説明

トラックボール装置

ボール内に情報を格納可能なトラックボール装置を提供することを課題とする。トラックボール装置1において、ボール部12には、各種情報を格納可能な少なくとも1個の非接触ICチップ17が埋め込まれている。また、トラックボール装置1の筐体19には、少なくとも1個のリーダ21が配置される。リーダ21は、非接触ICチップ17と通信を行って、それに格納された情報を読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックボール装置に関し、より特定的には、ユーザがボールを回転させて電子機器の操作するためのトラックボール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラックボール装置の一例は、ボールと、ボールを囲う樹脂製のケースと、ケースの底面を塞ぐ底板と、ケースの上面を塞ぐ蓋板とを、大略的に備える。また、蓋板中央に形成される丸孔から、ボールの上端部は露出する。さらに、ボールの中心を通りかつ底板に平行な面より若干下方の位置で、ボールは、ケース内に90°間隔で設けられた4つの支持部により支持される。これによって、ユーザがボールを全方向回転させることが可能となる。
【0003】
さらに、ボールは、未着磁で軟質の磁性材料からなる第1−第3の棒体が互いに直交するように結合された可動磁性部材を内蔵している。ここで、各棒体の両端は、ボールの表面近傍まで達する。さらに、各棒体の両端面はそれぞれ、硬度が高くかつ低摩擦な絶縁被膜で覆われる。
【0004】
また、ケースにおいて、ボールの中心を通りかつ互いに直交する2軸の線上にはそれぞれ、ボール表面から所定距離離れた状態で、2個1組の固定磁性部材が固定されている。これら固定磁性部材はいずれも、ボールの中心と同じ極性(例えば、N極)を有しており、さらに互いに概ね等しい磁気量を有する。さらに、固定磁性部材はそれぞれ、ボールに内蔵された可動磁性部材の各棒体の両端と磁気結合する。
【0005】
上記構成のトラックボール装置において、操作対象の電子機器のディスプレイ画面上においてカーソルを所定方向へ移動させる場合、ユーザは、ボールの上端部に手や指で触れて、ボールを必要な方向へ回転させる。ボールには、操作方向への回転力が加えられ、これに応じて、ボールは、ケース内の各支持部で構成される面上で滑りながら、第1組の固定磁性部材を結ぶ前後方向の軸線を回転軸として、第2組の固定磁性部材からの吸引力に逆らって回転する。そして、ボールの回転角度が概ね45°の位置を過ぎると、今度は、ある棒体の両端面が第2組の固定磁性部材にそれぞれ吸引される力の方が強く働き、ボールは所定方向に沿って約90°の位置まで自然に回転し、その後、静止する。
【0006】
このようなボールの回転中、ユーザの手や指には、可動磁性部材に対する第2組の固定磁性部材の吸引力すなわち磁気結合力によって、約90°回転毎に回転が重くなったり軽くなったりし、これによってクリック節度感を感じることができる(例えば、特許文献1(特開2002−140160号公報)を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のトラックボール装置では、ボール内に情報を格納できないという問題点がある。
【0008】
それ故に、本発明の目的は、ボール内に情報を格納可能なトラックボール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一局面は、トラックボール装置であって、ボールと、ボールに内蔵された少なくとも1個の非接触ICチップと、非接触ICチップに格納された情報を読み取るリーダとを備える。
【発明の効果】
【0010】
上記局面によれば、ボールに非接触ICチップが内蔵され、さらにトラックボール装置はリーダを備える。これによって、ボールから情報を取得可能なトラックボールを提供することができる。
【0011】
前記非接触ICチップは例示的には、自身の位置を特定可能な情報を格納したり、前記ボールの特徴を示す情報を格納したりする。
【0012】
本発明の上記及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、以下に述べる本発明の詳細な説明を添付の図面とともに理解したとき、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るトラックボール装置1及びその周辺の模式図である。
【図2】図2は、図1に示すトラックボール装置1を鉛直真上方向から見たときの模式図である。
【図3】図3は、図2に示す横中心面A−A’でトラックボール装置1を切断した時の断面図である。
【図4】図4は、図3に示す基準面C−C’でトラックボール装置1を切断した時の断面図である。
【図5】図5は、図3に示すリーダ21とICチップ17とのデータ通信を説明するための模式図である。
【図6】図6は、空調システムが操作対象となる場合のGUI画像を示す模式図である。
【図7】図7は、図3に示す表層18に施されるマーキング23を示す模式図である。
【図8】図8は、図3に示すICチップ17の他の配置例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1 トラックボール装置
12 ボール部
17 非接触ICチップ
19 筐体
21 リーダ
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るトラックボール装置1及びその周辺の模式図である。また、図2は、図1に示すトラックボール装置1を鉛直真上方向から見たときの模式図である。まず、図1において、トラックボール装置1は典型的には、車両の運転席と、その隣の助手席との間近傍に、運転手又は同乗者(以下、両者を包括して「ユーザ」と称す)がそれぞれの手で操作可能に設置される。なお、図1及び図2には、以下の説明における便宜のため、3次元直交座標系が描かれている。3次元直交座標系において、X軸は典型的には車両の進行方向を示す。Z軸は鉛直方向を示す。Y軸は、X軸及びZ軸の双方に直交する。
【0016】
以上のトラックボール装置1は、例えば、ナビゲーションシステム、オーディオシステム、空調システム又はテレビジョン受像機のような車載機器のそれぞれに、対象となる車載機器を制御するための機器制御信号Sa(図2参照)を、車載機器に送出する。また、トラックボール装置1は好ましくは、対象となる車載機器の操作をアシストするためのGUI(Graphical User Interface)画像データDaを、ディスプレイ2に送出する。ここで、GUI画像データDaは、ボタン、アイコン及び/又はメニュー代表されるグラフィックス部品を使って構成されるGUI画像を表す。また、GUI画像は、ユーザが車載機器を操作する際に用いられる。
【0017】
図1には、車両のダッシュボードにおいてユーザから視認し易い位置に、ディスプレイ2が設置される。ディスプレイ2は主として、トラックボール装置1から送信されてきたGUI画像データDa(図2参照)に従って、それが表すGUI画像を表示する。
【0018】
また、図2には、操作対象となる少なくとも1つの車載機器が示されている。車載機器は、トラックボール装置1からの機器制御信号Saに従って動作する。また、車載機器は好ましくは、トラックボール装置1から送出される画像要求信号Scに応答して、上述のようなGUI画像データDaを送り返す。
【0019】
次に、図2を参照して、図1に示すトラックボール装置1の上面に配置される構成について説明する。図2において、トラックボール装置1の上面には、複数のボタン11(図示は5個のボタン11a−11e)と、ボール部12と、レスト部13と、上蓋14とが配置される。なお、ボタン11の個数は、5個に限られる訳ではなく、トラックボール装置1の設計仕様に応じて、特に、操作対象となる車載機器の数に応じて定められる。
【0020】
各ボタン11には、互いに異なる車載機器が1つずつ割り当てられる。例えば、ボタン11aにはナビゲーション装置が割り当てられたり、ボタン11bには空調システムが割り当てられたりする。ユーザは、ある車載機器を操作したい時、それに割り当てられているボタン11を押下する。各ボタン11は、ユーザの押下に応答して、ユーザが操作したい車載機器を示す機器特定信号Sbを、トラックボール装置1が備えるコントローラ22(図5参照)に出力する。
【0021】
ボール部12は、略球形に形成され、ユーザの操作に従って、自身の中心を基準にして全方向に回転可能に設置される。
【0022】
レスト部13は、ユーザの手首及び/又は掌を置く場所であって、人間工学に基づいて、ユーザがボール部12を操作し易い表面形状を有する。
【0023】
上蓋14は、トラックボール装置1の上部を覆う板状の部材である。この上蓋14の上面の適切な位置には、上述のレスト部13が形成される。また、上蓋14の概ね中央部分には、上面から底面へと貫通する孔(以下、貫通孔と称する)が形成される。この貫通孔の径は、ボール部12の径より所定量だけ小さい。
