説明

トランスおよびこのトランスを備えたスイッチング電源装置

【課題】低出力リプル化を実現し、装置全体の低コスト化並びに小型化を可能としたスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】1次巻線Npと2次巻線Ns1、Ns2を有するトランスであり、トランスを構成するコアにギャップを設けた複数の磁脚L1、L2とギャップの無い磁脚を有し、ギャップを設けた磁脚の周囲に1次巻線を巻回するとともに、コアのギャップを設けた磁脚に2次巻線を巻回し、トランスの等価励磁インダクタンスと等価励磁インダクタンスとの比を、スイッチ素子がオンしている期間の等価巻線の電圧と、等価巻線の電圧との比に一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低出力リプル化、小型化、並びに低コスト化を実現するトランスおよびこのトランスを備えたスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源装置として、図2に示すように、1次側を、直流電源VINの両端にトランスTの1次巻線Npとスイッチ素子Q1とを直列に接続し、直流電源VINの両端にトランスTの3次巻線Nrと整流素子D3とを直列に接続して構成し、2次側を、トランスTの二次巻線Ns整流用素子D1、転流用素子D2、インダクタLoおよびコンデンサCoからなるフィルタ回路を接続して構成してある、いわゆるフォワード方式スイッチング電源装置といわれるスイッチング電源装置が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、入力が、交流電源の場合、入力高調波電流を抑制するために図3に示すように、交流電源とスイッチング電源装置との間に力率改善回路(以下「PFC」部という。)を接続して構成してあるものが公知である。
【特許文献1】特開2006−253618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図2は、従来のフォワード型電源装置の例である。以下に、その基本動作について説明する。トランスTの1次巻線Npにはスイッチ素子Q1がオンしている期間、入力電圧が印加される。これと同時にトランスTの二次巻線Nsには、Ns/Npの巻数比倍された電圧が誘起される。この電圧は、ダイオードD1で整流され、インダクタLoにエネルギを蓄積し、コンデンサCoで平滑し、負荷に供給される。スイッチ素子Q1が、オフの期間では、インダクタLoに蓄積されたエネルギをダイオードD2により放出し、コンデンサCoで平滑し負荷に供給される。これと同時にトランスTのリセット巻線Nr、ダイオードD3によりトランスTのリセットを行っている。
【0005】
この場合の出力電流リプルΔILoは、次式数1で求められる。
【0006】
【数1】

【0007】
ここで、VNsは、スイッチ素子Q1が、オンしている期間のトランスTの2次巻線電圧、Voは出力電圧、VはダイオードD1の順方向電圧、LはインダクタLoのインダクタンス値、Q1tonはスイッチ素子Q1がオンしている時間である。
【0008】
図2のスイッチング電源装置において、出力リプルを低減するには、出力フィルタのインダクタLoのインダクタンス値Lを大きくする事で実現できる。しかし、インダクタLoの磁気飽和を避けるためには巻数の増加、コア断面積の拡大が必要になる。この事によりインダクタLoの大型化、コスト上昇を招くという課題が生じる。特に出力電圧Voが高くなる程、インダクタLoはより高いインダクタンス値が必要になり、この課題が顕著になる。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、装置全体を大型化する事無く、出力リプル低減化を実現し、装置全体の低コスト化並びに小型化を可能としたスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の事項を提案している。
【0011】
(1)本発明は、1次巻線と2次巻線を有するトランスであり、前記トランスを構成するコアにギャップを設けた複数の磁脚とギャップの無い磁脚を有し、前記ギャップを設けた磁脚の周囲に前記1次巻線を巻回してあることを特徴とするトランスを提案している。
【0012】
(2)本発明は、(1)のトランスについて、前記コアのギャップを設けた磁脚に前記2次巻線を巻回して構成してあることを特徴とするトランスを提案している。
【0013】
(3)本発明は、(1)または(2)のトランスについて、前記トランスの等価励磁インダクタンスと等価励磁インダクタンスとの比を、スイッチ素子がオンしている期間の等価巻線の電圧と、等価巻線の電圧との比に一致させていることを特徴とするトランスを提案している。
