説明

トラックの運転台用懸架装置

【課題】トラックの運転台用の懸架装置を提供する。
【解決手段】トラックの運転台用の懸架装置は、磁気レオロジータイプの回転ダンパー13,27を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック(lorry)のシャシー(chassis)上で振れるように取り付けられて、運転台(cab)の構造体に接続された少なくとも一つのアームと、振動アームとトラック(lorry)のシャシーとの間で動作可能にセットされた弾性手段及び衝撃吸収手段と、を備えるタイプの、トラック(lorry)の運転台用懸架装置に関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明の目的は、特に垂直方向において、低減された邪魔物(encumbrance)の単純で機能的な構造を示す、上記タイプの懸架装置を提供することである。
【0003】
前記目的を達成するために、本発明の主題は、前述の衝撃吸収手段が流体(fluid)回転ダンパーを備えることを特徴とする、上に明示されたタイプの懸架装置である。
【0004】
好ましくは、回転ダンパーは、磁気レオロジー(magneto-rheological)の流体を使用し、その明白な粘性を変える目的で磁気レオロジー(magneto-rheological)の流体の活動(activation)の度合いを制御する磁界を生成するための電子制御手段を備えているタイプのものである。
【0005】
上記タイプの回転ダンパーは、本出願人の名前に出願されたヨーロッパ特許出願1070872号(EP 1 070 872)およびヨーロッパ特許出願1380768号(EP 1 380 768)に示されている。前記回転ダンパーは、内部空洞を備えたケーシングを有している。その中では、ケーシングの空洞の中に二つの動作する(operative)チャンバを形成するブレードピストンが振れるように取り付けられている。ケーシングに関してブレードピストンの相対的な動きに続いて、二つのチャンバのうちの一つにある流体は、減衰効果(damping effect)を得るようにブレードピストンの中に作られた通路を通って別のチャンバに到達することを強いられる。前記通路において、流体の粘性を制御するために磁界を生成するための電気供給手段が、設けられている。
【0006】
本発明は、トラック(lorry)の運転台用の懸架装置に上記タイプの回転(rotational)ダンパーを適用するという考えに本質的に基づくものである。
【0007】
同様に本出願人の名で出願された引用されたヨーロッパ特許出願1380768号(EP 1 380 768)は、上記タイプの回転(rotational)ダンパーが用いられている自動車用の懸架装置を示している。そのケーシングが、サスペンションの振動アームに堅固に接続されていて、その代りに、そのブレードピストンが、乗り物の構造体に堅固に接続されている。前記配置において、作動の間に、ブレードピストンに関してダンパーの全ケーシングの動きが発生する。ブレードピストンは固定されたままである。更に、前記配置では、振動アームも、サスペンションの弾性要素を構成する板バネの端部で協働する。
【0008】
本出願人によって行なわれた研究及び実験は、トラック(lorry)の運転台用の懸架装置に先の提案で示した自動車(motor vehicle)用の懸架装置を適用することができることを驚くほど示した。また、本発明は、前記の特定の出願を保護するつもりである。
【0009】
好ましい実施態様では、本発明に係る懸架装置は、フロントサスペンション及びリアサスペンションを備える。好ましい実施態様の場合であるが、フロントサスペンションは、一対の縦方向のアームを備える。それは、車両(vehicle)の縦方向を横断する(transverse)同一の軸を中心にして振れるように取り付けられ、それらの自由端(free end)で横方向のトーションバー(torsion bar)の反対端に接続される。その真下にセットされたエンジンへのアクセスを得るために運転台の跳ね上げ(tip up)を可能にするために前記トーションバーを中心にして自動車の運転台の構造体が回転できるように、トラック(lorry)の運転台の構造体が取り付けられている。各振動(oscillating)アームは、それぞれの回転ダンパーのブレードピストンに堅固に接続される。更に、フロントサスペンションは、縦方向を横断する板バネを備える。板バネの真下では、その中央部は自動車のシャシーにアンカー固定され(anchored)、反対端は、二つの振動アームの端部と協働する。
【0010】
