トノボード及びトノボードの製造方法
【課題】各板状部材をより大きな角度で折畳むことができると共に、板状部材間での弛みを防止し、かつ、なるべく一定態様に折畳めるようにすること。
【解決手段】車両荷室に設けられるトノボードであって、複数の板状部72a、72bと、隣設された板状部72a、72b同士を屈曲可能に連結する屈曲部とを備え、前記屈曲部は、隣設された板状部72a、72b間に介在する板状の屈曲心材部74aと、屈曲心材部74aと板状部72a、72bとの間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、前記屈曲部は、隣設する板状部72a、72b間に隙間をあけて配設された前記屈曲心材部74aと、隣設する板状部72a、72b及び屈曲心材部74aを両面側から覆うように設けられた一対のシート状部材73を、隣接する板状部72a、72bと屈曲心材部74aとの各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して形成された前記線状屈曲部とを有する。
【解決手段】車両荷室に設けられるトノボードであって、複数の板状部72a、72bと、隣設された板状部72a、72b同士を屈曲可能に連結する屈曲部とを備え、前記屈曲部は、隣設された板状部72a、72b間に介在する板状の屈曲心材部74aと、屈曲心材部74aと板状部72a、72bとの間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、前記屈曲部は、隣設する板状部72a、72b間に隙間をあけて配設された前記屈曲心材部74aと、隣設する板状部72a、72b及び屈曲心材部74aを両面側から覆うように設けられた一対のシート状部材73を、隣接する板状部72a、72bと屈曲心材部74aとの各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して形成された前記線状屈曲部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の荷室上方を覆った状態から折畳むようにして荷室上方を開放させることができるトノボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の荷室上方を覆い或は開放させることができるトノボードとして、複数の板部材を屈曲可能に連結し、各板状部材を面一状に展開させることで荷室を覆うと共に、各板状部材を折畳むようにすることで荷室上方を開放させるようにしたものがある。
【0003】
このようなトノボードは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−233135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各板状部材を密接状に連結すると、各板状部材を大きな角度で屈曲させることができず、荷室上方を大きく開放させることが困難となる。
【0006】
仮に、各板状部材間に十分な間隔を設けて、これらを柔軟な部材で連結すると、各板状部材を大きな角度で屈曲させることができ、荷室上方を大きく開放させることができる。しかしながらこの場合、板状部材間で前記柔軟な部材の弛みが生じ易く見栄えがよくない。また、板状部材間で屈曲位置が安定し難く、従って、一定態様に折畳みにくいという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、各板状部材をより大きな角度で折畳むことができると共に、板状部材間での弛みを防止し、かつ、なるべく一定態様に折畳めるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るトノボードは、車両荷室に設けられるトノボードであって、複数の板状部と、隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、を備え、前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、前記屈曲部は、隣設する板状部間に隙間をあけて配設された前記屈曲心材部と、隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように設けられた一対のシート状部材を、隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して形成された前記線状屈曲部とを有する。
【0009】
第2の態様に係るトノボードは、第1の態様に係るトノボードであって、前記板状部同士を結ぶ方向における前記屈曲心材部の寸法は、隣設する前記板状部同士を折重なるまで屈曲させることができ、かつ、その折重ね状態で前記板状部の主面から突出しない程度に設定されているものである。
【0010】
第3の態様に係るトノボードの製造方法は、車両荷室に設けられるトノボードの製造方法であって、前記トノボードは、複数の板状部と、隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、を備え、前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、隣設する前記板状部間に隙間をあけて前記屈曲心材部を配設し、隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように一対のシート状部材を設け、隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して前記線状屈曲部を形成する。
【発明の効果】
【0011】
この第1及び3の態様によると、隣設する板状部同士を折曲げる際、屈曲心材部と板状部との間の線状屈曲部で折曲げることができるので、各板状部材をより大きな角度で折畳むことができると共に、折曲げ位置も安定し一定態様に折りたたむことができる。また、屈曲部は、板状の屈曲心材部を有しているため、板状部材間で弛みを防止できる。また、板状部間に屈曲心材部を配設し、一対のシート状部材を接合することで容易に屈曲部を形成することができる。
【0012】
また、第2の態様によると、板状部同士を折重なるまで屈曲させることができ、かつ、その状態で屈曲心材部が突出しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両に設けられたトノボード装置を示す斜視説明図である。
【図2】同上のトノボード装置を示す側面説明図である。
【図3】同上のトノボード装置の内部構成を示す側面説明図である。
【図4】バックドアを閉じた状態を示す説明図である。
【図5】バックドアを途中まで開いた状態を示す説明図である。
【図6】バックドアを完全に開いた状態を示す説明図である。
【図7】トノボードを示す平面図である。
【図8】トノボードを示す側面図である。
【図9】トノボードの要部を示す断面図である。
【図10】屈曲部を示す断面図である。
【図11】屈曲部を製造する一工程を示す説明図である。
【図12】屈曲部で屈曲させた状態を示す断面図である。
【図13】屈曲部で略180゜に屈曲させた状態を示す断面図である。
【図14】レール部、トノボード駆動機構部及びスライダ部を示す斜視図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【図16】図14のXVI−XVI線断面図である。
【図17】図14のXVII−XVII線断面図である。
【図18】トノボード駆動機構部及びスライダ部を示す分解斜視図である。
【図19】トノボード駆動機構部を示す分解斜視図である。
【図20】スライダ部がレール部の後端部に位置する状態を示す説明図である。
【図21】スライダ部がレール部の中間部に位置する状態を示す説明図である。
【図22】スライダ部がレール部の前端部に位置する状態を示す説明図である。
【図23】バックドアが閉じた位置から30゜回転して開いた状態を示す斜視図である。
【図24】同上の状態を示す側面図である。
【図25】バックドアが閉じた位置から60゜回転して開いた状態を示す斜視図である。
【図26】同上の状態を示す側面図である。
【図27】バックドアが完全に開いた状態を示す斜視図である。
【図28】同上の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係るトノボードを適用したトノボード装置20について説明する。図1は車両10に設けられたトノボード装置20を示す斜視説明図であり、図2は同トノボード装置20を示す側面説明図であり、図3は同トノボード装置20の内部構成を示す側面説明図である。また、図4〜図6はバックドア14を閉じた状態から開いた状態にする際の変化を示す説明図であり、図4はバックドア14を完全に閉じた状態、図5はバックドア14を途中まで開いた状態、図6がバックドア14を完全に開いた状態をそれぞれ示している。
【0015】
このトノボード装置20は、バックドア14で開閉される荷室12を有する車両10に設けられる。すなわち、車両10の後方に、乗員室と連なる荷室12が設けられており、この荷室12の後方開口は、バックドア14により開閉可能とされる。本トノボード装置20は、このような車両10の荷室12に組込まれる。
【0016】
トノボード装置20は、一対のレール部30と(図3参照)、一対のスライダ部60と、トノボード70と、トノボード駆動機構部40(図3参照)とを備えている。
【0017】
このトノボード装置20の基本的構成及び基本的動作について説明すると、一対のレール部30は、荷室12の両側壁部13に設けられており、上記一対のスライダ部60は一対のレール部30を移動可能に配設されている。なお、ここでは、レール部30は、側壁部13の一部であるピラー内に組込まれている。また、トノボード70は、折畳み可能に構成されており、その前部が荷室12前方部分に支持されると共に、その後部が上記一対のスライダ部60に取付けられている。また、トノボード駆動機構部40は、上記レール部30に組込まれ、バックドア14の開閉に連動して上記一対のスライダ部60を移動させるように構成されている。
【0018】
そして、バックドア14を完全に閉じた状態では、一対のスライダ部60が一対のレール部30の後端部に位置しており、トノボード70が面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている(図1〜図4参照)。この状態で、バックドア14が開動作すると、トノボード駆動機構部40の駆動により、一対のスライダ部60が一対のレール部30の前方に向けて移動する(図5参照)。そして、バックドア14が完全に開いた状態になると、一対のスライダ部60が一対のレール部30の前端部に位置し、トノボード70が折畳まれるようにして荷室12の上方を開放させた状態になる(図6参照)。また、この状態からバックドア14を閉じると、一対のスライダ部60が一対のレール部30の後方に移動し、バックドア14を完全に閉じると上記のようにトノボード70が荷室の上方を覆った状態に復帰する。
【0019】
以下、各部構成についてより具体的に説明する。
【0020】
<トノボード>
まず、トノボード70について説明する。図7はトノボード70を示す平面図であり、図8はトノボード70を示す側面図であり、図9はトノボード70の要部を示す断面図である。
【0021】
図1〜図9に示すように、トノボード70は、複数の板状部72a、72b、72c、72dと、少なくとも1つの屈曲部74とを有している。
