説明

トリアゾール骨格を有する光応答性塩基

【課題】
従来よりも短時間で核酸を連結可能であり、用途に応じた修飾が簡単にできる光連結性の化合物及び光連結剤、該光連結剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】
塩基部分として式I、式III、式IV、又は式Vで表される基を有する核酸類、該核酸類からなる光連結剤、及び、塩基部分として式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基を有する核酸類と、式Xで表される芳香族アジ化物とを反応させて核酸類を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾール骨格を有する光応答性塩基に関し、該塩基を有する核酸類、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の分野の基本的な技術に、核酸の連結がある。核酸の連結は、例えば、ハイブリダイゼーションと組みあわせて、遺伝子の導入や、塩基配列の検出のために使用される。そのために、核酸の連結は、分子生物学の基礎研究だけではなく、例えば、医療分野における診断や治療、あるいは治療薬や診断薬等の開発や製造、工業及び農業分野における酵素や微生物等の開発や製造に使用される極めて重要な技術である。
【0003】
核酸の連結は、例えば、DNAリガーゼ等を使用して従来から行われている。しかし、このような生体内の酵素反応を取り出した反応は、特別な条件設定を行わなければならず、さらに、使用される酵素類が比較的高価で、安定性に乏しい等の欠点を有する。このような欠点を克服するために、酵素類を使用しない核酸の連結の技術が研究されてきた。
【0004】
酵素類を使用しない核酸の連結の技術として、核酸と反応性のある有機化合物を使用する方法がある。近年、光反応を利用した核酸連結技術が、反応の時間的空間的な制御が自由であること、一般的な有機化学反応よりも緩和な条件で反応可能であること等の利点から、注目されるようになってきた。
【0005】
このような光連結技術として、5−シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号公報、特許文献2:特許第3753942号公報)が知られている。
【特許文献1】特許第3753938号公報
【特許文献1】特許第3753942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の光連結技術においては、連結には数分〜数十分の反応時間を要し、この点で、酵素反応による核酸の連結を凌ぐには至っていなかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、酵素を使用せずに緩和な条件下で、従来よりも短時間で核酸を連結する方法、及び該方法に使用可能な化合物及び連結剤を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、上記方法に使用可能な連結剤の製造方法、及び該製造方法に使用可能な化合物及び修飾剤を提供することにもある。
【0009】
また、従来の光連結技術で使用される光連結性の化合物は、その化学構造上、光連結性の付与さらに検出のための標識部位の付与などための化学的な修飾を行うために、有機合成で通常使用されるような反応条件下で予め反応を行っておくことが必要であり、光連結性の付与さらに検出のための標識部位の付与などための化学的な修飾が簡単ではなく、そのために光連結剤としての応用に制約があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来の光連結剤よりも、光連結性の付与さらに検出のための標識部位の付与などための化学的な修飾を簡単に行って得ることができ、さらに用途に応じた修飾を行った誘導体を簡単に得ることができる構造を有する光連結性の化合物及び光連結剤を提供することにもある。
【0011】
さらに、本発明の目的は、上記光連結剤の製造方法、及び該製造方法に使用可能な化合物及び修飾剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、核酸を連結するための光連結剤の研究を鋭意行ってきたところ、本発明に係るトリアゾール骨格構造を有する光応答性塩基を使用した核酸類からなる光連結剤によれば、上記目的を達成できることを見出した。
【0013】
したがって、本発明は、次の[1]〜[4]にある。
[1] 塩基部分として、次の式I、式III、式IV、又は式V:
【化14】

(ただし、式I中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R2は、次式II:
【化15】

(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)
で表される基を示す。)
【化16】

(ただし、式III中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R5は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
【化17】

(ただし、式IV中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示し、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R8は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
【化18】

(ただし、式V中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R11は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)

で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
[2] Raが、1、2又は3個以上の環を有する、芳香族化合物の一価基である、請求項1に記載の核酸類。
[3] [1]〜[2]の何れかに記載の核酸類からなる、光連結剤。
[4] [1]〜[2]の何れかに記載の核酸類を使用して、核酸類を光連結する方法。
【0014】
好適な実施の態様において、Raは、置換又は無置換の芳香族化合物の一価基であって、一般に1〜10個、好ましくは1〜8個、さらに好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個の範囲にある環を含んでいる。また、それらの芳香族化合物は複素環式化合物であってもよい。
【0015】
好適な実施の態様において、Raは、置換又は無置換の芳香族化合物の一価基であって、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、又はアントラセンの一価基である。
【0016】
好適な実施の態様において、Raは、一般には4〜8員環、好ましくは4〜7員環、さらに好ましくは4〜6員環、さらに好ましくは5〜6員環、特に好ましくは6員環から形成されている。
【0017】
好適な実施の態様において、Raは、ベンゼン−1−イル(フェニル基)、ペンタレン−1−イル、ペンタレン−2−イル、ペンタレン−3−イル、インデン−2−イル、インデン−3−イル、インデン−4−イル、インデン−5−イル、インデン−6−イル、インデン−7−イル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、アズレン−1−イル、アズレン−2−イル、アズレン−3−イル、アズレン−4−イル、アズレン−5−イル、アズレン−6−イル、アズレン−7−イル、アズレン−8−イル、ヘプタレン−1−イル、ヘプタレン−2−イル、ヘプタレン−3−イル、ビフェニレン−1−イル、ビフェニレン−2−イル、as−インダセン−1−イル、as−インダセン−2−イル、as−インダセン−3−イル、as−インダセン−4−イル、as−インダセン−5−イル、as−インダセン−6−イル、as−インダセン−7−イル、as−インダセン−8−イル、s−インダセン−1−イル、s−インダセン−2−イル、s−インダセン−3−イル、s−インダセン−4−イル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、フェナントレン−1−イル、フェナントレン−2−イル、フェナントレン−3−イル、フェナントレン−4−イル、フェナントレン−9−イル、アントラセン−1−イル、アントラセン−2−イル、アントラセン−9−イル、及びそれらの置換体からなる群より選択された基であり、好ましくは、ベンゼン−1−イル(フェニル基)、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、及びそれらの置換体からなる群より選択された基である。
【0018】
本発明に係る核酸類及び光連結剤によれば、酵素を使用せずに緩和な条件下で、従来よりも短時間で核酸を連結することができる。また、本発明に係る核酸類及び光連結剤は、従来の光連結剤よりも、光連結性の付与さらに検出のための標識部位の付与などための化学的な修飾を簡単に行って得ることができ、さらに用途に応じた修飾を行った誘導体を簡単に得ることができる構造を有している。
【0019】
このような本発明に係る光連結剤の優れた特性は、ビニル基に直接にトリアゾール構造を付し、且つ、そのトリアゾール構造に対して共役可能な置換基を付することによってもたらされている。
【0020】
さらに、本発明は、光連結剤として使用される核酸類の製造方法、及び該製造方法に使用可能な核酸類、有機アジ化物及び修飾剤にもある。
【0021】
したがって、本発明は、次の[5]〜[9]にもある。
[5] 塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IX:
【化19】

