説明

トイレ装置

【課題】リモコンによって便器洗浄を実行することが可能なトイレ装置において、便器洗浄性能および局部洗浄性能を損なわないようにすることができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】ボウルを有する大便器と、前記ボウルに便器洗浄水を供給する便器洗浄水供給手段と、前記ボウル内に局部洗浄ノズルを進退させるノズル駆動手段を有する局部洗浄装置と、便器洗浄を実行する指令と局部洗浄を実行する指令を手動によりそれぞれ入力可能とした操作装置と、前記便器洗浄水供給手段および前記ノズル駆動手段の動作を制御して、前記便器洗浄水供給手段による前記便器洗浄水の供給と、前記ノズル駆動手段による前記局部洗浄ノズルの進出と、を同時に実行しない制御部と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水で洗浄可能としたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
局部洗浄機能を有するトイレ装置では、近年、便器洗浄用の操作スイッチが局部洗浄装置のリモコン(リモートコントロール装置)に設けられることが多い(例えば、特許文献1参照)。これらのトイレ装置においては、局部洗浄中に誤って便器洗浄用の操作スイッチが操作された場合には、局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行され得る。さらに、局部洗浄中に臭いが気になる場合には、便器洗浄用の操作スイッチを操作して局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行され得る。このように、局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行されると、局部洗浄装置と便器洗浄装置とは同じ水道管に接続されているため、給水圧が低下し、必要な水圧が得られず、局部洗浄と便器洗浄との性能が低下するという問題が生ずる。
【0003】
また、大便器のボウルの清掃性を高めるために、ボウルの上部内周面に便器洗浄水を周回させながら、その便器洗浄水をボウルに落として便器洗浄を行う大便器がある。この大便器を備えたトイレ装置においては、局部洗浄ノズルが便器洗浄水の周回路の一部を塞ぐように形成されているため、便器洗浄中に局部洗浄が開始されると、便器洗浄水が流れている面(ボウルの上部内周面)から局部洗浄ノズルが進出してくる。そのため、便器洗浄水と局部洗浄ノズルとが干渉して、便器洗浄水が水跳ねし、その水跳ねした水が使用者の臀部にぶつかるおそれがある。
【0004】
一方、局部洗浄中に便器洗浄が開始されると、ボウル内に進出した局部洗浄ノズルが便器洗浄水の周回路を塞いでしまうため、便器洗浄水が十分に周回せず、ボウルの一部に不洗浄区域が生ずるおそれがある。便器洗浄中に局部洗浄が開始された場合と、局部洗浄中に便器洗浄が開始された場合と、のいずれの場合であっても、便器洗浄水の導水流路と、局部洗浄ノズルが進出・後退する開口部と、が一部重複するため、導水流路を流れる便器洗浄水が局部洗浄ノズルに衝突して水跳ねしたり、ボウルの一部に便器洗浄水が行き渡らず、便器の洗浄性能が低下するという問題が生ずる。
【0005】
さらに、便器洗浄水をポンプが圧送して便器洗浄を実行する便器がある。この便器を備えたトイレ装置においては、便器洗浄中に局部洗浄が開始された場合や、局部洗浄中に便器洗浄が開始された場合には、局部洗浄に関する電力と、便器洗浄に関する電力と、が重複するため必要な電力が得られず、局部洗浄と便器洗浄との性能が低下するという問題が生ずる。
【特許文献1】特開2005−023715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、リモコンによって便器洗浄を実行することが可能なトイレ装置において、便器洗浄性能および局部洗浄性能を損なわないようにすることができるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ボウルを有する大便器と、前記ボウルに便器洗浄水を供給する便器洗浄水供給手段と、前記ボウル内に局部洗浄ノズルを進退させるノズル駆動手段を有する局部洗浄装置と、便器洗浄を実行する指令と局部洗浄を実行する指令を手動によりそれぞれ入力可能とした操作装置と、前記便器洗浄水供給手段および前記ノズル駆動手段の動作を制御して、前記便器洗浄水供給手段による前記便器洗浄水の供給と、前記ノズル駆動手段による前記局部洗浄ノズルの進出と、を同時に実行しない制御部と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、リモコンによって便器洗浄を実行することが可能なトイレ装置において、便器洗浄性能および局部洗浄性能を損なわないようにすることができるトイレ装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第一の発明によるトイレ装置は、ボウルを有する大便器と、前記ボウルに便器洗浄水を供給する便器洗浄水供給手段と、前記ボウル内に局部洗浄ノズルを進退させるノズル駆動手段を有する局部洗浄装置と、便器洗浄を実行する指令と局部洗浄を実行する指令を手動によりそれぞれ入力可能とした操作装置と、前記便器洗浄水供給手段および前記ノズル駆動手段の動作を制御し、前記便器洗浄水供給手段による前記便器洗浄水の供給と、前記ノズル駆動手段による前記局部洗浄ノズルの進出と、を同時に実行しない制御部と、を備えたことを特徴とする。
これによれば、便器洗浄および局部洗浄が同時に実行されないため、便器洗浄性能および局部洗浄性能を損なうことがない。
【0010】
第二の発明によるトイレ装置は、第一の発明において、前記制御部は、前記便器洗浄水供給手段により前記便器洗浄水を前記ボウルに供給している場合には、前記局部洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されても前記局部洗浄の実行を禁止することを特徴とする。
これによれば、局部洗浄よりも便器洗浄を優先的に実行することができる。
【0011】
第三の発明によるトイレ装置は、第一の発明において、前記制御部は、前記ノズル駆動手段により前記局部洗浄ノズルを前記ボウル内に進出させている場合には、前記便器洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されても前記便器洗浄の実行を禁止することを特徴とする。
これによれば、便器洗浄よりも局部洗浄を優先的に実行することができる。
【0012】
第四の発明によるトイレ装置は、第一の発明において、前記制御部は、前記ノズル駆動手段により前記局部洗浄ノズルを前記ボウル内に進出させている場合には、前記便器洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されると、前記局部洗浄ノズルを退行させ、前記便器洗浄水供給手段を制御して前記便器洗浄水の供給を開始することを特徴とする。
これによれば、局部洗浄中に便器洗浄を実行しようとした場合には、局部洗浄ノズルが便器のボウルから退行した後に便器洗浄を実行するので、局部洗浄ノズルが便器洗浄を阻害することがない。
【0013】
第五の発明によるトイレ装置は、第二の発明において、前記局部洗浄の実行が禁止されたことを報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする。
これによれば、便器洗浄後に再度、局部洗浄の操作を行なえば良いことを、使用者に知らしめることができる。
【0014】
第六の発明によるトイレ装置は、第五の発明において、前記報知手段は、前記局部洗浄の実行が禁止された後であって、前記便器洗浄の動作が完了した際に、前記便器洗浄の動作が完了したことを報知することを特徴とする。
これによれば、局部洗浄の操作の受付が可能であることを使用者に知らしめることができる。
【0015】
第七の発明によるトイレ装置は、第三の発明において、前記便器洗浄の実行が禁止されたことを報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする。
これによれば、局部洗浄後に再度、便器洗浄の操作を行なえば良いことを、使用者に知らしめることができる。
【0016】
第八の発明によるトイレ装置は、第七の発明において、前記報知手段は、前記便器洗浄の実行が禁止された後であって、前記局部洗浄の動作が完了した際に、前記局部洗浄の動作が完了したことを報知することを特徴とする。
これによれば、便器洗浄後に再度、局部洗浄の操作を行なえば良いことを、使用者に知らしめることができる。
【0017】
第九の発明によるトイレ装置は、第二又は第四の発明において、前記便器洗浄は、前記ボウルのリム吐水口から便器洗浄水を吐水する工程と、前記ボウルのゼット吐水口から便器洗浄水を吐水する工程と、を順次実行し、前記制御部は、前記ゼット吐水口から前記便器洗浄水を吐水する工程の前に、前記リム吐水口から前記便器洗浄水を吐水する工程において、前記局部洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されると、前記便器洗浄を停止して前記局部洗浄を実行することを特徴とする。
これによれば、リム−ゼット−リム吐水方式(いわゆる水道直圧方式)の便器洗浄において、ボウルの封水面が低下していない最初のリム工程においては便器洗浄を途中で中断させて、局部洗浄を優先的に実行することができる。
【0018】
第十の発明によるトイレ装置は、第二又は第四の発明において、前記制御部は、前記便器洗浄の動作によって前記ボウルの封水が排出されて封水切れを起こす前に、前記局部洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されると、前記便器洗浄を停止して前記局部洗浄を実行することを特徴とする。
これによれば、ボウルの封水面が低下していない状態であれば便器洗浄を途中で中断させて、局部洗浄を優先的に実行することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の構成を例示するブロック図である。 本実施形態のトイレ装置は、ボウルを有する便器(大便器)500と、便器500のボウルに便器洗浄水を供給する便器洗浄水供給手段302と、局部洗浄を実行するための局部洗浄機能部400を有する局部洗浄装置と、を備えている。
【0020】
局部洗浄機能部400は、局部洗浄ノズル404(単にノズルとも言う)を進退させるノズル駆動手段402や、局部洗浄ノズル404の外周に水を噴射してその胴体を洗浄するノズル洗浄室406などを有している。
【0021】
また、本実施形態にかかるトイレ装置は、使用者の手動操作により便器洗浄や局部洗浄などを実行(操作)することが可能な操作装置100と、便器洗浄水供給手段302および局部洗浄機能部400の動作を制御する制御部200と、を備えている。操作装置100は、例えばトイレ室の壁面に設けられていてもよいし、局部洗浄装置本体に設けられていてもよい。
【0022】
制御部200は、便器洗浄を実行する信号を操作装置100から受け取ると、便器洗浄水供給手段302を制御して、便器500のボウルに便器洗浄水を供給し、便器洗浄を実行させる。一方、制御部200は、局部洗浄を実行する信号を操作装置100から受け取ると、局部洗浄機能部400、より具体的にはノズル駆動手段402を制御して、局部洗浄ノズル404を便器500のボウル内に進出させ、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実行させる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0023】
ここで、便器洗浄中に局部洗浄が実行されたり、局部洗浄中に便器洗浄が実行されると、局部洗浄機能部400を有する局部洗浄装置と、便器洗浄水供給手段302を有する便器洗浄装置とは同じ水道管に接続されているため、給水圧が低下し、必要な水圧が得られず、局部洗浄と便器洗浄との性能が低下するおそれがある。また、後に詳述するように、ボウルの上部内周面から便器洗浄水をボウルに落として便器洗浄を行う場合には、便器洗浄水と局部洗浄ノズルとが干渉して、便器洗浄水が水跳ねし、その水跳ねした水が使用者の臀部にぶつかるおそれがある。さらに、後に詳述するように、便器洗浄水をポンプによって圧送させて便器洗浄を実行する場合には、局部洗浄に関する電力と、便器洗浄に関する電力と、が重複するため必要な電力が得られず、局部洗浄と便器洗浄との性能が低下するおそれがある。
【0024】
そこで、本実施形態にかかるトイレ装置の制御部200は、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合や、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合であっても、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。以下、これらの動作の具体例について図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図2は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の具体例を例示するフローチャート図である。
まず、使用者が操作装置100に設けられた「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチを操作して、局部洗浄の動作を要求すると(ステップS100)、制御部200は、現在便器洗浄が動作中であるか否かを判断する(ステップS102)。便器洗浄が動作中でなければ(ステップS102:NO)、局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行されることはないため、制御部200は、使用者の要求通り、局部洗浄を実行する(ステップS104)。
【0026】
一方、便器洗浄が動作中であれば(ステップS102:YES)、局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行されることになるため、制御部200は、局部洗浄の動作の要求(命令)を受け付けず、便器洗浄の動作を継続させる(ステップS106)。すなわち、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合には、制御部200は、局部洗浄の実行を禁止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する。ここで、本実施形態のトイレ装置は、局部洗浄の実行が禁止されたことを、例えば音や照明などを用いて報知する報知手段を備えていてもよい。このように音や照明などを用いて報知すれば、局部洗浄装置の故障などではなく、局部洗浄の実行が強制的に禁止されたことを、使用者はより確実に知ることができる。
【0027】
続いて、便器洗浄の動作が完了すると(ステップS108)、トイレ装置は待機状態となる(ステップS110)。このときにも、待機状態となったことを、例えば音や照明などを用いて報知してもよい(ステップS110)。報知することによって、使用者は、便器洗浄の動作が完了し、局部洗浄を実行することが可能になったことを知ることができる。
【0028】
図3は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の他の具体例を例示するフローチャート図である。
まず、使用者が操作装置100に設けられた「大」洗浄や「小」洗浄などのスイッチを操作して、便器洗浄の動作を要求すると(ステップS200)、制御部200は、現在局部洗浄が動作中であるか否かを判断する(ステップS202)。局部洗浄が動作中でなければ(ステップS202:NO)、局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行されることはないため、制御部200は、使用者の要求通り、便器洗浄を実行する(ステップS204)。
【0029】
一方、局部洗浄が動作中であれば(ステップS202:YES)、局部洗浄と便器洗浄とが同時に実行されることになるため、制御部200は、便器洗浄の動作の要求(命令)を受け付けず、局部洗浄の動作を継続させる(ステップS206)。すなわち、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、制御部200は、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行する。このとき、図2に関して前述したように、便器洗浄の実行が禁止されたことを、例えば音や照明などを用いて報知してもよい。このようにすれば、前述した効果と同様に、便器洗浄の実行が強制的に禁止されたことを、使用者はより確実に知ることができる。
【0030】
続いて、使用者が操作装置100に設けられた「止」スイッチを操作して、局部洗浄動作の完了を要求すると(ステップS208)、制御部200は、局部洗浄ノズル404を便器500のボウル内から後退(退行)させて局部洗浄装置内に収納し、トイレ装置は待機状態となる(ステップS210)。このときにも、図2に関して前述したように、待機状態となったことを、例えば音や照明などを用いて報知してもよい(ステップS110)。報知することによって、前述した効果と同様に、使用者は、便器洗浄を実行することが可能になったことを知ることができる。
【0031】
また、制御部200は、待機状態となった後に便器洗浄を実行してもよい(ステップS210)。このようにすることで、使用者は再び便器洗浄の動作を要求(命令)する手間を省くことができ、さらに局部洗浄を実行した後における便器洗浄の忘れ防止を行うことができる。
【0032】
図4は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作のさらに他の具体例を例示するフローチャート図である。
まず、使用者が操作装置100に設けられた「大」洗浄や「小」洗浄などのスイッチを操作して、便器洗浄の動作を要求すると(ステップS300)、図3に関して前述したように、制御部200は、現在局部洗浄が動作中であるか否かを判断する(ステップS302)。局部洗浄が動作中でなければ(ステップS302:NO)、制御部200は、使用者の要求通り、便器洗浄を実行する(ステップS304)。
【0033】
一方、局部洗浄が動作中であれば(ステップS302:YES)、制御部200は、局部洗浄の動作を停止する(ステップS306)。すなわち、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、制御部200は、局部洗浄の動作を途中で中止する。より具体的には、局部洗浄装置に設けられたヒータの動作を停止し、局部洗浄電磁弁を閉止する。ここで、ヒータとは、使用者が局部洗浄水に対して冷たさを感じないように、局部洗浄水を所定温度に温める装置である。また、局部洗浄電磁弁とは、局部洗浄ノズル404から噴射される局部洗浄水の吐止水を制御(開閉)する弁である。
【0034】
