トリプシノーゲンおよび/またはキモトリプシノーゲン、ならびに、セレン化合物、バニロイド化合物および細胞質解糖系還元剤より選択された活性剤を含む癌治療のための医薬組成物。
本願発明は一般的に、プロテアーゼプロ酵素を含む医薬組成物および癌治療のためのその使用に関する。前記医薬組成物は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む組成物を対象としており、前記組成物は癌治療の多機能アプローチを提供することが可能である。前記医薬組成物はまた、腫瘍細胞同士の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化もしくは免疫認識を促進するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができる第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含み、第一のプロテアーゼプロ酵素がキモトリプシノーゲンおよび第二のプロテアーゼプロ酵素がトリプシノーゲンである。前記医薬組成物はまた、互いに腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含む組成物を対象とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は一般に、プロテアーゼプロ酵素(protease proenzyme)を含む医薬組成物および癌治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療にプロテアーゼを用いるという考えは、100年以上にわたっている。1905年、John Beardは、可能性のある癌治療として新鮮な膵臓の酵素抽出物を用いた使用を提示し、Jersen’s mouse sarcomaモデルに対して、実験を実施し、成功した。マウスにプロテアーゼトリプシンを接種した後、腫瘍の縮小が観察された。Beardによって得られた結果は、当時大きな関心を生み、ヒツジ膵臓から調製された粗酵素抽出物が、腫瘍を縮小させて寿命を延長し、ヒトの癌患者を治療するために使用された。
【0003】
より最近では、酵素の経口投与は、膵臓癌、腸癌、結腸直腸癌、および後期の骨髄腫といった様々な癌の患者の良好な生存率によって、耐容性が良いことが示されている。消化およびセルピンなどの血漿中のその他の酵素不活性化因子による消失および不活性化のために、高用量の酵素の使用が必要である。
【0004】
プロ酵素(酵素の不活性前駆体形態)の使用は、酵素の経口投与で生じた問題を克服するために用いられてきた。セリンプロテアーゼ阻害物質トリプシンのプロ酵素形態であるトリプシノーゲンを含むプロ酵素混合物は、細胞癌の治療に有効であることが示され、腫瘍細胞表面を選択的に活性化すると考えられてきた(Novak J and Trnka F, Proenzyme Therapy of Cancer, Anticancer research, 25:1157-1178,2005;US 5,858,357)。トリプシンの作用のメカニズムは、腫瘍細胞のタンパク質分解経路を介して起こると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Novak J and Trnka F, Proenzyme Therapy of Cancer, Anticancer research, 25:1157-1178,2005;US 5,858,357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌治療に有効な強化されたプロ酵素組成物の同定および提供の需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む医薬組成物であり、その組成物は癌治療のために多機能アプローチを提供することが可能である医薬組成物を提供する。
【0008】
第二の態様は、
腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化、もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができるプロテアーゼプロ酵素、および、
腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる活性剤
を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
第二の実施態様において、細胞間活性は腫瘍細胞の細胞死、免疫認識または分化である。
【0010】
第一または第二の実施態様において、医薬組成物は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含み、癌治療のために多機能アプローチを提供することが可能であり、前記プロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンの少なくとも一つより選択され、ならびに、前記活性剤は、セレン化合物、バニロイド化合物、および細胞質解糖系還元剤の少なくとも一つ、および任意でグリコシドヒドロラーゼより選択される。さらなる実施態様においては、プロテアーゼプロ酵素はトシプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンである。
【0011】
第三の態様は、癌治療の剤または組成物であって、協同して癌治療の多機能アプローチを提供することが可能であり、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む剤または組成物を提供する。
【0012】
第四の態様は、
腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化、もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができるプロテアーゼプロ酵素、および、
腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる活性剤
を含む癌治療の剤または組成物を提供する。
【0013】
第五の態様は、活性剤を含む癌治療の薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用を提供する。
【0014】
第六の態様は、プロテアーゼプロ酵素を含む癌治療の薬剤の製造における活性剤の使用を提供する。
【0015】
第七の態様は、癌治療の薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素および活性剤の使用を提供する。
【0016】
第八の態様は、活性剤で治療されるべき対象での癌治療の薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用であって、前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、任意に、前記活性剤はプロテアーゼプロ酵素の効果を促進するための細胞間活性を誘導することができる、使用を提供する。
【0017】
第九の態様は、プロテアーゼプロ酵素で治療されるべき対象での癌治療の薬剤の製造における活性剤の使用であって、前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、任意に、前記活性剤はプロテアーゼプロ酵素の効果を促進するための細胞間活性を誘導することができる、使用を提供する。
【0018】
第十の態様は、治療的に有効な量のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を対象に投与することを含む癌治療の方法を提供する。
【0019】
第十の態様の実施態様において、前記の方法はプロテアーゼプロ酵素および活性剤、ならびに、任意で追加の活性剤の、供用投与または連続投与を含む。供用投与は、第一および第二の態様の医薬組成物を含む単一の薬剤の投与、または、各々プロテアーゼプロ酵素および活性剤、ならびに追加の活性剤を含む別々の薬剤の供用投与を含み得る。連続投与は、プロテアーゼプロ酵素、活性剤、または追加の活性剤のいずれの順序の投与も含み得る。連続および供用投与は、プロテアーゼプロ酵素、活性剤、または追加の活性剤の異なる経路での投与を含み得る。
【0020】
第十の態様に記載の方法は、すでに活性剤またはプロテアーゼプロ酵素によりそれぞれ治療されていた対象への、プロテアーゼプロ酵素または活性剤の投与を含み得る。
【0021】
第十一の態様は、プロテアーゼプロ酵素の活性剤との混合によって、第一または第二の態様の医薬組成物を調製する方法またはその調製物もしくは処方を提供する。
【0022】
第十一の態様のさらなる実施態様において、前記の方法はさらに、プロテアーゼプロ酵素および/または活性剤、第一および第二の態様の実施態様に記載の、追加の活性剤との混合をさらに含み得る。
【0023】
前記の態様のさらなる実施態様において、プロテアーゼプロ酵素はセリンプロテアーゼプロ酵素である。セリンプロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、またはそれらの混合物であり得る。他の実施態様において、プロテアーゼプロ酵素は、第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含んでおり、第一のプロテアーゼプロ酵素はキモトリプシノーゲンであり、第二のプロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンである、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は4:1から8:1の間の範囲である。さらなる実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は5:1から7:1の間の範囲である。さらなる実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は6:1である。
【0024】
前記の態様の実施態様において、前記活性剤はセレン化合物、バニロイド化合物、および、細胞質解糖系還元剤、ならびに任意のグリコシドヒドロラーゼから成る群の少なくとも一つより選択される。例えば、前記活性剤はセレン化合物、またはセレン化合物、バニロイド化合物、グリコシドヒドロラーゼおよび細胞質解糖系還元剤から成る組み合わせであり得る。
【0025】
前記の態様の実施態様において、医薬組成物は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含んでおり、癌治療のための多機能アプローチを提供することが可能で、前記プロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンの少なくとも一つより選択され、ならびに、前記活性剤はセレン化合物、バニロイド化合物、および細胞質解糖系還元剤の少なくとも一つ、および任意でグリコシドヒドロラーゼより選択される。
【0026】
前記の態様のさらなる実施態様において、セレン化合物は、血漿または細胞間液を介して体に吸収され得る、生物が利用可能なセレン源を提供することができる。ある特定の実施態様においては、セレン含有化合物は、メチルセレノシステイン、または、医薬として許容可能なその塩である。
【0027】
前記の態様のある実施態様において、グリコシドヒドロラーゼは、アミラーゼ例えばα-アミラーゼである。
【0028】
前記の態様の他の実施態様において、細胞質解糖系還元剤は、2-デオキシ-D-グルコースである。
【0029】
前記の態様の他の実施態様において、バニロイド化合物はカプシエート(capsiate)すなわち4-ヒドロキシ-3-メチルベンジル(E)-8-メチル-6-ノナノエート(4-hydoroxy-3-methylbenzyl(E)-8-methyl-6-nonanoate)、ジヒドロカプシエートすなわち4-ヒドロキシ-3-メチルベンジル8-メチルノナノエート (4-hydoroxy-3-methylbenzyl8-methylnonanoate)、および、ノルヒドロキシカプシエート(nordihydrocapsiate)すなわち4-ヒドロキシ-3-メチルベンジル7-メチルオクタノエート(4-hydoroxy-3-methylbenzyl7-methyloctanoate)より選択される。好ましくは、バニロイド化合物はカプシエートである。
【0030】
前記の態様のある実施態様において、活性剤は、メチルセレノシステイン、capsiate、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る群の少なくとも一つより選択される。特定の実施態様においては、活性剤(複数)は、メチルセレノシステイン、capsiste、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る。
【0031】
第十二の態様は、腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化、もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができる第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含む医薬組成物であって、第一のプロ酵素はキモトリプシノーゲンであり、第二のプロ酵素はトリプシノーゲンであり、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は4:1から8:1の間の範囲である、医薬組成物を提供する。
【0032】
第十二のある実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は5:1から7:1の間の範囲である。他の実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は6:1である。
【0033】
第十二の他の実施態様において、医薬組成物はさらに、前記の実施態様のいずれか一つに定義された活性剤を含む。
【0034】
第十三の態様は、各々が腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含む医薬組成物であって、第一の活性剤がセレン化合物であり、第二の活性剤が細胞質解糖系還元剤である、医薬組成物を提供する。
【0035】
第十三の態様の実施態様において、細胞間活性とは、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識または分化である。ある実施態様において、セレン化合物は前記の実施態様のいずれか一つに従って定義される。より好ましい実施態様においては、セレン化合物はメチルセレノシステインである。他の実施態様においては、細胞質解糖系還元剤は2-デオキシ-D-グルコースである。
【0036】
第十三の態様の他の実施態様において、医薬組成物はさらに、前記の実施態様のいずれか一つで定義されるプロテアーゼプロ酵素を含む。他の実施態様において、医薬組成物は、さらに、前記実施態様のいずれか一つで定義されたバニロイド化合物およびグリコシドヒドロラーゼより選択された活性剤を含む。
【0037】
第十四の態様は、癌治療の薬剤の製造における第十二または第十三の態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0038】
第十五の態様は、第十二または第十三の態様に記載の、治療的に有効な量の医薬組成物を対象に投与することを含む癌治療の方法を提供する。
【0039】
前記の態様の医薬組成物、プロテアーゼプロ酵素または活性剤は、医薬として許容可能なビヒクル、担体、または希釈液の中で提供され得て、一つまたは複数の医薬として許容可能な賦形剤を含み得る。
【0040】
前記態様のさらなる実施態様において、医薬組成物、剤、使用または方法は、プロテアーゼプロ酵素、活性剤、もしくは医薬組成物の効能を強める、または、望ましくない副作用を弱めることができる、一つもしくは複数の追加の活性剤を含み得る。
【0041】
前記態様のさらなる態様において、医薬組成物、プロテアーゼプロ酵素、活性剤および任意の追加の活性剤は、協同して、単独で、またはどの組み合わせでも、坐薬の形態で提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1AからDは、光学密度492ナノメートルにおける、それぞれCaco2、HEK293、OE33およびPanc1細胞の細胞数の標準曲線のグラフを各々示している;
【図2】図2は、プロ酵素参照処方Bで処理したOE33細胞の顕微鏡写真を示している;
【図3】図3は、プロ酵素参照処方Bの濃度の範囲で処理したOE33細胞のグラフを示している;
【図4】図4AからCは、プロ酵素参照処方B、JおよびTでそれぞれ処理したPanc1細胞のグラフを各々示している;
【図5】図5AからCは、プロ酵素参照処方B、JおよびTでそれぞれ処理したCaco2細胞のグラフを各々示している;
【図6】図6Aおよび6Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のOE33細胞におけるβ-カテニンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図7】図7Aおよび7Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のOE33細胞におけるE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図8】図8Aおよび8Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のPanc1細胞におけるβ-カテニンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図9】図9Aおよび9Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のPanc1細胞におけるE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図10】図10Aおよび10Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のCaco2細胞におけるE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図11】図11Aおよび11Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のCaco2細胞におけるβ-カテニンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図12】図12は、プロ酵素参照処方Tでの処理後のPanc1細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図13】図13は、プロ酵素参照処方Tでの処理後のCaco2細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図14】図14は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるJBp1vPおよびDCMに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図15】図15は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図16】図16は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図17】図17は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるキモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図18】図18は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるTAおよびキモトリプシノーゲンに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図19】図19は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるCAおよびトリプシノーゲンに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図20】図20は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるTCおよびα-アミラーゼに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図21】線維性被膜を生じさせたマウスにおける、in vivo抗血管新生比較調査における群1から5の様々な処方の平均被膜重量を示す棒グラフを提供する;
【図22】図22Aおよび22Bは、HCT-15細胞におけるJBp1vPおよびメチルセレノシステインに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図23】図23Aおよび23Bは、HCT-15細胞におけるJBp1vPおよび2-デオキシグルコースに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図24】図24Aおよび24Bは、HCT-15細胞におけるJBp1vPおよびカプシエートに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図25】図25Aおよび25Bは、HCT-15細胞における2-デオキシグルコースおよびメチルセレノシステインに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【発明を実施するための形態】
【0043】
プロテアーゼプロ酵素の処方は、癌治療において治療的な利点を提供することが示されてきたが、癌細胞および悪性腫瘍へのプロテアーゼプロ酵素の作用メカニズムは、当業者間で完全に理解されていない。従って出願人は、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンを含むセリンプロテアーゼプロ酵素の処方で、異なる三種類の癌細胞株(Panc1、Caco2およびOE33)を治療し、効果およびメカニズムの調査を行った。注目すべき点は、プロテアーゼプロ酵素が、CaCo2腫瘍細胞株の分化(悪性細胞から非悪性細胞への転換可能性)、ならびに、すべての細胞株でE-カドヘリンおよびβ-カテニンの発現の上方制御に関わっていたという驚くべき発見であった。
【0044】
出願人は、セリンプロテアーゼプロ酵素の処方による転移の減少は、細胞間接着に関与するE-カドヘリンおよびβ-カテニン複合体の発現および形成の上方制御を通じて起こったと考えている。細胞間接着の増加の当然の結果として、悪性細胞は第一の腫瘍から漏れにくくなり、または離脱しにくくなり、転移が減少する。
【0045】
この新しい情報が利用できるようになるとともに、本願発明者は、癌治療において機能的相互関係を提供することが可能である、一つまたは複数の活性剤と組み合わせたプロテアーゼプロ酵素を含む処方を調査した。例えば、前記活性剤は、E-カドヘリンおよびβ-カテニンの発現という点において腫瘍細胞の異なる機能に影響することによって、前記の単独のプロテアーゼプロ酵素により高い癌治療活性を提供し得る。総合的な結果として、転移の減少、および/または、細胞死の増加、免疫認識または腫瘍細胞の分化を含み得る、改良された治療が提供される。すなわち、第一及び第二の態様の医薬組成物は、活性剤と組み合わせたプロテアーゼプロ酵素であり、組み合わせによって癌細胞(単数または複数)を標的とする、または、治療する、多細胞または多機能アプローチが可能にするプロテアーゼプロ酵素を提供する。例えば、前記プロテアーゼプロ酵素は、細胞間接着分子の発現を促進するため腫瘍細胞表面またはその近傍で活性化され、その結果として転移を減少させる一方、メチルセレノシステインなどの各々の活性剤は、細胞間レベルで、転移、分化または腫瘍細胞死(例えば細胞死、細胞壊死、免疫認識)の減少を手助けするように作用し得る。
【0046】
<プロテアーゼプロ酵素>
プロ酵素(チモーゲンとしても知られる)は酵素の特異的活性を持たない酵素の前駆体形態であり、従って典型的に酵素の不活性型形態と呼ばれている。プロ酵素は、望ましくない場所での非特異的な酵素活性を阻害または減少させるため、必要になるまで不活性状態を維持している。プロ酵素は、他の酵素によって対応する活性化酵素へと活性化され、複数の酵素の作用および自動活性化を含む活性化カスケードをもたらす。プロ酵素は、活性化酵素によってその後タンパク質分解を受ける癌細胞によって、選択的に活性化されると考えられる。
【0047】
本願明細書で使用される「プロテアーゼプロ酵素」という用語は、in situで活性型プロテアーゼへと活性化され得る、プロテアーゼの前駆体形態を意味する。前記プロテアーゼプロ酵素はヒトまたは動物由来であり得る。前記プロテアーゼ酵素は、タンパク質分解、E-カドヘリンおよび/またはβ-カテニンの発現の上方制御、細胞死、免疫認識促進、および、腫瘍細胞分化を含む、一つまたは複数の細胞効果を提供するよう作用し得る。前記プロテアーゼ酵素は、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、または、グルタミン酸プロテアーゼを含む。前記プロテアーゼは、エンドペプチターゼまたはエキソペプチターゼであり得る。エンドペプチターゼ(またはエンドプロテイナーゼ)は、非末端性アミノ酸(すなわち分子内)のペプチド結合を切断するタンパク分解性ペプチターゼであり、一方エキソペプチターゼは、分子末端のペプチド結合を切断する。
【0048】
ある実施態様において、前記プロテアーゼプロ酵素は、酵素クラス3.4のペプチターゼ由来の酵素前駆体であって、特に酵素クラス3.4.21がセリンエンドペプチターゼ、および、さらに特に酵素クラス3.4.21.1由来のキモトリプシン、酵素クラス3.4.21.2由来のキモトリプシンCまたは酵素クラス3.4.21.4由来のトリプシンである(Nomenclature Committee of International Union of Biology and Molecular Biologyの分類に従って分類されたクラス)。
【0049】
一つの実施態様において、前記プロテアーゼプロ酵素はセリンプロテアーゼプロ酵素である。セリンプロテアーゼ酵素は、トリプシンまたはキモトリプシン型の形態、スブチリシン型、アルファ/ベータヒドロラーゼ、およびシグナルペプチターゼを含む。セリンプロテアーゼは以下のセリンエンドペプチターゼを含み得る:キモトリプシン、メトリジン、トリプシン、トロンビン、凝固因子Xa、プラスミン、エンテロぺプチターゼ、アクロシン、α-溶解性エンドペプチターゼ、グルタミルエンドぺプチターゼ、カテプシンG、凝固因子VIIa、凝固因子IXa、ククミシン、プロリルオリゴペプチターゼ、凝固因子Xia、カニ亜目甲殻類、血漿カリクレイン、組織カリクレイン、膵エラスターゼ、白血球エラスターゼ、コラーゲン因子XIIa、キマーゼ、活性型補体C1r、活性型補体C1s、古典的補体経路C3/C5転換酵素、補体因子I、補体因子D、補体第二経路C3/C5転換酵素、セレビシン、ハイポダーミンC、リシンエンドペプチターゼ、エンドペプチターゼLa、γ-レニン、ベノムビンAB、ロイシンエンドペプチターゼ、トリプターゼ、スクテラリン、ケキシン、スブチリシン、オリジン、ペプチターゼK、サーモミコリン、テルミターゼ、エンドペプチターゼSo、t-プラスミノーゲン活性化因子、プロテインC(活性化型)、膵エンドペプチターゼE、膵エラスターゼEII、IgA特異的セリンエンドペプチターゼ、u-プラスミノーゲン活性化因子、ベノムビンA、フューリン、ミエロブラスチン、セメノゲラーゼ、グランザイムA、グランザイムB、ストレプトグリシンA、ストレプトグリシンB、グルタミルエンドペプチターゼII、オリゴペプチターゼB、カブトガニ凝固因子C、カブトガニ凝固因子B、カブトガニ凝固酵素、リプレッサーLexA、シグナルペプチターゼI、トガビリン、フラビビリン、エンドペプチターゼClp、プロタンパク転換酵素1、プロタンパク転換酵素2、ヘビベノム因子アアクティベーター、ラクトセプシン(lactocepsin)、アセンブリング(assembling)、ヘパシビリン、スパーモシン、セドリシン、xanthomonalisin、C末端プロセシングペプチターゼ、フィサロリジン(physarolisin)、マンナン結合レクチン会合セリンプロテアーゼ2、ロンボイド様プロテアーゼ、ヘプシン、ペプチターゼDo、HtrA2ペプチターゼ、マトリプターゼ、C5aペプチターゼ、アクアリジン1、サイト1プロテアーゼ、ペストウイルスNS3ポリプロテインペプチターゼ、ウマアルテリウイルスセリンペプチターゼ、感染性膵臓壊死ビルナウイルスVp4ペプチターゼ、SpoIVBペプチターゼ、角質層キモトリプシン様酵素、カリクレイン8、カリクレイン13、オビダクチン。
【0050】
ある特定の実施態様において、前記セリンプロテアーゼプロ酵素は、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンまたはそれらの混合物である。トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンのプロ酵素は、キモトリプシンクラス3.4.21.1もしくは3.4.21.2、または、トリプシンクラス3.4.21.4より選択された、または、その他任意の適する原料より選択された、酵素の前駆体であり得る。これらの酵素は商業的に入手可能であり、ウシまたはブタ起源のものであり得る。
【0051】
キモトリプシノーゲンは、以下のアミノ酸、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、およびロイシンの場所で、優先的にタンパク質を切断する、酵素キモトリプシンのプロ酵素形態である。キモトリプシンは、キモトリプシンA、キモトリプシンB(B1およびB2形態を含む)、キモトリプシンC、α-chymarophth、アバザイム(avazyme)、キマー(chymar)、キモテスト(chymotest)、エンゼオン(enzeon)、クイマー(quimar)、クイモターゼ(quimotrase)、α-キマー、α-キモトリプシンA、α-キモトリプシンと呼ばれ得る、または、それらを含み得る。キモトリプシンCは、ブタキモトリプシノーゲンCまたはウシのプロカルボペプチターゼAのサブユニットIIから形成され、以下のアミノ酸、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、およびアスパラギンの場所で、優先的にタンパク質を切断する。キモトリプシノーゲンは、キモトリプシノーゲンB1およびキモトリプシノーゲンB2を含む。
【0052】
トリプシノーゲンは、アルギニンおよびロイシンの場所で、優先的に切断するトリプシンのプロ酵素形態である。トリプシンは、α-トリプシン、β-トリプシン、コクナーゼ、
パレンザイム、パレンザイモール、トリプター、トリピュア、偽トリプシン、トリプターゼ、トリプセリン(tripcellin)、スパームレセプターヒドロラーゼβ-トリプシンと呼ばれ得る、または、それらを含み得て、一つのペプチド結合の切断によってトリプシノーゲンより形成される。さらなるペプチド結合の切断は、αおよびその他のアイソフォームを生じる。複合的なカチオン性およびアニオン性のトリプシンは、様々な脊椎動物の膵臓、ならびに、ザリガニ、昆虫(コクナーゼを含む)および微生物(Streptomyces griseus)を含む下等種族から単離することができる。消化中の通常の段階では、不活性トリプシノーゲンは、腸粘膜に存在するエンテロペプチターゼによってトリプシン酵素へと活性化され、塩基性アミノ酸/タンパク質のカルボキシル側でペプチド結合を切断するよう作用するセリンプロテアーゼとなる。
【0053】
前記のように、プロ酵素の形態は基本的にin situで活性化される(例えばin vivoおよびin vitro活性化)酵素の不活性型形態を提供する。例えば、前記プロ酵素の活性化(プロ酵素から活性型酵素への転換)は、腫瘍細胞表面と接触することで起こり得る。前記プロ酵素トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンは、腫瘍細胞と接触すると酵素トリプシンおよびキモトリプシンへと選択的に活性化され、正常細胞と接触すると活性化されない、と考えられている。プロ酵素の使用は、in situでの活性型酵素の提供に伴う、望ましくない反応または意図した標的腫瘍細胞に到達する前に酵素が失活するなどの問題を減らす。
【0054】
腫瘍細胞に関して、プロテアーゼ酵素は、細胞壁のペプチド鎖に存在するアミド結合を切断することによって、悪性細胞の細胞壁を破壊するよう作用することができる(タンパク質分解)。プロテアーゼ阻害因子はまた、非腫瘍細胞に存在して細胞壁を破壊する酵素活性を阻害または抑制しており、悪性腫瘍細胞には存在しないと理解されている。タンパク質分解活性の提供に加えて、プロテアーゼプロ酵素は、腫瘍細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリンの発現を上方制御することができる。細胞間接着は、細胞表面でのβ-カテニンおよびE-カドヘリン間の複合体形成または結合によって促進され、従ってβ-カテニンおよびE-カドヘリンの発現増大は、細胞間接着の促進につながり、その結果腫瘍細胞の転移が減少する。プロテアーゼプロ酵素は、免疫認識または分化の増大などの、その他の細胞活性を提供し得る。
【0055】
<活性剤>
第一の態様、第二の態様、第十二の態様および第十三の態様における活性剤は、癌治療のため、または、腫瘍細胞治療の改良のために細胞間活性を誘導するためである。
【0056】
一つの実施態様において、前記細胞間活性は、腫瘍細胞の細胞死、細胞壊死、免疫認識または分化である。
【0057】
多機能アプローチに関連して、ある実施態様において、前記活性剤は癌治療における前記プロテアーゼプロ酵素との機能的相互関係を提供することができる。例えば前記活性剤は、β-カテニンおよびE-カドヘリンの発現に関連するかどうかは不明である改良された癌治療活性を提供し得るが、その総合的な結果として、転移の減少および/または腫瘍細胞の細胞死、免疫認識もしくは分化の増加などの改良された治療を提供する。前記活性剤は、細胞内レベルで、転移の減少、分化、または腫瘍細胞死(例えば、細胞壊死、細胞死、免疫認識)を手助けするように作用し得る。
【0058】
一つの実施態様において、前記活性剤は、セレン化合物、バニロイド化合物および細胞質解糖系還元剤、ならびに任意でグリコシドヒドロラーゼ、から成る群の少なくとも一つより選択される。例えば、前記活性剤はセレン化合物から成り得る、または、セレン化合物、バニロイド化合物、グリコシドヒドロラアーゼ、および細胞質解糖系還元剤から成る活性剤の組み合わせとし得る。
【0059】
<セレン化合物>
ある実施態様において、「セレン化合物」という用語は、生物が利用可能なセレン源を提供することができる、セレンを含むあらゆる化合物を意味する。前記セレン化合物は、亜セレン酸塩およびセレン酸塩に含まれるミネラルなどの無機化合物、ならびに、メチルセレノシステインなどの有機化合物を含み得る。前記セレン化合物は、植物抽出物または商業合成で得られる。特定の実施態様において、前記セレン化合物は、血漿または細胞間液を介して容易に体に吸収され得る生物が利用可能なセレン源を提供する。
【0060】
一つの実施態様において、「セレン化合物」という用語は、2価または4価のセレン化合物を含むアミノ酸を意味する。アミノ酸は、イソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、より選択され得る。2価または4価のセレン化合物は、硫黄またはその他の2価の種へ置換されたアミノ酸中に存在し得る。この置換は、前記アミノ酸で天然に生じ得る。
【0061】
一つの実施態様において、「セレン化合物」という用語は、下記の式1の2価セレン化合物もしくは下記の式2の4価セレン化合物を含む化合物または医薬として許容可能なそれらの塩を意味する。
【0062】
【化1】
【0063】
[R1およびR3はそれぞれに独立して、H、OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルより選択される。C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルは、任意でハロゲン、-OH、-NH2、-C(O)OH、-C(O)R5より独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R2およびR4はそれぞれに独立して、H、-OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルより選択され、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルは、任意で-NH-、-N(C1-4アルキル)-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、およびC(NH2)H-C(O)O-より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)H、-C(O)-OR5、-N(C1-4アルキル)Hより、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアニルより独立して選択される0から3個の置換基で置換される;
