説明

トップエミッション型OLEDの乾燥剤膜

トップエミッション型OLED装置(200A)は、基板(202)と、基板の上方に配置された第1電極(204)と、第1電極の上方に配置された有機EL媒体(212)と、を含む。この装置はまた、有機EL媒体の上方に配置された透明又は半透明な第2電極(214)と、第2電極上又は第2電極の上方に配置され、ホストと、該ホスト内に分子的に分散された乾燥剤材料と、を有する光透過性乾燥剤膜と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップエミッション型OLED装置に乾燥剤を用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なマイクロエレクトロニクス装置が、装置の指定された動作及び/又は保存寿命内での装置性能の早すぎる劣化を防止するために、湿度レベルが約2500ppmから5000ppmの範囲に限定されることを必要としている。一般的には、このパッケージされた装置内における上記湿度レベル範囲への環境の制御は、装置を封入すること、又は装置と乾燥剤パッケージをカバーの中に封入することにより達成される。乾燥剤パッケージは、固体吸水粒子(乾燥剤)を収容する容器を含むか、又は、このような粒子をバインダに含ませる容器を含む。固体吸水粒子の例としては、モレキュラーシーブ材料、シリカゲル材料、酸化カルシウム、及び塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0003】
シリカゲル及びモレキュラーシーブは、物理的吸着型の乾燥剤である。酸化カルシウム及び塩化カルシウムは、化学吸着型乾燥剤である。吸着された水分は、高温でも除去されないため、化学吸着型乾燥剤は、シリカゲル及びモレキュラーシーブよりも効率的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸化カルシウム乾燥剤の粒子及び塩化カルシウム乾燥剤の粒子は、吸水の速度が遅い場合がある。また、クリーンルーム条件を必要とするマイクロエレクトロニクス装置において、このような微粒子材料を扱うのは問題となる場合がある。更に、多くの乾燥剤は白く、光を拡散する、又は、吸水後に光を拡散する。よって、このような乾燥剤は、必要な特徴を覆う又は邪魔をする可能性のある多くの応用法では使用できない。
【0005】
有機発光ダイオード(OLED)装置は、水分に影響されやすく、乾燥剤の恩恵を受けることができる電子装置の1種である。しかしながら、上述の問題のため、従来の乾燥剤は、トップエミッション型OLEDと呼ばれる装置には使われていない。この代わりに、従来の技術は、薄い膜のバリア層を使ってトップエミッション型OLEDを気密封止し、乾燥剤の必要性を限定する方法を教示する。非常に有用ではあるが、OLEDを薄膜バリア層内に確実に封止することは非常に難しい。ピンホール及び他の欠陥が生じて、水分が装置に入る通路を形成してしまう可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、トップエミッションOLED装置において、装置の性能に悪影響を及ぼさない、水分からの保護を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、トップエミッション型OLED装置であって、a)基板と、b)前記基板の上方に配置された第1電極と、c)前記第1電極の上方に配置された有機EL媒体と、d)前記有機EL媒体の上方に配置された透明又は半透明の第2電極と、e)前記第2電極上又は前記第2電極の上方に配置され、ホストと、該ホスト内の分子的に分散された乾燥剤材料と、を有する光透過性乾燥剤膜と、を含むトップエミッション型OLED装置により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、水分から保護され、これにより、長い寿命と良好な装置性能を達成できるトップエミッション型OLED装置を提供する。
【0009】
ホスト内の分子的に分散された乾燥剤を用意する1つの利点は、特に乾燥剤が金属錯体又は有機金属材料である場合に、凝集体又は粒子の形成を低減させることである。水とこのような金属含有材料との反応による一般的な副生成物の1つに、凝集しやすく、小さい粒子を形成しやすい金属酸化物の形成が挙げられる。このような凝集体及び粒子は、光を吸収する又は散乱させる場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ホストと、該ホスト内の分子的に分散された乾燥剤材料と、を有する光透過性の乾燥剤膜を使う。光透過性乾燥剤膜は、OLED内で生成された光が光透過性乾燥剤膜を通過するように、トップエミッション型OLED装置に設けられる。分子的に分散された乾燥剤は、水分の吸収前と吸収後の両方において光透過性である。
【0011】
本発明での使用に好適な乾燥剤は、金属錯体及び有機金属材料を含む。これらの乾燥剤材料は、水分を吸収する前と後とにおいて、光透過性である。「分子的に分散された乾燥剤」は、水と反応する分子(水反応性分子)又は水と反応する官能基(水反応性官能基)であり、不活性の「ホスト」内に設けられ、これにより、このような反応性分子又は反応性基が、乾燥剤の純粋な膜に比べて希釈されている。分子的に分散された乾燥剤は、後でより詳しく説明する。ホスト内に分子的に分散された乾燥剤を設ける1つの利点は、このような構成により、特に、乾燥剤が金属錯体又は有機金属材料である場合に凝集体又は粒子の形成を低減させることである。このような金属含有材料と水との反応の1つの一般的な副生成物として、凝集しやすく、小さな粒子を形成しやすい、金属酸化物の形成が挙げられる。このような凝集体及び粒子は、光を吸収する又は散乱させる場合がある。これは、光が乾燥剤を通過して射出されるときに望ましくない。
【0012】
「透明」という用語は、十分な光が通過して光像が形成されるという意味である。75%以上の透明度が好適である。
【0013】
有用な乾燥剤材料の1種は、水と反応したときに、炭素−水素結合を形成するが、アルコールを形成しない、ルイス酸有機金属構造を含む。アルコールは、アルコールがOLED装置に拡散できる場合に、OLED装置に悪影響を及ぼすことがある。この種の材料は、この懸念を限定する。好適な実施形態では、ルイス酸は、化学式Iに示す構造を有する。
1n−M−R2m (I)
ここで、
Mは、金属であり、
1は、少なくとも1つの炭素が金属と直接結合されている、有機置換基であり、
2は、酸素が金属に直接結合されているシリル酸化物置換基又は窒素が金属に直接結合されているアミド置換基であり、
n=1,2,3,又は4、m=0,1,2,又は3であり、nとmとは、化学式1が電荷的に中性であるようにMの要求する配位条件を満たすよう選択される。
【0014】
IIB族、IIIA族、IIIB族、又はIVB族から選択される金属又は遷移金属のうち第1の行にあるものが、本発明で有用である。好適には、金属は、Al,Zn,Ti,Mg,又はBである。
【0015】
1つより多いR1置換基が用いられる場合、R1置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。同様に、1つより多いR2置換基が用いられる場合、R2置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
1として使用できる有機置換基のいくつかの有用な例としては、その飽和炭素又は不飽和炭素が金属に結合されている、アルキル化合物、アルケニル化合物、アリール化合物、及びヘテロアリール化合物が挙げられる。これらの化合物は更に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、エーテル基、エステル基、又は第3級アミン基又はこれらの組み合わせにより置換されていてもよい。ここに挙げるものに限定されないが、R1のいくつかの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、フェニル基、及びピリジル基が挙げられる。これに加え、R1は、低重合体(オリゴマー)システム又は重合体(ポリマー)システムの一部であってもよい。例えば、R1は、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリメタクリラート、ポリシロキサン、又はポリフルオレン構造の一部であってもよい。
【0017】
以下の化学式IIに示すシリル酸化物を、本発明において、R2として選択できる。
【化1】

ここで、R3からR6は、有機置換基であり、pは0から1000の整数である。R3からR6に有用な有機置換基としては、アルキル化合物、アルケニル化合物、アリール化合物、及びヘテロアリール化合物が挙げられ、これらの化合物が更に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、エーテル基、エステル基、又は第3級アミン基又はこれらの組み合わせにより置換されていてもよい。好適には、R3からR6は、アルキル基又はアリール基である。