その代りに、リアサスペンションは、ヨーロッパ特許出願1380768号(EP 1 380 768)に示された自動車サスペンションのそれに実質的に相当する配置を有している。一対の横方向の振動アームは、自動車(motor vehicle)の縦方向と並行な二つの軸を中心に振動するように取り付けている、それぞれは、それぞれの回転ダンパーのケーシングに堅固に接続されている。各ダンパーのブレードピストンは、自動車(motor vehicle)のシャシーに堅固に接続されている。この場合、自動車の縦方向を横断(transverse)するようにセットされた板バネが、設けられている。その中央部は、自動車のシャシーにアンカー固定され(anchored)、反対端は、振動する横方向のアームと協働する。
【0011】
前述の特徴のおかげで、トラック(lorry)の運転台は、非常に単純で、機能的であり、同時に、特に垂直方向に、非常にサイズが小さくなった懸架装置を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照しながら詳細な説明から明らかになるだろう。添付図面は、単なる非限定的な実施例として提供されている。
【0013】
図1において、参照符号1は、従来技術に係るトラック(lorry)の運転台(cab)2用の懸架装置を示す。懸架装置1は、フロントサスペンション3およびリアサスペンション4を備える。フロントサスペンション3は、同一の横方向の軸6(自動車の垂直の縦方向の面に直交している)に関して振れるように取り付けている一対の縦方向の振動アーム5を備える。二つの振動アーム5の自由端は横方向のトーションバー7に接続される。それらが回転できるように、二つの支持体8が取り付けられている。二つの支持体8が運転台の構造体に堅固に接続されている。二つの振動アーム5はトーションバー7の軸を中心に回転することができる。メンテナンス操作のために運転台の真下にセットされたエンジンにアクセスすることが必要なときに、前記組み立て体は、トーションバー7の軸を中心にした回転によって運転台の持ち上げを可能にする。二つのバネダンパー組み立て体9が、振動アーム5の自由端と、トラック(lorry)のシャシーとの間に動作可能に(operatively)セットされている。二つのバネダンパー組み立て体9は、円筒状のダンパーを用いている。もう一度、従来の解決策を参照する。リアサスペンション4も、二つの横方向の振動アーム11に連関した円筒状ダンパーを持った、従来タイプの二つのバネダンパー組み立て10を備えている。
【0014】
図2は、本発明に係るトラック(lorry)の運転台用の懸架装置のフロントサスペンション成形部の好ましい実施態様を示す。前記の図では、図1のものと共通している部分は、同じ参照符号によって示される。本発明の場合、フロントサスペンション3は、トラック(lorry)のシャシーに堅固に接続されたブラケット12上にある横方向の軸6を中心にして振れるように取り付けられた二つの縦方向の振動アーム5を備える。この場合も、フォーク形状をした振動アーム5の端は、横方向のトーションバー7の二つの反対端に接続されている。運転台の構造体に接続された二つの支持体8が、その端部に取り付けられている。その結果、それらは回転することができる。従来の解決策に関する違いは、サスペンションの衝撃吸収手段および弾性手段の構成である。本発明によれば、衝撃吸収手段は、二つの回転ダンパー13によって構成される。その各々は、各ブラケット12に堅固に接続されたケーシング14と、ケーシングの内部で振れるように取り付けられて、軸16に堅固に接続されたブレードピストン15と、を有している。ブレードピストン15は各振動アーム5と回転で結び付けられる。このように、軸6を中心にした振動アーム5の振動は、ケーシング14の内部でブレードピストン15の対応する振動をもたらす。回転ダンパー13は、本出願人の名で出願申請された上記の先のヨーロッパ特許出願で記載し且つ図示したタイプの一般的な構成を有する。特に、ブレードピストン15は、ケーシングの内部に含まれていた流体が強制的に通過して、ブレードピストン15の動作が続いて、減衰効果をもたらす通路によって互いに連通する二つのチャンバをケーシング13の内部に形成する。電気供給のコイル17が、ブレードピストン15の中にある通路に対応する位置に設けられている。電気供給のコイル17は、ダンパーの内部に含まれた流体の特性に影響を及ぼす磁界を生成する。その流体は、磁気レオロジー(magneto-rheological)の流体である。電子制御装置(不図示)は、様々な作動状態における流体の粘性の所望の変化を得るように前記コイルの電気供給を制御する。既知のシステムと比較して、前記利点は、とりわけ垂直方向において、回転ダンパーの形状(それは非常に邪魔物が低減されている)から導き出される利点に加えられる。
【0015】
