説明

トラス格点部保護部材及びトラス格点構造

【課題】トラス構造体の格点部を保護し腐食を抑制できると共に、格点部の目視による点検を容易なものとするトラス格点部保護部材を提供する。
【解決手段】トラス格点部保護部材1は、トラス構造を構成する長棒状部材を連結する一対のガセットプレートのうち一方のガセットプレートに係止される一以上の第一係止部10、及び、他方のガセットプレートに係止される一以上の第二係止部20と、第一係止部及び第二係止部に支持され、第一係止部及び第二係止部間に上方から架け渡されたカバー体30とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラス構造体における格点部を保護するトラス格点部保護部材、及び、該トラス格点部保護部材を備えるトラス格点構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラス橋など一般的なトラス構造体において、トラス構造を構成する長棒状部材の格点部は、図11に示すように、隣接する長棒状部材50を挟み込む一対のガセットプレート55によって連結されている。ここで、図11では、隣接する長棒状部材50の一方が斜材51で他方が垂直材52である場合を図示しているが、隣接する長棒状部材の双方が斜材の場合もある。
【0003】
このようなトラス構造体の格点部には、隣接する長棒状部材50及び一対のガセットプレート55で囲まれた、箱状の空間Sが存在する。そして、塵芥、土砂、落ち葉などが風雨によって運ばれ、一旦この空間Sに入り込むと、自然には空間S外に出て行きにくいため、空間S内に堆積する。その結果、空間S内の堆積物、堆積物に保持された雨水、融雪剤等に起因して、格点部が腐食する。そして、格点部の腐食が進行すれば、トラス構造体が破壊に至るおそれがある。実際に、格点部の腐食に起因して、トラス橋が崩壊する事故も起きている。
【0004】
また、従来では、トラス構造体の格点部が腐食すると、腐食した部分に当て板をして補強し、防錆処理及び塗り替え塗装を行う補修が行われていた。このような補修作業は、手間及び日数を要し、トラス構造体の維持費が高いものとなっていた。
【0005】
加えて、定期的にトラス構造体の点検が行われる場合であっても、堆積物に遮られて格点部を目視によって点検することができず、腐食の有無や腐食の度合いを把握できないという問題があった。そして、点検のたびに、堆積物の除去作業を行うことは、実際的ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、トラス構造体の格点部を保護し腐食を抑制できると共に、格点部の目視による点検を容易なものとするトラス格点部保護部材、及び、該トラス格点部保護部材を備えるトラス格点構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるトラス格点部保護部材は、「トラス構造を構成する長棒状部材を連結する一対のガセットプレートのうち一方のガセットプレートに係止される一以上の第一係止部、及び、他方のガセットプレートに係止される一以上の第二係止部と、前記第一係止部及び前記第二係止部に支持され、前記第一係止部及び前記第二係止部間に上方から架け渡されたカバー体とを具備する」ものである。
【0008】
「長棒状部材」は、トラス構造を構成する“斜材”及び“垂直材”を包含する語である。本発明のトラス格点部保護部材は、斜材及び垂直材を共に備えるトラス構造体に対しても、垂直材を備えず斜材のみでトラス構造が構成されたトラス構造体に対しても、適用することができる。なお、「トラス格点部保護部材」における「トラス格点部」の語は、“トラス構造体の格点部”と同意である。
【0009】
上記構成のトラス格点部保護部材をトラス構造体の格点部に取り付ける、すなわち、トラス格点部保護部材の第一係止部を一対のガセットプレートの一方に係止させ、第二係止部を他方のガセットプレートに係止させると、第一係止部及び第二係止部間に上方から架け渡されたカバー体によって、一対のガセットプレート間の空間が上方から被覆される。これにより、トラス構造体の格点部において、隣接する長棒状部材及び一対のガセットプレートに囲まれた箱状の空間(以下、「箱状空間」と称することがある)に、塵芥、土砂、落ち葉などが入り込み堆積することが抑制される。その結果、トラス構造体の格点部が、堆積物、堆積物に保持された雨水、融雪剤等に起因して腐食するおそれを、低減することができる。
【0010】
加えて、トラス構造体の格点部の目視による点検を、堆積物によって妨げられることなく、容易に行うことができる。
【0011】