【0014】
(4)本発明は、(1)から(3)のいずれかのトランスを備え、直流電源に前記トランスの1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、前記トランスの1次巻線間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してあることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0015】
(5)本発明は、(1)から(3)のいずれかのトランスを備え、出力電圧安定化回路の出力に前記トランスの1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、前記トランスの1次巻線間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してあることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0016】
(6)本発明は、(1)から(3)のいずれかのトランスを備え、出力電圧安定化回路の出力にインダクタと第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、前記第1のスイッチ素子の両端に前記トランスの1次巻線と第1のコンデンサとの直列回路を接続し、前記第1のスイッチ素子の両端に第2のスイッチ素子と第2のコンデンサとの直列回路を接続してあることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0017】
(7)本発明は、(4)から(6)のいずれかのスイッチング電源装置について、2次側がセンタタップ整流回路で構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0018】
(8)本発明は、(5)または(6)のスイッチング電源装置について、前記出力電圧安定化回路として力率改善回路を用いていることを特徴とするスイッチング電源装置を提案している。
【0019】
つまり、本発明のスイッチング電源装置は、交流電源を受けるPFC部とDC/DCコンバータ部が直列に組み合わされるスイッチング電源装置であり、前記DC/DCコンバータ部は4個の磁脚を設けたコアを備え、このコアの内側2本の磁脚の周辺に1次巻線を巻き回し、一方の該内側の磁脚の周辺に第1の2次巻線を巻き回し、他方の該内側の磁脚の周辺に第2の2次巻線を巻き回して構成したトランスを備え、該PFC部の出力に該トランス1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、該PFC部の出力と該トランス1次巻線との接続点と該トランス1次巻線と該第1のスイッチ素子との接続点間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してあり、該トランスの2次側に同期整流MOSFET、またはダイオードで構成された整流回路を接続し、この整流回路にフィルタ回路を接続し、出力電圧を検出して該第1のスイッチ素子と該第2のスイッチ素子を交互にオン、オフ制御する制御回路を有し、該トランスのコアの内側2本の磁脚それぞれには該PFC部出力電圧に合わせたギャップが設けられている。
【0020】
また、直流電源を受ける出力電圧安定化部とDC/DCコンバータ部が直列に組み合わされるスイッチング電源装置であり、前記DC/DCコンバータ部は四個の磁脚を設けたコアを備え、このコアの内側2本の磁脚の周辺に1次巻線を巻き回し、一方の該内側の磁脚の周辺に第1の2次巻線を巻き回し、他方の該内側の磁脚の周辺に第2の2次巻線を巻き回して構成したトランスを備え、該出力電圧安定化部の出力に該トランス1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、該出力電圧安定化部の出力と該トランス1次巻線との接続点と該トランス1次巻線と該第1のスイッチ素子との接続点間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してあり、該トランスの2次側に同期整流MOSFET、またはダイオードで構成された整流回路を接続し、この整流回路にフィルタ回路を接続し、出力電圧を検出して該第1のスイッチ素子と該第2のスイッチ素子を交互にオン、オフ制御する制御回路を有し、該トランスのコアの内側2本の磁脚それぞれには該出力電圧安定化部出力電圧に合わせたギャップが設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のスイッチング電源装置に比べて、出力インダクタを用いずに、(一次側ローサイドスイッチ素子がオン時の)出力リプルを大幅に低減することができ、出力インダクタとトランスの一体化、フィルタコンデンサの削減により装置全体の低コスト化並びに小型化を可能とすることができるという効果がある。
