説明

トナー

【課題】高速、高画質、高耐久および高環境安定性を満足するトナーを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともポリエステル樹脂、エステルワックスを含有するトナーであって、加熱において検出される揮発成分について、該ワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1500ppm以下であり、15℃/10%放置における該トナーの水分量A、30℃/80%放置における該トナーの水分量B、40℃/95%放置における該トナーの水分量Cとした時、Aが0.05乃至0.50質量%、Bが0.07乃至1.00質量%、Cが0.08乃至1.30質量%であり、該水分量の差B−Aの値が0.00乃至0.10であって、該トナーの110℃における溶融粘度が15000(Pa・s)以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された潜像に現像剤を付着させて可視化する電子写真方式や静電記録方式などの複写機、プリンタ等の画像形成装置に使用されるトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の複写機やプリンターには、小型化、軽量化、高信頼性といった要求が強まり、トナー性能に対する要求も厳しいものとなってきている。例えば、低温低湿環境下においても高温高湿環境下においても安定した性能を発揮できる環境安定性に優れたトナーが求められている。
【0003】
そのような要望を達成するためにトナーの物性、特にトナーの含水量を規定した提案がなされている。
【0004】
例えばトナー中の含水量を0.7質量%以下に規定したトナーが提案されている(特許文献1参照)。この現像剤組成物は、本質的に定着性の優れたポリエステル樹脂を使用し、かつフラッシュ定着時の高温状態に於いても分解しにくい成分を主成分に使用している為、分解による臭い、白煙等の発生が少ない。また樹脂の軟化点、ガラス転移温度、分子量がフラッシュ定着に対して適当な領域にあるので、ボイドの生成なしに定着が可能としている。しかしながら、定着特性に関してはさらに改良の余地があり、またより厳しい高温高湿下に長期保管されたような環境条件においては更なる改善が求められる。
【0005】
また、カラー画像形成方法において各トナー中の含水量を規定したトナーが提案されている(例えば特許文献2参照)。この画像形成方法においては、トナーの水分量を変更することでトナーブリスタが低減され、且つ、飛散トナーの機外漏出の少ない画像形成方法を提供することが出来るとしている。しかしながら、定着特性に関してはさらに改良の余地があり、またより厳しい高温高湿下に長期保管されたような環境条件においては更なる改善が求められる。さらには現像特性に関しては言及されておらず、改善が必要となっている。
【0006】
さらに、トナー中の含水量を規定した懸濁重合法により得られるトナーが提案されている(例えば特許文献3参照)。この静電荷像現像用非磁性トナーは、環境安定性に優れており、低温低湿から高温高湿まで様々な環境下においてカブリを起こさず、画像濃度が高い、高画質の印字を行うことができるとしている。
【0007】
しかしながら、定着特性に関してはさらに改良の余地があり、またより厳しい高温高湿下に長期保管されたような環境条件においては更なる改善が求められる。
【0008】
一方、トナーを加熱した際の蒸発量を規定したトナーが提案されている。(例えば特許文献4参照)。この静電荷像現像用非磁性トナーは、環境安定性に優れており、低温低湿から高温高湿まで様々な環境下においてカブリを起こさず、画像濃度が高い、高画質の印字を行うことができるとしている。しかしながら、定着特性に関してはさらに改良の余地があり、またより厳しい高温高湿下に長期保管されたような環境条件においては更なる改善が求められる。
【0009】
このように種々問題を解決するトナーが存在しないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−107805号公報
【特許文献2】特開2005−77589号公報
【特許文献3】特開2007−121882号公報
【特許文献4】特開2003−98720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記状況を鑑み、高速、高画質、高耐久および高環境安定性を満足するトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも結着樹脂、ポリエステル樹脂、着色剤、エステルワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有するトナーであって、
該エステルワックスの加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、該エステルワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1500ppm以下であり、
15℃/10%放置における該トナーの水分量A、30℃/80%放置における該トナーの水分量B、40℃/95%放置における該トナーの水分量Cとした時、Aが0.05乃至0.50質量%であり、Bが0.07乃至1.00質量%であり、Cが0.08乃至1.30質量%であり、
該水分量の差B−Aの値が0.00乃至0.10であって、
該トナーの110℃における溶融粘度が15000(Pa・s)以下であることを特徴とするトナーに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トナー劣化抑制に優れ、定着器周辺部材汚染抑制に優れたトナーが得られる。さらに本発明によれば、定着性に優れたトナーが得られる。さらに本発明によれば、長期に放置されたような状況においても優れた保存性が得られる。さらに本発明によれば、高温高湿環境下長期に放置されたような状況においても優れた現像性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の現像装置の一例の説明図である。
【図2】本発明の現像装置を用いた画像形成装置の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、少なくとも結着樹脂、ポリエステル樹脂、着色剤、エステルワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有するトナーであって、該エステルワックスの加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、該エステルワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1500ppm以下であることを特徴とする。さらに、15℃/10%放置における該トナーの水分量A、30℃/80%放置における該トナーの水分量B、40℃/95%放置における該トナーの水分量Cとした時、Aが0.05乃至0.50質量%、Bが0.07乃至1.00質量%、Cが0.08乃至1.30質量%であり、該水分量の差B−Aの値が0.00乃至0.10であって、該トナーの110℃における溶融粘度が15000(Pa・s)以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明において使用するトナーに関して、上述の項目を同時に満たすことにより低温低湿環境から高温高湿環境まで様々な状況においても現像性が良好であり、特に高温高湿環境において長期放置されたような場合においても良好な結果が得られるものである。また、定着器によって加熱溶解したトナーによって定着器周辺のセンサー群が汚染されるのを防ぐことが可能となる。
【0017】
具体的には下述していく。
【0018】
本発明においては、まず、少なくとも結着樹脂、ポリエステル樹脂、着色剤、エステルワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有するトナーであって、該エステルワックスの加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、該エステルワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1500ppm以下であることが必要である。