(ただし、式VI中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化20】

(ただし、式VII中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化21】

(ただし、式VIII中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化22】

(ただし、式IX中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)

で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)と、次の式X:

式X Ra−N

(ただし、式X中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)

で表される芳香族アジ化物とを、反応させて、請求項1〜2の何れかに記載の核酸類を製造する方法。
[6] 塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IX:
【化23】

(ただし、式VI中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化24】

(ただし、式VII中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化25】

(ただし、式VIII中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化26】

(ただし、式IX中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
[7] 次の式X:

式X Ra−N

(ただし、式X中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)

で表される芳香族アジ化物。
[8] [7]に記載の芳香族アジ化物からなる、核酸類用修飾剤。
[9] [7]に記載の芳香族アジ化物を使用して、核酸類を修飾する方法。
【0022】
本発明に係る製造方法によれば、緩和な条件下で反応させてトリアゾール構造を形成して、光連結剤である核酸類を得ることができる。この反応条件は、有機合成で通常使用されるような反応条件と比較して、格段に緩和な条件であるために、有機アジ化物として用意した有機置換基を、極めて迅速且つ簡便にトリアゾール構造に付加することができる。そのために、本発明に係る製造方法によれば、高い光連結性を付与するための化学的な修飾、及び検出のための標識部位の付与などのための化学的な修飾を簡単に行って光連結性の核酸類を得ることができ、さらに用途に応じて置換基を導入した誘導体を、光連結性の核酸類として、簡単に得ることができる。
【0023】
したがって、本発明は、次の[10]〜[13]にもある。
[10] Raが、標識部位が付された芳香族化合物の一価基である、[5]に記載の製造方法。
[11] Raが、標識部位が付された芳香族化合物の一価基である、[7]に記載の芳香族アジ化物。
[12] [11]に記載の芳香族アジ化物からなる、核酸類用標識部位導入剤。
[13] [11]に記載の芳香族アジ化物を使用して、核酸類に標識部位を導入する方法。
【0024】
さらに、本発明は、[11]に記載の芳香族アジ化物からなる、光連結性核酸類用光連結性強化剤にもあり、[11]に記載の芳香族アジ化物を使用して、光連結性核酸類の光連結性を強化する方法にもある。
【0025】
さらに、本発明は、次の[14]〜[17]にもある。
[14] [1]〜[2]の何れかに記載の核酸類の、光連結のための使用(use)。
[15] [5]又は[10]に記載の製造方法によって製造された、トリアゾール構造を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
[16] [7]に記載の芳香族アジ化物の、核酸類の修飾のための使用(use)。
[17] [11]に記載の芳香族アジ化物の、核酸類への標識部位の導入のための使用(use)。
【0026】
さらに、本発明は、[11]に記載の芳香族アジ化物の、光連結性核酸類の光連結性の強化のための使用(use)にもある。
【0027】
本発明は、式I、式III、式IV、又は式Vで表される基を有する核酸塩基類似化合物にもあり、式I、式III、式IV、又は式Vで表される基を有するヌクレオシド、及びその誘導体にもあり、式I、式III、式IV、又は式Vで表される基を有するヌクレオチド、及びその誘導体にもある。これらの化合物は、本発明に係る核酸類を合成するために有用であり、さらにそれ自体が光反応性を有している。
【0028】
したがって、本発明は、次の[18]〜[21]にもある。
[18] 式I、式III、式IV、又は式Vで表される基と、水素とが、結合してなる化合物。
[19] 塩基部分として、式I、式III、式IV、又は式Vで表される基を有するヌクレオシド及びその誘導体。
[20] 塩基部分として、式I、式III、式IV、又は式Vで表される基を有するヌクレオチド及びその誘導体。
[21] 式I、式III、式IV、又は式Vで表される基と、
次の式XI、又は式XII:
【化27】

【化28】

で表される基とが、結合してなる化合物。
【0029】
本発明は、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基を有する核酸塩基類似化合物にもあり、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基を有するヌクレオシド、及びその誘導体にもあり、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基を有するヌクレオチド、及びその誘導体にもある。これらの化合物は、本発明に係る核酸類を合成するために有用である。
【0030】
したがって、本発明は、次の[22]〜[23]にもある。
[23] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基と、水素とが、結合してなる化合物。
[24] 塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基を有するヌクレオシド及びその誘導体。
[25] 塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基を有するヌクレオチド及びその誘導体。
[26] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基と、
次の式XI、又は式XII:
【化29】

【化30】

で表される基とが、結合してなる化合物。
【0031】
式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、三重結合部分であるエチニル基は、保護基によって保護されていてもよい。保護基としては、例えば、TMS基(トリメチルシリル基)を挙げることができる。
【0032】
したがって、本発明は、次の[27]〜[32]にもある。
[27] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、エチニル基が、保護基が付加されている、[5]に記載の方法。
[28] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、エチニル基が、保護基が付加されている、[6]に記載の核酸類。
[29] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、エチニル基が、保護基が付加されている、[23]に記載の化合物。
[30] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、エチニル基が、保護基が付加されている、[24]に記載のヌクレオシド及びその誘導体。
[31] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、エチニル基が、保護基が付加されている、[25]に記載のヌクレオチド及びその誘導体。
[32] 式VI、式VII、式VIII、又は式IXで表される基において、エチニル基が、保護基が付加されている、[26]に記載の化合物。
【0033】
さらに、本発明は、次の[33]〜[36]にもある。
[33] 芳香族置換基がフェニル基である[2]に記載のRaを含む核酸類。
[34] 芳香族置換基がメトキシフェニル基である[2]に記載のRaを含む核酸類。
[35] 芳香族置換基がシアノフェニル基である[2]に記載のRaを含む核酸類。
[36] 芳香族置換基がナフタレン基である[2]に記載のRaを含む核酸類。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、酵素を使用せずに緩和な条件下で、従来よりも短時間で核酸を連結することができる。例えば、従来の光連結技術においては、数分〜数十分の反応時間を要した連結を、わずか数秒〜数十秒の反応時間で行うことができる。
【0035】
また、本発明によれば、極めて緩和な条件下で反応させてトリアゾール構造を形成して、光連結剤を得ることができるので、検出のための標識部位の付加などの修飾が簡単にでき、用途に応じて置換基を導入した誘導体を簡単に得ることができる。これによって、本発明に係る光連結剤の応用範囲は、極めて広範なものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明について、以下に具体的な実施の形態をあげて、詳細に説明する。本発明は、以下に例示する具体的な実施の形態に限定されるものではない。
【0037】
本発明は、塩基部分として、次の式I、式III、式IV、又は式V:
【化31】

