説明

トランスファ装置

【課題】トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにすることである。
【解決手段】進退動作と開閉動作をさせる進退開閉駆動装置7を、一対のビーム1、2の両端側を、ビーム1、2の延びる方向とこれらの動作をさせる方向とを包含する水平な動作平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアーム8で支持し、これらの各関節付きアーム8の関節8aの前側の前アーム部8bの先端側に、ビーム1、2の両端側を動作平面内で旋回可能に連結し、関節8aの後側の後アーム部8cの基端側を、昇降駆動装置3の昇降駆動ベース6に動作平面内で旋回移動可能に支持して、各関節付きアーム8の関節8aと各後アーム部8cの基端側をサーボモータ11、12で旋回駆動することにより、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファプレスに配列された複数の金型にワークを順送りするトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造プレス等のトランスファプレスには、ワークの送り方向に配列された複数の金型の前後に、ワークを前後方向からクランプする複数組のフィンガを設けた一対の平行なビームを送り方向に延びるように配置し、この金型の前後に配置した一対のビームを、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をさせるように駆動装置で駆動し、フィンガでクランプしたワークを配列された金型に順送りするトランスファ装置を備えたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2に記載されたトランスファ装置では、一対のビームの進退動作、開閉動作および昇降動作の3次元動作を、いずれもサーボモータの回転を直線運動に変換するねじ機構を用いた直線駆動装置で行うようにしている。これらの各動作の駆動装置は、通常、トランスファプレスのワークの供給端側と排出端側のプレス本体の外側に配置され、送り方向に延びる各ビームの両端部を支持して駆動するようになっている。進退動作の駆動装置は、ビームの一端側のみに配置され、他端側は支持機構のみを設けたものもある。
【0004】
特許文献1に記載されたものは、一対のビームを3次元動作させる各サーボモータを各ビームで共通のものとし、サーボモータの設置個数を減らしている。また、特許文献2に記載されたものは、ねじ機構にボールねじを用いるとともに、3次元動作させる各サーボモータを各ビームで独立のものとして、トランスファプレスのワークの供給端側と排出端側とに前後方向でスペースを開け、ワークの搬出入装置の設置スペースを確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−175030号公報
【特許文献2】特開2005−279675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されたトランスファ装置は、一対のビームを進退動作、開閉動作および昇降動作させる各駆動装置を、サーボモータの回転を直線運動に変換するねじ機構を用いた直線駆動装置としているので、これらの直線駆動装置が大寸法のものとなり、コンパクトな設計を阻害する問題がある。また、回転運動を直線運動に変換するねじ機構は、ボールねじを用いたとしても、運動エネルギの変換ロスが大きいので、サーボモータも大型のものが必要となり、さらにコンパクトな設計を阻害する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ワークの送り方向に配列された複数の金型の前後に、ワークを前後方向からクランプするフィンガを設けた一対の平行なビームを送り方向に延びるように配置し、この金型の前後に配置した一対のビームを、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をさせるように駆動装置で駆動して、前記フィンガでクランプしたワークを配列された金型に順送りするトランスファ装置において、前記開閉動作または昇降動作をさせる駆動装置を、前記一対の各ビームの両端側を、それぞれビームの延びる方向と前記動作をさせる方向とを包含する動作平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、前記ビームの両端側を前記動作平面内で旋回可能に連結し、前記関節の後側の後アーム部の基端側をベースに前記動作平面内で移動可能に支持して、前記ビームの両端側を支持する少なくとも一方の前記関節付きアームの関節を旋回駆動する構成を採用した。
【0009】
