説明

トランスポート・ストリーム監視装置

【課題】
トランスポート・ストリームで伝送されるデータの誤り、および映像、音声等のエレメンタリー・ストリームに含まれるパラメータの誤りを自動検出するのに適したトランスポート・ストリーム監視装置を提供する。
【解決手段】
トランスポート・ストリーム監視装置10によれば、トランスポート・ストリーム内のデータが正しい値で伝送されているかどうかを自動認識することが可能になり、符号化装置や多重化装置のパラメータ設定ミス、および符号化装置、多重化装置の故障を監視することができる。また、デジタル映像及び音声信号の補助データを用いることにより、新たに比較対象のデータを送信する設備を作ることなく、システムを構築することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG(Moving Picture Experts Group)規格に従うトランスポート・ストリームに含まれるPSI(Program Specific Information)テーブル、SI(Service Information)テーブルの情報、および映像、音声等のエレメンタリー・ストリームに含まれるパラメータを監視するトランスポート・ストリーム監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG(Moving Picture Experts Group)規格に従うトランスポート・ストリーム監視装置は、トランスポート・ストリームに含まれるPSI(Program Specific Information)テーブル、SI(Service Information)テーブルを抽出し、これらのテーブルが規格に従ったフォーマットで伝送されているかを解析し、また、テーブルが正しい周期で送信されているかを監視している。
【0003】
一方、トランスポート・ストリームに多重化される映像、音声等のエレメンタリー・ストリームは、番組ごとに映像の縦横比が変わり、音声チャネル数もモノラルから5.1チャネルサラウンドまで様々な構成で制作されている。また、PSI(Program Specific Information)テーブルの中に、受信機を制御するためのデータが含まれる。これら複雑に変わるパラメータ、および受信機の制御データが正しい値で送信されているかどうかを確認したい要請がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−200764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のトランスポート・ストリーム監視装置では、規定に基づいた運用がなされているかを監視するのみであり、伝送されるパラメータおよび制御データが正しい値か否かを判別する手段は備えていない。そのため、データの中身を監視するには、装置で抽出されたデータをディスプレイ等に表示した上で、作業者が目視で確認しなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、トランスポート・ストリームで伝送されるデータの誤り、および映像、音声等のエレメンタリー・ストリームに含まれるパラメータの誤りを自動検出するのに適したトランスポート・ストリーム監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、MPEG(Moving Picture Experts Group)規格に従うトランスポート・ストリームを監視する装置において、
トランスポート・ストリームを入力する入力部と、
トランスポート・ストリームからPSI(Program Specific Information)テーブル、SI(Service Information)テーブル及びエレメンタリー・ストリームを抽出するデマルチプレクサ(DeMux)部と、
抽出されたPSIテーブル、SIテーブルおよびエレメンタリー・ストリームを解析し、監視するパラメータ及び情報を抽出する解析部と、
デジタル映像及び音声信号を入力する入力部と、
デジタル映像及び音声信号の補助データを抽出する補助データ抽出部と、
トランスポート・ストリームから得られた前記パラメータおよび情報と、デジタル映像及び音声信号から抽出した補助データを比較、判定するパラメータ比較・判定部と、
その判定結果に基づき外部にアラームを出力するアラーム出力部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記パラメータ比較・判定部が、トランスポート・ストリームから得られた前記パラメータおよび情報と、デジタル映像及び音声信号から抽出した補助データを比較、判定し、その判定結果に基づいて、前記アラーム出力部が、外部にアラーム(電気信号、音、光など、警報として用いられる全ての媒体含む)を出力することで、トランスポート・ストリームで伝送されるデータの誤り、および映像、音声等のエレメンタリー・ストリームに含まれるパラメータの誤り等を自動検出することができる。
【0008】
更に、トランスポート・ストリーム監視装置に入力されるトランスポート・ストリーム信号が監視対象のストリームであること、また入力されるデジタル映像及び音声信号が比較対象の信号であることを確認するために、制御部よりトランスポート・ストリーム信号、デジタル映像及び音声信号を識別するためのIDを設定し、前記パラメータ比較・判定部において、監視対象と比較対象が正しい組み合わせであるかどうかを判定すると好ましい。
【0009】
更に、トランスポート・ストリームに含まれるサービスIDまたはプログラムナンバーと共通のIDをデジタル映像及び音声信号の補助データに挿入することにより、前記解析部および前記補助データ抽出部においてそれぞれのIDを抽出し、前記パラメータ比較・判定部で、監視対象と比較対象が正しい組み合わせであるかどうかを判定する
【0010】
更に、トランスポート・ストリーム監視装置は、トランスポート・ストリームのPSIテーブルで定義されるサービスIDまたはプログラムナンバーと共通のIDをデジタル映像及び音声信号の補助データに挿入することにより、前記パラメータ比較・判定部において、監視対象と比較対象が正しい組み合わせであるかどうかを判定すると好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施の形態を参照して本発明を説明する。図1は、本実施の形態に関わるトランスポート・ストリーム監視装置10を示すブロック図である。図1において、トランスポート・ストリーム入力部11には、MPEG規格に従うトランスポート・ストリーム、即ちARIB標準規格STD B−32[デジタル放送における映像符号化、音声符号化及び多重化方式標準規格]に基づいて符号化および多重化された映像、音声データが入力される。トランスポート・ストリーム入力部11では同期検出を行ない、1パケット単位のデータを取得する。
【0012】
デマルチプレクサ(DeMux)部12では、PSIテーブル、SIテーブルおよび映像と音声のエレメンタリー・ストリームを抽出し、解析部13に入力する。
【0013】