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、および、シクロアルケニル、特にC1-12アルキルより選択される]
【0064】
上記実施態様において、以下が理解される。
C1-4アルキルおよびC1-12アルキルは、直鎖、分枝もしくは環状アルキル鎖またはそれらの組み合わせを意味する;ならびに、
C2-6アルケニルおよびC2-12アルケニルは直鎖、分枝もしくは環状アルケニル鎖またはそれらの組み合わせを意味する
【0065】
特定の実施態様において、R1およびR3はそれぞれ独立して、H、OHおよびC1-4アルキル、ならびに、さらに特にメチルより選択される。
【0066】
その他の特定の実施態様において、R2およびR4はそれぞれ独立して、H、OHおよび-C1-6アルキル-C(NH2)H-C(O)OH、ならびに、さらに特に-C1-3アルキル-C(NH2)H-C(O)OHより選択される。
【0067】
他の実施態様において、前記セレン化合物は、メチルセレノシステイン、メチルセレノール、メチルセレン酸、または、医薬として許容可能なそれらの塩もしくは混合物より選択される。特定の実施態様において、前記セレン化合物はメチルセレノシステインまたは医薬として許容可能なその塩である。
【0068】
前記セレン化合物は、癌治療への機能的相互関係または多機能アプローチの提供による、前記プロテアーゼプロ酵素の治療の有効性を改良するように、選択される。例えば、セレン化合物は、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識および/または分化を介して腫瘍細胞の治療を改良するための細胞間活性を誘導し得る。
【0069】
セレン摂取と癌の関連は数十年にわたって知られている。セレンは推奨食事許容量(Recommended Dietary Allowance (RDA))55マイクログラムの必須微量元素である。セレンは、抗酸化グルタチオンペルオキシターゼ、代謝酵素であるチオレドキシン還元酵素、および、甲状腺ホルモン活性化酵素ヨードチロニンデイオジナーゼ(iodothyronine deiodinase)など、様々な重要な酵素の活性化に必須である。セレン化合物は、細胞および肝臓の抗酸化活性(グルタチオンペルオキシターゼ)の促進を通じて、または、環境中の発癌物質の除去の促進(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)を通じて抗癌予防効果を提供すると考えられている。セレノメチオニンなどの有機セレンは、一日当たり約3500マイクログラムのレベルで有毒になり得るが、亜セレン酸ナトリウム/セレン酸ナトリウムなどの無機セレンは、約1500マイクログラムで有毒になり得る。癌治療プロトコルでは、セレンは一日当たり約900から2000マイクログラムの範囲で治療を行うが、長期服用においては一日400マイクログラムが安全である。
【0070】
セレンタンパク酵素は、一日当たりわずか90マイクログラムのセレンの食事摂取で通常飽和(活性は最大化されている)しており、最適な抗癌服用量よりもはるかに低いが、セレンの抗癌効果は潜在的な毒性のある服用レベルに近い服用量で起こることが示されている。
【0071】
亜セレン酸塩/セレン酸塩などの無機化合物は、セレノメチオニンなどの典型的な有機化合物よりも、癌治療において有効であることが示されている。亜セレン酸塩/セレン酸塩化合物は、癌細胞および正常細胞の両方に毒性があり、選択性少なく侵襲性の高い細胞壊死(細胞死の反対)機構を通じて機能する、セレン化水素へと代謝される。セレノメチオニンは、より毒性は少ないが、抗癌活性を持たない全身のタンパクに広く取り込まれる。
【0072】
メチルセレノシステイン(Se-メチルセレノシステインとしても知られる)は、非常に低い毒性および体内蓄積で、細胞周期の進行および前癌状態の乳腺病変の増殖を妨げ、癌細胞株の細胞死を誘導する化学抗癌剤である。メチルセレノシステインは、高セレン土壌で栽培された、ニンニク、野生ネギ、タマネギおよびブロッコリーを含む様々な植物において天然に形成され、メチルセレノシステイン豊富な食物は、過剰な組織への蓄積や毒性がなく、優れた抗癌活性を示す。メチルセレノシステインは、ベータ-リアーゼ酵素によってメチルセレノールへと転換される。腫瘍細胞に対する活性という点では、メチルセレノールは血管新生を阻害し、細胞死を引き起こすとして知られているが、毒性が低く、容易に体内から除去される。
【0073】
以下の化学構造式は様々なセレン化合物の構造式である:
【0074】
【化2】
【0075】
上記の実施態様に記載のセレン化合物は、すべての医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、結晶形態、ジアステレオマー、立体異性体(例えばシスまたはトランス異性体)、互変異性体、プロドラッグ、代謝産物およびそれらの鏡像異性体を含み得る。
【0076】
<バニロイド化合物>
ある実施態様において、「バニロイド化合物」という用語は、バニリルまたはバイロイル型の部分もしくはファーマコアを含む任意の化合物を意味する。前記バニロイド化合物は、既知の化学的分類の、レシニフェラノイド(resiniferanoid)、カプサイシノイド(capsaicinoid)、不飽和ジアルデヒドおよびトリプレニルフェノールなどの天然に存在するバニロイドを含む。例えば、これらの既知の化学的分類に由来する化合物は、レシニフェラトキシン、カプサイシン、イソバレラールおよびスクチジェラール(scuitigeral)を各々含む。その他のバニロイド化合物の例は、バニリン、バニリン酸、ノニバミド、オルバニル、ジヒドロカプサイシンおよびバニリルマンデリン酸を含む。前記バニロイド化合物は、カプサイシンなどの天然に存在する化合物、または半合成もしくはカプサゼピンなどの全合成バニロイドを含む。
【0077】
他の実施態様において、「バニロイド化合物」という用語は、下記の一般式IIIの化合物、または医薬として許容可能なそれらの塩を意味する。
【0078】
【化3】
【0079】
[R1およびR3はそれぞれに独立して、H、OH、OCH3、C(O)H、OC2-6アルキル、OC2-6アルケニル、SH、SC1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルおよびN(C1-6)2より選択され;
R3およびR4はそれぞれ独立して、H、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルより選択され、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルは、任意で-NR6-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-C(NR6R6)H-、C(O)O-、-C(S)-、-C(S)NR6-および-NR6-C(S)-NR6より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、-C(S)-、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキニルおよび任意に置換されたアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換される;ならびに、
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、特にC1-12アルキルより選択される;ならびに、R6はH、C1-6アルキルより選択される;ならびに、R3およびR4は、O、S、Nより選択される0から3個のヘテロ原子を含み、任意で置換された炭素原子3から8の不飽和または飽和環を形成するよう結合され得る]
【0080】
上記の実施態様において、以下が理解される。
C2-6アルキルおよびC1-20アルキルは、直鎖、分枝もしくは環状アルキル鎖またはそれらの組み合わせ;
C2-6アルケニルおよびC2-20アルケニルは直鎖、分枝もしくは環状アルケニル鎖またはそれらの組み合わせ;
C2-20アルキニルは直鎖、分枝もしくは環状アルキニル鎖またはそれらの組み合わせ;
任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアルキルシクロアルケニルおよび任意で置換されたアリールは、ハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)-、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアリール、ならびに例えばレシニフェラトキシンを含む、より選択される一つまたは複数の基での、任意の置換を意味する。
【0081】
特定の実施態様において、R1およびR2は、それぞれ独立してOH、C(O)H、OCH3より選択され、さらに特にOH、OCH3より選択される。
【0082】
他の実施態様において、R3は、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルケニル、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルキルより選択され、さらに特に、-CH2-NH-C(O)-C4H8-CH=CH-CH(CH3)CH3より選択される。この実施態様において、アルキルまたはアルケニル鎖は直鎖または分枝であり得ると理解される。
【0083】
他の実施態様において、R3は、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルケニル、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルキルより選択され、さらに特に、-CH2-O-C(O)-C4H8-CH=CH-CH(CH3)CH3より選択される。この実施態様において、アルキルまたはアルケニル鎖は直鎖または分枝であり得ると理解され得る。
【0084】
他の特定の実施態様において、R4はHである。
【0085】
前記バニロイド化合物は、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、およびノルジヒドロカプサイシンより選択され得る。
【0086】
好ましくは、前記バニロイド化合物は、カプシエイト、ジヒドロカプシエイトおよびノルジヒドロカプシエイトより選択される。一つの実施態様において、バニロイド化合物はカプシエイトである。好ましくは、カプシエイト、ジヒドロカプシエイトおよびノルジヒドロカプシエイトは、実質的にカプサイシンを含まない形で、例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%または99.9%の純度で提供される。一般的にチリ抽出物として得られるカプシエイトは、通常少量のカプサイシンおよびその他類似の構造の化合物を含むと理解される。カプサイシンは、望ましくない炎症応答(広範囲に局在するヒスタミン放出の誘発による)を引き起こし、従って、特定の投与方法は、特定の化合物、または、特定の必要に合わせて調製された特定の純度もしくは量のそれら化合物にとって望ましくない可能性がある。高純度のカプシエイト源の一つは、味の素株式会社から得られる甘唐辛子「CH-19」より提供される。
【0087】
他の実施態様において、前記バニロイド化合物は、8-メチル-N-バニリル-6-ノン-エナミド;N-バニリルノナンアミド;N-(9-デセニル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニルアセトアミド;N-(9Z-ドデセニル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルアセトアミド; N-(9Z-テトラデセニル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルアセトアミド; N-((4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)−メチル)-9-デセンアミド;N-((4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)−メチル)-9Z-ドデセンアミド; N-((4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)−メチル)-9Z-テトラドデセンアミドおよびN-((4-(3-フェニル)−2(S)-2-アミノ-1-プロポキシ)-3-メトキシフェニル)-メチル)-ノナンアミド、より選択される。
【0088】
他の実施態様において、前記バニロイド化合物はカプサゼピン、すなわち、N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]−7,8-ジヒドロキシ-1,3,4,5-テトラヒドロ-2-ベンズアゼピン-2-カルボチオミド、である。
【0089】
多くのバニロイド化合物、とりわけカプサイシンは、高温や酸性pHなどの侵害性刺激に対して自然に応答するイオンチャネルである、一過性受容体ポテンシャルバニロイドタイプ1(TRPV1)に結合する。TRPV1に作用するその他のバニロイドは、レシニフェラトキシンおよびオルバニルを含む。
【0090】
バニロイド化合物は、カプシノイドとしても知られている、カプサイシンおよびカプシエイトを含む。カプシノイドは、カプシエイト、ジヒドロカプシエイトおよびノルジヒドロカプシエイトを含み、チリペッパー中に天然に存在する基質である。それらは、ホットペッパーの辛みを引き起こす化合物であるカプサイシンと構造的には類似しているが、カプシノイドは概してこの特徴を欠いており、概算「辛み閾値」はカプサイシンの約1/1000である。
【0091】
カプサイシンは、(E)-N-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル]-8-メチル-6-ノンエンアミドであり、そのアナログはカプサイシンの6,7-ジヒドロ誘導体であるジヒドロカプサイシンを含む。前記の通り、カプシノイドは、カプシエイトすなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル(E)-8-メチル-6-ノナノエイト、ジヒドロカプシエイトすなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル 8-メチルノナノエイト、および、ノルジヒドロカプシエイトすなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル 7-メチルオクタノオエイトを含む。これらの化合物のいくつかの化学構造式を以下に示す:
【0092】
【化4】
【0093】
カプシエイトは、細胞死および腫瘍発生の減少を提供することができる。カプシエイトは、ミトコンドリアを介して細胞の還元状態に影響することによって細胞死を誘導すると考えられている。
【0094】
前記バニロイド化合物は、癌治療において機能的相互関係と多機能アプローチの提供によってプロテアーゼプロ酵素の治療効果を促進するように選択される。例えば、バニロイド化合物は、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識および/または分化を介して、腫瘍細胞治療を改良するための細胞間活性を誘導し得る。
【0095】
下記の化学構造はバニリン、バニリン酸、およびレシニフェラトキシンである:
【0096】
【化5】
【0097】
前記実施態様に記載のバニロイド化合物は、すべての医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、結晶形態、ジアステレオマー、立体異性体(例えばシスまたはトランス異性体)、互変異性体、プロドラッグ、代謝産物およびそれらの鏡像異性体を含み得る。
【0098】
<グリコシドヒドロラーゼ>
ある実施態様において、「グリコシドヒドロラーゼ」という用語は、二つまたはそれ以上の炭水化物間、または、炭水化物と炭水化物ではない部分の間のグリコシド結合を加水分解することができる任意の酵素を意味する。グリコシドヒドロラーゼは、クラス3.2.1由来の酵素、特にクラス3.2.1.1から3.2.1.3由来の酵素とし得る。ある実施態様において、グリコシドヒドロラーゼはアミラーゼである。アミラーゼは、α-アミラーゼ、β-アミラーゼおよびγ-アミラーゼより選択され、より好ましくはアミラーゼ2、アミラーゼアルファ1A、アミラーゼアルファ1B、アミラーゼアルファ1C、アミラーゼアルファ2A、アミラーゼアルファ2Bより選択され得る。ある実施態様において、アミラーゼはα-アミラーゼである。
【0099】
アミラーゼはグリコシドヒドロラーゼであり、α-1,4-グリコシド結合に作用する。アミラーゼは、腫瘍細胞の表面糖タンパクに存在する炭水化物を分解する。前記アミラーゼは、癌治療において機能的相互関係と多機能アプローチの提供によってプロテアーゼプロ酵素の治療効果を促進するように選択される。前記アミラーゼは、ヒト、動物、バクテリアまたは植物起源とし得る。例えば、α-アミラーゼはAspergillus oryzae、Bacillus licheniformis、オオムギ麦芽、家畜ブタ(hog)膵臓、ヒト膵臓、ブタ(porcine)膵臓およびTriticum aestivumより得られ得る。
【0100】
<細胞質解糖系還元剤>
ある実施態様において、「細胞質解糖系還元剤」という用語は、細胞質解糖系で還元することができる剤を意味する。他の実施態様において、細胞質解糖系還元剤は、2-デオキシ-D-グルコースもしくは医薬として許容可能な塩、エステル、またはそのプロドラッグである。
【0101】
前記細胞質解糖系還元剤は、癌治療において機能的相互関係と多機能アプローチの提供によってプロテアーゼプロ酵素の治療効果を改良するように選択される。
【0102】
前記細胞質解糖系還元剤は、解糖系の遮断剤または阻害剤、例えば、嫌気代謝細胞特異的でラクトースデヒドロゲナーゼを阻害することができるオキサマート、または、解糖系においてグリセルアルデヒド3-ホスフェートデヒドロゲナーゼを阻害することができるヨードアセテート、であり得る。
【0103】
解糖系阻害剤は、2-デオキシ-D-グルコースの脂溶性のアナログまたはプロドラッグを含み得る。脂溶性のアナログは、エステル、エーテル、ホスホエステルのようなヒドロキシル基の誘導体を含む。その他は、ヒドロキシル基の除去や、フッ素ならびにヨウ素などのハロゲン置換、またはチオールならびにチオアルキル基置換を含む。リポソーム製剤化2-デオキシグルコースおよびそのアナログ、または酵素的開裂可能な2-デオキシグルコース誘導体で提供され得る。例は、C-1位置のグリコシドを有するグルクロニドを含む。2-デオキシ-D-グルコースのモノおよびジエステルなどの、2-デオキシ-D-グルコースのプロドラッグとして機能し得る2-デオキシD-グルコースの脂溶性アナログは、吉草酸エステル、ミリスチン酸エステル、および、パルミチン酸エステルなどを含み得る。
【0104】
解糖系阻害剤はまた、6-デオキシ-D-グルコース、6-フルオロ-D-グルコース、6-O-メチル-D-グルコース、6-チオ-D-グルコース、2-デオキシ-D-グルコースそのものおよびそのアナログ、2-デオキシ-2−ハロ-D-グルコース(例えば2-ブロモ、2-フルオロもしくは2-ヨード-D-グルコース)、3-デオキシもしくは3-フルオロ-D-グルコース、または、4-デオキシもしくはならびに4-フルオロ-D-グルコース、2-フルオロもしくは3-フルオログリセルアルデヒドまたはグリセレートグリセリン酸、例えば、3-フルオロ-2-ホスホグリセレートホスホグリセリン酸、2-フルオロ-プロピオン酸もしくはその塩、2,2-ジフルオロ-グプロピオン酸、3-ハロ-ピルベート、3-ハロプロピオン酸、2,2-チオメチル酢酸、1-デオキシ-D-グルコース、5-チオ-D-グルコース、3-フルオロD-グルコースおよび4-フルオロ-D-グルコース、2-フルオロ、2-ヨード、2-チオ、もしくはまたは、2-メトキシ-グリセルルデヒドもしくグリセレートはグリセリン酸、3-フルオロ、3,3-ジフルオロ、エノラーゼ 3-ヨード-、3-カルボキシ-および3-チオグリセレートを含み得る。
【0105】
一つの実施態様において、「解糖系還元剤」という用語は、下記式IVの化合物または医薬として許容可能なそれらの塩、プロふぉらああっぐもしくはエステルを意味する:
【0106】
【化6】
【0107】
[XはOおよびSより選択され;
R1かは水素、ハロゲン、OH、-OC(O)R6より選択され;
R2からR4はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、-OC(O)R6より選択され;
R5はハロゲン、OH、SH、-OC(O)R6より選択され;および
R6はC1-20アルキルである]
【0108】
好ましくは、ハロゲンは、F、BrまたはI、より好ましくはFを意味する。以下の様々な実施態様それぞれは、各々またはそれらの任意の組み合わせで用いられる。XはOである。R1はOHである。R2はHまたはFである。R3はOHまたはFである。R4はOH、FまたはSHである。R5はOH、FまたはSHである。
【0109】
他の実施態様において、XはOであり、R1はOHより選択され、R2はH、Br、F、I、OH、-C(O)-OR6より選択され、R6はC1-20アルキルより選択され、およびR3からR5はOHである。好ましくは、R2はHである。
【0110】
<追加的な活性剤>
第一の態様、第二の態様、第十二の態様および第十三の態様の医薬組成物は、さらにその他の活性剤を含み得る。これらの活性剤の添加は癌治療を改良し得る。このアプローチを用いると、低用量の各剤で治療効果を達成し得る。従って、不都合な副作用の可能性が減る。また、望ましくない副作用を減らし、より高い用量での各剤の使用も可能であり得る。追加的な活性剤は、補助的、追加的、または改良された治療機能を提供し得る。
【0111】
第一の態様、第二の態様、第十二の態様および第十三の態様の医薬組成物は、一つまたは複数の、補助的、追加的、または改良された治療機能を提供する以下の活性剤を含み得る:
・ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェノール、トコトリエノール)、ポリフェノール抗酸化物質(レスベラトロル、フラボノイド)、カロテノイド(リコペン、カロテン、ルテイン)、を含む抗酸化物質。レスベラトロルは、抗腫瘍および化学抗癌に有効性を示し、特にトランスレスベラトロルはヒト乳癌の治療に有効である。
・L-スレアニン(threanine)、すなわちガンマ-グルタミルエチルアミドまたは5-N-エチル-グルタミンであって、グルタミン酸アナログまたはアミノ酸誘導体。
・クルクミノイド、クルクミンまたはその誘導体。
・ベータグルカン(1-3,1-6ベータグルカン)
・水素シアニド(HCN)、例えば、OSCNイオンを生じるLPOはタンパク分解を加速する。
・フラバノール、キサントフィル、リミノイドを含む植物性栄養素抽出物。
・プロテアーゼ酵素阻害剤、例えばウシ膵臓トリプシン阻害因子としても知られるアプロチニン。医薬組成物と組み合わせた酵素阻害因子の使用は、腫瘍細胞から離れたシステム/体に存在し得る、任意のプロテアーゼの阻害を促進し得る。従って、このような酵素の望ましくない効果を減らすことができる。
・成長因子(例えば、BMP、TGF-P、FGF、IGF)。
・サイトカイン(例えばインターロイキンおよびCDF)
・抗生物質
・腫瘍細胞壊死因子(TNF)、酸性もしくは塩基性の繊維芽細胞成長因子(FGF)または肝細胞成長因子(HGF)の血管新生活性を阻害または中和することができる抗体、組織因子、プロテインCまたはプロテインSの凝固活性を阻害または中和する抗体、HER受容体に結合することができる抗体。
・癌治療に役立つその他任意の活性剤。
【0112】
その他の追加的な治療用の剤が、第一および第二の態様においてプロテアーゼプロ酵素または活性剤と組み合わせて使用される際は、Physician Desk References(PDR)で述べられている通りの、そうでなければ当業者によって決定された通りの、用量で使用され得る。
【0113】
<用語>
プロテアーゼプロ酵素に関連する「活性化」は、プロテアーゼプロ酵素を、腫瘍細胞の細胞間接着を促進することができる、腫瘍細胞のタンパク質分解効果をもつ、または、腫瘍細胞の細胞死、分化もしくは免疫認識を誘導することができる形態へ、in situ (例えば、in vitroまたはin vivo)で変換させること意味する。
【0114】
「細胞死」は様々な刺激で誘導され得る、通常制御された、規則正しい、慎重な、細胞の自己破壊過程である。細胞死は、周辺組織を損傷し炎症を引き起こす細胞壊死よりも侵襲性が少ない。
【0115】
「血管新生」は、血管の形成、特に既存の血管から新しい毛細血管が増殖することである。癌細胞が生存するためには、正常細胞よりも著しく多くの血液供給を必要とするため、血管新生は癌細胞が腫瘍へと成長するために必須である。血管新生または血管新生イベントは、多くの病理学的な過程、とりわけ腫瘍成長および転移に関与しており、ならびに、糖尿病の眼網膜症、乾癬および関節症などの、血管増殖特に微小血管系での増殖が増加するその他の疾患に関与している。
【0116】
「細胞周囲の」という用語は、細胞周辺の組織、細胞周辺の組織上、細胞近傍、または細胞周辺の組織内を意味する。さらに特に、この用語は腫瘍細胞周辺の組織または組織内を意味する。
【0117】
「細胞内の」という用語は、細胞の内側を意味する。
【0118】
「分化」、「分化する」という用語またはその類似の変形は、細胞がより特殊化して異なる機能を得るようになる能力を意味する。ある基準において、悪性腫瘍細胞は脱分化した細胞であると考えられる。それらは現在特殊化されていない、以前特殊化されていた細胞であり、脱分化の過程でこれら悪性細胞の成長を制限する体の能力が妨げられたことを意味する。従って、腫瘍細胞の分化は、少なくとも部分的に、悪性細胞の健康または正常細胞への形質転換を伴い、これは制御不能な成長、侵襲および/または転移の性質を減少させるという方法での悪性細胞の形質転換を意味する。
【0119】
「免疫認識」という用語は、免疫機構による認識、および、それに続く免疫機構による除去または排除を意味する。免疫機構の役割の一つは、腫瘍を同定し除くことである。腫瘍の形質転換した細胞は、正常細胞には見られない抗原を発現する。免疫機構にとってはこの抗原が異物のように判断され、抗原の存在により免疫細胞による形質転換した腫瘍細胞への攻撃が引き起こされる。癌細胞のいくつかの形態は、免疫認識を阻害または減少させる能力を有する。
【0120】
「転移」「転移する」という用語またはその類似の変形は、一つの器官または体の部分から、その他の隣接していない器官または体の部分へと病気が拡散することである。悪性腫瘍細胞および感染は、転移能を有する。例えば、癌細胞は第一の腫瘍から剥離または離脱し、リンパ管および血管に入り、血流にのって循環し、体の他の場所に再着床することができる。転移に続いて形成された、原発腫瘍由来の新しい腫瘍は二次または転移腫瘍と呼ばれ、原発または最初の腫瘍と同じ細胞から構成される。例えば、肺に転移した乳癌は異常な肺細胞ではなく、異常な胸細胞を含む二次腫瘍を形成し、乳癌ではなく転移乳癌と呼ばれる。
【0121】
「悪性」「悪性の」という用語またはその類似の変形は、再生不良性、侵襲性、および転移性という特徴的な性質を含み、成長および発達を続けるという、癌細胞および腫瘍の傾向のことである。例えば、悪性腫瘍は、成長の中でその悪性が自己限定されず、隣接組織へ侵襲することができ、離れた組織にまで拡散(転移)し得るが、良性腫瘍はそれらの性質のいずれも持たない点で、悪性腫瘍は非癌性の良性腫瘍とは対照的である
【0122】
「不全」とは、細胞において分化の逆であり、悪性腫瘍の特徴である。この用語は、増殖能が増してゆくことも包含する。不全は、分化の喪失、脱分化の増大、正常細胞に存在する構造的および機能的な分化の喪失が増すことを含む。
【0123】
「タンパク質分解」は、プロテアーゼと呼ばれる細胞酵素による、または、分子内消化による、方向性を持ったタンパク質分解(消化)である。さらに特に、タンパク質分解とは、プロテアーゼ酵素開裂、タンパク質中のアミド/ペプチド結合の加水分解による、タンパク質の分解である。
【0124】
「細胞間接着」「細胞接着分子」という用語またはその類似の変形は、一般に細胞外表面に局在し、細胞とその他の細胞または細胞群を接着することに関わる(その例は、E-カドヘリンおよびβ-カテニン)、様々な既知の細胞間接着分子である。異なる細胞型は、これら分子の代替的な形態を有し得る。これらの分子は、さらに、細胞外マトリックスとの接着に関与し得る。その他の細胞間接着分子は、カドヘリン、インテグリン、セレクチン、およびイムノグロブリン細胞接着タンパクファミリーより選択され得る。
【0125】
「ホモログ」および「機能的に同等な」という用語は、組み換え分子に加えて、同じタンパク質ファミリー内の既知の分子などの、ほかのタンパク質またはバリアントが含まれるべきである。
【0126】
「上方制御」によって、これが、以前に決定された基準と比較して、分子の発現または活性のレベルが上昇していることを含むということが理解され得る。これは、基準より少なくとも5%の上昇であり得る。しかしながら特に好ましくは、基準と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、もしくは50%またはそれ以上、上方制御される。前記基準は、治療前の分子の発現または活性、または、ある細胞型について正常ならびに期待されるレベルに従うなど、様々な方法で決定され得る。
【0127】
<方法と使用>
第五から第九の態様ならびに第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、一つまたは複数の以下の効果を含み得る:悪性腫瘍の再発の減少、悪性腫瘍の転移の減少、腫瘍の数または大きさの減少、腫瘍細胞の分化、細胞接着を誘導して転移を減少させるE-カドヘリンおよびβ-カテニンの悪性腫瘍における発現、腫瘍細胞における免疫認識阻害能の低下。
【0128】
一つの実施態様は、第一および第二の態様の治療的に有効な量のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を、一定期間および癌細胞の分化を誘導するために十分な条件下で対象に投与することを含む、対象中の癌細胞を分化させる方法を提供する。第五および第六の態様の使用ならびに第七の態様の方法は、癌細胞の分化を含み得る。ある特定の実施態様において、癌細胞の分化は直腸結腸癌細胞の分化である。
【0129】
ある実施態様において、第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、転移癌の治療の際に用いられると有効である。転移は、病気が体の他の部分に拡散する癌の段階である。この段階が、その他の治療の成功率が顕著に低下および対象の生存率の低下を伴っているので、転移の阻害または遅延は、特に重要である。他の実施態様においては、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤の、対象への有効な量の投与を通じた、癌細胞における細胞間接着分子の上方制御による、安全で有効に、癌転移を阻害する手段、遅延する手段、または、改善する手段が提供される。
【0130】
「治療すること」または「治療」は、治療用の処理および予防または予防方法の両方であり、その目的は、癌またはその拡散(転移)の予防、回復、減少または遅延(減速)である。
【0131】
「予防すること」「予防」「予防手段」または「予防方法」は、発病の防止、または、疾患、病気、障害または異常や徴候を含む表現型の発生の阻害、防衛、防御である。予防が必要な対象は、その状態が進行する傾向にあり得る。
【0132】
「改善する」または「改善」は、疾患、病気、障害、または異常や徴候を含む表現型の減少、低下、排除である。治療が必要な対象は、すでにその状態にある、または、その状態に向かう傾向、もしくは、予防されている状態にあり得る。
【0133】
「対象」は頬乳類を含む。哺乳類は、ヒトまたは家畜、動物園の動物もしくはペットであり得る。本願発明の方法は、ヒトの医療的治療に適するよう特に考えられているが、イヌおよびネコなどのペット、ならびに、ウマ、ウシおよびヒツジなどの家畜、または、ネコ科、イヌ科、ウシ科および有蹄動物などの動物園の動物を含む獣医の治療にも適用可能である。対象は、癌もしくはその他の疾患に苦しんでいる、または、癌もしくはその他の疾患に苦しんでいない(すなわち検出できる病気がない)。
【0134】
「治療的に有効な量」とは、癌またはその拡散(転移)を治療できる、予防できる、または改善できる、組成物または組成物中の剤もしくは化合物の量である。治療的に有効な量は、実験的および癌治療に関連した日常的な方法で決定され得て、結果として寿命を延長し得る。
【0135】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、新生物および関連状態、癌、腫瘍、悪性および転移の状態の治療を含み得る。第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤で治療され得る固形腫瘍および転移のある組織および器官は、胆管、嚢、血液、脳、胸、顎、大腸、子宮内膜、食道、頭、首、腎臓、咽頭、肝臓、肺、髄質、メラニン、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎、網膜、皮膚、胃、精巣、甲状腺、尿管、および子宮を含むがこれらに限定されない。
【0136】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、特に以下の型の癌および転移癌の治療に適している:膵臓癌、食道癌、直腸結腸癌、腸癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、乳癌、悪性メラノーマまたは肺癌。
【0137】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十もしくは第十五の方法は、例えば、腫瘍細胞の細胞死、細胞間接着、分化および免疫認識の増大(免疫機構による標的化および除去)による、癌治療の多機能アプローチを提供し得る。従って、免疫機構を抑制または障害し得るその他の治療がない治療に有効である。
【0138】
ある実施態様において、第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、E-カドヘリンおよびβ-カテニンの発現レベルが低い対象の治療を含む。さらなる患者群はまた、特に、上記態様の方法または使用による治療に適すると同定され得る。
【0139】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、増殖性疾患、例えば腫瘍の、治療または予防を対象とするその他の従来の抗癌治療的アプローチで補われ得る。例えば、防止のための癌予防、手術後の癌再発および転移の予防、ならびに、その他従来の癌治療のアジュバントとして、このような方法が用いられ得る。
【0140】
〈医薬組成物、処方および投与経路〉
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、例えば、従来の固体もしくは液体のビヒクルまたは希釈液を用いて、望ましい投与に適した形の医薬添加物(例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香料、その他)と共に、薬剤処方の当業者にはよく知られた技術に従って処方され得る。
【0141】
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、任意の適切な方法、(例えば、錠剤、カプセル、顆粒または粉などの形態の経口投与;舌下投与;口腔投与;皮下、静脈、筋肉内、または、脳槽内注射もしくは注入技術などの非経口投与(例えば無菌で注入可能な、水性もしくは非水性の溶液または懸濁液);吸入スプレーなどによる経鼻投与;クリームもしくは軟膏形態などの局所投与、または、坐薬形態などの直腸内投与;)によって、非毒性の、医薬として許容可能はビヒクルまたは希釈剤を含む投与単位の処方で、投与され得る。それらは、例えば、皮下への移植、カプセル球、または浸透圧ポンプなどのデバイスによる、速やかな放出または延長した放出に適した形態で投与され得る。
【0142】
ヒトなどの霊長類に加えて、様々な他の哺乳類が第十の態様の方法に従って治療され得る。例えば、哺乳類はウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたはその他のウシ類、ヒツジ類、ウマ類、イヌ類、ネコ類、げっ歯類もしくはマウスの種類を含むが、これらに限定されず、治療され得る。