【0018】
以下の化学式IIIに示すアミドを、本発明のR2として選択できる。
【化2】

ここで、R8及びR9は有機置換基である。R8及びR9に有用な有機置換基としては、アルキル化合物、アルケニル化合物、アリール化合物、及びヘテロアリール化合物が挙げられ、これらの化合物が更に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、エーテル基、エステル基、又は第3級アミン基又はこれらの組み合わせにより置換されていてもよい。R8及びR9は、結合されて環構造を形成していてもよい。R8又はR9又はその両方が、低重合体システム又は重合体システムの一部であってもよい。例えば、R8又はR9は、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリメタクリラート、ポリシロキサン、又はポリフルオレン構造の一部であってもよい。
【0019】
化学式Iには示していないが、金属の中心と弱く又は強く配位する無電荷の部分が追加で存在してもよい。例えば、R1に加え、金属中心と配位する溶媒分子があってもよい。
【0020】
本発明を実施するために有用な乾燥剤材料の例としては、ここに挙げるものに限定されないが、Al(C253、Al(C493、B(C493、Zn(C492、Al(t−ブチル)3、Ti(t−ブチル)4、Mg(t−ブチル)2、Al(C492(N(C652)、Al(C49)(N(C6522、及び以下の構造が挙げられる。
【化3】

【0021】
反応式1から3は、MがAlである場合の化学式Iにおける様々なR1及びR2を例にして、これらの吸水性材料がどのように水と反応するかを示す。例えば、
Al(C493 + 3H2O → 3C410 + Al(OH)3 (1)
Al(C49)((OSi(CH3250252 + 3H2O →
410 + 2Si(OH)(CH325025 + Al(OH)3 (2)
Al(C492(N(C652) + 3H2O →
2C410 + 2NH(C652 + Al(OH)3 (3)
【0022】
これらの反応式からわかるように、全ての化合物のR1が水と反応し、炭素−水素結合を形成する。R2の場合、水との反応により、シリル酸素−水素結合又は窒素−水素結合が形成される。これらの置換基のいずれも、有害なアルコール種は形成しない。反応生成物はまた、可視光に対し実質的に透明である。いくつかの場合においては、気体副生成物の形成を回避できるという利点がある。これが望まれる場合、R1及びR2は、水との反応生成物が、50℃よりも低い温度において低い蒸気圧を有するように、6つ又はそれ以上の炭素原子を有するものから選択されるべきである。
【0023】
本発明のルイス酸有機金属乾燥剤を合成する方法は、「Salt Effects in Organic and Organometallic Chemistry,VCH Publishers,Inc,New York,1992」に記載されている。
【0024】
本発明を実施するために有用な他の乾燥剤材料としては、水と反応したときに、炭素−水素結合を形成するがアルコールを形成しない、負に帯電された有機金属錯体の反応塩が挙げられる。好適な実施形態では、反応塩は、以下の化学式IVに示す構造を有する。
(A+bc[M(R1n(R2m(X)l-q (IV)
ここで、Aは、bの電荷を有するカチオンであり、
Mは、金属であり、
1は、少なくとも1つの炭素が金属に直接結合されている有機置換基であり、
2は、酸素が金属に直接結合されているシリル酸化物又は窒素が金属に直接結合されているアミドであり、
Xは、pKa<7のアニオン置換基であり、
l=1又は2であり、
n=1,2,3,又は4であり、
m=0,1,2,又は3であり、
qは、アニオン有機金属錯体の電荷であって、1又は2であり、
b=q/cである。
【0025】
IIB族、IIIA族、IIIB族、又はIVB族又は遷移金属の第1の行から選択された金属が、本発明では有用である。好適には、選択される金属は、Al,Zn,Ti,Mg,又はBである。
【0026】
1つより多いR1置換基が使われる場合、R1置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。同様に、1つより多いR2置換基又はX置換基が使われる場合、R2置換基又はX置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
1及びR2のいくつかの有用な例としては、上に化学式Iに関して説明されたものが挙げられる。
【0028】
置換基Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、又は過塩素酸塩などの無機アニオン材料であってもよい。この代わりに、Xは、カルボン酸塩、スルホン酸塩、及びホスホン酸塩などの有機アニオン材料であってもよい。Xが有機の場合、Xは低重合体システム又は重合体システムの一部であってもよい。Xに適切な有機材料の例としては、酢酸塩、蟻酸塩、コハク酸塩、スルホン酸トルエン、及びスルホン酸ポリスチレンが挙げられる。
【0029】
カチオンAは、アルカリ、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの正に帯電した金属イオンであってもよい。カチオンAは、例えば、クラウンエーテル、アルキルポリアミンなどとの、アルカリ、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属の錯体など、正に帯電した金属錯体であってもよい。この代わりに、カチオンAは、正に帯電した有機化合物であってもよい。好適な正に帯電した有機化合物としては、窒素又はリンを含む化合物が挙げられる。カチオンAとして適切な、正に帯電した有機化合物の例としては、テトラアルキルアンモニウム化合物、アルキルピリジニウム化合物、及びテトラアルキルホスホニウム化合物が挙げられる。カチオンAが正に帯電した金属錯体又は有機化合物である場合、カチオンAは、ポリビニルピリジニウムシステムなどの、低重合体システム又は重合体システムの一部であってもよい。
【0030】
化学式IVには示していないが、金属の中心に弱く又は強く配位する無電荷の部分が追加であってもよい。例えば、R1及びXに加え、金属中心に配位する溶媒分子があってもよい。
【0031】
本発明を実施するために有用な乾燥剤材料の例としては、ここに挙げるものに限定されないが、K[Al(C253F],[N(CH34][Al(C493Cl],[N(C494][B(C553F],[N−t−ブチルピリジニウム][B(C553(OC(=O)−C55)],Li2[Zn(C492Cl],及びK[(i−Bu)3Al−F−Al(i−Bu)3]が挙げられる。
【0032】
反応式4は、これらの吸水材料がどのように水と反応するかの例を示す。
K[Al(C253F]+3H2O → 3C25+Al(OH)3+KF (4)
【0033】
この反応式からわかるように、R1は水と反応し、炭素−水素結合を形成する。R2の場合(図示せず)、水との反応により、シリル酸素−水素結合又は窒素−水素結合が形成される。これらの置換基のいずれも、有害なアルコール種を形成しない。また、反応生成物は、可視光に対して実質的に透明である。いくつかの場合には、気体副生成物の生成を回避することができる利点がある。これが望まれる場合、R1及びR2は、水との反応生成物が、50℃よりも低い温度で低い蒸気圧を有するように、6つ又はそれ以上の炭素原子を有するものから選択されるべきである。
【0034】
反応塩は、対応するルイス酸有機金属錯体[M(R1n(R2m0をXの塩、例えば、(A+bcXと反応させることにより合成できる。本発明のルイス酸有機金属乾燥剤の合成方法は、「Salt Effects in Organic and Organometallic Chemistry,VCH Publishers,Inc,New York, 1992」に記載されている。
【0035】
他の一連の有用な乾燥剤材料としては、以下の化学式Vで示されるものがある。
【化4】

【0036】
化学式Vにおいて、R10は、少なくとも1つの炭素原子を含む、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、及びアシル基を含む群から選択される1つであり、Mは三価の金属原子であり、nは2から4の整数である。
【0037】
他の一連の有用な乾燥剤材料として、以下の化学式VIで示されるものがある。
【化5】

【0038】
化学式(VI)において、R11,R12,R13,R14,及びR15の各々は、少なくとも1つの炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、及びアシル基の群から選択される1つであり、Mは三価の金属原子である。
【0039】
他の一連の有用な乾燥剤材料として、以下の化学式VIIで示されるものがある。
【化6】

【0040】
