説明

トランスポーターに対する抗体およびその用途

【課題】ヒトxCTに結合でき、癌細胞に対して特異的に抗体依存性細胞障害を誘導する新規な抗体を有効成分として含有する、現在治療困難な固形腫瘍をはじめとした各種悪性腫瘍の予防または治療剤の提供。
【解決手段】ヒトxCTに対する抗体および該抗体を含む腫瘍の予防または治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、xCT細胞外領域に特異的に結合し、直接的にアミノ酸輸送活性を阻害、あるいはリンパ球と共同して間接的に細胞障害性因子を誘導することで腫瘍細胞を細胞死へと導く抗xCTモノクローナル抗体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
生物は生命の維持活動に必要な栄養素やシグナル伝達物質等を取得するために種々の機構を有しており、個々の細胞膜上に多様に存在する輸送体や受容体はその一例である。中でも生体を構成する主要要素であるアミノ酸の輸送については、1960年代から研究がなされてきた。1990年に入ってからアミノ酸輸送を担う分子が同定され始め、現在ではおよそ30種類ほど支配遺伝子が同定されている。これら輸送体は輸送するアミノ酸の性質によって、塩基性アミノ酸輸送体、中性アミノ酸輸送体、酸性アミノ酸輸送体の3種に大別されるが、ヘテロ2量体型アミノ酸輸送体は以下で述べるxCTを含め6種類である。
【0003】
xCTはナトリウム非依存的な、シスチンとグルタミン酸の交換輸送体である。細胞内からグルタミン酸を放出し、細胞外からシスチンを取り込んでシステインに還元して、グルタチオンを生成させる。1999年にクローニングされた12回膜貫通型のタンパク質で、細胞膜表面に存在する。1回膜貫通タンパク質の4F2hc(CD98)とジスルフィド結合することでヘテロ二量体を形成し、アミノ酸輸送の活性を示す6種類のCD98lcのうちの一つである。4F2hcは特定の輸送体に連結して細胞膜まで移行させるシャペロン様分子である(例えば、金井好克,蛋白質 核酸 酵素 Vol.46, No.5, pp. 629-637, 2001(非特許文献1))。
【0004】
現在までにxCTが腫瘍細胞において高発現しているという事例が多数報告されている(Savaskan et al., J Cell Physiol. 2009 Aug;220(2):531-2(非特許文献2)、Gasol et al., J Biol Chem. 2004 Jul 23;279(30):31228-36. Epub 2004 May 19(非特許文献3)、Lo et al., Br J Cancer. 2008 Aug 5;99(3):464-72. Epub 2008 Jul 22(非特許文献4))。アミノ酸は細胞増殖において不可欠な物質であり、無秩序に増殖を繰り返す腫瘍細胞は通常より多くのアミノ酸を必要とすると考えられる。そのため、正常細胞よりも腫瘍細胞においてアミノ酸輸送体の発現量が増加しているものと推測される。また、xCTはグルタチオン生成に深く関連しており、グルタチオン抱合による薬剤耐性機構にも重要な役割を担っていると考えられる。従ってxCTは腫瘍の治療における標的分子として有用であることが示唆される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】金井好克, 蛋白質核酸 酵素 Vol.46, No.5, pp.629-637, 2001
【非特許文献2】Savaskan et al., J Cell Physiol. 2009 Aug;220(2):531-2
【非特許文献3】Gasol et al., J Biol Chem. 2004 Jul 23;279(30):31228-36. Epub 2004 May 19
【非特許文献4】Lo et al., Br J Cancer. 2008 Aug 5;99(3):464-72. Epub 2008 Jul 22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
xCT特異的に結合しアミノ酸輸送活性を阻害する、あるいは細胞障害を誘導するモノクローナル抗体は分子標的薬として有望であると考えられるが、抗体医薬の性質上、xCTの細胞外領域を認識する抗体である必要がある。しかし、xCTのN末端およびC末端は共に細胞内領域に存在し、細胞外領域のアミノ酸長も短いことから、数々の試みにも拘らずこれまでのところxCTの細胞外領域をエピトープとする抗体は取得できていなかった。
【0007】
したがって、xCTの細胞外領域をエピトープとする抗体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況に鑑み、本発明は、腫瘍細胞特異的に高発現の見られるxCTの細胞外領域を認識し、そのアミノ酸輸送活性を阻害あるいは細胞障害性因子を誘導することで腫瘍細胞を細胞死へと導くモノクローナル抗体を提供する。本発明者らは作製の極めて困難であったxCT細胞外領域を認識するモノクローナル抗体を世界で初めて作製し、該抗体が細胞障害誘導活性を有することを確認した。
【0009】
本発明者らは、抗原免疫動物として、マウスよりも得られる抗体のバラエティ(多様性)が豊富だと考えられるラットを用いた。GFP融合xCTを強制発現させた細胞を免疫原に用いてハイブリドーマを作製し、該細胞に特異的に反応するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株を樹立し、該ハイブリドーマを動物に投与して腹水化して高濃度の抗体を採取、精製することによりモノクローナル抗体を得た。これを用いてFACS解析を行い、該モノクローナル抗体がxCT細胞外領域に反応することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]xCTの細胞外領域に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
[2]xCTを発現する細胞のxCTに結合し、上記細胞に対する細胞障害活性を有する、上記[1]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[3]上記抗体またはその抗原結合断片が、:
(1)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
のうちの少なくとも1つを含む、上記[1]または[2]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[4]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[5]サブクラスがIgGである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[6]上記IgGが、IgGである、上記[5]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[7]上記抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、dsFv、ds−scFv、それらのダイマー、ミニボディ(minobodies)、ダイアボディ(diabodies)、およびマルチマー、または二重特異性抗体断片である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[8]モノクローナル抗体である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[9]ラット、マウス、霊長類、またはヒト抗体である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[10]キメラ抗体またはヒト化抗体である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[11]受領番号FERM ○○○○で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0011】
[12]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
[13]上記[12]に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
[14]上記[12]に記載の核酸分子を含む、ハイブリドーマ細胞。
[15]上記[1]〜[10]のいずれかに記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞。
[16]受領番号FERM ○○○○で特定されるハイブリドーマ細胞。
【0012】
[17]上記[14]〜[16]のいずれかに記載のハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養物からxCTに特異的に結合する抗体を採取することを含む、xCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
[18]上記[15]または[16]に記載のハイブリドーマ細胞から抗xCTモノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して上記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からxCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、xCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
[19]上記宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、または哺乳動物である、上記[18]に記載の製造方法。
