説明

トランスポータータンパク質とアダプタータンパク質を共発現させたトランスジェニック卵母細胞

【課題】本発明は、輸送活性の高いトランスジェニック卵母細胞、及び該トランスジェニック卵母細胞を用いた、被験物質の輸送を評価するための高感度の実験系を提供することを目的とする。
【解決手段】1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞、及び該トランスジェニック卵母細胞を用いた、トランスポーターの被験物質に対するトランスポーター活性を高感度で評価する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医薬品開発においては、候補化合物の分子サイズの増加に伴い、化合物の物理化学的特性(特に脂溶性等)に起因して、さまざまなタンパク質等に結合しやすい性質の化合物が多く合成される傾向にある。これら候補化合物の薬物輸送を評価する際にも、なるべくトランスポーター自身による輸送活性の高い実験系を構築することによって、化合物の細胞膜への吸着や結合と、細胞内部への輸送とを明確に区分することが望まれる。そのため、近年、製薬企業をはじめとする多くの研究グループが薬物を輸送するトランスポーターに注目している。
【0003】
トランスポーターは、薬物の生体膜透過に寄与することで、薬物の吸収、分布、排泄に直接関与する。従って、基質となる薬物がトランスポーターによって輸送されるか否かは、薬物の吸収、分布、排泄等の体内動態を決定する重要な因子の一つである。また、肝臓等においては、薬物トランスポーターによる濃縮的な取り込みや排泄が基質薬物の細胞内非結合型濃度の大小を決定するため、トランスポーターによる認識性が、薬物代謝酵素に対する阻害効果の大小とも関連することが示唆されている。このように、ある薬物がトランスポーターによって輸送されるか否かを、簡便かつ正確に計測する実験系の確立は、新規医薬品の開発や既存医薬品の適正使用において重要な課題である。
【0004】
トランスポーターによる輸送を計測する簡便な系として、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた実験系が確立されている。従来までに、上記のトランスポーターの輸送機能の評価系としては、第1の場所でトランスジェニックアフリカツメガエル卵母細胞を調製するステップと、第1の場所から離れた第2の場所にトランスジェニックアフリカツメガエル卵母細胞を輸送するステップとを含み、好ましくは、トランスジェニックアフリカツメガエル卵母細胞が、多様なヒト又は動物の膜タンパク質をコードするcRNA又はcDNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入することにより調製され、さらなる態様では、少なくとも1つの容器及びその容器に配置された少なくとも1個のトランスジェニックアフリカツメガエル卵母細胞を含む培養系が提供される、トランスジェニックアフリカツメガエル卵母細胞を提供する方法(例えば、特許文献1参照)や、 (a)1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを細胞表面に共発現し、局在領域がオーバーラップしていない卵母細胞を用意する、(b)該卵母細胞を、それぞれの局在領域に接触する細胞外液が、互いに接触しないように設計されたチャンバーにセットする、(c)薬物を該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液に添加する、(d)一定時間後、トランスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液又はエクスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液を回収する、(e)回収した外液中の薬物の量を測定すること、を含む、トランスポーターとしての有機アニオントランスポーター2(OATP2)とエクスポータータンパク質としての多剤耐性蛋白質(MRP2)等を対象とした、細胞における薬物の動態を簡便かつ容易にin vitroで検出するための方法、ならびに該方法に適した細胞及び細胞実験用チャンバー(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
また、線虫(C.elegans)のゲノム配列から予測されるNa+依存性トランスポーターcDNAについてアフリカツメガエルの卵母細胞発現系で高親和性コリン取り込み活性を調べることにより、線虫高親和性コリントランスポーターのcDNA(cho−1)を同定し、このcDNAとの塩基配列の相同性を指標にラット脊髄からラット高親和性コリントランスポーターのcDNA(CHT1)や、ヒトゲノムからヒト高親和性コリントランスポーターのcDNAをクローニングする、生理的に重要である高親和性コリントランスポーター活性を有するタンパク質、それをコードする遺伝子及びそれらを利用した高親和性コリントランスポーター活性促進物質のスクリーニング方法(例えば、特許文献3参照)や、生体を構成する種々の正常細胞並びに種々の腫瘍細胞などの病態関連異常細胞の生存及び増殖に必須な栄養素であるアミノ酸の細胞内への輸送を媒介するアミノ酸トランスポーター分子であって、特に正常細胞に比べ腫瘍細胞に特異的に発現の見られる新規アミノ酸トランスポーター分子を同定、単離し、該分子の生物活性及び/又は該分子の発現を阻害する薬剤を同定することにより、腫瘍(癌)等の種々の病態を治療することができる薬剤を提供する方法(例えば、特許文献4参照)や、ショウジョウバエ(D.melanogaster)のcDNAライブラリーより、アフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた際のグルタミン酸の取り込みを指標とした、新規グルタミン酸トランスポーターをコードするcDNAの同定及びグルタミン酸トランスポーター活性阻害物質のスクリーニング方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0006】
一方、ヒトHEK293細胞において、アダプタータンパク質であるPDZK1と、トランスポータータンパク質であるOCTN2を共発現させたところ、OCTN2(Organic cation/carnitine transporter−2)の輸送機能が向上したことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、ヒトHEK293細胞以外の細胞における、PDZK1のOCTN2への影響は知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−304501号公報
【特許文献2】特開2005−224190号公報
【特許文献3】特開2001−136976号公報
【特許文献4】特開2000−157286号公報
【特許文献5】特開平10−99083号公報
【非特許文献1】Mol.Phrmacol.67(3):734−743,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アフリカツメガエル卵母細胞は、外来遺伝子のcRNAを卵母細胞内に注入することによって、遺伝子産物を細胞内又は表面に発現させることのできる簡便な実験系であり、多くの分子生物学的研究に汎用されている。しかしながら一般に、外来cRNAを翻訳する効率には限界があるため、注入するcRNA量は、通常、卵母細胞1個当り25−50ng以内に抑えられている。よって、この系を使ってトランスポーター遺伝子産物を発現させ、その輸送機能を評価しようとする場合でも、注入できるcRNA量に限界があるために、その遺伝子産物量やそこから得られる輸送活性にも限界があった。本発明の課題は、輸送活性の高いトランスジェニック卵母細胞、及び該トランスジェニック卵母細胞を用いた、被験物質の輸送を評価するための高感度の実験系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アフリカツメガエルの卵母細胞を利用した輸送活性の評価系において、トランスポーターの輸送機能や細胞内での局在の制御機構であるPDZ(PSD−95,Dlg,ZO−1)ドメインを有するアダプタータンパク質群(PDZK1,IKEPP,NHERF1,NHERF2)と、トランスポーターとを共発現させることにより、上記課題を解決し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞や、(2)1種のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び2種のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種のトランスポータータンパク質及び2種のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞や、(3)2種のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、2種のトランスポータータンパク質及び1種のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞や、(4)トランスポータータンパク質をコードする核酸が、有機アニオントランスポーター、有機カチオントランスポーター及びペプチドトランスポーターからなる群から選ばれるトランスポータータンパク質をコードする核酸である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞や、(5)トランスポータータンパク質をコードする核酸が、OCTN1、OCTN2、PEPT1、PEPT2、OATP−A及びSLC26A3から選ばれるトランスポータータンパク質をコードする核酸である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞や、(6)アダプタータンパク質をコードする核酸が、PDZドメインを有するアダプタータンパク質をコードする核酸である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞や、(7)アダプタータンパク質をコードする核酸が、PDZK1、PDZK2、NHERF1、NHERF2及びIKEPPから選ばれるアダプタータンパク質をコードする核酸である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞や、(8)アダプタータンパク質をコードする核酸として、PDZK1をコードする核酸を少なくとも含む上記(1)〜(7)のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞や、(9)核酸がcRNAである上記(1)〜(8)のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞や、(10)OATP−Aトランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、NHERF1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OATP−Aトランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質と、NHERF1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞や、(11)OCTN2トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、NHERF1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OCTN2トランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質と、NHERF1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞や、(12)OCTN2トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、SLC26A3トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OCTN2トランスポータータンパク質と、SLC26A3トランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞や、(13)OCTN1トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PEPT2トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OCTN1トランスポータータンパク質と、PEPT2トランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞に関する。
【0011】
また本発明は、(14)1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードするcRNAと、1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードするcRNAとをアフリカツメガエルの卵母細胞にマイクロインジェクションにより導入し、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現させることを特徴とするトランスジェニック卵母細胞の製造方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、(15)上記(1)〜(13)のいずれか記載のトランスジェニック卵母細胞における薬物の動態をインビトロで検出する、以下のステップを含む薬物動態の検出方法;標識化合物と前記トランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションするか、又は、標識化合物を細胞内に含有させた前記トランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションするステップ(A)、トランスジェニック卵母細胞への標識化合物の取込みの程度、又はトランスジェニック卵母細胞からの標識化合物の排出の程度を測定するステップ(B)、測定結果を評価するステップ(C)や、(16)上記(1)〜(13)のいずれか記載のトランスジェニック卵母細胞における薬物の動態をインビトロで検出する、以下のステップを含む薬物動態の検出方法;標的化合物と前記トランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションするか、又は、標的化合物を細胞内に含有させた前記トランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションするステップ(A’)、トランスジェニック卵母細胞への標的化合物の取込みの程度、又はトランスジェニック卵母細胞からの標的化合物の排出の程度を測定するステップ(B’)、測定結果を評価するステップ(C’)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、輸送活性の高いトランスジェニック卵母細胞、及び該トランスジェニック卵母細胞を用いた、被験物質の輸送を評価するための高感度の実験系を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のトランスジェニック卵母細胞は、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現している限り特に制限はされない。
【0015】
本発明に用いるアフリカツメガエルの卵母細胞は、アフリカツメガエルの卵母細胞である限り特に制限はされず、例えばNASCO、Ft.Atkinson、WI53538などから入手することができる。
【0016】
本発明に用いるトランスポータータンパク質の種類としては、そのトランスポータータンパク質をコードする核酸をアフリカツメガエルの卵母細胞に導入した場合に、その卵母細胞内で発現し、その発現産物であるタンパク質がトランスポーター活性を発揮し得る限り、特に制限されるものではないが、薬物動態に関連するトランスポーターであることが好ましく、薬物動態に関連するトランスポーターとしては、有機アニオントランスポーター、有機カチオントランスポーター、ペプチドトランスポーター、糖トランスポーター、アミノ酸トランスポーター、ヌクレオシドトランスポーター、小腸上皮細胞刷子縁膜トランスポーター、その他のSLC(Solute Carrier)ファミリートランスポーター、ABCトランスポーター等を挙げることができるが、少なくとも有機アニオントランスポーター、有機カチオントランスポーター、ペプチドトランスポーター、糖トランスポーター、SLCファミリートランスポーターを含むことが好ましい。
【0017】
上記有機アニオントランスポーターとしては、例えばOAT1、OAT2、OAT3、OAT4、OATP−A、OATP−B、OATP−C、OATP−D、OATP−E、OATP−8、PGT、OAT−K1、NPT1、MCT1、AE2等を挙げることができ、有機カチオントランスポーターとしては、OCT1、OCT2、OCT3、OCTN1、OCTN2、OCTN3等を挙げることができ、ペプチドトランスポーターとしては、PEPT1、PEPT2等を挙げることができ、アミノ酸トランスポーターとしては、LAT、CAT、EAAT等を挙げることができ、神経伝達物質トランスポーターとしては、GAT1、GAT2、NET1、SERT等を挙げることができ、胆汁酸トランスポーターとしては、NTCP、ASBT等を挙げることができ、ABCトランスポーターとしては、MDR1、MRP2等を挙げることができ、ヌクレオシドトランスポーターとしては、CNT1、CNT2、CNT3、ENT1、ENT2等を挙げることができ、糖トランスポーターとしては、SGLT1等を挙げることができ、SLCファミリートランスポーターとしては、SLC26A3等を挙げることができる。これらの中でも少なくとも、薬物輸送に関して特に重要なトランスポーターとしては、オリゴペプチドトランスポーターPEPT1、モノカルボン酸トランスポーターMCT1、有機アニオントランスポーターNPT1、OATP−A、OATP−B、OATP−C、OATP−D、OATP−E、OATP−8、OAT1、OAT3及びAE2、並びに有機カチオントランスポーターOCT1、OCT2、OCTN1、OCTN2及びOCTN3を具体的に挙げることができる。
【0018】
以下の表1〜3に、上述したトランスポーターを含む、従来報告されているトランスポーターの種類、名称、遺伝子バンクにおけるアクセッションナンバー、報告文献名、組織分布、輸送する基質の一覧表を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
本発明に用いるトランスポータータンパク質は、1種類であってもよいが、より優れた輸送活性(例えば輸送速度)を得る観点や、よりインビボの環境に近づけ得るという観点から、2種類以上を併用することが好ましく、より具体的には、本願明細書に具体的に例示されたトランスポータータンパク質から選ばれる2種以上のトランスポータータンパク質を用いることが好ましく、OCTN2とSLC26A3の組み合わせ、OCTN1とPEPT2の組み合わせがより好ましい。
【0023】
2種以上のトランスポータータンパク質を併用することによる、輸送活性向上の作用機作については、2種以上のトランスポータータンパク質を併用することにより、併用したいずれかのトランスポーターの活性が、そのトランスポーターを単独で用いた場合に比べて向上している限り特に制限されないが、例えば、2種以上のトランスポータータンパク質が、それぞれの基質を輸送することによって生じる膜内外間の電荷の偏りを互いに低減する2種以上のトランスポータータンパク質であることが好ましい。具体的には、例えば、SLC26A3とOCTN2は、以下のように膜内外間の電荷の偏りを互いに低減させることにより、互いのトランスポーター活性を向上させるものと考えられる。
SLC26A3は、2個のClを細胞内に取り込むと同時に1個のHCO細胞外に排出する(合計1個のマイナス電荷が細胞内に入る)。一方、OCTN2によるカルニチン輸送はNa依存的であり、カルニチンはプラスとマイナスの電荷をそれぞれ一つずつ持つ両極性化合物であることから、OCTN2は、カルニチンを細胞内に取り込むと、合計1個のプラスの電荷が細胞内に入ると考えられる。従って、SLC26A3をOCTN2と同時に導入すると、OCTN2がカルニチンを取り込む際に生じる1個のプラス電荷が、SLC26A3が取り込む1個のマイナス電荷によって打ち消されると考えられる。同様の電荷の打消しは、PEPT2とOCTN1の組み合わせでも見られると考えられる。
【0024】