制御部200は、局部洗浄の動作を停止すると(ステップS306)、局部洗浄ノズル404を便器500のボウル内から後退(退行)させて局部洗浄装置内に収納する(ステップS308)。このとき、局部洗浄ノズル404の収納の完了を待たずして、制御部200は、便器洗浄を実行する(ステップS310)。このように、局部洗浄ノズル404の収納が完了していないときに便器洗浄を実行させたとしても、後で詳述するように、便器洗浄水を圧送するためのポンプが未だ動作していないため、局部洗浄に関する電力と、便器洗浄に関する電力と、が重複することはない。さらに、後に詳述するように、すでに局部洗浄電磁弁を閉止しているため、局部洗浄ノズル404の収納が完了していないときに便器洗浄を実行させたとしても、給水圧が低下することはない。局部洗浄ノズル404を局部洗浄装置内に収納させると、トイレ装置は待機状態となる(ステップS312)。
【0035】
図5は、図4に表した動作の変形例を例示するフローチャート図である。
ステップS300、S302、S304、S306、S308については、図4に関して前述した動作と同様である。続いて、制御部200が局部洗浄ノズル404を便器500のボウル内から後退(退行)させて局部洗浄装置内に収納すると(ステップS308)、ノズル洗浄室406は、ノズル収納の後の洗浄として、局部洗浄ノズル404の外周に水を噴射してその胴体を洗浄する(ステップS314)。これと略同時に、制御部200は、便器洗浄を実行する(ステップS310)。このように、後洗浄(ステップS314)と、便器洗浄動作(ステップS310)と、を同時に実行させたとしても、後洗浄(ステップS314)の実行時間は短いため、給水圧の低下が問題になるおそれは少ない。続いて、後洗浄(ステップS314)および便器洗浄動作(ステップS310)が完了すると、トイレ装置は待機状態となる(ステップS312)。
【0036】
図6は、図4に表した動作の他の変形例を例示するフローチャート図である。
図4に表した動作においては、制御部200は、局部洗浄ノズル404の収納の完了を待たずして便器洗浄を実行するのに対して、本変形例においては、局部洗浄ノズル404の収納が完了した後に便器洗浄を実行する(ステップS310)。これにより、後に詳述するように、ボウルの上部内周面から便器洗浄水をボウルに落として便器洗浄を行う場合に、便器洗浄水と局部洗浄ノズルとが干渉することをより確実に防止することができる。その他の動作については、図4に関して前述した動作と同様である。
【0037】
図7は、本実施形態にかかるトイレ装置の一例を例示する模式図である。
また、図8は、図7に例示したトイレ装置の一部拡大斜視図である。すなわち、図8(a)は、便器のボウルの後部上端付近を表し、図8(b)はこの部分から局部洗浄ノズルが進出した状態を表す。
【0038】
図7に表したトイレ装置は、便器(大便器)500と、その上部に設けられたケーシング430と、ケーシング430に対して開閉自在に軸支された便座432と、を備えている。ケーシング430の内部には、局部洗浄を実現するための局部洗浄機能部400や、制御部200などが内蔵されている。すなわち、図示しない着座センサなどにより使用者が便座432に座ったことを検知し、使用者のスイッチ操作などに応じて、局部洗浄ノズル404を便器500のボウル510内に進出させ、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、便座432に座った使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。
【0039】
また、ケーシング430には、便座432に座った状態の使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥ユニット」や、ボウル内の空気を吸引して臭気成分を除去する「脱臭ユニット」や、温風を周囲に吹き出してトイレ空間を暖房する「室内暖房ユニット」などの各種の機構を適宜設けることもできる。
【0040】
そして、図7および図8に表したトイレ装置においては、便器500に切り欠き530が設けられ、この切り欠き530に設けられたシャッター420を介して局部洗浄ノズル404が便器500のボウル510に進出可能とされている。
【0041】
一方、便器500のボウル510の上方には、便器洗浄水の導水流路510Rが設けられている。導水流路510Rは、ボウル510の上方においてボウル510の上端に対して略平行な凹状の流水路として設けられている。便器500を洗浄する便器洗浄水は、例えば、図7において矢印510Sで示した部分に設けられた吐水口(図示せず)から、導水流路510Rの略接線方向に向けて吐出される。吐出された便器洗浄水は、導水流路510Rに沿って旋回しながらボウル510の下方に流下する。但し、図7に表したトイレ装置においては、便器洗浄水が導水流路510Rに沿って旋回しながらボウル510の下方に流下する場合を例に挙げたが、これだけに限られるわけではなく、例えば導水流路510Rの上方に設けられた単数あるいは複数の吐水口(図示せず)から旋回することなく略直接的にボウル510の下方に流下してもよい。
【0042】
前述したように、便器500のボウル510の後方の上端には、ボウル510に臨む開口を有する切り欠き530が設けられている。そして、切り欠き530のボウル510に臨む開口には、シャッター420と、これを保持する基部410と、を有する開閉手段が設けられている。切り欠き530は、ボウル510の上方に凹設された便器洗浄水の導水流路510Rの一部と重なっている。そして、図8(a)に表したように、シャッター420が閉じた状態においては、基部410及びシャッター420の表面は、導水流路510Rの一部を構成している。シャッター420は、導水流路510Rの上半分に設けられ、シャッター420が閉じた状態においてシャッター420の表面は斜め下方を向いている。なお、開閉手段の上端は、ケーシング430の下面に密接している。
【0043】
基部410とシャッター420の表面は、隣接する導水流路510Rのボウル面と略連続した壁面を構成している。ここで、「略連続」とは、シャッター420の表面と導水流路510Rのボウル面とが面一あるいはわずかな段差がある状態を意味する。その結果として、基部410とシャッター420の表面は、導水流路510Rを流れる便器洗浄水の流れを妨げたり飛散することは殆どない。
【0044】
一方、図8(b)に表したように、局部洗浄ノズル404はシャッター420の裏側に収納され、使用時にはシャッター420を開いてボウル510の内に進出する。すなわち、「おしり」などの洗浄を実行する際には、ボウル510に開口する切り欠き530から局部洗浄ノズル404を進出させる。このように、ボウル510に切り欠き530を設け、この切り欠き530から局部洗浄ノズル404を進出させることにより、ケーシング430の高さを低くすることができる。その結果として、ケーシング430に軸支する便座432の軸支部の高さを低くすることができるため、座面の水平部を広くして、開放的で座り心地のよいトイレ装置を提供できる。
【0045】
しかしながら、図7および図8に表したトイレ装置において、図2〜図6に表したような動作を行うことなく、便器洗浄中に局部洗浄が実行されたり、局部洗浄中に便器洗浄が実行されると、便器洗浄水と局部洗浄ノズル404とが干渉して、便器洗浄水が水跳ねし、その水跳ねした水が使用者の臀部にぶつかるおそれがある。さらに、ボウル510内に進出した局部洗浄ノズル404が導水流路510Rの一部を塞いでしまうため、便器洗浄水がボウル510内に十分に行き渡らず、ボウル510の一部に不洗浄区域が生ずるおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施形態にかかるトイレ装置によれば、図2〜図6に表したような動作を行うことによって、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合や、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合であっても、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。
【0047】
より具体的には、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合には、制御部200は、局部洗浄の実行を禁止し、便器洗浄の動作を優先的に実行することができる。あるいは、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、制御部200は、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行することができる。あるいは、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、制御部200は、局部洗浄の動作を途中で中止し、便器洗浄の動作を優先的に実行することができる。
【0048】
これにより、便器洗浄水と局部洗浄ノズル404とが干渉することはなく、水跳ねした便器洗浄水が使用者の臀部にぶつかることを防止することができる。さらに、局部洗浄ノズル404が便器洗浄水の導水流路510Rの一部を塞ぐことはなく、便器洗浄性能を損なわないようにすることができる。
【0049】
以下、本実施形態の具体例について図面を参照しつつ説明する。
現在、トイレ装置の便器洗浄方式は種々の方式があるが、それらの内のいくつかを例に挙げて説明する。
図9は、密結タンク式(ロータンク式)のトイレ装置を例示する模式図である。
本具体例のトイレ装置は、便器(大便器)500と、その上部に設けられたケーシング430と、ケーシング430に対して開閉自在に軸支された便座432と、ケーシング430および便座432の後方に設けられたロータンク310と、を備えている。またさらに、例えば壁面などに、操作装置100が設けられている。