フロントサスペンション3の弾性手段は、板バネ18によって構成される。板バネ18は、トラック(lorry)のシャシーに対してアタッチメント19によって中心にアンカー固定される(anchored)。板バネ18は、振動アーム5によって支持された支持体8の底面と協働する上面を反対端に有する。
【0016】
エラストマー材料20で作られていた支持体は、板バネ18の各端部の最小限停止(bottom limit stop)の機能で、板バネ18の各端に対応する位置でトラック(lorry)のシャシーに固定される。
【0017】
図4は、本発明に係るトラック(lorry)の運転台用の懸架装置の好ましい実施態様におけるリアサスペンションの配置の模式的な例示である。前記配置は、本出願人の名で出願されたヨーロッパ特許出願1380768号(EP 1 380 768)に示された自動車用の懸架装置に基本的に相当する。この場合、シャシーが設けられている。それはクロス部材21(自動車の縦方向の垂直面に直交する方向に延在する)を含み、各端部で横方向の振動アーム22を支える。アーム22は、自動車の縦方向に並行な軸23に関して振れて、トラック(lorry)の運転台のサスペンション構造体と協働する。それは、板バネ24の端部でさらに協働し、支持体25によってシャシー21に中心にアンカー固定され(anchored)、振動アーム22の構造体に作られたポケット26に各端で受け入れられる。板バネ24は、縦方向を横断するようにセットされる。振動アーム22は、各回転磁気レオロジー(magneto-rheological)のダンパー27のケーシングに堅固に接続される。その代りに、ダンパー27の振れるブレードピストンは、シャシー21に固定された軸体に堅固に接続される。従って、個々の横方向の振動アーム22の振れ(oscillation)は、そのブレードピストンに関してそれぞれのダンパー27の全てのケーシングの振れをもたらす。ブレードピストンは、固定されたままである。この場合も、もちろん、ダンパーは、磁気レオロジー(magneto-rheological)のタイプのものであり、流体の粘性の特性に影響を及ぼす磁界を生成するための電子制御コイル手段を備えたブレードピストンを有する。
【0018】
理解されるように、好ましい実施態様では、トラック(lorry)の運転台用のシステムのフロントサスペンションおよびリアサスペンションの両方は、磁気レオロジー(magneto-rheological)のタイプの回転ダンパーを用いる。当該タイプの回転ダンパーは、構造体を単純にして全サイズを小さくするという利点があり、自動車のあらゆる作動状態での最適な特性を得るためにサスペンションの挙動に影響を及ぼす必然的な可能性を持っている。
【0019】
本発明は、理論的に、運転台の懸架装置のフロントサスペンションだけでなく、運転台の懸架装置のリアサスペンションにも適用することができる。
【0020】
図5は、本発明の変形例を示す。トラック(lorry)の運転台用の現在のサスペンションは、運転台が懸架される空気バネの圧力の制御により、運転台の静的な位置付け(orientation)を調節する可能性を示している。図2に示された実施態様の場合には、従来技術の空気バネが板バネに置換される限りでは、この機能はもはや存在しないであろう。図5の解決策では、この欠点を克服するために、反発(rebound)バンパー20は、空気バネ202(実際のところ、それは二つの機能を包含する一つのコンポーネントであってもよい)に並行して自動車の構造体201に取り付けられる。空気バネ202は、構造体201と板バネ18との間にセットされる。参照符号203は、圧縮空気システムに接続された、空気用入口を示す。前記解決策は、運転台における一人以上の人間の存在に起因する運転台の位置付け(orientation)の変化、すなわちより一般に、運転台の静止の位置付け(orientation)における変化を引き起こす重さのあらゆる変化に対する回復を可能にする。このコンポーネントの追加は、反発(rebound)バンパー、バネおよびダンパーの正常な挙動を危険にさらさない。しかし、静荷重(static load)の異なった状態で地面から一定の高さに運転台を維持することができる。システムは、一つ以上の運転台位置センサー(不図示)によって調節される。その信号は、電子制御装置へ送られる。電子制御装置は、バネ202の空気圧を制御する。
【0021】
もちろん、本発明の原理を害することなく、構造の細部および実施態様は、本発明の範囲を逸脱することなく、本願に記載され且つ示されたものを幅広く変更することができる。
【0022】
例えば、ダンパー13は、振動アームに接続されたケーシング及び固定構造体に接続されたブレードピストンを有することができるが、ダンパー27は、固定構造体に接続されたケーシング及び振動アームに接続されたブレードピストンを有することができる。更に、横方向又は縦方向に配置された上記板バネの各々を、二つの半板バネに置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術に係るトラック(lorry)の運転台用の懸架装置の模式的斜視図である。