(ただし、式I中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R2は、次式II:
【化32】

(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)
で表される基を示す。)
【化33】

(ただし、式III中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R5は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
【化34】

(ただし、式IV中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示し、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R8は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
【化35】

(ただし、式V中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R11は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)

で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)にある。
【0038】
本発明に係る核酸類を光連結剤として使用すれば、酵素を使用せずに緩和な条件下で、従来よりも短時間で核酸を連結することができる。また、上記核酸類は、検出のための標識部位の付加などの修飾が簡単にでき、用途に応じた修飾を行った誘導体を簡単に得ることができる構造を有している。
【0039】
このような本発明に係る光連結剤の優れた特性は、ビニル基に直接にトリアゾール構造を付し、且つ、そのトリアゾール構造に対して共役可能な置換基を付することによってもたらされている。
【0040】
R2、R5、R8、及びR11は、上記の式IIで表される基であり、トリアゾール構造と、該トリアゾール構造に対して共役可能となるように付加された置換基Raとを、有している。
【0041】
置換基Raは、付加されるトリアゾール構造に共役可能となる置換基であれば、使用することができる。このような共役可能な置換基として、例えば、芳香族化合物の一価基を挙げることができ、より具体的には、芳香族化合物から環の水素が1個失われて形成される1価の基を挙げることができる。一価基となって使用可能な芳香族化合物として、1、2又は3個以上の環を有する、芳香族化合物を挙げることができる。使用可能な芳香族化合物には、1個の環を有する単環芳香族化合物、及び2個以上の縮合環を有する縮合多環芳香族化合物が含まれる。本発明において、芳香族化合物の中に含まれる環の数は、一般に1〜10個、好ましくは1〜8個、さらに好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個の範囲にあるが、これに限られるものではない。芳香族化合物の中に含まれる環の数が大きいほど、トリアゾール構造との間の共役が強いものとなるが、環の数が大きいほど核酸類の連結の際に立体障害をもたらすおそれがある。本発明において、芳香族化合物は、一般には4〜8員環、好ましくは4〜7員環、さらに好ましくは4〜6員環、さらに好ましくは5〜6員環、特に好ましくは6員環から形成されているものが好適であるが、これらに限られるものではない。
【0042】
芳香族化合物の一価基となって使用可能な芳香族化合物のうち、単環芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、及びその置換体を挙げることができる。置換体としては、例えば、環の水素のうちの1、2又は3個以上を、好ましくは1個又は2個を、さらに好ましくは1個を、一般に、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、 基、及び/又は 基で、好ましくはC1〜C3のアルキル基、C1〜C3のアルコキシ基、及び/又はシアノ基、特に好ましくは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、及び/又はシアノ基によって、置換した置換体を挙げることができる。好適な単環芳香族化合物の一価基として、置換又は無置換のフェニル基(ベンゼン−1−イル)をあげることができる。本発明によれば、置換基の種類及び位置を変更した誘導体(置換フェニル基)であっても、光連結反応に好適に使用することができる。
【0043】
芳香族化合物の一価基となって使用可能な芳香族化合物のうち、縮合多環芳香族化合物としては、例えば、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラセン(ナフタセン)、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オバレン、ヘキサヘリセン、複素環系として、チオフェン、チアントレン、フラン、2H−ピラン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、2H−ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1H−ピロリジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、及びそれらの置換体を挙げることができる。置換体としては、例えば、環の水素のうちの1、2又は3個以上を、好ましくは1個又は2個を、さらに好ましくは1個を、一般に、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、 基、及び/又は 基で、好ましくはC1〜C3のアルキル基、C1〜C3のアルコキシ基、及び/又はシアノ基、特に好ましくは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、及び/又はシアノ基によって、置換した置換体を挙げることができる。
【0044】
好適な縮合多環芳香族化合物の一価基として、ペンタレン−1−イル、ペンタレン−2−イル、ペンタレン−3−イル、インデン−2−イル、インデン−3−イル、インデン−4−イル、インデン−5−イル、インデン−6−イル、インデン−7−イル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、アズレン−1−イル、アズレン−2−イル、アズレン−3−イル、アズレン−4−イル、アズレン−5−イル、アズレン−6−イル、アズレン−7−イル、アズレン−8−イル、ヘプタレン−1−イル、ヘプタレン−2−イル、ヘプタレン−3−イル、ビフェニレン−1−イル、ビフェニレン−2−イル、as−インダセン−1−イル、as−インダセン−2−イル、as−インダセン−3−イル、as−インダセン−4−イル、as−インダセン−5−イル、as−インダセン−6−イル、as−インダセン−7−イル、as−インダセン−8−イル、s−インダセン−1−イル、s−インダセン−2−イル、s−インダセン−3−イル、s−インダセン−4−イル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、フェナントレン−1−イル、フェナントレン−2−イル、フェナントレン−3−イル、フェナントレン−4−イル、フェナントレン−9−イル、アントラセン−1−イル、アントラセン−2−イル、アントラセン−9−イル、フルオランテン−1−イル、フルオランテン−2−イル、フルオランテン−3−イル、フルオランテン−4−イル、フルオランテン−5−イル、フルオランテン−6−イル、フルオランテン−7−イル、フルオランテン−8−イル、フルオランテン−9−イル、フルオランテン−10−イル、アセフェナントリレン−1−イル、アセフェナントリレン−2−イル、アセフェナントリレン−3−イル、アセフェナントリレン−4−イル、アセフェナントリレン−5−イル、アセフェナントリレン−6−イル、アセフェナントリレン−7−イル、アセフェナントリレン−8−イル、アセフェナントリレン−9−イル、アセフェナントリレン−10−イル、アセアントリレン−1−イル、アセアントリレン−2−イル、アセアントリレン−3−イル、アセアントリレン−4−イル、アセアントリレン−5−イル、アセアントリレン−6−イル、アセアントリレン−7−イル、アセアントリレン−8−イル、アセアントリレン−9−イル、アセアントリレン−10−イル、トリフェニレン−1−イル、トリフェニレン−2−イル、ピレン−1−イル、ピレン−2−イル、クリセン−1−イル、クリセン−2−イル、クリセン−3−イル、クリセン−4−イル、クリセン−5−イル、クリセン−6−イル、テトラセン−1−イル(ナフタセン−1−イル)、テトラセン−2−イル(ナフタセン−2−イル)、テトラセン−5−イル(ナフタセン−5−イル)、及びそれらの置換体を挙げることができ、好ましくは、ペンタレン−1−イル、ペンタレン−2−イル、ペンタレン−3−イル、インデン−2−イル、インデン−3−イル、インデン−4−イル、インデン−5−イル、インデン−6−イル、インデン−7−イル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、アズレン−1−イル、アズレン−2−イル、アズレン−3−イル、アズレン−4−イル、アズレン−5−イル、アズレン−6−イル、アズレン−7−イル、アズレン−8−イル、ヘプタレン−1−イル、ヘプタレン−2−イル、ヘプタレン−3−イル、ビフェニレン−1−イル、ビフェニレン−2−イル、as−インダセン−1−イル、as−インダセン−2−イル、as−インダセン−3−イル、as−インダセン−4−イル、as−インダセン−5−イル、as−インダセン−6−イル、as−インダセン−7−イル、as−インダセン−8−イル、s−インダセン−1−イル、s−インダセン−2−イル、s−インダセン−3−イル、s−インダセン−4−イル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、フェナントレン−1−イル、フェナントレン−2−イル、フェナントレン−3−イル、フェナントレン−4−イル、フェナントレン−9−イル、アントラセン−1−イル、アントラセン−2−イル、アントラセン−9−イル、及びそれらの置換体を挙げることができ、特に好ましくは、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、及びそれらの置換体を挙げることができる。本発明によれば、置換基の種類及び位置を変更した誘導体(縮合多環芳香族化合物の一価基)であっても、光連結反応に好適に使用することができる。特に好適な縮合多環芳香族化合物の一価基として、置換又は無置換の、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、及びそれらの置換体を挙げることができる。上述したように、置換体としては、例えば、環の水素のうちの1、2又は3個以上を、好ましくは1個又は2個を、さらに好ましくは1個を、一般に、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、及び/又はC1〜C6のアシル基で、好ましくはC1〜C3のアルキル基、C1〜C3のアルコキシ基、及び/又はシアノ基、特に好ましくは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、及び/又はシアノ基によって、置換した置換体を挙げることができる。
【0045】
置換基Raを、付加されるトリアゾール構造への共役が大きなものとするほど、本発明に係る核酸類の光反応性は大きなものとなり、光連結の速度は増大する。置換基Raとして、芳香族化合物の一価基を使用する場合には、共役環が多数になるほど、光反応性は大きくなり、光連結の速度は増大する。共役環の水素を置換する場合の置換基の有無及び種類は、トリアゾール構造への共役を大きなものとするほど、光反応性と光連結速度の増大に寄与する。しかし、共役環上の置換基の有無及び種類よりも、共役環の数のほうが光反応性と光連結速度の増大への寄与は大きい。
【0046】
本発明の好適な実施の態様において、本発明に係る核酸類は、式Iで表される基を塩基部分として有する。本発明の好適な実施の態様において、式I中のXはOであり、すなわち、式Iで表される塩基部分は、ウラシル誘導体、又はチミン誘導体である。
【0047】
本発明の好適な実施の態様において、本発明に係る核酸類は、式IIIで表される基を塩基部分として有し、すなわち、式IIIで表される塩基部分は、シトシン誘導体である。
【0048】
本発明の好適な実施の態様において、本発明に係る核酸類は、式IVで表される基を塩基部分として有する。本発明の好適な実施の態様において、式IV中のYはOであり、且つZはNHであり、すなわち、式IVで表される塩基部分は、グアニン誘導体である。
【0049】
本発明の好適な実施の態様において、本発明に係る核酸類は、式Vで表される基を塩基部分として有し、すなわち式Vで表される塩基部分は、アデニン誘導体である。
【0050】
R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、及びR12は、それぞれ独立に、水素、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基である。好適なアルキル基としては、一般にC1〜C8、好ましくはC1〜C6、さらに好ましくはC1〜C5、さらに好ましくはC1〜C4、さらに好ましくはC1〜C3、さらに好ましくはC1〜C2、さらに好ましくはC1の炭素数を有するアルキル基を挙げることができる。好適なアルコキシ基としては、一般にC1〜C8、好ましくはC1〜C6、さらに好ましくはC1〜C5、さらに好ましくはC1〜C4、さらに好ましくはC1〜C3、さらに好ましくはC1〜C2、さらに好ましくはC1の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。好適なアシル基としては、一般にC1〜C8、好ましくはC1〜C6、さらに好ましくはC1〜C5、さらに好ましくはC1〜C4、さらに好ましくはC1〜C3、さらに好ましくはC1〜C2、さらに好ましくはC1の炭素数を有するアシル基を挙げることができる。
【0051】
特に好適な実施の態様において、R1、R3、R4、R6、R7、R9、R10、及びR12は、それぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、アセチル基であり、好ましくは、水素、メチル基、メトキシ基、又はシアノ基である。
【0052】
本発明における核酸類とは、核酸及びペプチド核酸(PNA)を含み、さらにモノヌクレオチドを含む。核酸としては、天然の核酸であるDNA及びRNAが含まれ、さらに、非天然(人工)の核酸であるLNA(BNA)等の修飾核酸が含まれる。
【0053】
本発明に係る核酸類は、共役可能な置換基が付されたトリアゾール構造がビニル基に付されて高い光反応性を有する塩基を有しているために、他の核酸(核酸類)と光照射によって光連結をすることができる。すなわち、本発明に係る核酸類は、光反応性の核酸類であり、光連結性の核酸類であり、光連結剤として使用することができる。
【0054】
本発明に係る核酸類が、光連結可能である他の核酸(核酸類)としては、ピリミジン環を塩基部分として有する核酸(核酸類)を挙げることができる。ピリミジン環を塩基部分として有する核酸(核酸類)としては、例えば、シトシン、ウラシル、チミン、及びその誘導体を塩基部分として有する核酸(核酸類)を挙げることができ、塩基部分として、シトシン、ウラシル及びその誘導体を有していることが好ましく、特に好ましくはシトシンである。
【0055】
光連結のために照射される光は、一般に350〜380nmの範囲、好ましくは360〜370nmの範囲、さらに好ましくは366nmの波長を含む光が好ましく、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光である。
【0056】
本発明に係る核酸類は、他の核酸(核酸類)と光照射によって光連結した後に、光連結時とは異なる波長の光を照射することによって、光開裂をすることができる。すなわち、本発明に係る核酸類は、可逆的な光連結を可能とするものであり、可逆的な光連結剤として使用することができる。
【0057】
光開裂のために照射される光は、一般に300〜320nmの範囲、好ましくは305〜315の範囲、さらに好ましくは312nmの波長を含む光が好ましく、特に好ましくは、312nmの単波長のレーザー光である。
【0058】
本発明による光連結及び光開裂は、光反応を利用しているために、pH、温度、塩濃度などに特段の制約がなく、核酸類等の生体高分子が安定に存在可能なpH、温度、塩濃度とした溶液中で、光照射によって行うことができる。
【0059】
さらに、本発明は、塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IX:
【化36】