【0022】
複数の板状部72a、72b、72c、72dは、荷室12の上方を覆うことが可能な平板状部分を、車両10前後方向において複数に分割したような板状部材に形成されている。つまり、各板状部72a、72b、72c、72dは、その幅寸法が荷室12の幅寸法と略同じ或はそれよりも小さく、かつ、それぞれの車両10前後方向における寸法は荷室12の車両10前後方向の長さ寸法よりも小さい横長な板状部材に形成されている。このような板状部72a、72b、72c、72dは、樹脂板や木板、金属板等で構成される。ここでは、荷室12の上方を覆うことが可能な平板状部分を4つに分割している。より具体的には、当該平板状部分を、車両10前後方向において2分割し、その後方部分をさらに2分割し、当該後方部分における前方部分をさらに2分割することで、合計4つに分割し、その前側から後方に向けた各部分を、それぞれ板状部72a、72b、72c、72dとしている。なお、最も後方の板状部72dは、荷室12の形状にあわせて、後方に向けて順次幅狭になる板形状に形成されている。
【0023】
なお、上記の分割態様は一例であり、当該例に限られない。各板状部72a、72b、72c、72dの車両前後方向における長さは上記例に限らず任意であるし、また、分割状とする数も、2つ又は3つに分割され、或は、5つ以上に分割された構成であってもよい。
【0024】
図10は屈曲部74を示す断面図であり、図11は屈曲部74を製造する一工程を示す説明図であり、図12は屈曲部74で屈曲させた状態を示す断面図であり、図13は屈曲部74で略180゜に屈曲させた状態を示す断面図である。なお、図9〜図13では、代表して板状部72a、72b及びその間の屈曲部74が図示されている。
【0025】
図7〜図13に示すように、屈曲部74は隣設された板状部72a、72b、72c、72d同士を屈曲可能に連結するものである。ここでは、屈曲部74は、板状部72a、72b間と、板状部72b、72c間と、板状部72c、72d間とに合計3つ設けられている。
【0026】
各屈曲部74は、隣設された板状部72a、72b、72c、72d間に介在する板状の屈曲心材部74aと、当該屈曲心材部74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間で屈曲容易な線状屈曲部73aとを有している。屈曲心材部74aのうち車両10幅方向における寸法は、板状部72a、72b、72c、72dのうち隣のものと略同じ長さ寸法であり、隣設された板状部72a、72b、72c、72d間に車両10幅方向略全体に亘ってかつ外方にはみ出ないように介在している。また、トノボード70が展開された状態を想定した場合、屈曲心材部74aのうち車両10前後方向における寸法M1(つまり、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を結ぶ方向における寸法)は、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を折重なる程度まで屈曲させることができ(つまり、略180゜で屈曲させることができ)、かつ、その折重ね状態で板状部72a、72b、72c、72dの両主面から突出しない程度に設定されている(図13参照)。
【0027】
このような屈曲心材部74aの前記寸法M1としては、板状部72a、72b、72c、72dのうち隣設する2つの端縁部の厚み寸法の和である寸法M2の1/2よりも大きく設定されることが好ましい。もっとも、屈曲心材部74aの前記寸法M1の下限は、当該屈曲心材部74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間の間隔寸法や屈曲心材部74aの厚み寸法等に応じて適宜設定される。
【0028】
また、屈曲心材部74aの前記寸法M1は、板状部72a、72b、72c、72dのうち隣設する2つの端縁部の厚み寸法の和である寸法M2よりも小さく設定されることが好ましい。
【0029】
なお、本実施形態では、隣合う板状部72a、72b、72c、72dのうち一方の端縁部を両面側から挟込むようにして、補強用ボード72fを設けているので、上記寸法M2はこのような補強用ボード72fの厚み寸法が付加された値として考慮される。
【0030】
上記のような屈曲部74は、より具体的には次のようにして構成されている。すなわち、図11に示すように、隣設する板状部72a、72b、72c、72d間に隙間をあけて屈曲心材部74aを配設する。そして、隣設する板状部72a、72b、72c、72d及び屈曲心材部74aを両面側から密着状に覆うようにして、一対のシート状部材73を配設する。シート状部材73は、板状部72a、72b、72c、72dや屈曲心材部74aに全体的に又は部分的に接着剤等で接着されていてもよいし、接着されていなくともよい。
【0031】
そして、この状態で、板状部72a、72b、72c、72dと屈曲心材部74aとの間で車両10幅方向に沿って線状に接合することで、線状屈曲部73aが構成される。
【0032】
シート状部材73は、布状部材であってもよいし樹脂フィルム等であってもよい。シート状部材73同士の接合は、縫合にて行われてもよい。また、シート状部材73が樹脂フィルム等である場合には、シート状部材73同士の接合は、溶接等で行われてもよい。シート状部材73同士を縫合する場合には、2本バリ92を有し、2本のラインに沿って同時縫合可能なミシン装置90を用いると(図11参照)、効率よく迅速に2本の線状屈曲部73aを製造することができる。
【0033】
これにより、各板状部72a、72b、72c、72d間に、各板状部72a、72b、72c、72d間のシート状部材73部分及び屈曲心材部74a、線状屈曲部73aとで構成される屈曲部74が構成される。
【0034】
このような屈曲部74を備えたトノボード70では、面一状の展開形態において、板状部72a、72b、72c、72d間に屈曲心材部74aが介在しているため、板状部72a、72b、72c、72d間に弛みが生じ難く、トノボード70をより面一状にすることができる(図10参照)。
【0035】
また、トノボード70を屈曲部74で屈曲させると、所定幅を有する屈曲心材部74aを挟む2箇所の線状屈曲部73aで屈曲させることができるので、板状部72a、72b、72c、72dをより大きな角度で屈曲させることができる。さらに、折曲げ箇所が所定位置の線状屈曲部73aで安定しているので、折曲げ態様が安定すると共に、折曲げた状態でも板状部72a、72b、72c、72d間の弛みを防止できる(図12及び図13参照)。
【0036】
また、トノボード70の前部、即ち、もっとも前方の板状部72aにトノボード支持軸部71が設けられている。より具体的には、板状部72aの下側面であって車両前後方向における前半部の両側部に一対の軸支部71aが設けられると共に、当該一対の軸支部71aに棒状の軸部71bが支持されている。この軸部71bの両端部は、板状部72aの両側より突出しており、荷室12の両側壁部13に設けられた軸受部13aに回転可能に軸支されるようになっている(図2参照)。そして、軸部71bの両端部を軸受部13aで支持することによって、トノボード70の前部が荷室12の車両10前方部分で回転可能に支持されている。
【0037】
また、荷室12の両側壁部13であって軸受部13aよりも後方部分には、トノボード70の両側部を受けるトノボード受部13bが設けられている(図2参照)。そして、トノボード70のうちトノボード支持軸部71よりも後方部分の両側部が、トノボード受部13bに載置状に支持されるようになっている。そして、トノボード70は、軸部71b周りに、その後方部分を上方に持上げるようにして回転可能とされている。
【0038】
また、トノボード70の後部、ここでは、最も後方の板状部72dの後端部には、その両側外方向に突出する連結支持部76が設けられている。ここでは、連結支持部76は、後述するシート巻取部79の両端部より外方に突出して設けられている。そして、この連結支持部76が、スライダ部60に連結取付されている。
【0039】
そして、一対のスライダ部60が一対のレール部30に沿って車両後方に移動することで、トノボード支持軸部71の後方に連結支持部76が位置する状態では、トノボード70は、略水平姿勢で面一状に展開する。より具体的には、トノボード70は、その両側部が上記トノボード受部13bで載置状に支持されつつ、バックシートの背もたれ部分の上端部から後方に向けて延びる姿勢で面一状に展開して、荷室12の上方を覆う(図1〜図4参照)。
【0040】
また、一対のスライダ部60が一対のレール部30に沿って車両前方に移動することで、トノボード支持軸部71の斜め上後方に連結支持部76が位置する状態では、トノボード70は、その後方部分をその前方部分上に折畳むようにして荷室12の上方を開放させる。より具体的には、最も前方の板状部72aに対してその後方の板状部72bを上方に持上げるように屈曲させると共に、その後方の板状部72c、72dを重ねるように折畳んで、前方の板状部72a、72b上に配設するようにして、荷室12の上方、特に、荷室12の上方後方部分を開放させるようにしている。
【0041】
ここで、トノボード70の後方部分を前方部分上に折畳むようにする場合には、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲部74で180゜で折曲げて完全に密着するように重ねる態様だけでなく、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲部74で180゜よりも小さい角度で折曲げたような場合をも含む。例えば、略Z字状に折曲げられたような形態をも含む。このような折曲げ形態は、板状部72a、72b、72c、72dの分割態様、形状、大きさ等によって適宜決定され得る。要するに、トノボード70の後方部分を前方部分上に折畳むようにする場合には、板状部72a、72b、72c、72dが屈曲部74で屈曲されていずれかの後方部分がそれよりも前方にある部分よりも上方に位置し、荷室12の上方が部分的(特に、後方部分)に開放されるようになる全ての折畳み態様が含まれる。
【0042】
また、上記トノボード70の後端部には、後部トノカバー部77が設けられている。この後部トノカバー部77は、シート部材78と、当該シート部材78を引出し及び巻取可能なシート巻取部79とを備えている。シート部材78の先端部は、バックドア14に着脱可能に取付けられる。そして、バックドア14が閉じられた状態では、上記トノボード70の後端部とバックドア14との間の空間を覆っている(図1〜図4参照)。この状態からバックドア14が開かれることで、シート部材78がシート巻取部79から引出され、トノボード70の後端部とバックドア14との間に引張られた状態で配設される(図6参照)。この状態からバックドア14を閉じると、シート部材78がシート巻取部79で巻取られ、トノボード70の後端部とバックドア14との間の空間を覆った状態に復帰する。
【0043】
この後部トノカバー部77は必ずしも必要ではなく省略されていてもよい。
【0044】
<レール部、トノボード駆動機構部及びスライダ部>