【0143】
本願明細書において使用される「組成物」という用語は、プロテアーゼプロ酵素および一つまたは複数の活性剤、ならびに、任意の一つまたは複数の追加の活性剤を含む製品と、結果としてこれらから直接的または間接的にできる任意の製品を含むことを意図している。
【0144】
本願明細書において使用される「医薬として許容可能な」という用語は、担体、希釈液または添加剤が、その受容者に有害でないことを意味する。
【0145】
「投与」および/または「投与すること」という用語は、治療を必要とする個体に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0146】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物ならびにその調製物または処方は、その組成物の成分、すなわち、前記プロテアーゼプロ酵素とセレン化合物および/またはバニロイド化合物を含む一つまたは複数の活性剤を、一緒に混合することによって調製され得る。さらなる実施態様において、成分は本願明細書に記載の追加の活性剤を含み得る。混合は、連続して、または、同時に行われ得る。
【0147】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、便宜的に投与単位の形態で存在し得て、医薬の当業者によく知られた任意の方法で調製され得る。すべての方法は、前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素を、一つまたは複数の補助的な成分から成る担体と会合させる段階を含む。一般的に、医薬組成物は、均一および密接に活性剤とプロテアーゼプロ酵素が、液体の担体もしくは細かく粉砕された固体の担体またはその両方と会合するよう調製され、それから、必要に応じて望ましい処方に製品が成型される。前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は、一回または複数回投与後の病気の推移または状況において、望ましい効果を生むのに十分な投与単位で提供される。
【0148】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、経口使用(例えば、錠剤、トローチ、ドロップ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、ハードもしくはソフトカプセル、または、シロップもしくはエリキシル剤)に適した形態であり得る。経口使用を意図した組成物は、医薬製造の当業者によく知られた任意の方法に従って調製され得る。このような組成物は、医薬としてエレガントで、口あたりの良い調製物を提供するため、甘味料、香料、着色料および保存料からなる群より選択された一つまたは複数の剤を含み得る。錠剤は、錠剤製造に適した、無毒性の医薬として許容可能な賦形剤と混合した、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む。これら賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギニン酸;結合剤、例えばスターチ、ゼラチンまたはアカシア、および、平滑剤、例えばマグネシウムステアレート、ステアリン酸またはタルク、であり得る。錠剤はコートされていない、または、既知の技術によって崩壊と消化管への吸収を遅くするようコートされ得て、その結果長時間にわたって持続する作用を提供し得る。例えば、グリセロールモノステアレートまたはグリセロールジステアレートなどの時間遅延原料が使用され得る。それらはまた、制御放出のための浸透圧治療錠剤を形成するようコートされ得る。
【0149】
経口使用の処方はまた、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤は不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合しているハードゼラチンカプセル、または、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤は水または油媒体(例えばピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油)と混合しているソフトゼラチンカプセルとして提供し得る。
【0150】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合液中に前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素を含む。このような賦形剤は、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギニン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴムおよびアカシアゴム);分散および湿潤剤は天然に存在するリン脂質であり得る(例えばレシチン、または、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物、例えばポリオキシエチレンスレアレート、または、エチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、エチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレート、または、エチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレート)、である。水性懸濁液はまた、一つまたは複数の防腐剤(例えば、エチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート)、一つまたは複数の着色料、一つまたは複数の香料、および、スクロースもしくはサッカリンなどの一つまたは複数の甘味料を含み得る。
【0151】
油性懸濁液は、野菜油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油)または液体パラフィンなどのミネラルオイル中で、前記活性剤とプロテアーゼプロ酵素を懸濁することによって処方され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィン、またはセチルアルコールを含み得る。上記に説明したものなどの甘味料、および、香料は口あたりの良い経口調製物を提供するために用いられ得る。これらはアスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存され得る。
【0152】
水の添加で水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤および一つまたは複数の保存料との混合で、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を提供する。適切な分散または湿潤剤および懸濁剤は、上記ですでに例証された。追加の賦形剤、例えば甘味料、香料および着色料もまた、存在し得る。
【0153】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物はまた、水中油系エマルジョンの形態であり得る。油相は、野菜油例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または、ミネラルオイル例えば液体パラフィン、またはそれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム(例えばアカシアまたはトラガカントゴム)、天然に存在するリン脂質(例えば大豆、レシチン)、ならびに、脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)、ならびに、前記部分エステルのエチレンオキシドとの縮合産物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。前記エマルジョンはまた、甘味料および香料を含み得る。
【0154】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味料、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースとともに調製され得る。それらはまた、鎮痛剤、防腐剤ならびに香料および着色料を含み得る。
【0155】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、無菌注入可能な水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、既知の技術に従って、上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方され得る。第一および第二の態様の医薬組成物はまた、無毒非経口で許容可能な希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール中の、無菌注入可能な溶液または懸濁液であり得る。使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液および生理食塩水がある。さらには、無菌、固体油は従来、溶媒または懸濁剤として用いられる。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無菌固体油が使用される。さらには、オレイン酸などの脂肪酸は注入剤の調製において使用される。
【0156】
ある実施態様において、第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、薬剤の直腸投与のための坐薬として処方される。これらの処方は、第一および第二の態様の活性剤およびプロテアーゼプロ酵素と、常温で固体だが直腸温度で液体であり従って溶解して直腸内へ薬剤を放出する無刺激性の賦形剤との混合によって調製され得る。この原料には、ココアバターおよびポリエチレングリコールを含む。直腸投与は、酵素の経口投与に関与する胃腸管において、腸肝初回通過効果を除くために用いられ得る。
【0157】
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、リポソーム中に処方され得る。当業者に既知の通り、リポソームは一般的にリン脂質および他の脂質物質に由来する。リポソームは、単層または多層の、水性媒質中に分散した水和液体結晶から形成される。任意の、無毒性で生理学的に許容可能および代謝可能な、リポソームを形成することにできる脂質が使用され得る。リポソームの処方は、安定剤、防腐剤、賦形剤およびその類似するものを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成両方の、リン脂質およびホスファチジルコリンである。リポソームの形成方法は当業界において知られている。
【0158】
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、投与指示と共に容器、パックまたはディスペンサーに入れられ得る。前記医薬組成物の、プロテアーゼプロ酵素および活性剤ならびに任意の追加の活性剤は、容器、パックまたはディスペンサーで分けられた要素として、第五から第九の態様の使用および第十の態様の方法において、同時または別々の時に、個別にまたは一緒に提供され得る。
【0159】
<投与量および治療上有効な量>
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物の適切な投与量レベルは、一般的に、一回または複数回投与され得る、患者体重1キログラム当たり一日0.01から500ミリグラムである。約0.1から250ミリグラム/キログラム/日;または約0.5から100ミリグラム/キログラム/日、であり得る。適切な投与量レベルは、約0.01から250ミリグラム/キログラム/日、または約0.05から100ミリグラム/キログラム/日、または約0.1から50ミリグラム/キログラム/日、であり得る。この範囲内で、投与量は、0.05-0.5、0.5-5または5-50ミリグラム/キログラム/日であり得る。経口投与のためには、第一および第二の態様の医薬組成物は、1.0-4000ミリグラムのプロテアーゼプロ酵素および活性剤、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、750.0、1000、1500、2000、2500、3000、3500および4000ミリグラムのプロテアーゼプロ酵素および活性剤を、治療される患者の症状に合った投与量を含む錠剤の形態で提供され得る。本願明細書に記載の医薬組成物は、1日1回から4回、1日1回または2回、または1日1回の投与計画で投与され得る。投与の必要条件の緩和により、一般的にはより高いコンプライアンスが導かれる。
【0160】
投与量は、単独投与の形態の組成物が与えられるかどうか、および、組成物または錠剤(もしくはその他の投与形態)に活性剤としてバニロイド化合物が含まれているかどうかによって、大きく変化し得る。典型的に、カプシエートやカプサイシンなどのバニロイド化合物は、投与あたり0.1から5グラムの間、および、より特には約1から2グラムの、比較的大きな投与量で提供され得る。
【0161】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様における適切な単一投与は:
・トリプシノーゲンは1から100ミリグラムの間の量で、特に2から50ミリグラム、さらに特に1.0、2.5、5.0、7.5、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0(ミリグラム);
・キモトリプシノーゲンは1から100ミリグラムの間の量で、特に2から50ミリグラム、さらに特に1.0、2.5、5.0、7.5、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0(ミリグラム);
・セレン化合物は0.01から3ミリグラムの間の量で、特に0.1から1ミリグラム、さらに特に0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0(ミリグラム);
・バニロイド化合物は0.1から4000ミリグラムの間の量で、特に0.5から3000ミリグラム、さらに特に500、1000、1500、2000、2500、3000(ミリグラム);
・アミラーゼは0.1から100ミリグラムの間の量で、特に1から15ミリグラム、さらに特に1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、7.5、10.0、15.0(ミリグラム);
・2-デオキシ-D-グルコースは0.1から100ミリグラムの間の量で、特に1から15ミリグラム、さらに特に1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、7.5、10.0、15.0(ミリグラム);
を含み得る。
【0162】
しかしながら、任意の患者に対する特定の投与量レベルおよび投与頻度は、使用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性および活性をもつ期間、年齢、体重、相対的な健康状態、性別、食事、投与の方法および時間、排出率、薬剤の組み合わせ、疾患の重症度および治療を受ける人、を含む様々な要因に依存し、変化し得る。
【0163】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様の、さまざまな化合物(存在する場合は)の適切な投与レベルは、
・キモトリプシノーゲンは少なくとも0.2ミリグラム/キログラムもしくは0.2-5ミリグラム/キログラムの範囲、0.5-2.0ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.8ミリグラム/キログラムの量;
・トリプシノーゲンは0.5ミリグラム/キログラム未満、もしくは0.01-0.4ミリグラム/キログラムの範囲、0.05-0.20ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.1ミリグラム/キログラムの量;
・メチルセレノシステインは少なくとも0.0001ミリグラム/キログラムもしくは0.001-0.01ミリグラム/キログラムの範囲、0.002-0.005ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.003ミリグラム/キログラムの量;
・カプシエートは少なくとも1ミリグラム/キログラムもしくは5-500ミリグラム/キログラムの範囲、10-100ミリグラム/キログラムの範囲、または約30ミリグラム/キログラムの量;
・アミラーゼは少なくとも0.001ミリグラム/キログラムもしくは0.01-0.1ミリグラム/キログラムの範囲、0.02-0.05ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.03ミリグラム/キログラムの量;
・2-デオキシ-D-グルコースは少なくとも1ミリグラム/キログラムもしくは5-500ミリグラム/キログラムの範囲、10-100ミリグラム/キログラムの範囲、または30ミリグラム/キログラムの量;
を含み得る。
【0164】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様の、さまざまな化合物(存在する場合は)の適切な重量%比は、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン:アミラーゼ: 2-エドキシグルコース:カプシエート:メチルセレノシステインの比、200-400:25-75:5-15:5,000-20,000:5,000-20,000:0.1-10もしくは約300:50:10:10,000:10,000:1、を含み得る。
【0165】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様の、特に腫瘍細胞表面またはその近傍に存在する場合に有効であり得るさまざまな化合物(存在する場合は)の適切な濃度は、
・キモトリプシノーゲンは、少なくとも0.5ミリグラム/ミリリットル、または、1-2ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・トリプシノーゲンは、0.25ミリグラム/ミリリットル未満、または、0.1-0.2ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・アミラーゼは少なくとも0.01ミリグラム/ミリリットル、または、0.02-0.1ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・バニロイド化合物は少なくとも5ミリグラム/ミリリットル、または、10-20ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・2-デオキシ-D-グルコースは少なくとも5ミリグラム/ミリリットル、または、10-20ミリグラム/ミリリットルの範囲
・セレン化合物は0.01ミリグラム/ミリリットル未満、または、0.001-0.005ミリグラム/ミリリットルの範囲;
を含み得る。
【0166】
セレン化合物が存在し、濃度または相対量が特定の範囲内に維持されている場合に、さらに改善された活性が医薬組成物に提供され得る。メチルセレノシステインの濃度は0.01ミリグラム/ミリリットル未満、0.005ミリグラム/ミリリットル未満、0.001ミリグラム/ミリリットル未満、もしくは、0.0005ミリグラム/ミリリットル未満、または、0.0005から0.01ミリグラム/ミリリットルの範囲、もしくは、0.001から0.005ミリグラム/ミリリットルの範囲であり得る。
【0167】
<キモトリプシノーゲン/トリプシノーゲンプロ酵素の処方>
医薬組成物は、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができ、腫瘍細胞間の細胞間接着を促進し、腫瘍細胞のタンパク質分解効果を持ち、または腫瘍細胞の細胞死、分化および免疫認識を誘導する、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素を含んで提供され、第一のプロテアーゼプロ酵素はキモトリプシノーゲンおよび第二のプロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲン、ならびに、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は4:1から8:1の範囲内である。前記医薬組成物はさらに、前記の任意の実施態様に従った、一つまたは複数の活性剤を含み得る。
【0168】
ある実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は5:1から7:1の範囲内で、好ましくは6:1である。
【0169】
<活性剤の処方>
医薬組成物は、各々が腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含んで提供され、第一の活性剤はセレン化合物および第二の活性剤は解糖系還元剤である。
【0170】
一つの実施態様において、細胞間活性は、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識または分化である。セレン化合物および/または細胞質解糖系還元剤は、前記実施態様に記載の化合物を意味する。好ましくは、前記セレン化合物はメチルセレノシステイン、前記細胞質解糖系還元剤は2-デオキシ-D-グルコースである。
【0171】
前記医薬組成物は、さらに、前記の任意の実施態様に従ったプロテアーゼプロ酵素を含み得る。前記医薬組成物は、さらに、任意の前記実施態様に従ったバニロイド化合物およびグリコシドヒドロラーゼより選択された活性剤を含み得る。
【0172】
<選択および特定方法>
さらなる実施態様は、癌細胞の細胞間接着分子の発現の上方制御に有用な剤を同定する方法であって、癌細胞または癌細胞間の細胞間接着分子を本願明細書に前記した組成物と接触させる工程、テスト剤を添加する工程、細胞間接着もしくは細胞間接着分子の発現のレベルをモニターまたは測定する工程、および、テスト剤の効果を評価する工程を含む方法を提供し得る。小分子化合物化学ライブラリースクリーニングおよび抗体ディスプレイパニングは、このタイプの方法で容易に評価し得る利用可能なテスト剤源の例である。例えば、ハイスループットケミカルスクリーニング(High Throughput Chemical Screening;HTS)は、ロボットとマイクロタイタープレートを用い、化学物質または抗体などの何千もの分子を容易に選抜するために用いられている。このような選抜を改良するために、選抜の間実施される適切なスクリーニングアッセイを提供する必要がある。このスクリーニングアッセイは、細胞間接着分子または転移癌細胞などの癌細胞と合わさり得る。前記アッセイは、参照細胞を含み、任意に、テスト化合物、プロテアーゼプロ酵素および任意の酵素の添加の比較を示す。同様に、ファージディスプレイ技術は、癌細胞の細胞間接着分子の発現の上方制御において有用である可能性のある剤を評価するハイスループット法を提供するため、使用され得る。
【0173】
<一般的な点>
本願明細書に含まれている任意の書類、活動、原料、デバイス、項目または同様のものに関する議論は、専ら本願発明のための文脈を提供する目的である。それは、これらの内容の一部またはすべてが、先行技術の一部を形成している、または、各請求項の優先日以前にオーストラリアに存在した本願発明に関連する分野の、一般的に共通の知識であることと了解するものではない。
【0174】
本願明細書に述べられたすべての刊行物は、参照によって本願明細書に含まれている。
【0175】
幅広く記載された本願発明の精神または範囲と離れることなく特定の実施態様に示されたように、本願発明から作られ得る膨大なバリエーションおよび/または修飾は、当業者によって理解される。従って、本願実施態様は、あらゆる点で、例示として考慮されるべきであり、限定されるべきではない。
【0176】
後述の請求項および前述の本願発明の記載において、言語表現や必要な暗示として文脈によって必要とされない限り、「含む」またはその類似である「含む」「含んでいる」は包括的な意味で使用されている(すなわち、決まった特徴の存在を明記するが、本願発明の様々な実施態様のさらなる特徴の存在や追加を除外しない)。
【0177】
後述の請求項および前述の本願発明の記載において、言語表現や必要な暗示として文脈によって必要とされない限り、「含む」またはその類似である「含む」「含んでいる」は包括的な意味で使用されている(すなわち、決まった特徴の存在を明記するが、本願発明の様々な実施態様のさらなる特徴の存在や追加を除外しない)。
【実施例】
【0178】
本願発明の性質がより明らかに理解され得るために、本願発明の好ましい形態を、次の、制限のない実験及び実施例を参照によって、これから記述する。
【0179】
<実験1:プロ酵素の働きのメカニズムの同定>
トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンを含む医薬組成物での癌細胞治療に関わる効果およびメカニズムの調査を、三種類の異なる細胞株で行った。使用した細胞株は、 Panc1:ヒト膵管癌細胞株、Caco2:ヒト直腸結腸腺癌細胞株、および、OE33:ヒト食道腺癌細胞株。
【0180】
細胞株はすべて、5%CO2を含む加湿環境で、37℃においてT75培養フラスコで維持した。細胞の維持に使用された培地は:PANC1にはDulbecco’s modified Eagle medium(DMEM);CaCO2には、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)およびOE33にはRPMI Medium 1640(Invitrogen, Merelbeke, Belgium)であった。培地はすべて、10%ウシ胎児血清(foetal bovine serum:FBS;Invitrogen)、100IU/ミリリットルのペニシリン(Invitrogen)、100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン(Invitrogen)および2mM L-グルタミン(Sigma)を添加した。
【0181】
トリプシノーゲン(Trp)およびα-キモトリプシノーゲン(Chy)は、Sigma-Aldrich(St.Louis, MO)より購入され得て、ウシ膵臓より得られうる。前記処方は、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS, Sigma)中で提供され、必要に応じて10%ウシ胎児血清で希釈した。
【0182】
処方の範囲は、下記の表1に従って調製および試験ならびに記号化した。
【0183】
【表1】
【0184】
細胞の生存能力に有効な濃度を理解するために、様々な濃度の処方を調製した。1Xに示された各混合物の最初の開始濃度に基づき、下記表2に示しすように各処方の6種類の異なる希釈液を記号化し、作製した。
【0185】
【表2】
【0186】
光学密度と細胞数の相関関係を得るため、既知の細胞数を播き、細胞が接着したのち、スルホローダミンB(Sulforhodamine B:SRB)で染色した。この方法により、染色後の細胞の吸光度または光学密度のデータが得られ、図1に示すように、すべての細胞種において、標準曲線の変化が吸光度を細胞数に変換することを可能とした。。
【0187】
<テスト細胞株における処方の効果>
テスト細胞株における処方の細胞毒性効果を決定するため、細胞を播き、前記処方で処理した。効果を、プロテインアッセイと顕微鏡観察によって評価した。
【0188】
細胞増殖において、異なる処方の効果を調査するため、SRBタンパク質染色を行った。染色剤は細胞タンパク質の塩基性アミノ酸結合し、比色評価によって細胞数に関連するタンパク総量の概算を提供する。半数阻害濃度(half maximal inihibitory concentration:IC50)値は、各処方の対数線形薬剤応答曲線で決定された。
【0189】
1日目:細胞を24ウェル培養プレートに低密度(細胞種により、1ウェルあたり1000-3000細胞)で播いた。使用した細胞株は、Panc1:ヒト膵管癌細胞株、Caco2:直腸結腸腺癌細胞株、OE33:食道腺癌およびHEK293であった。HEK293は、ヒト胎児腎臓由来の形質転換細胞株である。各細胞株に、ひとつの24ウェル培養プレートを用いて、異なる組み合わせの各処方をテストした。各処方の希釈液は、4ウェルずつテストした。各細胞株の、24ウェル培養プレートひとつを対照群として用い、同数の細胞を播き、培地を変えて処理細胞とした。
【0190】
2日目:前記培地を除き、異なる希釈の前記処方を含む新鮮な培地を細胞に加えた。
【0191】
5日目:前記培地を再び除き、異なる希釈の前記処方を含む新鮮な培地を細胞に加えた。
【0192】
6日目または7日目:10%冷(4℃)トリクロロ酢酸(TCA)で細胞を固定した。穏やかに培地を吸引した後、TCAをウェルに加えた。プレートを4℃で30分間放置し、脱イオン水で三回洗浄して、室温で少なくとも24時間乾くまで放置した。
【0193】
固定した細胞を以下の通りSRBで染色した。1ミリリットルの4%SRB(1%酢酸溶液中のw/v)を各ウェルに加え、室温で20分間放置した。空気乾燥する前に、SRBを除いて1%酢酸で三回プレートを洗浄した。結合したSRBを、500ミリリットルの10mM Tris-base溶液で可溶化し、プレートを、プレートシェーカー上に少なくとも10分間放置した。各ウェルにつき100ミリリットルを96ウェルプレートの一つのウェルに移し、これを24ウェルプレートウェル一つにつき三回行った。492ナノメートルにおける96ウェルプレートの吸光度を読んだ。
【0194】
<食道腺癌細胞株(OE33)生存率における処方の効果>
OE33細胞を3000細胞/ミリリットルの濃度で播いた(1日目)。2日目および5日目に、0.25x;0.5x;1x;1.25x;2.5xおよび5xの異なる処方で細胞を処理した。7日目に細胞を固定した。
【0195】
顕微鏡的には、処方Bでの処理で、細胞は円形態を示し、また細胞の収縮と剥離の増加が起こった。従って、48時間インキュベート後、接着細胞はごくわずかしか残らず、細胞片および浮遊細胞が培地中に見られた(図2)。
【0196】
光学顕微鏡で観察された結果は、SRBタンパク質染色アッセイによって裏付けられた。表3は、各処理の4つの反復ウェルの平均値を示しており、処方Bの細胞死効果は濃度に依存していた;2.5xおよび5xではウェル中すべての細胞が死ぬ。IC50値は、図3に示すように、濃度に対する吸光度をプロットすることで得られた。
【0197】
対照は、濃度0のODとして示され、24個の反復ウェルの平均値であった。固定時対照プレート24ウェルすべてが、完全にコンフルエントであった。
【0198】
【表3】
【0199】
<膵管癌細胞株(Panc1)生存率における処方の効果>
Panc1細胞を20000細胞/ミリリットルの濃度で播いた(1日目)。2日目および4日目に、0.25x;0.5x;1x;1.25x;2.5xおよび5xの異なる処方で細胞を処理した。5日目に細胞を固定した。試験濃度での対照処方Cは、Panc1細胞の生存率に何ら影響しなかった(データ非公表)。顕微鏡的には、処方B、JおよびTは細胞の生存率に効果を示し、これらの処方の2.5xおよび5xの処方で処理された細胞は円形態となって死んだ(データ非公表)。
【0200】
光学顕微鏡で観察された結果は、SRBタンパク質染色アッセイによって裏付けられた。表4は、使用された処方の各濃度の4つの反復ウェルの平均値を示している。処方B、JおよびTの細胞死効果は濃度に依存していた;2.5xおよび5xでは、図4に示すようにウェル中すべての細胞が死ぬ。IC50値は、図4に示すように、濃度に対する吸光度をプロットすることで得られた。対照は、濃度0のODとして示され、24個の反復ウェルの平均値であった。
【0201】
【表4】
【0202】
<直腸結腸癌細胞株(Caco2)生存率における処方の効果>
Caco2細胞を20000細胞/ミリリットルの濃度で播いた(1日目)。2日目および4日目に、0.25x;0.5x;1x;1.25x;2.5xおよび5xの異なる処方で細胞を処理した。5日目に細胞を固定した。試験濃度での対照処方Cは、Caco2細胞の生存率に影響せず、治療5日後、細胞はコンフルエントで健康な単層を示した(データ非公表)。
【0203】
SRBタンパク質染色アッセイ(表5)は、使用された処方の各濃度の4つの反復ウェルの平均値を示しており、処方B、JおよびTの細胞死効果は濃度に依存していた;2.5xおよび5xでは、図5に示すようにウェル中すべての細胞が死ぬ。これら三種類の処方のより低い濃度では、記録された光学密度(OD)は対照群との有意な差がないと観察され得たため、細胞生存率に効果が見られなかった。対照は、24個の反復ウェルの平均値で、固定時対照プレート24ウェルすべてが、完全にコンフルエントであった。
【0204】
【表5】
【0205】
試験した全ての細胞型に対して、処方B、JおよびTは毒性効果を有している。細胞生存率に効果を示す処方B、JおよびTの濃度は2.5xおよび5xであった。細胞は治療後、円形態、細胞収縮、剥離の増加を示す。
【0206】
<処方のIC50の決定>
各処方のIC50値は、濃度に対する吸光度をプロットすることで得られた。異なる処方のIC50値は、細胞株:一週間に二度投与されたCaCo2、Panc1およびOE33、に対して得られた。最終的なIC50値(実際のミリグラム/ミリリットル濃度に対応する)は、それに続く細胞アッセイに用いた。
【0207】
【表6】
【0208】
<細胞間接着マーカーの発現>
IC50濃度の処方JおよびTでの治療後、細胞間接着マーカーβ-インテグリンおよびE-カドヘリンの発現変化を、Panc1、OE33およびCaco2細胞で調査した。
【0209】
前記IC50濃度の処方で細胞を治療した。細胞を採取し、リン酸緩衝生理食塩水PBSで三回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド/PBSで30分間固定した。細胞をPBSで三回洗浄し、氷冷したアセトン/メタノール(1:1)で、-20℃で5分間後固定した。細胞をPBSで三回洗浄し、2%ブロッキング緩衝溶液で、室温で1時間ブロックした。その後、細胞を、ブロッキング緩衝溶液で希釈した一次抗体と共に、4℃で一晩インキュベートした。細胞をPBSで三回洗浄後、ブロッキング緩衝溶液中の二次抗体と共に2時間インキュベートした。細胞をPBSで三回洗浄し、1:1000DAPI/PBS(核染色を行うため)中で、室温で15分間インキュベートした。マウント剤と共にスライドグラス上にカバースリップを載せた。対照は、非処理細胞で実施した。
【0210】
間接的蛍光免疫染色は、E-カドヘリンに対して産生されたモノクローナル抗体(Transduction Labs BD Biosciences Clone 36)およびβ-カテニンに対して産生されたモノクローナル抗体(Transduction Labs BD Biosciences Clone 14)を用いて実施した。二次抗体は、ウマ抗マウスフルオレセイン抗体(Vector Labs FI2000)を用いた。
【0211】
試験された処方での処理後のβ-カテニンおよびE-カドヘリンの発現の増分は、蛍光顕微鏡下でサンプルの蛍光強度を測定することで定量化した。同一サンプルの異なる視野を測定し、強度の平均値を表7に示す。
【0212】
【表7】
【0213】
<要約>
Panc1、Caco2およびOE33をIC50濃度の処方JおよびTで処理した場合、非処理細胞と比較して免疫蛍光強度の増大が見られた。このことは、図6から13に示すように、対照細胞と比較し、癌細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリン発現の増大と関連している。β-カテニンおよびE-カドヘリンを緑色、核を青色で示している。
【0214】
<実施例1:プロ酵素処方の改良>
24種類の癌細胞株の成長における、トリプシノーゲン(pT)、キモトリプシノーゲン(pC)およびα‐アミラーゼ(A)を含むプロテアーゼプロ酵素処方(JBp1と呼ばれる処方)の効果を決定する調査を行った。IC50およびこの最初の調査で生じた最大阻害値に基づき、癌細胞の成長における、JBp1中の三つの個々の成分の効果を理解するため、三種類の細胞株を選択した。この調査では、JBp1の三つの成分;α-アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲン、の相互作用を理解するため、イソボログラフィック方法を採用した。得られた結果に基づき、改良された処方(JBp1vP)を提案し、2-デオキシ-D-グルコース(D)、カプシエート(C)およびメチルセレノシステイン(M)を含む二番目の処方をイソボログラフィック法で試験した。
【0215】
<要約>
