。
【0025】
以上の説明において、トイレブース10は、仕切りパネル12を介して2個以上を前後に縦続して設置してもよい(図7(A))。また、トイレブース10は、直線状の壁Wに沿って設置してもよく(同図(B))、壁Wから離して、1個を単独設置し、あるいは、2個以上を縦続して設置してもよい(同図(C))。なお、図7において、各トイレブース10の壁Wに接しない短辺側、長辺側は、それぞれ仕切りパネル13、16によって閉じられている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】全体構成模式平面図
【図2】全体構成模式正面図
【図3】模式正面構造図
【図4】要部拡大縦断面図
【図5】要部拡大横断面図
【図6】要部拡大説明図
【図7】他の実施の形態を示す模式説明図
【符号の説明】
【0027】
S…個室スペース
B…便器
P…出入口
10…トイレブース
11…戸袋パネル
12…仕切りパネル
14…戸当りパネル
20…吊戸

特許出願人 小松ウオール工業株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の個室スペース内の一方の短辺側に便器を前向きに設置し、前記個室スペースの一方の長辺側には、前方側の出入口と後方側の戸袋パネルとを設け、前記出入口には、後方側に開く片開き式の吊戸を設置し、該吊戸は、前記戸袋パネルに収納して前記出入口を開放することを特徴とするトイレブース。
【請求項2】
前記出入口の戸先側には、前記吊戸、戸袋パネルと同一直線上の戸当りパネルを設けることを特徴とする請求項1記載のトイレブース。
【請求項3】
前記戸当りパネルは、仕切りパネルを介して前方側に隣接するトイレブースの前記戸袋パネルと一体に形成することを特徴とする請求項2記載のトイレブース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−41244(P2009−41244A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206452(P2007−206452)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000184621)小松ウオール工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】