トランスポータータンパク質の由来としては、そのトランスポータータンパク質をコードする核酸をアフリカツメガエルの卵母細胞に導入した場合に、その卵母細胞内で発現し、その発現産物であるタンパク質がトランスポーター活性を発揮し得る限り、特に制限されるものではないが、例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、サル、ブタ、ウサギ、ラット、マウス等を挙げることができ、好ましくはヒト、サル、イヌ、ラット、マウス等を挙げることができる。トランスポータータンパク質を複数種用いるときに、それぞれのトランスポータータンパク質の由来は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
本発明に用いるトランスポータータンパク質をコードする核酸の種類としては、そのトランスポータータンパク質をコードする核酸をアフリカツメガエルの卵母細胞に導入した場合に、その卵母細胞内で発現し、その発現産物であるタンパク質がトランスポーター活性を発揮し得る限り、特に制限されるものではないが、具体的には、cRNA、cDNA、DNA、RNAを挙げることができ、より高い形質転換効率を得る観点から、cRNAを特に好ましく挙げることができる。
【0026】
本発明に用いるアダプタータンパク質の種類としては、本発明に用いるいずれかのトランスポータータンパク質をコードする核酸と共にアフリカツメガエルの卵母細胞に導入した場合に、〔1〕その卵母細胞内で発現し、かつ、〔2〕アダプタータンパク質をコードする核酸を単独で導入した場合と比べて、卵母細胞のトランスポーター活性が上昇するようなものである限り、特に制限はされるものではないが、PDZドメインを有するアダプタータンパク質を好ましく挙げることができ、より具体的には、PDZK1、PDZK2、NHERF1、NHERF2、IKEPPをさらに好ましく挙げることができる。
【0027】
ここで、PDZドメインとは、PSD−95,Dlg,ZO−1と呼ばれる3つのタンパク質が共通して持つアミノ酸80〜90個からなる構造ユニットであり、このドメインがトランスポーターのC末端に位置するアミノ酸を認識して結合することが知られている。PDZドメインのコンセンサス配列はNCBIにも記載されている(NCBI No.cd00992)。
本発明において、PDZドメインを有するアダプタータンパク質とは、上記PDZドメインのコンセンサス配列(NCBI No.cd00992)に対して相同性30%以上、好ましくは33%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは36%以上、最も好ましくは37%以上のアミノ酸配列を有するアダプタータンパク質をいう。
【0028】
本発明に用いるアダプタータンパク質は、1種類であってもよいが、より優れた輸送活性促進効果を得る観点から、2種類以上併用することが好ましく、具体的にはPDZK1、PDZK2、NHERF1、NHERF2及びIKEPPから選ばれる2種以上のアダプタータンパク質を用いることがより好ましく、PDZK2、NHERF1、NHERF2及びIKEPPから選ばれる1種又は2種以上のアダプタータンパク質と、PDZK1とを併用することがさらに好ましく、PDZK1とNHERF1の組み合わせが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いるアダプタータンパク質をコードする核酸の種類としては、本発明に用いるいずれかのトランスポータータンパク質をコードする核酸と共にアフリカツメガエルの卵母細胞に導入した場合に、〔1〕その卵母細胞内で発現し、かつ、〔2〕アダプタータンパク質をコードする核酸を単独で導入した場合と比べて、卵母細胞のトランスポーター活性が上昇するようなものである限り、特に制限はされるものではないが、具体的には、cRNA、cDNA、DNA、RNAを挙げることができ、より高い形質転換効率を得る観点から、cRNAを特に好ましく挙げることができる。
【0030】
本発明に用いるトランスポータータンパク質をコードする核酸やアダプタータンパク質をコードする核酸は、例えば前述の表1〜3に記載されたアクセッション番号等を参照して所望のトランスポータータンパク質やアダプタータンパク質の配列情報を入手し、該配列情報に基づいて適当なプライマーを作製し、例えば所望の生物のDNAライブラリー等のテンプレートを入手又は作製して、PCR反応を行うこと等によって入手することができる。核酸を作製するための実験プロトコールとしては、例えばMolecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,2001等に記載された方法を利用することができる。
【0031】
本発明のトランスジェニック卵母細胞を作製する方法としては、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードする核酸と、1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードする核酸とをアフリカツメガエルの卵母細胞に導入し、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現させる方法である限り特に制限されず、任意の既知の技法を用いることができるが、形質転換効率が優れていることから、本発明に用いるトランスポータータンパク質をコードする核酸及びアダプタータンパク質をコードする核酸をアフリカツメガエルの卵母細胞にマイクロインジェクションにより導入する方法を好ましく挙げることができる。マイクロインジェクションによる核酸の導入は、Current Protocols in Molecular Biology,Volumes I−III,F.Ausubel,ed.1994や、Wagner,et al.,Cellular Physiol.Biochem.,2000,10,1−12などに記載の標準的な方法により行うことができる。
【0032】
アフリカツメガエルの卵母細胞に導入するトランスポータータンパク質をコードする核酸の量は、アフリカツメガエルの卵母細胞へ導入可能な範囲であれば特に制限されず、何種類のトランスポータータンパク質をコードする核酸を導入するかという点や、何種類のアダプタータンパク質をコードする核酸を導入するかという点や、どのような種類の核酸を用いるかという点等により左右されるため、一概に言うことはできないが、例えば核酸の種類がcRNAである場合、トランスポータータンパク質1種類につき、該トランスポータータンパク質をコードするcRNAを2〜48ng用いることが好ましく、2〜30ng用いることがより好ましく、3〜20ng用いることがさらに好ましく、3〜10ng用いることがさらにより好ましく、4〜6ng用いることがよりさらに好ましい。トランスポータータンパク質の種類が2種以上である場合、トランスポータータンパク質をコードするcRNAは合計で、4〜48ng用いることが好ましく、6〜40ng用いることがより好ましく、6〜30ng用いることがさらに好ましく、8〜20ng用いることがさらにより好ましい。
【0033】
また、アフリカツメガエルの卵母細胞に導入するアダプタータンパク質をコードする核酸の量は、アフリカツメガエルの卵母細胞へ導入可能な範囲であれば特に制限されず、何種類のアダプタータンパク質をコードする核酸を導入するかという点や、何種類のトランスポータータンパク質をコードする核酸を導入するかという点や、どのような種類の核酸を用いるかという点等により左右されるため、一概に言うことはできないが、例えば核酸の種類がcRNAである場合、アダプタータンパク質1種類につき、該アダプタータンパク質をコードするcRNAを2〜48ng用いることが好ましく、2〜30ng用いることがより好ましく、3〜20ng用いることがさらに好ましく、3〜10ng用いることがさらにより好ましく、4〜6ng用いることがよりさらに好ましい。アダプタータンパク質の種類が2種以上である場合、アダプタータンパク質をコードするcRNAは合計で、4〜48ng用いることが好ましく、6〜40ng用いることがより好ましく、6〜30ng用いることがさらに好ましく、8〜20ng用いることがさらにより好ましい。
【0034】
また、アフリカツメガエルの卵母細胞に導入するトランスポータータンパク質をコードする核酸の量と、アダプタータンパク質をコードする核酸の量との合計量は、アフリカツメガエルの卵母細胞へ導入可能な範囲であれば特に制限されず、何種類のアダプタータンパク質をコードする核酸を導入するかという点や、何種類のトランスポータータンパク質をコードする核酸を導入するかという点や、どのような種類の核酸を用いるかという点等により左右されるため、一概に言うことはできないが、例えば核酸の種類がcRNAである場合、合計4〜50ng用いることが好ましく、6〜40ng用いることがより好ましく、8〜40ng用いることがさらに好ましく、10〜30ng用いることがさらにより好ましい。アフリカツメガエルの卵母細胞に導入するトランスポータータンパク質をコードする核酸の量と、アダプタータンパク質をコードする核酸の量との合計量が50ngを超えると、アフリカツメガエルの卵母細胞を形質転換することは困難である。
【0035】
また、アフリカツメガエルの卵母細胞に導入するトランスポータータンパク質をコードする核酸の量と、アダプタータンパク質をコードする核酸の量との比率は、トランスポータータンパク質をコードする核酸を単独で用いた場合と比較して、トランスポーター活性の促進が見られる限り特に制限はなく、何種類のトランスポータータンパク質やアダプタータンパク質を用いるかという点等により左右されるため一概に言うことはできないが、トランスポータータンパク質をコードする核酸の量:アダプタータンパク質をコードする核酸の量を、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:3〜3:1、さらに好ましくは1:2〜2:1、さらにより好ましくは2:3〜3:2とすることができる。
【0036】
本発明の薬物動態の検出方法は、本発明のトランスジェニック卵母細胞を用いる方法であれば特に制限はされないが、本発明のトランスジェニック卵母細胞における薬物の動態をインビトロで検出する、以下のステップを含む薬物動態の検出方法を好ましく挙げることができる。
・標識化合物と前記トランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションするか、又は、標識化合物を細胞内に含有させた前記トランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションするステップ(A)
・トランスジェニック卵母細胞への標識化合物の取込みの程度、又はトランスジェニック卵母細胞からの標識化合物の排出の程度を測定するステップ(B)