プロ酵素処方JBp1の細胞成長阻害特性は、24種類のヒト癌細胞株集団を用いて調査した。この細胞株の中の大多数でIC50値が得られた。IC50値および最大阻害値に基づいて、A-549、HCT-15、MIAPaCa-2の三種類の細胞株を、イソボログラフィック法を用いたさらなる組み合わせ調査のために選択した。イソボログラムの使用により、JBp1の三つの成分;α-アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲン、の間の相互作用のレベルの調査が可能となった。個々の成分の相互の組み合わせおよび二つの成分の混合物の成長阻害活性の調査により、JBp1処方の改善された組成物を同定し、「JBp1vP」とした。この改善された処方と、2-デオキシ-D-グルコース(D)、カプシエート(C)およびメチルセレノシステイン(M)を含む二番目の処方との組み合わせアッセイをテストした。二番目の処方をDCMとし、最初と二番目の処方との組み合わせをJBp1vP-DCMとした。JBp1vPとDCMの相互作用のイソボログラフィック分析により、特に低濃度のDCMで相乗的に作用する可能性が明らかになった(図14および表8のMIAPaCa-2細胞株の結果参照)。
【0216】
【表8】
【0217】
剤の薬剤応答関係を用いて、組み合わせの期待される効果を示すモデルを構築できる。薬剤Aと薬剤Bの組み合わせは、(da,db)、da(dose of A)およびdb(dose of B)と示されるべきである。効果は、数学的関数E(da,db)として扱う。Eは、しばしば分別効果として表わされ、従って、生存率S:S=1-Eである。最後に、DaおよびDbは、組み合わせによる等効果応答を生む、各々薬剤AおよびBの用量である。等効果曲線は、組み合わせて使用した薬剤間で相互作用がないとの仮定に基づいて、構築され得る。(da,db)の組み合わせは、個々の薬剤の用量を表す座標軸を有するグラフ上のある点で表される。もし薬剤が相互作用しなければ、この点は、組み合わせ(da,db)では等効果である用量を表す値(DaおよびDb)間の2軸が交わる直線(isobole)、すなわち組み合わせ(da,db)と等効果の投与量を表す値(DaおよびDb)の間の2軸を結ぶ直線上に落ちると期待される。
二つの化合物のゼロ相互作用isoboleの方程式は、
【0218】
【数1】
【0219】
組み合わせ中の化合物の数をnとした場合、方程式は
【0220】
【数2】
【0221】
組み合わせた薬剤が、個々の用量と等効果である場合、isoboleは直線となる。しかしながら、組み合わせの効果が個々の薬剤応答曲線から期待されるよりも大きい場合、以下のように、DaおよびDb(ともに変化なし)と同等の効果を生じるのに要するdaおよび/またはdbは、より少ない。
【0222】
【数3】
【0223】
この値はg値とも呼ばれ、相互作用の種類を決定するために使用される。この場合、計算されたisoboleは凹面である。拮抗作用は、反対方向の効果が生じ得る;従って、このタイプの相互作用を示すisoboleは凸面となり得る。
【0224】
要約すると、g値は:
【0225】
【数4】
【0226】
新規の処方JBp1の三つの成分(α-アミラーゼ、トシプシノーゲンおよびトリプシン)間の相互作用を調査した。さらには、イソボログラフィック法を、処方中の3つの成分の改良された比率を決定するために用いた。その後、改良されたJBp1処方と、二番目の処方DCMとを組み合わせて試験した。
【0227】
<原料と方法>
無菌の平底96ウェル細胞プレートはBecton-Dickinson(North Ryde, NSW, Australia)から;RPMI1640およびDMEM細胞培養培地、FBS、GlutaMax、ペニシリン-ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、HEPES、HAM’s、 FCSおよびDPBSはInvitrogen Australia(Mt Waverly, VIC, Australia)から;トリパンブルーはSigma-Aldrich(Castle Hill, NAW, Australia)から;CellTiter-Blue(登録商標) Cell Viability AssayはPromega(Maison, WI, USA)から;SpectraMax Gemini XPS FluorometerはMolecular Devices(Sunnyvale, CA, CA)から、入手した。
【0228】
これらの調査で用いられた細胞株はすべてヒト由来で、America Type Culture Collection(ATCC)(Rockville, MD, USA)より供給された。
【0229】
以下の表9は、すべてのIC50決定及び組み合わせアッセイを用いたウェルあたりの、成長状態および最初の細胞播種時の濃度を示す。細胞は、95%空気および5%CO2を供給した、37℃湿潤細胞培養インキュベーター内で培養した。
【0230】
【表9A】
【0231】
【表9B】
【0232】
【表9C】
【0233】
<テスト項目および処方>
テスト項目1は、Applichem(Darmstadt, Germany)より供給された、トリプシノーゲンであった。テスト項目2は、BBI Enzymes(Gwent, UK)より供給された、キモトリプシノーゲンであった。テスト項目3は、Annecis Ltd(Lancaster, UK)より供給された、α-アミラーゼであった。テスト項目4は、Sigma-Aldrich(Castle, Hill, NSW, Australia)より供給された、2-デオキシグルコースであった。テスト項目5は、Propan Pty Ltd.より供給された、カプシエートであった。テスト項目6は、Sigma-Aldrich(Castle, Hill, NSW, Australia)より供給された、メチルセレノシステインであった。
【0234】
α-アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、直ちに使用するか、または、以後の使用のため4℃で保存した。テスト項目DCMは、1:1:0.0001の割合の2-デオキシグルコース、カプシエート、およびメチルセレノシステインから成る。この3種類の成分を、これらの比率で混合およびPBSで再懸濁した後、調製後直ちに使用した。
【0235】
<細胞成長アッセイ>
IC50分析のため、テスト品目を播種後24時間で細胞に添加した。テスト項目の濃度は各細胞株につき三連で試験した。CellTiter-Blue(登録商標)アッセイを、テスト項目添加後72時間のすべてのプレートについて、行った。
【0236】
組み合わせアッセイのため、各実験について反復出来るよう、2つの96ウェルプレートに各細胞株とテスト項目の組み合わせを播いた。、テスト項目を播種後24時間で以下のpipetting schemeに従って添加した(A3:G11の範囲の細胞は、縦列2および横列Hの濃度の両方の薬剤の組み合わせを含む)。
【0237】
各細胞株の各化合物の最初の濃度は、各薬剤のIC50を希釈液系列の濃度内で低下させる方法で計算されたIC50濃度に基づいて決定した。CellTiter-Blue(登録商標)アッセイをすべてのプレートにつき、テスト項目添加後72時間後に行った。
【0238】
テスト項目を含む培地での細胞インキュベーションに続き、10マイクロリットルのCellTiter-Blue(登録商標)を各ウェルに添加し、最大4時間までインキュベートした。蛍光は、Spectramax Gemini XPS Fluorometerで測定した。すべてのデータを記録し、解釈のためにMicrosoft(登録商標) Excel表計算ソフトに入力した。
【0239】
CellTiter-Blue(登録商標)アッセイより集計したデータを、IC50を決定するため薬剤応答曲線として、および、テスト項目の組み合わせ間の相互作用のタイプを評価するためのイソボログラムとして、プロットした。IC50の決定のため、化合物濃度に対する成長阻害を計算およびプロットした。これらプロットで、X軸(化合物濃度)は、対数尺度で表される。IC50濃度は、GraphPad Prism version 5.0 for Mac OSX(GraphPad Software, San Diego California, USA) を用いて、各組成物の半数(50%)阻害濃度(IC)として計算した。
【0240】
組み合わせの調査のため、vivo Pharm’s proprietary analysis templateを用いて、イソログラフィック分析を行った。イソボログラフィック分析は、二つの化合物の間に起こる相互作用の評価基準(すなわち、相乗的、相加的または拮抗的)を提供する。相互作用のタイプを定義する一つのパラメーターは、g値である。前記したように、1.0以上のg値は拮抗的相互作用を、および、1.0より低いg値は相乗的相互作用を示す。各イソボログラフィック分析では、9個のg値、一つの値は組み合わせの二番目の化合物の各濃度(分析のテンプレートは化合物B)に対する、が得られる。この調査において、二つの化合物間の相互作用は3つのグループに分類される:7つより多いg値が1.0より小さい広範囲相乗的相互相互作用、3つから7つのg値が1.0より小さい狭範囲相乗的相互作用、および、3つ未満のg値が1.0より小さい非相乗的相互作用、である。表5に、この調査で分析されたすべての相互作用の要約を示す。
【0241】
この調査の実施に使用されたすべての方法は、一般的な操作方法に従って行った。
【0242】
<結果>
24種類の癌細胞株において、JBp1についてのIC50決定アッセイを行った。表10に示すように、IC50値は15の細胞株(A2780、HOP-92、BxPc-3、HT-29、KYSE-30、MIAPaCa-2、OE-33、A549,HCT-15、OE-21、NCI-H82、HCT-116、MDA-MB468、NCI-H460およびBT474)から得られた。残りの細胞株では、この調査で試験したJBp1の濃度の範囲内でのIC50を決定できる半数阻害値また薬物応答曲線を示さなかった。表10は、24すべての細胞株で、IC50および最大成長阻害値を、最大成長阻害値の減少順に示している。
【0243】
前記24の細胞株より得られたIC50および最大成長阻害値、ならびに、続いて行う動物試験への各細胞の適合性に基づき、3つの細胞株をイソボログラフィック調査のために選択された。これらの細胞株、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2を、表10中において太字で強調している。
【0244】
【表10】
【0245】
化合物間の相互作用を調査するイソボログラフィック法では、組み合わせアッセイを行う前に、これら成分のIC50値を決定することが必要である。従って、IC50決定アッセイをJBp1の個々の成分、すなわち、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼについて、三つの選択された細胞株A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2で実施した。表11に示すように、トリプシノーゲンは、3つすべての細胞株で0.23から0.41ミリグラム/ミリリットルの範囲のIC50値を示した。α-アミラーゼおよびキモトリプシノーゲンは、テストした濃度の範囲ではIC50値を示さなかった。
【0246】
【表11】
【0247】
イソボログラフィック分析は、二つの化合物の間で起こる相互作用(例えば相乗的、相加的または拮抗的)のタイプの評価基準を提供する。相互作用のタイプを定義する一つのパラメーターは、g値である。前記したように、1.0以上のg値は拮抗的相互作用を、および、1.0より低いg値は相乗的相互作用を示す。各イソボログラフィック分析では、9個のg値、一つの値は組み合わせの二番目の化合物の各濃度(分析のテンプレートは化合物B)に対する、が得られる。この調査において、二つの化合物間の相互作用は3つの群に分類される:7つより多いg値が1.0より小さい広範囲相乗的相互作用、3つから7つのg値が1.0より小さい狭範囲相乗的相互作用、および、3つ未満のg値が1.0より小さい非相乗的相互作用、である。表8に、この調査で分析されたすべての相互作用の要約を示す。
【0248】
α‐アミラーゼおよびキモトリプシノーゲンではIC50値が得られなかった事実にも関わらず、これらの成分を二番目の化合物と組み合わせた際に相互作用することが理解されているめ、相互のおよび、トリプシノーゲンとの相互作用を、組み合わせアッセイで調査した。図15-17は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞におけるα‐アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲン間の組み合わせアッセイの結果によるイソボログラムを示している。
【0249】
図15および表8に示しているように、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンはA-549およびMIAPaCa-2細胞において、広範囲の相乗的相互作用と一致するイソボログラム分析結果を示した。HCT-15では、イソボログラフィック分析結果は、非拮抗的相互作用(イソボログラフィック線は、ほぼX軸と重なって位置し、図中で明瞭に区別できない可能性がある)と一致している。3つの選択された細胞株における組み合わせアッセイの全体的な結果に基づき、処方中のトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンの改良された比率は、6:1(キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン)であると定義した。この比率は:1)A-549およびMIAPaCa-2細胞株において、1および2ミリグラム/ミリリットルにおけるキモトリプシノーゲンの低いG値に反映されるように、より高いキモトリプシノーゲン濃度では顕著に成長阻害活性が向上し、および、2):0.25ミリグラム/ミリリットルより高いトリプシノーゲン濃度はさらなる阻害効果を追加しなかった、ことに支持される。従って、キモトリプシノーゲンの上位二つの濃度の平均(1.5ミリグラム/ミリリットル)を、トリプシノーゲンの最上位の濃度(0.25ミリグラム/ミリリットル)で割り、1.5対0.25または6:1の比率を得た。
【0250】
図16は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞におけるトリプシノーゲンとα‐アミラーゼの間の相互作用のイソボログラムを示している。これら二つの化合物の組み合わせは、A-579およびMIAPaCa-2細胞において相乗的相互作用、および、HCT-15においては非相乗的相互作用という結果であった(表8)。正の相互作用は、MIAPaCa-2細胞の広範囲型およびA-549細胞の狭範囲型であった。試験された3つの細胞株でこの相互作用が観察される応答の範囲内が与えられたので、これらデータをJBp1処方中のこれら二つの構成要素の比率を決定するために使用しなかった。
【0251】
図17は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞におけるキモトリプシノーゲンとα-アミラーゼの間の相互作用のイソボログラムを示している。これらの二つの化合物の組み合わせは、MIAPaCa-2細胞において相乗的相互作用、および、A-579およびHCT-15においては非相乗的相互作用という結果であった。キモトリプシノーゲンの細胞成長阻害効果に対する、α-アミラーゼの負の効果が与えられたため、他のふたつのJBp1成分に対するこの成分の比率は、最初の濃度(1:0.25, キモトリプシノーゲン:α-アミラーゼ)そのままとなった。
【0252】
要するに、組み合わせアッセイの最初の一巡の後、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの比率は6:1であり得ると決定され、ならびに、キモトリプシノーゲン:α-アミラーゼおよびトリプシノーゲン:α-アミラーゼは最初の濃度である1:0.25が使用された。
【0253】
組み合わせアッセイの二巡目には、上記に定義された組み合わせおよび比率は、新しい試験化合物として以下のように再定義された:
-キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン(6:1)=TC
-キモトリプシノーゲン:α-アミラーゼ(1:0.25)=CA
-トリプシノーゲン:α-アミラーゼ(1:0.25)=TA
【0254】
IC50の決定は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞において、これら再定義された化合物で実施した。表12は、3つの選択された細胞株における3種類の化合物の、薬剤応答曲線および計算されたIC50値ならびに最大成長阻害値を表している。IC50値は、3つすべての細胞株で、TCおよびTAで得られた。しかしながら、CAについては、試験した濃度の範囲内でIC50値が見いだされなかった。
【0255】
【表12】
【0256】
以下のTC、CAおよびTAに対するIC50値の決定では、組み合わせアッセイを、Jbp1処方における3つの成分および対応する第三の成分について実施した(例えば、TA対キモトリプシノーゲン、CA対トリプシノーゲンおよびTC対α-アミラーゼ)。
【0257】
図18は、TAおよびキモトリプシノーゲンの組み合わせのイソボログラムを表している。これら2つの化合物の組み合わせは、結果としてA-579およびMIAPaCa-2細胞で相乗的相互作用となり、HCT-15細胞で非相乗的相互作用となった。
【0258】
図19は、CAおよびトリプシノーゲンの組み合わせのイソボログラムを表している。これら2つの化合物の組み合わせは、結果としてHCT-15およびMIAPaCa-2細胞で相乗的相互作用となり、A-579細胞で非相乗的相互作用となった。全体として、観察された傾向は、これら2つの成分の正の相互作用を示しており、キモトリプシノーゲンとトリプシノーゲンの間に観察された相乗的相互作用とも一致する。これらの結果はさらに、議論された以前の結果に基づいて選択された前記6:1(キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン=6:1)の比率を、正当化するものである。
【0259】
図20はTCおよびα-アミラーゼの組み合わせのイソボログラムを表している。観察された全体的な傾向は、この組み合わせは非相乗的相互作用に一致する。TCの成長阻害効果に対するこのα-アミラーゼの負の効果をさらに詳しく調査するため、イソボログラフィック分析のテンプレートからTCのIC50値を抽出し、対応するα-アミラーゼの濃度に対してプロットした。値は、3つすべての細胞株で、α-アミラーゼの濃度に対して比例的に増加していた。これらの結果は、JBp1処方中のα-アミラーゼレベルが、キモトリプシノーゲンおよびトリプシノーゲンとの潜在的な拮抗的効果を回避するために、低く抑えられえているべきであることを示唆している。
【0260】
表8は、上記の個々および2つの成分の相互のすべての組み合わせの結果を要約している。
【0261】
上記に記載の組み合わせ調査に基づき、JBp1処方中のキモトリプシノーゲン、トリプシノーゲンおよびα-アミラーゼの比率は、6:1:0.25(キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン:α-アミラーゼ)と定義した。この、改良されたJBp1処方は、最初のJBp1処方と区別するため、接尾辞「vP」で同定される。
【0262】
前記の改良された処方JBp1vPにおいてIC50値を決定し、最初の処方JBp1で得られた値と比較した。表13は、これら2つの処方の、A-579、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞における薬剤応答曲線、IC50値および最大成長阻害値を表している。これらの結果が示すように、JBp1の改良されたJBp1vP処方は、A-579、HCT-15細胞においてJBp1より低いIC50値を、および、MIAPaCa-2細胞において同程度のIC50値を示した。重要なことに、JBp1vPは3つすべての細胞株において、JBp1よりも高い最大成長阻害値を示した。
【0263】
【表13】
【0264】
JBp1vPとテスト化合物DCMとを組み合わせ、細胞の成長を妨げる能力を試験した。組み合わせアッセイに先立ち、DCMのIC50をA-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞において決定した。表8および13に示す通り、DCMは0.15から1.5ミリグラム/ミリリットルの範囲でIC50値を示し、最大成長阻害値は、3つすべての細胞株で92%以上であった。
【0265】
図14はJBp1vPとDCMの組み合わせのイソボログラムを示している。イソボログラフィック分析は、A-579、HCT-15おけるこれら2つの成分の相互作用が非相乗的であることを示している。MIAPaCa-2細胞では、特により低いDCM濃度において、JBp1vPおよびDCMの組み合わせは狭範囲相乗的相互作用という結果だった。この組み合わせ調査のg値は、最も低い2つのDCM濃度において1.0をはるかに下回った。
【0266】
MはJBp1に対して拮抗効果を提供し得ると理解されている点を考慮すると、これらの結果は、DCMがJBp1との組み合わせにおいて有効であることを予想外に示した。
【0267】
要約すると、JBp1vPおよびDCMは低DCM濃度で相乗的に相互作用し、JBp1vPはまた、JBp1処方を超える改良された癌細胞成長阻害効果をin vitroで示し、ならびに、JBp1vPおよびDCMは癌細胞の成長を阻害するために相乗作用する。
【0268】
<実施例2:改良されたプロ酵素処方のin vivo調査>
JBp1(トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼ、各々0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラムおよび0.03ミリグラム/キログラム投与)の抗血管新生効果をin vivoで決定するための調査を実施し、JBp1単独またはアジュバントであるDCM(2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインを、各々30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラム)を組み合わせ、vivoPharm’s AingioChamber(商標)アッセイを用いて調査した。AingioChamber(商標)アッセイは、創傷治癒の正常な病理学的段階を利用し、移植されたチャンバー周辺に線維性被膜の形成を促進する(Wood,JM.,Bold,G.,Buchdunger,E.,Cozens,R., et al.PTK787/ZK 222584,a Novel and Potent Inhibitor of Vascular Endothelial Growth Factor Trypsine Kinases, Impairs Vascular Endothelial Growth Factor-Induced Responses and Tumour Ggowth After Oral Administration. Cancer research, 60(8):2178-2189(2000))。チャンバー内の塩基性繊維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)封入体は、血管成長を誘導し、線維性被膜の形成を支持する。従って、この系は、線維性被膜の形成を測定(末端の被膜の湿重量)することにより、抗血管新生処理の効果を評価するために使用されている。
【0269】
<要約>
50匹のFvB雌マウスに、bFGFの有無にかかわらず、AingioChamber(商標)を皮下移植した。無作為に10匹のマウスを選択し、bFGFのないチャンバーを移植した。調査0日目、bFGFを含むチャンバー移植した40匹のマウスを体重によって無作為抽出し、10匹のマウスの4つの治療群とした。
【0270】
トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、およびα-アミラーゼから構成されるJBp1を、各0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラム、0.03ミリグラム/キログラム投与した。2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインから成るDCMを、各30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラム投与した。
【0271】
各群のマウスは、ビヒクル対照(NMP:PEG300(1:9,v/v),経口投与5ミリリットル/キログラム)、JBp1(腹腔内投与用量は10ミリリットル/キログラム)、JBp1(腹腔内投与用量は10ミリリットル/キログラム)またはソラフェニブ(60ミリグラム/キログラム、経口投与用量は5ミリリットル/キログラム)のいずれかを日常の治療(0日目から4日目)として、受けた。ビヒクル対照は2群に投与し、一つは、bFGFのないAingioChamber(商標)を移植したもの(ベースライン対照)、もう一つはbFGFのあるAingioChamber(商標)を移植したもの(誘導対照)であった。化合物治療群には、bFGFのあるAingioChamber(商標)を移植した。
【0272】
最初の治療日(0日目)および調査の終了日(5日目)まで、毎日すべての動物の体重測定を行い、記録した。
【0273】
すべての群のマウスで、外科手術の予期できる結果として、処理の開始に続いて直ちに体重が減少した。ビヒクル対照(bFGFあり)JBp1およびJBp1-DCMで処理されたマウスは、調査の残り期間に体重が回復し、調査の終了日において平均体重が有意に減少していなかった。ビヒクル対照(bFGFなし)およびソラフェニブで処理した群は、NMP:PEG300によくみられるように、両群とも調査の終了日には有意に体重が減少し、回復しなかった。
【0274】
AngioChambers(商標)を、最後の治療(5日目)の後24時間で各マウスより切除した。チャンバー周辺の線維性被膜を除き、湿重量を測定した。
【0275】
調査終了日の被膜湿重量で示される通り、すべての処理で、誘導対照と比べてbFGF誘導性血管新生が有意に阻害される結果となった。有効な抗血管新生薬の対照であるJBp1-DCMおよびソラフェニブでの処理は、JBp1単剤の処理と比較して有意に血管新生が減少した。JBp1-DCMとソラフェニブの間には、抗血管新生活性の有意な差はなかった。従って、このモデルでは、JBp1とJbp1-DCM両方とも、維性被膜の阻害に有効であった。DCMのJBp1処方への添加は、JBp1単独と比較して改良された阻害という結果であった。JBp1-DCMの処理はこのモデルにおいてソラフェニブと同様に有効であった。
【0276】
<原料と方法>
ヘパリン、NMP、PBSおよびPEG300はSigma-Aldrich(Castle Hill, NSW, Australia)より入手した。0.22μMアクロディスクフィルターは、Pall Corporation(Sydoney, NSW, Australia)より入手した。組み換えヒトbFGFは、Shenadoah Biothechnology(Warwick, PA,USA)より入手した。AngioChambers(商標)は、Angt+Pfister AG(Stuttgart, Germany)より供給された。アガロースは、Omnigel Lo.M(Edwards Instruments Co., NSW, Australia)より供給された。
【0277】
調査系は、50匹のFvB雌マウスを、群あたり10匹ずつ、5つのテスト群(2つがコントロール、3つが治療群)として含んでいた。標準条件および管理規則を、動物管理に用いた。
【0278】
80の等間隔の0.8ミリメートルの穴が空いたパーフルオロアルコキシテフロン(Tefron(登録商標)-PFA, 21ミリメートルx8ミリメートル径、体積550マイクロリットル)製の多孔質の組織チャンバー(AngioChambers(商標))を使用した。両端を、同素材の取り外し可能なキャップで密閉した。チャンバーは、無菌状態で、20IU/ミリリットルのヘパリンを含む0.8%アガロース、4マイクログラム/ミリリットルbFGFあり/なしで、満たした。前記アガロース溶液は、チャンバーに満たす前、37℃で維持した。
【0279】
チャンバー移植のため、イソフルオレン吸入によりマウスを麻酔した。各マウスの背側中心の皮膚に小さな切開口を作り、チャンバーを皮下に挿入して肩甲骨の間に設置した。傷口を1.4ミリメートルの創傷クリップ(Michel Clip)二つで閉じた。
【0280】
<試験化合物および処方>
ビヒクル対照は、NMP:PEG300(1:9v/v)であった。JpB1はテスト項目1であって、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、およびα-アミラーゼから成り、各々0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラム、0.03ミリグラム/キログラムを投与した。DCMはテスト化合物2であって、2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインから成り、各々30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラムであった。各化合物は別々にPBSに溶解した。ストック溶液は濾過によって滅菌した(0.22μM)。投薬日ごとに、ストックを適切な組み合わせに混合した。
【0281】
ソラフェニブは参照化合物であり、200ミリグラムの活性ソラフェニブを含む300ミリグラムの錠剤として供給された。錠剤を破砕し、NMPに溶解して、活性ソラフェニブのストック溶液を処方した。ストック溶液は要求される最終薬剤濃度であるNMP:PEG300比率1:9を達成するようPEG3000で希釈した。
【0282】
10匹のマウスを無作為に選択し、bFGFの入っていないチャンバーを移植した。調査第0日目に、bFGFが入ったチャンバーを移植した40匹のマウスを、体重によって無作為抽出して、10匹ずつの4つの処理群とした。処理は0日目に開始し(マウスが手術から回復後2時間後)、連続して5日間続けた(第0日目から第4日目)。
【0283】
ビヒクルコントロール(NMP:PEG300=(1/9v/v))(群1および群2)およびソラフェニブ(60ミリグラム/キログラム;群5)は、5ミリグラム/キログラムの用量で、経口的(p.o.)に投与した。JBp1(トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼを各0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラムおよび0.03ミリグラム/キログラム)を単独で投与(群3)、および、DCM(2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインを各30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラム)と組み合わせて(群4)投与した。いずれも、用量10ミリリットル/キログラムを腹腔内注射(i.p.)によって投与した。JBp1およびDCMを組み合わせて投与した際は、6種類すべての化合物で、一つの注射で一緒に処方および投与した。
【0284】
各動物の体重は投薬直前に測った。各動物に投与する投与溶液の体積は、各個体重に基づき、計算し、調整した。
【0285】
動物を上記計画に従って処理し、調査第0日はマウスがAngioChambers(商標)移植手術から回復後2時間後に開始した。AngioChambers(商標)は、終了日(第5日目)にすべてのマウスから死後摘出した。各チャンバー周囲に形成された血管新生した線維性被膜を注意深く除き、湿重量を直ちに測定した。
【0286】
任意の動物の処理は、体重が調査開始時の85%より下回った場合中止した。この場合、体重測定は短い期間続けられる。測定した体重が全く増えなかった場合、その動物は間引かれた。動物はまた、処理に対する重篤な拒絶反応が観察された場合、間引かれた。拒絶反応の程度は、徴候および付随スコア(付録2において与えられたガイド)をリスト化したプロフォーマクリニカルスコアシート(pro-forma clinical score sheet)を用いて評価した。観察された徴候の組み合わせ、および、結果として総合されたスコアにより、動物福祉の点から、措置の方針を決定した。
【0287】
テスト項目(%)による血管新生阻害は、下記式を用いて計算される:
【0288】
【数5】
【0289】
Aは、成長因子を含むAngioChambers(商標)を移植され、ビヒクル対照で処理されたマウス(群2)由来の平均被膜重量であり、
Bは、成長因子を含むAngioChambers(商標)を移植され、テスト項目で処理されたマウス(群3-5)由来の平均被膜重量であり、
および、Cは成長因子を含まないAngioChambers(商標)を移植され、ビヒクル対照で処理されたマウス(群1)由来の平均被膜重量であった。
【0290】
すべての統計的計算は、SigmaStat3.0(SPSS Australia, North Sydney, NSW, Australia)で実施した。対応のあるt検定は、調査第0日から終了日の間の処理群の体重変化の有意性を決定するために用いた。データが正規制検定を通過しなかった場合は、ウィルコクソンの順位和検定を実施した。残りの統計分析の目的は、参照化合物、ソラフェニブおよびテスト項目が、bFGFによる線維性被膜の顕著な誘導を有意に阻害することを示すことであった。bFGFによる線維性被膜の顕著な誘導は、前記調査の結果を受け入れる上で必須であると考えられる。分散分析(A One-Way Analysis Of Variance:ANOVA)は、調査終了時の被膜重量について実施した。有意な差が見いだされた場合は、すべての多重対比較および対照群に対する多重比較法(ホルム-シダック法を行った。0.05未満のp値は、有意であると考えた。
【0291】
本調査の実施に使用されたすべての方法は、vivoPharmの標準作業手順書(vivoPharm’s Standard Operating Procedures)に従い、特にSOP#vP_EF0317「血管新生調査の一般的方法(General Procedures for Angiogenesis Studies)」を参照として行った。標準作業手順書は、vivoPharmの安全施設に整理され、保管されている。
【0292】
<結果と観察>
すべての群のすべてのマウスは、調査期間中、立毛を呈した。ビヒクル対照で処理されたあるマウス(bFGFあり;群2)は、おそらく手術の合併症のために、調査の第1日で死亡したことが分かった。ビヒクル対照で処理されたあるマウス(bFGFなし;群1)は、4日目に後部右足が腹部の毛に付着した。これは、麻酔吸引下で分離した。
【0293】
すべての群のマウスは、恐らく外科手術のために、調査開始後直ちに体重下減少した。ビヒクル対照(bFGFあり;群2)、JBp1(群3)およびJBp1-DCM(群4)で処理されたマウスは、調査の残りの期間で体重が回復し、終了日には、平均体重の有意な減少はなかった。
【0294】
ビヒクル対照(bFGFなし;群1)およびソラフェニブ(群5)で処理されたマウスは、体重が回復せず、どちらの群も調査終了日には有意に体重減少(各々5.5%および5.6%)していた。
【0295】
繊維性被膜の湿重量は、最初はAngioChamber(商標)内に入ったbFGFによって誘導される血管新生の広がりによって促進され、次に内在性VEGFによって刺激される。小さい、または、軽度の線維性被膜は、内部の軽度の血管新生と関連し、従ってより高い血管新生阻害は、特定の処理による。
【0296】
本調査では、切除された被膜の線維性被膜の形成は、チャンバーにbFGFを乗せたビヒクル対照群(群2、誘導対照)において、bFGFなしのビヒクルコントロール群(群1、ベースライン対照)よりもはるかに増大しており(図21)、bFGFは十分に、および、顕著に被膜形成を促進することを示した。
【0297】
チャンバーにbFGFをのせたすべての処理群において、以後議論するビヒクル対照群との比較はすべて、誘導対照、群2(bFGFをチャンバーにのせている)とについてである。
【0298】
図21は、群1から5で調査した結果を示している。群1は、bFGFなしのビヒクル対照(NMP:PEG300(1:9、v/v))である。群2は、bFGFありのビヒクル対照(NMP:PEG300(1:9、v/v))である。群3は、bFGFありのJBp1である。群4は、bFGFありのJBp1-DCMである。群5は、bFGFありのソラフェニブ、60ミリグラム/キログラムである。参照記号の「a」は、誘導対照(bFGFありのビヒクル対照(群2))との有意な差を意味している(p<0.05:分散分析)。参照記号の「b」は、JBp1単剤治療(bFGFあり)との有意な差を意味する(p<0.05:分散分析)。すべての処理で、一日一回5日間(第0日から4日)投与した。