【0013】
[20]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する組成物であって、xCTを発現する細胞に適用して該細胞のアポトーシスを誘導するために使用する、組成物。
[21]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬。
[22]上記腫瘍が、大腸癌(結腸直腸癌)、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、胆管癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫、骨肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[21]に記載の医薬。
【0014】
[23]以下の(1)〜(6)からなる群から選択される単離された相補性決定領域(CDR):
(1)配列番号:_のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)配列番号:_のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)配列番号:_のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)配列番号:_のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)配列番号:_のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)配列番号:_のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)。
【0015】
[24]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、腫瘍の診断剤。
[25]前記腫瘍が、大腸癌(結腸直腸癌)、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、胆管癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫、骨肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[24]に記載の腫瘍の診断剤。
[26]前記腫瘍が、大腸癌または肺癌または膵臓癌である、上記[24]に記載の腫瘍の診断剤。
[27]被験者由来のサンプルと上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を接触させる工程;および
前記サンプル中のxCTまたはxCT発現細胞を検出または測定する工程、
を含む、xCTの検出方法。
[28]酵素免疫測定法または放射性免疫測定法に従う、上記[27]に記載の方法。
[29]前記サンプルが、癌患者または癌を患っていると疑われる被験者に由来する、上記[27]または[28]に記載の方法。
[30]前記サンプルが、被験者由来の組織、血清、唾液、または尿である、上記[27]〜[29]のいずれかに記載の方法。
[31]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、腫瘍の診断のためのキット。
[32]前記腫瘍が、大腸癌または肺癌または膵臓癌である、上記[31]に記載のキット。
【発明の効果】
【0016】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、xCTを特異的に認識し、xCTのアミノ酸輸送活性を阻害またはxCT発現細胞において細胞障害性因子を誘導し、その細胞死を引き起こすことができる。本発明の抗体またはその抗原結合断片は、xCTの細胞外領域を特異的に認識することができることから、抗癌抗体医薬として特に有用である。本発明は、これまで取得することが非常に困難であったxCTの細胞外領域を特異的に認識する抗体を提供する点で、格別顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の抗体またはその抗原結合断片はまた、癌の診断、またはxCTもしくはxCT発現細胞の検出においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】xCT強制発現細胞のFACS解析によるLGtra02−01産生モノクローナル抗体の特異性を示す図である。横軸:強制発現させた遺伝子のGFPによる発現量、縦軸:LGtra02−01産生モノクローナル抗体の反応性。
【図2】免疫沈降によるLGtra02−01産生モノクローナル抗体の特異性を示す図である。
【図3】xCTおよびその他5種類のCD98 light chain強制発現細胞のFACS解析によるLGtra02−01産生モノクローナル抗体の特異性を示す図である。横軸:強制発現させた遺伝子のGFPによる発現量、縦軸:LGtra02−01産生モノクローナル抗体の反応性、を示す。
【図4】LGtra02−01産生モノクローナル抗体を用いた、xCTとCD98hc複合体の検出を示す図であり、サンドイッチELISAにより検出した結果を示す。
【図5】発現アレイ解析によるmRNAレベルでの癌患者におけるxCTの発現亢進を示す図である。(A)大腸癌患者100症例および大腸正常10症例の解析結果。(B)肺癌患者10症例および肺正常2症例の解析結果。縦軸:大腸および肺の各正常の平均値で割り戻した値(正常比)。
【図6】ヒトがん細胞株22種におけるxCTの発現量を示す図である。値は抗体反応時のMFI(mean fluorescence intensity)からControlとして抗体を含まないときのMFIを引いた値(ΔMFI)を示す。
【図7】LGtra02−01産生モノクローナル抗体を用いたADCC活性を示す図である。赤色の棒グラフはE/T比10、緑色の棒グラフはE/T比30のときの細胞障害率(%)示す。Controlは抗体を含まないエフェクター細胞と標的細胞のみの状態での値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.xCTの細胞外領域を特異的に認識する抗体
本発明は、1つの実施形態において、xCTの細胞外領域に特異的に結合する抗体(本明細書中、「抗xCT抗体」と呼ぶこともある。)およびその抗原結合断片を提供する。すなわち、本発明は、xCTの細胞外領域のアミノ酸配列の一部または全部をエピトープとする抗体およびその抗原結合断片を提供する。
【0020】
本発明の抗体およびその抗原結合断片は、典型的には、xCTを発現する細胞(例:腫瘍細胞)に発現しているxCTに結合し、xCTのアミノ酸輸送活性を阻害するかまたは細胞障害性因子を誘導して、その細胞を細胞死(アポトーシスまたはネクローシス)に至らしめることができる。
【0021】
シスチン・グルタミン酸交換輸送系である「ヒトxCT(cationic amino acid transporter, y+ system)」は、501アミノ酸残基からなる12回膜貫通型の膜タンパク質である。ヒトxCTのアミノ酸配列、mRNA配列等の情報は、それぞれAAG35592、AC110804、AF200708等のアクセッション番号でGenBank等の公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。また、マウスや他の哺乳動物(例えば、ラット、ウシなど)のxCTも同様に、公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。
【0022】
本明細書中、単に「xCT」という場合、xCTタンパク質のことを指すものとする。場合によっては、xCTタンパク質をコードする遺伝子(または単にxCT遺伝子)を単にxCTと呼ぶ場合もありうるが、その場合には当業者にとっては文脈からxCT遺伝子を指すことが明らかであろう。本明細書中、xCTは、典型的には、ヒトxCTであるが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシなど)のxCTであってもよい。
【0023】
本明細書中、「xCTの細胞外領域」とは、細胞表面にxCTが発現された場合に、細胞膜の細胞質とは反対側(すなわち、細胞の外側)の細胞表面に露出するxCTの領域をいい、UniProt等の公にアクセス可能なデータベースでは、例えば、71位〜83位のアミノ酸残基、141位〜145位のアミノ酸残基、191位〜198位のアミノ酸残基、264位〜273位のアミノ酸残基、340位〜395位のアミノ酸残基、452位〜457位のアミノ酸残基にわたる領域がそれに該当するとアミノ酸配列から予測されている。本発明の抗体またはその抗原結合断片が、xCTの細胞外領域に結合しているか否かは、例えば、本願明細書の実施例2に記載されるように、xCT強制発現細胞やヒトがん細胞株を用いたFACS解析によって確認することができる。
【0024】
本明細書中、抗体またはその抗原結合断片が、xCTの細胞外領域に「特異的に結合する」とは、その抗体または抗原結合断片が他のアミノ酸配列に対するその親和性よりも、これらの領域の特定のアミノ酸配列に対して実質的に高い親和性で結合することを意味する。ここで、「実質的に高い親和性」とは、所望の測定装置によって、その特定のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列から区別して検出することが可能なほどに高い親和性を意味し、典型的には、結合定数(K)が少なくとも10−1、好ましくは、少なくとも10−1、より好ましくは、10−1、さらにより好ましくは、1010−1、1011−1、1012−1またはそれより高い、例えば、最高で1013−1またはそれより高いものであるような結合親和性を意味する。
【0025】