・測定結果を評価するステップ(C)
【0037】
ステップ(A)の標識化合物としては、例えば、動態を調べたい薬物等の化合物を標識したものや、動態を調べたい薬物等の化合物の代謝産物を標識したものを用いることができる。標識に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質、ランタニド元素、スピン試薬などが挙げられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕、〔59Fe〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
【0038】
ステップ(A)における、「標識化合物と本発明のトランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションする」は、標識化合物と、本発明のトランスジェニック卵母細胞とを接触させ、標識化合物が本発明のトランスジェニック卵母細胞に取り込まれ得る条件下でインキュベーションする限り特に制限されず、例えば適当な卵母細胞用バッファーに標識化合物を溶解し、その溶解液に本発明のトランスジェニック細胞を浸して一定時間インキュベーションすることを好ましく挙げることができる。
【0039】
また、ステップ(A)における、「標識化合物を細胞内に含有させた本発明のトランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションする」は、細胞内に標識化合物を含有させた本発明のトランスジェニック卵母細胞と、バッファーとを接触させ、該標識化合物が本発明のトランスジェニック卵母細胞外へ排出され得る条件下でインキュベーションする限り特に制限されず、例えば適当な方法で標識化合物を細胞内に含有させた本発明のトランスジェニック卵母細胞を、適当な卵母細胞用バッファーに浸して一定時間インキュベーションすることを好ましく挙げることができる。
標識化合物をトランスジェニック卵母細胞に含有させる方法としては、標識化合物をトランスジェニック卵母細胞に含有させることができ、かつ、そのトランスジェニック卵母細胞に含有させた標識化合物の量を把握することができる方法であれば特に制限されないが、操作が簡便である点、及び含有させた標識化合物の量を把握することが容易である点から、標識化合物をトランスジェニック卵母細胞に注入する方法を好ましく挙げることができる。
【0040】
ステップ(B)における、トランスジェニック卵母細胞への標識化合物の取込みの程度を測定する方法としては、特に制限されず、用いた標識剤に合わせて適当な方法を選択することができる。具体的には、例えば標識剤として放射性同位元素を用いた場合は液体シンチレーションカウンター等を、標識剤として蛍光物質等を用いた場合はフルオロメーター等を用いて、トランスジェニック卵母細胞内の標識化合物の量を測定することによって、トランスジェニック卵母細胞への取り込みの程度を測定することができる。また、標識化合物の質量スペクトルが知られていれば、LC−MS/MS等を用いて、トランスジェニック卵母細胞内の標識化合物の量を測定することによって、トランスジェニック卵母細胞への取り込みの程度を測定することができる。
なお、トランスジェニック卵母細胞内の標識化合物の量を測定する際には、トランスジェニック卵母細胞の周りに付着した標識化合物を除去するために、トランスジェニック卵母細胞を適当なバッファーで洗浄することが好ましい。
【0041】
ステップ(B)における、トランスジェニック卵母細胞からの標識化合物の排出の程度を測定する方法としては、特に制限されず、用いた標識剤に合わせて適当な方法を選択することができる。具体的には、例えば液体シンチレーションカウンター、フルオロメーター等を用いて、インキュベーション後バッファー中の標識化合物の量を測定することによって、トランスジェニック卵母細胞からの標識化合物の排出の程度を測定することができる。測定する際には、トランスジェニック卵母細胞の周りに付着した標識化合物も、トランスジェニック卵母細胞から排出された標識化合物としてカウントするために、トランスジェニック卵母細胞を適当なバッファーで洗浄し、その洗浄後のバッファーを前述のインキュベーション後のバッファーに加えて、その中の標識化合物の量を測定することが好ましい。
【0042】
なお、動態を調べたい化合物が、トランスジェニック卵母細胞内に存在しない化合物である場合は、標識していないその化合物を、本発明における標識化合物に代えて、本発明の方法に使用することもできる。本発明においては、そのような化合物も、便宜上標識化合物に含める。
【0043】
ステップ(C)における、測定結果を評価するステップとしては、特に制限されないが、例えば、薬物動態の検出方法に用いたトランスジェニック卵母細胞に導入したトランスポータータンパク質が、用いた標識化合物を認識して輸送するかどうかを評価したり、用いた標識化合物をどの程度輸送するのかを、他のトランスポータータンパク質を導入したトランスジェニック卵母細胞を用いたデータと比較することにより評価すること等を挙げることができる。
【0044】
また、本発明の薬物動態の検出方法に含まれる別の好ましい態様として、以下のステップを含む薬物動態の検出方法を挙げることができる。
・標的化合物と前記トランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションするか、又は、標的化合物を細胞内に含有させた前記トランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションするステップ(A’)
・トランスジェニック卵母細胞への標的化合物の取込みの程度、又はトランスジェニック卵母細胞からの標的化合物の排出の程度を測定するステップ(B’)
・測定結果を評価するステップ(C’)
【0045】
ここで、標的化合物とは、動態を調べたい薬物等の化合物や、動態を調べたい薬物等の化合物の代謝産物を意味する。また、前述のステップ(A’)、(B’)、(C’)は、ステップ(A)、(B)、(C)における標識化合物を、標的化合物に置き換えた場合と同様であるが、ステップ(B’)においては標的化合物を標識に頼らずに測定する必要がある。このような測定は、例えば、LC−MS/MS等を用いるなどして行うことができる。
【0046】
本発明における被験物質を認識するトランスポーターのスクリーニング法は、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞を用いる方法であれば特に制限はされないが、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞への被験物質の取込みの程度を測定することにより、被験物質を輸送するトランスポーターを同定する方法や、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞からの被験物質の排出の程度を測定することにより、被験物質を輸送するトランスポーターを同定する方法を好ましく挙げることができる。
【0047】
また、本発明におけるトランスポーターを認識する物質のスクリーニング法は、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞を用いる方法であれば特に制限されないが、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞への被験物質の取込みの程度を測定することにより、トランスポーターに認識される物質を同定する方法や、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞からの被験物質の排出の程度を測定することにより、トランスポーターに認識される物質を同定する方法を好ましく挙げることができる。
【0048】
さらに、本発明におけるトランスポーターの被験物質に対するトランスポーター活性を評価する方法は、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞を用いる方法であれば特に制限されないが、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞への被験物質の取込みの程度を測定することにより、トランスポーターの被験物質に対するトランスポーター活性を評価する方法や、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞からの被験物質の排出の程度を測定することにより、トランスポーターの被験物質に対するトランスポーター活性を評価する方法を好ましく挙げることができる。
【0049】
本発明のスクリーニング法や評価法における、上記本発明のトランスジェニック卵母細胞への被験物質の取込みの程度を測定する手段は、被験物質の取込みの程度を測定し得る限り特に制限されず、前述の薬物動態の検出方法におけるのと同様の方法を用いることができる。
【0050】
本発明のトランスジェニック卵母細胞においては、トランスポータータンパク質とアダプタータンパク質を共発現させることによって、導入したトランスポータータンパク質のトランスポーター活性が向上している。トランスポーター活性の向上の詳細な作用機作は不明であるが、アダプタータンパク質が共発現することによって、トランスポータータンパク質が細胞膜上で安定化する結果、より多くのトランスポータータンパク質が細胞膜上に発現し、より十分なトランスポーター活性をより長時間発揮することによるものと考えられる。
【0051】
本発明のトランスジェニック卵母細胞は、導入したトランスポータータンパク質のトランスポーター活性が向上しているため、トランスポータータンパク質を単独で導入して得られたトランスジェニック卵母細胞に比べて、被験物質の輸送を評価するための実験系に用いた場合に、より高感度な実験系が得られる。
【0052】