【0024】
図3は、図2に示す横中心面A−A’でトラックボール装置1を切断した時の面を矢印Bの方向から見たときの断面図である。ここで、横中心面A−A’は、YZ平面に平行であって、ボール部12の中心を含む面である。また、図4は、図3に示す基準面C−C’でトラックボール装置1を切断した時の面を矢印Dの方向から見たときの断面図である。基準面C−C’は、XY平面に平行であって、ボール部12の中心を含む面である。また、さらに、基準面C−C’は、図3に示す上蓋14の底面から所定量離れている。
【0025】
図3及び図4において、ボール部12は、可動磁性部材15と、樹脂部16と、複数の非接触型ICチップ17と、表層18とを含んでいる。
【0026】
可動磁性部材15は、実質的に同じ長さの3本の棒体から構成される。各棒体は、着磁されていない軟質の磁性材料からなる。これら3本の棒体は、それぞれの軸が互いに直交するように配置及び結合される。
【0027】
樹脂部16は樹脂からなり、可動磁性部材15を内蔵する。具体的には、樹脂部16の外形は実質的に球形であり、各棒体の軸の交点が樹脂部16の中心に一致する。また、樹脂部16の直径は、各棒体の長さと実質的に同じ値であるか、それ以上である。ここで、図3及び図4には、樹脂部16の直径が各棒体の長さと実質的に同じ場合について描かれている。この場合、各棒体の端面は樹脂部16から露出する。
【0028】
非接触型ICチップ(以下、単にICチップと称する)17は、可動磁性部材15を構成する各棒体の端面上に配置されており、各種情報を格納する。本実施形態では例示的に、各棒体の端面上にICチップ17が1つずつ配置される。従って、図3及び図4に示す通り、6個のICチップ17a−17fが必要となる。また、本実施形態では例示的に、各ICチップ17は、自身のボール部12における絶対的な位置情報、つまり経度情報及び緯度情報の組み合わせを格納する。
【0029】
また、表層18は、好ましい構成としてボール部12の表面を覆っており、硬度が相対的に高く、摩擦係数が相対的に小さくかつ絶縁性を有する材料からなる。また、表層18は、全ICチップ17を覆うことが可能な均一な厚さを有しており、これによって、各ICチップ17は、3本の棒体の各端面上に固定される。
【0030】
また、トラックボール装置1は、上述の構成以外に、筐体19と、複数の固定磁性部材20と、複数のリーダ21とを備える。
【0031】
筐体19は、本実施形態では例示的に直方体の外形を有する。また、筐体19には、ボール部12を収容可能な概ね半球の穴αが形成される。穴αの直径及び深さは、ボール部12の直径よりも大きい。また、好ましくは、穴αの表面には、ボール部12を回転可能に支持する少なくとも3個の突起、ベアリング又はローラのような支持部材が取り付けられる。上述の上蓋14は、ボール部12が穴αに収容された状態で、筐体19の上面に取り付けられる。その結果、ボール部12の上部は、上蓋14に形成された穴から露出する。
【0032】
固定磁性部材20は、例えば互いに概ね等しい磁気量でそれぞれ着磁されており、筐体19にそれぞれ固定される。本実施形態では例示的に、5個の固定磁性部材16a−16fがトラックボール装置1に備わる。具体的には、固定磁性部材20a,20b,20d及び20eはそれぞれ、穴αの開口部近傍に固定される。さらに具体的には、固定磁性部材20a及び20bはそれぞれ、Y軸に平行な開口部の直径の延長線上近傍に、互いに対向するように固定される。また、固定磁性部材20d及び20eはそれぞれ、X軸に平行な開口部の直径の延長線上近傍に、互いに対向するように固定される。また、固定磁性部材20cは、穴αの下端近傍に固定される。また、各固定磁性部材20a−20eは好ましくは、それぞれの端面が穴αから露出する位置であって、さらにボール部12が穴αに収容された場合に、それぞれの端面がボール部12の表面から等距離になる位置に固定される。
【0033】
リーダ21は、固定磁性部材20の各端面近傍に、1つずつ配置される。従って、図3及び図4に示す通り、5個のリーダ21a−21eが必要となる。以上のリーダ21は、自身に対向する位置に来たICチップ17と非接触で通信を行う。
【0034】