【0050】
ケーシング430の内部には、局部洗浄を実現するための局部洗浄機能部400や、制御部200などが内蔵されている。また、ロータンク310の内部には、便器洗浄を実現するための便器洗浄水供給手段302が内蔵され、ロータンク310の外部には、操作ハンドル303が設けられている。便器洗浄水供給手段302は、図示しない洗浄モータを有している。使用者が操作装置100または操作ハンドル303を操作して便器洗浄を実行すると、制御部200は洗浄モータを駆動して図示しない排水弁を動作させる。
【0051】
図10は、本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。すなわち、図10(a)は、便器洗浄の基本動作を例示するタイミングチャート図であり、図10(b)は、局部洗浄の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
【0052】
図10(a)に表したように、使用者が操作装置100または操作ハンドル303を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行すると、制御部200は便器洗浄水供給手段302の有する洗浄モータを駆動させる。洗浄モータが駆動すると、これと連動してロータンク310への給水が開始され、一方で、便器500のボウル510内に便器洗浄水が排水(供給)される。なお、ロータンク310の内部には、ロータンク310の給水弁を自動的に開閉する図示しないボールタップが設けられている。
【0053】
ロータンク310内の便器洗浄水がボウル510内に排水されてから、所定時間T1が経過すると、排水弁が自動的に閉塞され、ボウル510内への排水が停止する。一方、ロータンク310への給水は継続する。続いて、排水弁が閉塞されてから所定時間T2が経過すると、ロータンク310内が満水となり、ボールタップにより自動的に給水弁が閉塞され、ロータンク310への給水が停止する。
【0054】
また、図10(b)に表したように、使用者が操作装置100を操作して「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などを実行すると、局部洗浄装置においては、まず前洗浄が行われる。前洗浄とは、局部洗浄ノズル404を進出させる前の洗浄として、ノズル洗浄室406が局部洗浄ノズル404の外周に水を噴射してその胴体を洗浄することをいう。この前洗浄が行われる際には、局部洗浄電磁弁が開放され、ヒータが駆動する。ここで、ヒータとは、図4に関して前述したように、使用者が局部洗浄水に対して冷たさを感じないように、局部洗浄水を所定温度に温める装置である。
【0055】
前洗浄が完了すると、制御部200は、ノズル駆動手段402の有するノズルモータを駆動させ、局部洗浄ノズル404をボウル510内に進出させる。この際には、局部洗浄電磁弁は閉止され、ヒータは駆動していない。局部洗浄ノズル404の進出が完了すると、制御部200は局部洗浄電磁弁を開放し、局部洗浄を実行する。このとき、ヒータも同時に駆動し、局部洗浄水を温めている。使用者が操作装置100の「止」スイッチを操作すると、制御部200は局部洗浄電磁弁を閉止し、ヒータの駆動も停止する。一方、制御部200はノズルモータを駆動させ、局部洗浄ノズル404を収納する。局部洗浄ノズル404の収納が完了すると、ノズル洗浄室406は、局部洗浄ノズル404の後洗浄を行う。
【0056】
このような便器洗浄および局部洗浄の基本動作に対して、本実施形態のトイレ装置は、図2〜図6に関して前述したように、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。
【0057】
図11は、本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
図11に表した動作は、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合には、局部洗浄の実行を禁止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図2に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0058】
使用者が操作装置100または操作ハンドル303を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行し、ロータンク310への給水が行われている際に、使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチを操作した場合には、制御部200は、図11に表したように、この「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチの操作を受け付けない。したがって、ロータンク310への給水の動作M1と、局部洗浄電磁弁が開放する動作と、が重複することはなく、給水圧が低下して必要な水圧が得られないということはない。すなわち、便器洗浄と局部洗浄とが同時に行われて給水圧が低下することによって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0059】
図12は、本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するフローチャート図である。
図12に表したフローチャート図の動作は、図2に表したフローチャート図の動作の変形例である。
制御部200は、現在便器洗浄が動作中であるか否かを判断し(ステップS102)、便器洗浄が動作中でないと判断した場合には(ステップS102:NO)、続いて便器洗浄動作が完了した後に所定時間Tsが経過したか否かを判断する(ステップS120)。ここで、所定時間Tsとは、ロータンク310が満水になるまでの給水時間をいう。便器洗浄動作が完了した後に所定時間Tsが経過していれば(ステップS120:YES)、制御部200は、局部洗浄を実行する(ステップS104)。すなわち、ロータンク310が満水となり給水が停止していれば、ロータンク310への給水の動作M1と、局部洗浄電磁弁が開放する動作と、が重複することはないため(図11参照)、給水圧が低下することによって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0060】
一方、便器洗浄動作が完了した後に所定時間Tsが経過していなければ(ステップS120:NO)、制御部200は、局部洗浄を実行することなくステップS100へ戻る。すなわち、便器洗浄の動作中でなくとも、ロータンク310への給水が完了していなければ、ロータンク310への給水の動作M1と、局部洗浄電磁弁が開放する動作と、が重複するため、制御部200は局部洗浄を実行しない。その他の動作については、図2に関して前述した動作と同様である。
【0061】
このように、便器洗浄動作が完了した後に所定時間Ts(給水時間)が経過したか否かを判断することにより、ロータンク310内が満水にならなければ局部洗浄が実行されない。したがって、給水圧が低下して必要な水圧が得られないことにより、局部洗浄性能および便器洗浄性能が損なわれることをより確実に防止することができる。
【0062】
図13は、本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
図13に表した動作は、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図3に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0063】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100の「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、制御部200は、図13に表したように、この「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付けない。したがって、局部洗浄電磁弁が開放する動作M3およびM4と、ロータンク310への給水の動作と、が重複することはなく、給水圧が低下して必要な水圧が得られないということはない。
【0064】
なお、図13においては、局部洗浄ノズル404が進出している途中に、使用者が操作装置100を操作した場合を例に挙げたが、これだけに限られるわけではなく、局部洗浄ノズル404の前洗浄の動作中(M3)または局部洗浄の動作中(M4)に、使用者が操作装置100を操作した場合であっても、制御部200はこの操作を受け付けないため、局部洗浄電磁弁が開放する動作M3およびM4と、ロータンク310への給水の動作と、が重複することはない。これにより、図11に関して前述したように、便器洗浄と局部洗浄とが同時に行われて給水圧が低下することによって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
また、操作ハンドル303を操作しようとした場合には、操作ハンドル303に図示せぬロック機構を設けておき、局部洗浄を実行している間にはロック機構が働いて操作ハンドル303が動かないようにすればよい。
【0065】
図14は、本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