化学式VIIにおいて、R11,R12,R13,R14及びR15の各々は、少なくとも1つの炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、及びアシル基の群から選択される1つであり、Mは四価の金属原子である。
【0041】
化学式VからVIIに定義される材料は、水と反応した時にアルコールを形成するが、本発明において、適切な予防措置が採られている場合には、有用である場合がある。例えば、乾燥剤とOLEDとの間のバリア層を使い、アルコールの拡散を止めることができる。R基は、実質的な拡散を防止するために十分に大きいよう選択できる。また、R基は、拡散できない重合体バックボーン(主鎖)の一部であってもよい。
【0042】
乾燥剤膜ホストは、純粋な乾燥剤材料においては通常起きる凝集体や粒子の形成を低減させるよう、乾燥剤材料を希釈する働きをする不活性材料のいずれであってもよい。ホストは有機でも無機でもよいが、有機の方が好ましい。
【0043】
乾燥剤膜ホスト及び分子的に分散された乾燥剤は、いくつかの方法でOLED装置に組み入れることができる。これらの材料は、熱蒸着により共デポジット(共蒸着)されて乾燥剤の膜を形成してもよい。膜の厚さは限定されないが、用途及び必要な吸水容量に応じて、0.05マイクロメートルから500マイクロメートルの厚さ範囲が適切であると考えられている。
【0044】
乾燥剤膜ホスト及び分子的に分散された乾燥剤は、酢酸塩、ケトン及びシクロヘキサンなどの有機溶媒に溶解され、OLED装置の上方に、例えばスピンコーティング、浸漬被覆、カーテンコーティング、及びインクジェットデポジッションなどにより設けられていてもよい。より好適には、乾燥剤膜ホストは、酢酸塩、ケトン、又はシクロヘキサン又はこれらの混合物などの有機溶媒からキャスト法で得られる、例えば、ポリ(メタクリル酸ブチル)などの不活性重合体マトリクスを含んでいてもよい。分子的に分散された乾燥剤の重合体ホストへの混入は、0.05重量%から50重量%である。乾燥剤膜ホストとして使える他の重合体の例としては、ここに挙げるものに限定されないが、ポリメタクリル酸[ポリメタクリレート]、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリブタジエン、又はシクロオレフィンポリマーが挙げられる。乾燥剤膜ホストがポリマー又はオリゴマーである場合、乾燥剤材料は、乾燥剤部分が互いに対して分子的に分散されている限り、ホストに共有結合又はイオン結合していてもよい。乾燥剤は、ペンダント基の一部であってもよく、又は、ホスト重合体のバックボーンに組み入れられていてもよい。
【0045】
乾燥剤はまた、重合体ホストを加熱してその粘度を低減させ、乾燥剤を混合することにより、溶媒の存在無しで重合体ホストに分子的に分散されてもよい。
【0046】
一般的なOLED装置の構造
本発明は、光が乾燥剤を通過して射出される大半のOLED装置構成において用いることができる。これらのOLED装置構成は、単一のアノード及びカソードを有する非常に単純な構成のものから、画素を構成するアノードとカソードの直交行列を有するパッシブマトリクス型表示装置や、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)により独立して制御されるアクティブマトリクス型表示装置などの複雑な装置までを含む。
【0047】
本発明をうまく実施できる多くの有機層構成が存在する。縮尺をあわせていない、装置の画素領域の概略図を図1に示す。この装置は、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、カソード113と、を含む。これらの層は、後でより詳しく説明する。また、代替構成として、基板をカソードに隣接して配置することや基板がアノード又はカソードを構成することもできることに留意されたい。アノードとカソードとの間の有機層は、ここで説明を容易にするために、有機EL素子又は有機EL媒体と呼ぶ。有機層の合計の厚さは、好適には500ナノメートルよりも小さい。
【0048】
OLEDのアノード及びカソードは、電気的な導線160を介して電圧/電流源150に接続されている。OLEDは、アノードとカソードとの間に電位を印加し、アノードをカソードよりもより大きい正の電位にすることにより動作する。アノードから正孔が有機EL素子に注入され、電子がアノードにおいて有機EL素子に注入される。OLEDを、サイクルの中に電位バイアスが反転されて電流が流れない期間を設ける交流(AC)モードで動作させることにより、装置の安定性が向上する場合もある。AC駆動されるOLEDの例は、米国特許第5,552,678号に記載されている。
【0049】
基板
本発明のOLED装置は、典型的には、支持基板の上方に設けられ、カソード又はアノードが基板と接触していてもよい。基板は、単純な構造であってもよく、又は、例えば、TFT素子などの電子素子を有するガラス支持板、平坦化層、及び配線層など、複数の層を有する複雑な構造であってもよい。基板と接触する電極は、説明のために、下部電極と呼ぶ。従来技術においては、下部電極はアノードであるが、本発明はこれに限定されない。基板は、透過性であっても不透明であってもよい。EL発光が上部電極を通じて視認される応用法の場合、下部支持板の透過性の特性は重要ではなく、したがって、下部支持板は、光透過性であっても、光吸収性であっても、光反射性であってもよい。この場合に使われる基板としては、ここに挙げるものに限定されないが、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、金属薄膜、及び回路基板材料が挙げられる。もちろん、これらの装置構成に光透過性の上部電極を設けることが必要である。EL発光が上部電極及び下部電極の両方を通じて視認される場合、ガラスやプラスチックなどの光透過性の基板を設けることが必要である。
【0050】
アノード
EL発光がアノード103を通じて視認される場合、アノードは、この対象の発光に対して透明又は実質的に透明であるべきである。本発明に使われる一般的な透明アノード材料としては、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、及びスズ酸化物が挙げられるが、他の金属酸化物、例えば、ここに挙げるものに限定されないが、アルミニウム又はインジウムがドーピングされたスズ酸化物、マグネシウム−インジウム酸化物、及びニッケル−タングステン酸化物などを使ってもよい。これらの酸化物に加え、窒化ガリウムなどの金属窒化物や、セレン化スズなどの金属セレン化物や、硫化スズなどの金属硫化物をアノードとして使うことができる。EL発光がカソード電極を通じてのみ視認される応用法では、アノードの透過特性は重要ではなく、透明、不透明及び反射性など、どのような導電性材料を使ってもよい。この応用法での導電体の例としては、ここに挙げるものに限定されないが、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム及び白金が挙げられる。典型的な透過性又は透過性でないアノード材料は、4.1eV以上の仕事関数を有する。望ましいアノード材料は、一般的に、蒸着、スパッタリング、化学気相法、又は電気化学手段などの適切な形でデポジッションされる。アノードは、既知のフォトリソグラフィ処理を使いパターニングできる。任意に、アノードを他の層の塗布前に研磨し、表面の粗さを低減させ、短絡を低減又は反射性を高めてもよい。
【0051】
正孔注入層(HIL)
全ての装置で必要ではないが、アノード103と正孔輸送層107との間に正孔注入層105を設けることが有用な場合が多い。正孔注入材料は、その後の有機層の膜形成特性を向上させ、正孔輸送層への正孔の注入を容易にする機能を有していてもよい。正孔注入層での使用に適切な材料としては、ここに挙げるものに限定されないが、米国特許第4,720,432号に記載のポルフィリン化合物(porphirinic compound)、米国特許第6,127,004号及び第6,208,075号及び第6,208,077号に記載のプラズマ蒸着されたフッ素樹脂(fluorocarbon polymer)、例えば、m−MTDATA(4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン)などの芳香族アミン、及びバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx)などを含む無機酸化物が挙げられる。有機EL装置で有用であると報告されている代替の正孔注入材料が、欧州特許出願公開第0 891 121号及び欧州特許出願公開第1 029 909号に記載されている。
【0052】
正孔輸送層(HTL)