次に、レール部30、トノボード駆動機構部40及びスライダ部60について説明する。図14はレール部30、トノボード駆動機構部40及びスライダ部60を示す斜視図であり、図15は図14のXV−XV線断面図、図16は図14のXVI−XVI線断面図、図17は図14のXVII−XVII線断面図、図18はトノボード駆動機構部40及びスライダ部60部分を示す分解斜視図、図19はトノボード駆動機構部40部分を示す分解斜視図である。図20〜図22はレール部30に沿ってスライダ部60が移動する状態を示す説明図であり、図20はスライダ部60がレール部30の後端部に位置する状態、図21はスライダ部60がレール部30の中間部に位置する状態、図22はスライダ部60がレール部30の前端部に位置する状態をそれぞれ示している。
【0045】
図2及び図3、図14〜図17、図20〜図22に示すように、一対のレール部30は、両端が開口すると共に一側壁部に長尺状の開口32aが形成された略角筒状のレール本体部32を、それぞれ有している。そして、上記スライダ部60のスライダ移動体62が当該レール本体部32内をその長手方向に沿って往復移動可能に設けられている。
【0046】
また、レール本体部32には、適宜ブラケット34がネジ止等で取付けられており、当該ブラケット34を介して、本レール部30が荷室12の側壁部13に取付けられる。
【0047】
また、レール本体部32の両端部には、後述するプーリー体48を収納するプーリー収容部38が取付けられており、当該プーリー体48はプーリー収容部38内に収容支持されることによって、レール本体部32の両端部で回転自在に支持される。
【0048】
このレール部30は、車両10後方から車両前方に向けて上向きに傾斜する姿勢で、側壁部13に取付けられている。より具体的には、レール部30のレール本体部32の一端部を、上記のように面一状に展開させたトノボード70の後端部の位置に配設すると共に、レール本体部32の他端部を、レール本体部32の一端部から車両10の斜め上前方に配設した斜め姿勢で、レール部30が側壁部13に取付けられている(図3参照)。
【0049】
なお、レール部30は、必ずしも上記斜め姿勢で取付けられている必要はなく、例えば、車両10の前後方向に沿って設けられていてもよい。つまり、レール部30に沿ってスライダ部60が移動することで、トノボード70が展開及び折畳まれればよいのであるから、レール部30は、車両10前後方向成分を有する姿勢で荷室12の両側壁部13に配設されていればよい。
【0050】
また、一対のスライダ部60は、一対のレール部30を移動可能に構成されている。より具体的には、スライダ部60は、上記レール本体部32内を移動可能なスライダ移動体62と、上記連結支持部76の端部を支持可能な可動支持部68とを有している。
【0051】
スライダ移動体62は、レール本体部32内を摺接移動するスライダ本体部63と、スライダ本体部63内を移動可能な内部移動体64と、内部移動体64を付勢する付勢部材としてのコイルバネ65とを有している。
【0052】
スライダ本体部63は、中間支持部63aを介して間隔をあけて支持された一対の支持端部63bと、支持端部63b間に設けられた棒状の内部スライダ支持部63cとを有している(図18、図20〜図22参照)。このスライダ本体部63は、レール本体部32内で両端部のプーリー収容部38間で移動自在とされている。そして、内部スライダ支持部63cが内部移動体64に形成された孔部に挿通されることで、内部移動体64が支持端部63b間で往復移動可能に支持されている。また、内部スライダ支持部63cがコイルバネ65に挿通されて、当該コイルバネ65が車両10前方側の支持端部63bと内部移動体64との間に介在している。このコイルバネ65は、内部移動体64を車両10後方に付勢している。これにより、内部移動体64をレール部30の後方側の一定位置に配設した状態で、スライダ本体部63をレール部30のさらに後方側に移動させることができるようになっている(図20参照)。
【0053】
可動支持部68は、内部移動体64と一体化されており、当該内部移動体64と共にレール部30の長手方向に沿って移動可能に構成されている。また、可動支持部68は、上記開口32a及びピラーに形成された開口を通じて荷室12内に突出すると共に、当該可動支持部68には、連結支持部76の端部を嵌め込むようにして支持可能な凹部68aが形成されている。そして、荷室12内で、当該連結支持部76が凹部68aに回転可能に支持されている。
【0054】
この可動支持部68及び内部移動体64は、レール本体部32のうち車両10後方側に設けられた規制片34aによって、スライダ本体部63がレール本体部32のうち車両10の最後方位置に達するよりも手前で停止するように位置規制されている。つまり、スライダ部60がレール部30に沿って車両10方向に移動する際、可動支持部68及び内部移動体64が規制片34aによって位置規制された後、スライダ本体部63がさらに車両10後方に移動できるようになっている。
【0055】
トノボード駆動機構部40は、伝達部42と、蓄力付勢部材としての渦巻ばね50とを有している。
【0056】
伝達部42は、バックドア14の開動作を受けてスライダ部60を車両前方に移動可能に構成されている。より具体的には、伝達部42は、第1巻胴部43と第2巻胴部44と第2ワイヤ45とを有している。
【0057】
第1巻胴部43及び第2巻胴部44とは、同軸上で一体回転可能に連結されており、レール部30の長手方向中間部で、巻胴部収容ハウジング46を介して回転可能に支持されている。
【0058】
第1巻胴部43は、略円盤状に形成されており、第1ワイヤ54を巻回可能に構成されている。ここで、第1ワイヤ54は、巻回可能な線状部材であり、その一端部はバックドア14に連結されている。そして、バックドア14を開くと当該第1ワイヤ54の一端部が荷室12の開口外方に向けて引張られ、バックドア14を閉じると第1ワイヤ54に余剰長が生じるようになっている。また、第1ワイヤ54の他端部は第1巻胴部43に連結されており、バックドア14を閉じることによって生じる第1ワイヤ54の余剰長部分が第1巻胴部43に巻回可能に構成されている。なお、ここでは、第1ワイヤ54は、荷室12の側壁部13の一部であるピラー内を通って配設されている。
【0059】
第2巻胴部44は、第1巻胴部43と連動して回転可能に構成されている。ここでは、第1巻胴部43は、第2巻胴部44と同軸上に一体連結されることで、当該第2巻胴部44と一体回転可能に構成されているが、その他、別々に回転可能に支持され、ギヤや無端環状ベルト等を介して連動回転可能とされた構成であってもよい。
【0060】
第2ワイヤ45は、ここでは2本用いられており、それぞれレール部30の両端側に回転自在に支持されたプーリー体48に巻掛けられている。また、それぞれの第2ワイヤ45の一端部は、レール本体部32の側方を通ってその長手方向中間部で上記第2巻胴部44に巻付けられると共に、それぞれの他端部がレール本体部32内を通って上記スライダ部60の一対の支持端部63bにそれぞれ連結固定されている。そして、上記第2巻胴部44の回転に連動して、第2ワイヤ45がレール部30周りを回転するように動き、これに伴ってスライダ部60を引張るようにしてレール部30に沿って移動させる。なお、このような構成は、第2ワイヤ45として、1本のワイヤを用いることによっても実現できる。
【0061】
また、渦巻ばね50は、バックドア14の開動作を受けて第1ワイヤ54が第1巻胴部43から引出されて当該第1巻胴部43が回転することで、第1巻胴部43を、第1ワイヤ54を巻取る方向及びスライダ部60をレール部30の後方に付勢する方向への付勢力を蓄えるように構成されている。ここでは、渦巻ばね50の内周端部が第1巻胴部43の中心軸部に固定されると共に、渦巻ばね50の外周端部が巻胴部収容ハウジング46に固定されている。そして、第1ワイヤ54が引出されるように第1巻胴部43が回転すると、これに連動してスライダ部60を車両10前方に移動させつつ、渦巻ばね50が縮径するように弾性変形し、反対方向への回転力、即ち、スライダ部60を車両後方に移動させる付勢力を蓄える。そして、バックドア14が閉じられると、当該蓄えられた力を開放して、第1巻胴部43を反対方向に回転させて第1ワイヤ54を巻取ると共に、これに連動して第2巻胴部44を同方向に回転させてスライダ部60を車両10後方に移動させる。
【0062】
なお、スライダ部60がレール部30に沿って後方に移動する際には、当該スライダ部60には、スライダ部60自体の荷重やトノボード70の荷重等も作用する。このため、渦巻ばね50による付勢力は、それらの荷重をも考慮して、トノボード70を展開できる程度の付勢力に設定される。それらの荷重を考慮すると、渦巻ばね50に要求される付勢力はそれほど大きくする必要はない。
【0063】
なお、上記渦巻ばね50は、バックドア14が閉じられた状態、即ち、スライダ部60が車両後方に移動してトノボード70が面一状に展開した状態でも、縮径するように弾性変形しており、第1巻胴部43を、第1ワイヤ54を巻取る方向に付勢すると共に、第2巻胴部44を、スライダ部60をレール部30の後方に向けて移動させる方向に付勢している。
【0064】
なお、上記第1ワイヤ54の一端部は、ワイヤ固定部55を介してバックドア14に連結固定されている。
【0065】
ワイヤ固定部55は、細長形状のハウジング55aと、ワイヤ端固定具55cと、付勢部材としてのコイルバネ55eとを備えており、バックドア14に取付固定されたドア側固定具55bを介してバックドア14に連結固定される(図19参照)。
【0066】
ワイヤ端固定具55cは、棒状部分の一端部に棒状部分よりも太径の頭部が設けられた構成とされ、その他端部に第1ワイヤ54の一端部が連結固定されている。また、ワイヤ端固定具55cの棒状部分にコイルバネ55eが外嵌めされている。また、ハウジング55aは、中空筺状に形成され、その内部に、ワイヤ端固定具55cが移動可能、かつ、コイルバネ55eが伸縮可能に配設されている。そして、第1ワイヤ54を引張ると、コイルバネ55eが縮んで、その縮んだ分だけ第1ワイヤ54がワイヤ固定部55から引出される。また、第1ワイヤ54を引張る力を解除すると、コイルバネ55eが伸びて、その伸びた分だけ第1ワイヤ54がワイヤ固定部55内に引戻されるようになっている。また、上記ドア側固定具55bは、バックドア14にネジ止等で取付固定可能に構成されており、本ワイヤ固定部55は、ハウジング55aの一端部をドア側固定具55bに係止することで、当該ドア側固定具55bを介してバックドア14に連結されている。
【0067】
そして、バックドア14を開ける際に、スライダ部60がレール部30の前端部に停止し、第1巻胴部43からの第1ワイヤ54の引出しが停止された状態で、ワイヤ固定部55から若干量の第1ワイヤ54の引出しを可能にしている。
【0068】
ここで、バックドア14の設計上の開閉範囲の上限及び下限において、コイルバネ55eを適宜長収縮させた状態にすることで、ワイヤ端固定具55cがハウジング55a内における移動範囲の略中央に位置するように設定しておくとよい。これにより、バックドア14の実際の開閉範囲が、設計上の開閉範囲よりも大きい場合(例えば、+5゜大きい場合等)には、コイルバネ55eを収縮させて第1ワイヤ54を引出して不足長分を補うことができる。一方、バックドア14の実際の開閉範囲が、設計上の開閉範囲よりも小さい場合(例えば、−5゜小さい場合等)には、コイルバネ55eが伸びることで、第1ワイヤ54を引込んで弛みとなる余剰長分を解消することができる。この場合に、バックドア14を閉じた場合に生じた第1ワイヤ54の余剰長は、本ワイヤ固定部55にて優先的に引戻すようにしてもよいし、第1巻胴部43にて優先的に巻取るようにしてもよい。どちらを優先的に機能させるかは、コイルバネ55eや渦巻ばね50の付勢力によって適宜設定することができる。