すなわち、開閉動作または昇降動作をさせる駆動装置を、一対の各ビームの両端側を、それぞれビームの延びる方向と動作をさせる方向とを包含する動作平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、ビームの両端側を動作平面内で旋回可能に連結し、関節の後側の後アーム部の基端側をベースに動作平面内で移動可能に支持して、ビームの両端側を支持する少なくとも一方の関節付きアームの関節を旋回駆動することにより、大寸法で運動エネルギの変換ロスが大きいねじ機構を用いた直線駆動装置を減らして、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにした。
【0010】
前記各関節付きアームの後アーム部の基端側は、前記動作平面内で旋回移動可能に前記ベースに支持して、前記動作平面内で旋回駆動するようにすることができる。
【0011】
前記開閉動作または昇降動作と、これらの動作と前記動作平面が同一となる進退動作とを、前記各関節付きアームの後アーム部の基端側を旋回駆動する駆動装置を共用して行うことにより、直線駆動装置の数を減して、トランスファ装置をよりコンパクトに設計することができる。
【0012】
前記各関節付きアームの後アーム部の基端側は、前記動作平面内で、前記動作をさせる方向と直角方向に直線移動可能に前記ベースに支持して、前記動作をさせる方向と直角方向に直線駆動するようにすることもできる。
【0013】
前記進退動作を行う駆動装置を、前記一対のビームを送り方向へ直線駆動する直線駆動装置とする場合は、前記関節付きアームで動作をさせる方向を前記開閉動作の方向として、前記後アーム部の基端側を直線移動可能に支持するベースを、前記進退動作を行う直線駆動装置の駆動ベースと共用のものとすることができる。
【0014】
前記旋回駆動をサーボモータで行うことにより、一対のビームの動作を精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るトランスファ装置は、開閉動作または昇降動作をさせる駆動装置を、一対の各ビームの両端側を、それぞれビームの延びる方向と動作をさせる方向とを包含する動作平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、ビームの両端側を動作平面内で旋回可能に連結し、関節の後側の後アーム部の基端側をベースに動作平面内で移動可能に支持して、ビームの両端側を支持する少なくとも一方の関節付きアームの関節を旋回駆動するようにしたので、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態のトランスファ装置を示す平面図
【図2】図1の正面図
【図3】(a)、(b)、(c)は、図1のビームの進退動作と開閉動作を説明する平面図
【図4】(a)、(b)、(c)は、図3の開閉動作でワークをクランプする過程を説明する側面図
【図5】図1のビームの3次元動作を説明する動作線図
【図6】第2の実施形態のトランスファ装置を示す平面図
【図7】図6の正面図
【図8】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6の前側のビームの進退動作と開閉動作を説明する平面図
【図9】(a)、(b)、(c)、(d)は、図8の進退動作と開閉動作の変形例を示す平面図
【図10】第3の実施形態のトランスファ装置を示す平面図
【図11】図10の正面図
【図12】(a)、(b)、(c)、(d)は、図11の前側のビームの進退動作と昇降動作を説明する正面図
【図13】(a)、(b)は、それぞれ第3の実施形態のトランスファ装置の変形例を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図5は、第1の実施形態を示す。このトランスファ装置は鍛造用トランスファプレスに装備されたものであり、図1および図2に示すように、プレス本体31のワークWの送り方向に配列された複数の金型32の前後に、ワークWを前後方向からクランプする複数組のフィンガ1a、2aを設けた一対の平行なビーム1、2が送り方向に延びるように配置され、この一対のビーム1、2を、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をするように駆動して、供給端側に配置される搬入装置からワークWを受け取り、受け取ったワークWをフィンガ1a、2aでクランプして配列された各金型32に順送りして、加工されたワークWを排出端側に配置される搬出装置に受け渡す。
【0018】