(ただし、式VI中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化37】

(ただし、式VII中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化38】

(ただし、式VIII中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化39】

(ただし、式IX中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)

で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)と、次の式X:

式X Ra−N

(ただし、式X中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)

で表される芳香族アジ化物とを、反応させて、本発明に係る核酸類を製造する方法にもある。
【0060】
Raについては、上述した通りである。すなわち、Ra−Nは、付加されるトリアゾール構造に共役可能となる置換基による有機アジ化物であれば使用することができるが、好ましくは、芳香族化合物の一価基とNからなる芳香族アジ化物である。使用可能な芳香族化合物の一価基及び好ましい芳香族化合物の一価基は、Raについて上述した通りである。
【0061】
本発明に係る製造方法によれば、緩和な条件下で反応させてトリアゾール構造を形成して、光連結剤である核酸類を得ることができる。この反応条件は、有機合成で通常使用されるような反応条件と比較して、格段に緩和な条件であるために、有機アジ化物として用意した有機置換基を、極めて迅速且つ簡便にトリアゾール構造に付加することができる。この付加環化反応は、クリック反応と総称される反応のうちのHuisgen環化に類似した反応であり、水や各種の官能基の存在に影響を受けずに極めて収率よく進行する。すなわち、核酸が存在できるような溶媒(環境)であれば、水系溶媒中であっても、有機溶媒中であっても、反応を行うことができる。そのために、本発明に係る製造方法によれば、検出のための標識部位の付加などの修飾が簡単にでき、用途に応じてRaに置換基を導入した誘導体を、光連結性の核酸類として、簡単に得ることができる。
【0062】
既に述べたように、置換基Raが芳香族化合物の一価基である場合には、共役環上の置換基の有無及び種類よりも、共役系の大きさ(共役環の数)のほうが光反応性(光連結性)に与える影響はずっと大きいために、適切な共役環の数を選択しておくことによって光反応性(光連結性)を十分に維持しつつ、共役環上の水素に置換して所望の標識部位を付加することが可能である。すなわち、本発明に係る核酸類は、本発明に係る製造方法によって、検出のための標識部位の付加などの修飾が容易にできるために、本発明に係る核酸類及び製造方法は、広範な応用が可能となっている。
【0063】
付加して導入する標識部位としては、公知の分子や基を使用することができ、例えば、蛍光色素、ビオチン、ハプテン、ペプチド、タンパク、酵素、フェロセン、及びスピン活性化合物等を挙げることができる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[光連結性核酸類の合成]
[5-ethynylvinyl-2’-deoxyuridine (EVU) を含むODN の合成]
次のScheme 1 に従い合成を進めた。以下の説明には化合物に付された番号を使用することがある。
【0066】
Scheme 1
【化40】