【0069】
<全体動作>
以上のように構成されたトノボード装置20の全体動作について説明する。
【0070】
図23はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに30゜回転して開いた状態を示す斜視図であり、図24は同状態を示す側面図であり、図25はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに60゜回転して開いた状態を示す斜視図であり、図26は同状態を示す側面図であり、図27はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに90゜回転して完全に開いた状態を示す斜視図であり、図28は同状態を示す側面図である。
【0071】
まず、バックドア14が閉じた状態では、図1〜図4、図20に示すように、スライダ部60は、レール部30の後端位置にあり、トノボード70は面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている。また、トノカバー部77もトノボード部70の後方に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている。また、第1ワイヤ54は、第1巻胴部43に巻回された状態となっている。さらに、この初期状態でも、渦巻ばね50の初期付勢力によって、スライダ部60のスライダ本体部63は、コイルバネ65の付勢力に抗してレール部30の後方側に付勢されており、内部移動体64は、一対の支持端部63bの略中間部に位置している(図20参照)。この初期状態では、スライダ部60は後方に付勢されている。この付勢力により、スライダ部60及びトノボード70のがたつきが抑制されている。
【0072】
この状態で、利用者の操作等によってバックドア14が開動作すると、図23及び図24に示すように、第1ワイヤ54が第1巻胴部43から引出され、当該引出しに伴い第1巻胴部43及び第2巻胴部44が回転する。これにより、第2ワイヤ45が一対のプーリー体48周りに回転し、スライダ部60がレール部30に沿って車両10前方側に移動する。これにより、スライダ部60及び当該スライダ部60に連結支持されたトノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79が上記初期位置より上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード70は、後方の板状部72b、72c、72d間の屈曲部74で屈曲される。この際、トノボード70の後端部は、上方に持上げられつつ前方に移動するので、比較的小さい力でかつ円滑に、トノボード70の後方部分をその前方部分上に配設するように、当該トノボード70を屈曲させることができる。また、トノカバー部77のシート部材78における第2カバー部78bがシート巻取部79から徐々に引き出される。
【0073】
さらに、大きくバックドア14が開動作すると、図25及び図26に示すように、第1ワイヤ54がさらに大きく引出され、スライダ部60がレール部30に沿ってさらに車両10前方側に移動する。これにより、トノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79がさらに上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード70は、後方の板状部72b、72c、72d間の屈曲部74でさらに大きく屈曲され、略Z字状に折畳まれるようになる。また、トノカバー部77の第2カバー部78bはシート巻取部79からさらに引き出される。
【0074】
なお、図23〜図26に示すようにスライダ部60がレール部30の長手方向中間部に移動した状態では、図21に示すように、規制片34aによる可動支持部68及び内部移動体64の位置規制が解除されるので、内部移動体64は、コイルバネ65の付勢力によって、後方の支持端部63b側に付勢された状態となる。
【0075】
そして、バックドア14が完全に開くと、図27及び図28に示すように、第1ワイヤ54がさらに大きく引出され、スライダ部60がレール部30に沿って移動し、レール部30の車両10前端位置に移動する。これにより、トノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79がさらに上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード70は、上記状態から、前方の板状部72aとそれよりも後方の板状部72b間の屈曲部74でも屈曲され、トノボード70は、その後方部分をその前方部分上に折畳むようにして荷室12の上方、特に、上方後部を開放させる。また、トノカバー部77はシート巻取部79からより一層引き出される。
【0076】
これにより、利用者は、荷室12の上方後方から荷室12内にアクセスして、当該荷室12内に荷物を出し入れできるようになる。
【0077】
なお、この状態で、トノボード70前部のトノボード支持軸部71周りに回転させるようにして、トノボード70の後方部分を持上げるようにすることができる。この際、トノボード70の後端部とスライダ部60との連結を解除しておくとよい。これにより、荷室12の上方をより大きく開口させることができ、当該荷室12に対してより円滑に荷物の出し入れを行えるようになっている。
【0078】
また、この状態では、トノボード70の後端部は、一対のレール部30の上端部まで上がるだけである。トノボード70は複数箇所で屈曲されているから、その最上端部は、従来のようにトノボードを二つ折りした場合よりも十分に低い。従って、トノボード70の最上端部である後端部と荷室12の天井面との間に十分な空間を設けることができる。従って、上記シート部材78の先端部をバックドア14から取り外せば、トノボード70と荷室12の天井面との間の空間を利用して、リヤシートと荷室12の開口との間で荷物の受渡しを容易に行うことができる。
【0079】
また、製造上或は組付上の誤差等が原因で、上記のようにバックドア14を完全に開く手前で、スライダ部60がレール部30の最前方位置に達して停止した場合には、上記ワイヤ固定部55から若干第1ワイヤ54が引出される。これにより、スライダ部60がレール部30の最前方位置に位置した状態からも、バックドア14をさらに開いて完全に開いた状態にすることができる。つまり、スライダ部60がレール部30の最前方位置に停止した状態における第1ワイヤ54の長さ寸法と、バックドア14が完全に開いた状態で必要とされる第1ワイヤ54の長さ寸法とが一致していない場合に、その誤差を吸収することができるようになっている。
【0080】
そして、上記状態から、バックドア14を閉じると、渦巻ばね50に蓄力された力が解放され、渦巻ばね50の付勢力により第1巻胴部43及び第2巻胴部44が回転する。そして、第1巻胴部43の回転により第1ワイヤ54が巻回される。また、第2巻胴部44の回転により、第2ワイヤ45が一対のプーリー体48周りを周回状に移動し、スライダ部60がレール部30に沿って車両10後方側に移動する。これにより、スライダ部60及び当該スライダ部60に連結支持されたトノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79が下降しつつ後方に移動する。そして、スライダ部60がレール部30の後端位置に達すると、トノボード70は面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態に復帰する。なお、この状態では、渦巻ばね50の初期付勢力によって、スライダ部60のスライダ本体部63は、コイルバネ65の付勢力に抗してレール部30の後方側に付勢された状態に戻る。つまり、スライダ部60のうち可動支持部68及び内部移動体64がレール部30の後端部位置に停止した状態で、スライダ本体部63を渦巻ばね50の付勢力によってコイルバネ55を収縮させながらさらに車両10後方に移動させ、第1巻胴部43及び第2巻胴部44を回転させることができる。これにより、バックドア14を閉じてスライダ部60の可動支持部68及び内部移動体64が停止した状態で、さらに第1ワイヤ54を巻取ることができる。これにより、可動支持部68及び内部移動体64が後方位置に停止した状態における第1ワイヤ54の長さ寸法と、バックドア14が完全に閉じた状態で適切とされる第1ワイヤ54の長さ寸法とが一致していない場合に、その誤差を吸収できるようになっている。
【0081】
以上のように構成されたトノボード70によると、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を折曲げる際に、屈曲心材部74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間の2つの線状屈曲部73aで折曲げることができるので、各板状部材72a、72b、72c、72dをより大きな角度で折畳むことができる。例えば、各線状屈曲部73aで略90゜で折畳むことで、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を略180゜で折畳むことができる。また、その際の折曲げ位置も、線状屈曲部73aで安定し一定態様に折畳むことができる。また、隣設する板状部72a、72b、72c、72d間に板状の屈曲心材部74aが介在しているため、展開形態及び屈曲形態においても、板状部72a、72b、72c、72d間で弛みが生じ難く見栄えもよい。
【0082】
また、上記のような屈曲部73は、板状部72a、72b、72c、72d間に屈曲心材部74aを配設した状態で、一対のシート状部材73同士を接合することで容易に製造することができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、バックドア14の開閉に連動してトノボード70が展開及び折畳まれる構成で説明したが、必ずしもその必要はない。例えば、手動でトノボード70が展開及び折畳まれる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
12 荷室
70 トノボード
72a、72b、72c、72d 板状部
73 シート状部材
73 屈曲部
73a 線状屈曲部
74 屈曲部
74a 屈曲心材部
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の荷室上方を覆った状態から折畳むようにして荷室上方を開放させることができるトノボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の荷室上方を覆い或は開放させることができるトノボードとして、複数の板部材を屈曲可能に連結し、各板状部材を面一状に展開させることで荷室を覆うと共に、各板状部材を折畳むようにすることで荷室上方を開放させるようにしたものがある。
【0003】
このようなトノボードは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−233135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各板状部材を密接状に連結すると、各板状部材を大きな角度で屈曲させることができず、荷室上方を大きく開放させることが困難となる。
【0006】