【0299】
JBp1、JBp1-DCMおよびソラフェニブでの処理(各々群3、4および5)は、被膜重量の差で示される通り(図21)、誘導対照(群2)と比べて血管新生が有意に減少する結果となった。JBp1-DCMおよびソラフェニブでの処理(各々群4および5)は、JBp1単剤治療(群3)と比べて有意に血管新生が減少していた。
【0300】
JBp1単剤で処理された(群3)マウスより回収されたチャンバーは、JBp1-DCMで処理された群(群4)のそれよりも、線維性被膜とチャンバーの間の空間に多くのフリーな血液が存在した。JBp1-DCMで処理された群(群4)マウスより回収されたチャンバー周辺の線維性被膜は、ビヒクル対照で処理された群(bFGFなしおよびあり;各々群1および2)よりも固かった。
【0301】
<結論>
JBp1(トリプシノーゲン(0.13ミリグラム/キログラム)、キモトリプシノーゲン(0.78ミリグラム/キログラム)およびα-アミラーゼ(0.03ミリグラム/キログラム))腹腔投与処理によるin vitro抗血管新生効果を、単独での投与、および、DCM(30.55ミリグラム/キログラム)、カプシエート(29.12ミリグラム/キログラム)およびメチルセレノシステイン(0.003ミリグラム/キログラム)との組み合わせた投与で、FvB雌マウスにおいてvivoPharm’s Angiochamber(商標)アッセイを用いて調査した。テスト項目の効果は、参照化合物ソラフェニブ(60ミリグラム/キログラム、経口投与)の効果と比較した。
【0302】
本調査では、調査終了日の被膜湿重量に示されるように、すべての処理で、誘導コントロールと比べてbFGF誘導性血管新生が有意に阻害される結果となった。参照化合物ソラフェニブ、および、JBp1-DCMとの組み合わせの両方において、JBp1単剤治療と比べて有意に血管新生が減少した。従ってJBp1-DCMは血管新生の減少に有効であることが示された。
【0303】
<実施例3:プロ酵素処方のin vitro調査>
トリプシノーゲン(pT)、キモトリプシノーゲン(pC)およびα-アミラーゼ(A)を、活性剤のメチルセレノシステイン(M)、カプシエート(C)または2-デオキシグルコース(D)と共に含むプロテアーゼプロ酵素処方(JBp1vPとして述べられている処方)の効果を決定するため、調査に取り掛かった。前記調査では、これらの成分間の相互作用を理解するため、イソボログラフィック法を適用した。
【0304】
<要約>
これらプロテアーゼプロ酵素処方の細胞成長阻害特性を調査した。IC50値および最大成長阻害に基づき、3つの細胞株、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2を、イソボログラフィック法を用いた組み合わせ調査のために選択した。イソボログラムの使用は、3つの個々の成分とJBp1vPの間の相互作用レベルの調査を可能にした。個々の構成要素のお互いの組み合わせおよびJBp1vPとの混合物の成長阻害活性の調査によって、改良された処方が同定された。これらの改良された処方の結果を、図22-24に示しており、図22-24はHCT-15細胞におけるJBp1vPならびにM,CおよびD各々のイソボログラフィック分析を提供する。
【0305】
<実施例4:2-デオキシグルコースおよびメチルセレノシステインを含む処方のin vitro調査>
メチルセレノシステイン(M)および2-デオキシグルコース(D)を含む処方の効果を決定するため、調査に取り掛かった。前記調査は、これらの成分間の相互作用を理解するため、イソボログラフィック法を適用した。
【0306】
<要約>
これらプロ酵素処方の細胞成長阻害特性を調査した。IC50値および最大成長阻害に基づき、3つの細胞株、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2を、イソボログラフィック法を用いた組み合わせ調査のために選択した。イソボログラムの使用は、2つの個々の成分の間の相互作用レベルの調査を可能にした。個々の成分およびお互いの組み合わせの成長阻害活性の調査によって、改良された処方を同定した。これsらの改良された処方の結果を、図25に示しており、図25はHCT-15細胞におけるMおよびDの組み合せのイソボログラフィック分析を提供する。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【技術分野】
【0001】
本願発明は一般に、プロテアーゼプロ酵素(protease proenzyme)を含む医薬組成物および癌治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療にプロテアーゼを用いるという考えは、100年以上にわたっている。1905年、John Beardは、可能性のある癌治療として新鮮な膵臓の酵素抽出物を用いた使用を提示し、Jersen’s mouse sarcomaモデルに対して、実験を実施し、成功した。マウスにプロテアーゼトリプシンを接種した後、腫瘍の縮小が観察された。Beardによって得られた結果は、当時大きな関心を生み、ヒツジ膵臓から調製された粗酵素抽出物が、腫瘍を縮小させて寿命を延長し、ヒトの癌患者を治療するために使用された。
【0003】
より最近では、酵素の経口投与は、膵臓癌、腸癌、結腸直腸癌、および後期の骨髄腫といった様々な癌の患者の良好な生存率によって、耐容性が良いことが示されている。消化およびセルピンなどの血漿中のその他の酵素不活性化因子による消失および不活性化のために、高用量の酵素の使用が必要である。
【0004】
プロ酵素(酵素の不活性前駆体形態)の使用は、酵素の経口投与で生じた問題を克服するために用いられてきた。セリンプロテアーゼ阻害物質トリプシンのプロ酵素形態であるトリプシノーゲンを含むプロ酵素混合物は、細胞癌の治療に有効であることが示され、腫瘍細胞表面を選択的に活性化すると考えられてきた(Novak J and Trnka F, Proenzyme Therapy of Cancer, Anticancer research, 25:1157-1178,2005;US 5,858,357)。トリプシンの作用のメカニズムは、腫瘍細胞のタンパク質分解経路を介して起こると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Novak J and Trnka F, Proenzyme Therapy of Cancer, Anticancer research, 25:1157-1178,2005;US 5,858,357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌治療に有効な強化されたプロ酵素組成物の同定および提供の需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む医薬組成物であり、その組成物は癌治療のために多機能アプローチを提供することが可能である医薬組成物を提供する。
【0008】
第二の態様は、
腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化、もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができるプロテアーゼプロ酵素、および、
腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる活性剤
を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
第二の実施態様において、細胞間活性は腫瘍細胞の細胞死、免疫認識または分化である。
【0010】
第一または第二の実施態様において、医薬組成物は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含み、癌治療のために多機能アプローチを提供することが可能であり、前記プロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンの少なくとも一つより選択され、ならびに、前記活性剤は、セレン化合物、バニロイド化合物、および細胞質解糖系還元剤の少なくとも一つ、および任意でグリコシドヒドロラーゼより選択される。さらなる実施態様においては、プロテアーゼプロ酵素はトシプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンである。
【0011】
第三の態様は、癌治療の剤または組成物であって、協同して癌治療の多機能アプローチを提供することが可能であり、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む剤または組成物を提供する。
【0012】
第四の態様は、
腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化、もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができるプロテアーゼプロ酵素、および、
腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる活性剤
を含む癌治療の剤または組成物を提供する。
【0013】
第五の態様は、活性剤を含む癌治療の薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用を提供する。
【0014】
第六の態様は、プロテアーゼプロ酵素を含む癌治療の薬剤の製造における活性剤の使用を提供する。
【0015】
第七の態様は、癌治療の薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素および活性剤の使用を提供する。
【0016】
第八の態様は、活性剤で治療されるべき対象での癌治療の薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用であって、前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、任意に、前記活性剤はプロテアーゼプロ酵素の効果を促進するための細胞間活性を誘導することができる、使用を提供する。
【0017】
第九の態様は、プロテアーゼプロ酵素で治療されるべき対象での癌治療の薬剤の製造における活性剤の使用であって、前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、任意に、前記活性剤はプロテアーゼプロ酵素の効果を促進するための細胞間活性を誘導することができる、使用を提供する。
【0018】
第十の態様は、治療的に有効な量のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を対象に投与することを含む癌治療の方法を提供する。
【0019】
第十の態様の実施態様において、前記の方法はプロテアーゼプロ酵素および活性剤、ならびに、任意で追加の活性剤の、供用投与または連続投与を含む。供用投与は、第一および第二の態様の医薬組成物を含む単一の薬剤の投与、または、各々プロテアーゼプロ酵素および活性剤、ならびに追加の活性剤を含む別々の薬剤の供用投与を含み得る。連続投与は、プロテアーゼプロ酵素、活性剤、または追加の活性剤のいずれの順序の投与も含み得る。連続および供用投与は、プロテアーゼプロ酵素、活性剤、または追加の活性剤の異なる経路での投与を含み得る。
【0020】
第十の態様に記載の方法は、すでに活性剤またはプロテアーゼプロ酵素によりそれぞれ治療されていた対象への、プロテアーゼプロ酵素または活性剤の投与を含み得る。
【0021】
第十一の態様は、プロテアーゼプロ酵素の活性剤との混合によって、第一または第二の態様の医薬組成物を調製する方法またはその調製物もしくは処方を提供する。
【0022】
第十一の態様のさらなる実施態様において、前記の方法はさらに、プロテアーゼプロ酵素および/または活性剤、第一および第二の態様の実施態様に記載の、追加の活性剤との混合をさらに含み得る。
【0023】
前記の態様のさらなる実施態様において、プロテアーゼプロ酵素はセリンプロテアーゼプロ酵素である。セリンプロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、またはそれらの混合物であり得る。他の実施態様において、プロテアーゼプロ酵素は、第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含んでおり、第一のプロテアーゼプロ酵素はキモトリプシノーゲンであり、第二のプロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンである、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は4:1から8:1の間の範囲である。さらなる実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は5:1から7:1の間の範囲である。さらなる実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は6:1である。
【0024】
前記の態様の実施態様において、前記活性剤はセレン化合物、バニロイド化合物、および、細胞質解糖系還元剤、ならびに任意のグリコシドヒドロラーゼから成る群の少なくとも一つより選択される。例えば、前記活性剤はセレン化合物、またはセレン化合物、バニロイド化合物、グリコシドヒドロラーゼおよび細胞質解糖系還元剤から成る組み合わせであり得る。
【0025】
前記の態様の実施態様において、医薬組成物は、プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含んでおり、癌治療のための多機能アプローチを提供することが可能で、前記プロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンの少なくとも一つより選択され、ならびに、前記活性剤はセレン化合物、バニロイド化合物、および細胞質解糖系還元剤の少なくとも一つ、および任意でグリコシドヒドロラーゼより選択される。
【0026】
前記の態様のさらなる実施態様において、セレン化合物は、血漿または細胞間液を介して体に吸収され得る、生物が利用可能なセレン源を提供することができる。ある特定の実施態様においては、セレン含有化合物は、メチルセレノシステイン、または、医薬として許容可能なその塩である。
【0027】
前記の態様のある実施態様において、グリコシドヒドロラーゼは、アミラーゼ例えばα-アミラーゼである。
【0028】
前記の態様の他の実施態様において、細胞質解糖系還元剤は、2-デオキシ-D-グルコースである。
【0029】
前記の態様の他の実施態様において、バニロイド化合物はカプシエート(capsiate)すなわち4-ヒドロキシ-3-メチルベンジル(E)-8-メチル-6-ノナノエート(4-hydoroxy-3-methylbenzyl(E)-8-methyl-6-nonanoate)、ジヒドロカプシエートすなわち4-ヒドロキシ-3-メチルベンジル8-メチルノナノエート (4-hydoroxy-3-methylbenzyl8-methylnonanoate)、および、ノルヒドロキシカプシエート(nordihydrocapsiate)すなわち4-ヒドロキシ-3-メチルベンジル7-メチルオクタノエート(4-hydoroxy-3-methylbenzyl7-methyloctanoate)より選択される。好ましくは、バニロイド化合物はカプシエートである。
【0030】
前記の態様のある実施態様において、活性剤は、メチルセレノシステイン、capsiate、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る群の少なくとも一つより選択される。特定の実施態様においては、活性剤(複数)は、メチルセレノシステイン、capsiste、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る。
【0031】
第十二の態様は、腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化、もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができる第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含む医薬組成物であって、第一のプロ酵素はキモトリプシノーゲンであり、第二のプロ酵素はトリプシノーゲンであり、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は4:1から8:1の間の範囲である、医薬組成物を提供する。
【0032】
第十二のある実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は5:1から7:1の間の範囲である。他の実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は6:1である。
【0033】
第十二の他の実施態様において、医薬組成物はさらに、前記の実施態様のいずれか一つに定義された活性剤を含む。
【0034】
第十三の態様は、各々が腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含む医薬組成物であって、第一の活性剤がセレン化合物であり、第二の活性剤が細胞質解糖系還元剤である、医薬組成物を提供する。
【0035】
第十三の態様の実施態様において、細胞間活性とは、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識または分化である。ある実施態様において、セレン化合物は前記の実施態様のいずれか一つに従って定義される。より好ましい実施態様においては、セレン化合物はメチルセレノシステインである。他の実施態様においては、細胞質解糖系還元剤は2-デオキシ-D-グルコースである。
【0036】
第十三の態様の他の実施態様において、医薬組成物はさらに、前記の実施態様のいずれか一つで定義されるプロテアーゼプロ酵素を含む。他の実施態様において、医薬組成物は、さらに、前記実施態様のいずれか一つで定義されたバニロイド化合物およびグリコシドヒドロラーゼより選択された活性剤を含む。
【0037】
第十四の態様は、癌治療の薬剤の製造における第十二または第十三の態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0038】
第十五の態様は、第十二または第十三の態様に記載の、治療的に有効な量の医薬組成物を対象に投与することを含む癌治療の方法を提供する。
【0039】
前記の態様の医薬組成物、プロテアーゼプロ酵素または活性剤は、医薬として許容可能なビヒクル、担体、または希釈液の中で提供され得て、一つまたは複数の医薬として許容可能な賦形剤を含み得る。
【0040】
前記態様のさらなる実施態様において、医薬組成物、剤、使用または方法は、プロテアーゼプロ酵素、活性剤、もしくは医薬組成物の効能を強める、または、望ましくない副作用を弱めることができる、一つもしくは複数の追加の活性剤を含み得る。
【0041】
前記態様のさらなる態様において、医薬組成物、プロテアーゼプロ酵素、活性剤および任意の追加の活性剤は、協同して、単独で、またはどの組み合わせでも、坐薬の形態で提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1AからDは、光学密度492ナノメートルにおける、それぞれCaco2、HEK293、OE33およびPanc1細胞の細胞数の標準曲線のグラフを各々示している;
【図2】図2は、プロ酵素参照処方Bで処理したOE33細胞の顕微鏡写真を示している;
【図3】図3は、プロ酵素参照処方Bの濃度の範囲で処理したOE33細胞のグラフを示している;
【図4】図4AからCは、プロ酵素参照処方B、JおよびTでそれぞれ処理したPanc1細胞のグラフを各々示している;
【図5】図5AからCは、プロ酵素参照処方B、JおよびTでそれぞれ処理したCaco2細胞のグラフを各々示している;
【図6】図6Aおよび6Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のOE33細胞におけるβ-カテニンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図7】図7Aおよび7Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のOE33細胞におけるE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図8】図8Aおよび8Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のPanc1細胞におけるβ-カテニンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図9】図9Aおよび9Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のPanc1細胞におけるE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図10】図10Aおよび10Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のCaco2細胞におけるE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図11】図11Aおよび11Bは、プロ酵素参照処方Jでの処理後のCaco2細胞におけるβ-カテニンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図12】図12は、プロ酵素参照処方Tでの処理後のPanc1細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図13】図13は、プロ酵素参照処方Tでの処理後のCaco2細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリンの上方制御を示す顕微鏡写真を提供する;
【図14】図14は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるJBp1vPおよびDCMに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図15】図15は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図16】図16は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図17】図17は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるキモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図18】図18は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるTAおよびキモトリプシノーゲンに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図19】図19は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるCAおよびトリプシノーゲンに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図20】図20は、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞におけるTCおよびα-アミラーゼに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図21】線維性被膜を生じさせたマウスにおける、in vivo抗血管新生比較調査における群1から5の様々な処方の平均被膜重量を示す棒グラフを提供する;
【図22】図22Aおよび22Bは、HCT-15細胞におけるJBp1vPおよびメチルセレノシステインに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図23】図23Aおよび23Bは、HCT-15細胞におけるJBp1vPおよび2-デオキシグルコースに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図24】図24Aおよび24Bは、HCT-15細胞におけるJBp1vPおよびカプシエートに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【図25】図25Aおよび25Bは、HCT-15細胞における2-デオキシグルコースおよびメチルセレノシステインに対するイソボログラフィック分析を提供する;
【発明を実施するための形態】
【0043】
プロテアーゼプロ酵素の処方は、癌治療において治療的な利点を提供することが示されてきたが、癌細胞および悪性腫瘍へのプロテアーゼプロ酵素の作用メカニズムは、当業者間で完全に理解されていない。従って出願人は、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンを含むセリンプロテアーゼプロ酵素の処方で、異なる三種類の癌細胞株(Panc1、Caco2およびOE33)を治療し、効果およびメカニズムの調査を行った。注目すべき点は、プロテアーゼプロ酵素が、CaCo2腫瘍細胞株の分化(悪性細胞から非悪性細胞への転換可能性)、ならびに、すべての細胞株でE-カドヘリンおよびβ-カテニンの発現の上方制御に関わっていたという驚くべき発見であった。
【0044】
出願人は、セリンプロテアーゼプロ酵素の処方による転移の減少は、細胞間接着に関与するE-カドヘリンおよびβ-カテニン複合体の発現および形成の上方制御を通じて起こったと考えている。細胞間接着の増加の当然の結果として、悪性細胞は第一の腫瘍から漏れにくくなり、または離脱しにくくなり、転移が減少する。
【0045】
この新しい情報が利用できるようになるとともに、本願発明者は、癌治療において機能的相互関係を提供することが可能である、一つまたは複数の活性剤と組み合わせたプロテアーゼプロ酵素を含む処方を調査した。例えば、前記活性剤は、E-カドヘリンおよびβ-カテニンの発現という点において腫瘍細胞の異なる機能に影響することによって、前記の単独のプロテアーゼプロ酵素により高い癌治療活性を提供し得る。総合的な結果として、転移の減少、および/または、細胞死の増加、免疫認識または腫瘍細胞の分化を含み得る、改良された治療が提供される。すなわち、第一及び第二の態様の医薬組成物は、活性剤と組み合わせたプロテアーゼプロ酵素であり、組み合わせによって癌細胞(単数または複数)を標的とする、または、治療する、多細胞または多機能アプローチが可能にするプロテアーゼプロ酵素を提供する。例えば、前記プロテアーゼプロ酵素は、細胞間接着分子の発現を促進するため腫瘍細胞表面またはその近傍で活性化され、その結果として転移を減少させる一方、メチルセレノシステインなどの各々の活性剤は、細胞間レベルで、転移、分化または腫瘍細胞死(例えば細胞死、細胞壊死、免疫認識)の減少を手助けするように作用し得る。
【0046】
<プロテアーゼプロ酵素>
プロ酵素(チモーゲンとしても知られる)は酵素の特異的活性を持たない酵素の前駆体形態であり、従って典型的に酵素の不活性型形態と呼ばれている。プロ酵素は、望ましくない場所での非特異的な酵素活性を阻害または減少させるため、必要になるまで不活性状態を維持している。プロ酵素は、他の酵素によって対応する活性化酵素へと活性化され、複数の酵素の作用および自動活性化を含む活性化カスケードをもたらす。プロ酵素は、活性化酵素によってその後タンパク質分解を受ける癌細胞によって、選択的に活性化されると考えられる。
【0047】
本願明細書で使用される「プロテアーゼプロ酵素」という用語は、in situで活性型プロテアーゼへと活性化され得る、プロテアーゼの前駆体形態を意味する。前記プロテアーゼプロ酵素はヒトまたは動物由来であり得る。前記プロテアーゼ酵素は、タンパク質分解、E-カドヘリンおよび/またはβ-カテニンの発現の上方制御、細胞死、免疫認識促進、および、腫瘍細胞分化を含む、一つまたは複数の細胞効果を提供するよう作用し得る。前記プロテアーゼ酵素は、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、または、グルタミン酸プロテアーゼを含む。前記プロテアーゼは、エンドペプチターゼまたはエキソペプチターゼであり得る。エンドペプチターゼ(またはエンドプロテイナーゼ)は、非末端性アミノ酸(すなわち分子内)のペプチド結合を切断するタンパク分解性ペプチターゼであり、一方エキソペプチターゼは、分子末端のペプチド結合を切断する。
【0048】
ある実施態様において、前記プロテアーゼプロ酵素は、酵素クラス3.4のペプチターゼ由来の酵素前駆体であって、特に酵素クラス3.4.21がセリンエンドペプチターゼ、および、さらに特に酵素クラス3.4.21.1由来のキモトリプシン、酵素クラス3.4.21.2由来のキモトリプシンCまたは酵素クラス3.4.21.4由来のトリプシンである(Nomenclature Committee of International Union of Biology and Molecular Biologyの分類に従って分類されたクラス)。
【0049】
一つの実施態様において、前記プロテアーゼプロ酵素はセリンプロテアーゼプロ酵素である。セリンプロテアーゼ酵素は、トリプシンまたはキモトリプシン型の形態、スブチリシン型、アルファ/ベータヒドロラーゼ、およびシグナルペプチターゼを含む。セリンプロテアーゼは以下のセリンエンドペプチターゼを含み得る:キモトリプシン、メトリジン、トリプシン、トロンビン、凝固因子Xa、プラスミン、エンテロぺプチターゼ、アクロシン、α-溶解性エンドペプチターゼ、グルタミルエンドぺプチターゼ、カテプシンG、凝固因子VIIa、凝固因子IXa、ククミシン、プロリルオリゴペプチターゼ、凝固因子Xia、カニ亜目甲殻類、血漿カリクレイン、組織カリクレイン、膵エラスターゼ、白血球エラスターゼ、コラーゲン因子XIIa、キマーゼ、活性型補体C1r、活性型補体C1s、古典的補体経路C3/C5転換酵素、補体因子I、補体因子D、補体第二経路C3/C5転換酵素、セレビシン、ハイポダーミンC、リシンエンドペプチターゼ、エンドペプチターゼLa、γ-レニン、ベノムビンAB、ロイシンエンドペプチターゼ、トリプターゼ、スクテラリン、ケキシン、スブチリシン、オリジン、ペプチターゼK、サーモミコリン、テルミターゼ、エンドペプチターゼSo、t-プラスミノーゲン活性化因子、プロテインC(活性化型)、膵エンドペプチターゼE、膵エラスターゼEII、IgA特異的セリンエンドペプチターゼ、u-プラスミノーゲン活性化因子、ベノムビンA、フューリン、ミエロブラスチン、セメノゲラーゼ、グランザイムA、グランザイムB、ストレプトグリシンA、ストレプトグリシンB、グルタミルエンドペプチターゼII、オリゴペプチターゼB、カブトガニ凝固因子C、カブトガニ凝固因子B、カブトガニ凝固酵素、リプレッサーLexA、シグナルペプチターゼI、トガビリン、フラビビリン、エンドペプチターゼClp、プロタンパク転換酵素1、プロタンパク転換酵素2、ヘビベノム因子アアクティベーター、ラクトセプシン(lactocepsin)、アセンブリング(assembling)、ヘパシビリン、スパーモシン、セドリシン、xanthomonalisin、C末端プロセシングペプチターゼ、フィサロリジン(physarolisin)、マンナン結合レクチン会合セリンプロテアーゼ2、ロンボイド様プロテアーゼ、ヘプシン、ペプチターゼDo、HtrA2ペプチターゼ、マトリプターゼ、C5aペプチターゼ、アクアリジン1、サイト1プロテアーゼ、ペストウイルスNS3ポリプロテインペプチターゼ、ウマアルテリウイルスセリンペプチターゼ、感染性膵臓壊死ビルナウイルスVp4ペプチターゼ、SpoIVBペプチターゼ、角質層キモトリプシン様酵素、カリクレイン8、カリクレイン13、オビダクチン。
【0050】
ある特定の実施態様において、前記セリンプロテアーゼプロ酵素は、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンまたはそれらの混合物である。トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンのプロ酵素は、キモトリプシンクラス3.4.21.1もしくは3.4.21.2、または、トリプシンクラス3.4.21.4より選択された、または、その他任意の適する原料より選択された、酵素の前駆体であり得る。これらの酵素は商業的に入手可能であり、ウシまたはブタ起源のものであり得る。
【0051】
キモトリプシノーゲンは、以下のアミノ酸、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、およびロイシンの場所で、優先的にタンパク質を切断する、酵素キモトリプシンのプロ酵素形態である。キモトリプシンは、キモトリプシンA、キモトリプシンB(B1およびB2形態を含む)、キモトリプシンC、α-chymarophth、アバザイム(avazyme)、キマー(chymar)、キモテスト(chymotest)、エンゼオン(enzeon)、クイマー(quimar)、クイモターゼ(quimotrase)、α-キマー、α-キモトリプシンA、α-キモトリプシンと呼ばれ得る、または、それらを含み得る。キモトリプシンCは、ブタキモトリプシノーゲンCまたはウシのプロカルボペプチターゼAのサブユニットIIから形成され、以下のアミノ酸、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、およびアスパラギンの場所で、優先的にタンパク質を切断する。キモトリプシノーゲンは、キモトリプシノーゲンB1およびキモトリプシノーゲンB2を含む。
【0052】
トリプシノーゲンは、アルギニンおよびロイシンの場所で、優先的に切断するトリプシンのプロ酵素形態である。トリプシンは、α-トリプシン、β-トリプシン、コクナーゼ、
パレンザイム、パレンザイモール、トリプター、トリピュア、偽トリプシン、トリプターゼ、トリプセリン(tripcellin)、スパームレセプターヒドロラーゼβ-トリプシンと呼ばれ得る、または、それらを含み得て、一つのペプチド結合の切断によってトリプシノーゲンより形成される。さらなるペプチド結合の切断は、αおよびその他のアイソフォームを生じる。複合的なカチオン性およびアニオン性のトリプシンは、様々な脊椎動物の膵臓、ならびに、ザリガニ、昆虫(コクナーゼを含む)および微生物(Streptomyces griseus)を含む下等種族から単離することができる。消化中の通常の段階では、不活性トリプシノーゲンは、腸粘膜に存在するエンテロペプチターゼによってトリプシン酵素へと活性化され、塩基性アミノ酸/タンパク質のカルボキシル側でペプチド結合を切断するよう作用するセリンプロテアーゼとなる。
【0053】
前記のように、プロ酵素の形態は基本的にin situで活性化される(例えばin vivoおよびin vitro活性化)酵素の不活性型形態を提供する。例えば、前記プロ酵素の活性化(プロ酵素から活性型酵素への転換)は、腫瘍細胞表面と接触することで起こり得る。前記プロ酵素トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンは、腫瘍細胞と接触すると酵素トリプシンおよびキモトリプシンへと選択的に活性化され、正常細胞と接触すると活性化されない、と考えられている。プロ酵素の使用は、in situでの活性型酵素の提供に伴う、望ましくない反応または意図した標的腫瘍細胞に到達する前に酵素が失活するなどの問題を減らす。
【0054】
腫瘍細胞に関して、プロテアーゼ酵素は、細胞壁のペプチド鎖に存在するアミド結合を切断することによって、悪性細胞の細胞壁を破壊するよう作用することができる(タンパク質分解)。プロテアーゼ阻害因子はまた、非腫瘍細胞に存在して細胞壁を破壊する酵素活性を阻害または抑制しており、悪性腫瘍細胞には存在しないと理解されている。タンパク質分解活性の提供に加えて、プロテアーゼプロ酵素は、腫瘍細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリンの発現を上方制御することができる。細胞間接着は、細胞表面でのβ-カテニンおよびE-カドヘリン間の複合体形成または結合によって促進され、従ってβ-カテニンおよびE-カドヘリンの発現増大は、細胞間接着の促進につながり、その結果腫瘍細胞の転移が減少する。プロテアーゼプロ酵素は、免疫認識または分化の増大などの、その他の細胞活性を提供し得る。
【0055】
<活性剤>
第一の態様、第二の態様、第十二の態様および第十三の態様における活性剤は、癌治療のため、または、腫瘍細胞治療の改良のために細胞間活性を誘導するためである。
【0056】
一つの実施態様において、前記細胞間活性は、腫瘍細胞の細胞死、細胞壊死、免疫認識または分化である。
【0057】