前記プレス本体31の四隅の各ポスト31aには、供給端側または排出端側の外側に向けて、一対のビーム1、2を昇降動作させる昇降駆動装置3が取り付けられている。各昇降駆動装置3は、サーボモータ4の回転をボールねじ機構5で直線運動に変換する直線駆動装置とされ、ボールねじ機構5のナット5aに、上下に昇降する昇降駆動ベース6が取り付けられている。
【0019】
前記各昇降駆動装置3の昇降駆動ベース6には、一対のビーム1、2に進退動作と開閉動作をさせる進退開閉駆動装置7が取り付けられている。各進退開閉駆動装置7は、ビーム1、2の延びる方向と進退動作および開閉動作をさせる方向とを包含する水平な動作平面内で旋回可能な関節8aを有する関節付きアーム8を備え、関節8aの前側の前アーム部8bの先端側が、ビーム1、2の端部に連結部材9aを介して、動作平面内で旋回可能に連結されるとともに、関節8aの後側の後アーム部8cの基端側が、昇降駆動ベース6に連結ピン10aを介して、動作平面内で旋回可能に連結されている。関節8aはサーボモータ11で、後アーム部8cの基端側はサーボモータ12で、それぞれ動作平面内で旋回駆動されるようになっており、両端部をこれらの進退開閉駆動装置7で支持された各ビーム1、2が、以下に述べるように、進退動作と開閉動作をする。
【0020】
図1に示した状態は、一対のビーム1、2が開いて後退した状態であり、供給端側の各関節付きアーム8が関節8aで左方へ屈曲し、排出端側の各関節付きアーム8が、後アーム部8cを右方へ少し傾斜させて、前アーム部8bを供給端側へ伸ばしている。まず、この状態から、図3(a)に示すように、供給端側の屈曲した各関節付きアーム8が、関節8aの屈曲度を小さくして互いに内向きに延出されるように各サーボモータ11、12で旋回駆動されるとともに、排出端側の各関節付きアーム8が、後アーム部8cを左方へ少し傾斜させ、前アーム部8bを互いに内向きに傾斜させるように各サーボモータ11、12で旋回駆動され、一対のビーム1、2が閉じて各組のフィンガ1a、2aでワークWをクランプする。
【0021】
つぎに、図3(b)に示すように、供給端側と排出端側の各関節付きアーム8が、後アーム部8cを右方へ旋回駆動されるとともに、前アーム部8bが閉じた一対のビーム1、2の間隔を保持するように旋回駆動され、一対のビーム1、2が前進して、クランプした各ワークWを順送りする。
【0022】
続いて、図3(c)に示すように、供給端側の各関節付きアーム8が、後アーム部8cを左方へ少し傾斜させて、前アーム部8bを排出端側へ伸ばすように旋回駆動されるとともに、排出端側の右方へ屈曲した各関節付きアーム8が、関節8aの屈曲度を大きくするように旋回駆動され、一対のビーム1、2が開いて、各組のフィンガ1a、2aでクランプされたワークWがアンクランプされる。こののち、各関節付きアーム8が図1に示した状態に旋回駆動され、開いた一対のビーム1、2が後退位置に戻されて、1回の進退動作と開閉動作が終了する。なお、後述するように、開閉動作と進退動作の前進動作との間には、昇降駆動装置3による昇降動作が介在し、前進動作はビーム1、2が上昇した状態で行われ、後退動作はビーム1、2が下降した状態で行われる。
【0023】
図4は、前記開閉動作でワークWをクランプする過程を2段階に分解して示す。図4(a)は、一対のビーム1、2が開いた状態である。前側のビーム1のフィンガ1aは、前後方向にスライド可能とされ、バネ13で後方へ突出するように付勢されている。後側のビーム2のフィンガ2aはビーム2に固定されている。この状態で、図4(b)に示すように、一対のビーム1、2が閉じる方向に閉動作し、前側の突出したフィンガ1aと後側の固定されたフィンガ2aがワークWの前後に接触すると、後側のビーム2の閉動作が停止する。こののち、図4(c)に示すように、前側のビーム1の閉動作が継続されて、ワークWの前側と接触する突出したフィンガ1aが押し込められ、バネ13の付勢力によってワークWが強固にクランプされる。図示は省略するが、ワークWをアンクランプする過程では、一対のビーム1、2はクランプ時と逆の動作をし、先に前側のビーム1が開動作を開始して、バネ13で付勢されたフィンガ1aがワークWから離れるときに、後側のビーム2も開動作を開始して、一対のビーム1、2が開いた状態に戻る。
【0024】
図5は、上述した一対のビーム1、2の進退動作、開閉動作および昇降動作の3次元動作のサイクルを3次元的に表示した動作線図である。この動作線図は、左右方向を進退方向、奥行方向を開閉方向、上下方向を昇降方向としており、サイクル動作の向きを矢印で示す。このサイクル動作のスタート点を、左下のビームが下降して開いた状態とすると、動作の順序は以下の通りである。
・ 動作の順序:閉(クランプ)→上昇→前進→下降→開(アンクランプ)→後退
【0025】