本明細書中、「抗体」は、インタクトな免疫グロブリンの全てのクラスおよびサブクラスを含むものとする。好ましくは、本発明の抗体は、IgGサブクラスのものであり、より好ましくは、ヒトIgGサブクラスのものである。「抗体」は、特に、モノクローナル抗体を含む。
【0026】
本明細書中、「抗原結合断片」は、インタクトな、および/またはヒト化された、および/またはキメラな抗体の抗原結合領域または可変領域を有するフラグメント、たとえば、上記抗体のFab、Fab’、F(ab’)、Fv、ScFvフラグメントを含む。従来、こうしたフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解によって、たとえばパパイン分解によって(たとえば、国際公開WO94/29348を参照)作製されているが、遺伝子組換えによる形質転換宿主細胞から直接産生させることもできる。ScFvの作製については、Birdら、(1988) Science, 242, 423−426に記載の方法が使用できる。さらに、抗体フラグメントは、下記のさまざまな遺伝子工学技術を用いて作製することができる。
【0027】
Fvフラグメントは、その2つの鎖の相互作用エネルギーがFabフラグメントより低いと思われる。VHおよびVLドメインの結合を安定化するために、これらのドメインは、ペプチド(Birdら、(1988) Science 242, 423−426、Hustonら、PNAS, 85, 5879−5883)、ジスルフィド架橋(Glockshuberら、(1990) Biochemistry, 29, 1362−1367)、および「knob in hole」変異(Zhuら、(1997), Protein Sci., 6, 781−788)によって連結されている。ScFvフラグメントは、当業者によく知られている方法によって作製することができる(Whitlowら、(1991) Methods companion Methods Enzymol, 2, 97−105およびHustonら、(1993) Int.Rev.Immunol 10, 195−217を参照)。ScFvは、大腸菌(E. coli)などの細菌細胞内で産生させることができるが、真核細胞内で産生させる方が好ましい。ScFvの不利な点は、産物が一価であること、そのために多価結合による結合力の増加が不可能になること、ならびに半減期が短いことである。こうした問題を克服するための試みには、二価(ScFv’)があるが、これは、追加のC末端システインを含有するScFvから、化学的カップリングによって(Adamsら、(1993) Can.Res 53, 4026−4034、およびMcCartneyら、(1995) Protein Eng. 8, 301−314)、または不対C末端システイン残基を含有するScFvの、自然発生的な部位特異的二量体化によって(Kipriyanovら、(1995) Cell. Biophys 26, 187−204を参照)作製される。あるいはまた、ペプチドリンカーを3〜12残基に短縮して「ダイアボディ(diabody)」を形成することによって、ScFvに多量体を形成させることができる。Holligerら、PNAS (1993), 90, 6444−6448を参照。リンカーをさらに小さくすることで、ScFv三量体(「トリアボディ」、Korttら、(1997) Protein Eng, 10, 423−433を参照)および四量体(「テトラボディ」、Le Gallら、(1999) FEBS Lett, 453, 164−168を参照)をもたらすことができる。二価ScFv分子の構築は、「ミニ抗体(miniantibody)」(Packら、(1992) Biochemistry 31, 1579−1584を参照)および「ミニボディ」(Huら、(1996), Cancer Res. 56, 3055−3061を参照)を形成することができるタンパク質二量体化モチーフとの遺伝子融合によっても、達成することができる。ScFv−ScFvタンデム((ScFv))は、第3のペプチドリンカーによって2つのScFv単位を連結することによって作製することもできる(Kuruczら、(1995) J.Immol.154, 4576−4582を参照)。二重特異性ダイアボディは、ある抗体のVLドメインに短いリンカーで連結された、別の抗体由来のVHドメインからなる、2つの一本鎖融合産物の非共有結合によって作製することができる(Kipriyanovら、(1998), Int. J. Can 77, 763−772を参照)。このような二重特異性ダイアボディの安定性は、ジスルフィド架橋、もしくは上記の「knob in hole」変異を導入することによって、または2つのハイブリッドScFvフラグメントがペプチドリンカーを介して連結される、一本鎖ダイアボディ(ScDb)を形成することによって、高めることができる(Kontermannら、(1999) J. Immunol. Methods 226 179−188を参照)。四価の二重特異性分子は、たとえば、ScFvフラグメントを、IgG分子のCH3ドメインに、またはヒンジ領域を介してFabフラグメントに、融合することによって得られる(Colomaら、(1997) Nature Biotechnol. 15, 159−163を参照)。あるいはまた、四価の二重特異性分子は、二重特異性一本鎖ダイアボディの融合によって作製されている(Altら、(1999) FEBS Lett 454, 90−94を参照)。より小さい四価の二重特異性分子は、ヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフ含有リンカーによるScFv−ScFvタンデムの二量体化(DiBiミニ抗体、Mullerら、(1998) FEBS Lett 432, 45−49を参照)、または分子内対合を妨げる配向で4つの抗体可変領域(VHおよびVL)を含む一本鎖分子の二量体化(タンデムダイアボディ、Kipriyanovら、(1999) J.Mol.Biol. 293, 41−56を参照)のいずれかによって、作製することもできる。二重特異性F(ab’)フラグメントは、Fab’フラグメントの化学的カップリングによって、またはロイシンジッパーによるヘテロ二量体化によって作製することができる(Shalabyら、(1992) J.Exp.Med. 175, 217−225、およびKostelnyら、(1992), J.Immunol. 148, 1547−1553を参照)。また、単離されたVHおよびVLドメイン(Domantis plc)も利用できる。
【0028】
本明細書中、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(または抗体断片)を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。概して異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性の他に、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによる混入がないという点で、モノクローナル抗体は有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示すものであって、ある特定の方法による抗体の産生を必要とすることを意味するためのものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256: 495 [1975]に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作成してもよいし、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作成してもよい。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352: 624−628 [1991]およびMarks等, J. Mol. Biol., 222: 581−597 (1991) に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離した抗体断片(Fvクローン)を含む抗原認識および結合部位のクローンを含む。
【0029】
「モノクローナル抗体」は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種から誘導されたまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導されたまたは他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて、それらの抗体の断片の対応する配列と同一または相同である(Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851−6855 [1984])。
【0030】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントCDR由来の残基が、マウス、ラット、ウサギ、霊長類(例えば、サル)などのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性および容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移植されるCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質上全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有しうる。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有しうる。
【0031】