【0022】
また、DC/DCコンバータ部がBHB方式のスイッチング電源装置においては、フォワード方式のDC/DCコンバータ部に比較して、入力電流リプルを低減する事が可能であるため、PFC部または、出力電圧安定化部が、DC/DCコンバータ部の入力電流を許容するに必要な出力コンデンサを削減することが可能であり、スイッチング電源装置全体のさらなる低コスト化並びに小型化を可能とすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明を実施するための最良の形態を示すものである。
<第1の実施形態>
【0024】
本実施形態に係るスイッチング電源装置は、交流電源を受けるPFC部と、DC/DCコンバータ部には、図7に示すような4個の磁脚を設けたコアを備え、このコアの内側2本の磁脚の周辺に1次巻線を巻き回し、一方の該内側の磁脚の周辺に、第1の二次巻線を巻き回し、他方の該内側の磁脚の周辺に第2の2次巻線を巻き回して構成したトランスを備え、該PFC部の出力に該トランス1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、該PFC部の出力と該トランス1次巻線との接続点と該トランス1次巻線と該第1のスイッチ素子との接続点間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してある。
【0025】
また、二次側においては、第1の整流素子D1または同期整流MOSFETと第1の2次巻線Ns1とを直列に接続し、この直列回路と並列に、第2の整流素子D2または、同期整流MOSFETと、第2の二次巻線Ns2との直列回路を接続してある。さらに、これら直列回路の両端に平滑コンデンサCoを設けてある。
【0026】
続いて、本実施形態に係るスイッチング電源装置を構成するトランスの一例を図7に示す。
本実施形態のトランスT1は、底板に4個の磁脚を並列に隔に設けてある。内側に設けた2つの磁脚のうち一方の磁脚に第1の2次巻線Ns1を巻回し、他方の磁脚に第2の2次巻線Ns2を巻回してある。また、2次巻線Ns1、Ns2を外側から覆うように1次巻線Npを巻回してある。ここで、1次側がフォワードアクティブクランプまたはBHB方式、2次側がセンタタップ整流回路の場合のトランスT1の等価回路図を図8に示す。
【0027】
数2に示すように、該トランスT1の等価励磁インダクタンスLp1と等価励磁インダクタンスLp2との比は、該第1のスイッチ素子がオンしている期間の等価巻線Np1電圧VNp1と、等価巻線Np2電圧VNp2との比と一致させている。この際、該PFC部または該出力電圧安定化部の出力電圧値は等価巻線Np1電圧値VNp1と、等価巻線Np2電圧値VNp2との和に等しくしている。
【0028】
【数2】

【0029】
また、該等価励磁インダクタンスLp1値は、図9の第1の中脚L1に設けたギャップLg1の距離を変える事により行っている。同じく、該等価励磁インダクタンスLp2値は図9の第2の中脚L2に設けたギャップLg2の距離を変える事により行っている。
【0030】
以上のように構成してあるスイッチング電源装置のDC/DCコンバータ部は、以下のように動作する。
図1に示す実施例のトランスTは、等価的に、図8に示すトランスT1とT2の2つのトランスとして表す事ができる。
【0031】
先ず、図14に示す時間T0の際に第1のスイッチ素子Q1がオンするが、力率改善回路出力電圧はトランス1次側漏れインダクタンスに印加されている。第1の1次巻線Np1と、第2の1次巻線Np2はそれぞれ短絡状態であり、2次側への電力供給は行われていない。2次側の第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2とが両方とも導通している期間である。
【0032】
続いて、図14に示すように時間T1で1次側電流は、2次側出力電流の1次換算値に達し、第1の1次巻線Np1と第2の1次巻線Np2との両端に力率改善回路出力電圧が印加される。2次側の第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2との両方を流れていた電流は、全て第1の整流ダイオードD1に移行し、第2の励磁インダクタンスLp2への充電及び第1の1次巻線Np1から2次側への電力供給が始まる。
【0033】
時間T2になると、第1のスイッチ素子Q1がオフする。その時トランス1次側漏れインダクタンスに蓄積されたエネルギにより第1のスイッチ素子Q1の内部コンデンサCQ1は充電され、第2のスイッチ素子Q2の内部コンデンサCQ2は放電される。この時、2次側への電力供給は続いている。