【0019】
トナーに使用される成分にはメインの成分の結着樹脂、極性基を持つ樹脂成分、離型性を有するワックス等が存在するが、加熱定着工程を改善する本発明においては特にワックス成分の設計が重要である。
【0020】
トナーに使用されるワックスの特性としては加熱によりシャープに溶解し離型剤として働くことが求められるが、場合によってはトナー加熱定着工程おいて揮発成分が多い場合定着器付近のセンサーを汚染し誤検知を起こす可能性があることがわかってきた。これは、ワックス低分子量成分や一部ワックスが加熱等により分解した成分が揮発していることなどによると本発明者らは考えている。
【0021】
また、ワックスの化学構造としては、極性基を持ったエステルワックス等では揮発しにくい傾向であることもわかってきた。
【0022】
エステルワックスの加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、該ワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1500ppm以下であると、加熱定着工程におけるワックス成分の揮発を防止でき、かつ良好な定着性を示す。濃度が1500ppmを超えると、トナー加熱定着工程おいて揮発成分が多い場合、定着工程付近のセンサーを汚染し誤検知を起こしやすくなる。
【0023】
ここで、本発明におけるワックスの揮発成分の測定法について述べる。
【0024】
<加熱脱着装置を用いたワックスの揮発性分濃度の測定>
<使用する装置>
加熱脱着装置:メーカー:パーキンエルマー社製、TurboMatrixATD
GC/MS:メーカー:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、TRACE DSQ
【0025】
<加熱脱着装置条件>
チューブ温度:200℃
トランスファー温度:300℃
バルブ温度:300℃
カラム圧力:150kPa
入口スプリット:25ml/min
出口スプリット:10ml/min
2次吸着管材質:TenaxTA
保持時間:10 min
脱着時2次吸着管温度:−30℃
2次吸着管脱着温度:300℃
【0026】
<GC/MS条件>
カラム:ウルトラアロイ(金属製カラム)UT−5 (内径0.25mm, 液相0.25μm, 長さ30m)
カラム昇温条件:60℃(3min), 350℃(20.0℃/min) ,350℃(10min)
【0027】
なお、加熱脱着装置のトランスファーラインとGCカラムは直結させ、GC注入口は使用しない
【0028】
<内部標準入りガラスチューブの作製>
あらかじめ10mg のTenaxTA吸着剤をガラスウールで挟んだ加熱脱着装置用のガラスチューブを作製し、不活性雰囲気ガスを流した状態下で、300℃−3hコンディショニングを行ったものを用意する。その後、重水素化ヘキサデカン(ヘキサデカンD34)100ppmのメタノール溶液5uLをTenaxTAに吸着させ、内部標準入りガラスチューブとする。
【0029】
<ワックスの測定>
ワックス約1mgをあらかじめ300℃で焼き出ししたアルミホイルに包み、上記内部標準入りガラスチューブの作製で準備した、専用チューブに入れる。このサンプルを加熱脱着装置用のフッ素樹脂キャップでフタをし、装置へセットする。
【0030】
このサンプルを上記条件で測定し、内部標準ピークおよび、重水素化ヘキサデカン以降のピークの全ピーク面積を算出する。
【0031】
<解析>
上記操作で得られたピークのうち、内部標準である重水素化ヘキサデカンのリテンションタイム以降のピークをすべて積分し、全ピークの合計値を算出する。この際、ピークとは異なるノイズピーク等を積分値に加えないよう注意する。
ワックスの揮発性分濃度(mg/kg)=(A1/B1×0.0005×0.77)
/C1×1000000
【0032】
なお、
0.0005 の値は、スタンダード溶液5μL中の重水素化ヘキサデカンの体積(μL)
0.77 の値は、ヘキサデカンの密度(mg/μL)
A1 の値は、重水素化ヘキサデカン以降の全ピーク面積
B1 の値は、重水素化ヘキサデカン(内部標準)のピーク面積
C1 の値は、秤量したワックスの重量(mg)
をそれぞれ示す。
【0033】
本発明においては、次に
15℃/10%放置における該トナーの水分量Aとし、
30℃/80%放置における該トナーの水分量Bとし、
40℃/95%放置における該トナーの水分量Cとした時、
Aが0.05乃至0.50%であり、Bが0.07乃至1.00%であり、Cが0.08乃至1.30%であることが必要である。
【0034】
これは一つに定着工程においてワックス低分子量成分や一部ワックスが加熱等により分解した成分が揮発する際に多量の水分が存在するとより揮発を促進してしまうことによる。
【0035】
また、高温高湿下に長期保管された場合、極一部のワックスが加水分解を生じ、揮発成分を増加させてしまうと発明者らは考えている。
【0036】
15℃/10%放置における該トナーの水分量Aが0.05乃至0.50%であることで、低湿度下における帯電量が最適となり、環境安定性の高いトナーが得られる。
【0037】
水分量Aが0.05%未満であると、通常のプリントにおいては問題ないが、低湿度下で1日に多数枚プリントするような場合チャージアップによる濃度低下が起こりやすく好ましくない。一方、水分量Aが0.50%を超えると、低湿下においてもトナー水分量が多く帯電能力が充分に発揮できない。
【0038】
30℃/80%放置における該トナーの水分量Bが0.07乃至1.00%であることで、高湿度下における水分量が最適となり、定着工程においても揮発成分の少ないトナーが得られる。
【0039】
水分量Bが0.07%未満であると、通常のプリントにおいては問題ないが、1日に多数枚プリントするような場合、帯電量変化による濃度低下が起こりやすく好ましくない。一方、水分量Bが1.00%を超えると、ワックス低分子量成分や一部ワックスが加熱等により分解した成分が揮発する際に多量の水分が存在するとより揮発を促進してしまう。
【0040】
40℃/95%放置における該トナーの水分量Cが0.08乃至1.30%であることで、超高湿度下における水分量が最適となり、定着工程においても揮発成分の少ないトナーが得られる。
【0041】
水分量Cが0.08%未満であると、高温高湿環境に長期保管された場合、初期のプリントと1日に多数枚プリントした後では、大きな帯電量変化による濃度低下が起こりやすく好ましくない。一方、水分量Cが1.30%を超えると、高温高湿環境に長期保管された場合、極一部のワックスの加水分解を生じ、揮発成分を増加させてしまう。
【0042】
該水分量の差B−Aの値が0.00乃至0.10%であることが必要である。B−Aは高湿環境での水分量と低湿環境での水分量の差であり、定着工程においてトナーに含有される水分量の変化が少ないことにより最適な定着条件も変化せず、光沢ムラなどを起こさない。現像工程においては帯電量変化が少なく濃度変化等を起こしずらく好ましい。
【0043】
また、高温高湿下に長期保管された場合、極一部のワックスの加水分解を生じ、揮発成分を増加させてしまうと本発明者らは考えている。
【0044】
水分量の差B−Aが0.10%を超えると、印字環境の変化のない通常のプリントにおいては問題が起きにくいが、印字環境の変化が大きい場合(例えば高温高湿環境での長期保管及び初期印字からエアーコンディショナー作動での低音低湿環境への変化)光沢ムラ、濃度変化や揮発成分増加が起こりやすく好ましくない。
【0045】
また、必須ではないが該水分量の差C−Bの値が0.00乃至0.20%であることが好ましい形態である。
【0046】
C−Bは超高湿環境での水分量と高湿環境での水分量の差であり、定着工程においてワックス低分子量成分や一部ワックスが加熱等により分解した成分が揮発する際に多量の水分が存在するとより揮発を促進してしまう。
【0047】
また、高温高湿下に長期保管された場合、極一部のワックスの加水分解を生じ、揮発成分を増加させてしまうと発明者らは考えている。
【0048】