解析部13では、そのPSI・SI解析部13aにおいて、PMT(Program Map Table)から受信機の制御情報である緊急情報記述子とデジタルコピー制御記述子を抽出する。又、映像ES解析部13bでは、sequence_headerから、aspect_ratio_information、profile_and_level_indication,frame_rate_codeを抽出する。更に、音声ES解析部13cから、channel_configuration、matrix_mixdown_idxを抽出する。
【0014】
また符号化装置に入力されるデジタル映像及び音声信号は、ARIB標準規格STD B−6(525/60テレビジョン方式)およびARIB標準規格BTA S−005A(1125/60テレビジョン方式)に基づくビット直列インタフェースを介して、本装置10のデジタル映像・音声信号入力部14に入力される。この信号の補助データには、ARIB標準規格STD−B39に規定される放送局間制御データが含まれており、更に、放送局間制御データのプライベート領域には、この信号を識別するためのサービスID、受信機を制御するための情報として緊急警報、コピー制御の符号が設定されている。
【0015】
補助データ抽出部15では、放送局間制御データに含まれる映像モード、映像フォーマット、フレームレート、サンプリング構造、音声モード、ダウンミックス指定のそれぞれの符号を抽出する。また、補助データのプライベート領域に定義される緊急警報、デジタルコピー制御、サービスIDの符号を抽出しパラメータ比較・判定部16へ入力する。
【0016】
装置制御部20では、監視の開始、停止の制御を行なうとともに、監視対象のパラメータ、情報を選択し本装置10に設定する。また、監視対象のトランスポート・ストリームを識別するために、TS−IDとサービスIDを入力し、また、デジタル映像及び音声信号を識別するためのサービスIDを本装置10に設定する。
【0017】
パラメータ比較・判定部16では、解析部13から入力されるTS−IDとサービスIDが、装置制御部20から設定された値と一致するか判定を行ない、不一致の際は、装置制御部20に信号を送信してエラーである旨を表示させる。同様に補助データ抽出部15から入力されるデジタル映像及び音声信号のサービスIDと、装置制御部20から設定された値と比較し、不一致の際は装置制御部20に信号を送信してエラーである旨を表示させる。
【0018】
それぞれのIDが一致すると、解析部13で抽出された映像、音声のパラメータおよびPMTの記述子データと、補助データ抽出部15から入力される各符号を比較し、それぞれが一致するかを判定する。不一致の際はアラーム出力部17へその結果を入力し、アラーム出力部17は、接点または、SNMP(Simple Network Management Protocol)を介して、図示しないアラーム表示端末へ結果(アラーム信号)を通知するので、不一致の場合にはアラーム表示が可能となる。
【0019】
なお、トランスポート・ストリームとデジタル映像及び音声信号から得られるデータおよび情報は、情報の更新時間が異なるため、更新時には不一致が発生する。そのために、装置制御部から一定の不一致時間をマスクするパラメータを設定し、更新時にアラームを出力しないようにすることも可能である。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トランスポート・ストリーム内のデータが正しい値で伝送されているかどうかを自動認識することが可能になり、符号化装置や多重化装置のパラメータ設定ミス、および符号化装置、多重化装置の故障を監視することができる。また、デジタル映像及び音声信号の補助データを用いることにより、新たに比較対象のデータを送信する設備を作ることなく、システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態にかかるトランスポート・ストリーム監視装置10を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
10 トランスポート・ストリーム監視装置
11 ストリーム入力部
12 デマルチプレクサ(DeMux)部
13 解析部
13a PSI・SI解析部
13b 映像ES解析部
13c 音声ES解析部
14 音声信号入力部
15 補助データ抽出部
16 パラメータ比較・判定部
17 アラーム出力部
20 装置制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPEG(Moving Picture Experts Group)規格に従うトランスポート・ストリームを監視する装置において、
トランスポート・ストリームを入力する入力部と、
トランスポート・ストリームからPSI(Program Specific Information)テーブル、SI(Service Information)テーブル及びエレメンタリー・ストリームを抽出するデマルチプレクサ(DeMux)部と、
抽出されたPSIテーブル、SIテーブルおよびエレメンタリー・ストリームを解析し、監視するパラメータ及び情報を抽出する解析部と、
デジタル映像及び音声信号を入力する入力部と、
デジタル映像及び音声信号の補助データを抽出する補助データ抽出部と、
トランスポート・ストリームから得られた前記パラメータおよび情報と、デジタル映像及び音声信号から抽出した補助データを比較、判定するパラメータ比較・判定部と、
その判定結果に基づき外部にアラームを出力するアラーム出力部と、を有することを特徴とするトランスポート・ストリーム監視装置。
【請求項2】
前記トランスポート・ストリーム監視装置に入力されるトランスポート・ストリーム信号が監視対象のストリームであること、また入力されるデジタル映像及び音声信号が比較対象の信号であることを確認するために、制御部よりトランスポート・ストリーム信号、デジタル映像及び音声信号を識別するためのIDを設定し、前記パラメータ比較・判定部において、監視対象と比較対象が正しい組み合わせであるかどうかを判定することを特徴とする請求項1に記載のトランスポート・ストリーム監視装置。
【請求項3】
トランスポート・ストリームに含まれるサービスIDまたはプログラムナンバーと共通のIDをデジタル映像及び音声信号の補助データに挿入することにより、前記解析部および前記補助データ抽出部においてそれぞれのIDを抽出し、前記パラメータ比較・判定部で、監視対象と比較対象が正しい組み合わせであるかどうかを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスポート・ストリーム監視装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−36798(P2007−36798A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218652(P2005−218652)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【出願人】(599161292)株式会社KDDIメディアウィル (3)
【Fターム(参考)】