【0034】
時間T3になると、第2のスイッチ素子Q2の寄生ダイオードDQ2が導通する。第1の一次巻線Np1と、第2の一次巻線Np2の電圧はそれぞれゼロボルトになり2次側の第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2とが両方とも導通している転流期間になる。
【0035】
時間T4で第2のスイッチ素子Q2がオンする。この時、第2のスイッチ素子Q2はこの寄生ダイオードDQ2が導通した状態であるので、ゼロボルトスイッチングする。
【0036】
時間T5になると、第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2との両方を流れていた電流は、全て第2の整流ダイオードD2に移行し、トランスの1次側をクランプし、第2の励磁インダクタンスLp2に蓄積されたエネルギの放出が第2の1次巻線Np2より行われ、2次側への電力供給が始まる。
【0037】
時間T6で第2のスイッチ素子Q2がオフする。漏れインダクタンスに蓄積されたエネルギにより第2のスイッチ素子Q2の内部コンデンサCQ2は充電され、第1のスイッチ素子Q1の内部コンデンサCQ1は放電される。
【0038】
時間T7になると、第1のスイッチ素子Q1の内部コンデンサCQ1は充分放電されており、第1のスイッチ素子Q1の寄生ダイオードDQ1が導通し始める。次のサイクルが始まるときには、第1のスイッチ素子Q1の寄生ダイオードDQ1が導通した状態であるので、次の新たなスイッチングサイクルでは、第1のスイッチ素子Q1はゼロボルトスイッチングする。
【0039】
したがって、本実施形態に係るスイッチング電源装置は、以上のような作用により出力リプルを低減することができ、またトランスと出力インダクタが一体化できるため、従来のスイッチング電源装置に比べて装置全体の低コスト化並びに小型化を可能とすることができる。
【0040】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について図4の図に従って説明する。
本実施形態に係るスイッチング電源装置は、交流電源を受けるPFC部と、DC/DCコンバータ部には、図7に示すような4個の磁脚を設けたコアを備え、このコアの内側2本の磁脚の周辺に1次巻線を巻き回し、一方の該内側の磁脚の周辺に第1の2次巻線を巻き回し、他方の該内側の磁脚の周辺に第2の2次巻線を巻き回して構成したトランスを備え、該PFC部の出力にインダクタと第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、該第1のスイッチ素子の両端に該トランス1次巻線と第1のコンデンサとの直列回路を接続し、該トランス1次巻線の両端に第2のスイッチ素子と第2コンデンサとの直列回路を接続してある。
【0041】
2次側においては、第1の整流素子D1または同期整流MOSFETと第1の2次巻線Ns1とを直列に接続し、この直列回路と並列に第2の整流素子D2または同期整流MOSFETと第2の二次巻線Ns2との直列回路を接続してある。これら直列回路の両端に平滑コンデンサCoを設けてある。
【0042】
続いて、本実施形態に係るスイッチング電源装置を構成するトランスの一例を図7に示す。
本実施形態のトランスT1は、底板に4個の磁脚を並列に隔に設けてある。内側に設けた2つの磁脚のうち一方の磁脚に第1の2次巻線Ns1を巻回し、他方の磁脚に第2の2次巻線Ns2を巻回してある。また、2次巻線Ns1、Ns2を外側から覆うように1次巻線Npを巻回してある。ここで、一次側がフォワードアクティブクランプまたはBHB方式、二次側がセンタタップ整流回路の場合の該トランスT1の等価回路図を図10に示す。
【0043】
数3に示すように、該トランスT1の等価励磁インダクタンスLp1と等価励磁インダクタンスLp2との比は、該PFC部または該出力電圧安定化部の出力電圧値に合わせた等価巻線Np1電圧VNp1と、等価巻線Np2電圧VNp2との比と一致させている。
【0044】
【数3】

【0045】
また、該等価励磁インダクタンスLp1値は、図9の第1の中脚L1に設けたギャップLg1の距離を変える事により行っている。同じく、該等価励磁インダクタンスLp2値は、図9の第2の中脚L2に設けたギャップLg2の距離を変える事により行っている。
【0046】
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について図5の図に従って説明する。