水分量の差C−Bが0.20%を越えると、極一部のワックスの加水分解を生じ、揮発成分を増加させてしまう。また、初期の印字の際に帯電量が非常に低くカブリ等の弊害が起こりやすく好ましくない。
【0049】
ここで本発明における水分量の測定法を述べる。
【0050】
<トナーの水分量の測定>
本発明においてトナーの「水分量」とは、カールフィッシャー法に基づく質量基準含水率、即ち、含水トナーに対する水分質量の比率をいい、各環境に72時間放置し、サンプル調製したものを用いカールフィッシャー法(JIS K−0068 水分気化法)に基づき、125℃の加熱におけるガスを測定することによって求めたものである。
【0051】
該トナーの110℃における溶融粘度が15000(Pa・s)以下であるであることが必要である。
【0052】
これは様々な機能物質の複合体であるトナーの挙動を、材料物質の物性や添加量だけで判断することは困難であることと、結着樹脂のゲル分(不溶分)、非ゲル分(可溶分)、そして離型剤の複合体として評価できることに鑑みている。
【0053】
本発明において、トナーの110℃における溶融粘度が15000(Pa・s)以下にすることで、現像における耐久安定性を損なうことなく、色再現性および定着性の安定したフルカラー画像を得ることができる。トナーの溶融粘度が15000を超えると、加圧力の低い定着器における定着性に劣ったり混色が不十分となり色再現性に劣る。さらに、昨今のプリンターの高速化に伴い溶融粘度が15000を超えるトナーを定着させようとすると定着工程において高温の温度設定としなくてはならず、結果としてワックスからの揮発成分を多く出してしまう傾向になり好ましくない。
【0054】
ここでトナーの110℃におけるフローテスタ測定による溶融粘度の測定方法を以下に示す。
【0055】
<110℃における溶融粘度の測定>
装置としては、例えばフローテスターCFT−500D(株式会社島津製作所製)を用い、下記の条件で測定を行う。
・サンプル:1.0gのトナーを秤量し、これを直径1cmの加圧成型器により荷重20kNで1分間加圧することで成型してサンプルとする。
・ダイ穴径:1.0mm
・ダイ長さ:1.0mm
・シリンダ圧力:9.807×105(Pa)
・測定モード:昇温法
・昇温速度:4.0℃/min
【0056】
前記の方法により、50℃乃至200℃におけるトナーの粘度(Pa・s)を測定し、110℃における溶融粘度(Pa・s)を求める。
【0057】
本発明においては上述してきた必須項目の他に、下述のような項目を満たすことにより、より好ましい形態となり、効果が増す。
【0058】
本発明トナーにおいては、該エステルワックス成分の含有量がトナーに対して1質量%乃至15質量%であることが重要である。この範囲に制御すると現像特性、保存特性、低温定着特性に優れる。特にピクトリアル画像に求められる高グロス画像を達成することが可能である。
【0059】
本発明トナーにおいてはまた、シクロヘキサン可溶成分は中程度の分子量でかつ水親和性の低い成分であり、この成分を制御することが重要である。シクロヘキサン可溶分成分を60質量%以上、即ち60乃至100質量%に制御すると現像特性(帯電量、カブリ等)を悪化させることなく、定着特性にも優れる。特にピクトリアル画像に求められる高グロス画像を達成することが可能である。さらに、トナーに含まれる水分を抑え、揮発分がセンサーを汚すのを抑えることが可能となる。
【0060】
ここでトナーのシクロヘキサン溶媒に対する可溶分の測定方法を以下に示す。
【0061】
<シクロヘキサン可溶分の測定方法>
本発明におけるシクロヘキサン可溶分とは、トナー中の樹脂組成物中のシクロヘキサン溶媒に対して可溶となったトナー内部に存在する中程度高分子ポリマー成分の質量割合を示す。該可溶分とは、以下のように測定された値をもって定義する。
【0062】
トナーサンプル1.0gを秤量し、溶媒としてシクロヘキサン60mlを用いて常温(20℃)にて12時間攪拌抽出し、該混合溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、該混合溶媒可溶樹脂成分量を秤量する。
【0063】
本発明のトナーを製造する方法は、懸濁重合法を用いて直接トナーを生成する方法;単量体には可溶で水溶性重合開始剤の存在下で直接重合させてトナー粒子を生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合法によるトナー粒子の製造などが挙げられる。また、マイクロカプセル製法のような界面重合法、in situ重合法、コアセルベーション法などの製造も挙げられる。さらに、少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望のトナーを得る界面会合法なども挙げられる。あるいは、粉砕法によって得られたトナーを、機械的衝撃力で球形化する方法などが挙げられる。
【0064】
中でも、小粒径のトナー粒子が容易に得られる懸濁重合方法が特に好ましい。トナー粒子の製造方法として懸濁重合を利用する場合には、以下の如き製造方法によって直接的にトナー粒子を製造することが可能である。
【0065】
単量体中に着色剤,重合開始剤,架橋剤,その他の添加剤を加え、ホモジナイザー,超音波分散機等によって均一に溶解又は分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に通常の攪拌機またはホモミキサー,ホモジナイザー等により分散せしめる。好ましくは単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように攪拌速度・時間を調整し、造粒する。その後は、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の攪拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、通常50乃至80℃(好ましくは55乃至70℃)の温度に設定して重合を行う。重合反応後半に昇温しても良く、必要に応じPH変更しても良い。本発明では、更に、トナーの定着時の臭いの原因となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄・ろ過により収集し、乾燥する。
【0066】
以下に重合法トナーの材料に関して記載する。
【0067】
本発明のトナーを重合方法で製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、主に単官能性重合性単量体を使用する。
【0068】
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独或いは、2種以上組み合わせて使用する。
【0069】
本発明においては反応の補助として水溶性開始剤を併用しても良い。
【0070】
重合性単量体の重合度を制御する為に、連鎖移動剤,重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
【0071】
本発明に用いられる着色剤は、カーボンブラックあるいは以下に示したような公知のイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が利用される。
【0072】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、151、154、155、168、180、185等が好適に用いられる。
【0073】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、122、146、166、150、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0074】
本発明に用いられるシアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用される。
【0075】
本発明において用いられるワックスとしては、化学構造としての制限はないが、好ましい形態としてエステルワックス(例としてモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ヘキサエステル、オリゴエステル等)及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体が挙げられる。