【図2】本発明に係るトラック(lorry)の運転台用の懸架装置の好ましい実施態様のフロントサスペンションの斜視図である。
【図3】図2の細部の断面を部分的に拡大した斜視図である。
【図4】自動車の縦方向に関する横断面で、本発明の好ましい実施態様に係る懸架装置のリアサスペンションの横断面図である。
【図5】図2の細部の変形例を示す。
【符号の説明】
【0024】
1 懸架装置
2 運転台
3 フロントサスペンション
5 振動アーム
6 軸
7 トーションバー
8 支持体
9 組み立て体
11 振動アーム
12 ブラケット
13 ケーシング
15 ブレードピストン
18 板バネ
21 シャシー
22 振動アーム
23 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックのシャシー上に振れるように取り付けられた、運転台の構造体に接続された少なくとも一つのアーム(5,22)と、
振動アーム(5,22)と、トラックのシャシーとの間に動作可能なようにセットされた弾性手段(19,24)および衝撃吸収手段(13,27)と、を備え、
前記衝撃吸収手段が流体回転ダンパー(27)を備えることを特徴とする、トラックの運転台(2)用の懸架装置(1)。
【請求項2】
前記流体回転ダンパー(27)は、磁気レオロジーの流体を用いたタイプのものであって、
外部ケーシング(13)と、
ブレードピストンに作られた通路を通じて互いに連通する二つの作動するチャンバを形成するケーシング内部の空洞で振れるように取り付けられたブレードピストン(15)と、
ブレードピストン(15)に連関した、磁界を生成するための電気供給手段(17)と、
自動車の動作状態に従って前記電気供給手段を作動させるための電子制御手段と、を備えることを特徴とする、請求項1記載の懸架装置。
【請求項3】
前述の弾性手段は、車両のシャシーに対する取付用の一部分と、前記振動アーム(5,22)と協働する端部と、を有する板バネ(18、24)によって構成されていることを特徴とする、請求項2記載の懸架装置。
【請求項4】
フロントサスペンション及びリアサスペンションを備え、その少なくとも一つが、前述の流体回転ダンパーを備えていることを特徴とする、請求項3記載の懸架装置。
【請求項5】
フロントサスペンションは、車両の縦方向を横断する同一の軸(6)に関して振れるように取り付けられて、横方向のトーションバー(7)の反対端にそれらの自由端で接続された一対の縦方向のアーム(5)を備え、
車両の運転台の構造体は、前記トーションバー(7)を中心にして回転することができて運転台の跳ね上げを可能にするように取り付けられており、
各振動アーム(5)は、各回転ダンパー(13)のブレードピストンに堅固に接続されていて、
前記板バネ(18)は、その中央部(19)が車両のシャシーにアンカー固定されているとともに反対端がシャシーの真下にある二つの振動アーム(5)の端部と協働する状態で縦方向を横断してセットされていることを特徴とする、請求項4記載の懸架装置。
【請求項6】
リアサスペンションは、自動車の縦方向と並行な二つの軸(23)に関して振れるように取り付けられて、各回転ダンパー(23)のケーシングに堅固に接続された一対の横方向の振動アーム(22)を備え、
各回転ダンパー(23)のブレードピストンは、車両のシャシーに堅固に接続され、
前記板バネ(24)は、その中央部(19)が車両のシャシーにアンカー固定されて反対端が横方向の振動アーム(22)と協働した状態で、車両の縦方向を横断してセットされていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の懸架装置。
【請求項7】
運転台の位置付けの制御用の少なくとも一つの空気バネ(202)が、前記板バネと車両の構造体との間にセットされていることを特徴とする、請求項3記載の懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−321469(P2006−321469A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51804(P2006−51804)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(598031246)チ・エレ・エッフェ・ソシエタ・コンソルティーレ・ペル・アチオニ (86)
【氏名又は名称原語表記】C.R.F. Societa Consortile per Azioni
【Fターム(参考)】