本実施形態に係るスイッチング電源装置は、交流電源を受けるPFC部と、DC/DCコンバータ部は図11に示すような4個の磁脚を設けたコアを備え、このコアの内側2本の磁脚の周辺に1次巻線を巻き回し、一方の該内側の磁脚の周辺に第1の2次巻線を巻き回し、他方の該内側の磁脚の周辺に第2の二次巻線を巻き回し、内側に設けた2つの磁脚周囲に3次巻線を巻回して構成したトランスを備え、該PFC部の出力に該トランス1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、該PFC部の出力と該トランス1次巻線との接続点と該トランス1次巻線と該第1のスイッチ素子との接続点間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してある。
【0047】
また、2次側においては、第1の整流素子D1または同期整流MOSFETと第1の2次巻線Ns1とを直列に接続し、この直列回路と並列に第2の整流素子D2または同期整流MOSFETと第2の2次巻線Ns2との直列回路を接続してある。さらに、これら直列回路の両端には、3次巻線Nrと平滑コンデンサCoとの直列回路を設けてある。
【0048】
続いて、本実施形態に係るスイッチング電源装置を構成するトランスの一例を図11に示す。
本実施形態のトランスT1は、底板に4個の磁脚を並列に隔に設けてある。内側に設けた2つの磁脚のうち一方の磁脚に第1の2次巻線Ns1を巻回し、他方の磁脚に第2の2次巻線Ns2を巻回してある。また、2次巻線Ns1,Ns2を外側から覆うように1次巻線Npを巻回してある。また、2次巻線Ns1,Ns2を外側から覆うように3次巻線Nrを巻回してある。該トランスT1の等価回路図を図12に示す。
【0049】
数4に示すように、該トランスT1の等価励磁インダクタンスLp1と等価励磁インダクタンスLp2との比は、該PFC部または該出力電圧安定化部の出力電圧値に合わせた等価巻線Np1電圧VNp1と、等価巻線Np2電圧VNp2との比と一致させている。
【0050】
【数4】

【0051】
また、該等価励磁インダクタンスLp1値は、図9の第1の中脚L1に設けたギャップLg1の距離を変える事により行っている。同じく、該等価励磁インダクタンスLp2値は、図9の第2の中脚L2に設けたギャップLg2の距離を変える事により行っている。
【0052】
<第4の実施形態>
続いて、第4の実施形態について図5の図に従って説明する。
本実施形態に係るスイッチング電源装置は、交流電源を受けるPFC部と、DC/DCコンバータ部には、図11に示すような4個の磁脚を設けたコアを備え、このコアの内側2本の磁脚の周辺に1次巻線を巻き回し、一方の該内側の磁脚の周辺に第1の2次巻線を巻き回し、他方の該内側の磁脚の周辺に第2の2次巻線を巻き回し、内側に設けた2つの磁脚周囲に3次巻線を巻回して構成したトランスを備え、該PFC部の出力にインダクタと第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、該第1のスイッチ素子の両端に該トランス1次巻線と第1のコンデンサとの直列回路を接続し、該トランス1次巻線の両端に第2のスイッチ素子と第2のコンデンサとの直列回路を接続してある。
【0053】
また、2次側においては、第1の整流素子D1または同期整流MOSFETと第1の2次巻線Ns1とを直列に接続し、この直列回路と並列に第2の整流素子D2または同期整流MOSFETと第2の二次巻線Ns2との直列回路を接続してある。さらに、これら直列回路の両端に3次巻線Nrと平滑コンデンサCoとの直列回路を設けてある。
【0054】
続いて、本実施形態に係るスイッチング電源装置を構成するトランスの一例を図11に示す。
本実施形態のトランスT1は、底板に4個の磁脚を並列に隔に設けてある。内側に設けた2つの磁脚のうち一方の磁脚に第1の2次巻線Ns1を巻回し、他方の磁脚に第2の2次巻線Ns2を巻回してある。また、2次巻線Ns1,Ns2を外側から覆うように1次巻線Npを巻回してある。また、2次巻線Ns1,Ns2を外側から覆うように3次巻線Nrを巻回してある。該トランスT1の等価回路図を図13に示す。
【0055】
数5に示すように、該トランスT1の等価励磁インダクタンスLp1と等価励磁インダクタンスLp2との比は、該PFC部または該出力電圧安定化部の出力電圧値に合わせた等価巻線Np1電圧VNp1と、等価巻線Np2電圧VNp2との比と一致させている。
【0056】
【数5】

【0057】