【0076】
本発明の好ましい形態として、これらワックスから液状脂肪酸、長鎖アルコール等の如き残原材料、反応残渣、複生成物を予め精製除去してあるものが良い。精製方法としては、蒸留、溶媒洗浄、再結晶等の方法が挙げられ、これら方法の工程条件などを変えることで本発明に最適な範囲に調整することが可能である。
【0077】
これらワックスには酸化防止剤が添加されていても良い。
【0078】
さらに本発明においては、好ましい形態のエステルワックスに加え、汎用のワックスを併用しても良い。ただし、本発明の効果を顕在化するにはエステルワックスを全添加ワックスの少なくとも半量以上入れることが好ましい。
【0079】
本発明に使用できるトナーの添加剤としては、オイル処理されたシリカ,チタニア等の平均一次粒径が30nm以下の無機微粒子が好適に用いられる。その他、酸化ジルコニウム,酸化マグネシウムの如き酸化物の他に、炭化ケイ素,チッ化ケイ素,チッ化ホウ素,チッ化アルミニウム,炭酸マグネシウム,有機ケイ素化合物なども併用することが可能である。
【0080】
シリカは、出発材料あるいは温度等の酸化の条件により、ある程度任意に、一次粒子の合一をコントロールできる点で好ましい。例えば、かかるシリカは硅素ハロゲン化物やアルコキシドの蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ及びアルコキシド,水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O,SO32-の如き製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物を硅素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0081】
更に、上記シリカは疎水化処理されていることが、トナーの帯電量の温度や湿度の如き環境依存性を少なくするため及びトナー表面からの過剰な遊離を防止するために良い。この疎水化処理剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤,アルミニウムカップリング剤の如きカップリング剤が挙げられる。特にシランカップリング剤が、無機酸化物微粒子上の残存基あるいは吸着水と反応し均一な処理が達成され、トナーの帯電の安定化,流動性付与の点で好ましい。
シランカップリング剤は、下記一般式
Rm SiYn
[R:アルコキシ基
m:1乃至3の整数
Y:アルキル基
ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基を含む炭化水素基
n:1乃至3の整数]
で表されるものであり、例えばビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリアセトキシシラン,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,イソブチルトリメトキシシラン,ジメチルジメトキシシラン,ジメチルジエトキシシラン,トリメチルメトキシシラン,ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,n−ヘキサデシルトリメトキシシラン,n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
より好ましくは、
a2a+1−Si(OCb2b+13
[a=4乃至12、b=1乃至3]
である。
【0082】
ここで、一般式におけるaが4より小さいと、処理は容易となるが疎水性が十分に達成できない。またaが12より大きいと疎水性は十分になるが、粒子同士の合一が多くなり、流動性付与能が低下してしまう。bは3より大きいと反応性が低下して疎水化が十分に行われなくなってしまう。したがって上記一般式におけるaは4乃至12、好ましくは4乃至8、bは1乃至3、好ましくは1乃至2が良い。
【0083】
シリカのオイル処理に関しては、未処理のシリカに直接オイルで処理しても構わないし、上記疎水化処理をしたシリカにさらにオイル処理しても構わない。
【0084】
オイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、パラフィン、ミネラルオイル等が使用できるが、なかでも環境安定性に優れたジメチルポリシロキサンが好適である。処理に用いるオイル量は、トナーの含水量を制御するためにはシリカ微粒子母体100質量部に当り10質量部乃至40質量部が適量である。
【0085】
本発明のトナーにおいては、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤、酸化アルミニウム粉末の如きケーキング防止剤、あるいは例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤、また、逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0086】
次に、本発明の画像形成方法及び、該方法を実施する画像形成装置ならびにプロセスカートリッジに関して説明する。
【0087】
本発明が適用可能な画像形成方法を添付図面を参照しながら以下に説明する。
【0088】
(非磁性一成分画像形成装置)
(1)画像形成装置例
図2は本発明に従う画像形成装置の一例の概略構成図である。本例の画像形成装置は、複数の画像担持体(潜像担持体)である感光ドラムを上下に並べて配置したタンデム型で、中間転写ベルト方式の電子写真カラー(多色画像)プリンタである。
【0089】
PY・PM・PC・PBkはそれぞれイエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・ブラック(Bk)の各色のトナー画像を形成する第1乃至第4の4つの画像形成部(画像形成ユニット)であり、画像形成装置本体内に下から上に順に並列配置されている。
【0090】
これらの第1乃至第4の4つの画像形成部PY・PM・PC・PBkは互いに形成するトナー画像の色が上記のように異なる他は、同一の構成・電子写真作像機能を有している。すなわち、第1乃至第4の各画像形成部はそれぞれ、図1に示すように第1の画像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)1、一次帯電手段としての帯電ローラ2、露光手段としてのレーザー照射装置3、現像手段としてのトナー現像装置4、一次転写手段としての一次転写ローラ5、クリーニング手段としてのブレードクリーニング装置6等からなる。第1乃至第4の各画像形成部のトナー現像装置4に収容させている現像剤はそれぞれイエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー、ブラックトナーである。各色のトナーは後述する。
【0091】
本実施例の画像形成装置は、第1乃至第4の各画像形成部PY・PM・PC・PBkにおいて、それぞれ、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4、ブレードクリーニング装置6の4つのプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱交換自在のプロセスユニット(プロセスカートリッジ)としてある。
【0092】
13は第2の画像担持体としてのエンドレスベルト状の中間転写ベルトであり、上記の第1乃至第4の4つの画像形成部PY・PM・PC・PBkの感光ドラム1側(プリンタ前面側)においてこの4つの画像形成部の全体部に亘らせて、不図示の複数の支持ローラ間に懸回張設させて縦方向に配設してある。第1乃至第4の各画像形成部において、一次転写ローラ5はそれぞれこの中間転写ベルト13を介して感光ドラム1に圧接させてある。各感光ドラム1と中間転写ベルト13との接触部が一次転写部である。
【0093】