また、トランスポータータンパク質に加えてアダプタータンパク質を共発現させると、トランスポータータンパク質の核酸とアダプタータンパク質の核酸を合計したとしても、トランスポータータンパク質の核酸を単独で導入する場合に比べて、より少ない核酸量でより高いトランスポーター活性を得ることができる。このことは、アフリカツメガエルの卵母細胞を用いる場合は以下のような理由により特に有利な効果をもたらす。アフリカツメガエルの卵母細胞は、卵母細胞1個当たりに導入可能な核酸量(例えばcRNA量)は、25〜50ngであるとされている。そのため、アフリカツメガエルの卵母細胞へ、2以上のトランスポーターの導入をするとした場合、トランスポーター1つ当たりについて導入し得る核酸量の上限はかなり少量に限られてしまい、いずれのトランスポーターについても中途半端な活性しか得られず、実用性の低い実験系しか得られない。しかし、本発明のように、アダプタータンパクを共発現させることにより、2つ以上のトランスポーターを導入した場合であっても、それぞれのトランスポーターについて十分なトランスポーター活性を得ることが可能となったことによって、対象とする臓器や細胞に共通して発現する複数のトランスポーターを1個の卵母細胞に発現させるなどして、対象とする臓器や細胞におけるある特定の基質の輸送を実用的なレベルで一度に評価することが可能となり、従来のものより、インビボに近いインビトロ系の人工細胞(ヒト又は動物の細胞に模した細胞)を構築することが可能となった。
【0053】
また、上述のように、本発明では、アダプタータンパクを共発現させることにより、1つのトランスポータータンパク質について導入する核酸が少量で済むようになった。そのため、本発明では、アダプタータンパクを1種ではなく、2種以上導入することも可能となり、その結果、より高いトランスポーター活性を得ることができるようになった。
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
1.トランスポーター及びPDZアダプターのcRNAの合成
トランスポーター及びPDZアダプターのcRNAを合成する際に用いるトランスポーター及びPDZアダプターのcDNAの作製又は入手を行った。以下の表4に、cDNAを作製又は入手したトランスポーターの名称と、該トランスポーターの作製方法又は入手方法に関する情報を示す。
【0056】
【表4】

【0057】
また、以下の表5に、cDNAを作製又は入手したアダプターの名称と、該アダプターの作製方法又は入手方法に関する情報を示す。
【0058】
【表5】

【0059】
以下の表6に記載されたトランスポーターのcDNAを組み込んだプラスミドベクター、及び、表7に記載されたPDZアダプターのcDNAを組み込んだプラスミドベクターを、それぞれの表に記載された制限酵素で処理して直鎖状にした後、QIA Quick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて、トランスポーター及びPDZアダプターのcDNAの精製を行った。
【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
得られたcDNA、T7RNAポリメラーゼ、及びRNA Maxx high yield transcription kit(Stratagene)を用いて、cRNAの合成を行った後、Ribo mG Cap Analog(Promega)を用いてcRNAの5’末端をキャッピングした。T7RNAポリメラーゼによる転写反応の際に残った鋳型DNAを除くために、RNase−free DNaseを、5’末端がキャッピングされたcRNAに加えてDNase処理を行った。その後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてcRNAの精製を行った。なお、Kit使用の際には、付属の標準プロトコールに従って操作した。
【0063】
2.卵母細胞の採取
アフリカツメガエルを氷水中に30分〜1時間静置し、冬眠状態にさせた。アフリカツメガエルの腹部の表皮をピンセットで摘んで切開した後、薄皮と筋層を切開して卵母細胞を摘出し、後述の組成のOR2で洗浄した。次いで、卵母細胞をCollagenase solution 10mL(2.0mg/mL,dissolved in OR2)に浸漬し、18℃、180rpmで30分間振盪してCollagenase処理した。その後、卵母細胞をOR2で5回以上洗い、最後に、OR2を後述の組成のMBS(modified barth solution)で置換した。Collagenase処理では、濾胞細胞層を取り除き切れなかった卵母細胞は、実体顕微鏡(Olympus)下、MBS中でピンセットを用いて取り除いた。
【0064】
[OR2 solution(pH 7.5)の組成]
NaCl 82.5mM
KCl 2.0mM
MgCl・6HO 1.0mM
HEPES 5.0mM
1N NaOHを用いてpH7.5に調整
調製後、121℃,20minオートクレーブ
【0065】
[MBS(modified barth solution,pH7.4)の組成]
NaCl 88mM
KCl 1mM
Ca(NO・4HO 0.33mM
CaCl・2HO 0.41mM
MgSO・7HO 0.82 mM
NaHCO 2.4mM
HEPES 10.0mM
1N NaOHを用いてpH7.4に調整
調製後、121℃,20minオートクレーブ
【実施例2】
【0066】
3.アダプター分子PDZK1共発現系における輸送活性の経時的変化
(1)上記2.で採取したアフリカツメガエル卵母細胞に、上記1.で得られたOCTN2cRNAとPDZK1cRNAを同時に導入した。具体的には、OCTN2cRNA(25ng)及びPDZK1cRNA(25ng)をRNase−free waterで希釈し、65℃で5分間加熱処理して熱変性させた後、氷上で3分間冷却してcRNA溶液を得た。濾胞細胞層を取り除いた卵母細胞に、microdispenser(Drummond Science社製)を用いて前述のcRNA溶液を注入した。この卵母細胞を、ゲンタマイシン(50μg/mL)を加えたMBS中、18℃で培養し、トランスジェニック卵母細胞を得た。
OCTN2cRNA(25ng)及びPDZK1cRNA(25ng)に代えて、OCTN2cRNA(25ng)単独をcRNAとして用いて、同様の操作を行い、トランスジェニック卵母細胞を得た。
【0067】
(2)これら2種のトランスジェニック卵母細胞を用いて、cRNAの導入から3日後及び7日後における、カルニチンの取り込みを測定した。具体的には、測定対象となる卵母細胞を24wellプレートに10個/well以上とり、後述の組成のND96(pH7.4)で置換した。25℃中で30分間プレインキュベーションした後、放射性標識化合物〔H〕で標識したカルニチンを1μMとなるように添加したND96(pH7.4,25℃)500μL/wellに置換することで取り込み実験を開始した。一定時間後、氷冷したND96で卵母細胞を5回洗浄し、取り込みを終了させた。卵母細胞は2個ずつシンチレーションバイアルに入れ、5%SDSを100μLずつ加えることで卵母細胞を可溶化し、1日静置させた後に、液体シンチレーションカクテル(Cleason I;Nacalai Tesque社製)を加え液体シンチレーションカウンター(Aloka社製)により放射活性を測定した。カルニチン量の測定は、各試験区について5〜10連で行った。
【0068】
[ND96 (pH 7.4)の組成]
NaCl 96mM
KCl 2mM
CaCl 1.8mM
MgCl・6HO 1mM
HEPES 5mM
1N NaOHを用いてpH7.4に調整
調製後、121℃,20minオートクレーブ
【0069】
cRNAの導入から3日後におけるカルニチンの平均取り込み量を100%として、cRNAの導入から7日後におけるカルニチンの平均取り込み量を、それぞれのトランスジェニック細胞について算出した。その結果を図1に示す。
OCTN2単独では、3日後の取り込みに比べ7日後も同程度の取り込み活性であるのに対し、OCTN2とPDZK1との共発現系では7日後において3日後よりもむしろ高い活性が認められたことから、アダプター分子であるPDZK1が共存することによって、OCTN2活性が次第に高まることが示された。
なお、図1のグラフにおいては、導入したOCTN2トランスポーター以外の輸送の影響を排除するため、OCTN2トランスポーターのcRNAを用いないこと以外は同様の方法で作製した卵母細胞を対照群として作製し、その対照群が取り込んだカルニチン量を差し引くことによって、補整した数値を用いている。
【0070】
4.PDZK1をOCTN2と共発現させることによる、OCTN2トランスポーター活性への影響
導入するcRNAとして、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いること以外は、上記3.(1)と同様の方法により、トランスジェニック卵母細胞を作製した。また、導入するcRNAとして、OCTN2cRNA(25ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞についても同様の方法により作製した。また、対照として、cRNA溶液50nLに代えて精製水を50nL注入した卵母細胞も作製した。
【0071】
得られたこれら5種の卵母細胞について、上記3.(2)と同様の方法により、カルニチンの取り込みを測定した。cRNA又は精製水の導入から90分までのカルニチン取り込みの経時的変化を図2に示す。
OCTN2cRNA(5ng)単独で注入した場合や、PDZK1cRNA(5ng)単独で注入した場合は、精製水を注入した場合に比べ、顕著な取り込みの上昇は見られなかったのに対し、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を共に注入した場合には、極めて高い取り込みが見られ、その取り込みは、OCTN2cRNA(25ng)を単独で注入した場合よりも顕著に高いものであった。このことから、OCTN2cRNAに加えてPDZK1cRNAを卵母細胞内に導入することによって、用いるOCTN2cRNA量がわずかであっても、多量のOCTN2cRNAを単独で導入した場合と同様の輸送活性(トランスポーター活性)が得られることが示された。
【0072】
5.YFP融合OCTN2cRNAの合成及び発現細胞の観察
上記1.で用いたOCTN2遺伝子をpEYFP−C1ベクターに組み込んだ後、インサート(YFP−OCTN2)部分をさらにpcDNA3に組み替えた。得られたベクターを制限酵素BamHIで切断した後、上記1.と同様の方法によって、YFP−OCTN2cRNAを作製した。このYFP−OCTN2cRNA(5ng)とPDZK1cRNA(5ng)を、上記2.で得られたアフリカツメガエルの卵母細胞に注入し、この卵母細胞を、ゲンタマイシン(50μg/mL)を加えたMBS中、18℃で培養し、トランスジェニック卵母細胞を得た。
【0073】
YFP−OCTN2cRNA(5ng)とPDZK1cRNA(5ng)に代えて、YFP−OCTN2cRNA(5ng)単独をcRNAとして用いて、同様の操作を行い、トランスジェニック卵母細胞を得た。また、対照として、cRNA溶液50nLに代えて精製水を50nL注入した卵母細胞も作製した。
【0074】