ここで、図5は、図3に示す点線Eで囲まれる部分の拡大図であって、リーダ21とICチップ17とのデータ通信を説明するための模式図である。図5において、ICチップ17は、図示しないアンテナコイル及び通信制御部を含んでいる。リーダ21及びICチップ17は、双方のアンテナコイル間の電磁結合により、相互にデータを非接触で送受する。例えば、リーダ21の通信制御部は、トラックボール装置1が備えるコントローラ22から命令又はデータを受信すると、自身の入出力回路又は変調回路に代表される電子回路により、受信命令又は受信データを所定周波数の搬送波信号で変調して、自身のアンテナコイルに供給する。それに応じて、ICチップ17において、アンテナコイルには電流が誘起され、さらにはICチップ17に駆動電力が供給される。その後、ICチップ17において、アンテナコイルに接続された送受信回路又は復調回路に代表される電子回路で、リーダ21側からの命令又はデータが再生される。
【0035】
以上、リーダ21からICチップ17への通信について説明したが、ICチップ17からリーダ21への通信も同じ要領で行われる。ただし、この場合には、リーダ21はICチップ17へと駆動電力を供給するか、ICチップ17自身が過去にリーダ21から供給された駆動電力を蓄電しておく必要がある。
【0036】
また、図5において、リーダ21の通信可能な範囲(以下、通信範囲と称する)βは、単一のICチップ17との通信を実現できるように極めて狭い。例えば、ボール部12の直径が50mmの場合には、通信範囲βが半径5mm程度の半球状になるような指向性のアンテナコイルがリーダ21には実装される。
【0037】
次に、図1−図5を参照して、以上の構成を有するトラックボール装置1のユーザによる操作について説明する。ユーザがボール部12を操作しない状態(以下、初期状態と称する)では、可動磁性部材15において、互いに対向する2組の端面のそれぞれは、固定磁性部材20a,20b,20d及び20eのいずれかと磁気結合して引きつけられる。また、可動磁性部材15において、残りの2端面のいずれかは、固定磁性部材20cと磁気結合して引きつけられる。つまり、初期状態では、各可動磁性部材15の各端面が、いずれかの固定磁性部材20の端面と対峙した状態で、ボール部12は静止する。
【0038】
ユーザは、必要に応じて、ボール部12の上部に力を加えて、ボール部12を自分の好きな方向に回転させる。その一例として、以下では、X軸の方向に、ユーザが力を加えた場合について説明する。この場合、ボール部12は、X軸方向への回転力が加えられることにより穴α内で、可動磁性部材15においてY軸に平行な棒体の軸を中心として穴α内で回転する。具体的には、図3及び図4の状態が初期状態であり、このような初期状態で、X軸の正方向への力がボール部12に加わると仮定する。この仮定下では、固定磁性部材21c−21eに対向する、可動磁性部材15を構成する棒体の各端面がそれぞれの吸引力に逆らった状態で、ボール部12は回転を開始する。やがて、初期状態を基準にして、ボール部12が45度回転した後から、固定磁性部材21c−21eは、それぞれに近づいてきた棒体の各端面を引きつける。以上のことから、ユーザの手又は指には、ボール部12が90度回転する毎に、その回転が重くなったり軽くなったりするように感じる。ここで、以下の説明では、このような感覚をクリック節度感と称する。
【0039】
なお、ユーザは、ボール部12にY軸方向への力を加えた場合にも、同様のクリック節度感を感じる。
【0040】
また、X軸又はY軸に対して角度がある方向に力を加えた場合、ボール部12は、最初、力が作用した方向に回転するが、やがて、X軸方向及びY軸方向のいずれかに回転することになる。つまり、各固定磁性部材20は、ボール部12の自由な方向への回転を制限する。
【0041】
さらに、上述から明らかなように、ユーザがクリック節度感を得るために、ボール部12は、X軸方向及びY軸方向のいずれかに回転する。それ故、例えば、図3の状態で、ボール部12にY軸の正方向の力が加えられた場合、加えられた力により、ボール部12と、穴αに配置された支持部材との接触力が弱まり、ボール部12は、固定磁性部材20bに近づこうとする。しかしながら、固定磁性部材20cが可動磁性部材15を引きつけるので、ボール部12には、Y軸の負方向への力も加わるので、ボール部12の表面と、各固定磁性部材20との間の距離は、実質的に等しく保たれる。
【0042】
以上説明したように、可動磁性部材15及び複数の固定磁性部材20が組み込まれることにより、ユーザにクリック節度感を与えることが可能なトラックボール装置1を実現している。
【0043】