仮に、各板状部材間に十分な間隔を設けて、これらを柔軟な部材で連結すると、各板状部材を大きな角度で屈曲させることができ、荷室上方を大きく開放させることができる。しかしながらこの場合、板状部材間で前記柔軟な部材の弛みが生じ易く見栄えがよくない。また、板状部材間で屈曲位置が安定し難く、従って、一定態様に折畳みにくいという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、各板状部材をより大きな角度で折畳むことができると共に、板状部材間での弛みを防止し、かつ、なるべく一定態様に折畳めるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るトノボードは、車両荷室に設けられるトノボードであって、複数の板状部と、隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、を備え、前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、前記屈曲部は、隣設する板状部間に隙間をあけて配設された前記屈曲心材部と、隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように設けられた一対のシート状部材を、隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して形成された前記線状屈曲部とを有する。
【0009】
第2の態様に係るトノボードは、第1の態様に係るトノボードであって、前記板状部同士を結ぶ方向における前記屈曲心材部の寸法は、隣設する前記板状部同士を折重なるまで屈曲させることができ、かつ、その折重ね状態で前記板状部の主面から突出しない程度に設定されているものである。
【0010】
第3の態様に係るトノボードの製造方法は、車両荷室に設けられるトノボードの製造方法であって、前記トノボードは、複数の板状部と、隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、を備え、前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、隣設する前記板状部間に隙間をあけて前記屈曲心材部を配設し、隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように一対のシート状部材を設け、隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して前記線状屈曲部を形成する。
【発明の効果】
【0011】
この第1及び3の態様によると、隣設する板状部同士を折曲げる際、屈曲心材部と板状部との間の線状屈曲部で折曲げることができるので、各板状部材をより大きな角度で折畳むことができると共に、折曲げ位置も安定し一定態様に折りたたむことができる。また、屈曲部は、板状の屈曲心材部を有しているため、板状部材間で弛みを防止できる。また、板状部間に屈曲心材部を配設し、一対のシート状部材を接合することで容易に屈曲部を形成することができる。
【0012】
また、第2の態様によると、板状部同士を折重なるまで屈曲させることができ、かつ、その状態で屈曲心材部が突出しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両に設けられたトノボード装置を示す斜視説明図である。
【図2】同上のトノボード装置を示す側面説明図である。
【図3】同上のトノボード装置の内部構成を示す側面説明図である。
【図4】バックドアを閉じた状態を示す説明図である。
【図5】バックドアを途中まで開いた状態を示す説明図である。
【図6】バックドアを完全に開いた状態を示す説明図である。
【図7】トノボードを示す平面図である。
【図8】トノボードを示す側面図である。
【図9】トノボードの要部を示す断面図である。
【図10】屈曲部を示す断面図である。
【図11】屈曲部を製造する一工程を示す説明図である。
【図12】屈曲部で屈曲させた状態を示す断面図である。
【図13】屈曲部で略180゜に屈曲させた状態を示す断面図である。
【図14】レール部、トノボード駆動機構部及びスライダ部を示す斜視図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【図16】図14のXVI−XVI線断面図である。
【図17】図14のXVII−XVII線断面図である。
【図18】トノボード駆動機構部及びスライダ部を示す分解斜視図である。
【図19】トノボード駆動機構部を示す分解斜視図である。
【図20】スライダ部がレール部の後端部に位置する状態を示す説明図である。
【図21】スライダ部がレール部の中間部に位置する状態を示す説明図である。
【図22】スライダ部がレール部の前端部に位置する状態を示す説明図である。
【図23】バックドアが閉じた位置から30゜回転して開いた状態を示す斜視図である。
【図24】同上の状態を示す側面図である。
【図25】バックドアが閉じた位置から60゜回転して開いた状態を示す斜視図である。
【図26】同上の状態を示す側面図である。
【図27】バックドアが完全に開いた状態を示す斜視図である。
【図28】同上の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係るトノボードを適用したトノボード装置20について説明する。図1は車両10に設けられたトノボード装置20を示す斜視説明図であり、図2は同トノボード装置20を示す側面説明図であり、図3は同トノボード装置20の内部構成を示す側面説明図である。また、図4〜図6はバックドア14を閉じた状態から開いた状態にする際の変化を示す説明図であり、図4はバックドア14を完全に閉じた状態、図5はバックドア14を途中まで開いた状態、図6がバックドア14を完全に開いた状態をそれぞれ示している。
【0015】
このトノボード装置20は、バックドア14で開閉される荷室12を有する車両10に設けられる。すなわち、車両10の後方に、乗員室と連なる荷室12が設けられており、この荷室12の後方開口は、バックドア14により開閉可能とされる。本トノボード装置20は、このような車両10の荷室12に組込まれる。
【0016】
トノボード装置20は、一対のレール部30と(図3参照)、一対のスライダ部60と、トノボード70と、トノボード駆動機構部40(図3参照)とを備えている。
【0017】
このトノボード装置20の基本的構成及び基本的動作について説明すると、一対のレール部30は、荷室12の両側壁部13に設けられており、上記一対のスライダ部60は一対のレール部30を移動可能に配設されている。なお、ここでは、レール部30は、側壁部13の一部であるピラー内に組込まれている。また、トノボード70は、折畳み可能に構成されており、その前部が荷室12前方部分に支持されると共に、その後部が上記一対のスライダ部60に取付けられている。また、トノボード駆動機構部40は、上記レール部30に組込まれ、バックドア14の開閉に連動して上記一対のスライダ部60を移動させるように構成されている。
【0018】
そして、バックドア14を完全に閉じた状態では、一対のスライダ部60が一対のレール部30の後端部に位置しており、トノボード70が面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている(図1〜図4参照)。この状態で、バックドア14が開動作すると、トノボード駆動機構部40の駆動により、一対のスライダ部60が一対のレール部30の前方に向けて移動する(図5参照)。そして、バックドア14が完全に開いた状態になると、一対のスライダ部60が一対のレール部30の前端部に位置し、トノボード70が折畳まれるようにして荷室12の上方を開放させた状態になる(図6参照)。また、この状態からバックドア14を閉じると、一対のスライダ部60が一対のレール部30の後方に移動し、バックドア14を完全に閉じると上記のようにトノボード70が荷室の上方を覆った状態に復帰する。
【0019】
以下、各部構成についてより具体的に説明する。
【0020】
<トノボード>
まず、トノボード70について説明する。図7はトノボード70を示す平面図であり、図8はトノボード70を示す側面図であり、図9はトノボード70の要部を示す断面図である。
【0021】
図1〜図9に示すように、トノボード70は、複数の板状部72a、72b、72c、72dと、少なくとも1つの屈曲部74とを有している。
【0022】
複数の板状部72a、72b、72c、72dは、荷室12の上方を覆うことが可能な平板状部分を、車両10前後方向において複数に分割したような板状部材に形成されている。つまり、各板状部72a、72b、72c、72dは、その幅寸法が荷室12の幅寸法と略同じ或はそれよりも小さく、かつ、それぞれの車両10前後方向における寸法は荷室12の車両10前後方向の長さ寸法よりも小さい横長な板状部材に形成されている。このような板状部72a、72b、72c、72dは、樹脂板や木板、金属板等で構成される。ここでは、荷室12の上方を覆うことが可能な平板状部分を4つに分割している。より具体的には、当該平板状部分を、車両10前後方向において2分割し、その後方部分をさらに2分割し、当該後方部分における前方部分をさらに2分割することで、合計4つに分割し、その前側から後方に向けた各部分を、それぞれ板状部72a、72b、72c、72dとしている。なお、最も後方の板状部72dは、荷室12の形状にあわせて、後方に向けて順次幅狭になる板形状に形成されている。
【0023】
なお、上記の分割態様は一例であり、当該例に限られない。各板状部72a、72b、72c、72dの車両前後方向における長さは上記例に限らず任意であるし、また、分割状とする数も、2つ又は3つに分割され、或は、5つ以上に分割された構成であってもよい。
【0024】
図10は屈曲部74を示す断面図であり、図11は屈曲部74を製造する一工程を示す説明図であり、図12は屈曲部74で屈曲させた状態を示す断面図であり、図13は屈曲部74で略180゜に屈曲させた状態を示す断面図である。なお、図9〜図13では、代表して板状部72a、72b及びその間の屈曲部74が図示されている。
【0025】
図7〜図13に示すように、屈曲部74は隣設された板状部72a、72b、72c、72d同士を屈曲可能に連結するものである。ここでは、屈曲部74は、板状部72a、72b間と、板状部72b、72c間と、板状部72c、72d間とに合計3つ設けられている。
【0026】
各屈曲部74は、隣設された板状部72a、72b、72c、72d間に介在する板状の屈曲心材部74aと、当該屈曲心材部74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間で屈曲容易な線状屈曲部73aとを有している。屈曲心材部74aのうち車両10幅方向における寸法は、板状部72a、72b、72c、72dのうち隣のものと略同じ長さ寸法であり、隣設された板状部72a、72b、72c、72d間に車両10幅方向略全体に亘ってかつ外方にはみ出ないように介在している。また、トノボード70が展開された状態を想定した場合、屈曲心材部74aのうち車両10前後方向における寸法M1(つまり、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を結ぶ方向における寸法)は、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を折重なる程度まで屈曲させることができ(つまり、略180゜で屈曲させることができ)、かつ、その折重ね状態で板状部72a、72b、72c、72dの両主面から突出しない程度に設定されている(図13参照)。