本発明にかかるトラス格点部保護部材は、上記構成において、「前記カバー体は透明である」ものとすることができる。
【0012】
透明なカバー体は、透明な樹脂製の板材や、強化ガラスを使用して形成することが可能である。
【0013】
上記構成のトラス格点部保護部材では、カバー体が透明であるため、トラス格点部保護部材をトラス構造体に取り付けた状態のまま、格点部を目視で点検することができる。
【0014】
本発明にかかるトラス格点部保護部材は、上記構成において、「前記カバー体は、前記第一係止部に支持された側から前記第二係止部に支持された側に向かって傾斜している」ものとすることができる。
【0015】
上記構成のトラス格点部保護部材をトラス構造体の格点部に取り付けた場合、雨水は、一方のガセットプレート側から他方のガセットプレート側に向かう方向に、傾斜を有するカバー体の上を高い方から低い方に流れる。これにより、カバー体と長棒状部材との隙間を介して、格点部の箱状空間の内部に雨水が流下するおそれを低減することができ、水分による格点部の腐食を低減することができる。
【0016】
本発明にかかるトラス格点部保護部材は、上記構成に加え、「前記カバー体の外周の少なくとも一部に沿って配された帯状のゴム体を、更に具備する」ものとすることができる。
【0017】
仮に、カバー体をトラス構造体の長棒状部材とぴったり当接させれば、塵芥、土砂、落ち葉などが、カバー体と長棒状部材との間を介して格点部の箱状空間に入り込むことを防止できる反面で、トラス構造体の振動に伴いカバー体と長棒状部材とが擦れ合い、長棒状部材が傷付く、或いは、塗装が剥がれる等の損傷を受けるおそれがある。また、カバー体を長棒状部材に接着・溶接などにより固着すれば、隙間も形成されず、カバー体と長棒状部材との摩擦もなくなる反面で、格点部の剛性が増し、本来的にピン構造(支点において自由に回転しうる構造)であるトラス構造体の動きが、制限されるおそれがある。
【0018】
これに対し、本発明では、カバー体の外周の少なくとも一部に沿って帯状のゴム体が配されるため、カバー体の寸法及び形状を、長棒状部材との間に隙間が形成される設定としつつ、その隙間をゴム体によって塞ぐことが可能となる。そして、ゴム体は弾性に富むため、弾性変形させて隙間に圧入することにより、カバー体と長棒状部材との間の隙間をぴったりと塞ぐことができる。また、ゴム体は、その弾性により長棒状部材の動きに追随するため、ピン構造であるトラス構造の動きを制限することがない。加えて、ゴム体が長棒状部材とぴったりと当接していても、両者の接触により長棒状部材に傷や塗装の剥離等の損傷を与えるおそれがないという利点も有する。
【0019】
次に、本発明にかかるトラス格点構造は、「トラス構造を構成する長棒状部材が、一対のガセットプレートで連結されたトラス格点構造であって、一対の前記ガセットプレートのうち一方の前記ガセットプレートに係止された一以上の第一係止部、他方の前記ガセットプレートに係止された一以上の第二係止部、及び、前記第一係止部及び前記第二係止部に支持され、前記第一係止部及び前記第二係止部間に上方から架け渡されたカバー体を備えるトラス格点部保護部材を具備し、前記カバー体は、隣接する前記長棒状部材及び一対の前記ガセットプレートで囲まれた空間の上方を被覆している」ものである。
【0020】
これは、上述した構成のトラス格点部保護部材が取り付けられたトラス構造体の格点部の構成であり、上記の優れた作用効果を有する。
【0021】
また、本発明にかかるトラス格点構造は、上記構成において、「前記カバー体は、前記ガセットプレートに交差する方向の外形が、対面する前記長棒状部材の外形に沿う形状である」ものとすることができる。
【0022】
一般的なトラス構造体では、長棒状部材として鋼材が使用されており、鋼材には、軸方向に直交する断面形状がH形のH鋼、断面形状がI形のI鋼、断面形状がコ字形の溝鋼、角筒状の箱鋼、平板状の平鋼など、種々の形状のものがある。そのため、使用される鋼材の種類によって、長棒状部材の外形は種々となる。
【0023】
上記構成の本発明では、ガセットプレートに交差する方向のカバー体の外形、すなわち、カバー体において長棒状部材と対面する側の形状が、長棒状部材の外形に沿う形状となっている。これにより、長棒状部材とカバー材との間に形成される隙間の大きさを低減することが可能となり、塵芥、土砂、落ち葉などが格点部の箱状空間に入り込むおそれを、より低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の効果として、トラス構造体の格点部を保護し腐食を抑制できると共に、格点部の目視による点検を容易なものとするトラス格点部保護部材、及び、該トラス格点部保護部材を備えるトラス格点構造を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態のトラス格点部保護部材の斜視図である。