第1乃至第4の各画像形成部PY・PM・PC・PBkにおいて、正回転駆動された各感光ドラム1はその回転過程でそれぞれ不図示の電源回路から帯電バイアスが印加される帯電ローラ2により所定の極性及び電位に一様に一次帯電処理される。その帯電処理面に対してLEDアレイ装置3によりそれぞれフルカラー画像の色分解成分像である、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像パターンにしたがった光像露光LY・LM・LC・LBkがなされる。そして各感光ドラム1上に画像情報の静電潜像が形成される。その静電潜像がそれぞれ現像装置4によってトナー画像として現像される。第1乃至第4の4つの画像形成部PY・PM・PC・PBkの各感光ドラム1の面にそれぞれ電子写真プロセスによりフルカラー画像の色分解成分像である、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色トナー画像が所定のシーケンス制御タイミングにて形成される。
【0094】
そして、第1乃至第4の各画像形成部PY・PM・PC・PBkにおいて、各感光ドラム1の面に形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色トナー画像が、各感光ドラム1の正回転方向に順方向の矢印の時計方向に感光ドラム1と略同速で回転駆動される中間転写ベルト13の面に対して、第1乃至第4の各画像形成部PY・PM・PC・PBkの一次転写部において一次転写ローラに不図示の電源回路から印加される一次転写バイアスによって順次に重畳転写される。これにより回転駆動される中間転写ベルト13の面に未定着のフルカラートナー画像(鏡像)が合成形成される。
【0095】
第1乃至第4の各画像形成部PY・PM・PC・PBkにおいて、中間転写ベルト13に対するトナー画像の一次転写後に各感光ドラム1上に残った転写残トナーはブレードクリーニング装置6のクリーニングブレードによって除かれて、該装置6内の貯留部6bに貯留される。
【0096】
15は2次転写ローラである。対向ローラは中間転写ベルト13の下端側において中間転写ベルトの内側に配設してあり、2次転写ローラ15は対向ローラとの間に中間転写ベルト13を挟ませて該中間転写ベルト13の外面に当接させて配設してある。2次転写ローラ15と中間転写ベルト13との接触部が二次転写部である。
【0097】
20は画像形成装置本体の下部に配設した給紙カセットであり、最終記録媒体としての転写材を積載収容させてある。所定のシーケンス制御タイミングにて搬送手段(ピックアップローラ)14を駆動させて給紙カセット20内の転写材Pを1枚分離給紙させ、所定のタイミングにて二次転写部に給送する。中間転写ベルト13上に合成形成された未定着のフルカラートナー画像は、この二次転写部において二次転写ローラ15に不図示の電源回路から印加される二次転写バイアスによって転写材Pの面に一括転写されていく。
【0098】
二次転写部を通過した転写材は、中間転写ベルト13の面から分離されて搬送ベルト18によって定着装置7に送られる。
【0099】
中間転写ベルト13上に残った転写残トナーはブレードクリーニング装置16のクリーニングブレードによって除かれ、廃トナーボックス17に送られて貯留される。
【0100】
定着装置7に送られた転写材上の未定着のフルカラートナー画像は定着装置7により熱および圧を加えられて転写材に溶融固着され、シートパスを通って画像形成装置本体の上面に配設した排紙トレイ19上にカラー画像形成物として排出される。
【0101】
尚、中間転写ベルト13の構成としては、厚さ100μm、体積抵抗率 1010ΩcmのPVDFを用いている。
【0102】
2次転写対向ローラは、Al芯金にカーボンを導電剤として分散した抵抗104Ω、肉厚1.5mmのEPDMゴムを被覆したΦ25のものを用いている。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
【0104】
<結着樹脂の合成>
<スチレン系極性樹脂の合成例1>
原料及び溶剤として、
スチレンモノマー 95.6質量部
n−ブチルアクリレート 1.0質量部
メタクリル酸 1.7質量部
メタクリル酸メチル 1.7質量部
キシレン 100.0質量部
を温度計,撹拌器,リフラックスコンデンサー及び窒素ガス導入管を具備している四口フラスコに入れ、四口フラスコに窒素ガスを通し撹拌しながら徐々に昇温し、100℃で重合開始剤としてパーブチルD(日本油脂社製)を0.5質量部滴下し、200℃に昇温して5時間反応した。
【0105】
その後、100℃に降温し、
スチレンモノマー 9.6質量部
n−ブチルアクリレート 0.1質量部
メタクリル酸 0.3質量部
メタクリル酸メチル 0.2質量部
を添加し、追加開始剤パーブチルD(日本油脂社製)を0.1質量部滴下し、200℃に昇温して5時間反応した。
【0106】
スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体であるスチレン系極性樹脂1を得た(Mp=12000、Mw=15000、Tg=92℃、酸価=15.0mgKOH/g)。
【0107】
<スチレン系極性樹脂の合成例2>
上述のスチレン系極性樹脂合成例1の添加量を下記のように変えて、スチレン系極性樹脂2を得た(Mp=13000、Mw=15000、Tg=94℃、酸価=4.5mgKOH/g)。
スチレンモノマー 97.6質量部
n−ブチルアクリレート 0.5質量部
メタクリル酸 0.2質量部
メタクリル酸メチル 1.7質量部
キシレン 100.0質量部
【0108】
<スチレン系極性樹脂の合成例3>
上述のスチレン系極性樹脂合成例1の添加量を下記のように変えて、スチレン系極性樹脂3を得た(Mp=11000、Mw=13000、Tg=88℃、酸価=36.0mgKOH/g)。
スチレンモノマー 86.4質量部
n−ブチルアクリレート 2.6質量部
メタクリル酸 9.3質量部
メタクリル酸メチル 1.7質量部
キシレン 100.0質量部
【0109】
<芳香族カルボン酸チタン化合物の製造>
温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においたガラス製4リットルの4つ口フラスコに、イソフタル酸65.3質量部、エチレングリコール18質量部を混合し、温度100℃で溶解し、減圧、脱水を行った。その後50℃に冷却後、窒素雰囲気下で、チタンテトラメトキサイド18.9質量部を加えた。その後、フラスコ内を減圧して反応生成物であるメタノールを留出させ、芳香族カルボン酸チタン化合物1を得た。
【0110】
<ポリエステル樹脂の合成例1>
下記原料を温度計,撹拌器,リフラックスコンデンサー及び窒素ガス導入管を具備している四口フラスコに入れ、触媒量のチタン化合物1を入れ、四口フラスコに窒素ガスを通し撹拌しながら徐々に昇温し、150℃で10時間反応し、縮重合反応の後半200℃に温度を上げ、減圧下で縮重合反応をすすめ、重量平均分子量Mwが13000の前駆ポリエステル樹脂1を得た。
【0111】
・一般式(1)であらわされるジオール成分 57mol%
【0112】
【化1】

(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を表し、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2乃至10である。本実施例ではRは であり、x+yの平均値は約3である。)
・フマル酸 19mol%
・テレフタル酸 24mol%
【0113】
その後前駆ポリエステル樹脂1の100質量部を四口フラスコに入れ温度150℃に加熱後に、無水トリメリット酸0.4質量部を加え、徐々に加熱して前駆ポリエステル樹脂1のポリマーの末端がトリメリット酸で変性されたポリエステル樹脂1を調製した(なお、ポリエステル樹脂1は水/メタノール=1:1溶液にて1回洗浄を行った。)。
【0114】
ポリエステル樹脂1の酸価は18.0mgKOH/gであった。
【0115】
<ポリエステル樹脂の合成例2>
上述のポリエステル樹脂合成例1の添加量を下記のように変えて、ポリエステル樹脂2を得た。
・一般式(1)であらわされるジオール成分 52mol%
・フマル酸 20mol%
・テレフタル酸 28mol%
【0116】
無水トリメリット酸による追加反応工程は行わなかった。ポリエステル樹脂2の酸価は3.0mgKOH/gであった。
【0117】
<ポリエステル樹脂の合成例3>