正孔輸送層107は、芳香族第3級アミンなどの少なくとも1つの正孔輸送化合物を含み、ここで、芳香族第3級アミンは、炭素原子のみに結合される少なくとも1つの三価窒素原子を有する化合物と理解され、この炭素原子の少なくとも1つが芳香環の構成原子である。1つの形では、芳香族第3級アミンは、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、及び重合体アリールアミンなどのアリールアミンであってもよい。単量体のトリアリールアミンの例が、クラップフェル等(Klupfel et al.)による米国特許第3,180,730号に記載されている。1つ又はそれ以上のビニルラジカルによって置換されている及び/又は少なくとも1つの活性水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンが、ブラントレー等(Brantley et al.)による米国特許第3,567,450号及び第3,658,520号に記載されている。
【0053】
より好適な種類の芳香族第3級アミンは、米国特許第4,720,432号及び第5,061,569号に記載される、少なくとも2つの芳香族第3級アミン部分を含むものである。正孔輸送層は、単一の芳香族第3級アミン化合物から形成されていてもよく、又は複数の化合物が混合して形成されていてもよい。有用な芳香族第3級アミンの例としては、以下のものが挙げられる。
【0054】
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’’’−ジアミノ−1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’−クオータフェニル、
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、
1,4−ビス[2−[4−[N,N−ジ(p−トリ)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)、
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N−フェニルカルバゾール、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン、
4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ナフトアセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン、
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン、
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン、
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル、
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル、
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]フルオレン、
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、
4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0055】
もう1種の有用な正孔輸送材料としては、欧州特許第1 009 041号に記載の多環式芳香族化合物が挙げられる。欧州特許出願公開第0 891 121号及び欧州特許出願公開第1 029 909号に記載の正孔注入材料のいくつかもまた、正孔輸送材料として有用である。これに加え、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びPEDOT/PSSとしても知られるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スルホン酸スチレン)を含む共重合体などの重合体正孔輸送材料を使うこともできる。
【0056】
発光層(LEL)
米国特許第4,769,292号及び第5,935,721号により詳しく記載されているように、有機EL素子の発光層(LEL)の各々は、発光蛍光又は燐光材料を含み、この領域での電子−正孔対の再結合の結果、電界発光が生じる。発光層は、単一の材料から成っていてもよいが、より一般的には、ゲスト発光材料又は複数の発光材料がドーピングされたホスト材料を含み、発光は主に発光物質から生じ、いずれの色であってもよい。このゲスト発光材料はしばしば、発光ドーパントとも呼ばれる。発光層のホスト材料は、以下に定義するような電子輸送材料であってもよく、上に定義した正孔輸送材料であってもよく、又は正孔−電子の再結合を助けるその他の材料又は材料の組み合わせであってもよい。発光材料は典型的には、例えば、WO98/55561、WO00/18851、WO00/57676,及びWO00/70655に記載される遷移金属錯体のような、発光性の高い蛍光色素及び燐光性化合物から選択される。発光材料は、典型的には、ホスト材料に対し、0.01重量%から10重量%混合される。
【0057】
ホスト及び発光材料は、小さな非重合体分子であってもよく、又は、例えば、ポリフルオレン、及びポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)などのポリビニルアリーレンを含む、重合体材料であってもよい。重合体の場合、小さな分子の発光材料を重合体ホスト内に分子的に分散させることもでき、少量成分(minor constituent)を共重合により発光材料をホスト重合体に追加することもできる。
【0058】
発光材料を選択するための重要な関係の1つに、バンドギャップ電位の比較があり、バンドギャップ電位は、最高占有分子軌道と最低非占有分子軌道とのエネルギ差として定義される。ホストから発光材料への効率的なエネルギの伝達のためには、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことが必要条件である。燐光エミッタの場合(三重項励起状態から発光する材料、すなわち、「トリプレットエミッタ」と呼ばれる材料を含む)、ホストのホスト三重項エネルギレベルが、ホストから発光材料へのエネルギの伝達を可能にする程度に十分に高いこともまた重要である。
【0059】
使用に適していると知られているホスト及び発光材料としては、ここに挙げるものに限定されないが、米国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、及び第6,661,023号、及び米国特許出願公開第2002/0127427号、第2003/0198829号、第2003/0203234号、第2003/0224202号、及び第2004/0001969号に記載のものを含む。
【0060】
8−ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体及び同様の誘導体が、電界発光をサポートすることが可能な有用なホスト化合物の1種を形成する。有用なキレートオキシノイド(oxinoid)化合物の例としては以下のものが挙げられる。
【0061】
CO−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)]、
CO−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラート)マグネシウム(II)]、
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラート]亜鉛(II)、
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III)、
CO−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラート)インジウム]、
CO−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III)]、
CO−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラート)リチウム(I)]、
CO−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラート)ガリウム(III)]、
CO−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラート)ジルコニウム(IV)]。
【0062】
有用なホスト材料の他の1種としては、米国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、及び第6,713,192号、米国特許出願公開第2002/0048687号及び第2003/0072966号、及びWO2004018587に記載されたものなどのアントラセン誘導体が挙げられる。いくつかの例としては、9,10−ジナフチルアントラセン誘導体及び9−ナフチル−10−フェニルアントラセンの誘導体が挙げられる。他の有用な種類のホスト材料としては、米国特許第5,121,029号に記載されたジスチリルアリレーン誘導体や、例えば、2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール]などのベンザゾール誘導体が挙げられる。