【0067】
[(E)-5-(2-Carbomethoxyvinyl)-2’-deoxyuridine (1) ]
Discover の7 mL チューブに5-Iodo-deoxyuridine(1.00 g, 3.20 mmol)を入れ、Pd(OAc)2(0.07 g, 0.32 mmol)とDMF(3 mL)を入れ、2 回窒素置換を行なった。次にBu3N(0.76 mL, 3.20 mmol)とmethylacrylate(0.43 mL, 4.80 mmol)を加え、撹拌しながらMicrowave を100 °C で4 分間照射した。この操作を計4 回行い、ろ過により沈殿物を除去した。カラム精製を行い、白色粉末として1を得た。収量3.36 g、収率84%。1H -NMR (DMSO-d6) δ 11.64 (bs, 1H), 8.41 (s, 1H), 7.36 (d, 1H, J= 15.8 Hz), 6.84 (d, 1H, J= 15.8 Hz), 6.12 (t, 1H, J= 6.5 Hz), 5.25 (d, 1H, J= 4.2 Hz), 5.16 (t, 1H, J=5.1 Hz), 4.24 (m, 1H), 3.79 (m, 1H), 3.67 (s, 3H), 3.64-3.54 (m, 2H), 2.17 (m, 2H).
【0068】
[(E)-5-(2-Carboxyvinyl)-2’-deoxyuridine (2) ]
1(3.25 g, 10.43 mmol)に3 M NaOH を1 が解けきるまで加え、室温で3 時間撹拌した。TLC で原料消失を確認してから、氷浴下で6 M HCL を少しずつ沈澱が生成するまで加えた。その沈殿物を集め、ヘキサンで洗浄し、白色粉末として2 を得た。収量2.68 g 、収率86%。1H -NMR (DMSO-d6) δ 11.61 (s, 1H), 8.37 (s, 1H), 7.28 (d, 1H, J= 15.8 Hz), 6.12 (d, 1H, J= 15.8 Hz), 6.12 (t, 1H, J=6.3 Hz), 5.20 (br, 1H), 5.18 (br, 1H, J=5.4 Hz), 4.25 (m, 1H), 3.79 (m, 1H), 3.59 (m, 2H), 2.18 (m, 2H).
【0069】
[(E)-5-(2-Bromovinyl)-2’-deoxyuridine (3) ]
2(2.64 g, 8.85 mmol)をDMF(30 ml)に溶かし、K2CO3(1.84 g, 13.28 mmol)を加え、室温で15 分撹拌した。それにN-Bromosuccinimide(1.58 g, 8.85 mmol)をDMF(20 ml)に溶かしたものをゆっくり加え、ろ過を行い、沈殿物をDMF で洗浄した。ろ液と洗浄液を集め、溶媒を飛ばしたもののカラム精製を行い、白色粉末として3 を得た。収量1.82 g、収率62%であった。1H -NMR (DMSO) δ 11.56 (s, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.22 (d, 1H, J= 13.6 Hz), 6.83 (d, 1H, J= 13.6 Hz), 6.11 (t, 1H, J= 6.6 Hz), 5.27 (d, 1H, J= 4.4Hz), 5.10 (t, 1H, J= 5.2 Hz), 4.23 (m, 1H), 3.77 (m, 1H), 2.12 (m, 2H).
【0070】
[(E)-5-(2-trimethylsilyl ethynyl vinyl)-2’-deoxyuridine (4) ]
3(0.67 g, 2.0 mmol)をDMF(10 ml)に溶かし、Pd(PPh3)4(0.23 g, 0.2 mmol) 、CuI(0.076 g, 0.4 mmol)、N,N-diisopropylethylamine (1.7 ml, 10 mmol)を加えて10 分撹拌し、trimethylsilyl acetylene(0.83 ml, 6.0 mmol)を加えて三時間撹拌した。TLC で原料消失を確認し溶媒をとばし、一度メタノールに溶かしてろ過を行い、沈殿物をろ過した。カラム精製を行って、4を得た。収量は0.66 g、収率は94%だった。1H -NMR (DMSO) δ 8.14 (s, 1H), 6.69 (d, 1H, J= 16.2 Hz), 6.56 (d, 1H, J= 16.2 Hz), 6.11 (t, 1H, J= 6.3 Hz), 5.27 (d, 1H, J= 4.4Hz), 5.13 (t, 1H, J= 5.2 Hz), 4.23 (m, 1H), 3.77 (m, 1H), 2.12 (m, 2H).
【0071】
[5’-O-(4,4’-Dimethoxytrityl)-(E)-5-(2-trimethylsilyl ethynyl vinyl)-2’-deoxyuridine (5) ]
4(0.60 g, 1.7 mmol)を100 ml ナスフラスコに入れ、窒素置換とピリジン共沸を行ったのち、ピリジン10 ml に溶かし、氷浴下でDMTrCl (0.70 g, 2.0 mmol)、DMAP(0.04 g, 0.34 mmol)、を加えて一晩撹拌し、TLC で原料消失を確認し溶媒をとばし、カラム精製(CHCl3: MeOH= 100: 0~98: 2)で精製して、5を得た。収量は0.34 g、収率は31%だった。1H -NMR (CD3OD) δ 8.29 (s, 1H), 6.73 (d, 1H, J= 16.2 Hz), 6.61 (d, 1H, J= 16.2 Hz), 6.30 (t, 1H, J= 6.6 Hz), 4.45 (m, 1H), 3.98 (m, 1H), 3.84 (m, 2H),2.35 (m, 2H).
【0072】
[5’-O-(4,4’-Dimethoxytrityl)-(E)-5-(2-trimethylsilyl ethynyl vinyl)-2’-deoxyuridine phosphoroamidite (6) ]
ゴムシールボトルに5(0.2 g, 0.31 mmol)を入れてアセトニトリル(2.0 ml)で共沸を2 回行い、アセトニトリル(2.0 ml) 、2-cyanoethyl-N,N,N’,N’-tetraisopropylphosphoro-amidite (0.097 ml, 0.31 mmol)と0.45 M tetrazole (0.68 ml)を加え室温で2 時間撹拌した。次に脱酢酸処理した酢酸エチルで2 回抽出し、溶媒を除去し、Sat. NaHCO3 aq. とH2O で洗浄した。MgSO4 を用いて有機相を乾燥させ、エバポレータで溶媒を除去し、アセトニトリル(1.0 ml)で共沸し、6 を得た(0.23 g, 88%)。
【0073】
EVU を含むODN の合成]
5’末端にEVU を含むODN(EVU)をABI 3400 DNA 合成機を用いて1 μmol スケールで二回合成した。アンモニアによる固相担体からの切り出した後、28%アンモニア水溶液を1 ml 加え65 °C で4 時間インキュベートして脱保護をして、凍結乾燥した。HPLC にてギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で8-15%/ 30 min で精製した後に凍結乾燥した。
ODN(EVU): 5’- EVU GCGTG-3’.
MALDI-TOF MS: Calcd. for ODN(EVU) [(M+H)+] 1859.35, found 1859.41
【0074】
[芳香族アジ化物の合成]
以下の手順に従って、以下の芳香族アジ化物をそれぞれ合成を進めた。以下の説明には化合物に付された番号を使用することがある。
【0075】
[1-azidobenzene の合成]
Scheme 2
【化41】

aniline(1.0 g, 10.7 mmol)を50 ml ナスフラスコに入れ、アセトニトリル(20 ml) に溶かし、氷浴下でtert-butyl nitrite(1.9 ml,16.1 mmol)、TMS-N3(1.7 ml, 12.8 mmol) を加え、一時間撹拌した。TLC で原料の消失と生成物を確認し、溶媒を飛ばし、カラム精製を行い、7 (0.55 g, 4.7 mmol)を得た。収率43%。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 7.01 (d, J= 7.6 Hz, 2H), 7.12 (t, J= 7.6 Hz, 1H), 7.34 (t, J= 7.6 Hz, 2H)
【0076】
[1-azido-4-methoxybenzene の合成]
Scheme 3
【化42】

p-anisidine(1.0 g, 8.1 mmol)を50 ml ナスフラスコに入れ、アセトニトリル(10 ml)に溶かし、氷浴下でtert-butyl nitrite(1.45 ml, 12.2 mmol)、TMS-N3(1.30 ml, 9.75 mmol)を加え、二時間撹拌した。TLC で原料の消失と生成物を確認し、溶媒を飛ばし、カラム精製を行い、黄色オイルとして8 (0.44 g, 2.9 mmol)を得た。収率36%。
【0077】
[1-azidobenzonitrile の合成]
Scheme 4
【化43】

4-aminobenzonitrile(0.2 g, 1.69 mmol)を20 ml ナスフラスコに入れ、アセトニトリル(4 ml)に溶かし、氷浴下でtert-butyl nitrite(0.3 ml, 2.54 mmol)、TMS-N3(0.27 ml, 2.03 mmol)を加え、二時間撹拌した。TLC で原料の消失と生成物を確認し、溶媒を飛ばし、冷やしたヘキサンで洗浄して9 (0.17 g, 1.18 mmol)を得た。収率70%。
【0078】
[1-naphtylazido の合成]
Scheme 5
【化44】

1-naphtylamine(0.2 g, 1.40 mmol)を10 ml ナスフラスコに入れ、アセトニトリル(3 ml)に溶かし、氷浴下でtert-butyl nitrite(0.25 ml, 2.10 mmol)、TMS-N3(0.22 ml, 1.68 mmol)を加え、二時間撹拌した。TLC(hexane)で反応の進行を確認し、溶媒を飛ばし、カラム精製(hexane)を行い10 (0.21 g, 1.23 mmol)を得た。収率88%。
【0079】
EVU を含むODN とbenzylazido とのクリック反応]
Scheme 6
【化45】

全量2000 μl で、ODN(EVU)水溶液(50 μM)、benzylazido のEtOH 水溶液(2.5 mM)、硫酸銅五水和物水溶液(2 mM)、sodium ascorbate 水溶液(1 mM)、H2O: EtOH= 3: 1 をスクリューキャップチューブに入れて、12 時間後の反応後溶液をHPLC によりギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で3-20%/ 30 min.で分析し(図1)、それから分取した。このようにして、EVU を含むODN とbenzylazidoとから、ODN(BTVU)を得た。Conversion は90%程度であった。
【0080】
EVU を含むODN と1-azidobenzene とのクリック反応]
Scheme 7
【化46】