【図2】図1のトラス格点部保護部材を備えるトラス格点構造の斜視図である。
【図3】図1のトラス格点部保護部材を備えるトラス格点構造の縦断面図である。
【図4】他の実施形態の第一係止部及び第二係止部を備えるトラス格点部保護部材の斜視図である。
【図5】図4のトラス格点部保護部材を備えるトラス格点構造の縦断面図である。
【図6】ゴム体を備えるトラス格点部保護部材の平面図である。
【図7】ゴム体の説明図である。
【図8】他の実施形態のカバー体を備えるトラス格点部保護部材の斜視図である。
【図9】図8のトラス格点部保護部材がゴム体を備える場合の平面図である。
【図10】垂直材を有さないトラス構造体にトラス格点部保護部材を取り付けた場合のトラス格点構造の斜視図である。
【図11】格点部の箱状空間を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態であるトラス格点部保護部材1(以下、単に「保護部材1」と称する)、及び、保護部材1を備えるトラス格点構造について、図1乃至図3を用いて説明する。保護部材1は、トラス構造を構成する長棒状部材を連結する一対のガセットプレートのうち一方のガセットプレートに係止される一以上の第一係止部10、及び、他方のガセットプレートに係止される一以上の第二係止部20と、第一係止部10及び第二係止部20に支持され、第一係止部10及び第二係止部20間に上方から架け渡されたカバー体30とを具備している。
【0027】
より詳細に説明すると、本実施形態の保護部材1は、第一係止部10及び第二係止部20を、それぞれ一対具備しており、第一係止部10及び第二係止部20は、ともに金属の板材で形成されている。第一係止部10は、矩形平板状の載置部13と、載置部13の一対の辺からそれぞれ下方に延設された一対の脚部14を備えている。この一対の脚部14の内の一方には、ボルトを挿通させる貫通孔部15が穿設されている。また、載置部13の上面と脚部14のなす角度は直角ではなく、脚部14の延びる方向を鉛直方向とした場合に、載置部13の上面が水平とはならずに傾斜する設定とされている。
【0028】
第二係止部20の構成は第一係止部10の構成と同様であり、矩形平板状の載置部23と、載置部23の一対の辺からそれぞれ下方に延設された一対の脚部24を備えており、一対の脚部24の内の一方には、ボルトを挿通させる貫通孔部25が穿設されている。そして、載置部23の上面が脚部24となす角度は、第一係止部10の載置部13の上面が脚部14となす角度と同一である。一方、第二係止部20の脚部24の下端から載置部23の上面までの長さ(第二係止部20の高さ)は、第一係止部10の脚部14の下端から載置部13の上面までの長さ(第一係止部10の高さ)より、大きい設定とされている。
【0029】
カバー体30は、透明な樹脂製であり、平板状のカバー本体31と、カバー本体31において第一係止部10に支持された側の端辺(以下、「第一辺35」と称する)、及び、第二係止部20に支持された側の端辺(以下、「第二辺36」と称する)から、それぞれ下方に延設された一対の側方カバー部32を備えている。
【0030】
また、カバー体30において、第一辺35及び第二辺36を連結する側辺の形状は、保護部材1をトラス構造体の格点部に取り付けた場合に対面する長棒状部材の外形に沿う形状となっており、本実施形態では、中間部分が外方に向かって突出した凸状に形成されている。
【0031】
また、カバー体30は、ボルト60及びナット(図示しない)の締結によって、第一係止部10及び第二係止部20に留め付けられている。具体的には、第一係止部10の載置部13及び第二係止部20の載置部23をカバー本体31の底面に当接させた状態で、載置部13,23及びカバー本体31に設けられた孔部を介して、ボルト60及びナットを締結させている。これにより、カバー本体31は載置部13,23上に載置されるように、第一係止部10及び第二係止部20によって下方から支持される。上述のように、載置部13,23の上面はそれぞれの脚部14,24に対して所定の角度で傾斜しており、第二係止部20の高さは第一係止部10の高さより大きく、カバー本体31は第二係止部20に載置された側から第一係止部10に載置された側に向かって下降するように傾斜している。
【0032】
加えて、カバー体30と一対の第一係止部10との留め付け位置は、カバー本体31において第一辺35より所定距離だけ内側に位置している。同様に、カバー体30と一対の第二係止部20との留め付け位置は、カバー本体31において第二辺36より所定距離だけ内側に位置している。