【0027】
このような屈曲心材部74aの前記寸法M1としては、板状部72a、72b、72c、72dのうち隣設する2つの端縁部の厚み寸法の和である寸法M2の1/2よりも大きく設定されることが好ましい。もっとも、屈曲心材部74aの前記寸法M1の下限は、当該屈曲心材部74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間の間隔寸法や屈曲心材部74aの厚み寸法等に応じて適宜設定される。
【0028】
また、屈曲心材部74aの前記寸法M1は、板状部72a、72b、72c、72dのうち隣設する2つの端縁部の厚み寸法の和である寸法M2よりも小さく設定されることが好ましい。
【0029】
なお、本実施形態では、隣合う板状部72a、72b、72c、72dのうち一方の端縁部を両面側から挟込むようにして、補強用ボード72fを設けているので、上記寸法M2はこのような補強用ボード72fの厚み寸法が付加された値として考慮される。
【0030】
上記のような屈曲部74は、より具体的には次のようにして構成されている。すなわち、図11に示すように、隣設する板状部72a、72b、72c、72d間に隙間をあけて屈曲心材部74aを配設する。そして、隣設する板状部72a、72b、72c、72d及び屈曲心材部74aを両面側から密着状に覆うようにして、一対のシート状部材73を配設する。シート状部材73は、板状部72a、72b、72c、72dや屈曲心材部74aに全体的に又は部分的に接着剤等で接着されていてもよいし、接着されていなくともよい。
【0031】
そして、この状態で、板状部72a、72b、72c、72dと屈曲心材部74aとの間で車両10幅方向に沿って線状に接合することで、線状屈曲部73aが構成される。
【0032】
シート状部材73は、布状部材であってもよいし樹脂フィルム等であってもよい。シート状部材73同士の接合は、縫合にて行われてもよい。また、シート状部材73が樹脂フィルム等である場合には、シート状部材73同士の接合は、溶接等で行われてもよい。シート状部材73同士を縫合する場合には、2本バリ92を有し、2本のラインに沿って同時縫合可能なミシン装置90を用いると(図11参照)、効率よく迅速に2本の線状屈曲部73aを製造することができる。
【0033】
これにより、各板状部72a、72b、72c、72d間に、各板状部72a、72b、72c、72d間のシート状部材73部分及び屈曲心材部74a、線状屈曲部73aとで構成される屈曲部74が構成される。
【0034】
このような屈曲部74を備えたトノボード70では、面一状の展開形態において、板状部72a、72b、72c、72d間に屈曲心材部74aが介在しているため、板状部72a、72b、72c、72d間に弛みが生じ難く、トノボード70をより面一状にすることができる(図10参照)。
【0035】
また、トノボード70を屈曲部74で屈曲させると、所定幅を有する屈曲心材部74aを挟む2箇所の線状屈曲部73aで屈曲させることができるので、板状部72a、72b、72c、72dをより大きな角度で屈曲させることができる。さらに、折曲げ箇所が所定位置の線状屈曲部73aで安定しているので、折曲げ態様が安定すると共に、折曲げた状態でも板状部72a、72b、72c、72d間の弛みを防止できる(図12及び図13参照)。
【0036】
また、トノボード70の前部、即ち、もっとも前方の板状部72aにトノボード支持軸部71が設けられている。より具体的には、板状部72aの下側面であって車両前後方向における前半部の両側部に一対の軸支部71aが設けられると共に、当該一対の軸支部71aに棒状の軸部71bが支持されている。この軸部71bの両端部は、板状部72aの両側より突出しており、荷室12の両側壁部13に設けられた軸受部13aに回転可能に軸支されるようになっている(図2参照)。そして、軸部71bの両端部を軸受部13aで支持することによって、トノボード70の前部が荷室12の車両10前方部分で回転可能に支持されている。
【0037】
また、荷室12の両側壁部13であって軸受部13aよりも後方部分には、トノボード70の両側部を受けるトノボード受部13bが設けられている(図2参照)。そして、トノボード70のうちトノボード支持軸部71よりも後方部分の両側部が、トノボード受部13bに載置状に支持されるようになっている。そして、トノボード70は、軸部71b周りに、その後方部分を上方に持上げるようにして回転可能とされている。
【0038】
また、トノボード70の後部、ここでは、最も後方の板状部72dの後端部には、その両側外方向に突出する連結支持部76が設けられている。ここでは、連結支持部76は、後述するシート巻取部79の両端部より外方に突出して設けられている。そして、この連結支持部76が、スライダ部60に連結取付されている。
【0039】
そして、一対のスライダ部60が一対のレール部30に沿って車両後方に移動することで、トノボード支持軸部71の後方に連結支持部76が位置する状態では、トノボード70は、略水平姿勢で面一状に展開する。より具体的には、トノボード70は、その両側部が上記トノボード受部13bで載置状に支持されつつ、バックシートの背もたれ部分の上端部から後方に向けて延びる姿勢で面一状に展開して、荷室12の上方を覆う(図1〜図4参照)。
【0040】
また、一対のスライダ部60が一対のレール部30に沿って車両前方に移動することで、トノボード支持軸部71の斜め上後方に連結支持部76が位置する状態では、トノボード70は、その後方部分をその前方部分上に折畳むようにして荷室12の上方を開放させる。より具体的には、最も前方の板状部72aに対してその後方の板状部72bを上方に持上げるように屈曲させると共に、その後方の板状部72c、72dを重ねるように折畳んで、前方の板状部72a、72b上に配設するようにして、荷室12の上方、特に、荷室12の上方後方部分を開放させるようにしている。
【0041】
ここで、トノボード70の後方部分を前方部分上に折畳むようにする場合には、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲部74で180゜で折曲げて完全に密着するように重ねる態様だけでなく、板状部72a、72b、72c、72dを屈曲部74で180゜よりも小さい角度で折曲げたような場合をも含む。例えば、略Z字状に折曲げられたような形態をも含む。このような折曲げ形態は、板状部72a、72b、72c、72dの分割態様、形状、大きさ等によって適宜決定され得る。要するに、トノボード70の後方部分を前方部分上に折畳むようにする場合には、板状部72a、72b、72c、72dが屈曲部74で屈曲されていずれかの後方部分がそれよりも前方にある部分よりも上方に位置し、荷室12の上方が部分的(特に、後方部分)に開放されるようになる全ての折畳み態様が含まれる。
【0042】
また、上記トノボード70の後端部には、後部トノカバー部77が設けられている。この後部トノカバー部77は、シート部材78と、当該シート部材78を引出し及び巻取可能なシート巻取部79とを備えている。シート部材78の先端部は、バックドア14に着脱可能に取付けられる。そして、バックドア14が閉じられた状態では、上記トノボード70の後端部とバックドア14との間の空間を覆っている(図1〜図4参照)。この状態からバックドア14が開かれることで、シート部材78がシート巻取部79から引出され、トノボード70の後端部とバックドア14との間に引張られた状態で配設される(図6参照)。この状態からバックドア14を閉じると、シート部材78がシート巻取部79で巻取られ、トノボード70の後端部とバックドア14との間の空間を覆った状態に復帰する。
【0043】
この後部トノカバー部77は必ずしも必要ではなく省略されていてもよい。
【0044】
<レール部、トノボード駆動機構部及びスライダ部>
次に、レール部30、トノボード駆動機構部40及びスライダ部60について説明する。図14はレール部30、トノボード駆動機構部40及びスライダ部60を示す斜視図であり、図15は図14のXV−XV線断面図、図16は図14のXVI−XVI線断面図、図17は図14のXVII−XVII線断面図、図18はトノボード駆動機構部40及びスライダ部60部分を示す分解斜視図、図19はトノボード駆動機構部40部分を示す分解斜視図である。図20〜図22はレール部30に沿ってスライダ部60が移動する状態を示す説明図であり、図20はスライダ部60がレール部30の後端部に位置する状態、図21はスライダ部60がレール部30の中間部に位置する状態、図22はスライダ部60がレール部30の前端部に位置する状態をそれぞれ示している。
【0045】
図2及び図3、図14〜図17、図20〜図22に示すように、一対のレール部30は、両端が開口すると共に一側壁部に長尺状の開口32aが形成された略角筒状のレール本体部32を、それぞれ有している。そして、上記スライダ部60のスライダ移動体62が当該レール本体部32内をその長手方向に沿って往復移動可能に設けられている。
【0046】
また、レール本体部32には、適宜ブラケット34がネジ止等で取付けられており、当該ブラケット34を介して、本レール部30が荷室12の側壁部13に取付けられる。
【0047】
また、レール本体部32の両端部には、後述するプーリー体48を収納するプーリー収容部38が取付けられており、当該プーリー体48はプーリー収容部38内に収容支持されることによって、レール本体部32の両端部で回転自在に支持される。
【0048】
このレール部30は、車両10後方から車両前方に向けて上向きに傾斜する姿勢で、側壁部13に取付けられている。より具体的には、レール部30のレール本体部32の一端部を、上記のように面一状に展開させたトノボード70の後端部の位置に配設すると共に、レール本体部32の他端部を、レール本体部32の一端部から車両10の斜め上前方に配設した斜め姿勢で、レール部30が側壁部13に取付けられている(図3参照)。
【0049】
なお、レール部30は、必ずしも上記斜め姿勢で取付けられている必要はなく、例えば、車両10の前後方向に沿って設けられていてもよい。つまり、レール部30に沿ってスライダ部60が移動することで、トノボード70が展開及び折畳まれればよいのであるから、レール部30は、車両10前後方向成分を有する姿勢で荷室12の両側壁部13に配設されていればよい。
【0050】
また、一対のスライダ部60は、一対のレール部30を移動可能に構成されている。より具体的には、スライダ部60は、上記レール本体部32内を移動可能なスライダ移動体62と、上記連結支持部76の端部を支持可能な可動支持部68とを有している。
【0051】
スライダ移動体62は、レール本体部32内を摺接移動するスライダ本体部63と、スライダ本体部63内を移動可能な内部移動体64と、内部移動体64を付勢する付勢部材としてのコイルバネ65とを有している。
【0052】