上述のポリエステル樹脂合成例1の添加量を下記のように変えて、前駆ポリエステル樹脂3を得た。
・一般式(1)であらわされるジオール成分 61mol%
・フマル酸 18mol%
・テレフタル酸 21mol%
【0118】
その後、前駆ポリエステル樹脂3の100質量部を四口フラスコに入れ温度150℃に加熱後に、無水トリメリット酸5.0質量部を加え、徐々に加熱して前駆ポリエステル樹脂3のポリマーの末端がトリメリット酸で変性されたポリエステル樹脂3を調製した。
【0119】
ポリエステル樹脂3の酸価は45.0mgKOH/gであった。
【0120】
<エステル化合物の合成例1>
ジムロート還流器、Dean−Stark水分離器を備え4Lの4つ口フラスコ反応装置にベンゼン2L、ベヘン酸600g、ベヘニルアルコール400g、さらにp−トルエンスルホン酸を加え十分撹拌し溶解後、7時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥し溶剤を留去させた。得られた化合物を再結晶後、洗浄し精製した。さらにベンゼンに再溶解し、窒素下蒸留留去を行って精製を行い、エステル化合物1を得た。
【0121】
加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、ヘキサデカン換算の濃度が600ppmであった。
【0122】
<エステル化合物の合成法2>
上述のエステル化合物合成例1の添加材料、添加量をステアリン酸700g、ペンタエリスリトール300gに変更して、エステル化合物2を得た(テトラエステル化合物)。反応、精製工程はエステル化合物の合成法1同様とした。
【0123】
<エステル化合物の合成例3>
上述のエステル化合物合成例1の添加材料、添加量をセバシン酸700g、ベヘニルアルコール300gに変更して、エステル化合物3を得た(ジエステル化合物)。反応、精製工程はエステル化合物の合成法1同様とした。
【0124】
<エステル化合物の合成例4>
上述のエステル化合物合成例1の添加材料、添加量を変更せず、還流を4時間にせしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥し溶剤を留去させた。得られた化合物を再結晶後、洗浄し精製し、エステル化合物4とした。
【0125】
<エステル化合物の合成例5>
上述のエステル化合物合成例1の添加材料、添加量をステアリン酸600g、ステアリルアルコール400gに変更して、エステル化合物5を得た。
【0126】
還流を3時間にせしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥し溶剤を留去させた。得られた化合物を再結晶後、洗浄し精製し、エステル化合物5とした。
【0127】
<エステル化合物の合成例6>
上述のエステル化合物合成例1の添加材料、添加量をアジピン酸500g、ステアリルアルコール500gに変更して、エステル化合物6を得た。
【0128】
還流を2時間にせしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥し溶剤を留去させた。得られた化合物を再結晶後、洗浄し精製し、エステル化合物6とした。
【0129】
<エステル化合物の合成例7>
上述のエステル化合物合成例1の添加材料、添加量をベヘン酸400g、モンタン酸300g、ベヘニルアルコール300gに変更して、エステル化合物7を得た。
【0130】
還流を4時間にせしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥し溶剤を留去させた。得られた化合物を再結晶後、洗浄し精製し、エステル化合物7とした。
【0131】
(トナーの製造例1)
下記の手順によって重合法トナーを製造した。
【0132】
60℃に加温したイオン交換水1300質量部に、リン酸三カルシウム9質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000r/minにて撹拌し水系媒体を調製した。
【0133】
また、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
スチレン 70.0質量部
n−ブチルアクリレート 30.0質量部
ジビニルベンゼン 0.2質量部
ポリエステル樹脂1 3.0質量部
(Mw=14000、Tg=72℃、酸価=18.0mgKOH/g)
スチレン系極性樹脂1:
スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体 12.0質量部
(Mp=12000、Mw=15000、Tg=92℃、酸価=15.0mgKOH/g)
【0134】
次に上記溶解液に
銅フタロシアニン 7.0質量部
帯電制御剤(TN105:保土谷化学工業社製) 1.0質量部
エステル化合物1、精製ベヘン酸ベヘニル(融点71℃) 15.0質量部
を加え、その後、混合液を温度60℃に加温した後にTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)にて、9,000r/minにて攪拌し、溶解、分散した。
【0135】
これに重合開始剤(t−ブチルパーオキシピバレート)を8.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0136】
上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃にてTK式ホモミキサーを用いて10,000r/minで30分間攪拌し、造粒した。
【0137】
その後、プロペラ式攪拌装置に移して100r/minで攪拌しつつ、窒素雰囲気下において溶存酸素0.50%以下にて、70℃で2時間反応させた後、80℃まで昇温し、更に2時間反応を行い、前駆トナー粒子を製造した。
【0138】
その後、スチレンモノマー3質量部に対し、ポリエステル樹脂2(酸価=3.0mgKOH/g)0.5質量部を混合した溶液を1時間かけて滴下した。その後、過硫酸カリウムを1質量部添加し、窒素雰囲気下において溶存酸素0.50%以下にて、80℃まで昇温し、更に4時間反応を行い、トナー粒子を製造した。
【0139】
重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、塩酸を加えリン酸三カルシウムを溶解し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、さらに水洗を2回行い、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してシアントナー粒子1を得た。
【0140】
上記シアントナー粒子100質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:15nm、BET比表面積:100m2/g)2.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合してシアントナーNo.1を得た。
【0141】
シアントナーNo.1の物性を表2に示し、評価結果を表4および5に示す。
【0142】
(トナーの製造例2乃至6)
トナー製造例1におけるスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂およびエステル化合物に変えて表1に示すように変更し、かつ添加量を変更し、反応時において開始剤添加量および反応温度を変更して、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー2乃至6を得た。得られたトナー2乃至6の物性を表2に示す。
【0143】
(トナーの製造例7)
〔顔料分散方法〕
以下の手順で顔料分散液を調製した。
・シアン顔料:(銅フタロシアニン) 96質量部
・顔料分散剤:アルコール変性ポリエチレン樹脂(Mw:7000) 4質量部
・酢酸エチル 100質量部
上記材料組成の分散液アトライター(三井鉱山製)等の分散機で分散し、その後酢酸エチルで希釈し顔料濃度15質量%の顔料分散液を調製した。
【0144】
〔ワックス分散粒子の作成〕
以下の手順で微粒子化ワックスの分散液を調製した。
・エステル化合物4: 20質量部
(DSC吸熱ピーク:69℃、Mw:700、Mn:500)
