説明

トランスファ装置

【課題】トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにすることである。
【解決手段】進退動作と開閉動作をさせる進退開閉駆動装置10を、一対のビーム1の両端側を水平面内で旋回可能な関節11aを有する関節付きアーム11で支持し、これらの各関節付きアーム11の関節11aの前側の前アーム部11bの先端側に、ビーム1の両端側を水平面内で旋回可能に連結し、関節11aの後側の後アーム部11cの基端側を、昇降駆動装置6の昇降駆動ベース9に水平面内で旋回移動可能に支持して、各関節付きアーム11の関節11aと各後アーム部11cの基端側をサーボモータ13、14で旋回駆動することにより、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファプレスに配列された複数の金型にワークを順送りするトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造プレス等のトランスファプレスには、ワークの送り方向に配列された複数の金型の前後に、ワークを前後方向からクランプする複数組のフィンガを設けた一対の平行なビームを送り方向に延びるように配置し、この金型の前後に配置した一対のビームを、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をさせるように駆動装置で駆動し、フィンガでクランプしたワークを配列された金型に順送りするトランスファ装置を備えたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2に記載されたトランスファ装置では、一対のビームの進退動作、開閉動作および昇降動作の3次元動作を、いずれもサーボモータの回転を直線運動に変換するねじ機構を用いた直線駆動装置で行うようにしている。これらの各動作の駆動装置は、通常、トランスファプレスのワークの供給端側と排出端側のプレス本体の外側に配置され、送り方向に延びる各ビームの両端部を支持して駆動するようになっている。進退動作の駆動装置は、ビームの一端側のみに配置され、他端側は支持機構のみを設けたものもある。
【0004】
特許文献1に記載されたものは、一対のビームを3次元動作させる各サーボモータを各ビームで共通のものとし、サーボモータの設置個数を減らしている。また、特許文献2に記載されたものは、ねじ機構にボールねじを用いるとともに、3次元動作させる各サーボモータを各ビームで独立のものとして、トランスファプレスのワークの供給端側と排出端側とに前後方向でスペースを開け、ワークの搬出入装置の設置スペースを確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−175030号公報
【特許文献2】特開2005−279675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されたトランスファ装置は、一対のビームを進退動作、開閉動作および昇降動作させる各駆動装置を、サーボモータの回転を直線運動に変換するねじ機構を用いた直線駆動装置としているので、これらの直線駆動装置が大寸法のものとなり、コンパクトな設計を阻害する問題がある。また、回転運動を直線運動に変換するねじ機構は、ボールねじを用いたとしても、運動エネルギの変換ロスが大きいので、サーボモータも大型のものが必要となり、さらにコンパクトな設計を阻害する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ワークの送り方向に配列された複数の金型の前後に、ワークを前後方向からクランプする複数組のフィンガを設けた一対の平行なビームを送り方向に延びるように配置し、この金型の前後に配置した一対のビームを、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をさせるように駆動装置で駆動して、前記フィンガでクランプしたワークを配列された金型に順送りするトランスファ装置において、前記進退動作と開閉動作をさせる駆動装置を、前記一対の各ビームの両端側を、それぞれ水平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、前記ビームの両端側を水平面内で旋回可能に連結し、前記関節の後側の後アーム部の基端側をベースに水平面内で旋回可能に支持して、前記各関節付きアームの関節と後アーム部の基端側を旋回駆動するものとし、これらの各関節付きアームで両端側を支持された前記各ビームに、その伸縮を許容する伸縮許容部を設けた構成を採用した。
【0009】
すなわち、進退動作と開閉動作をさせる駆動装置を、一対の各ビームの両端側を、それぞれ水平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、ビームの両端側を水平面内で旋回可能に連結し、関節の後側の後アーム部の基端側をベースに水平面内で旋回可能に支持して、各関節付きアームの関節と後アーム部の基端側を旋回駆動するものとし、これらの各関節付きアームで両端側を支持された各ビームに、その伸縮を許容する伸縮許容部を設けることにより、大寸法で運動エネルギの変換ロスが大きいねじ機構を用いた直線駆動装置を減らして、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計できるようにした。