なお、この3次元動作では、図5の動作線図で動作が切り替わるコーナ部を丸めて示すように、前進動作と後退動作の前後期に、開閉動作または昇降動作を同時に行い、サイクル時間を短縮するようにしている。コーナ部を丸めていない、閉動作から上昇動作への切り替えと、下降動作から開動作への切り替えは、先行動作が完了してから行われる。また、コーナ部を丸めた部分以外では、進退動作は、ビーム1の延びる方向と平行に直線的に行われ、開閉動作は、進退動作方向と直交する前後方向に直線的に行われる。
【0026】
図6乃至図8は、第2の実施形態を示す。このトランスファ装置も鍛造用トランスファプレスに装備されたものであり、図6および図7に示すように、前記一対のビーム1、2を昇降動作させる昇降駆動装置3が、第1の実施形態のものと同様に、四隅の各ポスト31aに取り付けられて、サーボモータ4の回転をボールねじ機構5で直線運動に変換する直線駆動装置とされ、その上下に昇降する各昇降駆動ベース6に、一対のビーム1、2に進退動作をさせる進退駆動装置14が取り付けられている。この進退駆動装置14は、サーボモータ15の回転をボールねじ機構16で直線運動に変換する直線駆動装置とされ、各ボールねじ機構16の直線駆動されるナット16aに、開閉動作をさせる開閉駆動装置17が取り付けられている。
【0027】
前記開閉駆動装置17は、ビーム1、2の延びる方向と開閉動作をさせる方向とを包含する水平な動作平面内で旋回可能な関節18aを有する関節付きアーム18を備え、関節18aの前側の前アーム部18bの先端側が、ビーム1、2の端部に連結部材9bを介して、動作平面内で旋回可能に連結され、関節18aの後側の後アーム部18cが、進退駆動装置14のボールねじ機構16のナット16aと共用のものとなっており、後アーム部18cの基端側が、開閉動作をさせる方向と動作平面内で直角な方向に直線駆動される。各ビーム1、2の排出端側に連結された関節付きアーム18の関節18aは、サーボモータ19で旋回駆動され、供給端側に連結された関節付きアーム18の関節18aは従動旋回して、排出端側の関節18aと同じ旋回角で逆向きに屈曲するようになっており、両端部をこれらの関節付きアーム18で支持された各ビーム1、2が、以下に述べるように、進退動作と開閉動作をする。
【0028】
図8(a)〜(d)は、前記進退動作と開閉動作を行う過程を示す。図8の各図では、表示を拡大できるように、前側のビーム1のみを示す。図8(a)は、ビーム1が開いて後退した状態であり、各進退駆動装置14のナット16aが供給端側へ移動するとともに、供給端側と排出端側のナット16a間の間隔が拡げられて、各関節付きアーム18の前アーム部18bが、互いに内向きに倒伏している。まず、図8(b)に示すように、供給端側と排出端側のナット16aが互いに近づく方向に直線駆動されるとともに、排出端側の倒伏した前アーム部18bが起立するようにサーボモータ19で旋回駆動されて、供給端側の前アーム部18bも起立するように従動旋回し、ビーム1が閉じて各組のフィンガ1aでワークWをクランプする。
【0029】
つぎに、図8(c)に示すように、供給端側と排出端側の各ナット16aが、同じ間隔を保って排出端側へ直線駆動され、ビーム1が前進して、クランプした各ワークWを順送りする。続いて、図8(d)に示すように、供給端側と排出端側のナット16aが互いに離れる方向に直線駆動されるとともに、排出端側の起立した前アーム部18bが倒伏するようにサーボモータ19で旋回駆動されて、供給端側の前アーム部18bも倒伏するように従動旋回し、ビーム1が開いて、各組のフィンガ1aでクランプされたワークWがアンクランプされる。こののち、供給端側と排出端側の各ナット16aが、同じ間隔を保って供給端側へ直線駆動され、図8(a)の状態に戻される。
【0030】
この実施形態でも、第1の実施形態と同様に、開閉動作と進退動作の前進動作との間には、昇降駆動装置3による昇降動作が介在し、前進動作はビーム1、2が上昇した状態で、後退動作はビーム1、2が下降した状態で行われ、図5に示したものと同様の3次元動作が行われる。また、図5でコーナ部を丸めた部分以外では、進退動作は、ビーム1の延びる方向と平行に直線的に行われ、開閉動作は、進退動作方向と直交する前後方向に直線的に行われる。
【0031】
図9(a)〜(d)は、図8(a)〜(d)に示した開閉動作と進退動作の変形例を示す。図9の各図も、前側のビーム1のみを示す。図9(a)は、ビーム1が開いて後退した状態であり、各進退駆動装置14のナット16aが供給端側へ移動するとともに、各関節付きアーム18の前アーム部18bが排出端側へ倒伏している。まず、図9(b)に示すように、排出端側の倒伏した前アーム部18bが起立するようにサーボモータ19で旋回駆動されて、供給端側の前アーム部18bも起立するように従動旋回するとともに、これらの前アーム部18bの起立に伴う、その先端部の供給端側への移動量を補償するように、各ナット16aが排出端側へ直線駆動され、ビーム1が閉じて各組のフィンガ1aでワークWをクランプする。