【0033】
上記構成の保護部材1は、第一係止部10を一対のガセットプレートの一方に係止させ、第二係止部20を他方のガセットプレートに係止させることにより、トラス構造体の格点部に取り付けることができる。本実施形態では、図2,3に示すように、第一係止部10の一対の脚部14及び第二係止部20の一対の脚部24を、それぞれガセットプレート55を挟むように、ガセットプレート55の上端辺の近傍に位置させる。その際、第一係止部10の一対の脚部14のうち貫通孔部15が穿設されている方の脚部14、及び、第二係止部20の一対の脚部24のうち貫通孔部25が穿設されている方の脚部24が、それぞれガセットプレート55の外側になるように配される。
【0034】
この状態で、ボルト61を用いて、第一係止部10及び第二係止部20をガセットプレート55に係止させる。第一係止部10を例にとり具体的に説明すると、ガセットプレート55の外側から、ボルト61を貫通孔部15に挿通させ、脚部14とガセットプレート55との間において、ボルト61の軸部にナット62を螺合させる。そして、ボルト61の軸端を突出させてガセットプレート55を押圧することにより、内側の脚部14及びボルト61によってガセットプレート55が挟持され、第一係止部10がガセットプレート55に係止される。同様に、第二係止部20も、ボルト61及びナット62を使用して、他方のガセットプレート55に係止される。
【0035】
これにより、トラス構造を構成する長棒状部材50が一対のガセットプレート55で連結されたトラス格点構造であって、一対のガセットプレートのうち一方のガセットプレート55に係止された一対の第一係止部10、他方のガセットプレート55に係止された一対の第二係止部20、及び、第一係止部10及び第二係止部20に支持され、第一係止部10及び第二係止部20間に上方から架け渡されたカバー体30を備える保護部材1を具備する、トラス格点構造が形成される。なお、図2では、トラス構造を構成する長棒状部材50が、斜材51及び垂直材52である場合を例示している。
【0036】
上記構成のトラス格点構造では、カバー体30は、隣接する長棒状部材50及び一対のガセットプレート55で囲まれた箱状空間Sの上方を被覆している。これにより、塵芥、土砂、落ち葉などが箱状空間Sに入り込むことを抑制することができ、堆積物に起因してトラス構造体の格点部が腐食するおそれを抑制することができる。
【0037】
また、カバー体30は透明であるため、本実施形態のトラス格点構造の点検の際は、保護部材1を取り付けた状態のまま、格点部を目視で点検することができる。
【0038】
更に、本実施形態のトラス格点構造では、ボルト61とナット62の螺合を解除すれば、保護部材1を格点部から容易に取り外すことができる。また、保護部材1をガセットプレート55に取り付けるにあたり、上述のように、ボルト61による押圧力を使用しており、ガセットプレート55に孔部を穿設する必要がない。仮に、ガセットプレート55に孔部を穿設し、これにボルトを挿通して保護部材を固定するとしたら、穿設された孔部に起因してガセットプレート55に亀裂や腐食が生じ、トラス格点構造の欠陥となるおそれがあるところ、本実施形態のトラス格点構造では、かかる不都合が回避されている。
【0039】
また、上述のように保護部材1では、カバー体30において第一辺35及び第二辺36を連結する側辺は、中間部分が外方に向かって突出した凸状に形成されており、この形状は、保護部材1が取り付けられる位置の断面がH形である長棒状部材50の外形に沿う形状となるように設定されている。すなわち、本実施形態のトラス格点構造においては、ガセットプレート55に交差する方向のカバー体30の外形(第一辺35及び第二辺36を連結する側辺の形状)は、対面する長棒状部材50の外形に沿う形状である。これにより、長棒状部材50とカバー体30との間に形成される隙間を小さなものとすることが可能であり、塵芥、土砂、落ち葉などが箱状空間Sに入り込むことを、より有効に抑制することができる。
【0040】
また、上記構成の保護部材1が取り付けられたトラス格点構造では、ガセットプレート55の上端辺とカバー本体31の底面との間に、少なくとも載置部13の高さ分の隙間ができる。本実施形態では、図3に示すように、載置部13の高さ以上の大きさの隙間が形成される位置関係で、第一係止部10及び第二係止部20がガセットプレート55に取り付けられる。これにより、箱状空間Sはカバー体30によって密閉されることなく、内外の通気が確保されるため、箱状空間S内が高湿度の腐食しやすい環境になることを防止することができる。
【0041】