全量2000 μl で、ODN(EVU)水溶液(50 μM)、7 のEtOH 水溶液(2.5 mM)、硫酸銅五水和物水溶液(2 mM)、sodium ascorbate 水溶液(1 mM)、H2O: EtOH= 3: 1 をスクリューキャップチューブに入れて、18 時間後の反応後溶液をHPLC により分析し,(図2) 。このようにして、EVU を含むODN と1-azidobenzeneとから、ODN((PTVU)を得た。Conversion は90%程度であった。
MALDI-TOF MS: Calcd. for ODN(PTVU) [(M+H)+] 1978.40, found 1978.42
【0081】
EVU を含むODN とp-anisidine とのクリック反応]
Scheme 8
【化47】

全量2000 μl で、ODN(EVU)水溶液(50 μM)、8 のEtOH 水溶液(2.5 mM)、硫酸銅五水和物水溶液(2 mM)、sodium ascorbate 水溶液(1 mM)、H2O: EtOH= 3: 1 をチューブに入れて、12 時間後の反応後溶液をHPLC によりギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で3-30%/ 30 min.で分析し(図3) 、それから分取した。このようにして、EVU を含むODN とp-anisidineとから、ODN(MPTVU)を得た。Conversion は90%程度であった。
MALDI-TOF MS: Calcd. for ODN(MPTVU) [(M-H)-] 2006.39, found 2006.38
【0082】
EVU を含むODN と1-azidobenzonitrile とのクリック反応]
Scheme 9
【化48】

全量2000 μl で、ODN(EVU)水溶液(50 μM)、9 のEtOH 水溶液(2.5 mM)、硫酸銅五水和物水溶液(2 mM)、sodium ascorbate 水溶液(1 mM)、H2O: EtOH= 3: 1 をチューブに入れて、12 時間後の反応後溶液をHPLC によりギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で3-30%/ 30 min.で分析し(図4)、それから分取した。このようにして、EVU を含むODN と1-azidobenzonitrileとから、ODN(CPTVU)を得た。Conversion は90%程度であった。
【0083】
EVU を含むODN と1-naphtylazido とのクリック反応]
Scheme 10
【化49】

全量2000 μl で、ODN(EVU)水溶液(50 μM)、10 のEtOH 水溶液(2.5 mM)、硫酸銅五水和物水溶液(2 mM)、sodium ascorbate 水溶液(1 mM)、H2O: EtOH= 3: 1 をチューブに入れて、24 時間後の反応後溶液をHPLC によりギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で3-50%/ 30 min. で分析し(図5)、 それから分取した。このようにして、EVU を含むODN と1-naphtylazidoとから、ODN(NPTVU)を得た。
【0084】
[光連結性核酸類による光連結反応]
BTVU 含有DNA を用いた光連結反応]
Scheme 11
【化50】

Scheme 11 に従いBTVU 含有ODN を用いた光照射実験を行った。ODN(C) (5’-TGTGCC-3’, 10 μM)とODN(BTVU) (5’- BTVU GCGTG-3’, 10 μM)の光連結反応をODN(6A) (5’-CACGCAGGCACA-3’, 12 μM)を鋳型核酸に用いて50 mM カコジル酸ナトリウム、100 mM NaCl 存在下で行った(total volume: 200 μl)。UV-LED 照射器を用いて366 nm 光を0 °C で5 分間照射した光反応物をHPLC によりギ酸アンモニウム: アセトニトリル系で5-8%/ 20 min., 8-30%/ 20 min. で分析した(図6) 。
【0085】
PTVU 含有DNA を用いた光連結反応]
Scheme 12
【化51】

Scheme 12 に従いPTVU 含有ODN を用いた光照射実験を行った。ODN(C) (5’-TGTGCC-3’, 10 μM)とODN(PTVU) (5’- PTVU GCGTG-3’, 10 μM)の光連結反応をODN(6A) (5’-CACGCAGGCACA-3’, 12 μM)を鋳型核酸に用いて50 mM カコジル酸ナトリウム、100 mM NaCl 存在下で行った(total volume: 200 μl)。UV-LED 照射器を用いて366 nm 光を0 °C で5 分間照射した光反応物をHPLC によりギ酸アンモニウム: アセトニトリル系で5-8%/ 20 min., 8-30%/ 20 min. で分析した(図7) 。
【0086】
MPTVU 含有DNA を用いた光連結反応]
Scheme 13
【化52】

Scheme 13 に従いMPTVU 含有ODN を用いた光照射実験を行った。ODN(C) (5’-TGTGCC-3’, 10 μM)とODN(MPTVU) (5’- MPTVU GCGTG-3’, 10 μM)の光連結反応をODN(6A) (5’-CACGCAGGCACA-3’, 12 μM)を鋳型核酸に用いて50 mM カコジル酸ナトリウム、100 mM NaCl 存在下で行った(total volume: 200 μl)。UV-LED 照射器を用いて366 nm 光を0 °C で5 分間照射した光反応物をHPLC によりギ酸アンモニウム: アセトニトリル系で5-8%/ 20 min., 8-30%/ 20 min.で分析した(図8)。
【0087】
CPTVU 含有DNA を用いた光連結反応]
Scheme 14
【化53】

Scheme 14 に従いCPTVU 含有ODN を用いた光照射実験を行った。ODN(C) (5’-TGTGCC-3’, 10 μM)とODN(CPTVU) (5’- CPTVU GCGTG-3’, 10 μM)の光連結反応をODN(6A) (5’-CACGCAGGCACA-3’, 12 μM)を鋳型核酸に用いて50 mM カコジル酸ナトリウム、100 mM NaCl 存在下で行った(total volume: 200 μl)。UV-LED 照射器を用いて366 nm 光を0 °C で5 分間照射した光反応物をHPLC によりギ酸アンモニウム: アセトニトリル系で5-8%/ 20 min., 8-30%/ 20 min.で分析した(図9)。
【0088】
NPTVU 含有DNA を用いた光連結反応]
Scheme 15
【化54】

Scheme 15 に従いNPTVU 含有ODN を用いた光照射実験を行った。ODN(C) (5’-TGTGCC-3’, 10 μM)とODN(NPTVU) (5’- NPTVU GCGTG-3’, 10 μM)の光連結反応をODN(6A) (5’-CACGCAGGCACA-3’, 12 μM)を鋳型核酸に用いて50 mM カコジル酸ナトリウム、100 mM NaCl、100 μM dU モノマー存在下で行った(total volume: 200 μl)。UV-LED 照射器を用いて366 nm 光を0 °C 照射した光反応物をHPLC によりギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で5-8%/ 20 min., 8-50%/ 20 min.で分析した(図10) 。
【0089】
CVU 含有DNA を用いた光連結反応](比較例)
Scheme 16
【化55】