本明細書中、「xCTの活性」とは、シスチン、グルタミン酸交換輸送活性、グルタチオン排出活性等を意味する。xCTのアミノ酸輸送活性は、例えば、標識アミノ酸の細胞内取り込みによって測定することができる。「xCTの活性を阻害する」とは、上記のxCTの活性を顕著に低下させるかまたは除くことを意味する。「xCTの活性を顕著に低下させるかまたは除く」とは、xCTの生物学的活性の少なくとも5%またはそれ以上低下させることを意味する。
【0032】
本明細書中、「細胞障害活性」とは、細胞に対して細胞障害を引き起こす能力を意味し、本発明の場合、xCT発現細胞に本発明の抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合して、該細胞に細胞障害性因子を誘導して、該細胞を細胞死またはアポトーシスに至らしめる能力をいうものとする。細胞障害活性は、例えば、本発明の実施例2に記載される方法で測定し、細胞障害率として評価することができる。
【0033】
本明細書中、「細胞死」は「アポトーシスまたはネクローシス」を意味する。「アポトーシス」は、個体発生のプログラム、デス因子刺激、放射線などによる染色体DNAの重度の損傷、異常タンパク質の蓄積などによる重度の処方体ストレスなどさまざまな生理的、病理的要因により誘導される機能的、能動的な細胞死の典型であり、細胞体や核の膨潤を伴う壊死(ネクローシス)とは逆に、細胞体や核の収縮や断片化が起こる。
【0034】
本発明の抗体またはその抗原結合断片の例としては、
(1)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
のうちの少なくとも1つを含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0035】
本明細書中、「1個または数個のアミノ酸残基の変異」とは、元となるアミノ酸配列中の1個または数個(例えば、2個、3個、4個、5個)のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、または付加されていることを意味する。本明細書中、そのような変異を元となるアミノ酸配列中の対応する位置に有するアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片は、元となるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片と同等の生物学的活性を有する。ここで、「同等の生物学的活性」としては、(i)元となるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合する抗原に対して特異性をもって結合する能力、(ii)xCTのアミノ酸輸送活性に対する阻害能力、(iii)xCT発現細胞上のxCTに結合した場合における、該細胞に対する細胞障害活性、または(iv)これらのいずれか2つ以上もしくは全てが挙げられる。最も好ましくは、「同等の生物学的活性」とは、上記(iv)を意味する。また、上記の「1個または数個のアミノ酸残基の変異」における変異したアミノ酸残基の数の上限は、このような同等の特異性を保持することができるか否かという基準(criteria)によって制限される。
【0036】
本発明の抗体またはその抗原結合断片のより好ましい例としては、
(1)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0037】
本発明の抗体またはその抗原結合断片の最も好ましい例としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに20__年_月_日付で寄託された、受領番号FERM ○○○○で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0038】
2.本発明の抗体をコードする核酸
本発明は、別の実施形態において、xCTの細胞外領域に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を提供する。核酸分子は、RNAまたはDNAである。本発明の核酸分子は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を作製するために使用することができる。
【0039】
したがって、これに関連する本発明の別の実施形態では、本発明のハイブリドーマ細胞から抗xCTモノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して前記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からxCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、xCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
【0040】
本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に分離されて、配列決定される。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。一旦分離されると、組換え宿主細胞でモノクローナル抗体を合成するために、このDNAを発現ベクターへ挿入し、それをこの状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、ヒトHEK293胎児腎由来細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞へトランスフェクトしうる。例えば、相同的なマウス配列をヒト重鎖および軽鎖定常ドメインの配列で置換することによって(Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 81:6851[1984])、または免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を共有結合させることによって、このDNAを修飾しうる。本発明の抗xCTモノクローナル抗体の結合特異性を有するように、「キメラ」または「ハイブリッド」抗体は調製される。
【0041】
3.本発明の抗体を産生するハイブリドーマ細胞
本発明はさらに別の実施形態において、xCTの細胞外領域に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片を産生するハイブリドーマ細胞を提供する。本発明はまた、xCTの細胞外領域に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片をコードする核酸分子を含有するハイブリドーマを提供する。最も好ましい本発明のハイブリドーマ細胞としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに20__年_月_日付で寄託された、受領番号FERM ○○○○で特定されるハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0042】
本発明のハイブリドーマ細胞の調製は、具体的には、以下のように行うことができるが、この方法に限定されるわけではない。
【0043】
(1)抗原の調製
抗xCTモノクローナル抗体を作製するために必要な抗原としては、xCTを産生する細胞あるいはその細胞画分、またはxCTをコードするDNAにより形質転換された宿主細胞、すなわち、大腸菌などの原核性宿主細胞および昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核性宿主細胞中に、xCTをコードするcDNAの全長または部分断片を公知の方法を用いて組み込み、そのままあるいは融合蛋白として発現、精製された蛋白質、さらには、ペプチド合成機を用いて合成されたxCTの部分ペプチド等を用いることができる。
【0044】
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
6〜12週令のマウスまたはラットに、(1)に示した方法で作製された抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血より抗体産生細胞を採取する。免疫は、動物の皮下、静脈内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フロインドの完全アジュバントまたは、水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど〕とともに抗原を投与することにより行う。抗原の投与は、1回目の投与の後2〜3週間おきに3〜7回行う。各投与後5〜10日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が抗原と反応することをフローサイトメトリーなどで調べる。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウスまたはラットを抗体産生細胞の供給源として供する。脾細胞を骨髄腫細胞との融合に供するにあたって、抗原物質の最終投与後3日目に、免疫したマウスまたはラットより脾臓を摘出し、脾細胞を採取する。脾臓を血清無添加の基礎培地(以下洗浄用培地という。)中で細断し、遠心分離して細胞を回収後、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で5分間処理し赤血球の除去を行い、洗浄用培地で洗浄した後に融合用脾細胞として提供する。