また、トラックボール装置1には、可動磁性部材15及び複数の固定磁性部材20が組み込まれる。従って、初期状態では、各固定磁性部材20には、互いに異なる棒体の端面が対向する。この初期状態において、トラックボール装置1の電源が投入されると、まず、コントローラ22(図5参照)は、ボタン11a−11eの内、ユーザにより操作されたものに割り当てられている車載機器を特定した後、操作対象となる車載機器に画像要求信号Sc(前述)を送信する。車載機器は、画像要求信号Scに応答してGUI画像データDaをコントローラ22に送信する。コントローラ22は、受信したGUI画像データDaをディスプレイ2(図2参照)に転送する。その結果、ディスプレイ2には、例えば、図6に示すようなGUI画像が表示される。ここで、図6は、空調システムが操作対象となる場合のGUI画像を示す模式図である。図6において、GUI画像は、カーソルが上下左右方向に移動可能に構成される。また、カーソルの初期位置は予め決められており、その移動方向及び移動量は、ボール部12の回転方向及び回転量に応じて決定される。
【0044】
車載機器の特定の終了後、少なくともリーダ21cは、自身と対向するICチップ17と通信を行って、それに格納されている位置情報を読み出して、コントローラ22(図5参照)に送信する。コントローラ22は、リーダ21cから送信された位置情報から、可動磁性部材15を構成する棒体のどの端面が鉛直上向きであるかを特定する。例えば、図3に示すように、ICチップ17cがリーダ21cと対向する場合には、コントローラ22は、ICチップ17fが配置されている端面が鉛直上方向を向いていると特定する。
【0045】
その後、ユーザは、必要に応じて、ボール部12を少なくとも90度回転させる。その結果、初期状態の時とは異なるICチップ17がリーダ21cと対向する。リーダ21cは、上述と同じ要領で、現在対向しているICチップ17から位置情報を受け取り、コントローラ22に送信する。コントローラ22は、前回受け取った位置情報と、今回受け取った位置情報とから、ボール部12がX軸及びY軸のいずれの方向に何度回転したかを算出した後、ボール部12の回転方向及び回転量に従って、GUI画像のカーソルの移動方向及び移動量を決定し、これらを機器制御信号Sbとしてディスプレイ2に送信する。その結果、ディスプレイ2の表示画像上では、カーソルが、コントローラ22で決定された方向へ、決定された量だけ移動する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るトラックボール装置1によれば、ICチップ17に自身の絶対的な座標位置を格納することにより、ボール部12がどの方向にどれだけ回転したかを正確に算出することができる。具体的には、光学方式及びロータリーエンコーダ方式を採用した従来のトラックボール装置(前述の特許文献1参照)では、検出したボールの回転量に誤差が重畳される場合がある。さらに、従来のトラックボール装置では、相対的なボールの回転量に基づいてGUIの表示変更が行われる。以上のことから、磁力により特定の回転角でボールを静止させる場合には、GUIの表示と、ボールのクリック節度感とが一致しなくなる可能性がある。しかしながら、本トラックボール装置1によれば、絶対的な座標位置に基づいて、ボール部12の回転量及び回転方向が算出されるので、GUIの表示と、ボールのクリック節度感とは一致する。
【0047】
なお、以上の実施形態では、各ICチップ17には、それぞれの位置情報を格納するようにしていた。しかし、これに限らず、好ましくは全てのICチップ17は、ボール部12の特徴、例えば、光学的に読み取り可能なパターンが表面にプリントされているか否かを示す情報を格納していても構わない。このようなパターンがボール部12にプリントされており、さらに、これを読み取るための発光素子及びコントローラが筐体19に実装されている場合には、トラックボール装置1は、周知の光学式トラックボール装置として機能することが可能となる。また、ボール部12が可動磁性部材15を備えているか否かを示す情報が、各ICチップ17にさらに格納されていても構わない。このような情報が格納されることによって、トラックボール装置1は、クリック節度感をユーザに提供できないことを判断できるようになる。
【0048】