これら3種の卵母細胞について、それぞれcRNA注入から3日間の培養を行った。培養後の卵毋細胞をそれぞれ前述のMBS中に浸し、卵母細胞が生きている状態のままで、共焦点顕微鏡(LSM 510;Carl Zeiss,Jena,Germany社製)を用いて、卵母細胞表面のYFPの蛍光を検出した。その結果を図3に示す。
YFP−OCTN2cRNAと共にPDZK1cRNAを注入した卵母細胞は、YFP−OCTN2cRNAを単独で注入した卵母細胞と比較して、かなり強い蛍光強度を示すことが確認され、PDZK1はOCTN2の細胞膜上での安定化に寄与していることが示唆された。
【0075】
6.PDZK1をPEPT1と共発現させることによる、PEPT1トランスポーター活性への影響
PDZK1をトランスポーターと共発現させることによる、トランスポーターの輸送活性の向上が、OCTN2以外のトランスポーターについても観察されるかどうかを調べるために、PEPT1トランスポーターを用いて以下の実験を行った。
導入するcRNAとして、PEPT1cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いること以外は、上記3.(1)と同様の方法により、トランスジェニック卵母細胞を作製した。また、導入するcRNAとして、PEPT1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞についても同様の方法により作製した。また、対照として、cRNA溶液50nLに代えて精製水を50nL注入した卵母細胞も作製した。
【0076】
得られたこれら4種の卵母細胞について、PEPT1の基質であるグリシルサルコシン(Gly−Sar)の取り込みを測定し、C/M比率(卵母細胞に取り込まれた量を、添加した薬物濃度で除した値)を算出した。グリシルサルコシンの取り込みは、上記3.(2)において、放射性標識化合物〔H〕で標識したカルニチン1μMを用いる代わりに、グリシルサルコシン250nMを用いて同様の操作を行うことによって測定した。cRNA又は精製水の導入から90分までのC/M比率の経時的変化を図4に示す。図4の結果から、PEPT1のcRNA(5ng)を単独で注入した場合、グリシルサルコシンの取り込みは、水を注入した場合よりも高い値を示したが、さらにPDZK1のcRNA(5ng)をPEPT1のcRNAと同時に注入したところ、グリシルサルコシンの取り込みは、PEPT1単独を注入した場合に比べて上昇した。すなわち、PEPT1を用いた場合も、OCTN2を用いた場合と同様に、PDZK1を共存させることにより、輸送活性の顕著な上昇が見られた。一方、PDZK1のcRNA(5ng)を単独で注入した場合には、水を注入した場合と比べて取り込みの上昇はほとんど見られなかった。
【0077】
7.PDZK1を共存させることによる、PEPT2の輸送活性測定感度への影響
PDZK1をトランスポーターと共発現させた場合に、基質の輸送活性が向上するだけでなく、基質輸送活性の測定における測定感度も上昇するかどうかを確認するために以下の実験を行った。
導入するcRNAとして、PEPT2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いること以外は、上記3.(1)と同様の方法により、トランスジェニック卵母細胞を作製した。また、導入するcRNAとして、PEPT2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞についても同様の方法により作製した。また、対照として、cRNA溶液50nLに代えて精製水を50nL注入した卵母細胞も作製した。
【0078】
得られたこれら4種の卵母細胞について、PEPT2の基質であるグリシルサルコシン(Gly−Sar)の取り込みを測定した。グリシルサルコシンの取り込みは、上記6.と同様の方法を用いた。 cRNA又は精製水の導入から90分までのグリシルサルコシンの取り込みの経時的変化を図5に示す。図5の結果から、PEPT2cRNA(5ng)を単独で注入した場合は、グリシルサルコシンの取り込みは、水を注入した場合よりもわずかに高い値を示したに過ぎなかったが、PDZK1cRNA(5ng)をPEPT2cRNA(5ng)と同時に注入したところ、グリシルサルコシンの取り込みは、PEPT2cRNA(5ng)を単独で注入した場合に比べて大きく上昇した。すなわち、PEPT2を用いた場合も、OCTN2を用いた場合と同様に、PDZK1を共存させることにより、輸送活性の顕著な上昇が見られた。
【0079】
8.PDZK1を共存させることによる、OCTN1の輸送活性測定感度への影響
上記7.と同様のPDZK1による影響が、OCTN1に対しても見られるかどうかを確認するために以下の実験を行った。
導入するcRNAとして、OCTN1cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いること以外は、上記3.(1)と同様の方法により、トランスジェニック卵母細胞を作製した。また、導入するcRNAとして、OCTN1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞についても同様の方法により作製した。
【0080】
得られたこれら2種の卵母細胞について、OCTN1の基質である有機カチオンテトラエチルアンモニウム(tetraethylammonium:TEA)の取り込みを、基質濃度を変化させて検討した。その結果を図6に示す。図6の結果からわかるように、OCTN1cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を同時に注入した場合は、OCTN1cRNA(5ng)単独で注入した場合に比べ、輸送のVmaxが上昇し、Kmには変化がなかった。この結果は、PDZK1を共存させるとOCTN1による有機カチオン輸送が上昇すること、輸送の上昇は主に輸送キャパシティーの変化に起因し、親和性にはあまり影響を与えないことを示す。
なお、図6のグラフにおいては、導入したOCTN1トランスポーター以外の輸送の影響を排除するため、OCTN1トランスポーターのcRNAを用いないこと以外は同様の方法で作製した卵母細胞を対照群として作製し、その対照群が取り込んだTEA量を差し引くことによって、補整した数値を用いている。
【0081】
9.PDZK1を共存させること、又はさらに別のアダプターも併用することによる、OATP−Aの輸送活性測定感度への影響
上記7.と同様のPDZK1による影響がOATP−Aに対しても見られるか、及び、PDZK1以外にもアダプターを併用した場合の影響はどのようなものかを確認するために以下の実験を行った。
導入するcRNAとして、OATP−AcRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いること以外は、上記3.(1)と同様の方法により、トランスジェニック卵母細胞を作製した。また、導入するcRNAとして、OATP−AcRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞や、OATP−AcRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)及びNHERF1cRNA(5ng)の3種のcRNAを併用したトランスジェニック卵母細胞についても同様の方法により作製した。
【0082】
得られたこれら3種の卵母細胞について、OATP−Aの基質であるタウロコール酸(taurocholate:TCA)の取り込みを測定した。その結果を図7に示す。図7から分かるように、OATP−A(5ng)cRNAを単独で注入した時に比べ、OATP−AcRNA(5ng)とPDZK1cRNA(5ng)とを同時に注入すると、OATP−Aによるタウロコール酸の取り込みのKmにはそれほど大きな変化はない一方でVmaxは上昇した。このことから、PDZK1はOATP−Aの輸送を促進し、その効果はOCTN1のケースと同様、主にVmaxの上昇に起因することが示された。
また、OATP−A、PDZK1及びNHERF1の3種を共発現させた場合のOATP−AによるTCAの輸送は、OATP−A単独の場合や、OATP−A及びPDZK1を併用した場合よりもさらに高く、Vmaxが上昇していた。
なお、図7のグラフにおいては、導入したOATP−Aトランスポーター以外の輸送の影響を排除するため、OATP−AトランスポーターのcRNAを用いないこと以外は同様の方法で作製した卵母細胞を対照群として作製し、その対照群が取り込んだTCA量を差し引くことによって、補整した数値を用いている。
【0083】
10.複数のアダプターを共存させることによる、輸送測定感度への影響
(1)複数のアダプターを共存させることによる、輸送測定感度への影響を調べるために、以下の実験を行った。
導入するcRNAとして、OCTN2cRNA(5ng)を用いること以外は、上記3.(1)と同様の方法により、トランスジェニック卵母細胞を作製した(OCTN2 alone)。また、導入するcRNAとして、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞(+PDZK1)、OCTN2cRNA(5ng)及びNHERF1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞(+NHERF1)、OCTN2cRNA(5ng)及びNHERF2cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞(+NHERF2)、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK2cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞(+PDZK2)、OCTN2cRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)及びNHERF1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞(+PDZK1&NHERF1)についても同様の方法により作製した。PDZK2、NHERF1及びNHERF2はいずれも、PDZK1と同様に、PDZドメインを有するタンパク質として知られている。
【0084】