図14に表した動作は、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、局部洗浄の動作を途中で中止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図5に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0066】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100の「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、制御部200は、便器洗浄をすぐには実行せず、ヒータの動作を停止して局部洗浄電磁弁を閉止しつつ、ノズルモータを駆動して局部洗浄ノズル404を収納する。したがって、局部洗浄電磁弁が開放する動作M6およびM7と、ロータンク310への給水の動作M10と、が重複することはない。
【0067】
続いて、局部洗浄ノズル404の収納が完了し、局部洗浄ノズル404の後洗浄が実行されると、制御部200は、洗浄モータを駆動して便器洗浄の動作を開始する。すなわち、局部洗浄の電磁弁が後洗浄のために開放する動作M8と、ロータンク310への給水の動作M10と、は重複する。このように、動作M8と動作M10とが重複したとしても、図5に関して前述したように、後洗浄の実行時間は短いため、給水圧の低下が問題になるおそれは少ない。したがって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるおそれは少ない。
また、前述したとおり、操作ハンドル303を操作しようとした場合には、操作ハンドル303に図示せぬロック機構を設けておき、局部洗浄を実行している間にはロック機構が働いて操作ハンドル303が動かないようにすればよい。
【0068】
図15は、直圧電磁弁駆動式のトイレ装置を例示する模式図である。すなわち、図15(a)は、本具体例のトイレ装置の平面模式図であり、図15(b)は、本具体例のトイレ装置の側面模式図である。
本具体例のトイレ装置は、便器(大便器)500と、この便器500の上面に配置された便座432と、便座4を覆うように配置された便蓋434と、便蓋434を開閉する電動開閉装置442と、便器500の後方上部に配置されたケーシング430と、人体を検知する人体検知手段440と、を備えている。本具体例においては、人体検知手段440として、便器500の前に立つ人体の有無を検知する人体検知センサ、または便座432に着座した人の有無を検知する着座センサのいずれかを用いることができる。さらに、便器500の後方には、便器500に便器洗浄水を供給する便器洗浄水供給手段302と制御部200が配置されており、この便器洗浄水供給手段302はサイドパネル300aにより覆われている。また、制御部200は、操作装置100との間で制御信号の受信又は送信を行う。
【0069】
便器500には、汚物を受けるボウル510と、このボウル510の底部から延びる排水トラップ管路524と、ゼット吐水を行うゼット吐水口522と、リム吐水を行うリム吐水口520と、設けられている。
ゼット吐水口522は、ボウル510の底部に形成されており、排水トラップ管路524の入口に指向してほぼ水平に配置され、便器洗浄水を排水トラップ管路524に向けて吐出するようになっている。
リム吐水口520は、ボウル510の左側上部後方に形成されており、ボウル510の上縁に沿って便器洗浄水を吐出するようになっている。
排水トラップ管路524は、入口部524aと、この入口部524aから上昇するトラップ上昇管524bと、このトラップ上昇管524bから下降するトラップ下降管524cと、を有し、トラップ上昇管524bとトラップ下降管524cとの間が頂部524dとなっている。
【0070】
便器洗浄水供給手段302は、図15(b)に表したように、リム吐水口520へ導く給水管路を開閉するリム電磁弁304と、ゼット吐水口へ導く給水管路を開閉するゼット電磁弁306と、を内蔵している。リム電磁弁304およびゼット電磁弁306は、便器洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口520およびゼット吐水口522から便器洗浄水が吐出される。
【0071】
図16は、本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。すなわち、図16(a)は、便器洗浄の基本動作を例示するタイミングチャート図であり、図16(b)は、局部洗浄の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
なお、図16(b)に表した局部洗浄の基本動作は、図10(b)に表した局部洗浄の基本動作と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0072】
図16(a)に表したように、使用者が操作装置100を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行すると、制御部200は、まずリム電磁弁304を開放してリム吐水口520から便器洗浄水を吐水し、ボウル510の洗浄動作を行う。続いて、リム電磁弁304を開放して所定時間T5が経過すると、制御部200は、リム電磁弁304を閉止してボウル510の洗浄動作を停止する。これと略同時に、ゼット電磁弁306を開放してゼット吐水口522から便器洗浄水を吐水し、ボウル510内の汚物を排水トラップ管路524に向けて排出する。続いて、ゼット電磁弁306を開放して所定時間T6が経過すると、制御部200は、ゼット電磁弁306を閉止して汚物の排出を停止する。これと略同時に、リム電磁弁304を所定時間T7だけ再び開放してリム吐水口520から便器洗浄水を吐水し、ボウル510に封水を確保する。
【0073】
このような便器洗浄および局部洗浄の基本動作に対して、本実施形態のトイレ装置は、図2〜図6に関して前述したように、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。
【0074】
図17は、本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
図17に表した動作は、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合には、局部洗浄の実行を禁止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図2に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0075】
使用者が操作装置100を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行し、リム吐水口520またはゼット吐水口522から便器洗浄水が吐水されている際に、使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチを操作した場合には、制御部200は、図17に表したように、この「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチの操作を受け付けない。したがって、リム電磁弁304が開放する動作M11及びM12、並びにゼット電磁弁306が開放する動作M13と、局部洗浄電磁弁が開放する動作と、が重複することはなく、給水圧が低下して必要な水圧が得られないということはない。すなわち、便器洗浄と局部洗浄とが同時に行われて給水圧が低下することによって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0076】
但し、ゼット吐水口522から便器洗浄水を吐水してボウル510内の汚物を排水トラップ管路524に向けて排出する前の動作であって、リム吐水口520から便器洗浄水を吐水してボウル510の洗浄動作を行う際に、使用者が局部洗浄の操作をした場合には、便器洗浄を停止して局部洗浄の動作を割り込ませて優先的に実行してもよい。これは、リム吐水口520から便器洗浄水を吐水してボウル510の洗浄動作を行う動作においては、未だ封水が確保されており、この段階で便器洗浄を停止させたとしても、封水切れが生じてボウル510と外部配水管Dとが連通することはないためである。すなわち、外部配水管Dに排出された排泄物などの臭いが、ボウル510に伝わってくることはない。ここで、封水切れとは、ボウル510と、外部配水管Dと、が封水550によって仕切られることなく連通した状態をいう。
【0077】
図18は、本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するタイミングチャート図である。 図18に表した動作は、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図3に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0078】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100の「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、制御部200は、図18に表したように、この「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付けない。したがって、局部洗浄ノズル404が進出する動作および進出した動作M15と、リム電磁弁304およびゼット電磁弁306が開放する動作と、が重複することはない。すなわち、リム電磁弁304が開放してリム吐水口520から便器洗浄水が吐水されることはないため、局部洗浄ノズル404と、リム吐水口520から吐水された便器洗浄水と、が干渉することはない。