【0010】
前記ビームに伸縮許容部を設けたのは、ビームの熱膨張、駆動系の同期ずれや暴走等によって、関節付きアームの関節や連結部に無理な力が作用しないようにするためであり、伸縮許容部としては、ボールブッシュやボールスプライン等を用いることができる。
【0011】
前記昇降動作をさせる駆動装置は、前記一対のビームを上下方向に直線駆動する直線駆動装置とすることができる。
【0012】
前記旋回駆動をサーボモータで行うことにより、関節付きアームを精度よく駆動することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るトランスファ装置は、進退動作と開閉動作をさせる駆動装置を、一対の各ビームの両端側を、それぞれ水平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、ビームの両端側を水平面内で旋回可能に連結し、関節の後側の後アーム部の基端側をベースに水平面内で旋回可能に支持して、各関節付きアームの関節と後アーム部の基端側を旋回駆動するものとし、これらの各関節付きアームで両端側を支持された各ビームに、その伸縮を許容する伸縮許容部を設けたので、トランスファ装置の駆動装置をコンパクトに設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トランスファ装置の実施形態を示す平面図
【図2】図1の正面図
【図3】図1の連結部材を拡大して示す平面図
【図4】a、b、cは、図1のビームの進退動作と開閉動作を説明する平面図
【図5】図1のビームの3次元動作を説明する動作線図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このトランスファ装置は鍛造用トランスファプレスに装備されたものであり、図1および図2に示すように、プレス本体31のワークWの送り方向に配列された複数の金型32の前後に、ワークWを前後方向からクランプする複数組のフィンガ2を設けた一対の平行なビーム1が送り方向に延びるように配置され、この一対のビーム1を、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をするように駆動して、供給端側に配置される搬入装置からワークWを受け取り、受け取ったワークWをフィンガ2でクランプして配列された各金型32に順送りして、加工されたワークWを排出端側に配置される搬出装置に受け渡す。
【0016】
前記一対の各ビーム1は、フィンガ2が設けられた本体部1aと、その両側の延長部1bとから成り、供給端側の延長部1bには、ビーム1の伸縮を許容する伸縮許容部としてのボールブッシュ3が設けられている。また、各延長部1bは、連結部材4を介して、後述する関節付きアーム11の前アーム部11bに連結されている。
【0017】
図3に拡大して示すように、前記連結部材4は、水平方向に向けた連結ピン4aで延長部1bと連結され、連結ピン4aの位置よりも軸方向外側に、連結ピン4aと平行な通し孔5aが連結部材4と延長部1bとに設けられており、本体部1aが交換等のために取り外されるときに、通し孔5aに係止ピン5を挿入して、延長部1bが内向きに下降傾斜するのを防止するようになっている。図示は省略するが、左側の連結部材4も同じ構成である。
【0018】
図1および図2に示すように、前記プレス本体31の四隅の各ポスト31aには、供給端側または排出端側の外側に向けて、一対のビーム1を昇降動作させる昇降駆動装置6が取り付けられている。各昇降駆動装置6は、サーボモータ7の回転をボールねじ機構8で直線運動に変換する直線駆動装置とされ、ボールねじ機構8のナット8aに、上下に昇降する昇降駆動ベース9が取り付けられている。
【0019】
前記各昇降駆動装置6の昇降駆動ベース9には、一対のビーム1に進退動作と開閉動作をさせる進退開閉駆動装置10が取り付けられている。各進退開閉駆動装置10は、水平面内で旋回可能な関節11aを有する関節付きアーム11を備え、関節11aの前側の前アーム部11bの先端側が、ビーム1の端部に連結部材4を介して、水平面内で旋回可能に連結されるとともに、関節11aの後側の後アーム部11cの基端側が、昇降駆動ベース9に連結ピン12を介して、水平面内で旋回可能に連結されている。関節11aはサーボモータ13で、後アーム部11cの基端側はサーボモータ14で、それぞれ水平面内で旋回駆動されるようになっており、両端部をこれらの進退開閉駆動装置10で支持された各ビーム1が、以下に述べるように、進退動作と開閉動作をする。
【0020】