【0045】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)〔Current Topics in Microbiology and Immunology−1、European J. Immunology, 6, 511−519(1976)〕、SP2/O−Ag14(SP−2)〔Nature 276, 269−270 (1978)〕、P3−X63−Ag8653(653)〔J.Immunology 123, 1548−1550 (1979)〕、P3−X63−Ag8(X63)〔Nature 256, 495−497 (1975)〕などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mM)、2−メルカプトエタノール(5×10−5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)を10%加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10個以上の細胞数を確保する。
【0046】
(4)細胞融合
(2)で免疫した脾臓細胞と(3)で得られた骨髄腫細胞を洗浄用培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5:1になるよう混合させる。細胞回収後、細胞をよくほぐし、攪拌しながら、37℃で、細胞融合用ポリエチレングライコール−1,500(PEG−1,500)2gを、約1分かけて少しずつ撹拌しながら脾臓細胞1×10とミエローマ2×10個に加え、その後、PEGを希釈して反応を停止する目的で、1〜2分間毎に洗浄用培地1〜2mlを数回加え、全量が50mlになるまで洗浄する。細胞回収後、ゆるやかに細胞をほぐしながら、HAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4M)、チミジン(1.5×10−5M)およびアミノプテリン(4×10−7M)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。培養後、培養上清の一部をとり、例えば(5)に述べる酵素免疫測定法あるいはFACS(Fluorescence−Activated Cell Sortingの略)などを用いて、xCTタンパク質に特異的に反応する抗体を選択する。ついで、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものを抗xCTモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0047】
したがって、これに関連する本発明の別の実施形態では、ハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養物からxCTに特異的に結合する抗体を採取することを含む、xCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
【0048】
4.本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬および方法
本発明はまた、さらに別の実施形態において、上記の本発明の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、さらに薬学的に許容し得る担体を含有する。
【0049】
後述の実施例に示されるように、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、xCTを発現する細胞(例:腫瘍細胞)のxCTの細胞外領域に特異的に結合して、xCTの活性を阻害するか、または細胞障害因子を誘導し、該細胞を細胞死に至らしめることができる。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合断片を含有する医薬組成物は、xCTを細胞表面に発現する腫瘍細胞を死滅させるため、またはそのような細胞で特徴付けられる腫瘍および、同様の機序により生ずる疾患の予防または治療のために使用することができる。
【0050】
上記「腫瘍」の例としては、大腸癌(結腸直腸癌)、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、胆管癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫、骨肉腫、およびウィルムス腫瘍等が挙げられる。より好ましくは、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、および前立腺癌が挙げられる。なお、本明細書中、「腫瘍」と「癌」とは互換的に使用される。
【0051】
本発明の抗体またはその抗原結合断片を医薬として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、水溶液もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用でき、また、該抗体をIgA化し、分泌成分を結合した後に必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に例えば、該抗体またはその抗原結合断片を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0052】
「薬学的に許容し得る」という用語は、正常な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比を有し、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症を示すことのない、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために、本明細書において利用される。
【0053】
本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬組成物の投与経路は、周知の方法、例えば、静脈内、腹膜内、脳内、皮下、筋肉内、眼内、動脈内、脳内脊髄、または病巣内経路での注射または注入、または徐放系による。またさらに、該抗体またはその抗原結合断片を直接腫瘍部位へ投与する手段として、カテーテル等による投与等も可能である。
【0054】
また、本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、ヒトを含む哺乳動物に対して投与することができる。該抗体またはその抗原結合断片またはその塩の投与量は、投与対象、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、子宮内膜症患者または子宮腺筋症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その投与量は投与対象、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の形では、通常、例えば60kgの患者に対して、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与することができる。
【0055】
5.本発明の腫瘍の診断剤、診断方法、および診断用キット
xCTは後述の実施例においても示されるように、癌において発現が亢進しているため、本発明の抗xCT抗体およびその抗原結合断片は、腫瘍または癌の診断に使用することができる。
【0056】
したがって、本発明の一つの実施形態によれば、本発明の抗xCT抗体またはその抗原結合断片を含む腫瘍の診断剤または診断用キットが提供される。さらに、本発明の一つの実施形態によれば、本発明の抗xCT抗体またはその抗原結合断片を使用する、xCTの検出方法が提供される。さらに別の形態によれば、本発明の抗xCT抗体またはその抗原結合断片を使用する、腫瘍の診断方法が提供される。
【0057】
上記「腫瘍」の例としては、大腸癌(結腸直腸癌)、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、胆管癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫、骨肉腫、およびウィルムス腫瘍等が挙げられる。より好ましくは、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、および前立腺癌が挙げられる。
【0058】
(xCT検出のためのアッセイ)
本発明の実施に有用な免疫測定法の1つの態様では、被験者由来の生体試料と抗xCT抗体とを接触させ、次いで、生体試料中のxCTと抗xCT抗体との免疫複合体が検出される。
【0059】
本発明の上記態様の免疫アッセイには、ウエスタンブロット法のような手法を用いた測定システムに限らず、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチ免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、蛍光免疫検定法、プロテインA免疫検定法等が使用され得る。このような手法では、通常、抗xCT抗体は標識されており、標識の種類としては、例えば、蛍光基、発光基、フリーラジカル基、粒子、バクテリオファージ、細胞、金属、酵素、補酵素、ラジオアイソトープなどが挙げられる。
【0060】
さらに、例えば、xCTタンパク質に特異的に結合するポリペプチドのような抗体以外の薬剤がxCTタンパク質発現のレベルを測定するために使用され得る。
【0061】
xCTの発現を検出するための免疫測定は、代表的には、腫瘍(例えば、大腸癌、肺癌等)を有すると疑われるか、腫瘍の危険性を有する被験体から採取した生体試料を、特異的抗原−抗体結合を生じさせる条件下で抗xCT抗体と接触させ、次いで、抗体による免疫特異的結合量を測定することを包含する。特定の態様において、例えば、このような抗体の結合を使用して、xCTタンパク質の存在および/または増大した発現が検出される。この場合、増大したxCTタンパク質発現の検出が疾病状態の指標となる。必要に応じて、生体試料中のxCTタンパク質のレベルを、腫瘍を有しない健常者のレベルと比較してもよい。