Scheme 16 に従いCVU 含有ODN を用いた光照射実験を行った。ODN(C) (5’-TGTGCC-3’, 10 μM)とODN(CVU) (5’- CVU GCGTG-3’, 10 μM)の光連結反応をODN(6A) (5’-CACGCAGGCACA-3’, 12 μM)を鋳型核酸に用いて50 mM カコジル酸ナトリウム、100 mM NaCl 存在下で行った(total volume: 200 μl)。UV-LED 照射器を用いて366 nm 光を0 °C で5 分間照射した光反応物をHPLC によりギ酸アンモニウム:アセトニトリル系で5-10%/ 30 min. で分析した(図11) 。
【0090】
[光連結速度の比較結果]
ODN(BTVU)、ODN(PTVU)、ODN(MPTVU)、ODN(CPTVU)、ODN(NPTVU)の光連結の経時的な進行(実施例)、及びODN(CVU)の光連結の経時的な進行(比較例)を比較して表したグラフを、図12に示す。図12の横軸は時間(秒)であり、縦軸は光連結した割合(連結効率又は転換効率)である。ODN(BTVU)は白抜きの丸(open circles)(○)、ODN(PTVU)は黒塗りの三角(filled triangles)(▲)、ODN(MPTVU)は白抜きの三角(open triangles)(△)、ODN(CPTVU)は黒塗りの四角(filled quadrangles)(■)、ODN(NPTVU)は白抜きの四角(open quadrangles)(□)で表す。
【0091】
図12において、光連結の効率が50%に達する時間を比較すると、グラフの曲線から、ODN(BTVU)、ODN(PTVU)、ODN(MPTVU)、ODN(CPTVU)は、ほぼ30秒程度(27〜36秒の範囲)にあり、ODN(NPTVU)は17秒程度にあり、一方、比較例のODN(CVU)は76秒程度にある。すなわち、比較例のODN(CVU)と比較して、ベンゼン環1個をトリアゾール構造に共役しているODN(BTVU)、ODN(PTVU)、ODN(MPTVU)、及びODN(CPTVU)は、ほぼ1/2程度の時間で連結効率50%に達し、ベンゼン環2個をトリアゾール構造に共役しているODN(NPTVU)は、ほぼ1/4程度の時間で連結効率50%に達している。
【0092】
したがって、本発明に係る核酸類は、従来型の光連結性の核酸と比較して、極めて短時間で光連結が進行することがわかった。また、本発明に係る核酸類は、トリアゾール構造に共役している共役系が大きいほど(芳香族化合物の環が多いほど)、光連結の進行の速度は劇的に増大すること、一方で共役環上の置換基の有無及びその種類は、共役系の大きさ(芳香族化合物の環の数の多さ)ほどには、光連結の進行の速度に影響を与えないことがわかった。すなわち、十分に大きな共役系(芳香族化合物)を使用すれば、光連結の進行を損なうことなく、自由に置換基や標識部位を付することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1はbenzylazidoによる、EVU を含むODN からODN(BTVU)への転換を示すクロマトグラムである。
【図2】図2は1-azidobenzeneによる、EVU を含むODN からODN((PTVU)への転換を示すクロマトグラムである。
【図3】図3はp-anisidineによる、EVU を含むODNから ODN(MPTVU)への転換を示すクロマトグラムである。
【図4】図4は1-azidobenzonitrileによる、EVU を含むODN からODN(CPTVU)への転換を示すクロマトグラムである。
【図5】図5は1-naphtylazidoによる、EVU を含むODN からODN(NPTVU)への転換を示すクロマトグラムである。
【図6】図6はODN(BTVU)の光連結を示すクロマトグラムである。
【図7】図7はODN(PTVU)の光連結を示すクロマトグラムである。
【図8】図8はODN(MPTVU)の光連結を示すクロマトグラムである。
【図9】図9はODN(CPTVU)の光連結を示すクロマトグラムである。
【図10】図10はODN(NPTVU)の光連結を示すクロマトグラムである。
【図11】図11はODN(CVU)の光連結を示すクロマトグラムである。
【図12】図12は光連結性核酸による光連結の経時的な進行を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基部分として、次の式I、式III、式IV、又は式V:
【化1】

(ただし、式I中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R2は、次式II:
【化2】

(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)
で表される基を示す。)
【化3】

(ただし、式III中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R5は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
【化4】

(ただし、式IV中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示し、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R8は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
【化5】

(ただし、式V中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示し、
R11は、式II(ただし、式II中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)で表される基を示す。)
で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
【請求項2】
Raが、1、2又は3個以上の環を有する、芳香族化合物の一価基である、請求項1に記載の核酸類。
【請求項3】
請求項1〜2の何れかに記載の核酸類からなる、光連結剤。
【請求項4】
請求項1〜2の何れかに記載の核酸類を使用して、核酸類を光連結する方法。
【請求項5】
塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IX:
【化6】

(ただし、式VI中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化7】

(ただし、式VII中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化8】

(ただし、式VIII中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化9】

(ただし、式IX中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)と、次の式X:

式X Ra−N

(ただし、式X中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)

で表される芳香族アジ化物とを、反応させて、請求項1〜2の何れかに記載の核酸類を製造する方法。
【請求項6】
塩基部分として、次の式VI、式VII、式VIII、又は式IX:
【化10】

(ただし、式VI中、Xは、O、SまたはNHを示し、
R1及びR3は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化11】

(ただし、式VII中、R4及びR6は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化12】

(ただし、式VIII中、Yは、O、SまたはNHを示し、
Zは、YがOまたはSであるときNHを示、YがNHであるときは水素原子を示し、
R7及びR9は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)
【化13】

(ただし、式IX中、R10及びR12は、それぞれ独立に、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、シアノ基、又はC1〜C6のアシル基を示す。)

で表される基を有する核酸類(ただし、核酸類には、核酸及びペプチド核酸が含まれる)。
【請求項7】
次の式X:

式X Ra−N

(ただし、式X中、Raは、トリアゾール構造と共役可能な置換基を示す。)

で表される芳香族アジ化物。
【請求項8】
請求項7に記載の芳香族アジ化物からなる、核酸類用修飾剤。
【請求項9】
請求項7に記載の芳香族アジ化物を使用して、核酸類を修飾する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−126789(P2009−126789A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299901(P2007−299901)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】