スライダ本体部63は、中間支持部63aを介して間隔をあけて支持された一対の支持端部63bと、支持端部63b間に設けられた棒状の内部スライダ支持部63cとを有している(図18、図20〜図22参照)。このスライダ本体部63は、レール本体部32内で両端部のプーリー収容部38間で移動自在とされている。そして、内部スライダ支持部63cが内部移動体64に形成された孔部に挿通されることで、内部移動体64が支持端部63b間で往復移動可能に支持されている。また、内部スライダ支持部63cがコイルバネ65に挿通されて、当該コイルバネ65が車両10前方側の支持端部63bと内部移動体64との間に介在している。このコイルバネ65は、内部移動体64を車両10後方に付勢している。これにより、内部移動体64をレール部30の後方側の一定位置に配設した状態で、スライダ本体部63をレール部30のさらに後方側に移動させることができるようになっている(図20参照)。
【0053】
可動支持部68は、内部移動体64と一体化されており、当該内部移動体64と共にレール部30の長手方向に沿って移動可能に構成されている。また、可動支持部68は、上記開口32a及びピラーに形成された開口を通じて荷室12内に突出すると共に、当該可動支持部68には、連結支持部76の端部を嵌め込むようにして支持可能な凹部68aが形成されている。そして、荷室12内で、当該連結支持部76が凹部68aに回転可能に支持されている。
【0054】
この可動支持部68及び内部移動体64は、レール本体部32のうち車両10後方側に設けられた規制片34aによって、スライダ本体部63がレール本体部32のうち車両10の最後方位置に達するよりも手前で停止するように位置規制されている。つまり、スライダ部60がレール部30に沿って車両10方向に移動する際、可動支持部68及び内部移動体64が規制片34aによって位置規制された後、スライダ本体部63がさらに車両10後方に移動できるようになっている。
【0055】
トノボード駆動機構部40は、伝達部42と、蓄力付勢部材としての渦巻ばね50とを有している。
【0056】
伝達部42は、バックドア14の開動作を受けてスライダ部60を車両前方に移動可能に構成されている。より具体的には、伝達部42は、第1巻胴部43と第2巻胴部44と第2ワイヤ45とを有している。
【0057】
第1巻胴部43及び第2巻胴部44とは、同軸上で一体回転可能に連結されており、レール部30の長手方向中間部で、巻胴部収容ハウジング46を介して回転可能に支持されている。
【0058】
第1巻胴部43は、略円盤状に形成されており、第1ワイヤ54を巻回可能に構成されている。ここで、第1ワイヤ54は、巻回可能な線状部材であり、その一端部はバックドア14に連結されている。そして、バックドア14を開くと当該第1ワイヤ54の一端部が荷室12の開口外方に向けて引張られ、バックドア14を閉じると第1ワイヤ54に余剰長が生じるようになっている。また、第1ワイヤ54の他端部は第1巻胴部43に連結されており、バックドア14を閉じることによって生じる第1ワイヤ54の余剰長部分が第1巻胴部43に巻回可能に構成されている。なお、ここでは、第1ワイヤ54は、荷室12の側壁部13の一部であるピラー内を通って配設されている。
【0059】
第2巻胴部44は、第1巻胴部43と連動して回転可能に構成されている。ここでは、第1巻胴部43は、第2巻胴部44と同軸上に一体連結されることで、当該第2巻胴部44と一体回転可能に構成されているが、その他、別々に回転可能に支持され、ギヤや無端環状ベルト等を介して連動回転可能とされた構成であってもよい。
【0060】
第2ワイヤ45は、ここでは2本用いられており、それぞれレール部30の両端側に回転自在に支持されたプーリー体48に巻掛けられている。また、それぞれの第2ワイヤ45の一端部は、レール本体部32の側方を通ってその長手方向中間部で上記第2巻胴部44に巻付けられると共に、それぞれの他端部がレール本体部32内を通って上記スライダ部60の一対の支持端部63bにそれぞれ連結固定されている。そして、上記第2巻胴部44の回転に連動して、第2ワイヤ45がレール部30周りを回転するように動き、これに伴ってスライダ部60を引張るようにしてレール部30に沿って移動させる。なお、このような構成は、第2ワイヤ45として、1本のワイヤを用いることによっても実現できる。
【0061】
また、渦巻ばね50は、バックドア14の開動作を受けて第1ワイヤ54が第1巻胴部43から引出されて当該第1巻胴部43が回転することで、第1巻胴部43を、第1ワイヤ54を巻取る方向及びスライダ部60をレール部30の後方に付勢する方向への付勢力を蓄えるように構成されている。ここでは、渦巻ばね50の内周端部が第1巻胴部43の中心軸部に固定されると共に、渦巻ばね50の外周端部が巻胴部収容ハウジング46に固定されている。そして、第1ワイヤ54が引出されるように第1巻胴部43が回転すると、これに連動してスライダ部60を車両10前方に移動させつつ、渦巻ばね50が縮径するように弾性変形し、反対方向への回転力、即ち、スライダ部60を車両後方に移動させる付勢力を蓄える。そして、バックドア14が閉じられると、当該蓄えられた力を開放して、第1巻胴部43を反対方向に回転させて第1ワイヤ54を巻取ると共に、これに連動して第2巻胴部44を同方向に回転させてスライダ部60を車両10後方に移動させる。
【0062】
なお、スライダ部60がレール部30に沿って後方に移動する際には、当該スライダ部60には、スライダ部60自体の荷重やトノボード70の荷重等も作用する。このため、渦巻ばね50による付勢力は、それらの荷重をも考慮して、トノボード70を展開できる程度の付勢力に設定される。それらの荷重を考慮すると、渦巻ばね50に要求される付勢力はそれほど大きくする必要はない。
【0063】
なお、上記渦巻ばね50は、バックドア14が閉じられた状態、即ち、スライダ部60が車両後方に移動してトノボード70が面一状に展開した状態でも、縮径するように弾性変形しており、第1巻胴部43を、第1ワイヤ54を巻取る方向に付勢すると共に、第2巻胴部44を、スライダ部60をレール部30の後方に向けて移動させる方向に付勢している。
【0064】
なお、上記第1ワイヤ54の一端部は、ワイヤ固定部55を介してバックドア14に連結固定されている。
【0065】
ワイヤ固定部55は、細長形状のハウジング55aと、ワイヤ端固定具55cと、付勢部材としてのコイルバネ55eとを備えており、バックドア14に取付固定されたドア側固定具55bを介してバックドア14に連結固定される(図19参照)。
【0066】
ワイヤ端固定具55cは、棒状部分の一端部に棒状部分よりも太径の頭部が設けられた構成とされ、その他端部に第1ワイヤ54の一端部が連結固定されている。また、ワイヤ端固定具55cの棒状部分にコイルバネ55eが外嵌めされている。また、ハウジング55aは、中空筺状に形成され、その内部に、ワイヤ端固定具55cが移動可能、かつ、コイルバネ55eが伸縮可能に配設されている。そして、第1ワイヤ54を引張ると、コイルバネ55eが縮んで、その縮んだ分だけ第1ワイヤ54がワイヤ固定部55から引出される。また、第1ワイヤ54を引張る力を解除すると、コイルバネ55eが伸びて、その伸びた分だけ第1ワイヤ54がワイヤ固定部55内に引戻されるようになっている。また、上記ドア側固定具55bは、バックドア14にネジ止等で取付固定可能に構成されており、本ワイヤ固定部55は、ハウジング55aの一端部をドア側固定具55bに係止することで、当該ドア側固定具55bを介してバックドア14に連結されている。
【0067】
そして、バックドア14を開ける際に、スライダ部60がレール部30の前端部に停止し、第1巻胴部43からの第1ワイヤ54の引出しが停止された状態で、ワイヤ固定部55から若干量の第1ワイヤ54の引出しを可能にしている。
【0068】
ここで、バックドア14の設計上の開閉範囲の上限及び下限において、コイルバネ55eを適宜長収縮させた状態にすることで、ワイヤ端固定具55cがハウジング55a内における移動範囲の略中央に位置するように設定しておくとよい。これにより、バックドア14の実際の開閉範囲が、設計上の開閉範囲よりも大きい場合(例えば、+5゜大きい場合等)には、コイルバネ55eを収縮させて第1ワイヤ54を引出して不足長分を補うことができる。一方、バックドア14の実際の開閉範囲が、設計上の開閉範囲よりも小さい場合(例えば、−5゜小さい場合等)には、コイルバネ55eが伸びることで、第1ワイヤ54を引込んで弛みとなる余剰長分を解消することができる。この場合に、バックドア14を閉じた場合に生じた第1ワイヤ54の余剰長は、本ワイヤ固定部55にて優先的に引戻すようにしてもよいし、第1巻胴部43にて優先的に巻取るようにしてもよい。どちらを優先的に機能させるかは、コイルバネ55eや渦巻ばね50の付勢力によって適宜設定することができる。
【0069】
<全体動作>
以上のように構成されたトノボード装置20の全体動作について説明する。
【0070】
図23はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに30゜回転して開いた状態を示す斜視図であり、図24は同状態を示す側面図であり、図25はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに60゜回転して開いた状態を示す斜視図であり、図26は同状態を示す側面図であり、図27はバックドア14が閉じた位置からヒンジ部周りに90゜回転して完全に開いた状態を示す斜視図であり、図28は同状態を示す側面図である。
【0071】
まず、バックドア14が閉じた状態では、図1〜図4、図20に示すように、スライダ部60は、レール部30の後端位置にあり、トノボード70は面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている。また、トノカバー部77もトノボード部70の後方に展開して荷室12の上方を覆った状態となっている。また、第1ワイヤ54は、第1巻胴部43に巻回された状態となっている。さらに、この初期状態でも、渦巻ばね50の初期付勢力によって、スライダ部60のスライダ本体部63は、コイルバネ65の付勢力に抗してレール部30の後方側に付勢されており、内部移動体64は、一対の支持端部63bの略中間部に位置している(図20参照)。この初期状態では、スライダ部60は後方に付勢されている。この付勢力により、スライダ部60及びトノボード70のがたつきが抑制されている。
【0072】
この状態で、利用者の操作等によってバックドア14が開動作すると、図23及び図24に示すように、第1ワイヤ54が第1巻胴部43から引出され、当該引出しに伴い第1巻胴部43及び第2巻胴部44が回転する。これにより、第2ワイヤ45が一対のプーリー体48周りに回転し、スライダ部60がレール部30に沿って車両10前方側に移動する。これにより、スライダ部60及び当該スライダ部60に連結支持されたトノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79が上記初期位置より上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード70は、後方の板状部72b、72c、72d間の屈曲部74で屈曲される。この際、トノボード70の後端部は、上方に持上げられつつ前方に移動するので、比較的小さい力でかつ円滑に、トノボード70の後方部分をその前方部分上に配設するように、当該トノボード70を屈曲させることができる。また、トノカバー部77のシート部材78における第2カバー部78bがシート巻取部79から徐々に引き出される。
【0073】