【0062】
上記免疫測定法の1つの態様では、血清試料などの生体試料を、試料中に存在する全部のタンパク質を固定する目的で、ニトロセルロースなどの固相支持体または担体と接触させる。次いで、この支持体を緩衝液で洗浄し、続いて検出可能に標識した抗xCT抗体により処理する。次いで、この固相支持体を緩衝液で2回洗浄し、未結合抗体を除去する。固相支持体上の結合した抗体の量を、周知の方法に従って測定する。各測定に適する検出条件は、慣用的な試験方法を使用して当業者により適宜決定され得る。
【0063】
抗xCT抗体を検出可能に標識する方法の1つにおいて、当該抗体を、酵素、例えば、酵素イムノアッセイ(EIA)に使用されるもののような酵素に結合させる[Voiler,A.による「酵素標識した免疫吸着アッセイ」(“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay)(ELISA),1978,Diagnostic Horizons,2:1〜7,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville.MD; Voiler,A.によるJ.Clin.Pathol.,31:507〜520,1978:Butier,J.E.によるMeth.Enzymol.,73:482〜523,1981]。抗体に結合する酵素を、例えば分光光度測定により、可視手段による蛍光測定により検出することができる化学分子が生成されるような方法で、適当な基質、好ましくは色素原性基質と反応させる。抗体に検出可能な標識を付けるために使用することができる酵素は、ペルオキシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼを包含するが、これらに限定されない。この検出はまた、酵素に対する色素原性基質を用いる比色法により達成することができる。
【0064】
抗xCT抗体の検出はまた、その他の種々の方法を用いて行うことができる。一例として、抗体または抗体断片を放射性物質で標識することによって、放射線イムノアッセイ(RIA)の使用によりxCTタンパク質発現を検出することができる[例えば、Weintrsub,B.による放射線免疫検定の原理、ラジオリガンド検定技術に関する第7回トレーニング コース(Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques),The Endocrine Society,1986年3月参照]。放射性同位元素は、ガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターのような手段の使用により、もしくはオートラジオグラフイにより検出することができる。
【0065】
抗体はまた、蛍光化合物により標識することができる。最も慣用の蛍光標識化合物の中には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリンおよびフルオレスカミンがある。同様に、生体発光性化合物を用いて、抗体xCT抗体を標識することもできる。生体発光性タンパク質の存在は、蛍光の存在を検出することによって測定される。この標識目的に重要な生体発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびイエクオリンである。
【0066】
本発明の特定の態様において、生体試料中のxCTタンパク質の発現水準は、二次元電気泳動法により分析することができる。二次元ゲル電気泳動法は、当業者に公知である。血清などの生体試料を、第一段階で電荷に基づいてタンパク質を分離する等電点焦点化分離用電気泳動用ゲル上に装填する。不動化した勾配に基づく分離用のゲルストリップまたは担体両性電解質に基づく分離用の管状ゲルを包含する多数の第一段階ゲル標本を使用することができる。第一次分離後、タンパク質を第二段階ゲル上に移し、次いで平衡化し、次いでタンパク質をその分子量に基づいて分離するSDS−PAGEを用いて分離する。異なる被験者から採取した血清試料を比較する場合、複数のゲルを各血清試料から調製する。
【0067】
分離後、この第二段階ゲルからウエスタンブロティッング法に慣用の膜上にタンパク質を移す。ウエスタンブロティッング法および引き続くタンパク質の可視化はまた、当業者に周知である[Sambrookらによる「分子クローニング。実験指針」(Molecular Cloning.A laboratory manual),第2版、第3巻、1989,Cold Spring Harbor]。標準的方法を用いることができ、またはこの方法を特定の種類のタンパク質、例えば高度に塩基性または酸性、もしくは脂質可溶性などの種類のタンパク質の同定にかかわり当該技術で知られているように修正することもできる[例えば、Ausubelらによる「分子生物学における現在の方法」(Current Protocols in Molecular Biology),Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.参照]。本発明の抗xCT抗体を、ウエスタンブロッティング分析法におけるようなインキュベーション工程に用いる。第一の抗体に対して特異性の第二の抗体をウエスタンブロッティング分析法で使用し、第一抗体と反応するタンパク質を可視化する。
【0068】
(キット)
本発明はまた、1つの態様において、抗xCT抗体を含有する、被験者の生体試料中のxCTタンパク質またはその断片を腫瘍マーカーとして検出および/または定量するためのキットを提供する。これらのキットは、上述の免疫学的手法により、腫瘍マーカーを検出するために用いられる。抗体はそれ自体で検出可能なように放射能、蛍光、比色、または酵素標識で標識されていてもよい。別法として、キットは、標識された二次抗体を含有していてもよい。
【0069】
本発明のキットは、抗xCT抗体の他に、代表的には、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、薬剤が腫瘍マーカーの検出に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書がさらに含まれていてもよい。
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に記載するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0071】
[実施例1]
(1)免疫原の調製
抗xCTモノクローナル抗体を作製するために必要な抗原として、GFP融合xCT発現ラット肝がん細胞株RH7777細胞株を樹立した。xCTをコードするcDNAの全長を公知の方法を用いて組み込み融合蛋白として発現させ、発現が強いものを薬剤選択性および限界希釈法にて単一クローン化し安定発現株とした。
【0072】
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
ラットに、(1)に示した方法で作製された抗原を免疫して、その脾臓より抗体産生細胞を採取した。免疫は、ラットの皮下、腹腔、または静脈内に抗原としてGFP−xCT発現RH7777細胞を5回投与することにより行った。投与した期間と細胞数は、1回目で1×10個、その4週間後に2回目で2.5×10個、その8週間後に3回目で1×10個、その10週間後に4回目で2.25×10個、その8週間後に5回目で1×10個で免疫を行った。脾細胞を骨髄腫細胞との融合に供するにあたって、抗原の最終投与の3日後に、免疫したラットより脾臓を摘出し脾細胞を採取した。脾臓を血清無添加の基礎培地(以下洗浄用培地という。)中で細断し、遠心分離して細胞を回収後、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で2〜3分間処理し赤血球の除去を行い、洗浄用培地で洗浄した後に融合用脾細胞として用いた。
【0073】
(3)ハイブリドーマの作製
実施例1(2)で得られたマウスまたはラット脾細胞とマウス骨髄腫細胞株X63とを4:1の比率で混合し、1,200rpmで5分間遠心した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1500(PEG−1500)2g、DMEM培地2mlおよびジメチルスルホキシド0.7mlの混液を0.2〜1ml/10個マウス脾細胞の割合で加え、さらに1〜2分間毎にDMEM培地1〜2mlを数回加えた後、DMEM培地を加えて全量が50mlになるようにした。900rpmで5分間遠心し、上清を捨てHAT培地100ml中に細胞をゆるやかに懸濁した。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。
【0074】
(4)抗体スクリーニング
実施例1(3)で得られたハイブリドーマ培養上清をGFP−xCT発現RH7777細胞またはGFP−xCT発現HEK293細胞と反応させ、FACS解析を行うことによりxCT特異的抗体を産生しているかの1次スクリーニングを行った。FACSの反応は96ウェルプレートにて行った。トランスフェクタントを2.5×10〜3×10個/ウェルになるように50μlずつチューブに分注した。この細胞浮遊液にハイブリドーマの培養上清50μlを加え、氷冷化で60分反応させた。チューブに0.2%BSA−PBS200〜500μlを加え、190g、4℃で5分間遠心し上清を捨てる操作を3回繰り返して洗浄した後、2次抗体としてFITC標識抗ラット抗体を添加し遮光氷冷下で45分間反応させた。ウェルを遠心し洗浄した後0.2%BSA−PBS500μlに懸濁し、40μlのナイロンメッシュを通した。死細胞を除くために測定直前にDAPIを1mg/mlの濃度になるよう添加し、BDLSR(BectonDickinson)にて蛍光強度を測定した。図1に示すように、GFP−xCT発現細胞特異的に陽性反応を示し、かつxCT発現強度依存した反応を示すクローンを選別し、抗xCT抗体産生ハイブリドーマ株LGtra02−01を樹立した。