【0079】
これに対して、局部洗浄を実行している際に「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付ける比較例によれば、局部洗浄ノズル404が進出する動作および進出した動作M15と、リム電磁弁304が開放してリム吐水口520から便器洗浄水が吐水される動作M17およびM18と、が重複する。そのため、図7および図8に関して前述したように、水跳ねや不洗浄区域が生ずるおそれがある。つまり、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるおそれがある。
【0080】
図19は、本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するタイミングチャート図である。 図19に表した動作は、図18に表した動作と同様に、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図3に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0081】
図18に関して前述したように、局部洗浄を実行している際には「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付けないため、局部洗浄電磁弁が開放する動作M19およびM20と、リム電磁弁304およびゼット電磁弁306が開放する動作と、が重複することはない。そのため、給水圧が低下して必要な水圧が得られないということはない。
【0082】
これに対して、局部洗浄を実行している際に「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付ける比較例によれば、リム電磁弁304が開放する動作M22及びM23、並びにゼット電磁弁306が開放する動作M24と、局部洗浄電磁弁が開放する動作M20と、が重複する。そのため、給水圧が低下して必要な水圧が得られないおそれがある。つまり、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるおそれがある。
【0083】
なお、本具体例のトイレ装置においても、図14に関して前述した動作と同様に、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、局部洗浄の動作を途中で中止し、便器洗浄の動作を優先的に実行することもできる。
【0084】
図20は、直圧タンクポンプ駆動式のトイレ装置を例示する模式図である。すなわち、図20(a)は、本具体例のトイレ装置の平面模式図であり、図20(b)は、本具体例のトイレ装置の側面模式図である。
本具体例のトイレ装置の便器洗浄水供給手段302は、図20(b)に表したように、給水管路を開閉する便器洗浄電磁弁308と、便器洗浄水をゼット吐水口522とリム吐水口520とに分配する給水路切替弁(リム電磁弁)320と、ゼット吐水口522に給水する便器洗浄水を貯水するゼット用タンク312と、貯水された便器洗浄水を加圧してゼット吐水口522に供給するゼットポンプ314と、を内蔵している。
【0085】
便器洗浄電磁弁308は、便器洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口520から便器洗浄水が吐出される。一方、ゼット吐水に関しては、便器洗浄水供給手段302に内蔵されたゼット用タンク312に貯水された便器洗浄水をゼットポンプ314によって加圧して、大流量で便器洗浄水がゼット吐水口522から吐出される。なお、その他の構造については、図15に表したトイレ装置と同様である。
【0086】
図21は、本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。すなわち、図21(a)は、便器洗浄の基本動作を例示するタイミングチャート図であり、図21(b)は、局部洗浄の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
なお、図21(b)に表した局部洗浄の基本動作は、図10(b)に表した局部洗浄の基本動作と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0087】
図21(a)に表したように、使用者が操作装置100を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行すると、制御部200は、まず便器洗浄電磁弁308を開放しつつ、給水路切替弁(リム電磁弁)320の給水先をリム吐水口520に切り替えて、リム吐水口520から便器洗浄水を吐水し、ボウル510の洗浄動作を行う。続いて、給水路切替弁320の給水先をリム吐水口520に切り替えて所定時間T10が経過すると、制御部200は、給水路切替弁320の給水先をゼット吐水口522に切り替えつつ、ゼットポンプ314を駆動してゼット吐水口522から便器洗浄水を吐水し、ボウル510内の汚物を排水トラップ管路524に向けて排出する。
【0088】
また、ゼットポンプ314を駆動するタイミングと略同時に、図示しないフロートスイッチが「切」に切り替わり、ゼット用タンク312への給水を開始する。なお、フロートスイッチとは、ゼット用タンク312に貯水された水の満水状態を検知するものであり、ゼット用タンク312が満水の場合には「入」に切り替わり、ゼット用タンク312が満水でない場合には「切」に切り替わる。
【0089】
続いて、給水路切替弁320の給水先をゼット吐水口522に切り替えて所定時間T11が経過すると、制御部200は、再び、給水路切替弁320の給水先をリム吐水口520に切り替えてリム吐水口520から便器洗浄水を吐水し、ボウル510に封水を確保する。このとき、給水路切替弁320の給水先はリム吐水口520に切り替えられるため、ゼット用タンク312への給水の駆動は、一旦停止する。
【0090】
続いて、給水路切替弁320の給水先をリム吐水口520に切り替えて所定時間T12が経過し、封水が確保されると、制御部200は、再び、給水路切替弁320の給水先をゼット吐水口522に切り替えて、ゼット用タンク312への給水を再開する。ゼット用タンク312が満水になるとフロートスイッチは「入」に切り替わり、ゼット用タンク312への給水が開始されてから所定時間Tsが経過すると、ゼット用タンク312への給水の駆動は停止する。これと略同時に、制御部200は便器洗浄電磁弁308を閉止する。
【0091】
このような便器洗浄および局部洗浄の基本動作に対して、本実施形態のトイレ装置は、図2〜図6に関して前述したように、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。
【0092】
図22は、本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
図22に表した動作は、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図3に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0093】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100の「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、制御部200は、図22に表したように、この「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付けない。したがって、局部洗浄水を所定温度に温めるヒータの動作M25と、ゼットポンプ314の動作と、が重複することはない。
【0094】
局部洗浄水を所定温度に温めるヒータを動作させるためには、大きな電流が必要となる。一方、ゼットポンプ314を動作させる際にも、大きな電流が必要となる。したがって、ヒータの動作とゼットポンプ314の動作とが重複すると、必要な電流が得られず、局部洗浄と便器洗浄との性能が低下するおそれがある。本具体例のトイレ装置の動作によれば、ヒータの動作M25と、ゼットポンプ314の動作と、が重複することはないため、必要な電流が得られないことはなく、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0095】
これに対して、局部洗浄を実行している際に「大」洗浄や「小」洗浄の操作を受け付ける比較例によれば、ゼットポンプ314の動作M27と、ヒータの動作M25と、が重複するため、必要な電流が得られず、局部洗浄と便器洗浄との性能が低下するおそれがある。つまり、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるおそれがある。
【0096】
図23は、本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するタイミングチャート図である。 図23に表した動作は、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、局部洗浄の動作を途中で中止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図4および図5に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0097】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100の「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、制御部200は、便器洗浄をすぐには実行せず、ヒータの動作を停止して局部洗浄電磁弁を閉止しつつ、ノズルモータを駆動して局部洗浄ノズル404を収納する。したがって、局部洗浄水を所定温度に温めるヒータの動作M28と、ゼットポンプ314の動作M31と、が重複することはない。