さらに、大きくバックドア14が開動作すると、図25及び図26に示すように、第1ワイヤ54がさらに大きく引出され、スライダ部60がレール部30に沿ってさらに車両10前方側に移動する。これにより、トノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79がさらに上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード70は、後方の板状部72b、72c、72d間の屈曲部74でさらに大きく屈曲され、略Z字状に折畳まれるようになる。また、トノカバー部77の第2カバー部78bはシート巻取部79からさらに引き出される。
【0074】
なお、図23〜図26に示すようにスライダ部60がレール部30の長手方向中間部に移動した状態では、図21に示すように、規制片34aによる可動支持部68及び内部移動体64の位置規制が解除されるので、内部移動体64は、コイルバネ65の付勢力によって、後方の支持端部63b側に付勢された状態となる。
【0075】
そして、バックドア14が完全に開くと、図27及び図28に示すように、第1ワイヤ54がさらに大きく引出され、スライダ部60がレール部30に沿って移動し、レール部30の車両10前端位置に移動する。これにより、トノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79がさらに上方に持上げられつつ、前方に移動する。すると、トノボード70は、上記状態から、前方の板状部72aとそれよりも後方の板状部72b間の屈曲部74でも屈曲され、トノボード70は、その後方部分をその前方部分上に折畳むようにして荷室12の上方、特に、上方後部を開放させる。また、トノカバー部77はシート巻取部79からより一層引き出される。
【0076】
これにより、利用者は、荷室12の上方後方から荷室12内にアクセスして、当該荷室12内に荷物を出し入れできるようになる。
【0077】
なお、この状態で、トノボード70前部のトノボード支持軸部71周りに回転させるようにして、トノボード70の後方部分を持上げるようにすることができる。この際、トノボード70の後端部とスライダ部60との連結を解除しておくとよい。これにより、荷室12の上方をより大きく開口させることができ、当該荷室12に対してより円滑に荷物の出し入れを行えるようになっている。
【0078】
また、この状態では、トノボード70の後端部は、一対のレール部30の上端部まで上がるだけである。トノボード70は複数箇所で屈曲されているから、その最上端部は、従来のようにトノボードを二つ折りした場合よりも十分に低い。従って、トノボード70の最上端部である後端部と荷室12の天井面との間に十分な空間を設けることができる。従って、上記シート部材78の先端部をバックドア14から取り外せば、トノボード70と荷室12の天井面との間の空間を利用して、リヤシートと荷室12の開口との間で荷物の受渡しを容易に行うことができる。
【0079】
また、製造上或は組付上の誤差等が原因で、上記のようにバックドア14を完全に開く手前で、スライダ部60がレール部30の最前方位置に達して停止した場合には、上記ワイヤ固定部55から若干第1ワイヤ54が引出される。これにより、スライダ部60がレール部30の最前方位置に位置した状態からも、バックドア14をさらに開いて完全に開いた状態にすることができる。つまり、スライダ部60がレール部30の最前方位置に停止した状態における第1ワイヤ54の長さ寸法と、バックドア14が完全に開いた状態で必要とされる第1ワイヤ54の長さ寸法とが一致していない場合に、その誤差を吸収することができるようになっている。
【0080】
そして、上記状態から、バックドア14を閉じると、渦巻ばね50に蓄力された力が解放され、渦巻ばね50の付勢力により第1巻胴部43及び第2巻胴部44が回転する。そして、第1巻胴部43の回転により第1ワイヤ54が巻回される。また、第2巻胴部44の回転により、第2ワイヤ45が一対のプーリー体48周りを周回状に移動し、スライダ部60がレール部30に沿って車両10後方側に移動する。これにより、スライダ部60及び当該スライダ部60に連結支持されたトノボード70の後端部およびトノカバー部77のシート巻取部79が下降しつつ後方に移動する。そして、スライダ部60がレール部30の後端位置に達すると、トノボード70は面一状に展開して荷室12の上方を覆った状態に復帰する。なお、この状態では、渦巻ばね50の初期付勢力によって、スライダ部60のスライダ本体部63は、コイルバネ65の付勢力に抗してレール部30の後方側に付勢された状態に戻る。つまり、スライダ部60のうち可動支持部68及び内部移動体64がレール部30の後端部位置に停止した状態で、スライダ本体部63を渦巻ばね50の付勢力によってコイルバネ55を収縮させながらさらに車両10後方に移動させ、第1巻胴部43及び第2巻胴部44を回転させることができる。これにより、バックドア14を閉じてスライダ部60の可動支持部68及び内部移動体64が停止した状態で、さらに第1ワイヤ54を巻取ることができる。これにより、可動支持部68及び内部移動体64が後方位置に停止した状態における第1ワイヤ54の長さ寸法と、バックドア14が完全に閉じた状態で適切とされる第1ワイヤ54の長さ寸法とが一致していない場合に、その誤差を吸収できるようになっている。
【0081】
以上のように構成されたトノボード70によると、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を折曲げる際に、屈曲心材部74aと板状部72a、72b、72c、72dとの間の2つの線状屈曲部73aで折曲げることができるので、各板状部材72a、72b、72c、72dをより大きな角度で折畳むことができる。例えば、各線状屈曲部73aで略90゜で折畳むことで、隣設する板状部72a、72b、72c、72d同士を略180゜で折畳むことができる。また、その際の折曲げ位置も、線状屈曲部73aで安定し一定態様に折畳むことができる。また、隣設する板状部72a、72b、72c、72d間に板状の屈曲心材部74aが介在しているため、展開形態及び屈曲形態においても、板状部72a、72b、72c、72d間で弛みが生じ難く見栄えもよい。
【0082】
また、上記のような屈曲部73は、板状部72a、72b、72c、72d間に屈曲心材部74aを配設した状態で、一対のシート状部材73同士を接合することで容易に製造することができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、バックドア14の開閉に連動してトノボード70が展開及び折畳まれる構成で説明したが、必ずしもその必要はない。例えば、手動でトノボード70が展開及び折畳まれる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
12 荷室
70 トノボード
72a、72b、72c、72d 板状部
73 シート状部材
73 屈曲部
73a 線状屈曲部
74 屈曲部
74a 屈曲心材部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両荷室に設けられるトノボードであって、
複数の板状部と、
隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、
を備え、
前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、
隣設する板状部間に隙間をあけて配設された前記屈曲心材部と、
隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように設けられた一対のシート状部材を、隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して形成された前記線状屈曲部と、
を有する、トノボード。
【請求項2】
請求項1記載のトノボードであって、
前記板状部同士を結ぶ方向における前記屈曲心材部の寸法は、隣設する前記板状部同士を折重なるまで屈曲させることができ、かつ、その折重ね状態で前記板状部の主面から突出しない程度に設定されている、トノボード。
【請求項3】
車両荷室に設けられるトノボードの製造方法であって、
前記トノボードは、
複数の板状部と、
隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、
を備え、
前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、
隣設する前記板状部間に隙間をあけて前記屈曲心材部を配設し、
隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように一対のシート状部材を設け、
隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して前記線状屈曲部を形成する、トノボードの製造方法。
【請求項1】
車両荷室に設けられるトノボードであって、
複数の板状部と、
隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、
を備え、
前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、
隣設する板状部間に隙間をあけて配設された前記屈曲心材部と、
隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように設けられた一対のシート状部材を、隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して形成された前記線状屈曲部と、
を有する、トノボード。
【請求項2】
請求項1記載のトノボードであって、
前記板状部同士を結ぶ方向における前記屈曲心材部の寸法は、隣設する前記板状部同士を折重なるまで屈曲させることができ、かつ、その折重ね状態で前記板状部の主面から突出しない程度に設定されている、トノボード。
【請求項3】
車両荷室に設けられるトノボードの製造方法であって、
前記トノボードは、
複数の板状部と、
隣設された前記板状部同士を屈曲可能に連結する屈曲部と、
を備え、
前記屈曲部は、隣設された前記板状部間に介在する板状の屈曲心材部と、前記屈曲心材部と前記板状部との間で屈曲容易な線状屈曲部とを有し、
隣設する前記板状部間に隙間をあけて前記屈曲心材部を配設し、
隣設する前記板状部及び前記屈曲心材部を両面側から覆うように一対のシート状部材を設け、
隣接する前記板状部と前記屈曲心材部との各間の2本のラインに沿って線状に同時縫合して前記線状屈曲部を形成する、トノボードの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−111491(P2012−111491A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61857(P2012−61857)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2007−233905(P2007−233905)の分割
【原出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2007−233905(P2007−233905)の分割
【原出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
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