【0075】
(5)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令ヌード雄マウス(KSN)に実施例1(4)で得られたハイブリドーマ株を1×10細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜15日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから腹水を採取し、2000rpmで5分間、4℃で遠心し、50%飽和硫酸アンモニウムにて塩析し、沈渣を溶かして10000gで10分間、4℃でした。プレフィルター、メンブランフィルター(0.22μm)を通過させた後、ProteinG(GEヘルスケア バイオサイエンス)を用いて液体クロマトグラフィーシステムAKTAにより精製し、抗xCTモノクローナル抗体とした。
【0076】
[実施例2]
(1)免疫沈降によるモノクローナル抗体の特異性の検討
HeLa細胞に0.5mg/mL Sulfosuccinimidyl−6’−(biotinamide)−6−hexanamidehezanoate(EZ−Link Sulfo−NHS−LC−LC−Biotin, Pierce)-PBS(pH 8.0)溶液200μLを加え、室温で30分反応させ、細胞表面のビオチン標識を行った。HeLa細胞に3.0×10cells/mLとなるようにLysisBuffer[PBS containing 1% Nonidet P−40, protease inhibitor cocktail(ナカライテスク)およびbenzonase(Merck)]を加え、氷上で60分間インキュベートすることにより可溶化したのち、14,500rpmで20分間、4℃で遠心した上清を細胞可溶化物として免疫沈降に用いた。得られた細胞可溶化物にLGtra02−01産生モノクローナル抗体5μgを加えた後、二次抗体としてRabbit Anti−Rat Ig抗体(Sigma)5μgを加え、4℃で一時間反応させた。続いてProtein G Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)の50%懸濁液を25μL加え、4℃にて終夜反応させた。Protein G Sepharoseに結合した抗原−抗体複合体をlysis bufferにて5回洗浄後、sample buffer(45mM Tris−HCl, pH6.8, 1% SDS, 50mM DTT, 10% glycerol,および0.01% BPB)と混合し、95℃で5分間処理することによりタンパクを溶出した。可溶化された細胞可溶化物はsample buffer(45mM Tris−HCl, pH 6.8, 1% SDS, 50mM DTT, 10% glycerol, and 0.01% BPB)と混合し、95℃で5分間処理した。separating gel[10% acrylamide/bis solution (29:1), 0.375M Tris−HCl (pH 8.8), 0.1% Sodium dodecyl sulfate (SDS), 0.03%Amino peroxodisulfate (APS), 0.0005% N,N,N’,N’−tetramethoenediamine(TEMED)]とstacking gel [10% acrylamide/bis solution(29:1), 0.25M Tris−HCl(pH 8.8), 0.2% Sodium dodecyl sulfate (SDS), 0.6% Amino peroxodisulfate (APS), 0.002% N,N,N’,N’−tetramethoenediamine (TEMED)]を用いて20mA定電流にて分離した。分離されたアクリルアミドゲルは、30分間1.5V定電圧にてPVDF膜(MILLIPORE)上に転写した。転写後、膜をblockingmilkで4℃、終夜ブロッキングした。細胞表面を標識したビオチンをElite ABC kit(VECTOR Laboratories)を用いて検出した。図2に示すように、実測値として約50Kダルトンと約90Kダルトンのバンドが検出され、前者はxCTに対して、後者はCD98hcとのヘテロ二量体を形成しているxCTに対してLGtra02−01産生モノクローナル抗体が特異的に反応していることが認められた。
【0077】
(2)FACSによるモノクローナル抗体の特異性の検討
細胞をPBSにて2.5×10〜1×10cells/wellになるように調整し、50μLずつチューブに分注した。この細胞浮遊液にLGtra02−01産生モノクローナル抗体50μLを加え、氷冷下で60分反応させた。0.2%BSA−PBS 200〜500μLを加え、120gで5分間、4℃で遠心する洗浄を3回行い、細胞ペレットにFITC標識またはPE標識の二次抗体(1%BSA−PBSで200倍希釈)を50μL加え、遮光氷冷下45分間反応させた。遠心洗浄後、0.2%BSA−PBS500μLにサスペンドし、40μmのナイロンメッシュ(BD Falcon #35−2340)を通した後、死細胞を除くため測定直前にDAPIを1μg/mLの濃度になるように添加し、BD LSR(Becton Dickinson)にて測定した。図3に示すように、LGtra02−01産生モノクローナル抗体はxCTのファミリーである他のCD98 light chain強制発現細胞には反応せず、xCTの強制発現細胞のみに特異的反応を示した。
【0078】
(3)酵素免疫測定法によるモノクローナル抗体の特異性の検討
polyvinylchrolide 96−well plates(Sumitomo Bakelite, Tokyo, Japan)に抗原捕捉抗体としてHH25anti−humanCD98hchumanmAb,10μg/mLを50μL、3ウェルずつ4℃にて終夜固相化したのち、BlockAce(Dainipponn)にてブロッキングした。抗原にはHeLa細胞可溶化物(3x10cells/mL)を用い、検出抗体(10μg/mL)とあらかじめプレインキュベートしたものを50μLずつ各ウェルに加えた。1時間37℃にてインキュベート、0.05%Tween20含有PBS(PBS−T)洗浄後に、ビオチン標識抗ラットIgG抗体(JacksonImmunoResearch)を用いた。各抗体間はPBS−Tにて洗浄した。その後、0.1%BSA−PBSにて200倍希釈したElite ABC reagent (Vector)を加えて、37℃で45分間インキュベートした。PBS−Tで洗浄後、3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine(0.1mg/mL)と0.01%H2O2を含む0.1Mcitric−acetate buffer(pH6.0)を用いて呈色したのち、0.5MH2SO4 75μLを加えて反応を停止した。450nmにおける吸光度はModel550microplate reader (Bio−Rad, Hercules, CA, USA)にて測定した。450nmにおける吸光度はModel550microplatereaderを用いて測定した。図4に示すように、LGtra02−01産生モノクローナル抗体がxCTとCD98hc複合体に結合することが認められた。
【0079】
[実施例3]
(1)癌検体におけるRNAレベルでの発現亢進の検討
マイクロアレイを用いた発現解析により大腸癌および肺癌の患者検体におけるxCTの発現亢進を解析した。まず検体の組織切片のRNA抽出のため、凍結切片10〜20枚に対しマイクロダイセクションを施し癌組織のみを回収し、RNA easy micro kit (QIAGEN) を用いて回収した癌組織からトータルRNAを抽出した。発現解析はAgilent社のIn―situオリゴDNAマイクロアレイシステム (一色法)を使用し実施した。抽出したトータルRNAはQuick Amp Labeling Kit (Agilent)にてRNA増幅、及びCyanine―3標識を行い、ラベル化RNAを作成した。 マイクロアレイチップはWholeHuman Genome (4x44K)を使用し、ハイブリダイゼーション、及び洗浄はそれぞれAgilent社のGeneExpression Hybridization Kit、Gene Expression Wash Packを使用し、付随マニュアルに沿って実施した。洗浄後、マイクロアレイスキャナーにてアレイの蛍光シグナルを画像として取り込み、数値化ソフトFeatureExtraction Ver.9.5を使用して各スポットの蛍光強度の数値化を行った。同様に市販の正常RNAの発現解析を行い、癌組織サンプルでの蛍光強度と正常サンプルでの蛍光強度との比をとることにより、癌における発現亢進を算出した。図5に示すように、高い頻度で大腸癌および肺癌において正常に比して発現亢進していることが認められた。
【0080】
(2)癌細胞株におけるxCTの蛋白質発現量の検討
FACS法によりLGtra02−01産生モノクローナル抗体を用いてヒトがん細胞株22種におけるxCTの発現量を測定した。図5に示すように、大腸癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、小腸癌、舌癌、脳腫瘍、リンパ腫等、種々のがん細胞株においてxCTが発現し、その中でも特に子宮頸癌HeLa細胞において最も高い発現量が認められた。
【0081】
[実施例3]
(1)モノクローナル抗体による抗体依存性細胞障害活性の検討