多機能アプローチに関連して、ある実施態様において、前記活性剤は癌治療における前記プロテアーゼプロ酵素との機能的相互関係を提供することができる。例えば前記活性剤は、β-カテニンおよびE-カドヘリンの発現に関連するかどうかは不明である改良された癌治療活性を提供し得るが、その総合的な結果として、転移の減少および/または腫瘍細胞の細胞死、免疫認識もしくは分化の増加などの改良された治療を提供する。前記活性剤は、細胞内レベルで、転移の減少、分化、または腫瘍細胞死(例えば、細胞壊死、細胞死、免疫認識)を手助けするように作用し得る。
【0058】
一つの実施態様において、前記活性剤は、セレン化合物、バニロイド化合物および細胞質解糖系還元剤、ならびに任意でグリコシドヒドロラーゼ、から成る群の少なくとも一つより選択される。例えば、前記活性剤はセレン化合物から成り得る、または、セレン化合物、バニロイド化合物、グリコシドヒドロラアーゼ、および細胞質解糖系還元剤から成る活性剤の組み合わせとし得る。
【0059】
<セレン化合物>
ある実施態様において、「セレン化合物」という用語は、生物が利用可能なセレン源を提供することができる、セレンを含むあらゆる化合物を意味する。前記セレン化合物は、亜セレン酸塩およびセレン酸塩に含まれるミネラルなどの無機化合物、ならびに、メチルセレノシステインなどの有機化合物を含み得る。前記セレン化合物は、植物抽出物または商業合成で得られる。特定の実施態様において、前記セレン化合物は、血漿または細胞間液を介して容易に体に吸収され得る生物が利用可能なセレン源を提供する。
【0060】
一つの実施態様において、「セレン化合物」という用語は、2価または4価のセレン化合物を含むアミノ酸を意味する。アミノ酸は、イソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、より選択され得る。2価または4価のセレン化合物は、硫黄またはその他の2価の種へ置換されたアミノ酸中に存在し得る。この置換は、前記アミノ酸で天然に生じ得る。
【0061】
一つの実施態様において、「セレン化合物」という用語は、下記の式1の2価セレン化合物もしくは下記の式2の4価セレン化合物を含む化合物または医薬として許容可能なそれらの塩を意味する。
【0062】
【化1】
【0063】
[R1およびR3はそれぞれに独立して、H、OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルより選択される。C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルは、任意でハロゲン、-OH、-NH2、-C(O)OH、-C(O)R5より独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R2およびR4はそれぞれに独立して、H、-OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルより選択され、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルは、任意で-NH-、-N(C1-4アルキル)-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、およびC(NH2)H-C(O)O-より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)H、-C(O)-OR5、-N(C1-4アルキル)Hより、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアニルより独立して選択される0から3個の置換基で置換される;
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、および、シクロアルケニル、特にC1-12アルキルより選択される]
【0064】
上記実施態様において、以下が理解される。
C1-4アルキルおよびC1-12アルキルは、直鎖、分枝もしくは環状アルキル鎖またはそれらの組み合わせを意味する;ならびに、
C2-6アルケニルおよびC2-12アルケニルは直鎖、分枝もしくは環状アルケニル鎖またはそれらの組み合わせを意味する
【0065】
特定の実施態様において、R1およびR3はそれぞれ独立して、H、OHおよびC1-4アルキル、ならびに、さらに特にメチルより選択される。
【0066】
その他の特定の実施態様において、R2およびR4はそれぞれ独立して、H、OHおよび-C1-6アルキル-C(NH2)H-C(O)OH、ならびに、さらに特に-C1-3アルキル-C(NH2)H-C(O)OHより選択される。
【0067】
他の実施態様において、前記セレン化合物は、メチルセレノシステイン、メチルセレノール、メチルセレン酸、または、医薬として許容可能なそれらの塩もしくは混合物より選択される。特定の実施態様において、前記セレン化合物はメチルセレノシステインまたは医薬として許容可能なその塩である。
【0068】
前記セレン化合物は、癌治療への機能的相互関係または多機能アプローチの提供による、前記プロテアーゼプロ酵素の治療の有効性を改良するように、選択される。例えば、セレン化合物は、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識および/または分化を介して腫瘍細胞の治療を改良するための細胞間活性を誘導し得る。
【0069】
セレン摂取と癌の関連は数十年にわたって知られている。セレンは推奨食事許容量(Recommended Dietary Allowance (RDA))55マイクログラムの必須微量元素である。セレンは、抗酸化グルタチオンペルオキシターゼ、代謝酵素であるチオレドキシン還元酵素、および、甲状腺ホルモン活性化酵素ヨードチロニンデイオジナーゼ(iodothyronine deiodinase)など、様々な重要な酵素の活性化に必須である。セレン化合物は、細胞および肝臓の抗酸化活性(グルタチオンペルオキシターゼ)の促進を通じて、または、環境中の発癌物質の除去の促進(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)を通じて抗癌予防効果を提供すると考えられている。セレノメチオニンなどの有機セレンは、一日当たり約3500マイクログラムのレベルで有毒になり得るが、亜セレン酸ナトリウム/セレン酸ナトリウムなどの無機セレンは、約1500マイクログラムで有毒になり得る。癌治療プロトコルでは、セレンは一日当たり約900から2000マイクログラムの範囲で治療を行うが、長期服用においては一日400マイクログラムが安全である。
【0070】
セレンタンパク酵素は、一日当たりわずか90マイクログラムのセレンの食事摂取で通常飽和(活性は最大化されている)しており、最適な抗癌服用量よりもはるかに低いが、セレンの抗癌効果は潜在的な毒性のある服用レベルに近い服用量で起こることが示されている。
【0071】
亜セレン酸塩/セレン酸塩などの無機化合物は、セレノメチオニンなどの典型的な有機化合物よりも、癌治療において有効であることが示されている。亜セレン酸塩/セレン酸塩化合物は、癌細胞および正常細胞の両方に毒性があり、選択性少なく侵襲性の高い細胞壊死(細胞死の反対)機構を通じて機能する、セレン化水素へと代謝される。セレノメチオニンは、より毒性は少ないが、抗癌活性を持たない全身のタンパクに広く取り込まれる。
【0072】
メチルセレノシステイン(Se-メチルセレノシステインとしても知られる)は、非常に低い毒性および体内蓄積で、細胞周期の進行および前癌状態の乳腺病変の増殖を妨げ、癌細胞株の細胞死を誘導する化学抗癌剤である。メチルセレノシステインは、高セレン土壌で栽培された、ニンニク、野生ネギ、タマネギおよびブロッコリーを含む様々な植物において天然に形成され、メチルセレノシステイン豊富な食物は、過剰な組織への蓄積や毒性がなく、優れた抗癌活性を示す。メチルセレノシステインは、ベータ-リアーゼ酵素によってメチルセレノールへと転換される。腫瘍細胞に対する活性という点では、メチルセレノールは血管新生を阻害し、細胞死を引き起こすとして知られているが、毒性が低く、容易に体内から除去される。
【0073】
以下の化学構造式は様々なセレン化合物の構造式である:
【0074】
【化2】
【0075】
上記の実施態様に記載のセレン化合物は、すべての医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、結晶形態、ジアステレオマー、立体異性体(例えばシスまたはトランス異性体)、互変異性体、プロドラッグ、代謝産物およびそれらの鏡像異性体を含み得る。
【0076】
<バニロイド化合物>
ある実施態様において、「バニロイド化合物」という用語は、バニリルまたはバイロイル型の部分もしくはファーマコアを含む任意の化合物を意味する。前記バニロイド化合物は、既知の化学的分類の、レシニフェラノイド(resiniferanoid)、カプサイシノイド(capsaicinoid)、不飽和ジアルデヒドおよびトリプレニルフェノールなどの天然に存在するバニロイドを含む。例えば、これらの既知の化学的分類に由来する化合物は、レシニフェラトキシン、カプサイシン、イソバレラールおよびスクチジェラール(scuitigeral)を各々含む。その他のバニロイド化合物の例は、バニリン、バニリン酸、ノニバミド、オルバニル、ジヒドロカプサイシンおよびバニリルマンデリン酸を含む。前記バニロイド化合物は、カプサイシンなどの天然に存在する化合物、または半合成もしくはカプサゼピンなどの全合成バニロイドを含む。
【0077】
他の実施態様において、「バニロイド化合物」という用語は、下記の一般式IIIの化合物、または医薬として許容可能なそれらの塩を意味する。
【0078】
【化3】
【0079】
[R1およびR3はそれぞれに独立して、H、OH、OCH3、C(O)H、OC2-6アルキル、OC2-6アルケニル、SH、SC1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルおよびN(C1-6)2より選択され;
R3およびR4はそれぞれ独立して、H、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルより選択され、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルは、任意で-NR6-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-C(NR6R6)H-、C(O)O-、-C(S)-、-C(S)NR6-および-NR6-C(S)-NR6より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、-C(S)-、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキニルおよび任意に置換されたアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換される;ならびに、
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、特にC1-12アルキルより選択される;ならびに、R6はH、C1-6アルキルより選択される;ならびに、R3およびR4は、O、S、Nより選択される0から3個のヘテロ原子を含み、任意で置換された炭素原子3から8の不飽和または飽和環を形成するよう結合され得る]
【0080】
上記の実施態様において、以下が理解される。
C2-6アルキルおよびC1-20アルキルは、直鎖、分枝もしくは環状アルキル鎖またはそれらの組み合わせ;
C2-6アルケニルおよびC2-20アルケニルは直鎖、分枝もしくは環状アルケニル鎖またはそれらの組み合わせ;
C2-20アルキニルは直鎖、分枝もしくは環状アルキニル鎖またはそれらの組み合わせ;
任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアルキルシクロアルケニルおよび任意で置換されたアリールは、ハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)-、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアリール、ならびに例えばレシニフェラトキシンを含む、より選択される一つまたは複数の基での、任意の置換を意味する。
【0081】
特定の実施態様において、R1およびR2は、それぞれ独立してOH、C(O)H、OCH3より選択され、さらに特にOH、OCH3より選択される。
【0082】
他の実施態様において、R3は、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルケニル、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルキルより選択され、さらに特に、-CH2-NH-C(O)-C4H8-CH=CH-CH(CH3)CH3より選択される。この実施態様において、アルキルまたはアルケニル鎖は直鎖または分枝であり得ると理解される。
【0083】
他の実施態様において、R3は、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルケニル、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルキルより選択され、さらに特に、-CH2-O-C(O)-C4H8-CH=CH-CH(CH3)CH3より選択される。この実施態様において、アルキルまたはアルケニル鎖は直鎖または分枝であり得ると理解され得る。
【0084】
他の特定の実施態様において、R4はHである。
【0085】
前記バニロイド化合物は、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、およびノルジヒドロカプサイシンより選択され得る。
【0086】
好ましくは、前記バニロイド化合物は、カプシエイト、ジヒドロカプシエイトおよびノルジヒドロカプシエイトより選択される。一つの実施態様において、バニロイド化合物はカプシエイトである。好ましくは、カプシエイト、ジヒドロカプシエイトおよびノルジヒドロカプシエイトは、実質的にカプサイシンを含まない形で、例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%または99.9%の純度で提供される。一般的にチリ抽出物として得られるカプシエイトは、通常少量のカプサイシンおよびその他類似の構造の化合物を含むと理解される。カプサイシンは、望ましくない炎症応答(広範囲に局在するヒスタミン放出の誘発による)を引き起こし、従って、特定の投与方法は、特定の化合物、または、特定の必要に合わせて調製された特定の純度もしくは量のそれら化合物にとって望ましくない可能性がある。高純度のカプシエイト源の一つは、味の素株式会社から得られる甘唐辛子「CH-19」より提供される。
【0087】
他の実施態様において、前記バニロイド化合物は、8-メチル-N-バニリル-6-ノン-エナミド;N-バニリルノナンアミド;N-(9-デセニル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニルアセトアミド;N-(9Z-ドデセニル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルアセトアミド; N-(9Z-テトラデセニル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルアセトアミド; N-((4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)−メチル)-9-デセンアミド;N-((4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)−メチル)-9Z-ドデセンアミド; N-((4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)−メチル)-9Z-テトラドデセンアミドおよびN-((4-(3-フェニル)−2(S)-2-アミノ-1-プロポキシ)-3-メトキシフェニル)-メチル)-ノナンアミド、より選択される。
【0088】
他の実施態様において、前記バニロイド化合物はカプサゼピン、すなわち、N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]−7,8-ジヒドロキシ-1,3,4,5-テトラヒドロ-2-ベンズアゼピン-2-カルボチオミド、である。
【0089】
多くのバニロイド化合物、とりわけカプサイシンは、高温や酸性pHなどの侵害性刺激に対して自然に応答するイオンチャネルである、一過性受容体ポテンシャルバニロイドタイプ1(TRPV1)に結合する。TRPV1に作用するその他のバニロイドは、レシニフェラトキシンおよびオルバニルを含む。
【0090】
バニロイド化合物は、カプシノイドとしても知られている、カプサイシンおよびカプシエイトを含む。カプシノイドは、カプシエイト、ジヒドロカプシエイトおよびノルジヒドロカプシエイトを含み、チリペッパー中に天然に存在する基質である。それらは、ホットペッパーの辛みを引き起こす化合物であるカプサイシンと構造的には類似しているが、カプシノイドは概してこの特徴を欠いており、概算「辛み閾値」はカプサイシンの約1/1000である。
【0091】
カプサイシンは、(E)-N-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル]-8-メチル-6-ノンエンアミドであり、そのアナログはカプサイシンの6,7-ジヒドロ誘導体であるジヒドロカプサイシンを含む。前記の通り、カプシノイドは、カプシエイトすなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル(E)-8-メチル-6-ノナノエイト、ジヒドロカプシエイトすなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル 8-メチルノナノエイト、および、ノルジヒドロカプシエイトすなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル 7-メチルオクタノオエイトを含む。これらの化合物のいくつかの化学構造式を以下に示す:
【0092】
【化4】
【0093】
カプシエイトは、細胞死および腫瘍発生の減少を提供することができる。カプシエイトは、ミトコンドリアを介して細胞の還元状態に影響することによって細胞死を誘導すると考えられている。
【0094】
前記バニロイド化合物は、癌治療において機能的相互関係と多機能アプローチの提供によってプロテアーゼプロ酵素の治療効果を促進するように選択される。例えば、バニロイド化合物は、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識および/または分化を介して、腫瘍細胞治療を改良するための細胞間活性を誘導し得る。
【0095】
下記の化学構造はバニリン、バニリン酸、およびレシニフェラトキシンである:
【0096】
【化5】
【0097】
前記実施態様に記載のバニロイド化合物は、すべての医薬として許容可能な塩、水和物、溶媒和物、結晶形態、ジアステレオマー、立体異性体(例えばシスまたはトランス異性体)、互変異性体、プロドラッグ、代謝産物およびそれらの鏡像異性体を含み得る。
【0098】
<グリコシドヒドロラーゼ>
ある実施態様において、「グリコシドヒドロラーゼ」という用語は、二つまたはそれ以上の炭水化物間、または、炭水化物と炭水化物ではない部分の間のグリコシド結合を加水分解することができる任意の酵素を意味する。グリコシドヒドロラーゼは、クラス3.2.1由来の酵素、特にクラス3.2.1.1から3.2.1.3由来の酵素とし得る。ある実施態様において、グリコシドヒドロラーゼはアミラーゼである。アミラーゼは、α-アミラーゼ、β-アミラーゼおよびγ-アミラーゼより選択され、より好ましくはアミラーゼ2、アミラーゼアルファ1A、アミラーゼアルファ1B、アミラーゼアルファ1C、アミラーゼアルファ2A、アミラーゼアルファ2Bより選択され得る。ある実施態様において、アミラーゼはα-アミラーゼである。
【0099】
アミラーゼはグリコシドヒドロラーゼであり、α-1,4-グリコシド結合に作用する。アミラーゼは、腫瘍細胞の表面糖タンパクに存在する炭水化物を分解する。前記アミラーゼは、癌治療において機能的相互関係と多機能アプローチの提供によってプロテアーゼプロ酵素の治療効果を促進するように選択される。前記アミラーゼは、ヒト、動物、バクテリアまたは植物起源とし得る。例えば、α-アミラーゼはAspergillus oryzae、Bacillus licheniformis、オオムギ麦芽、家畜ブタ(hog)膵臓、ヒト膵臓、ブタ(porcine)膵臓およびTriticum aestivumより得られ得る。
【0100】
<細胞質解糖系還元剤>
ある実施態様において、「細胞質解糖系還元剤」という用語は、細胞質解糖系で還元することができる剤を意味する。他の実施態様において、細胞質解糖系還元剤は、2-デオキシ-D-グルコースもしくは医薬として許容可能な塩、エステル、またはそのプロドラッグである。
【0101】
前記細胞質解糖系還元剤は、癌治療において機能的相互関係と多機能アプローチの提供によってプロテアーゼプロ酵素の治療効果を改良するように選択される。
【0102】
前記細胞質解糖系還元剤は、解糖系の遮断剤または阻害剤、例えば、嫌気代謝細胞特異的でラクトースデヒドロゲナーゼを阻害することができるオキサマート、または、解糖系においてグリセルアルデヒド3-ホスフェートデヒドロゲナーゼを阻害することができるヨードアセテート、であり得る。
【0103】
解糖系阻害剤は、2-デオキシ-D-グルコースの脂溶性のアナログまたはプロドラッグを含み得る。脂溶性のアナログは、エステル、エーテル、ホスホエステルのようなヒドロキシル基の誘導体を含む。その他は、ヒドロキシル基の除去や、フッ素ならびにヨウ素などのハロゲン置換、またはチオールならびにチオアルキル基置換を含む。リポソーム製剤化2-デオキシグルコースおよびそのアナログ、または酵素的開裂可能な2-デオキシグルコース誘導体で提供され得る。例は、C-1位置のグリコシドを有するグルクロニドを含む。2-デオキシ-D-グルコースのモノおよびジエステルなどの、2-デオキシ-D-グルコースのプロドラッグとして機能し得る2-デオキシD-グルコースの脂溶性アナログは、吉草酸エステル、ミリスチン酸エステル、および、パルミチン酸エステルなどを含み得る。
【0104】
解糖系阻害剤はまた、6-デオキシ-D-グルコース、6-フルオロ-D-グルコース、6-O-メチル-D-グルコース、6-チオ-D-グルコース、2-デオキシ-D-グルコースそのものおよびそのアナログ、2-デオキシ-2−ハロ-D-グルコース(例えば2-ブロモ、2-フルオロもしくは2-ヨード-D-グルコース)、3-デオキシもしくは3-フルオロ-D-グルコース、または、4-デオキシもしくはならびに4-フルオロ-D-グルコース、2-フルオロもしくは3-フルオログリセルアルデヒドまたはグリセレートグリセリン酸、例えば、3-フルオロ-2-ホスホグリセレートホスホグリセリン酸、2-フルオロ-プロピオン酸もしくはその塩、2,2-ジフルオロ-グプロピオン酸、3-ハロ-ピルベート、3-ハロプロピオン酸、2,2-チオメチル酢酸、1-デオキシ-D-グルコース、5-チオ-D-グルコース、3-フルオロD-グルコースおよび4-フルオロ-D-グルコース、2-フルオロ、2-ヨード、2-チオ、もしくはまたは、2-メトキシ-グリセルルデヒドもしくグリセレートはグリセリン酸、3-フルオロ、3,3-ジフルオロ、エノラーゼ 3-ヨード-、3-カルボキシ-および3-チオグリセレートを含み得る。
【0105】
一つの実施態様において、「解糖系還元剤」という用語は、下記式IVの化合物または医薬として許容可能なそれらの塩、プロふぉらああっぐもしくはエステルを意味する:
【0106】
【化6】
【0107】
[XはOおよびSより選択され;
R1かは水素、ハロゲン、OH、-OC(O)R6より選択され;
R2からR4はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、-OC(O)R6より選択され;
R5はハロゲン、OH、SH、-OC(O)R6より選択され;および
R6はC1-20アルキルである]
【0108】
好ましくは、ハロゲンは、F、BrまたはI、より好ましくはFを意味する。以下の様々な実施態様それぞれは、各々またはそれらの任意の組み合わせで用いられる。XはOである。R1はOHである。R2はHまたはFである。R3はOHまたはFである。R4はOH、FまたはSHである。R5はOH、FまたはSHである。
【0109】
他の実施態様において、XはOであり、R1はOHより選択され、R2はH、Br、F、I、OH、-C(O)-OR6より選択され、R6はC1-20アルキルより選択され、およびR3からR5はOHである。好ましくは、R2はHである。
【0110】
<追加的な活性剤>
第一の態様、第二の態様、第十二の態様および第十三の態様の医薬組成物は、さらにその他の活性剤を含み得る。これらの活性剤の添加は癌治療を改良し得る。このアプローチを用いると、低用量の各剤で治療効果を達成し得る。従って、不都合な副作用の可能性が減る。また、望ましくない副作用を減らし、より高い用量での各剤の使用も可能であり得る。追加的な活性剤は、補助的、追加的、または改良された治療機能を提供し得る。
【0111】
第一の態様、第二の態様、第十二の態様および第十三の態様の医薬組成物は、一つまたは複数の、補助的、追加的、または改良された治療機能を提供する以下の活性剤を含み得る:
・ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェノール、トコトリエノール)、ポリフェノール抗酸化物質(レスベラトロル、フラボノイド)、カロテノイド(リコペン、カロテン、ルテイン)、を含む抗酸化物質。レスベラトロルは、抗腫瘍および化学抗癌に有効性を示し、特にトランスレスベラトロルはヒト乳癌の治療に有効である。
・L-スレアニン(threanine)、すなわちガンマ-グルタミルエチルアミドまたは5-N-エチル-グルタミンであって、グルタミン酸アナログまたはアミノ酸誘導体。
・クルクミノイド、クルクミンまたはその誘導体。
・ベータグルカン(1-3,1-6ベータグルカン)
・水素シアニド(HCN)、例えば、OSCNイオンを生じるLPOはタンパク分解を加速する。
・フラバノール、キサントフィル、リミノイドを含む植物性栄養素抽出物。
・プロテアーゼ酵素阻害剤、例えばウシ膵臓トリプシン阻害因子としても知られるアプロチニン。医薬組成物と組み合わせた酵素阻害因子の使用は、腫瘍細胞から離れたシステム/体に存在し得る、任意のプロテアーゼの阻害を促進し得る。従って、このような酵素の望ましくない効果を減らすことができる。
・成長因子(例えば、BMP、TGF-P、FGF、IGF)。
・サイトカイン(例えばインターロイキンおよびCDF)
・抗生物質
・腫瘍細胞壊死因子(TNF)、酸性もしくは塩基性の繊維芽細胞成長因子(FGF)または肝細胞成長因子(HGF)の血管新生活性を阻害または中和することができる抗体、組織因子、プロテインCまたはプロテインSの凝固活性を阻害または中和する抗体、HER受容体に結合することができる抗体。
・癌治療に役立つその他任意の活性剤。
【0112】
その他の追加的な治療用の剤が、第一および第二の態様においてプロテアーゼプロ酵素または活性剤と組み合わせて使用される際は、Physician Desk References(PDR)で述べられている通りの、そうでなければ当業者によって決定された通りの、用量で使用され得る。
【0113】
<用語>
プロテアーゼプロ酵素に関連する「活性化」は、プロテアーゼプロ酵素を、腫瘍細胞の細胞間接着を促進することができる、腫瘍細胞のタンパク質分解効果をもつ、または、腫瘍細胞の細胞死、分化もしくは免疫認識を誘導することができる形態へ、in situ (例えば、in vitroまたはin vivo)で変換させること意味する。
【0114】
「細胞死」は様々な刺激で誘導され得る、通常制御された、規則正しい、慎重な、細胞の自己破壊過程である。細胞死は、周辺組織を損傷し炎症を引き起こす細胞壊死よりも侵襲性が少ない。
【0115】
「血管新生」は、血管の形成、特に既存の血管から新しい毛細血管が増殖することである。癌細胞が生存するためには、正常細胞よりも著しく多くの血液供給を必要とするため、血管新生は癌細胞が腫瘍へと成長するために必須である。血管新生または血管新生イベントは、多くの病理学的な過程、とりわけ腫瘍成長および転移に関与しており、ならびに、糖尿病の眼網膜症、乾癬および関節症などの、血管増殖特に微小血管系での増殖が増加するその他の疾患に関与している。
【0116】
「細胞周囲の」という用語は、細胞周辺の組織、細胞周辺の組織上、細胞近傍、または細胞周辺の組織内を意味する。さらに特に、この用語は腫瘍細胞周辺の組織または組織内を意味する。
【0117】
「細胞内の」という用語は、細胞の内側を意味する。
【0118】
「分化」、「分化する」という用語またはその類似の変形は、細胞がより特殊化して異なる機能を得るようになる能力を意味する。ある基準において、悪性腫瘍細胞は脱分化した細胞であると考えられる。それらは現在特殊化されていない、以前特殊化されていた細胞であり、脱分化の過程でこれら悪性細胞の成長を制限する体の能力が妨げられたことを意味する。従って、腫瘍細胞の分化は、少なくとも部分的に、悪性細胞の健康または正常細胞への形質転換を伴い、これは制御不能な成長、侵襲および/または転移の性質を減少させるという方法での悪性細胞の形質転換を意味する。
【0119】
「免疫認識」という用語は、免疫機構による認識、および、それに続く免疫機構による除去または排除を意味する。免疫機構の役割の一つは、腫瘍を同定し除くことである。腫瘍の形質転換した細胞は、正常細胞には見られない抗原を発現する。免疫機構にとってはこの抗原が異物のように判断され、抗原の存在により免疫細胞による形質転換した腫瘍細胞への攻撃が引き起こされる。癌細胞のいくつかの形態は、免疫認識を阻害または減少させる能力を有する。
【0120】
「転移」「転移する」という用語またはその類似の変形は、一つの器官または体の部分から、その他の隣接していない器官または体の部分へと病気が拡散することである。悪性腫瘍細胞および感染は、転移能を有する。例えば、癌細胞は第一の腫瘍から剥離または離脱し、リンパ管および血管に入り、血流にのって循環し、体の他の場所に再着床することができる。転移に続いて形成された、原発腫瘍由来の新しい腫瘍は二次または転移腫瘍と呼ばれ、原発または最初の腫瘍と同じ細胞から構成される。例えば、肺に転移した乳癌は異常な肺細胞ではなく、異常な胸細胞を含む二次腫瘍を形成し、乳癌ではなく転移乳癌と呼ばれる。
【0121】
「悪性」「悪性の」という用語またはその類似の変形は、再生不良性、侵襲性、および転移性という特徴的な性質を含み、成長および発達を続けるという、癌細胞および腫瘍の傾向のことである。例えば、悪性腫瘍は、成長の中でその悪性が自己限定されず、隣接組織へ侵襲することができ、離れた組織にまで拡散(転移)し得るが、良性腫瘍はそれらの性質のいずれも持たない点で、悪性腫瘍は非癌性の良性腫瘍とは対照的である
【0122】
「不全」とは、細胞において分化の逆であり、悪性腫瘍の特徴である。この用語は、増殖能が増してゆくことも包含する。不全は、分化の喪失、脱分化の増大、正常細胞に存在する構造的および機能的な分化の喪失が増すことを含む。
【0123】
「タンパク質分解」は、プロテアーゼと呼ばれる細胞酵素による、または、分子内消化による、方向性を持ったタンパク質分解(消化)である。さらに特に、タンパク質分解とは、プロテアーゼ酵素開裂、タンパク質中のアミド/ペプチド結合の加水分解による、タンパク質の分解である。
【0124】
「細胞間接着」「細胞接着分子」という用語またはその類似の変形は、一般に細胞外表面に局在し、細胞とその他の細胞または細胞群を接着することに関わる(その例は、E-カドヘリンおよびβ-カテニン)、様々な既知の細胞間接着分子である。異なる細胞型は、これら分子の代替的な形態を有し得る。これらの分子は、さらに、細胞外マトリックスとの接着に関与し得る。その他の細胞間接着分子は、カドヘリン、インテグリン、セレクチン、およびイムノグロブリン細胞接着タンパクファミリーより選択され得る。
【0125】
「ホモログ」および「機能的に同等な」という用語は、組み換え分子に加えて、同じタンパク質ファミリー内の既知の分子などの、ほかのタンパク質またはバリアントが含まれるべきである。
【0126】
「上方制御」によって、これが、以前に決定された基準と比較して、分子の発現または活性のレベルが上昇していることを含むということが理解され得る。これは、基準より少なくとも5%の上昇であり得る。しかしながら特に好ましくは、基準と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、もしくは50%またはそれ以上、上方制御される。前記基準は、治療前の分子の発現または活性、または、ある細胞型について正常ならびに期待されるレベルに従うなど、様々な方法で決定され得る。
【0127】
<方法と使用>
第五から第九の態様ならびに第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、一つまたは複数の以下の効果を含み得る:悪性腫瘍の再発の減少、悪性腫瘍の転移の減少、腫瘍の数または大きさの減少、腫瘍細胞の分化、細胞接着を誘導して転移を減少させるE-カドヘリンおよびβ-カテニンの悪性腫瘍における発現、腫瘍細胞における免疫認識阻害能の低下。
【0128】
一つの実施態様は、第一および第二の態様の治療的に有効な量のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を、一定期間および癌細胞の分化を誘導するために十分な条件下で対象に投与することを含む、対象中の癌細胞を分化させる方法を提供する。第五および第六の態様の使用ならびに第七の態様の方法は、癌細胞の分化を含み得る。ある特定の実施態様において、癌細胞の分化は直腸結腸癌細胞の分化である。
【0129】
ある実施態様において、第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、転移癌の治療の際に用いられると有効である。転移は、病気が体の他の部分に拡散する癌の段階である。この段階が、その他の治療の成功率が顕著に低下および対象の生存率の低下を伴っているので、転移の阻害または遅延は、特に重要である。他の実施態様においては、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤の、対象への有効な量の投与を通じた、癌細胞における細胞間接着分子の上方制御による、安全で有効に、癌転移を阻害する手段、遅延する手段、または、改善する手段が提供される。
【0130】
「治療すること」または「治療」は、治療用の処理および予防または予防方法の両方であり、その目的は、癌またはその拡散(転移)の予防、回復、減少または遅延(減速)である。
【0131】
「予防すること」「予防」「予防手段」または「予防方法」は、発病の防止、または、疾患、病気、障害または異常や徴候を含む表現型の発生の阻害、防衛、防御である。予防が必要な対象は、その状態が進行する傾向にあり得る。
【0132】
「改善する」または「改善」は、疾患、病気、障害、または異常や徴候を含む表現型の減少、低下、排除である。治療が必要な対象は、すでにその状態にある、または、その状態に向かう傾向、もしくは、予防されている状態にあり得る。
【0133】
「対象」は頬乳類を含む。哺乳類は、ヒトまたは家畜、動物園の動物もしくはペットであり得る。本願発明の方法は、ヒトの医療的治療に適するよう特に考えられているが、イヌおよびネコなどのペット、ならびに、ウマ、ウシおよびヒツジなどの家畜、または、ネコ科、イヌ科、ウシ科および有蹄動物などの動物園の動物を含む獣医の治療にも適用可能である。対象は、癌もしくはその他の疾患に苦しんでいる、または、癌もしくはその他の疾患に苦しんでいない(すなわち検出できる病気がない)。
【0134】
「治療的に有効な量」とは、癌またはその拡散(転移)を治療できる、予防できる、または改善できる、組成物または組成物中の剤もしくは化合物の量である。治療的に有効な量は、実験的および癌治療に関連した日常的な方法で決定され得て、結果として寿命を延長し得る。
【0135】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、新生物および関連状態、癌、腫瘍、悪性および転移の状態の治療を含み得る。第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤で治療され得る固形腫瘍および転移のある組織および器官は、胆管、嚢、血液、脳、胸、顎、大腸、子宮内膜、食道、頭、首、腎臓、咽頭、肝臓、肺、髄質、メラニン、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎、網膜、皮膚、胃、精巣、甲状腺、尿管、および子宮を含むがこれらに限定されない。
【0136】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、特に以下の型の癌および転移癌の治療に適している:膵臓癌、食道癌、直腸結腸癌、腸癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、乳癌、悪性メラノーマまたは肺癌。