【0063】
望ましいホスト材料は、連続的な膜を形成することができる。発光層は、装置の膜形態、電気的性質、発光効率、及び寿命を向上させるために、1つよりも多いホスト材料を含んでいてもよい。電子輸送材料及び正孔輸送材料の混合物は、有用なホストとして知られる。これに加え、上述のリストに挙げたホスト材料と、正孔輸送材料又は電子輸送材料と、の混合物は、適切なホストとなりうる。
【0064】
有用な蛍光ドーパントとしては、ここに挙げるものに限定されないが、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、キサンテン誘導体、ペリレン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ローダミン誘導体、キナクリドン誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物及びチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体(periflanthene)、インデノペリレン誘導体(indenoperylene)、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、ジスチリルベンジン誘導体及びジスチリルビフェニル誘導体、及びカルボスチリル化合物が挙げられる。ジスチリルベンゼン誘導体の中でも、特に、略式でジスチルリアミンとして知られるジアリールアミノ基によって置換されたジスチリルベンゼン誘導体が有用である。
【0065】
燐光エミッタ(三重項励起状態から発光する材料、すなわち、「トリプレットエミッタ」と呼ばれるものを含む)の適切なホスト材料は、三重項励起子を、ホスト材料から燐光材料に効率的に伝達できるように選択すべきである。この伝達を起こさせるには、ホストの一番低い三重項状態と基底状態とのエネルギ差よりも燐光材料の励起状態のエネルギが低くなるようにすることが非常に望ましい条件である。しかしながら、ホストのバンドギャップは、OLEDの駆動電圧を許容できないほどに増大させるほどに高いものを選択すべきではない。適切なホスト材料は、WO00/70655、WO01/39234、WO01/93642、WO02/074015、WO02/15645、及び米国特許出願公開第2002/0117662号に記載されている。適切なホストは、特定のアリールアミン、トリアゾール、インドール、及びカルバゾール化合物を含む。望ましいホストの例としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、2,2’−ジメチル−4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル、m−(N,N’−ジカルバゾール)ベンゼン、及びポリ(N−ビニル−カルバゾール)及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0066】
本発明の発光層に使うことのできる有用な燐光材料の例としては、ここに挙げるものに限定されないが、WO00/57676、WO00/70655、WO01/41512、WO02/15645、WO01/93642、WO01/39234、WO02/071813、及びWO02/074015、米国特許第6,458,475号、米国特許第6,451,455号、米国特許第6,573,651号、米国特許第6,413,656号、米国特許第6,515,298号、米国特許第6,451,415号、及び米国特許第6,097,147号、欧州特許出願公開第1 239 526号、欧州特許出願公開第1 238 981号、及び欧州特許出願公開第1 244 155号、特開2003−059667号公報、特開2003−073665号公報、特開2003−073387号公報、及び特開2003−073388号公報、及び米国特許出願公開第2003/0017361号、米国特許出願公開第2002/0197511号、米国特許出願公開第2003/0072964号、米国特許出願公開第2003/0068528号、米国特許出願公開第2003/0124381号、米国特許出願公開第2003/0059646号、米国特許出願公開第2003/0054198号、米国特許出願公開第2002/0100906号、米国特許出願公開第2003/0068526号、米国特許出願公開第2003/0068535号、米国特許出願公開第2003/0141809号、米国特許出願公開第2003/0040627号、及び米国特許出願公開第2002/0121638号に記載のものが挙げられる。
【0067】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機EL素子の電子輸送層111を形成するために使われる好適な薄膜形成材料は、オキシン自体のキレート(一般的には、8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとしても知られる)を含む金属キレートオキシノイドである。このような化合物は、電子を注入し輸送することを助け、高いレベルの性能を示し、薄膜の形で簡単に作ることができる。例としてのオキシノイド化合物はすでに上で列挙されている。
【0068】
他の電子輸送材料として、米国特許第4,356,429号に開示されている様々なブタジエン誘導体や、米国特許第4,539,507号に記載の様々な複素環式光学光沢剤が挙げられる。ベンザゾール及びトリアジンもまた、電子輸送材料として有用である。
【0069】
カソード
発光がアノードを通じてのみ視認される場合、本発明で使われるカソード113の材料は、ほぼ全ての導電性材料のいずれであってもよい。望ましい材料は、効果的な膜形成特性を有し、これにより、下に位置する有機層との効率的な接触を確実にし、低い電圧での電子注入を促進し、有効な安定性を有する。有用なカソード材料はしばしば、低い仕事関数の金属(<4.0eV)又は合金を含む。1つの好適なカソード材料は、米国特許第4,885,221号に記載されるように、Mg:Ag合金であり、銀のパーセンテージが、1%から20%の範囲である。他の適切なカソード材料の1種として、有機層(例えばETL)と接触する薄い電子注入層(EIL)が導電性金属の厚い層によって覆われた(キャップされた)、2層構造が挙げられる。ここで、EILは好適には、低仕事関数の金属又は金属塩を含み、この場合、厚いキャップ層は、低仕事関数である必要はない。このようなカソードの1つとして、米国特許第5,677,572号に記載の、薄いLiF層と、これに続く厚いAl層と、からなるものが挙げられる。他の一連の有用なカソード材料としては、ここに挙げるものに限定されないが、米国特許第5,059,861号、第5,059,862号、及び第6,140,763号に記載のものが挙げられる。
【0070】
金属がドーピングされた有機層を、電子注入層として使うことができる。このような層は、有機電子輸送材料と低仕事関数金属(<4.0eV)とを含む。例えば、キド等(Kido et al.)は、"Bright Organic Electroluminescent Devices Having a Metal-Doped Electron-Injecting Layer",Applied Physics Letters, 73, 2866(1998)及び米国特許第6,013,384号において、カソードに隣接して低仕事関数の金属がドーピングされた電子注入層を含んでOLEDを制作できることを報告及び開示している。金属がドーピングされた有機層の適切な金属としては、アルカリ金属(例えば、リチウム及びナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、バリウム及びマグネシウム)、又はランタン系群(ランタノイド)の金属(例えばランタン、ネオジム、及びルテチウム)又はこの組み合わせが挙げられる。金属がドーピングされた有機層内の低仕事関数金属の濃度は、体積換算で0.1%から30%の範囲である。好適には、金属がドーピングされた有機層内の低仕事関数金属濃度は、0.2体積%から10体積%の範囲である。好適には、低仕事関数金属は、有機電子輸送材料に対して、モル比で1:1からの範囲にある。
【0071】
発光がカソードを通じて視認される場合、カソードは、透明又はほぼ透明であるべきである。このような応用法では、金属は薄いか、又は、透明導電性酸化物を使う又はこれらの材料を含めるべきである。光学的に透明なカソードは、米国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、及び第6,284,393号、日本特許第3,234,963号及び欧州特許第1 076 368号に詳しく記載されている。カソード材料は典型的に、蒸着、スパッタリング、又は化学気相成長法によりデポジッションされる。必要な場合、ここに挙げるものに限定されないが、スルーマスクデポジッション、例えば、米国特許第5,276,380号や欧州特許第0 732 868号に記載の一体化シャドウマスキング、レーザアブレーション、及び選択的化学気相成長法を含む多くの既知の方法によってパターニングを達成してもよい。