【0098】
続いて、局部洗浄ノズル404の収納が開始されるタイミングと略同時に、制御部200は、給水路切替弁(リム電磁弁)320およびゼットポンプ314を駆動させて便器洗浄の動作を開始する。このとき、局部洗浄ノズル404の後洗浄が開始されても、制御部200はヒータを駆動しない。これにより、後洗浄におけるヒータの動作と、ゼットポンプ314の動作M31と、が重複することを防止することができる。その結果、ヒータの動作M28と、ゼットポンプ314の動作M31と、が重複することはないため、必要な電流が得られないことはなく、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0099】
図24は、本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
図24に表した動作は、図23に表した動作と同様に、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、局部洗浄の動作を途中で中止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図3および図5に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0100】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100の「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、図23に表した動作と同様に、制御部200は、便器洗浄をすぐには実行せず、ヒータの動作を停止して電磁弁を閉止しつつ、ノズルモータを駆動して局部洗浄ノズル404を収納する。
【0101】
続いて、局部洗浄ノズル404の収納が完了し、さらに局部洗浄ノズル404の後洗浄が完了すると、制御部200は、給水路切替弁(リム電磁弁)320およびゼットポンプ314を駆動させて便器洗浄の動作を開始する。したがって、ヒータの動作M32およびM33と、ゼットポンプ314の動作M34が重複することはないため、必要な電流が得られないことはなく、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0102】
なお、本具体例のトイレ装置においても、図11に関して前述した動作と同様に、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合には、局部洗浄の実行を禁止し、便器洗浄の動作を優先的に実行することができる。但し、この動作において、ゼットポンプ314を駆動してゼット吐水口522から便器洗浄水を吐水する前の動作であって、リム吐水口520から便器洗浄水を吐水する際に、使用者が局部洗浄の操作した場合には、便器洗浄を停止して局部洗浄の動作を割り込ませて優先的に実行してもよい。これは、便器洗浄の初期段階においては、大きな電流が必要となるゼットポンプ314が駆動することはなく、局部洗浄水を所定温度に温めるヒータの動作と、ゼットポンプ314の駆動と、が重複して必要な電流が得られないということはないためである。
【0103】
図25は、回動トラップ式のトイレ装置を例示する模式図である。
本具体例のトイレ装置は、ボウル510を有する便器(大便器)500と、便器500の後方上部に配置されたケーシング430と、便器500の後方下部に設けられボウル510内に一定の封水を確保するための回動トラップ部540と、を備えている。ケーシング430の内部には、制御部200と、便器洗浄電磁弁316と、回動トラップ部540の最上位置と最下位置とをそれぞれ検知する検知センサ318と、が設けられている。便器洗浄電磁弁316は、例えば、水道に直結されており、便器洗浄電磁弁316を開放することによりボウル510内に封水を確保することができる。またさらに、例えば壁面などに、操作装置100が設けられている。
【0104】
図26は、本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。 図26に表したように、使用者が操作装置100を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行すると、制御部200は、図25(a)から図25(b)に表したように、図示しないモータを駆動して回動トラップ部540を矢印Aの方向に下回動させつつ、便器洗浄電磁弁316を開放する。その結果、封水550は回動トラップ部540の上部から矢印A2の方向に排出される。
【0105】
続いて、封水550の容量がEに表した容量分だけ減少すると、制御部200は、図25(b)から図25(c)に表したように、回動トラップ部540をさらに矢印A4の方向に下回動させ、封水550を汚物と共に一気にA3の方向に排出する。検知センサ318が回動トラップ部540の最下位置を検知してから所定時間T15が経過すると、制御部200は、図示しないモータを駆動して回動トラップ部540を上回転させる。回動トラップ部540が上回転し、検知センサ318が回動トラップ部540の最上位置を検知すると、制御部200は回動トラップ部540の回動を停止させる。その後、所定時間T16が経過し、ボウル510内に封水550が確保されると、制御部200は便器洗浄電磁弁316を閉止して例えば水道からの給水を停止する。
【0106】
このような便器洗浄の基本動作に対して、本実施形態のトイレ装置は、図2〜図6に関して前述したように、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。
【0107】
図27は、本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
図27に表した動作は、便器洗浄中に局部洗浄が操作された場合には、局部洗浄の実行を禁止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図2に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0108】
使用者が操作装置100を操作して便器500の「大」洗浄または「小」洗浄を実行し、ボウル510へ便器洗浄水が吐水されている際に、使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチを操作した場合には、制御部200は、図27に表したように、この「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄などのスイッチの操作を受け付けない。したがって、便器洗浄電磁弁316が開放する動作M35と、局部洗浄電磁弁が開放する動作と、が重複することはなく、給水圧が低下して必要な水圧が得られないということはない。すなわち、便器洗浄と局部洗浄とが同時に行われて給水圧が低下することによって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0109】
なお、本具体例のトイレ装置の動作において、回動トラップ部540が下回転し、封水切れを生ずる前に、使用者が局部洗浄の操作をした場合には、便器洗浄を停止して局部洗浄の動作を割り込ませて優先的に実行してもよい。ここで、封水切れとは、例えば図25(c)に表したような状態であり、前述したように、ボウル510と、外部配水管Dと、が封水550によって仕切られることなく連通した状態をいう。封水切れが生ずる前に便器洗浄を停止させたとしても、ボウル510と外部配水管Dとが連通することはないため、外部配水管Dに排出された排泄物などの臭いが、ボウル510に伝わってくることはない。
【0110】
図28は、本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
図28に表した動作は、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、局部洗浄の動作を途中で中止し、便器洗浄の動作を優先的に実行する動作であり、図5に表したフローチャート図に対応するタイミングチャート図である。
【0111】
使用者が操作装置100の「おしり」洗浄や「ビデ」洗浄のスイッチを操作して、局部洗浄を実行している際に、使用者が操作装置100「大」洗浄や「小」洗浄を操作した場合には、制御部200は、便器洗浄をすぐには実行せず、ヒータの動作を停止して局部洗浄電磁弁を閉止しつつ、ノズルモータを駆動して局部洗浄ノズル404を収納する。したがって、局部洗浄電磁弁が開放する動作M36およびM37と、便器洗浄電磁弁316が開放する動作M39と、が重複することはない。
【0112】
続いて、局部洗浄ノズル404の収納が完了し、局部洗浄ノズル404の後洗浄が実行されると、制御部200は、便器洗浄電磁弁316を開放して便器洗浄の動作を開始する。すなわち、局部洗浄電磁弁が後洗浄のために開放する動作M38と、便器洗浄電磁弁316が開放する動作M39と、は重複する。このように、動作M38と動作M39とが重複したとしても、図5に関して前述したように、後洗浄の実行時間は短いため、給水圧の低下が問題になるおそれは少ない。したがって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるおそれは少ない。