【0032】
つぎに、図9(c)に示すように、供給端側と排出端側の各ナット16aが、同じ間隔を保って排出端側へ直線駆動され、ビーム1が前進して、クランプした各ワークWを順送りする。続いて、図9(d)に示すように、排出端側の起立した前アーム部18bが排出端側へ倒伏するようにサーボモータ19で旋回駆動されて、供給端側の前アーム部18bも排出端側へ倒伏するように従動旋回するとともに、これらの前アーム部18bの倒伏に伴う、その先端部の排出端側への移動量を補償するように、各ナット16aが供給端側へ直線駆動され、ビーム1が開いて、各組のフィンガ1aでクランプされたワークWがアンクランプされる。こののち、供給端側と排出端側の各ナット16aが、同じ間隔を保って供給端側へ直線駆動され、図9(a)の状態に戻される。
【0033】
図10乃至図12は、第3の実施形態を示す。このトランスファ装置も鍛造用トランスファプレスに装備されたものであり、図10および図11に示すように、前記一対のビーム1、2を開閉動作させる開閉駆動装置20が、四隅の各ポスト31aに外側に向けて取り付けられている。この開閉駆動装置20は、サーボモータ21の回転をボールねじ機構22でナット22aの直線運動に変換する直線駆動装置とされ、ナット22aに取り付けられた前後に開閉する各開閉駆動ベース23に、一対のビーム1、2に進退動作と昇降動作をさせる進退昇降駆動装置24が取り付けられている。開閉駆動装置20は、前後のボールねじ機構22のねじ軸を連結して前後で逆ねじとし、共用のサーボモータ21で前後のナット22aに取り付けられた各開閉駆動ベース23を開閉させるようにすることもできる。
【0034】
前記進退昇降駆動装置24は、ビーム1、2の延びる方向と進退動作および昇降動作をさせる方向とを包含する垂直な動作平面内で旋回可能な関節25aを有する上向きの関節付きアーム25を備え、関節25aの前側の前アーム部25bの先端側が、ビーム1、2の端部に連結部材9cを介して、動作平面内で旋回可能に連結されるとともに、関節25aの後側の後アーム部25cの基端側が、開閉駆動ベース23に連結ピン10bを介して、動作平面内で旋回可能に連結されている。関節25aはサーボモータ26で、後アーム部25cの基端側はサーボモータ27で、それぞれ動作平面内で旋回駆動されるようになっており、両端部をこれらの進退昇降駆動装置24で支持された各ビーム1、2が、以下に述べるように、進退動作と昇降動作をする。
【0035】
図12(a)〜(d)は、前記進退動作と昇降動作を行う過程を示す。図12の各図では、前側のビーム1のみを示す。図12(a)は、ビーム1が下降して後退した状態であり、供給端側の関節付きアーム25が関節25aで左方へ屈曲し、排出端側の関節付きアーム25が、後アーム部25cを右方へ少し傾斜させて、前アーム部25bを供給端側へ伸ばしている。まず、図12(b)に示すように、供給端側の屈曲した関節付きアーム25が、関節25aの屈曲度を小さくして上向きに延出されるようにサーボモータ26で旋回駆動されるとともに、排出端側の関節付きアーム25が、後アーム部25cを左方へ少し傾斜させ、前アーム部25bを上向きに傾斜させるようにサーボモータ27で旋回駆動され、ビーム1が上昇する。
【0036】
つぎに、図12(c)に示すように、供給端側と排出端側の各関節付きアーム25が、後アーム部25cを右方へ旋回駆動されるとともに、前アーム部25bがビーム1の上昇位置を保持するように旋回駆動され、ビーム1が前進する。続いて、図12(d)に示すように、供給端側の関節付きアーム25が、後アーム部25cを左方へ少し傾斜させて、前アーム部25bを排出端側へ伸ばすように旋回駆動されるとともに、排出端側の右方へ屈曲した関節付きアーム25が、関節25aの屈曲度を大きくするように旋回駆動され、ビーム1が下降する。こののち、各関節付きアーム25が、図12(a)の状態に戻されるように旋回駆動される。
【0037】
なお、前記上昇動作の前と下降動作の後には、開閉駆動装置20による開閉動作が介在し、図5に示したものと同様の3次元動作が行われる。また、図5でコーナ部を丸めた部分以外では、進退動作は、ビーム1の延びる方向と平行に直線的に行われ、昇降動作は、進退動作方向と直交する上下方向に直線的に行われる。
【0038】
図13(a)、(b)は、それぞれ第3の実施形態のトランスファ装置の変形例を示す
図13(a)の変形例は、前記開閉駆動装置20を各ポスト31aの上部に取り付け、進退昇降駆動装置24の各関節付きアーム25を、開閉駆動ベース23に下向きに取り付けたものである。この変形例は、各駆動部が床面から高い位置に設置されるので、塵埃等の影響を受け難い利点があるともに、供給端側と排出端側で下方にスペースができ、ワークWの搬出入装置が下方に設置されるコンベア等とされるものに好適である。