【0072】
他の一般的な有機層及び装置構造
場合によっては、層109及び層111を任意で単一の層にまとめ、発光及び電子輸送の両方を助ける機能を持たせてもよい。発光ドーパントを、ホストとしても機能できる正孔輸送層に追加することもできることが当業者には知られている。複数のドーパントを1つ又はそれ以上の層に追加し、例えば、青色発光材料と黄色発光材料とを組み合わせる、シアン色発光材料と赤色発光材料とを組み合わせる、又は赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料とを組み合わせることにより、白色発光OLEDを製造することもできる。白色発光装置は、例えば、欧州特許第1 187 235号及び第1 182 244号、米国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,132号、及び第6,627,333号、及び米国特許出願公開第2002/0186214号、第2002/0025419号及び第2004/0009367号に記載されている。
【0073】
当業者には知られる励起子ブロック層、電子ブロック層、及び正孔ブロック層などの追加の層を、本発明の装置に採用することもできる。正孔ブロック層は、一般的には、例えば、米国特許出願公開第2002/0015859号、第2003/0068528号、及び第2003/0175553号、WO00/70655、及びWO01/93642に示されるように、燐光エミッタ装置の効率を向上させるために使われる。
【0074】
本発明は、例えば、米国特許第5,703,436号、第6,337,492号、及び第6,717,358号、及び米国特許出願公開第2003/0170491号に示すようなスタック装置構造と呼ばれる構造にも使うことができる。
【0075】
有機層のデポジッション
上述の有機材料は、サブリメーション(昇華)などの気相法により適切にデポジッションできるが、膜形成を向上させるために、例えば、任意のバインダを有する溶媒からの液体からデポジッションできる。材料が重合体の場合、溶媒デポジッションが有用であるが、スパッタリングやドナーシートからの熱転写などの他の方法を使うこともできる。サブリメーションによりデポジッションされる材料は、例えば米国特許第6,237,529号に示されるように、しばしばタンタル材料から成るサブリメーション「ボート」から蒸発させることができ、又は、ドナーシートにまず被覆し、その後、基板に近い位置で昇華させることができる。混合材料を有する層は、別個のサブリメーションボートを用いることもでき、又は、材料を予め混合し単一のボート又はドナーシートから被覆することもできる。パターニングされながらのデポジッションは、シャドウマスク、一体化シャドウマスク(米国特許第5,294,870号)、ドナーシートからの空間的に定義された熱染料転写(米国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、及びインクジェット法(米国特許第6,066,357号)を用いて達成できる。
【0076】
光学的な最適化
本発明のOLED装置は、望まれる場合には、様々な既知の光学効果を使い、その特性を向上させることができる。これは、最大の光透過を生じるための層の厚さの最適化、誘電体ミラー構造の設置、反射電極の光吸収性電極による置換、ディスプレイ上のぎらつき防止又は反射防止コーティングの設置、ディスプレイ上方の偏光媒体の設置、又は着色された、中間(neutral)密度又は色変換フィルタをディスプレイの発光領域と機能的に関連させて設置することを含む。フィルタ、偏光子、及びぎらつき防止又は反射防止コーティングは、カバー上に設けてもよく、又はカバーの一部として設けてもよい。色フィルタは、カバーガラス上に形成してもよく、又は装置内部に、例えば、後述の無機バリア層の上方に設けてもよいことを理解されたい。
【0077】
OLED装置は、マイクロキャビティ構造を有していてもよい。1つの有用な例では、金属電極の1つが、基本的に不透明及び反射性であり、他方の電極は、反射性及び半透明である。反射性電極は、好適には、Au,Ag,Mg,Ca、及びこれらの合金から選択される。2つの反射性金属電極が存在するため、この装置はマイクロキャビティ構造を有する。この構造内の強い光学的な干渉により、共振条件が生じる。共振波長近くの発光は増強され、共振波長から遠い発光は抑制される。光路長は、有機層の厚さを選択する又は透明な光学スペーサを電極間に配置することで調整できる。例えば、本発明のOLED装置は、反射性アノードと有機EL媒体との間にITOスペーサ層を有し、有機EL媒体の上方に半透明カソードが存在していてもよい。
【0078】
封入
上述のように、OLED装置は、水分又は酸素又はその両方に影響を受けやすく、そのため、OLED装置は、一般的には窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中に封止される。OLED装置を不活性雰囲気中に封止する際に、有機接着剤、金属ハンダ、又は低融点ガラスを使い保護カバーを取り付けることができる。乾燥剤はまた、OLED上方の封止された空間内に発光の光路上に設けられてもよい。本発明の乾燥剤膜は、例えば、アルカリ、アルカリ金属、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び過塩素酸塩などの他のゲッターや乾燥剤と組み合わせて用いることができる。また、乾燥剤膜は、SiOx、テフロン(登録商標)、及び当業者には知られる無機/重合体が交互に存在する層などのバリア層と組み合わせて使うことができる。バリア層は、OLED上方に設けてもよく、OLEDとフレキシブル基板との間に設けてもよく、又はその両方に設けてもよい。乾燥剤と組み合わせて発光領域に設けられるバリア層は、透明であるべきである。
【0079】
無機バリア層材料の例としては、ここに挙げるものに限定されないが、シリコン酸化物及びアルミニウム酸化物などの金属酸化物や、シリコン窒化物などの金属窒化物が挙げられる。無機バリア層材料の適切な例としては、アルミニウム酸化物、二酸化シリコン、シリコン窒化物、シリコンオキシナイトライド、及びダイヤモンド状炭素(ダイヤモンドライクカーボン)が挙げられる。場合によっては、無機バリア層材料が、導電性金属酸化物、金属、又は金属合金などのように、導電性とできれば有用である。この場合、導電性無機バリア層は、1つ又はそれ以上の装置の電極に電流を伝えることができ、電極として機能することができ、又は静電気を放電するための経路を形成することができる。Al,Ag,Au,Mo,Cr,Pd,又はCuなどの金属又はこれらの金属を含む合金が、無機バリア層として有用となりうる。複数の金属層を使い、導電性無機バリア層を構成してもよい。望まれない短絡が生じる可能性がある場所では、導電性バリア層を使うべきではなく又は、短絡を生じないよう、導電性バリア層を、例えば、シャドウマスクを使いパターニングすべきである。無機バリア層は典型的には10ナノメートルから数百ナノメートルの厚さで設けられる。
【0080】
気相から無機バリア層材料の層を形成するために有用な技術としては、ここに挙げるものに限定されないが、熱物理気相成長法、スパッタリングデポジッション法、電子ビームデポジッション法、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法、レーザー誘導化学気相成長法、及び原子層堆積法(ALD)が挙げられる。CVD及びALDが、特に有用である。場合によっては、上述の材料が、溶液又は他の流体化されたマトリクス、例えば、超臨界的なCO2の溶液からデポジッションされてもよい。溶媒又は流体マトリクスを選択する時には、装置の性能に悪影響を及ぼさないように注意すべきである。上述の材料のパターニングは、ここに挙げるものに限定されないが、フォトリソグラフィ、リフトオフ技術、レーザアブレーション、及び、より好適にはシャドウマスク技術などの多くの方法で達成できる。
【0081】
有機バリア層材料は、単量体であっても、重合体であってもよく、蒸着又は溶液からデポジッションできる。液体からキャストされた場合、デポジッション溶液がOLED装置に悪影響を及ぼさないようにすることが重要である。
【0082】
便利なことに、有機バリア層はパリレン材料などの重合体材料から形成され、気相からデポジッションして、微粒子欠陥などの欠陥を含むOLED装置の配列体への優れた接着性、ステップカバレッジ性を有する重合体層を設けることができる。有機バリア層は、典型的には、0.01マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さに形成される。しかしながら、その性質から、有機バリア層の有機材料は、無機誘電体材料から形成される層又は金属から形成される層よりも、水分浸透性が高い。よって、多くの場合、有機バリア層を、無機材料によって包むことが望ましい。