【0137】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十もしくは第十五の方法は、例えば、腫瘍細胞の細胞死、細胞間接着、分化および免疫認識の増大(免疫機構による標的化および除去)による、癌治療の多機能アプローチを提供し得る。従って、免疫機構を抑制または障害し得るその他の治療がない治療に有効である。
【0138】
ある実施態様において、第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、E-カドヘリンおよびβ-カテニンの発現レベルが低い対象の治療を含む。さらなる患者群はまた、特に、上記態様の方法または使用による治療に適すると同定され得る。
【0139】
第五から第九の態様もしくは第十四の態様の使用、または、第十の態様もしくは第十五の態様の方法は、増殖性疾患、例えば腫瘍の、治療または予防を対象とするその他の従来の抗癌治療的アプローチで補われ得る。例えば、防止のための癌予防、手術後の癌再発および転移の予防、ならびに、その他従来の癌治療のアジュバントとして、このような方法が用いられ得る。
【0140】
〈医薬組成物、処方および投与経路〉
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、例えば、従来の固体もしくは液体のビヒクルまたは希釈液を用いて、望ましい投与に適した形の医薬添加物(例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香料、その他)と共に、薬剤処方の当業者にはよく知られた技術に従って処方され得る。
【0141】
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、任意の適切な方法、(例えば、錠剤、カプセル、顆粒または粉などの形態の経口投与;舌下投与;口腔投与;皮下、静脈、筋肉内、または、脳槽内注射もしくは注入技術などの非経口投与(例えば無菌で注入可能な、水性もしくは非水性の溶液または懸濁液);吸入スプレーなどによる経鼻投与;クリームもしくは軟膏形態などの局所投与、または、坐薬形態などの直腸内投与;)によって、非毒性の、医薬として許容可能はビヒクルまたは希釈剤を含む投与単位の処方で、投与され得る。それらは、例えば、皮下への移植、カプセル球、または浸透圧ポンプなどのデバイスによる、速やかな放出または延長した放出に適した形態で投与され得る。
【0142】
ヒトなどの霊長類に加えて、様々な他の哺乳類が第十の態様の方法に従って治療され得る。例えば、哺乳類はウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたはその他のウシ類、ヒツジ類、ウマ類、イヌ類、ネコ類、げっ歯類もしくはマウスの種類を含むが、これらに限定されず、治療され得る。
【0143】
本願明細書において使用される「組成物」という用語は、プロテアーゼプロ酵素および一つまたは複数の活性剤、ならびに、任意の一つまたは複数の追加の活性剤を含む製品と、結果としてこれらから直接的または間接的にできる任意の製品を含むことを意図している。
【0144】
本願明細書において使用される「医薬として許容可能な」という用語は、担体、希釈液または添加剤が、その受容者に有害でないことを意味する。
【0145】
「投与」および/または「投与すること」という用語は、治療を必要とする個体に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0146】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物ならびにその調製物または処方は、その組成物の成分、すなわち、前記プロテアーゼプロ酵素とセレン化合物および/またはバニロイド化合物を含む一つまたは複数の活性剤を、一緒に混合することによって調製され得る。さらなる実施態様において、成分は本願明細書に記載の追加の活性剤を含み得る。混合は、連続して、または、同時に行われ得る。
【0147】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、便宜的に投与単位の形態で存在し得て、医薬の当業者によく知られた任意の方法で調製され得る。すべての方法は、前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素を、一つまたは複数の補助的な成分から成る担体と会合させる段階を含む。一般的に、医薬組成物は、均一および密接に活性剤とプロテアーゼプロ酵素が、液体の担体もしくは細かく粉砕された固体の担体またはその両方と会合するよう調製され、それから、必要に応じて望ましい処方に製品が成型される。前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は、一回または複数回投与後の病気の推移または状況において、望ましい効果を生むのに十分な投与単位で提供される。
【0148】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、経口使用(例えば、錠剤、トローチ、ドロップ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、ハードもしくはソフトカプセル、または、シロップもしくはエリキシル剤)に適した形態であり得る。経口使用を意図した組成物は、医薬製造の当業者によく知られた任意の方法に従って調製され得る。このような組成物は、医薬としてエレガントで、口あたりの良い調製物を提供するため、甘味料、香料、着色料および保存料からなる群より選択された一つまたは複数の剤を含み得る。錠剤は、錠剤製造に適した、無毒性の医薬として許容可能な賦形剤と混合した、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む。これら賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギニン酸;結合剤、例えばスターチ、ゼラチンまたはアカシア、および、平滑剤、例えばマグネシウムステアレート、ステアリン酸またはタルク、であり得る。錠剤はコートされていない、または、既知の技術によって崩壊と消化管への吸収を遅くするようコートされ得て、その結果長時間にわたって持続する作用を提供し得る。例えば、グリセロールモノステアレートまたはグリセロールジステアレートなどの時間遅延原料が使用され得る。それらはまた、制御放出のための浸透圧治療錠剤を形成するようコートされ得る。
【0149】
経口使用の処方はまた、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤は不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合しているハードゼラチンカプセル、または、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤は水または油媒体(例えばピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油)と混合しているソフトゼラチンカプセルとして提供し得る。
【0150】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合液中に前記活性剤およびプロテアーゼプロ酵素を含む。このような賦形剤は、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギニン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴムおよびアカシアゴム);分散および湿潤剤は天然に存在するリン脂質であり得る(例えばレシチン、または、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物、例えばポリオキシエチレンスレアレート、または、エチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、エチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレート、または、エチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレート)、である。水性懸濁液はまた、一つまたは複数の防腐剤(例えば、エチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート)、一つまたは複数の着色料、一つまたは複数の香料、および、スクロースもしくはサッカリンなどの一つまたは複数の甘味料を含み得る。
【0151】
油性懸濁液は、野菜油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油)または液体パラフィンなどのミネラルオイル中で、前記活性剤とプロテアーゼプロ酵素を懸濁することによって処方され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィン、またはセチルアルコールを含み得る。上記に説明したものなどの甘味料、および、香料は口あたりの良い経口調製物を提供するために用いられ得る。これらはアスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存され得る。
【0152】
水の添加で水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤および一つまたは複数の保存料との混合で、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素および活性剤を提供する。適切な分散または湿潤剤および懸濁剤は、上記ですでに例証された。追加の賦形剤、例えば甘味料、香料および着色料もまた、存在し得る。
【0153】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物はまた、水中油系エマルジョンの形態であり得る。油相は、野菜油例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または、ミネラルオイル例えば液体パラフィン、またはそれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム(例えばアカシアまたはトラガカントゴム)、天然に存在するリン脂質(例えば大豆、レシチン)、ならびに、脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)、ならびに、前記部分エステルのエチレンオキシドとの縮合産物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。前記エマルジョンはまた、甘味料および香料を含み得る。
【0154】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味料、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースとともに調製され得る。それらはまた、鎮痛剤、防腐剤ならびに香料および着色料を含み得る。
【0155】
第一および第二の態様または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、無菌注入可能な水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、既知の技術に従って、上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方され得る。第一および第二の態様の医薬組成物はまた、無毒非経口で許容可能な希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール中の、無菌注入可能な溶液または懸濁液であり得る。使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液および生理食塩水がある。さらには、無菌、固体油は従来、溶媒または懸濁剤として用いられる。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無菌固体油が使用される。さらには、オレイン酸などの脂肪酸は注入剤の調製において使用される。
【0156】
ある実施態様において、第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、薬剤の直腸投与のための坐薬として処方される。これらの処方は、第一および第二の態様の活性剤およびプロテアーゼプロ酵素と、常温で固体だが直腸温度で液体であり従って溶解して直腸内へ薬剤を放出する無刺激性の賦形剤との混合によって調製され得る。この原料には、ココアバターおよびポリエチレングリコールを含む。直腸投与は、酵素の経口投与に関与する胃腸管において、腸肝初回通過効果を除くために用いられ得る。
【0157】
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、リポソーム中に処方され得る。当業者に既知の通り、リポソームは一般的にリン脂質および他の脂質物質に由来する。リポソームは、単層または多層の、水性媒質中に分散した水和液体結晶から形成される。任意の、無毒性で生理学的に許容可能および代謝可能な、リポソームを形成することにできる脂質が使用され得る。リポソームの処方は、安定剤、防腐剤、賦形剤およびその類似するものを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成両方の、リン脂質およびホスファチジルコリンである。リポソームの形成方法は当業界において知られている。
【0158】
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物は、投与指示と共に容器、パックまたはディスペンサーに入れられ得る。前記医薬組成物の、プロテアーゼプロ酵素および活性剤ならびに任意の追加の活性剤は、容器、パックまたはディスペンサーで分けられた要素として、第五から第九の態様の使用および第十の態様の方法において、同時または別々の時に、個別にまたは一緒に提供され得る。
【0159】
<投与量および治療上有効な量>
第一および第二の態様、または第十二もしくは第十三の態様の医薬組成物の適切な投与量レベルは、一般的に、一回または複数回投与され得る、患者体重1キログラム当たり一日0.01から500ミリグラムである。約0.1から250ミリグラム/キログラム/日;または約0.5から100ミリグラム/キログラム/日、であり得る。適切な投与量レベルは、約0.01から250ミリグラム/キログラム/日、または約0.05から100ミリグラム/キログラム/日、または約0.1から50ミリグラム/キログラム/日、であり得る。この範囲内で、投与量は、0.05-0.5、0.5-5または5-50ミリグラム/キログラム/日であり得る。経口投与のためには、第一および第二の態様の医薬組成物は、1.0-4000ミリグラムのプロテアーゼプロ酵素および活性剤、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、750.0、1000、1500、2000、2500、3000、3500および4000ミリグラムのプロテアーゼプロ酵素および活性剤を、治療される患者の症状に合った投与量を含む錠剤の形態で提供され得る。本願明細書に記載の医薬組成物は、1日1回から4回、1日1回または2回、または1日1回の投与計画で投与され得る。投与の必要条件の緩和により、一般的にはより高いコンプライアンスが導かれる。
【0160】
投与量は、単独投与の形態の組成物が与えられるかどうか、および、組成物または錠剤(もしくはその他の投与形態)に活性剤としてバニロイド化合物が含まれているかどうかによって、大きく変化し得る。典型的に、カプシエートやカプサイシンなどのバニロイド化合物は、投与あたり0.1から5グラムの間、および、より特には約1から2グラムの、比較的大きな投与量で提供され得る。
【0161】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様における適切な単一投与は:
・トリプシノーゲンは1から100ミリグラムの間の量で、特に2から50ミリグラム、さらに特に1.0、2.5、5.0、7.5、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0(ミリグラム);
・キモトリプシノーゲンは1から100ミリグラムの間の量で、特に2から50ミリグラム、さらに特に1.0、2.5、5.0、7.5、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0(ミリグラム);
・セレン化合物は0.01から3ミリグラムの間の量で、特に0.1から1ミリグラム、さらに特に0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0(ミリグラム);
・バニロイド化合物は0.1から4000ミリグラムの間の量で、特に0.5から3000ミリグラム、さらに特に500、1000、1500、2000、2500、3000(ミリグラム);
・アミラーゼは0.1から100ミリグラムの間の量で、特に1から15ミリグラム、さらに特に1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、7.5、10.0、15.0(ミリグラム);
・2-デオキシ-D-グルコースは0.1から100ミリグラムの間の量で、特に1から15ミリグラム、さらに特に1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、7.5、10.0、15.0(ミリグラム);
を含み得る。
【0162】
しかしながら、任意の患者に対する特定の投与量レベルおよび投与頻度は、使用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性および活性をもつ期間、年齢、体重、相対的な健康状態、性別、食事、投与の方法および時間、排出率、薬剤の組み合わせ、疾患の重症度および治療を受ける人、を含む様々な要因に依存し、変化し得る。
【0163】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様の、さまざまな化合物(存在する場合は)の適切な投与レベルは、
・キモトリプシノーゲンは少なくとも0.2ミリグラム/キログラムもしくは0.2-5ミリグラム/キログラムの範囲、0.5-2.0ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.8ミリグラム/キログラムの量;
・トリプシノーゲンは0.5ミリグラム/キログラム未満、もしくは0.01-0.4ミリグラム/キログラムの範囲、0.05-0.20ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.1ミリグラム/キログラムの量;
・メチルセレノシステインは少なくとも0.0001ミリグラム/キログラムもしくは0.001-0.01ミリグラム/キログラムの範囲、0.002-0.005ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.003ミリグラム/キログラムの量;
・カプシエートは少なくとも1ミリグラム/キログラムもしくは5-500ミリグラム/キログラムの範囲、10-100ミリグラム/キログラムの範囲、または約30ミリグラム/キログラムの量;
・アミラーゼは少なくとも0.001ミリグラム/キログラムもしくは0.01-0.1ミリグラム/キログラムの範囲、0.02-0.05ミリグラム/キログラムの範囲、または約0.03ミリグラム/キログラムの量;
・2-デオキシ-D-グルコースは少なくとも1ミリグラム/キログラムもしくは5-500ミリグラム/キログラムの範囲、10-100ミリグラム/キログラムの範囲、または30ミリグラム/キログラムの量;
を含み得る。
【0164】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様の、さまざまな化合物(存在する場合は)の適切な重量%比は、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン:アミラーゼ: 2-エドキシグルコース:カプシエート:メチルセレノシステインの比、200-400:25-75:5-15:5,000-20,000:5,000-20,000:0.1-10もしくは約300:50:10:10,000:10,000:1、を含み得る。
【0165】
本願明細書に記載の医薬組成物の実施態様の、特に腫瘍細胞表面またはその近傍に存在する場合に有効であり得るさまざまな化合物(存在する場合は)の適切な濃度は、
・キモトリプシノーゲンは、少なくとも0.5ミリグラム/ミリリットル、または、1-2ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・トリプシノーゲンは、0.25ミリグラム/ミリリットル未満、または、0.1-0.2ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・アミラーゼは少なくとも0.01ミリグラム/ミリリットル、または、0.02-0.1ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・バニロイド化合物は少なくとも5ミリグラム/ミリリットル、または、10-20ミリグラム/ミリリットルの範囲;
・2-デオキシ-D-グルコースは少なくとも5ミリグラム/ミリリットル、または、10-20ミリグラム/ミリリットルの範囲
・セレン化合物は0.01ミリグラム/ミリリットル未満、または、0.001-0.005ミリグラム/ミリリットルの範囲;
を含み得る。
【0166】
セレン化合物が存在し、濃度または相対量が特定の範囲内に維持されている場合に、さらに改善された活性が医薬組成物に提供され得る。メチルセレノシステインの濃度は0.01ミリグラム/ミリリットル未満、0.005ミリグラム/ミリリットル未満、0.001ミリグラム/ミリリットル未満、もしくは、0.0005ミリグラム/ミリリットル未満、または、0.0005から0.01ミリグラム/ミリリットルの範囲、もしくは、0.001から0.005ミリグラム/ミリリットルの範囲であり得る。
【0167】
<キモトリプシノーゲン/トリプシノーゲンプロ酵素の処方>
医薬組成物は、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができ、腫瘍細胞間の細胞間接着を促進し、腫瘍細胞のタンパク質分解効果を持ち、または腫瘍細胞の細胞死、分化および免疫認識を誘導する、第一および第二の態様のプロテアーゼプロ酵素を含んで提供され、第一のプロテアーゼプロ酵素はキモトリプシノーゲンおよび第二のプロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲン、ならびに、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は4:1から8:1の範囲内である。前記医薬組成物はさらに、前記の任意の実施態様に従った、一つまたは複数の活性剤を含み得る。
【0168】
ある実施態様において、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比は5:1から7:1の範囲内で、好ましくは6:1である。
【0169】
<活性剤の処方>
医薬組成物は、各々が腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含んで提供され、第一の活性剤はセレン化合物および第二の活性剤は解糖系還元剤である。
【0170】
一つの実施態様において、細胞間活性は、腫瘍細胞の細胞死、免疫認識または分化である。セレン化合物および/または細胞質解糖系還元剤は、前記実施態様に記載の化合物を意味する。好ましくは、前記セレン化合物はメチルセレノシステイン、前記細胞質解糖系還元剤は2-デオキシ-D-グルコースである。
【0171】
前記医薬組成物は、さらに、前記の任意の実施態様に従ったプロテアーゼプロ酵素を含み得る。前記医薬組成物は、さらに、任意の前記実施態様に従ったバニロイド化合物およびグリコシドヒドロラーゼより選択された活性剤を含み得る。
【0172】
<選択および特定方法>
さらなる実施態様は、癌細胞の細胞間接着分子の発現の上方制御に有用な剤を同定する方法であって、癌細胞または癌細胞間の細胞間接着分子を本願明細書に前記した組成物と接触させる工程、テスト剤を添加する工程、細胞間接着もしくは細胞間接着分子の発現のレベルをモニターまたは測定する工程、および、テスト剤の効果を評価する工程を含む方法を提供し得る。小分子化合物化学ライブラリースクリーニングおよび抗体ディスプレイパニングは、このタイプの方法で容易に評価し得る利用可能なテスト剤源の例である。例えば、ハイスループットケミカルスクリーニング(High Throughput Chemical Screening;HTS)は、ロボットとマイクロタイタープレートを用い、化学物質または抗体などの何千もの分子を容易に選抜するために用いられている。このような選抜を改良するために、選抜の間実施される適切なスクリーニングアッセイを提供する必要がある。このスクリーニングアッセイは、細胞間接着分子または転移癌細胞などの癌細胞と合わさり得る。前記アッセイは、参照細胞を含み、任意に、テスト化合物、プロテアーゼプロ酵素および任意の酵素の添加の比較を示す。同様に、ファージディスプレイ技術は、癌細胞の細胞間接着分子の発現の上方制御において有用である可能性のある剤を評価するハイスループット法を提供するため、使用され得る。
【0173】
<一般的な点>
本願明細書に含まれている任意の書類、活動、原料、デバイス、項目または同様のものに関する議論は、専ら本願発明のための文脈を提供する目的である。それは、これらの内容の一部またはすべてが、先行技術の一部を形成している、または、各請求項の優先日以前にオーストラリアに存在した本願発明に関連する分野の、一般的に共通の知識であることと了解するものではない。
【0174】
本願明細書に述べられたすべての刊行物は、参照によって本願明細書に含まれている。
【0175】
幅広く記載された本願発明の精神または範囲と離れることなく特定の実施態様に示されたように、本願発明から作られ得る膨大なバリエーションおよび/または修飾は、当業者によって理解される。従って、本願実施態様は、あらゆる点で、例示として考慮されるべきであり、限定されるべきではない。
【0176】
後述の請求項および前述の本願発明の記載において、言語表現や必要な暗示として文脈によって必要とされない限り、「含む」またはその類似である「含む」「含んでいる」は包括的な意味で使用されている(すなわち、決まった特徴の存在を明記するが、本願発明の様々な実施態様のさらなる特徴の存在や追加を除外しない)。
【0177】
後述の請求項および前述の本願発明の記載において、言語表現や必要な暗示として文脈によって必要とされない限り、「含む」またはその類似である「含む」「含んでいる」は包括的な意味で使用されている(すなわち、決まった特徴の存在を明記するが、本願発明の様々な実施態様のさらなる特徴の存在や追加を除外しない)。
【実施例】
【0178】
本願発明の性質がより明らかに理解され得るために、本願発明の好ましい形態を、次の、制限のない実験及び実施例を参照によって、これから記述する。
【0179】
<実験1:プロ酵素の働きのメカニズムの同定>
トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンを含む医薬組成物での癌細胞治療に関わる効果およびメカニズムの調査を、三種類の異なる細胞株で行った。使用した細胞株は、 Panc1:ヒト膵管癌細胞株、Caco2:ヒト直腸結腸腺癌細胞株、および、OE33:ヒト食道腺癌細胞株。
【0180】
細胞株はすべて、5%CO2を含む加湿環境で、37℃においてT75培養フラスコで維持した。細胞の維持に使用された培地は:PANC1にはDulbecco’s modified Eagle medium(DMEM);CaCO2には、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)およびOE33にはRPMI Medium 1640(Invitrogen, Merelbeke, Belgium)であった。培地はすべて、10%ウシ胎児血清(foetal bovine serum:FBS;Invitrogen)、100IU/ミリリットルのペニシリン(Invitrogen)、100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン(Invitrogen)および2mM L-グルタミン(Sigma)を添加した。
【0181】
トリプシノーゲン(Trp)およびα-キモトリプシノーゲン(Chy)は、Sigma-Aldrich(St.Louis, MO)より購入され得て、ウシ膵臓より得られうる。前記処方は、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS, Sigma)中で提供され、必要に応じて10%ウシ胎児血清で希釈した。
【0182】
処方の範囲は、下記の表1に従って調製および試験ならびに記号化した。
【0183】
【表1】
【0184】
細胞の生存能力に有効な濃度を理解するために、様々な濃度の処方を調製した。1Xに示された各混合物の最初の開始濃度に基づき、下記表2に示しすように各処方の6種類の異なる希釈液を記号化し、作製した。
【0185】
【表2】
【0186】
光学密度と細胞数の相関関係を得るため、既知の細胞数を播き、細胞が接着したのち、スルホローダミンB(Sulforhodamine B:SRB)で染色した。この方法により、染色後の細胞の吸光度または光学密度のデータが得られ、図1に示すように、すべての細胞種において、標準曲線の変化が吸光度を細胞数に変換することを可能とした。。
【0187】
<テスト細胞株における処方の効果>
テスト細胞株における処方の細胞毒性効果を決定するため、細胞を播き、前記処方で処理した。効果を、プロテインアッセイと顕微鏡観察によって評価した。
【0188】
細胞増殖において、異なる処方の効果を調査するため、SRBタンパク質染色を行った。染色剤は細胞タンパク質の塩基性アミノ酸結合し、比色評価によって細胞数に関連するタンパク総量の概算を提供する。半数阻害濃度(half maximal inihibitory concentration:IC50)値は、各処方の対数線形薬剤応答曲線で決定された。
【0189】
1日目:細胞を24ウェル培養プレートに低密度(細胞種により、1ウェルあたり1000-3000細胞)で播いた。使用した細胞株は、Panc1:ヒト膵管癌細胞株、Caco2:直腸結腸腺癌細胞株、OE33:食道腺癌およびHEK293であった。HEK293は、ヒト胎児腎臓由来の形質転換細胞株である。各細胞株に、ひとつの24ウェル培養プレートを用いて、異なる組み合わせの各処方をテストした。各処方の希釈液は、4ウェルずつテストした。各細胞株の、24ウェル培養プレートひとつを対照群として用い、同数の細胞を播き、培地を変えて処理細胞とした。
【0190】
2日目:前記培地を除き、異なる希釈の前記処方を含む新鮮な培地を細胞に加えた。
【0191】
5日目:前記培地を再び除き、異なる希釈の前記処方を含む新鮮な培地を細胞に加えた。
【0192】
6日目または7日目:10%冷(4℃)トリクロロ酢酸(TCA)で細胞を固定した。穏やかに培地を吸引した後、TCAをウェルに加えた。プレートを4℃で30分間放置し、脱イオン水で三回洗浄して、室温で少なくとも24時間乾くまで放置した。
【0193】
固定した細胞を以下の通りSRBで染色した。1ミリリットルの4%SRB(1%酢酸溶液中のw/v)を各ウェルに加え、室温で20分間放置した。空気乾燥する前に、SRBを除いて1%酢酸で三回プレートを洗浄した。結合したSRBを、500ミリリットルの10mM Tris-base溶液で可溶化し、プレートを、プレートシェーカー上に少なくとも10分間放置した。各ウェルにつき100ミリリットルを96ウェルプレートの一つのウェルに移し、これを24ウェルプレートウェル一つにつき三回行った。492ナノメートルにおける96ウェルプレートの吸光度を読んだ。
【0194】
<食道腺癌細胞株(OE33)生存率における処方の効果>
OE33細胞を3000細胞/ミリリットルの濃度で播いた(1日目)。2日目および5日目に、0.25x;0.5x;1x;1.25x;2.5xおよび5xの異なる処方で細胞を処理した。7日目に細胞を固定した。
【0195】
顕微鏡的には、処方Bでの処理で、細胞は円形態を示し、また細胞の収縮と剥離の増加が起こった。従って、48時間インキュベート後、接着細胞はごくわずかしか残らず、細胞片および浮遊細胞が培地中に見られた(図2)。
【0196】
光学顕微鏡で観察された結果は、SRBタンパク質染色アッセイによって裏付けられた。表3は、各処理の4つの反復ウェルの平均値を示しており、処方Bの細胞死効果は濃度に依存していた;2.5xおよび5xではウェル中すべての細胞が死ぬ。IC50値は、図3に示すように、濃度に対する吸光度をプロットすることで得られた。
【0197】
対照は、濃度0のODとして示され、24個の反復ウェルの平均値であった。固定時対照プレート24ウェルすべてが、完全にコンフルエントであった。
【0198】
【表3】
【0199】
<膵管癌細胞株(Panc1)生存率における処方の効果>
Panc1細胞を20000細胞/ミリリットルの濃度で播いた(1日目)。2日目および4日目に、0.25x;0.5x;1x;1.25x;2.5xおよび5xの異なる処方で細胞を処理した。5日目に細胞を固定した。試験濃度での対照処方Cは、Panc1細胞の生存率に何ら影響しなかった(データ非公表)。顕微鏡的には、処方B、JおよびTは細胞の生存率に効果を示し、これらの処方の2.5xおよび5xの処方で処理された細胞は円形態となって死んだ(データ非公表)。
【0200】
光学顕微鏡で観察された結果は、SRBタンパク質染色アッセイによって裏付けられた。表4は、使用された処方の各濃度の4つの反復ウェルの平均値を示している。処方B、JおよびTの細胞死効果は濃度に依存していた;2.5xおよび5xでは、図4に示すようにウェル中すべての細胞が死ぬ。IC50値は、図4に示すように、濃度に対する吸光度をプロットすることで得られた。対照は、濃度0のODとして示され、24個の反復ウェルの平均値であった。
【0201】
【表4】
【0202】
<直腸結腸癌細胞株(Caco2)生存率における処方の効果>
Caco2細胞を20000細胞/ミリリットルの濃度で播いた(1日目)。2日目および4日目に、0.25x;0.5x;1x;1.25x;2.5xおよび5xの異なる処方で細胞を処理した。5日目に細胞を固定した。試験濃度での対照処方Cは、Caco2細胞の生存率に影響せず、治療5日後、細胞はコンフルエントで健康な単層を示した(データ非公表)。
【0203】
SRBタンパク質染色アッセイ(表5)は、使用された処方の各濃度の4つの反復ウェルの平均値を示しており、処方B、JおよびTの細胞死効果は濃度に依存していた;2.5xおよび5xでは、図5に示すようにウェル中すべての細胞が死ぬ。これら三種類の処方のより低い濃度では、記録された光学密度(OD)は対照群との有意な差がないと観察され得たため、細胞生存率に効果が見られなかった。対照は、24個の反復ウェルの平均値で、固定時対照プレート24ウェルすべてが、完全にコンフルエントであった。
【0204】
【表5】
【0205】
試験した全ての細胞型に対して、処方B、JおよびTは毒性効果を有している。細胞生存率に効果を示す処方B、JおよびTの濃度は2.5xおよび5xであった。細胞は治療後、円形態、細胞収縮、剥離の増加を示す。
【0206】
<処方のIC50の決定>
各処方のIC50値は、濃度に対する吸光度をプロットすることで得られた。異なる処方のIC50値は、細胞株:一週間に二度投与されたCaCo2、Panc1およびOE33、に対して得られた。最終的なIC50値(実際のミリグラム/ミリリットル濃度に対応する)は、それに続く細胞アッセイに用いた。
【0207】
【表6】
【0208】
<細胞間接着マーカーの発現>
IC50濃度の処方JおよびTでの治療後、細胞間接着マーカーβ-インテグリンおよびE-カドヘリンの発現変化を、Panc1、OE33およびCaco2細胞で調査した。
【0209】
前記IC50濃度の処方で細胞を治療した。細胞を採取し、リン酸緩衝生理食塩水PBSで三回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド/PBSで30分間固定した。細胞をPBSで三回洗浄し、氷冷したアセトン/メタノール(1:1)で、-20℃で5分間後固定した。細胞をPBSで三回洗浄し、2%ブロッキング緩衝溶液で、室温で1時間ブロックした。その後、細胞を、ブロッキング緩衝溶液で希釈した一次抗体と共に、4℃で一晩インキュベートした。細胞をPBSで三回洗浄後、ブロッキング緩衝溶液中の二次抗体と共に2時間インキュベートした。細胞をPBSで三回洗浄し、1:1000DAPI/PBS(核染色を行うため)中で、室温で15分間インキュベートした。マウント剤と共にスライドグラス上にカバースリップを載せた。対照は、非処理細胞で実施した。
