説明

トリアルキルホスフィンの製造方法

【課題】半導体製造用成膜原料、触媒配位子として有用なトリアルキルホスフィンの工業的で高収率な製造法を提供する。
【解決手段】一般式R−Mで表される有機金属化合物と一般式P−(OR’)で表される有機リン化合物とを、生成するトリアルキルホスフィンとの沸点差が20℃の範囲内にあるエーテル溶媒中で反応させ、生成したトリアルキルホスフィンを含有する気相部をAgIとKIの水溶液に吸収させて生成する一般式RPAgIで表される銀錯体をろ過により得、得られた該錯体を含有した水溶液を、金属製反応器にて、1.333×10−7MPa〜6.133×10−2MPaの減圧下で、170℃〜350℃の温度範囲内に加熱し、発生したガスを−196℃〜−50℃の範囲内の極低温で冷却して捕捉するトリアルキルホスフィンの製造方法。[上記式中、Rはアルキル基等を表し、Mはハロゲン化マグネシウム等を表し、R’はアルキル基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造における成膜原料、あるいは遷移金属錯体触媒の配位子として有用なトリアルキルホスフィンの製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリアルキルホスフィンは、一般式R3P(Rはアルキル基を示す)で表される化合物であり、従来までの遷移金属錯体触媒の配位子に加えて、近年では半導体分野における成膜原料としてもその用途が拡大している。
【0003】
トリメチルホスフィンを例にとり合成法を示すと、PH及びCHClを活性炭触媒中、1.961×10−3MPaの加圧下、275℃で気相反応させる方法(特許文献1)、三塩化リンをテトラグリム溶媒中、メチルマグネシウムブロマイドと反応させた後、AgIとKIを溶解させた水溶液と反応させて(CHPAgI錯体として固定化する方法(非特許文献1)が最も一般的である。また最近ではよりマイルドな反応試薬としてトリフェニルホスファイトとメチルマグネシウムブロマイドと反応させ蒸留により得る方法が報告されている(非特許文献2)。上記反応に用いられる反応溶媒としては、ジブチルエーテル、ジグリム(DGM)、テトラグリム、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アルキル化試薬としては、上記グリニャール試薬の他、アルキルリチウムの使用が可能となっている。
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、反応の選択率が悪く、P(CHの収率は6%と極端に低い。また、上記非特許文献1に記載の方法では、三塩化リンから発生するHClにより銀錯体が分解してしまい収率の低下をもたらすのに加え、固定化するためのAgIが非常に高価である。さらに、上記非特許文献2に記載の方法では、反応後直接蒸留を行うために、用いる溶媒をジブチルエーテルやテトラグリムなどの沸点差の大きな溶媒を選択せざるを得ず、このため反応系中のMg成分、溶媒及びP(CHが錯形成することにより、蒸留工程においてP(CHの沸点(38℃)付近の温度では留出せず、より高温な140℃で少しずつ蒸留する必要があり、しかも突沸防止のため温度制御幅が狭い。
【0005】
したがって、トリメチルホスフィンをはじめとするトリアルキルホスフィンを工業的に効率よく製造する方法は見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2641526号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Inorganic.Syntheses 1967,9,59.
【非特許文献2】J.Chem.Soc.Dalton Trans.1985,2025.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、P(CHをはじめとするトリアルキルホスフィンを工業的に収率よく製造できる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、
[1]ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、またはリチウムの、いずれか1つを含有する有機金属化合物と、有機リン化合物と、を反応させるときの溶媒として、生成するトリアルキルホスフィンと沸点の近いエーテル系溶媒を用いることで次工程の留出時の突沸を防止でき、
[2]生成したトリアルキルホスフィンをAgIとKIを溶解させた水溶液により、銀錯体(固体状態)として固定化することにより、溶媒との分離が容易となり、
[3]固定化された銀錯体を減圧雰囲気下、熱分解することによりトリアルキルホスフィンとAgIを分離でき、
[4]残渣として残る高価なAgIを次バッチに再利用できる、
ことを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、一般式(1)
R−M (1)
[式中、Rは炭素数1〜6の直鎖状または分岐したアルキル基、Mはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、リチウムの、いずれか1つを示す。]で表される、有機金属化合物と、一般式(2)
P−(OR’) (2)
[式中、R’は炭素数1〜12の直鎖状または分岐したアルキル基、あるいは炭素数5〜18のフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ビピリジル基、ターフェニル基、またはターピリジル基のいずれか1つからなるアリール基の、いずれか1つを示す。また、該アリール基は、芳香環上の任意の位置に、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる基を置換基として有してもよい。]で表される、有機リン化合物とを、生成するトリアルキルホスフィンとの沸点差が0℃〜20℃の範囲内であるエーテル溶媒中で反応させる第一工程と、第一工程で生成する一般式(3)