得られたこれら6種の卵母細胞について、上記3.(2)と同様の方法により、カルニチンの取り込みを測定した。その実験結果を図8に示す。図8の結果から分かるように、OCTN2 aloneのカルニチン取り込みに比べ、+PDZK1では顕著な取り込み上昇が見られたのに対し、+PDZK2、+NHERF1、+NHERF2では取り込みの促進は見られず、輸送促進効果はPDZK1特異的であることが示された。一方、+PDZK1&NHERF1では、OCTN2 aloneや+PDZK1と比べて、OCTN2によるカルニチン取り込みが顕著に高かった。
なお、図8のグラフにおいては、導入したOCTN2トランスポーター以外の輸送の影響を排除するため、OCTN2トランスポーターのcRNAを用いないこと以外は同様の方法で作製した卵母細胞を対照群として作製し、その対照群が取り込んだカルニチン量を差し引くことによって、補整した数値を用いている。
【0085】
(2)さらに、取り込みの時間推移を検討することにより、図8に示す結果を確認した。
図8の実験で用いたトランスジェニック卵母細胞以外のトランスジェニック卵母細胞として、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)とNHERF1cRNA(5ng)とを用いたトランスジェニック卵母細胞を用意した。また、対照として、cRNA溶液50nLに代えて精製水を50nL注入した卵母細胞も作製した。
【0086】
これらの6種の卵母細胞について上記3.(2)と同様の方法により、カルニチンの取り込みを測定した。その実験結果を図9に示す。図9の結果から分かるように、水を注入した場合に比べ、PDZK1cRNA(5ng)単独を注入した場合や、PDZK1cRNA(5ng)とNHERF1cRNA(5ng)を共に注入した場合には、カルニチン取り込みはほとんど上昇せず、OCTN2cRNA(5ng)を単独で注入した場合にも取り込み活性はさほど顕著ではなかった。これに対し、OCTN2cRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)、NHERF1cRNA(5ng)を3つ同時に注入した場合のカルニチンの取り込みは、OCTN2単独やOCTN2+PDZK1共発現に比べても顕著に高かった。従って、PDZK1とNHERF1を同時にOCTN2と共発現させると、PDZK1だけをOCTN2と共発現させた場合より、さらに高い基質輸送活性が得られることが示された。
【0087】
11.アダプターと複数のトランスポーターを共存させることによる、輸送測定感度への影響
(1)前述の結果に示されているように、PDZK1を共存させることにより、わずか5ngのトランスポーターcRNAの注入で、トランスポーターcRNA(5ng)を単独で注入した場合よりも顕著に高い輸送活性をアフリカツメガエル卵母細胞で再現することができる。このことは、一つの卵母細胞に複数のトランスポーターを同時に発現させ、かつ、それらの複数のトランスポーターについて十分な活性を得ることを可能にする。肝臓、腎臓、小腸、脳など種々の臓器細胞には複数のトランスポーター遺伝子が同時に発現し、薬物動態に関与していることから、このような複数のトランスポーター遺伝子発現系は、より生理的な系に近い実験系である。
そこで、トランスポーターとしてOCTN2とSLC26A3とを併用し、OCTN2とPDZK1とSLC26A3の3者を同時に発現させた(注入にはそれぞれ5ngのcRNA量を使用)。トランスジェニック卵母細胞の作製方法は、前述の方法にしたがった。得られたトランスジェニック卵母細胞についてOCTN2によるカルニチン取り込みを測定した。その結果を図10に示す。図10の結果から分かるように、OCTN2単独やOCTN2+SLC26A3による輸送に比べ、OCTN2、PDZK1、SLC26A3を3者で共発現させた時に、最も顕著な輸送活性が見られた。
なお、図10のグラフにおいては、導入したOCTN2トランスポーター以外の輸送の影響を排除するため、OCTN2トランスポーターのcRNAを用いないこと以外は同様の方法で作製した卵母細胞を対照群として作製し、その対照群が取り込んだカルニチン量を差し引くことによって、補整した数値を用いている。
【0088】
この輸送促進の原因として考えられる仮説を図11に示す。SLC26A3は、2個のClを細胞内に取り込むと同時に1個のHCO3細胞外に排出する(合計1個のマイナス電荷が細胞内に入る)。一方、OCTN2によるカルニチン輸送はNa依存的であり、カルニチンはプラスとマイナスの電荷をそれぞれ一つずつ持つ両極性化合物であることから、合計1個のプラスの電荷が細胞内に入ると考えられる。従って、SLC26A3をOCTN2と同時に導入することによって、そのプラス電荷が打ち消されることが推測される。この仮説を検証する目的で、SLC26A3の代わりにSLC26A6を同時に発現させると、輸送促進は見られなかった(図10)。図11に示すように、SLC26A6は、1個のClを細胞内に取り込むと同時に2個のHCO細胞外に排出するため、OCTN2が取り込むプラスの電荷が打ち消されない結果、取り込み促進が見られないばかりか、OCTN2を単独発現した場合と比べて取り込みの低下が見られたものと考えられる。
【0089】
(2)上記11.(1)における、OCTN2とSLC26A3に代えて、OCTN1とPEPT2をトランスポーターとして用い、上記11.(1)と同様の実験を行った。OCTN1とPEPT2とPDZK1の3者を同時に発現させる際に注入に用いたcRNAはそれぞれ5ngであった。得られたトランスジェニック卵母細胞について、OCTN1の基質であるTEAの取り込みを測定した。TEAの濃度は、20mMのものと、10μMのものの2種類を用いた。また、比較として、PDZK1を単独で注入して得られたトランスジェニック卵母細胞のTEAの取り込みも測定した。その結果を図12に示す。また、図13には、OCTN1とPEPT2とPDZK1の3者を同時に発現させた場合のその概念図を示す。
図12から分かるように、TEAの濃度の違いは、OCTN1による取り込み量(基質濃度で除した値;μL/oocyteで表示)の違いにはほとんど影響を与えなかった。
一方、図6に記載されているように、OCTN1によるTEA輸送のKmは100〜200μMであり、20mMではOCTN1が完全に飽和するはずである。にもかかわらず、図12に示されるとおり、OCTN1による輸送活性が20mMでも顕著に認められたことは、OCTN1がPEPT2やPDZK1と共発現することで、その輸送キャパシティーが上昇することを示唆している。OCTN1はプロトンHと有機カチオンの交換輸送系として働くのに対し、PEPT2はHと基質の共輸送体である。従ってPEPT2が存在することにより、Hが細胞内へ入り、そのHとの交換輸送によってTEAが細胞内に入ること、PDZK1が両方のトランスポーターと相互作用することにより、両者を近接させることを示唆する。OCTN1とPEPT2はともに腎臓の近位尿細管刷子縁膜上に共発現していることから、生理的にも図13のような複合体による輸送系が存在していると考えられる。アフリカツメガエル卵母細胞におけるこのような実験系は、PDZK1を共存させることによって、それぞれの少ないcRNA量を注入することで手軽に作成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】OCTN2cRNA(25ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(25ng)及びPDZK1cRNA(25ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞のそれぞれについて、cRNA又は水の注入から3日後及び7日後におけるカルニチン(1μM)取り込み(90分間、pH7.4)を測定した。また、それぞれの条件下での3日後の値を100%として示してある。Mean±SEM (N=5−10)。*は3日後と比べて有意差あり(p<0.05)。
【図2】OCTN2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(25ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、及び水を注入した卵母細胞のそれぞれについて、cRNA又は水の注入から3日後におけるカルニチン(1μM)の取り込みの時間推移(pH7.4)を測定した。Mean±SEM(N=5−10)。
【図3】YFP−OCTN2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、YFP−OCTN2cRNA(5ng)とPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、及び水を注入した卵母細胞のそれぞれの卵母細胞表面の共焦点顕微鏡観察写真である。
【図4】PEPT1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PEPT1cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、水を注入した卵母細胞のそれぞれについて、cRNA又は水の注入から3日後におけるグリシルサルコシンの取り込みの時間推移(pH6.0)を測定した。Mean±SEM(N=9−12)。
【図5】PEPT2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PEPT2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、水を注入した卵母細胞のそれぞれについて、cRNA又は水の注入から3日後におけるグリシルサルコシンの取り込みの時間推移(pH6.0)を測定した。Mean±SEM(N=8−12)。
【図6】OCTN1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN1cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞のそれぞれについて、cRNA又は水の注入から3日後における種々の濃度のTEAの取り込みの時間推移(pH7.4)を測定した。Mean±SEM(N=8−10)。
【図7】OATP−AcRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OATP−AcRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OATP−AcRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)及びNHERF1(5ng)の3種のcRNAを併用したトランスジェニック卵母細胞のそれぞれについて、cRNAの注入から3日後における種々の濃度のTCAの取り込みの時間推移(pH 7.4)を測定した。Mean±SEM(N=8−10)。