更に、保護部材1のカバー体30は側方カバー部32を備えているため、本実施形態のトラス格点構造においては、ガセットプレート55の上端辺とカバー本体31の底面との間に隙間があっても、箱状空間Sの上側方が側方カバー部32で被覆される。これにより、隙間を介して塵芥、土砂、落ち葉などが箱状空間Sに入り込み堆積すること、及び、隙間を介して雨水が箱状空間Sに流入することを、有効に抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態のトラス格点構造では、側方カバー部32の下端は、ガセットプレート55の上端より高い位置になるよう設定されている。これにより、カバー体30で箱状空間Sを被覆する作用を十分に発揮しつつ、箱状空間S内外の通気が側方カバー部32によって妨げられないものとなっている。
【0043】
また、上記のように保護部材1では、カバー体30は第二係止部20に支持された側から第一係止部10に支持された側に向かって下降するように傾斜しているため、本実施形態のトラス格点構造では、雨水は傾斜したカバー体30の高い方から低い方に流下する。加えて、保護部材1では、カバー体30と第一係止部10及び第二係止部20との留め付け位置が、それぞれ第一辺35及び第二辺36より内側に位置しているため、本実施形態のトラス格点構造では、カバー本体31はガセットプレート55より外側に庇状に張り出している。これにより、傾斜したカバー体30に沿って流下した雨水は、ガセットプレート55の外側に落下しやく、箱状空間S内に雨水が流入することが抑制されている。
【0044】
次に、上記とは異なる構成の第一係止部10b及び第二係止部20bを備える保護部材2について説明する。その他の構成は、保護部材1と保護部材2とでは同様である。保護部材2の第一係止部10bは、図4に示すように、矩形平板状の載置部16と、載置部16の外周辺から下方に延設された二対の側面を有する脚部17と、脚部17の一対の側面にそれぞれ形成された下方に開口するスリット部18を備えている。また、脚部17において、スリット部18を備えない一対の側面の一方には、ボルトを挿通させる貫通孔部19が形成されている。
【0045】
同様に、第二係止部20bは、矩形平板状の載置部26と、載置部26の外周辺から下方に延設された二対の側面を有する脚部27と、脚部27の一対の側面にそれぞれ形成された下方に開口するスリット部28と、スリット部28を備えない側面の一つに穿設された貫通孔部29を備えている。ここで、第一係止部10bのスリット部18の長さは、第二係止部20bのスリット部28の長さと同一である。一方、第二係止部20bにおけるスリット部28の奥端(上端)と載置部26上面との距離は、第一係止部10bにおけるスリット部18の奥端(上端)と載置部16上面との距離より、長い設定とされている。なお、カバー体30と第一係止部10b及び第二係止部20bとの留め付けは、保護部材1の場合と同様である。
【0046】
上記構成の保護部材2を、トラス構造体の格点部に取り付ける際は、図5に示すように、第一係止部10bのスリット部18及び第二係止部20bのスリット部28を、それぞれガセットプレート55に挿し込む。そして、スリット部18,28の奥端がガセットプレート55の上端辺に当接した状態で、上記と同様にボルト61及びナット62を用いて、第一係止部10b及び第二係止部20bをガセットプレート55に係止させる。このようにすれば、カバー体30が傾斜した状態となるよう、ガセットプレート55に対する第一係止部10b及び第二係止部20bの取り付け位置の高さを調整する必要がなく、取り付け作業が容易である。なお、一対のガセットプレート55の上端辺とカバー本体31の底面との間には、それぞれスリット部18の奥端と載置部16上面との距離に等しい隙間、及び、スリット部28の奥端と載置部26上面との距離に等しい隙間が形成される。
【0047】
次に、上記構成に加え、カバー体30の外周の少なくとも一部に沿って配された帯状のゴム体40を、更に具備する保護部材3、及び、保護部材3を備えるトラス格点構造について説明する。保護部材3が保護部材1,2と相違する点は、図6に示すように、第一辺35と第二辺36とを連結する凸形状の側辺に沿って配された、帯状のゴム体40を具備する点である。
【0048】
このゴム体40は、図7に示すように、厚さ方向の中途部に開口し長軸方向に沿って延びるスリット41を備えている。そして、カバー本体31の側辺をスリット41内に挿し込むように、カバー体30にゴム体40を取り付けることができる。
【0049】