【0113】
なお、本具体例のトイレ装置においても、図13に表した動作と同様に、局部洗浄中に便器洗浄が操作された場合には、便器洗浄の実行を禁止し、局部洗浄の動作を優先的に実行することもできる。
【0114】
以上説明したように、本実施形態によれば、便器洗浄水供給手段302による便器洗浄水の供給と、ノズル駆動手段402による局部洗浄ノズル404の進出と、を同時に実行しないようにすることができる。これにより、便器洗浄水と局部洗浄ノズル404とが干渉することはなく、水跳ねや不洗浄区域が生ずることはない。また、給水圧が低下して必要な水圧が得られないということはない。さらに、局部洗浄に関する電力と、便器洗浄に関する電力と、が重複して必要な電力が得られないということはない。したがって、便器洗浄性能および局部洗浄性能が損なわれるということはない。
【0115】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置や局部洗浄ノズル404などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや操作装置100および制御部200の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の構成を例示するブロック図である。
【図2】本実施形態にかかるトイレ装置の動作の具体例を例示するフローチャート図である。
【図3】本実施形態にかかるトイレ装置の動作の他の具体例を例示するフローチャート図である。
【図4】本実施形態にかかるトイレ装置の動作のさらに他の具体例を例示するフローチャート図である。
【図5】図4に表した動作の変形例を例示するフローチャート図である。
【図6】図4に表した動作の他の変形例を例示するフローチャート図である。
【図7】本実施形態にかかるトイレ装置の一例を例示する模式図である。
【図8】図7に例示したトイレ装置の一部拡大斜視図である。
【図9】密結タンク式(ロータンク式)のトイレ装置を例示する模式図である。
【図10】本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
【図11】本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図12】本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するフローチャート図である。
【図13】本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図14】本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図15】直圧電磁弁駆動式のトイレ装置を例示する模式図である。
【図16】本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
【図17】本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図18】本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図19】本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図20】直圧タンクポンプ駆動式のトイレ装置を例示する模式図である。
【図21】本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
【図22】本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図23】本具体例のトイレ装置の他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図24】本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図25】回動トラップ式のトイレ装置を例示する模式図である。
【図26】本具体例のトイレ装置の基本動作を例示するタイミングチャート図である。
【図27】本具体例のトイレ装置の動作を例示するタイミングチャート図である。
【図28】本具体例のトイレ装置のさらに他の動作を例示するタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0117】
100 操作装置、 200 制御部、 300a サイドパネル、 302 便器洗浄水供給手段、 303 操作ハンドル、 304 リム電磁弁、 306 ゼット電磁弁、 308 便器洗浄電磁弁、 310 ロータンク、 312 ゼット用タンク、 314 ゼットポンプ、 316 便器洗浄電磁弁、 318 検知センサ、 320 給水路切替弁(リム電磁弁)、 400 局部洗浄機能部、 402 ノズル駆動手段、 404 局部洗浄ノズル、 406 ノズル洗浄室、 410 基部、 420 シャッター、 430 ケーシング、 432 便座、 434 便蓋、 440 人体検知手段、 442 電動開閉装置、 500 便器、 510 ボウル、 510R 導水流路、 510S 矢印、 520 リム吐水口、 522 ゼット吐水口、 524 排水トラップ管路、 524a 入口部、 524b トラップ上昇管、 524c トラップ下降管、 524d 頂部、 530 切り欠き、 540 回動トラップ部、 550 封水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルを有する大便器と、
前記ボウルに便器洗浄水を供給する便器洗浄水供給手段と、
前記ボウル内に局部洗浄ノズルを進退させるノズル駆動手段を有する局部洗浄装置と、
便器洗浄を実行する指令と局部洗浄を実行する指令を手動によりそれぞれ入力可能とした操作装置と、
前記便器洗浄水供給手段および前記ノズル駆動手段の動作を制御し、前記便器洗浄水供給手段による前記便器洗浄水の供給と、前記ノズル駆動手段による前記局部洗浄ノズルの進出と、を同時に実行しない制御部と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記便器洗浄水供給手段により前記便器洗浄水を前記ボウルに供給している場合には、前記局部洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されても前記局部洗浄の実行を禁止することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ノズル駆動手段により前記局部洗浄ノズルを前記ボウル内に進出させている場合には、前記便器洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されても前記便器洗浄の実行を禁止することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ノズル駆動手段により前記局部洗浄ノズルを前記ボウル内に進出させている場合には、前記便器洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されると、前記局部洗浄ノズルを退行させ、前記便器洗浄水供給手段を制御して前記便器洗浄水の供給を開始することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記局部洗浄の実行が禁止されたことを報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記報知手段は、前記局部洗浄の実行が禁止された後であって、前記便器洗浄の動作が完了した際に、前記便器洗浄の動作が完了したことを報知することを特徴とする請求項5記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記便器洗浄の実行が禁止されたことを報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載のトイレ装置。
【請求項8】
前記報知手段は、前記便器洗浄の実行が禁止された後であって、前記局部洗浄の動作が完了した際に、前記局部洗浄の動作が完了したことを報知することを特徴とする請求項7記載のトイレ装置。
【請求項9】
前記便器洗浄は、前記ボウルのリム吐水口から便器洗浄水を吐水する工程と、前記ボウルのゼット吐水口から便器洗浄水を吐水する工程と、を順次実行し、
前記制御部は、前記ゼット吐水口から前記便器洗浄水を吐水する工程の前に、前記リム吐水口から前記便器洗浄水を吐水する工程において、前記局部洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されると、前記便器洗浄を停止して前記局部洗浄を実行することを特徴とする請求項2または4に記載のトイレ装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記便器洗浄の動作によって前記ボウルの封水が排出されて封水切れを起こす前に、前記局部洗浄を実行する指令が前記操作装置に入力されると、前記便器洗浄を停止して前記局部洗浄を実行することを特徴とする請求項2または4に記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−243099(P2009−243099A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89558(P2008−89558)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】