・トルエン 80質量部
上記材料を、分散機に投入した。撹拌しながら徐々に温度を100℃まで上げてゆき、その後室温まで冷却し、微粒子化したワックスを析出させた。作製した微粒子化ワックスの分散液は、ワックスの質量濃度が20質量%になるように酢酸エチルで希釈した。
【0145】
〔トナー粒子の作製〕
・スチレン−nブチルアクリレート−ジビニルベンゼン共重合体 87質量部
(Mw:40000、Mn:15000)
・極性ポリエステル樹脂(3) 3質量部
・スチレン系極性樹脂(1) 10質量部
上記顔料分散液を30質量部、上記ワックス分散粒子液を25質量部、酢酸エチル50質量部をボールミルで分散させた(この液をA液とした。)。一方、炭酸カルシウム(平均粒径80nm)60質量部、水40質量部をボールミルで分散後、炭酸カルシウム分散液7質量部とカルボキシメチルセルロース(商品名「セロゲンBS−H」:第一工業製薬社製)の2%水溶液100質量部を攪拌した(この液をB液とした)。
【0146】
次に乳化機(商品名「オートホモミキサー」:特殊機化工業社製)でB液100質量部を攪拌し、その中にA液50質量部をゆっくり投入して混合液を懸濁した。その後溶媒を除去し、塩酸を加えて炭酸カルシウムを除去、さらに水洗を2回行い、乾燥、分級してシアン粒子7を得た。
【0147】
上記シアントナー粒子7の100質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:15nm、BET比表面積:100m2/g)2.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合してシアントナーNo.7を得た。
【0148】
シアントナーNo.7の物性を表2に示し、評価結果を表4および5に示す。
【0149】
(トナーの製造例8乃至9)
トナー製造例1におけるジビニルベンゼンの添加量を変更して、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー8乃至9を得た。得られたトナー8乃至9の物性を表2に示す。
【0150】
(トナーの製造例10)
トナー製造例7におけるスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂およびエステル化合物に変えて表1に示すように変更し、かつ添加量を変更し、反応時において開始剤添加量および反応温度を変更して、トナー製造例7と同様にトナーの製造を行い、シアントナー10を得た。得られたトナー10の物性を表2に示す。
【0151】
(トナーの製造例11)
・スチレン−nブチルアクリレート−ジビニルベンゼン共重合体 100質量部
(Mw:40000、Mn:15000)
・ポリエステル樹脂(3) 3質量部
・スチレン系極性樹脂(1) 12質量部
・エステル化合物4(融点72℃ ) 15質量部
(DSC吸熱ピーク:69℃、Mw:700、Mn:500)
・荷電制御剤:芳香族オキシカルボン酸Zr化合物
(TN105:保土谷化学工業社製) 3質量部
・顔料:シアン顔料(銅フタロシアニン) 7質量部
上記材料を混練し粉砕して粉砕物1を得た。
【0152】
その後、分級してシアン粒子11を得た。
【0153】
上記シアントナー粒子11の100質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体1(1次粒子径:15nm、BET比表面積:100m2/g)2.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合してシアントナー11を得た。
【0154】
シアントナー11の物性を表2に示し、評価結果を表4および5に示す。
【0155】
(トナーの製造例12乃至15)
トナー製造例1におけるシリカ微粉体1を変更して、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー12乃至15を得た。得られたトナー12乃至15の物性を表2に示す。
【0156】
(トナーの製造例16乃至17)
トナー製造例1における重合開始剤の添加量および反応温度を変更して、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー16乃至17を得た。得られたトナー16乃至17の物性を表2に示す。
【0157】
(トナーの製造例18乃至19)
トナー製造例1におけるエステル化合物1の添加量を変更して、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー18乃至19を得た。得られたトナー18乃至19の物性を表2に示す。
【0158】
(トナー製造例20乃至21)
トナー製造例1におけるスチレン系極性樹脂1を極性樹脂2に変更し、追加ポリエステル樹脂2をポリエステル樹脂3に変更する以外は、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー20を得た。
【0159】
また、シアントナー20の製造において水による洗浄を1回にして、シアントナー21
を得た。得られたトナー20乃至21の物性を表2に示す。
【0160】
(比較用トナーの製造例22及び23)
トナー製造例1におけるエステル化合物1に変えてエステル化合物5または6に変更し、その添加量を変更して、トナー製造例1と同様にトナーの製造を行い、シアントナー22乃至23を得た。得られたトナー22乃至23の物性を表2に示す。
【0161】
(比較用トナーの製造例24乃至33)
トナー製造例11におけるスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂およびエステル化合物に変えて表1に示すように変更し、かつ添加量を変更し、反応時において開始剤添加量および反応温度を変更して、トナー製造例11と同様にトナーの製造を行い、シアントナー24乃至33を得た。得られたトナー24乃至33の物性を表3に示す。
【0162】
<実施例1乃至21、比較例1乃至12>
(画像評価)
得られたトナー1乃至33を用い、以下の方法に従って画像評価を行った。
【0163】
画像形成装置としては市販のレーザプリンタHP社製CLJ−3700(HP社製)のプロセススピードを280mm/秒に変えた改造機を用いた。カートリッジはCLJ−3700用を下記の点について変更を行い使用した。
【0164】
(現像ローラーD−1の製造方法)
軸芯体としてSUS製の円柱にニッケルメッキを施し、さらにシランカップリング系プライマーを塗布、焼付けしたものを用いた。
【0165】
ついで、軸芯体を金型に配置し、金型を100℃,5分間加熱し、導電性ジメチルシリコーンゴム(AskerC硬度12度品)を金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、100℃,15分加熱することにより、シリコーンゴムを加硫硬化し、冷却した後に脱型することで、弾性層を軸芯体の外周に設けた。
【0166】
次に鎖延長されたポリオールを主成分として、架橋材としてTMP変性のTDIを必要量添加し、このウレタン樹脂の固形分(鎖延長されたポリオールと架橋材として用いたイソシアネートとの総量)が18質量%となるように調整したメチルエチルケトンを主溶媒とする混合溶液に、さらにカーボンブラック(商品名:MA−100、三菱化学製)を樹脂成分に対し30質量部添加し十分に撹拌したものをディップ液とした。この液中に弾性層12が設けられた軸芯体11を浸漬してコーティングした後、引き上げて乾燥させ、120℃にて5時間加熱処理することで表面層13を弾性層12の外周に設け、現像ローラD−1を得た。
【0167】
転写材としては、LETTERサイズのXEROX 4024用紙(XEROX社製、75g/m2)を用いて行った。
【0168】
本発明の評価方法としては2種類の評価を行った。
【0169】
1つ目として前処理として画像評価前に45℃/95%/20日間の保管モードを設けた。その直後、高温高湿環境下(30℃,80%RH)において、印字比率が1%となる画像を用い、単色モードにて以下に示す連続印字方法において10000枚を印字した。
【0170】