PR (3)
[式中、Rは一般式(1)のRと同じ基を示す。]で表される、トリアルキルホスフィンを含有する気相部を、AgIとKIを溶解させた水溶液に吸収させることにより生成する一般式(4)
PAgI (4)
[式中、Rは一般式(1)と同じ。]で表される銀錯体をろ過により得る第二工程と、
第二工程で得られる該錯体を、金属製反応器にて、1.333×10−7MPa〜6.133×10−2MPaの減圧雰囲気下で、170℃〜350℃の温度範囲内まで加熱し、ガスを発生させる第三工程と、第三工程で発生するガスを−196℃〜−50℃の範囲内の極低温で冷却して、一般式(3)で表される、トリアルキルホスフィンを補足する第四工程とを、有することを特徴とする一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法である。
【0010】
さらには、一般式(1)のRが、メチル基であることを特徴とする一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法、一般式(2)のR’がフェニル基であることを特徴とする一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法、第三工程の加熱温度が略280℃であることを特徴とする一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法、または第三工程で固層部に副生するAgIを、第二工程の銀錯体形成反応に用いることを特徴とする一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、工業的に優れ、高い収率で、高純度なトリアルキルホスフィンの製造が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について説明する。
第一工程に用いられる、一般式(1)
R−M (1)
[式中、Rは炭素数1〜6の直鎖状または分岐したアルキル基、Mはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、リチウムを示す。]で表される有機金属化合物として、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムヨージド、プロピルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムヨージド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムヨージド、ペンチルマグネシウムクロリド、ペンチルマグネシウムブロミド、ペンチルマグネシウムヨージド、ヘキシルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムブロミド、またはヘキシルマグネシウムヨージドなどの有機マグネシウム試薬、あるいは、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウムなどの有機リチウム試薬、メチル塩化亜鉛、エチル塩化亜鉛、プロピル塩化亜鉛、ブチル塩化亜鉛、ペンチル塩化亜鉛、またはヘキシル塩化亜鉛などの有機亜鉛試薬等を用いることができるが、反応のハンドリング性、入手の容易性、経済性から有機マグネシウム試薬を用いるのが好ましい。
【0013】
また、第一工程に用いられる、一般式(2)
P−(OR’) (2)
[式中、R’は炭素数1〜12の直鎖状または分岐したアルキル基、あるいは炭素数5〜18のフェニル基、ピリジル基、ジフェニル基、ジピリジル基、ターフェニル基、またはターピリジル基のいずれか1つからなるアリール基を示す。また、これらアリール基は、芳香環上の任意の位置に、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる基を置換基として有してもよい。]で表される有機リン化合物としては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、またはトリブチルホスファイトなどのトリアルキルホスファイト類、あるいは、トリフェニルホスファイト、トリピリジルホスファイト、トリス(ジフェニル)ホスファイト、トリス(ジピリジル)ホスファイト、トリス(ターフェニル)ホスファイト、トリス(ターピリジル)ホスファイト、トリトリルホスファイト、トリキシリルホスファイト、トリス(トリメチルフェニル)ホスファイト、またはトリス(クロロフェニル)ホスファイトなどのトリアリールホスファイト類を用いることができるが、化合物の求電子性がより高いトリアリールホスファイト類を用いるのが好ましく、入手の容易性、経済性からトリフェニルホスファイトを用いるのがさらに好ましい。
【0014】
第一工程の反応に用いられる反応溶媒としては、ジブチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−プロピルエーテル、ジメトキシエタン、エチルメチルエーテル、ジグリム(DGM)、テトラグリム、テトラヒドロフラン(THF)、またはジエチルエーテル等のエーテル溶媒を用いるのが好ましく、中でも、例えばP(CHを製造する場合はジエチルエーテルを用いるなど、生成するトリアルキルホスフィンとの沸点差が近い溶媒を用いるのが、蒸留工程における突沸を防止することができるためさらに好ましい。生成するトリアルキルホスフィンと溶媒の沸点差は0℃〜50℃程度となることが好ましく、突沸を防止するには0℃〜20℃であることがより好ましい。
【0015】
第一工程では、一般式(3)
PR (3)
[式中、Rは一般式(1)のRと同じ基を示す。]で表されるトリアルキルホスフィンが生成し、また、気相部に該トリアルキルホスフィンを含有する。
【0016】
第二工程では、第一工程の気相部をAgIとKIを溶解させた水溶液に吸収させることにより生成する一般式(4)
PAgI (4)