図1に示した状態は、一対のビーム1が開いて後退した状態であり、供給端側の各関節付きアーム11が関節11aで左方へ屈曲し、排出端側の各関節付きアーム11が、後アーム部11cを右方へ少し傾斜させて、前アーム部11bを供給端側へ伸ばしている。まず、この状態から、図4(a)に示すように、供給端側の屈曲した各関節付きアーム11が、関節11aの屈曲度を小さくして互いに内向きに延出されるように各サーボモータ13、14で旋回駆動されるとともに、排出端側の各関節付きアーム11が、後アーム部11cを左方へ少し傾斜させ、前アーム部11bを互いに内向きに傾斜させるように各サーボモータ13、14で旋回駆動され、一対のビーム1が閉じて各組のフィンガ2でワークWをクランプする。
【0021】
つぎに、図4(b)に示すように、供給端側と排出端側の各関節付きアーム11が、後アーム部11cを右方へ旋回駆動されるとともに、前アーム部11bが閉じた一対のビーム1の間隔を保持するように旋回駆動され、一対のビーム1が前進して、クランプした各ワークWを順送りする。
【0022】
続いて、図4(c)に示すように、供給端側の各関節付きアーム11が、後アーム部11cを左方へ少し傾斜させて、前アーム部11bを排出端側へ伸ばすように旋回駆動されるとともに、排出端側の右方へ屈曲した各関節付きアーム11が、関節11aの屈曲度を大きくするように旋回駆動され、一対のビーム1が開いて、各組のフィンガ2でクランプされたワークWがアンクランプされる。こののち、各関節付きアーム11が図1に示した状態に旋回駆動され、開いた一対のビーム1が後退位置に戻されて、1回の進退動作と開閉動作が終了する。なお、後述するように、開閉動作と進退動作の前進動作との間には、昇降駆動装置6による昇降動作が介在し、前進動作はビーム1が上昇した状態で行われ、後退動作はビーム1が下降した状態で行われる。
【0023】
図5は、上述した一対のビーム1の進退動作、開閉動作および昇降動作の3次元動作のサイクルを3次元的に表示した動作線図である。この動作線図は、左右方向を進退方向、奥行方向を開閉方向、上下方向を昇降方向としており、サイクル動作の向きを矢印で示す。このサイクル動作のスタート点を、左下のビームが下降して開いた状態とすると、動作の順序は以下の通りである。
・動作の順序:閉(クランプ)→上昇→前進→下降→開(アンクランプ)→後退
【0024】
なお、この3次元動作では、図5の動作線図で動作が切り替わるコーナ部を丸めて示すように、前進動作と後退動作の前後期に、開閉動作または昇降動作を同時に行い、サイクル時間を短縮するようにしている。コーナ部を丸めていない、閉動作から上昇動作への切り替えと、下降動作から開動作への切り替えは、先行動作が完了してから行われる。また、進退動作は、ビーム1の延びる方向と平行に直線的に行われ、開閉動作は、進退動作方向と直交する前後方向に直線的に行われる。
【符号の説明】
【0025】
1 ビーム
1a 本体部
1b 延長部
2 フィンガ
3 ボールブッシュ
4 連結部材
4a 連結ピン
5 係止ピン
5a 通し孔
6 昇降駆動装置
7 サーボモータ
8 ボールねじ機構
8a ナット
9 昇降駆動ベース
10 進退開閉駆動装置
11 関節付きアーム
11a 関節
11b 前アーム部
11c 後アーム部
12 連結ピン
13、14 サーボモータ
31 プレス本体
31a ポスト
32 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの送り方向に配列された複数の金型の前後に、ワークを前後方向からクランプする複数組のフィンガを設けた一対の平行なビームを送り方向に延びるように配置し、この金型の前後に配置した一対のビームを、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作の3次元動作をさせるように駆動装置で駆動して、前記フィンガでクランプしたワークを配列された金型に順送りするトランスファ装置において、前記進退動作と開閉動作をさせる駆動装置を、前記一対の各ビームの両端側を、それぞれ水平面内で旋回可能な関節を有する関節付きアームで支持し、これらの各関節付きアームの関節の前側の前アーム部の先端側に、前記ビームの両端側を水平面内で旋回可能に連結し、前記関節の後側の後アーム部の基端側をベースに水平面内で旋回可能に支持して、前記各関節付きアームの関節と後アーム部の基端側を旋回駆動するものとし、これらの各関節付きアームで両端側を支持された前記各ビームに、その伸縮を許容する伸縮許容部を設けたことを特徴とするトランスファ装置。
【請求項2】
前記昇降動作をさせる駆動装置を、前記一対のビームを上下方向に直線駆動する直線駆動装置とした請求項1に記載のトランスファ装置。
【請求項3】
前記旋回駆動をサーボモータで行うようにした請求項1または2に記載のトランスファ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36871(P2011−36871A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184827(P2009−184827)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【出願人】(509224354)東洋理機工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】