【0039】
図13(b)の変形例は、供給端側の関節付きアーム25は、第3の実施形態のものと同様に、ポスト31aの下部に取り付けられた開閉駆動装置20の開閉駆動ベース23に上向きに取り付け、排出端側の関節付きアーム25のみを開閉駆動ベース23に下向きに取り付けたものである。この変形例は、例えば、ワークWの搬入装置が上方に設置されるロボットアーム等とされ、搬出装置が下方に設置されるコンベア等とされるものに好適である。搬出入装置の上下の配置がこれと逆の場合は、供給端側の関節付きアーム25を下向きに、排出端側の関節付きアーム25を上向きに取り付けるとよい。
【0040】
図11に示したように、各関節付きアーム25を上向きに取り付けた実施形態のものは、ワークWの搬出入装置等が上方に設置されるものや、プレス本体31の高さが低いものに好適であり、各関節付きアーム25の上下の向きの組み合わせは、プレス本体31の高さや搬出入装置等の設置状況に応じて選択することができる。
【符号の説明】
【0041】
1、2 ビーム
1a、2a フィンガ
3 昇降駆動装置
4 サーボモータ
5 ボールねじ機構
5a ナット
6 昇降駆動ベース
7 進退開閉駆動装置
8 関節付きアーム
8a 関節
8b 前アーム部
8c 後アーム部
9a、9b、9c 連結部材
10a、10b 連結ピン
11、12 サーボモータ
13 バネ
14 進退駆動装置
15 サーボモータ
16 ボールねじ機構
16a ナット
17 開閉駆動装置
18 関節付きアーム
18a 関節
18b 前アーム部
18c 後アーム部
19 サーボモータ
20 開閉駆動装置
21 サーボモータ
22 ボールねじ機構
22a ナット
23 開閉駆動ベース
24 進退昇降駆動装置
25 関節付きアーム
25a 関節
25b 前アーム部
25c 後アーム部
26、27 サーボモータ
31 プレス本体
31a ポスト
32 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの送り方向に配列された複数の金型の前後に、ワークを前後方向からクランプするフィンガを設けた一対の平行なビームを送り方向に延びるように配置し、この金型の前後に配置した一対のビームを、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をさせるように駆動装置で駆動して、前記フィンガでクランプしたワークを配列された金型に順送りするトランスファ装置において、前記開閉動作または昇降動作をさせる駆動装置を、前記一対の各ビームの両端側を、それぞれビームの延びる方向と前記動作をさせる方向とを包含する動作平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、前記ビームの両端側を前記動作平面内で旋回可能に連結し、前記関節の後側の後アーム部の基端側をベースに前記動作平面内で移動可能に支持して、前記ビームの両端側を支持する少なくとも一方の前記関節付きアームの関節を旋回駆動するようにしたことを特徴とするトランスファ装置。
【請求項2】
前記各関節付きアームの後アーム部の基端側を、前記動作平面内で旋回移動可能に前記ベースに支持して、前記動作平面内で旋回駆動するようにした請求項1に記載のトランスファ装置。
【請求項3】
前記開閉動作または昇降動作と、これらの動作と前記動作平面が同一となる進退動作とを、前記各関節付きアームの後アーム部の基端側を旋回駆動する駆動装置を共用して行うようにした請求項2に記載のトランスファ装置。
【請求項4】
前記各関節付きアームの後アーム部の基端側を、前記動作平面内で、前記動作をさせる方向と直角方向に直線移動可能に前記ベースに支持して、前記動作をさせる方向と直角方向に直線駆動するようにした請求項1に記載のトランスファ装置。
【請求項5】
前記進退動作を行う駆動装置を、前記一対のビームを送り方向へ直線駆動する直線駆動装置とし、前記関節付きアームで動作をさせる方向を前記開閉動作の方向として、前記後アーム部の基端側を直線移動可能に支持するベースを、前記進退動作を行う直線駆動装置の駆動ベースと共用のものとした請求項4に記載のトランスファ装置。
【請求項6】
前記旋回駆動をサーボモータで行うようにした請求項1乃至5のいずれかに記載のトランスファ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−31287(P2011−31287A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181697(P2009−181697)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】