【図8】OCTN2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びNHERF1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びNHERF2cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK2cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)及びNHERF1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞のそれぞれについて、cRNAの注入から3日後におけるカルニチンの取り込み(pH 7.4)を測定した。Mean±SEM(N=8−10)。
【図9】OCTN2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びPDZK1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)及びNHERF1cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、PDZK1cRNA(5ng)とNHERF1cRNA(5ng)とを用いたトランスジェニック卵母細胞、水を注入した卵母細胞のそれぞれについて、cRNAの注入から3日後におけるカルニチンの取り込み(pH7.4)を測定した。Mean±SEM(N=8−12)。
【図10】OCTN2cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びSLC26A3cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)、及びSLC26A3cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)及びSLC26A6cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞、OCTN2cRNA(5ng)、PDZK1cRNA(5ng)、及びSLC26A6cRNA(5ng)を用いたトランスジェニック卵母細胞のそれぞれについて、cRNAの注入から3日後におけるカルニチンの取り込み(pH 7.4)を測定した。Mean±SEM(N=5−10)。
【図11】本発明の、OCTN2とPDZK1とSLC26A3を共発現した実験系におけるトランスポーターどうしのカップリング効果の概念を示す図である。
【図12】OCTN1cRNA(5ng)とPDZK1cRNA(5ng)とPEPT2cRNA(5ng)とを用いたトランスジェニック卵母細胞、及びPDZK1cRNA(5ng)単独を用いたトランスジェニック卵母細胞について、cRNAの注入から3日後におけるTEA(10μM及び20mM)の取り込み(pH7.4)を測定した。Mean±SEM(N=5−10)。
【図13】本発明の、OCTN1とPDZK1とPEPT2を共発現した実験系におけるトランスポーターどうしのカップリング効果の概念を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項2】
1種のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び2種のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、1種のトランスポータータンパク質及び2種のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項3】
2種のトランスポータータンパク質をコードする核酸及び1種のアダプタータンパク質をコードする核酸が導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、2種のトランスポータータンパク質及び1種のアダプタータンパク質を共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項4】
トランスポータータンパク質をコードする核酸が、有機アニオントランスポーター、有機カチオントランスポーター及びペプチドトランスポーターからなる群から選ばれるトランスポータータンパク質をコードする核酸である請求項1〜3のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞。
【請求項5】
トランスポータータンパク質をコードする核酸が、OCTN1、OCTN2、PEPT1、PEPT2、OATP−A及びSLC26A3から選ばれるトランスポータータンパク質をコードする核酸である請求項1〜4のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞。
【請求項6】
アダプタータンパク質をコードする核酸が、PDZドメインを有するアダプタータンパク質をコードする核酸である請求項1〜5のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞。
【請求項7】
アダプタータンパク質をコードする核酸が、PDZK1、PDZK2、NHERF1、NHERF2及びIKEPPから選ばれるアダプタータンパク質をコードする核酸である請求項1〜6のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞。
【請求項8】
アダプタータンパク質をコードする核酸として、PDZK1をコードする核酸を少なくとも含む請求項1〜7のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞。
【請求項9】
核酸がcRNAである請求項1〜8のいずれかに記載のトランスジェニック卵母細胞。
【請求項10】
OATP−Aトランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、NHERF1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OATP−Aトランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質と、NHERF1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項11】
OCTN2トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、NHERF1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OCTN2トランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質と、NHERF1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項12】
OCTN2トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、SLC26A3トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OCTN2トランスポータータンパク質と、SLC26A3トランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項13】
OCTN1トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PEPT2トランスポータータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAと、PDZK1アダプタータンパク質をコードする3〜20ngのcRNAとが導入されたアフリカツメガエルの卵母細胞であって、OCTN1トランスポータータンパク質と、PEPT2トランスポータータンパク質と、PDZK1アダプタータンパク質とを共発現しているトランスジェニック卵母細胞。
【請求項14】
1種又は2種以上のトランスポータータンパク質をコードするcRNAと、1種又は2種以上のアダプタータンパク質をコードするcRNAとをアフリカツメガエルの卵母細胞にマイクロインジェクションにより導入し、1種又は2種以上のトランスポータータンパク質及び1種又は2種以上のアダプタータンパク質を共発現させることを特徴とするトランスジェニック卵母細胞の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか記載のトランスジェニック卵母細胞における薬物の動態をインビトロで検出する、以下のステップを含む薬物動態の検出方法。
標識化合物と前記トランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションするか、又は、標識化合物を細胞内に含有させた前記トランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションするステップ(A)
トランスジェニック卵母細胞への標識化合物の取込みの程度、又はトランスジェニック卵母細胞からの標識化合物の排出の程度を測定するステップ(B)
測定結果を評価するステップ(C)
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか記載のトランスジェニック卵母細胞における薬物の動態をインビトロで検出する、以下のステップを含む薬物動態の検出方法。
標的化合物と前記トランスジェニック卵母細胞とを接触させた状態でインキュベーションするか、又は、標的化合物を細胞内に含有させた前記トランスジェニック卵母細胞とバッファーとを接触させた状態でインキュベーションするステップ(A’)
トランスジェニック卵母細胞への標的化合物の取込みの程度、又はトランスジェニック卵母細胞からの標的化合物の排出の程度を測定するステップ(B’)
測定結果を評価するステップ(C’)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−86293(P2008−86293A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273452(P2006−273452)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(502133066)株式会社ジェノメンブレン (7)
【Fターム(参考)】