[式中、Rは一般式(1)と同じ。]で表される銀錯体を桐山ロート等の市販ろ過器を用い、一般的な加圧または減圧ろ過法により回収する。
【0017】
AgIは水に難溶であるため、KIと共溶させてAgI溶液とする。この時のKIの濃度は水に対して5質量%以上の飽和濃度とするのが好ましく、AgIの溶解性を高めるためには40質量%以上の濃度とするのが好ましい。またAgIは生成するPRのモル量に対し、1〜1.2倍モル量とするのが好ましい。この時、AgIとKIを溶解させた水溶液のAgIモル濃度は、0.1〜10mol/Lとするのが好ましく、PRの吸収効率、錯体形成後のろ過回収率等を考えた場合、略1mol/L程度とするのが特に好ましい。
【0018】
第三工程では、第二工程で得られる該錯体を、十分乾燥させた後に密閉できる金属製反応器にて、減圧雰囲気下で加熱し、ガスを発生させる。このときの加熱温度としては、該反応器内部の温度が170℃〜350℃の範囲内であることが好ましい。170℃未満では銀錯体の分解によるトリアルキルホスフィンの生成が困難となり、350℃を超えると生成したトリアルキルホスフィンまで分解してしまい、目的物の純度が極端に低下してしまう虞がある。さらに、より収率よくトリアルキルホスフィンを得るためには、該反応器内部の温度が略280℃であることがより好ましい。
【0019】
また該反応器内部の圧力は1.333×10−7MPa〜6.133×10−2MPaの減圧雰囲気下とするのが好ましい。1.333×10−7MPa未満では、トリアルキルホスフィンが急激に発生し該反応器内部の固層の飛散等による配管の閉塞が生じる虞があり、6.133×10−2MPaを超えると該反応器内部の圧力が高すぎてトリアルキルホスフィンの捕集が困難となる。さらに、より収率よくトリアルキルホスフィンを得るためには1.333×10−5MPa〜1.333×10−4MPaの減圧雰囲気下にするのが好ましい。
【0020】
なお、使用する金属反応器は特に限定はされないが、耐熱性、耐圧性、耐腐食性などから、金属反応器に用いる容器、バルブ、または配管等はステンレス製であることが好ましい。
第四工程では、第三工程で発生するガスを極低温で冷却して、一般式(3)で表される、トリアルキルホスフィンを補足する。補足するときの温度は、−196℃〜−50℃の極低温の範囲が好ましく、−80℃〜−50℃とするのがさらに好ましい。−80℃より低い温度では捕集器入り口配管においてトリアルキルホスフィンが固化することで閉塞が生じやすく、−50℃より高い温度では系全体の圧力が上昇することで捕集効率が低下する虞がある。
【0021】
以上の工程を経ることにより、精密蒸留等の特別な操作を要することなく、一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンを99%以上の純度で得ることが可能となる。
【0022】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
反応器として10Lのフラスコ(以下、反応器と表記)にメカニカルスターラ、滴下ろうと、温度計、トの時管をつけた。反応器のトノ時管の先にリービッヒ冷却器つけ、そのリービッヒ冷却器の先に更に取り付けた10Lのフラスコ(以下、AgI固定化器と表記)にAgI1115gとKI3300gを溶解させた水溶液4.8Lを入れ、Nを吹き込み、12時間バブリングした。まず第一工程として、反応器に3Mメチルグリニャール試薬(CHMgBr)のジエチルエーテル溶液を4.8L入れ、水バスに氷を入れて冷却し、滴下ロートよりトリフェニルホスファイト1285gをゆっくりと反応器に滴下した。滴下終了後、Nフロー下において室温で12時間攪拌した。反応終了後、あらかじめ12時間Nバブリングを施したNHCl水溶液を滴下ロートからゆっくりと反応器に滴下し、未反応のグリニャール試薬をクエンチした。滴下終了後、第二工程として、反応器を70℃で24時間加熱して生成したP(CHとジエチルエーテルを、AgI固定化器に留出させてAgIとKIを溶解させた水溶液に吸収させることによりP(CHを(CHPAgI錯体に変換した。変換した(CHPAgI錯体を含むAgI固定化器内の溶液を吸引ろ過し、飽和KI水溶液、純水、エタノール、ジエチルエーテルの順に洗浄、真空減圧乾燥し、白色の(CHPAgI錯体を得た。
【0024】
次に第三工程として、得られた白色の(CHPAgI錯体を3Lのフランジ付きSUS容器に封入し、圧力計、熱電対を取り付け、100℃で12時間加熱しながら1.333×10−5MPaまで真空引きした。真空雰囲気下において280℃で36時間加熱し、第四工程として発生したP(CHを−80℃で冷却捕集した。反応器側と捕集器側の圧力差がなくなった時点を反応終了とし、純度99.1%のP(CHが220g得られ、反応器に滴下したトリフェニルホスファイトを基準としたトータル収率は70%であった。さらに810gの反応残渣を回収した。この反応残渣はX線回折の回折パターンにより、AgIであることがわかった。
[比較例1]
トリフェニルホスファイトを三塩化リンに変えた以外は、実施例1と同様にP(CHを合成した。このときのトータル収率は40%と大きく低下した。
[比較例2]
第二工程以降の操作を行わずに、生成したP(CHをそのまま加熱して取り出して得た以外は実施例1と同様にP(CHを合成した。このときの収率は68%であったが、不純物として反応溶媒のジエチルエーテルを含むため純度は23%と極端に低く、またこれを分離するのは困難であった。
[比較例3]
ジエチルエーテルをジブチルエーテルに変えた以外は、比較例2と同様にP(CHを合成した。このとき蒸留段階の加熱温度は140℃以上を要し、蒸留途中で突沸がおこったため安定操作ができなかった。
【実施例2】
【0025】
第三工程の反応器圧力を1.333×10−7MPaとした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このとき、反応器出口の閉塞が頻繁に生じ、安定的に合成することができなかった。のトータル収率は68%、純度は98.9%であった。