2つ目として前処理として画像評価前に5℃/5%/20日間の保管モードを設けた。その直後、低温低湿環境下(15℃,10%RH)において、印字比率が1%となる画像を用い、単色モードにて以下に示す連続印字方法において10000枚を印字した。
【0171】
なお、画像形成速度はいずれも普通紙モード時の速度とした。初期と10000枚目の画像を用い、以下の評価基準に基づき画像評価を行った。各評価結果について、表2に記す。
【0172】
[現像性評価方法]
(かぶりの測定)
カブリの測定は、REFLECTOMETER MODEL TC−6DS(東京電色社製)を用い測定し、下記式により算出した。かぶり値は少ない方が良好である。
カブリ(反射率;%)=(標準紙の反射率;%)−(サンプルの白べた部の反射率;%)
A;1.5%以下
B:1.5%を超え3.0%以下
C:3.0%を超え4.5%以下
D:4.5%を超える
【0173】
(画像濃度変化)
画像濃度はマクベス濃度計またはカラー反射濃度計(例えばColorreflection densitometer X−RITE 404Amanufactured by X−Rite Co.)で測定する。
【0174】
初期濃度と一万枚耐久後の濃度の差で評価する。
A:0.1以下
B:0.1を超え0.2以下
C:0.2を超え0.3以下
D:0.3を超える
【0175】
(現像ローラ周期ムラ)
現像ローラ周期ムラは、前処理として画像評価前に45℃/95%/20日間の保管モードを設けた後、画像評価環境にて初期10枚印字した際の、下記評価基準に基づいて評価した。
A:ローラ表面、画像ともに欠陥は全く認められない。
B:耐久後半、ローラ表面に汚れが若干認められるが、画像には現れない。
C:耐久後半、ローラ表面に汚れが若干認められ、画像にも若干のムラが生ずる。
D:耐久後半、ローラ表面の汚れがひどく、画像にもムラが生ずる。
【0176】
(定着排紙部センサー汚れ)
定着排紙部センサー汚れは、センサー表面を目視で観察し、さらに印字動作欠陥(印字停止)を観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
A:センサー表面の汚れはなく、印字動作不良は全く認められない。
B:耐久後半、センサー表面に汚れが若干認められるが、印字動作不良は現れない。
C:耐久後半、センサー表面に汚れが若干認められ、印字動作不良は不定期に生ずる。
D:耐久後半、センサー表面の汚れがひどく、印字動作不良は頻繁に生ずる。
【0177】
〔定着性評価項目の測定方法〕
ブラックトナー(1)を用いて、坪量が75または80g/m2の記録紙先端部に、トナー担持量が0.5乃至0.6dg/m2である帯状の画像を形成し、定着試験を行った。定着評価結果を表4に示す。
【0178】
未定着画像の作成および定着性の試験は、特に記述がない場合は常温常湿下(23℃/60%)で行う。
【0179】
加圧ローラ30としては、Fe製の芯金30aに対しシリコーンゴム及びPFA樹脂を被覆させたローラ硬度60度(Asker−C 500g)のローラを用いた。
【0180】
加圧力としては、加圧バネ25a,25bを調節して、80g/cm2の紙を介した状態で、面圧90,000N/m2で接して、定着ニップ6.0mmとした。
【0181】
(定着開始温度)
上記方法により作成した未定着画像を、定着器加熱部の温度を100乃至230℃の温度範囲で5℃おきに温調し、定着させ、得られた定着画像を4900N/m2の荷重をかけたシルボン紙で2回摺擦し、摺擦前後の画像濃度低下率が10%以下となる温度を定着開始温度とする。その程度に応じて以下の4ランクで評価した。
A:定着開始温度が160℃未満。
B:定着開始温度が160℃以上175℃未満。
C:定着開始温度が175℃以上190℃未満。
D:定着開始温度が190℃以上。
【0182】
(耐高温オフセット性)
定着温度を上げ、目視でオフセット現象の発生しない最高温度を高温オフセットフリー温度とし、耐オフセット性の指標とする。その程度に応じて以下の4ランクで評価した。
A:高温オフセットフリー温度が200℃以上。
B:高温オフセットフリー温度が190℃以上200℃未満。
C:高温オフセットフリー温度が180℃以上190℃未満。
C:高温オフセットフリー温度が170℃以上180℃未満。
【0183】
(保存性)
以下にトナーの保存性の観点で耐ブロッキング性の評価手法を示す。
【0184】
外添処理後のトナーをポリカップ中に10g入れ、53℃の環境下3日間放置し、その程度に応じて以下の4ランクで評価した。
A:傾けると容易に崩れ、ダマも存在しない。
B:ダマが存在するが振とうで容易に崩れる。
C:傾けると容易に崩れるがほぐれないダマが存在する。
D:傾けても崩れない。
【0185】
【表1】

【0186】
【表2】

【0187】
【表3】

【0188】
【表4】

【0189】
【表5】

【符号の説明】
【0190】
1・・感光ドラム、2・・帯電ローラ、3・・露光装置、4・・現像装置、5・・一次転写ローラ、6・・クリーニング装置、7・・定着装置、8・・廃トナー容器、9・・現像ローラ、10・・トナー供給ローラ、11・・トナー規制ブレード、12・・トナー攪拌羽根、13・・中間転写ベルト、14・・ピックアップローラ、15・・二次転写ローラ、16・・中間転写ベルトクリーニング装置、17・・廃トナーボックス、18・・紙搬送ベルト、19・・排紙部、20・・給紙カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、ポリエステル樹脂、着色剤、エステルワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有するトナーであって、
該エステルワックスの加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、該エステルワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1500ppm以下であり、
15℃/10%放置における該トナーの水分量A、30℃/80%放置における該トナーの水分量B、40℃/95%放置における該トナーの水分量Cとした時、Aが0.05乃至0.50質量%であり、Bが0.07乃至1.00質量%であり、Cが0.08乃至1.30質量%であり、
該水分量の差B−Aの値が0.00乃至0.10であって、
該トナーの110℃における溶融粘度が15000(Pa・s)以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
該水分量の差C−Bの値が0.00乃至0.20であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
該エステルワックス成分の含有量がトナーに対して1質量%乃至15質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
該トナーのシクロヘキサン可溶分が60質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
該無機微粉体として少なくとも疎水化処理されている平均一次粒径が30nm以下の微粉体を少なくとも1種以上含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
該無機微粉体は少なくともシリコーンオイルによって100質量部当り10質量部乃至40質量部で処理されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
該トナー粒子は重合性単量体及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成し、該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合して得られるトナー粒子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78630(P2012−78630A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224637(P2010−224637)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】