【0083】
実施形態
第1の実施形態として、図2から図4BにOLED装置200Aの様々な製造ステージを示す。まず、図2を参照すると、ここにはOLED基板202の平面図が示されている。所定の封止領域210が、図2の点線間の空間に表される。内部の点線は更に、OLED装置の封止された領域を表す。OLED基板202の上方には、第1電極204と、第1電気接触パッド208と、第1電極204と第1電気接触パッド208との間を電気的に接続する第1相互接続配線206と、が設けられる。第1相互接続配線206は、封止領域を通って伸びる。後述のように、第1電極204はアノードであってもカソードであってもよく、上述の既知の導電性材料のいずれであってもよい。第1電極204、第1相互接続配線206、及び第1電気接触パッド208に使われる導電性材料は、同一であっても異なっていてもよい。これに加え、第1電極204、第1相互接続配線206、及び第1電気接触パッド208の各々は、2つ又はそれ以上の異なる導電性材料の層を含んでいてもよい。
【0084】
第2相互接続配線216及び第2接触パッド218が、OLED基板202の上方に設けられ、後のステップで形成される第2電極との電気的な接触が可能となるようにする。第2接触パッド218及び第2相互接続配線216に使われる導電性材料は、同一であっても異なっていてもよく、また、第1電気接触パッド208及び第1相互接続配線206に使われる材料又は複数の材料と同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
第1電極204、第1及び第2相互接続配線、及び第1及び第2接触パッドを形成するための導電性材料は、熱物理気相成長法、スパッタデポジッション法、プラズマ化学気相成長法、電子ビームのアシストによる気相成長、及び当業者に知られた他の方法などの真空デポジッションにより形成できる。さらに、無電解メッキ及び電解メッキなどの「ウェット式」化学処理と呼ばれる処理を使うこともできる。第1電極204、第1相互接続配線206、第1電気接触パッド208、第2相互接続配線216、及び第2接触パッド218は、同じパターニングステップで設けてもよく、又は異なるパターニングステップで設けてもよい。パターニングは、シャドウマスクを通じたデポジッション、フォトリソグラフィー方法、レーザアブレーション、選択的無電解メッキ、電気化学エッチング、及び他の既知のパターニング技術を使い、達成できる。
【0086】
第1電極204,相互接続配線206及び216、及び接触パッド208及び218は、アルミニウムから形成される。この構成では、第1電極はアノードして機能し、反射性であり、不透明である。効率的な正孔注入のための高仕事関数の表面を設けるために、インジウムがドーピングされたスズ酸化物(ITO)の層がアノードの上方に設けられる(図示せず)。第2接触パッド218及び第2相互接続配線216は、この構成においては、アルミニウムから形成される。
【0087】
図3を参照し、絶縁層244がOLED基板202の上方にパターニングされて設けられる。絶縁層244は、第1電極204の一部の上方と、第1及び第2相互接続配線206及び216の少なくとも一部の上方に伸びる。ビア(via)246が、封止された領域内部に配置された第2相互接続配線216の上方に設けられる。絶縁層244は、この構成では、所定の封止領域210を通って伸びない。
【0088】
絶縁層244は、材料が低い電気導電率を有し、塗布される表面との効率的な接着を可能にするものでさえあれば、有機材料又は無機材料のいずれであってもよい。絶縁層244は、第1電極と第2電極との間に生じる可能性のある短絡を低減させる機能を有し、平坦化することができる。絶縁層244は典型的には、数ナノメートルから数マイクロメートルまでの厚さを有して設けられる。上述でバリア層材料に関して説明したものと同一の材料及びデポジッション方法の多くを、絶縁層244の形成に用いることができる。
【0089】
絶縁層244に有用な有機材料の例としては、ポリイミド、パリレン、及びアクリレート系のフォトレジスト材料が挙げられる。絶縁層244に有用な無機材料の例としては、シリコン酸化物及びアルミニウム酸化物などの金属酸化物やシリコン窒化物及びセラミック複合物などの金属窒化物が挙げられる。さらに、ゾル−ゲルのように溶液から材料を提供することもできる。説明のため、この構成では、高い平坦化能力を有するゾル−ゲル材料が絶縁層244として使われる。
【0090】
図4Aに示すように、有機EL媒体層212及び第2電極214が次にデポジッションされ、OLED装置200Aが作られる。層の順序を示すために、第1電極領域の右下の隅を図から切り取り、第1電極204を示している。線4Bに沿った断面図を、図4Bに示す。第2電極はカソードであり、半透明である。第2電極は、有機EL媒体と接触する薄いLi層(例えば、1nm)と、リチウム層の上方の薄いAl層(例えば、10nm)と、Al上方のより厚いITO層(例えば、100nm)と、から成る。カソードは、ビアを介して第2相互接続配線216と接触する。
【0091】
層の順序を示すために、第1電極領域の右下の隅を図から切り取り、第1電極204を示している。有機EL媒体212は下に詳しく説明するが、有機EL媒体層は、1つ又はそれ以上の異なる材料の層を含んでいてもよい。有機EL媒体層212は、第1電極204の上方全体に設けられ、絶縁層244の一部の上方にも設けられる。有機EL媒体層は、ビア246内へは伸びず、所定の封止領域210を通過しても伸びない。第2電極214は、第1電極の上方でパターニングされ、バイア246へと伸びるが、第1相互接続配線206とは接触しない。発光領域(画素)は、有機EL媒体がその間に挟まれた、第1電極204と第2電極214との重複領域に定義される。第1電極が反射性及び不透明であり、第2電極が半透明であるため、光はOLED基板202から離れる方向に射出される。これは、「トップエミッション型」OLEDと呼ばれる。第2電極214は、上述の方法を使いデポジッション及びパターニングできる。
【0092】
図5を参照し、トップエミッション型の封入されたOLED装置200を示す。図4Bの構成要素と対応する構成要素には、同じ符号を付す。光透過性乾燥剤膜260は、OLED装置の第2電極の上方に設けられ、上述の、ホストと、分子的に分散された乾燥剤材料と、を含む。不可欠ではないが、光透過性乾燥剤膜260を蒸着によりデポジッションし、有機EL媒体を溶媒による汚染の可能性に晒すことを回避することが有利である。乾燥剤が溶液からデポジッションされる場合、第2電極及び絶縁層が溶媒と親和性を有し、有機EL媒体層へ乾燥剤溶液が到達しないように、第2電極及び絶縁層を選択すべきである。
【0093】
カバー223は、ガラスから形成され、所定の封止領域210に対応するパターンの封止材料224をその上に有する。パターニングされた封止材料224を有するカバー223は、OLED装置200A上方に、所定の封止領域210と位置合わせされて設けられる。封止材料が硬化又は溶融されている間にOLED基板202とカバー223との間に圧力が加えられる。封止ステップは好適には、真空中又は乾燥窒素又はアルゴン雰囲気中などの、不活性条件下で行われる。窒素又はアルゴン雰囲気は、大気圧よりも低い圧力であってもよい。封止ステップが窒素又はアルゴン中で行われる場合、この空間は、これらの気体により満たされる。空間240内の圧力が大気圧に比べて少し低減されている場合、カバー及びOLED基板の間の圧力を保ち、効果的な封止を確実にするという利点があり得る。更に、空間240が少し減圧されている場合、封入されているOLED装置が低い圧力に晒された時(例えば、飛行機の積み荷ベイ内での輸送)の、封止の不具合の可能性が低い。
【0094】
上記の代わりに、封止材料224をOLED装置200A上の所定の封止領域210に設け、カバーを使用し封止することもできる。この構成において、好適には、カバーは、透明なガラスである。封止材料との界面に隣接して、不透水的な層又は複数の層を設けることにより、透明な重合体カバーを用いることもできる。
【0095】
封止材料224は、UV硬化又は熱硬化エポキシ樹脂、アクリレート、又は感圧性接着剤などの有機接着剤であってもよい。この代わりに、封止材料は、ガラスフリット封止材料又は金属ハンダであってもよい。このような封止は、例えばレーザなどによる加熱により始動され、これにより材料が流動する。封止材料が再度固形化したときに、封止が行われる。OLED装置は、熱の影響を受けやすい部品及びコーティングを有するので、封止温度を可能な限り低く保つことが望ましい。ガラスフリット封止材料は、鉛系、例えば、PbO−−ZnO−−B23系のものであってもよい。好適には、ガラスフリット封止材料は無鉛、例えば、ZnO−SnO−P25系である。封止材料はまた、基板の熱膨張係数(CTE)と適合するCTEを有するべきである。
【0096】