上記構成の保護部材3を備えるトラス格点構造では、カバー体30の寸法及び外形を、長棒状部材との間に隙間が形成される設定としつつ、この隙間をゴム体40で閉塞することが可能となる。これにより、長棒状部材50がカバー体30との摩擦によりに損傷を受けるおそれを、両者間のクリアランスによって回避し、且つ、両者間の隙間から箱状空間Sに塵芥や土砂等が浸入し雨水が流入するおそれを、ゴム体40によって低減することができる。また、ゴム体40の弾性により、ピン構造としてのトラス構造の動きを制限することなく、長棒状部材50とカバー体30との隙間をぴったりと塞ぐことができる。
【0050】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0051】
例えば、上記では、カバー体30において第一辺35と第二辺36とを連結する二つの側辺の形状が、共に凸状である場合を例示したが、この側辺の形状は長棒状部材の外形に応じて種々となる。例えば、隣接する長棒状部材の一方の側面が平坦な格点部に取り付けられる保護部材4は、図8に示すように、第一辺35と第二辺36とを連結する側辺として、凹凸のない直線形状の側辺38を有するカバー体30bを具備する。また、このような直線形状の側辺38を有するカバー体30bの場合、図9に例示するように、帯状のゴム体40も直線状に配される。
【0052】
また、上記では、トラス構造を構成する長棒状部材50が斜材51及び垂直材52である場合を例示したが、これに限定されず、図10に示すように、斜材51のみで構成されたトラス構造体の格点部にも、本発明のトラス格点部保護部材を取り付けることが可能である。また、本発明のトラス格点部保護部材及びトラス格点構造は、トラス橋の他、建築物や土木構造物など、格点部が露呈しているトラス構造体に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3,4 トラス格点部保護部材
10,10b 第一係止部
20,20b 第二係止部
30 カバー体
40 ゴム体
50 長棒状部材
55 ガセットプレート
S 長棒状部材及び一対のガセットプレートで囲まれた空間(箱状空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス構造を構成する長棒状部材を連結する一対のガセットプレートのうち一方のガセットプレートに係止される一以上の第一係止部、及び、他方のガセットプレートに係止される一以上の第二係止部と、
前記第一係止部及び前記第二係止部に支持され、前記第一係止部及び前記第二係止部間に上方から架け渡されたカバー体と
を具備することを特徴とするトラス格点部保護部材。
【請求項2】
前記カバー体は透明である
ことを特徴とする請求項1に記載のトラス格点部保護部材。
【請求項3】
前記カバー体は、前記第一係止部に支持された側から前記第二係止部に支持された側に向かって傾斜している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラス格点部保護部材。
【請求項4】
前記カバー体の外周の少なくとも一部に沿って配された帯状のゴム体を、更に具備する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のトラス格点部保護部材。
【請求項5】
トラス構造を構成する長棒状部材が一対のガセットプレートで連結されたトラス格点構造であって、
一対の前記ガセットプレートのうち一方の前記ガセットプレートに係止された一以上の第一係止部、他方の前記ガセットプレートに係止された一以上の第二係止部、及び、前記第一係止部及び前記第二係止部に支持され、前記第一係止部及び前記第二係止部間に上方から架け渡されたカバー体を備えるトラス格点部保護部材を具備し、
前記カバー体は、隣接する前記長棒状部材及び一対の前記ガセットプレートで囲まれた空間の上方を被覆している
ことを特徴とするトラス格点構造。
【請求項6】
前記カバー体は、前記ガセットプレートに交差する方向の外形が、対面する前記長棒状部材の外形に沿う形状である
ことを特徴とする請求項5に記載のトラス格点構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−53459(P2013−53459A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192400(P2011−192400)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月7日、不動沢橋
【出願人】(306040344)株式会社栗山組 (2)
【出願人】(311006537)株式会社飯田コンサルタント (1)
【出願人】(311006515)
【Fターム(参考)】