上記の特徴情報の他の例としては、図7に示すように、表層18において、可動磁性部材15(点線参照)を構成する棒体の各端面上に、互いに異なる色のマーキング23が塗られている場合、各ICチップ17は、自身に対向するICチップ17上に描かれているマーキング23の色を示す色情報を格納する。なお、図7では、都合上、5個のマーキング23a−23c、23e及び23fが描かれているが、マーキング23dは、表層18上であってマーキング23eに対向する位置に描かれている。このようなマーキング23が描かれている場合、コントローラ22は、現在鉛直上方向を向いているマーキング23の色をディスプレイ2に表示させることが可能となる。これにより、ユーザは、見やすい位置に設置されるディスプレイ2により、ボール部12が現在向いている方向を知ることができる。さらには、音声ガイダンスを使って、ボール部12の真上の色を青から赤に変更させるようなアドバイスを、トラックボール装置1は出力することも可能となる。
【0049】
なお、マーキング23は、互いに異なる色だけに限らず、互いに異なる形状、文字又はアイコンで描かれても構わない。この場合、各ICチップ17は、形状、文字又はアイコンを示す情報を格納する。
【0050】
また、以上の説明では、GUI画像を見ながらユーザが車載機器を操作する場合について説明した。しかし、これに限らず、GUI画像の表示及び非表示を選択可能な車載機器も存在する。例えば、カーオーディオシステムがこのような車載機器に該当する。前述の初期状態において、トラックボール装置1の電源が投入されると、まず、コントローラ22(図5参照)は、オーディオシステムに割り当てられているボタン11が操作された場合には、そのボタン11が長押しされたか否かを判断する。
【0051】
今、ボタン11の長押しされた場合に、GUI画像を表示しないとコントローラ22が判断すると仮定する。この仮定下では、対象となるボタン11が長押しされた場合、コントローラ22は、画像要求信号Sc(前述)を送信せずに、ボール部12のどの部分が鉛直上方向を向いているかに応じて、オーディオシステムを制御する。例えば、図7に示すマーキング23aが上を向いている場合、CDを再生するよう、コントローラ22は制御する。また、マーキング23bが上を向いている場合には、特定のFM放送を受信し音声出力する。このような操作を可能にすることにより、ディスプレイ2が、例えばナビゲーションシステムのように他の車載機器により占有されている場合であっても、ユーザは、トラックボール装置1を操作することにより、オーディオシステムを制御することが可能となる。
【0052】
また、以上の説明では、各ICチップ17は、可動磁性部材15の端面上に配置されていたが、これに限らず、図8に示すように、表層18のいずれの位置に配置されても構わない。また、可動磁性部材15がボール部12に備わっていない場合には、ICチップ17の総数が多くなればなるほど、コントローラ22は、ユーザにより加えられた力に応じたボール部12の回転方向及び回転量を正確に追跡することが可能となる。
【0053】
本発明を詳細に説明したが、上記説明はあらゆる意味において例示的なものであり限定的なものではない。本発明の範囲から逸脱することなしに多くの他の改変例及び変形例が可能であることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るトラックボール装置は、ボールに情報を格納できるという技術的効果が要求される車載用途等に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックボール装置であって、
ボールと、
前記ボールに内蔵された少なくとも1個の非接触ICチップと、
前記非接触ICチップに格納された情報を読み取るリーダとを備える、トラックボール装置。
【請求項2】
前記非接触ICチップは、自身の位置を特定可能な情報を格納する、請求項1に記載のトラックボール装置。
【請求項3】
前記非接触ICチップは、前記ボールの特徴を示す情報を格納する、請求項1に記載のトラックボール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/059735
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516276(P2005−516276)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016858
【国際出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】