KSNヌードマウスより脾臓を摘出し、培地中でほぐしてリンパ球を分取する。150gで5分間遠心し、ペレットをTris−HCl5mLで懸濁し、赤血球を溶血させる。37℃で5分間インキュベートし、ペレットを培地5mLに懸濁後30秒間静置する。組織片が沈殿したら上清を分取し、再度沈殿物に培地5mLを加え、30秒間静置し、上清を分取する。最終濃度が500J.U./mLになるようIL250μL加え、終夜培養した細胞をエフェクター細胞とした。一方、標的細胞としてヒト舌癌HSC−3細胞を1×10cells/mLとなるように5mLの培地で調整し、1mg/mLのcalsein−Am−solution50μLを加え、37℃で30間インキュベートする。培地を5mL加え、150gで5分間遠心し、上清を捨てる。さらに培地10mLで懸濁し、150gで5分間遠心し、上清を捨てる工程を2回繰り返す。培地5mLで懸濁し、丸底96wellplateに50μLずつ分注する。LGtra02−01産生モノクローナル抗体100μL、続いてエフェクター/ターゲット比(E/T比)が10および30になるように、エフェクター細胞50μLを加え、37℃で2時間インキュベートする。テラスキャン(MINERVATECH)を用いて520nm蛍光波長を測定し、次の式で細胞障害率を算出した。細胞障害率(%)=(sample release - spontaneous release)/(total release - spontaneous release)×100。図6に示すようにLGtra02−01産生モノクローナル抗体のADCC活性が検出された。エフェクター細胞と標的細胞を混合したControlで3.5%であり、抗体を加えることにより、ADCCが起こり、E/T比10では約35%、E/T比30では約40%の細胞障害率が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、xCTを高発現する腫瘍細胞のアポトーシス誘導、またはxCTを高発現する腫瘍細胞で特徴付けられる腫瘍の病態解析、予防、治療等に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0083】
配列番号:_ 軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)
配列番号:_ 軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)
配列番号:_ 軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)
配列番号:_ 重鎖相補性決定領域1(CDRH1)
配列番号:_ 重鎖相補性決定領域2(CDRH2)
配列番号:_ 重鎖相補性決定領域3(CDRH3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
xCTの細胞外領域に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
xCTを発現する細胞のxCTに結合し、前記細胞に対する細胞障害活性を有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片が、:
(1)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:_のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号:_の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
サブクラスがIgGである、請求項1〜4のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記IgGが、IgGである、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、dsFv、ds−scFv、それらのダイマー、ミニボディ(minobodies)、ダイアボディ(diabodies)、およびマルチマー、または二重特異性抗体断片である、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
モノクローナル抗体である、請求項1〜7のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
ラット、マウス、霊長類、またはヒト抗体である、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
受領番号FERM ○○○○で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸分子を含む、ハイブリドーマ細胞。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞。
【請求項16】
受領番号FERM ○○○○で特定されるハイブリドーマ細胞。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載のハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養物からxCTに特異的に結合する抗体を採取することを含む、xCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載のハイブリドーマ細胞から抗xCTモノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して前記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からxCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、xCTの細胞外領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項19】
前記宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、または哺乳動物である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する組成物であって、xCTを発現する細胞に適用して該細胞のアポトーシスを誘導するために使用する、組成物。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬。
【請求項22】
前記腫瘍が、大腸癌(結腸直腸癌)、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、胆管癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫、骨肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】
以下の(1)〜(6)からなる群から選択される単離された相補性決定領域(CDR):
(1)配列番号:_のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)配列番号:_のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)配列番号:_のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)配列番号:_のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)配列番号:_のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)配列番号:_のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、腫瘍の診断剤。
【請求項25】
前記腫瘍が、大腸癌(結腸直腸癌)、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、胆管癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状肉腫、骨肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項24に記載の腫瘍の診断剤。
【請求項26】
前記腫瘍が、大腸癌または肺癌または膵臓癌である、請求項24に記載の腫瘍の診断剤。
【請求項27】
被験者由来のサンプルと請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を接触させる工程;および
前記サンプル中のxCTまたはxCT発現細胞を検出または測定する工程、
を含む、xCTの検出方法。
【請求項28】
酵素免疫測定法または放射性免疫測定法に従う、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルが、癌患者または癌を患っていると疑われる被験者に由来する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルが、被験者由来の組織、血清、唾液、または尿である、請求項27〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、腫瘍の診断のためのキット。
【請求項32】
前記腫瘍が、大腸癌または肺癌または膵臓癌である、請求項31に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−50355(P2011−50355A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204715(P2009−204715)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(502019933)リンク・ジェノミクス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】