本発明の第2の実施形態を図6に示す。図6の装置は、図5の装置と類似しているが、透明バリア層270が光透過性乾燥剤膜260の上方に設けられている点で相違する。上述のように、バリア層は、単一の層であってもよく、又は複数のサブ層、例えば、無機/有機サブ層が交互にある構造であってもよい。好適な構成では、透明バリア層270は、Al23/パリレン/Al23の3つのサブ層(図示せず)から形成される。
【0097】
本発明の第3の実施形態を図7に示す。図7の装置は、図6の装置と類似しているが、まず透明なバリア層271がOLED装置上方に設けられ、この透明バリア層271上方に光透過性乾燥剤膜260が設けられている点で相違する。水分の通り抜けに対する追加バリアを形成することに加え、透明バリア層271は、光透過性乾燥剤膜に関連する溶液又は化学反応からOLEDを保護することができる。
【0098】
本発明の第4の実施形態を図8に示す。図8の装置は、図7の装置と類似しているが、第2の透明バリア層272が光透過性乾燥剤膜260上方に設けられている点で相違する。図8は、図7に示すものと同じように設けられる透明重合体バッファ層242を示す。上述の全ての実施形態において、この重合体バッファ層を使うことができる。
【0099】
透明重合体バッファ層242は、透明又はほぼ透明なものが選択され、この層をカソードとカバーとの間に設けることにより、光学的な出力結合(out−coupling)を向上させることができる。透明重合体バッファ層242は、UV硬化又は熱硬化エポキシ樹脂、アクリレート、又は感圧接着剤を含む材料のいずれであってもよい。有用なUV硬化エポキシ樹脂の例としては、Electronic Materials Incが販売する「Optocast 3505」が挙げられる。有用な感圧接着剤の例としては、3Mが販売する「Optically Clear Laminating Adhesive 8142」が挙げられる。重合体バッファ層はまた、光透過性乾燥剤膜としての2重の役目を果たすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】従来技術のOLED装置の断面図である。
【図2】第1電極及び接触パッドを含む従来技術のOLED基板の平面図である。
【図3】パターニングされた絶縁層のデポジッション後における図2のOLEDを示す図である。
【図4A】有機EL媒体及び第2電極のデポジッション後における図3のOLEDを示す平面図である。
【図4B】図4AのOLED装置の4B線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0101】
101 基板、103 アノード、105 正孔輸送層、109 発光層、111 電子輸送層、113 カソード、150 電圧/電流原、160 導電体、200 封止されたOLED装置、200A OLED装置、202 OLED基板、204 第1電極、206 第1相互接続配線、208 第1接触パッド、210 シールエリア(封止領域)、212 有機EL媒体層、214 第2電極、216 第2相互接続配線、218 第2接触パッド、223 カバー、224 封止材、240 空間(封止空間)、242 透明重合体バッファ層、244 絶縁層、246 ビア、260 光透過性乾燥剤膜、270,271 透明バリア層、272 透明第2バリア層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップエミッション型OLED装置であって、
a)基板と、
b)前記基板の上方に配置された第1電極と、
c)前記第1電極の上方に配置された有機EL媒体と、
d)前記有機EL媒体の上方に配置された透明又は半透明の第2電極と、
e)前記第2電極上又は前記第2電極の上方に配置され、ホストと、該ホスト中に分子的に分散された乾燥剤材料と、を有する光透過性乾燥剤膜と、
を含む、トップエミッション型OLED装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、更に、
前記第2電極と前記光透過性乾燥剤膜との間又は前記光透過性乾燥剤膜上に配置された透明な無機バリア層を含むトップエミッション型OLED装置。
【請求項3】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記分子的に分散された乾燥剤材料が、水分を吸収する前及び吸収した後に透明であるよう選択されている、トップエミッション型OLED装置。
【請求項4】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、更に、
前記光透過性乾燥剤膜の上方にガラスから成るカバーが設けられているトップエミッション型OLED装置。
【請求項5】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記乾燥剤材料が、
1n−M−R2m (I)
の化学式で表されるルイス酸有機金属構造を含み、ここで、
Mは、金属であり、
1は、少なくとも1つの炭素が前記金属に直接結合されている有機置換基であり、
2は、酸素が前記金属に直接結合されているシリル酸化物置換基又は窒素が前記金属に直接結合されているアミド置換基であり、
n=1,2,3,又は4であり、
m=0,1,2,又は3であり、
n及びmが、化学式Iが電荷的に中立であるようMの配位条件を満たすよう選択されるトップエミッション型OLED装置。
【請求項6】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記乾燥剤材料が、水と反応したときに炭素−水素結合を形成するがアルコールを形成しない、負に帯電した有機金属錯体の反応塩を含み、この反応塩が、
(A+bc[M(R1n(R2m(x)l-q
の化学式で表され、ここで、
Aは、電荷bを有するカチオンであり、
Mは、金属であり、
1は、少なくとも1つの炭素が前記金属に直接結合されている有機置換基であり、
2は、酸素が前記金属に直接結合されているシリル酸化物又は窒素が前記金属に直接結合されているアミドであり、
Xは、pKa<7のアニオン置換基であり、
l=1又は2であり、
n=1,2,3,又は4であり、
m=0,1,2,又は3であり、
qは、アニオン有機金属錯体の電荷であり、1又は2であり、
b=q/cであるトップエミッション型OLED装置。
【請求項7】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記乾燥剤材料が、
【化1】

の化学式で表され、ここで、
10は、少なくとも1つの炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、及びアシル基の群から選択される1つであり、
Mは、三価の金属原子であり、
nは2から4の整数であるトップエミッション型OLED装置。
【請求項8】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記乾燥剤材料が、
【化2】

の化学式で表され、ここで、
11、R12、R13、R14、及びR15の各々が、少なくとも1つの炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、及びアシル基の群から選択される1つであり、
Mは、三価の金属原子であるトップエミッション型OLED装置。
【請求項9】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記乾燥剤材料が、
【化3】

の化学式で表され、ここで、
11、R12、R13、R14、及びR15の各々が、少なくとも1つの炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、及びアシル基の群から選択される1つであり、
Mは、四価の金属原子であるトップエミッション型OLED装置。
【請求項10】
請求項1に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記ホストが、ポリマーを含むトップエミッション型OLED装置。
【請求項11】
請求項2に記載のトップエミッション型OLED装置であって、
前記無機バリア層が、金属酸化物又は金属窒化物又はその両方を含み、熱物理気相成長法、スパッタリング、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、又は原子層堆積法によりデポジッションされる、トップエミッション型OLED装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−518399(P2008−518399A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537979(P2007−537979)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/037443
【国際公開番号】WO2006/047149
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】