また、該等価励磁インダクタンスLp1値は、図9の第1の中脚L1に設けたギャップLg1の距離を変える事により行っている。同じく、該等価励磁インダクタンスLp2値は、図9の第2の中脚L2に設けたギャップLg2の距離を変える事により行っている。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、本発明におけるフォワードアクティブクランプ方式のスイッチング電源装置、並びにBHB方式のスイッチング電源装置の実施形態において、二次側の整流素子としてダイオードD1,D2を用いたが、MOSFETなどのスイッチング素子を用いた同期整流方式を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、従来例のスイッチング電源装置に比べてコストの高いトランスと出力インダクタとを一体化する事ができ、装置全体を大型化することなく出力リプルを低減する事を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成図である。
【図2】従来のフォワード型電源装置の回路構成図である。
【図3】従来の力率改善回路付きフォワード型電源装置の回路構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるスイッチング電源装置の回路構成図である。
【図5】本発明の第3の実施形態におけるスイッチング電源装置の回路構成図である。
【図6】本発明の第4の実施形態におけるスイッチング電源装置の回路構成図である。
【図7】第1および第2の実施形態におけるトランスの実施例の断面図である。
【図8】第1の実施形態におけるトランスの等価回路図である。
【図9】第1の実施形態におけるトランスのコアの構造図である。
【図10】第2の実施形態におけるトランスの等価回路図である。
【図11】第3および第4の実施形態におけるトランスの実施例の断面図である。
【図12】第3の実施形態におけるトランスの等価回路図である。
【図13】第4の実施形態におけるトランスの等価回路図である。
【図14】第2の実施形態における動作波形図である。
【符号の説明】
【0061】
T トランス
Q スイッチ素子
L インダクタ
C コンデンサ
D ダイオード
Np 1次巻線
Ns 2次巻線
Nr 3次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線を有するトランスであり、前記トランスを構成するコアにギャップを設けた複数の磁脚とギャップの無い磁脚を有し、前記ギャップを設けた磁脚の周囲に前記1次巻線を巻回してあることを特徴とするトランス。
【請求項2】
前記コアのギャップを設けた磁脚に前記2次巻線を巻回して構成してあることを特徴とする請求項1記載のトランス。
【請求項3】
前記トランスの等価励磁インダクタンスと等価励磁インダクタンスとの比を、スイッチ素子がオンしている期間の等価巻線の電圧と、等価巻線の電圧との比に一致させていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトランス。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載のトランスを備え、直流電源に前記トランスの1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、前記トランスの1次巻線間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してあることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載のトランスを備え、出力電圧安定化回路の出力に前記トランスの1次巻線と第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、前記トランスの1次巻線間にコンデンサと第2のスイッチ素子との直列回路を接続してあることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載のトランスを備え、出力電圧安定化回路の出力にインダクタと第1のスイッチ素子との直列回路を接続し、前記第1のスイッチ素子の両端に前記トランスの1次巻線と第1のコンデンサとの直列回路を接続し、前記第1のスイッチ素子の両端に第2のスイッチ素子と第2のコンデンサとの直列回路を接続してあることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項7】
2次側がセンタタップ整流回路で構成されていることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記出力電圧安定化回路として力率改善回路を用いていることを特徴とする請求項5または6に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−189144(P2009−189144A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25973(P2008−25973)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】