【実施例3】
【0026】
第三工程の反応器圧力を6.000×10−2MPaとした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は64%、純度は99.0%であった。
【実施例4】
【0027】
第三工程の反応温度を200℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は63%、純度は98.7%であった。
【実施例5】
【0028】
第三工程の反応温度を320℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は68%、純度は99.0%であった。
[比較例4]
第三工程の反応器圧力を1.333×10−1MPaとした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は38%、純度は88.4%となり、収率、純度ともに大きく低下した。
[比較例5]
第三工程の反応温度を150℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このとき反応器内の圧力は上がらず、トータル収率は10%にとどまった。
[比較例6]
第三工程の反応温度を360℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は68%であったが、反応中の目的物の分解反応に伴い、純度は78.5%と大きく低下した。
【実施例6】
【0029】
第四工程の捕集温度を−193℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は69%、純度は99.0%であった。
【実施例7】
【0030】
第四工程の捕集温度を−50℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は64%、純度は99.1%であった。
[比較例7]
第四工程の捕集温度を−20℃とした以外は実施例1と同様に合成を実施した。このときのトータル収率は37%、純度は97.0%となり、収率、純度ともに大きく低下した。
【実施例8】
【0031】
実施例1で回収されるAgIをAgI固定化器のAgIに使用した以外は、実施例1と同様にP(CHを合成した。このときのトータル収率は68%、純度は99.3%であった。
【実施例9】
【0032】
実施例2と同様に、回収したAgIを合計10回繰り返して反応に用いたが、いずれの回も、トータル収率は68〜72%、純度は99.0〜99.3%の範囲内であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
R−M (1)
[式中、Rは炭素数1〜6の直鎖状または分岐したアルキル基、Mはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、またはリチウムの、いずれか1つを示す。]で表される、有機金属化合物と、
一般式(2)
P−(OR’) (2)
[式中、R’は炭素数1〜12の直鎖状または分岐したアルキル基、あるいは炭素数5〜18のフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ビピリジル基、ターフェニル基、またはターピリジル基のいずれか1つからなるアリール基の、いずれか1つを示す。また、該アリール基は、芳香環上の任意の位置に、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる基を置換基として有してもよい。]で表される、有機リン化合物とを、
生成する一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンとの沸点差が0℃〜20℃の範囲内であるエーテル溶媒中で反応させる第一工程と、
第一工程で生成する一般式(3)
PR (3)
[式中、Rは一般式(1)のRと同じ基を示す。]で表される、トリアルキルホスフィンを含有する気相部を、AgIとKIを溶解させた水溶液に吸収させることにより生成する一般式(4)
PAgI (4)
[式中、Rは一般式(1)と同じ。]で表される銀錯体をろ過により得る第二工程と、
第二工程で得られる該錯体を、金属製反応器にて、1.333×10−7MPa〜6.133×10−2MPaの減圧雰囲気下で、170℃〜350℃の温度範囲内まで加熱し、ガスを発生させる第三工程と、
第三工程で発生するガスを−196℃〜−50℃の範囲内の極低温で冷却して、一般式(3)で表される、トリアルキルホスフィンを補足する第四工程と、
を有することを特徴とする、一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法。
【請求項2】
一般式(1)のRが、メチル基であることを特徴とする、請求項1に記載の一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法。
【請求項3】
一般式(2)のR’がフェニル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法。
【請求項4】
第三工程の加熱温度が略280℃であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法。
【請求項5】
第三工程で固層部に副生するAgIを、第二工程の銀錯体形成反応に用いることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の一般式(3)で表されるトリアルキルホスフィンの製造方法。


【公開番号】特開2011−148705(P2011−148705A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8651(P2010−8651)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】