【0210】
間接的蛍光免疫染色は、E-カドヘリンに対して産生されたモノクローナル抗体(Transduction Labs BD Biosciences Clone 36)およびβ-カテニンに対して産生されたモノクローナル抗体(Transduction Labs BD Biosciences Clone 14)を用いて実施した。二次抗体は、ウマ抗マウスフルオレセイン抗体(Vector Labs FI2000)を用いた。
【0211】
試験された処方での処理後のβ-カテニンおよびE-カドヘリンの発現の増分は、蛍光顕微鏡下でサンプルの蛍光強度を測定することで定量化した。同一サンプルの異なる視野を測定し、強度の平均値を表7に示す。
【0212】
【表7】
【0213】
<要約>
Panc1、Caco2およびOE33をIC50濃度の処方JおよびTで処理した場合、非処理細胞と比較して免疫蛍光強度の増大が見られた。このことは、図6から13に示すように、対照細胞と比較し、癌細胞におけるβ-カテニンおよびE-カドヘリン発現の増大と関連している。β-カテニンおよびE-カドヘリンを緑色、核を青色で示している。
【0214】
<実施例1:プロ酵素処方の改良>
24種類の癌細胞株の成長における、トリプシノーゲン(pT)、キモトリプシノーゲン(pC)およびα‐アミラーゼ(A)を含むプロテアーゼプロ酵素処方(JBp1と呼ばれる処方)の効果を決定する調査を行った。IC50およびこの最初の調査で生じた最大阻害値に基づき、癌細胞の成長における、JBp1中の三つの個々の成分の効果を理解するため、三種類の細胞株を選択した。この調査では、JBp1の三つの成分;α-アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲン、の相互作用を理解するため、イソボログラフィック方法を採用した。得られた結果に基づき、改良された処方(JBp1vP)を提案し、2-デオキシ-D-グルコース(D)、カプシエート(C)およびメチルセレノシステイン(M)を含む二番目の処方をイソボログラフィック法で試験した。
【0215】
<要約>
プロ酵素処方JBp1の細胞成長阻害特性は、24種類のヒト癌細胞株集団を用いて調査した。この細胞株の中の大多数でIC50値が得られた。IC50値および最大阻害値に基づいて、A-549、HCT-15、MIAPaCa-2の三種類の細胞株を、イソボログラフィック法を用いたさらなる組み合わせ調査のために選択した。イソボログラムの使用により、JBp1の三つの成分;α-アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲン、の間の相互作用のレベルの調査が可能となった。個々の成分の相互の組み合わせおよび二つの成分の混合物の成長阻害活性の調査により、JBp1処方の改善された組成物を同定し、「JBp1vP」とした。この改善された処方と、2-デオキシ-D-グルコース(D)、カプシエート(C)およびメチルセレノシステイン(M)を含む二番目の処方との組み合わせアッセイをテストした。二番目の処方をDCMとし、最初と二番目の処方との組み合わせをJBp1vP-DCMとした。JBp1vPとDCMの相互作用のイソボログラフィック分析により、特に低濃度のDCMで相乗的に作用する可能性が明らかになった(図14および表8のMIAPaCa-2細胞株の結果参照)。
【0216】
【表8】
【0217】
剤の薬剤応答関係を用いて、組み合わせの期待される効果を示すモデルを構築できる。薬剤Aと薬剤Bの組み合わせは、(da,db)、da(dose of A)およびdb(dose of B)と示されるべきである。効果は、数学的関数E(da,db)として扱う。Eは、しばしば分別効果として表わされ、従って、生存率S:S=1-Eである。最後に、DaおよびDbは、組み合わせによる等効果応答を生む、各々薬剤AおよびBの用量である。等効果曲線は、組み合わせて使用した薬剤間で相互作用がないとの仮定に基づいて、構築され得る。(da,db)の組み合わせは、個々の薬剤の用量を表す座標軸を有するグラフ上のある点で表される。もし薬剤が相互作用しなければ、この点は、組み合わせ(da,db)では等効果である用量を表す値(DaおよびDb)間の2軸が交わる直線(isobole)、すなわち組み合わせ(da,db)と等効果の投与量を表す値(DaおよびDb)の間の2軸を結ぶ直線上に落ちると期待される。
二つの化合物のゼロ相互作用isoboleの方程式は、
【0218】
【数1】
【0219】
組み合わせ中の化合物の数をnとした場合、方程式は
【0220】
【数2】
【0221】
組み合わせた薬剤が、個々の用量と等効果である場合、isoboleは直線となる。しかしながら、組み合わせの効果が個々の薬剤応答曲線から期待されるよりも大きい場合、以下のように、DaおよびDb(ともに変化なし)と同等の効果を生じるのに要するdaおよび/またはdbは、より少ない。
【0222】
【数3】
【0223】
この値はg値とも呼ばれ、相互作用の種類を決定するために使用される。この場合、計算されたisoboleは凹面である。拮抗作用は、反対方向の効果が生じ得る;従って、このタイプの相互作用を示すisoboleは凸面となり得る。
【0224】
要約すると、g値は:
【0225】
【数4】
【0226】
新規の処方JBp1の三つの成分(α-アミラーゼ、トシプシノーゲンおよびトリプシン)間の相互作用を調査した。さらには、イソボログラフィック法を、処方中の3つの成分の改良された比率を決定するために用いた。その後、改良されたJBp1処方と、二番目の処方DCMとを組み合わせて試験した。
【0227】
<原料と方法>
無菌の平底96ウェル細胞プレートはBecton-Dickinson(North Ryde, NSW, Australia)から;RPMI1640およびDMEM細胞培養培地、FBS、GlutaMax、ペニシリン-ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、HEPES、HAM’s、 FCSおよびDPBSはInvitrogen Australia(Mt Waverly, VIC, Australia)から;トリパンブルーはSigma-Aldrich(Castle Hill, NAW, Australia)から;CellTiter-Blue(登録商標) Cell Viability AssayはPromega(Maison, WI, USA)から;SpectraMax Gemini XPS FluorometerはMolecular Devices(Sunnyvale, CA, CA)から、入手した。
【0228】
これらの調査で用いられた細胞株はすべてヒト由来で、America Type Culture Collection(ATCC)(Rockville, MD, USA)より供給された。
【0229】
以下の表9は、すべてのIC50決定及び組み合わせアッセイを用いたウェルあたりの、成長状態および最初の細胞播種時の濃度を示す。細胞は、95%空気および5%CO2を供給した、37℃湿潤細胞培養インキュベーター内で培養した。
【0230】
【表9A】
【0231】
【表9B】
【0232】
【表9C】
【0233】
<テスト項目および処方>
テスト項目1は、Applichem(Darmstadt, Germany)より供給された、トリプシノーゲンであった。テスト項目2は、BBI Enzymes(Gwent, UK)より供給された、キモトリプシノーゲンであった。テスト項目3は、Annecis Ltd(Lancaster, UK)より供給された、α-アミラーゼであった。テスト項目4は、Sigma-Aldrich(Castle, Hill, NSW, Australia)より供給された、2-デオキシグルコースであった。テスト項目5は、Propan Pty Ltd.より供給された、カプシエートであった。テスト項目6は、Sigma-Aldrich(Castle, Hill, NSW, Australia)より供給された、メチルセレノシステインであった。
【0234】
α-アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、直ちに使用するか、または、以後の使用のため4℃で保存した。テスト項目DCMは、1:1:0.0001の割合の2-デオキシグルコース、カプシエート、およびメチルセレノシステインから成る。この3種類の成分を、これらの比率で混合およびPBSで再懸濁した後、調製後直ちに使用した。
【0235】
<細胞成長アッセイ>
IC50分析のため、テスト品目を播種後24時間で細胞に添加した。テスト項目の濃度は各細胞株につき三連で試験した。CellTiter-Blue(登録商標)アッセイを、テスト項目添加後72時間のすべてのプレートについて、行った。
【0236】
組み合わせアッセイのため、各実験について反復出来るよう、2つの96ウェルプレートに各細胞株とテスト項目の組み合わせを播いた。、テスト項目を播種後24時間で以下のpipetting schemeに従って添加した(A3:G11の範囲の細胞は、縦列2および横列Hの濃度の両方の薬剤の組み合わせを含む)。
【0237】
各細胞株の各化合物の最初の濃度は、各薬剤のIC50を希釈液系列の濃度内で低下させる方法で計算されたIC50濃度に基づいて決定した。CellTiter-Blue(登録商標)アッセイをすべてのプレートにつき、テスト項目添加後72時間後に行った。
【0238】
テスト項目を含む培地での細胞インキュベーションに続き、10マイクロリットルのCellTiter-Blue(登録商標)を各ウェルに添加し、最大4時間までインキュベートした。蛍光は、Spectramax Gemini XPS Fluorometerで測定した。すべてのデータを記録し、解釈のためにMicrosoft(登録商標) Excel表計算ソフトに入力した。
【0239】
CellTiter-Blue(登録商標)アッセイより集計したデータを、IC50を決定するため薬剤応答曲線として、および、テスト項目の組み合わせ間の相互作用のタイプを評価するためのイソボログラムとして、プロットした。IC50の決定のため、化合物濃度に対する成長阻害を計算およびプロットした。これらプロットで、X軸(化合物濃度)は、対数尺度で表される。IC50濃度は、GraphPad Prism version 5.0 for Mac OSX(GraphPad Software, San Diego California, USA) を用いて、各組成物の半数(50%)阻害濃度(IC)として計算した。
【0240】
組み合わせの調査のため、vivo Pharm’s proprietary analysis templateを用いて、イソログラフィック分析を行った。イソボログラフィック分析は、二つの化合物の間に起こる相互作用の評価基準(すなわち、相乗的、相加的または拮抗的)を提供する。相互作用のタイプを定義する一つのパラメーターは、g値である。前記したように、1.0以上のg値は拮抗的相互作用を、および、1.0より低いg値は相乗的相互作用を示す。各イソボログラフィック分析では、9個のg値、一つの値は組み合わせの二番目の化合物の各濃度(分析のテンプレートは化合物B)に対する、が得られる。この調査において、二つの化合物間の相互作用は3つのグループに分類される:7つより多いg値が1.0より小さい広範囲相乗的相互相互作用、3つから7つのg値が1.0より小さい狭範囲相乗的相互作用、および、3つ未満のg値が1.0より小さい非相乗的相互作用、である。表5に、この調査で分析されたすべての相互作用の要約を示す。
【0241】
この調査の実施に使用されたすべての方法は、一般的な操作方法に従って行った。
【0242】
<結果>
24種類の癌細胞株において、JBp1についてのIC50決定アッセイを行った。表10に示すように、IC50値は15の細胞株(A2780、HOP-92、BxPc-3、HT-29、KYSE-30、MIAPaCa-2、OE-33、A549,HCT-15、OE-21、NCI-H82、HCT-116、MDA-MB468、NCI-H460およびBT474)から得られた。残りの細胞株では、この調査で試験したJBp1の濃度の範囲内でのIC50を決定できる半数阻害値また薬物応答曲線を示さなかった。表10は、24すべての細胞株で、IC50および最大成長阻害値を、最大成長阻害値の減少順に示している。
【0243】
前記24の細胞株より得られたIC50および最大成長阻害値、ならびに、続いて行う動物試験への各細胞の適合性に基づき、3つの細胞株をイソボログラフィック調査のために選択された。これらの細胞株、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2を、表10中において太字で強調している。
【0244】
【表10】
【0245】
化合物間の相互作用を調査するイソボログラフィック法では、組み合わせアッセイを行う前に、これら成分のIC50値を決定することが必要である。従って、IC50決定アッセイをJBp1の個々の成分、すなわち、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼについて、三つの選択された細胞株A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2で実施した。表11に示すように、トリプシノーゲンは、3つすべての細胞株で0.23から0.41ミリグラム/ミリリットルの範囲のIC50値を示した。α-アミラーゼおよびキモトリプシノーゲンは、テストした濃度の範囲ではIC50値を示さなかった。
【0246】
【表11】
【0247】
イソボログラフィック分析は、二つの化合物の間で起こる相互作用(例えば相乗的、相加的または拮抗的)のタイプの評価基準を提供する。相互作用のタイプを定義する一つのパラメーターは、g値である。前記したように、1.0以上のg値は拮抗的相互作用を、および、1.0より低いg値は相乗的相互作用を示す。各イソボログラフィック分析では、9個のg値、一つの値は組み合わせの二番目の化合物の各濃度(分析のテンプレートは化合物B)に対する、が得られる。この調査において、二つの化合物間の相互作用は3つの群に分類される:7つより多いg値が1.0より小さい広範囲相乗的相互作用、3つから7つのg値が1.0より小さい狭範囲相乗的相互作用、および、3つ未満のg値が1.0より小さい非相乗的相互作用、である。表8に、この調査で分析されたすべての相互作用の要約を示す。
【0248】
α‐アミラーゼおよびキモトリプシノーゲンではIC50値が得られなかった事実にも関わらず、これらの成分を二番目の化合物と組み合わせた際に相互作用することが理解されているめ、相互のおよび、トリプシノーゲンとの相互作用を、組み合わせアッセイで調査した。図15-17は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞におけるα‐アミラーゼ、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲン間の組み合わせアッセイの結果によるイソボログラムを示している。
【0249】
図15および表8に示しているように、トリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンはA-549およびMIAPaCa-2細胞において、広範囲の相乗的相互作用と一致するイソボログラム分析結果を示した。HCT-15では、イソボログラフィック分析結果は、非拮抗的相互作用(イソボログラフィック線は、ほぼX軸と重なって位置し、図中で明瞭に区別できない可能性がある)と一致している。3つの選択された細胞株における組み合わせアッセイの全体的な結果に基づき、処方中のトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンの改良された比率は、6:1(キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン)であると定義した。この比率は:1)A-549およびMIAPaCa-2細胞株において、1および2ミリグラム/ミリリットルにおけるキモトリプシノーゲンの低いG値に反映されるように、より高いキモトリプシノーゲン濃度では顕著に成長阻害活性が向上し、および、2):0.25ミリグラム/ミリリットルより高いトリプシノーゲン濃度はさらなる阻害効果を追加しなかった、ことに支持される。従って、キモトリプシノーゲンの上位二つの濃度の平均(1.5ミリグラム/ミリリットル)を、トリプシノーゲンの最上位の濃度(0.25ミリグラム/ミリリットル)で割り、1.5対0.25または6:1の比率を得た。
【0250】
図16は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞におけるトリプシノーゲンとα‐アミラーゼの間の相互作用のイソボログラムを示している。これら二つの化合物の組み合わせは、A-579およびMIAPaCa-2細胞において相乗的相互作用、および、HCT-15においては非相乗的相互作用という結果であった(表8)。正の相互作用は、MIAPaCa-2細胞の広範囲型およびA-549細胞の狭範囲型であった。試験された3つの細胞株でこの相互作用が観察される応答の範囲内が与えられたので、これらデータをJBp1処方中のこれら二つの構成要素の比率を決定するために使用しなかった。
【0251】
図17は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞におけるキモトリプシノーゲンとα-アミラーゼの間の相互作用のイソボログラムを示している。これらの二つの化合物の組み合わせは、MIAPaCa-2細胞において相乗的相互作用、および、A-579およびHCT-15においては非相乗的相互作用という結果であった。キモトリプシノーゲンの細胞成長阻害効果に対する、α-アミラーゼの負の効果が与えられたため、他のふたつのJBp1成分に対するこの成分の比率は、最初の濃度(1:0.25, キモトリプシノーゲン:α-アミラーゼ)そのままとなった。
【0252】
要するに、組み合わせアッセイの最初の一巡の後、キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの比率は6:1であり得ると決定され、ならびに、キモトリプシノーゲン:α-アミラーゼおよびトリプシノーゲン:α-アミラーゼは最初の濃度である1:0.25が使用された。
【0253】
組み合わせアッセイの二巡目には、上記に定義された組み合わせおよび比率は、新しい試験化合物として以下のように再定義された:
-キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン(6:1)=TC
-キモトリプシノーゲン:α-アミラーゼ(1:0.25)=CA
-トリプシノーゲン:α-アミラーゼ(1:0.25)=TA
【0254】
IC50の決定は、A-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞において、これら再定義された化合物で実施した。表12は、3つの選択された細胞株における3種類の化合物の、薬剤応答曲線および計算されたIC50値ならびに最大成長阻害値を表している。IC50値は、3つすべての細胞株で、TCおよびTAで得られた。しかしながら、CAについては、試験した濃度の範囲内でIC50値が見いだされなかった。
【0255】
【表12】
【0256】
以下のTC、CAおよびTAに対するIC50値の決定では、組み合わせアッセイを、Jbp1処方における3つの成分および対応する第三の成分について実施した(例えば、TA対キモトリプシノーゲン、CA対トリプシノーゲンおよびTC対α-アミラーゼ)。
【0257】
図18は、TAおよびキモトリプシノーゲンの組み合わせのイソボログラムを表している。これら2つの化合物の組み合わせは、結果としてA-579およびMIAPaCa-2細胞で相乗的相互作用となり、HCT-15細胞で非相乗的相互作用となった。
【0258】
図19は、CAおよびトリプシノーゲンの組み合わせのイソボログラムを表している。これら2つの化合物の組み合わせは、結果としてHCT-15およびMIAPaCa-2細胞で相乗的相互作用となり、A-579細胞で非相乗的相互作用となった。全体として、観察された傾向は、これら2つの成分の正の相互作用を示しており、キモトリプシノーゲンとトリプシノーゲンの間に観察された相乗的相互作用とも一致する。これらの結果はさらに、議論された以前の結果に基づいて選択された前記6:1(キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン=6:1)の比率を、正当化するものである。
【0259】
図20はTCおよびα-アミラーゼの組み合わせのイソボログラムを表している。観察された全体的な傾向は、この組み合わせは非相乗的相互作用に一致する。TCの成長阻害効果に対するこのα-アミラーゼの負の効果をさらに詳しく調査するため、イソボログラフィック分析のテンプレートからTCのIC50値を抽出し、対応するα-アミラーゼの濃度に対してプロットした。値は、3つすべての細胞株で、α-アミラーゼの濃度に対して比例的に増加していた。これらの結果は、JBp1処方中のα-アミラーゼレベルが、キモトリプシノーゲンおよびトリプシノーゲンとの潜在的な拮抗的効果を回避するために、低く抑えられえているべきであることを示唆している。
【0260】
表8は、上記の個々および2つの成分の相互のすべての組み合わせの結果を要約している。
【0261】
上記に記載の組み合わせ調査に基づき、JBp1処方中のキモトリプシノーゲン、トリプシノーゲンおよびα-アミラーゼの比率は、6:1:0.25(キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲン:α-アミラーゼ)と定義した。この、改良されたJBp1処方は、最初のJBp1処方と区別するため、接尾辞「vP」で同定される。
【0262】
前記の改良された処方JBp1vPにおいてIC50値を決定し、最初の処方JBp1で得られた値と比較した。表13は、これら2つの処方の、A-579、HCT-15およびMIAPaCa-2細胞における薬剤応答曲線、IC50値および最大成長阻害値を表している。これらの結果が示すように、JBp1の改良されたJBp1vP処方は、A-579、HCT-15細胞においてJBp1より低いIC50値を、および、MIAPaCa-2細胞において同程度のIC50値を示した。重要なことに、JBp1vPは3つすべての細胞株において、JBp1よりも高い最大成長阻害値を示した。
【0263】
【表13】
【0264】
JBp1vPとテスト化合物DCMとを組み合わせ、細胞の成長を妨げる能力を試験した。組み合わせアッセイに先立ち、DCMのIC50をA-579、HCT-15、およびMIAPaCa-2細胞において決定した。表8および13に示す通り、DCMは0.15から1.5ミリグラム/ミリリットルの範囲でIC50値を示し、最大成長阻害値は、3つすべての細胞株で92%以上であった。
【0265】
図14はJBp1vPとDCMの組み合わせのイソボログラムを示している。イソボログラフィック分析は、A-579、HCT-15おけるこれら2つの成分の相互作用が非相乗的であることを示している。MIAPaCa-2細胞では、特により低いDCM濃度において、JBp1vPおよびDCMの組み合わせは狭範囲相乗的相互作用という結果だった。この組み合わせ調査のg値は、最も低い2つのDCM濃度において1.0をはるかに下回った。
【0266】
MはJBp1に対して拮抗効果を提供し得ると理解されている点を考慮すると、これらの結果は、DCMがJBp1との組み合わせにおいて有効であることを予想外に示した。
【0267】
要約すると、JBp1vPおよびDCMは低DCM濃度で相乗的に相互作用し、JBp1vPはまた、JBp1処方を超える改良された癌細胞成長阻害効果をin vitroで示し、ならびに、JBp1vPおよびDCMは癌細胞の成長を阻害するために相乗作用する。
【0268】
<実施例2:改良されたプロ酵素処方のin vivo調査>
JBp1(トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼ、各々0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラムおよび0.03ミリグラム/キログラム投与)の抗血管新生効果をin vivoで決定するための調査を実施し、JBp1単独またはアジュバントであるDCM(2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインを、各々30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラム)を組み合わせ、vivoPharm’s AingioChamber(商標)アッセイを用いて調査した。AingioChamber(商標)アッセイは、創傷治癒の正常な病理学的段階を利用し、移植されたチャンバー周辺に線維性被膜の形成を促進する(Wood,JM.,Bold,G.,Buchdunger,E.,Cozens,R., et al.PTK787/ZK 222584,a Novel and Potent Inhibitor of Vascular Endothelial Growth Factor Trypsine Kinases, Impairs Vascular Endothelial Growth Factor-Induced Responses and Tumour Ggowth After Oral Administration. Cancer research, 60(8):2178-2189(2000))。チャンバー内の塩基性繊維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)封入体は、血管成長を誘導し、線維性被膜の形成を支持する。従って、この系は、線維性被膜の形成を測定(末端の被膜の湿重量)することにより、抗血管新生処理の効果を評価するために使用されている。
【0269】
<要約>
50匹のFvB雌マウスに、bFGFの有無にかかわらず、AingioChamber(商標)を皮下移植した。無作為に10匹のマウスを選択し、bFGFのないチャンバーを移植した。調査0日目、bFGFを含むチャンバー移植した40匹のマウスを体重によって無作為抽出し、10匹のマウスの4つの治療群とした。
【0270】
トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、およびα-アミラーゼから構成されるJBp1を、各0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラム、0.03ミリグラム/キログラム投与した。2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインから成るDCMを、各30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラム投与した。
【0271】
各群のマウスは、ビヒクル対照(NMP:PEG300(1:9,v/v),経口投与5ミリリットル/キログラム)、JBp1(腹腔内投与用量は10ミリリットル/キログラム)、JBp1(腹腔内投与用量は10ミリリットル/キログラム)またはソラフェニブ(60ミリグラム/キログラム、経口投与用量は5ミリリットル/キログラム)のいずれかを日常の治療(0日目から4日目)として、受けた。ビヒクル対照は2群に投与し、一つは、bFGFのないAingioChamber(商標)を移植したもの(ベースライン対照)、もう一つはbFGFのあるAingioChamber(商標)を移植したもの(誘導対照)であった。化合物治療群には、bFGFのあるAingioChamber(商標)を移植した。
【0272】
最初の治療日(0日目)および調査の終了日(5日目)まで、毎日すべての動物の体重測定を行い、記録した。
【0273】
すべての群のマウスで、外科手術の予期できる結果として、処理の開始に続いて直ちに体重が減少した。ビヒクル対照(bFGFあり)JBp1およびJBp1-DCMで処理されたマウスは、調査の残り期間に体重が回復し、調査の終了日において平均体重が有意に減少していなかった。ビヒクル対照(bFGFなし)およびソラフェニブで処理した群は、NMP:PEG300によくみられるように、両群とも調査の終了日には有意に体重が減少し、回復しなかった。
【0274】
AngioChambers(商標)を、最後の治療(5日目)の後24時間で各マウスより切除した。チャンバー周辺の線維性被膜を除き、湿重量を測定した。
【0275】
調査終了日の被膜湿重量で示される通り、すべての処理で、誘導対照と比べてbFGF誘導性血管新生が有意に阻害される結果となった。有効な抗血管新生薬の対照であるJBp1-DCMおよびソラフェニブでの処理は、JBp1単剤の処理と比較して有意に血管新生が減少した。JBp1-DCMとソラフェニブの間には、抗血管新生活性の有意な差はなかった。従って、このモデルでは、JBp1とJbp1-DCM両方とも、維性被膜の阻害に有効であった。DCMのJBp1処方への添加は、JBp1単独と比較して改良された阻害という結果であった。JBp1-DCMの処理はこのモデルにおいてソラフェニブと同様に有効であった。
【0276】
<原料と方法>
ヘパリン、NMP、PBSおよびPEG300はSigma-Aldrich(Castle Hill, NSW, Australia)より入手した。0.22μMアクロディスクフィルターは、Pall Corporation(Sydoney, NSW, Australia)より入手した。組み換えヒトbFGFは、Shenadoah Biothechnology(Warwick, PA,USA)より入手した。AngioChambers(商標)は、Angt+Pfister AG(Stuttgart, Germany)より供給された。アガロースは、Omnigel Lo.M(Edwards Instruments Co., NSW, Australia)より供給された。
【0277】
調査系は、50匹のFvB雌マウスを、群あたり10匹ずつ、5つのテスト群(2つがコントロール、3つが治療群)として含んでいた。標準条件および管理規則を、動物管理に用いた。
【0278】
80の等間隔の0.8ミリメートルの穴が空いたパーフルオロアルコキシテフロン(Tefron(登録商標)-PFA, 21ミリメートルx8ミリメートル径、体積550マイクロリットル)製の多孔質の組織チャンバー(AngioChambers(商標))を使用した。両端を、同素材の取り外し可能なキャップで密閉した。チャンバーは、無菌状態で、20IU/ミリリットルのヘパリンを含む0.8%アガロース、4マイクログラム/ミリリットルbFGFあり/なしで、満たした。前記アガロース溶液は、チャンバーに満たす前、37℃で維持した。
【0279】
チャンバー移植のため、イソフルオレン吸入によりマウスを麻酔した。各マウスの背側中心の皮膚に小さな切開口を作り、チャンバーを皮下に挿入して肩甲骨の間に設置した。傷口を1.4ミリメートルの創傷クリップ(Michel Clip)二つで閉じた。
【0280】
<試験化合物および処方>
ビヒクル対照は、NMP:PEG300(1:9v/v)であった。JpB1はテスト項目1であって、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、およびα-アミラーゼから成り、各々0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラム、0.03ミリグラム/キログラムを投与した。DCMはテスト化合物2であって、2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインから成り、各々30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラムであった。各化合物は別々にPBSに溶解した。ストック溶液は濾過によって滅菌した(0.22μM)。投薬日ごとに、ストックを適切な組み合わせに混合した。
【0281】
ソラフェニブは参照化合物であり、200ミリグラムの活性ソラフェニブを含む300ミリグラムの錠剤として供給された。錠剤を破砕し、NMPに溶解して、活性ソラフェニブのストック溶液を処方した。ストック溶液は要求される最終薬剤濃度であるNMP:PEG300比率1:9を達成するようPEG3000で希釈した。
【0282】
10匹のマウスを無作為に選択し、bFGFの入っていないチャンバーを移植した。調査第0日目に、bFGFが入ったチャンバーを移植した40匹のマウスを、体重によって無作為抽出して、10匹ずつの4つの処理群とした。処理は0日目に開始し(マウスが手術から回復後2時間後)、連続して5日間続けた(第0日目から第4日目)。
【0283】
ビヒクルコントロール(NMP:PEG300=(1/9v/v))(群1および群2)およびソラフェニブ(60ミリグラム/キログラム;群5)は、5ミリグラム/キログラムの用量で、経口的(p.o.)に投与した。JBp1(トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンおよびα-アミラーゼを各0.13ミリグラム/キログラム、0.78ミリグラム/キログラムおよび0.03ミリグラム/キログラム)を単独で投与(群3)、および、DCM(2-デオキシグルコース、カプシエートおよびメチルセレノシステインを各30.55ミリグラム/キログラム、29.12ミリグラム/キログラム、0.003ミリグラム/キログラム)と組み合わせて(群4)投与した。いずれも、用量10ミリリットル/キログラムを腹腔内注射(i.p.)によって投与した。JBp1およびDCMを組み合わせて投与した際は、6種類すべての化合物で、一つの注射で一緒に処方および投与した。
【0284】
各動物の体重は投薬直前に測った。各動物に投与する投与溶液の体積は、各個体重に基づき、計算し、調整した。
【0285】
動物を上記計画に従って処理し、調査第0日はマウスがAngioChambers(商標)移植手術から回復後2時間後に開始した。AngioChambers(商標)は、終了日(第5日目)にすべてのマウスから死後摘出した。各チャンバー周囲に形成された血管新生した線維性被膜を注意深く除き、湿重量を直ちに測定した。
【0286】
任意の動物の処理は、体重が調査開始時の85%より下回った場合中止した。この場合、体重測定は短い期間続けられる。測定した体重が全く増えなかった場合、その動物は間引かれた。動物はまた、処理に対する重篤な拒絶反応が観察された場合、間引かれた。拒絶反応の程度は、徴候および付随スコア(付録2において与えられたガイド)をリスト化したプロフォーマクリニカルスコアシート(pro-forma clinical score sheet)を用いて評価した。観察された徴候の組み合わせ、および、結果として総合されたスコアにより、動物福祉の点から、措置の方針を決定した。
【0287】
テスト項目(%)による血管新生阻害は、下記式を用いて計算される:
【0288】
【数5】
【0289】
Aは、成長因子を含むAngioChambers(商標)を移植され、ビヒクル対照で処理されたマウス(群2)由来の平均被膜重量であり、
Bは、成長因子を含むAngioChambers(商標)を移植され、テスト項目で処理されたマウス(群3-5)由来の平均被膜重量であり、
および、Cは成長因子を含まないAngioChambers(商標)を移植され、ビヒクル対照で処理されたマウス(群1)由来の平均被膜重量であった。
【0290】
すべての統計的計算は、SigmaStat3.0(SPSS Australia, North Sydney, NSW, Australia)で実施した。対応のあるt検定は、調査第0日から終了日の間の処理群の体重変化の有意性を決定するために用いた。データが正規制検定を通過しなかった場合は、ウィルコクソンの順位和検定を実施した。残りの統計分析の目的は、参照化合物、ソラフェニブおよびテスト項目が、bFGFによる線維性被膜の顕著な誘導を有意に阻害することを示すことであった。bFGFによる線維性被膜の顕著な誘導は、前記調査の結果を受け入れる上で必須であると考えられる。分散分析(A One-Way Analysis Of Variance:ANOVA)は、調査終了時の被膜重量について実施した。有意な差が見いだされた場合は、すべての多重対比較および対照群に対する多重比較法(ホルム-シダック法を行った。0.05未満のp値は、有意であると考えた。
【0291】
本調査の実施に使用されたすべての方法は、vivoPharmの標準作業手順書(vivoPharm’s Standard Operating Procedures)に従い、特にSOP#vP_EF0317「血管新生調査の一般的方法(General Procedures for Angiogenesis Studies)」を参照として行った。標準作業手順書は、vivoPharmの安全施設に整理され、保管されている。
【0292】
<結果と観察>
すべての群のすべてのマウスは、調査期間中、立毛を呈した。ビヒクル対照で処理されたあるマウス(bFGFあり;群2)は、おそらく手術の合併症のために、調査の第1日で死亡したことが分かった。ビヒクル対照で処理されたあるマウス(bFGFなし;群1)は、4日目に後部右足が腹部の毛に付着した。これは、麻酔吸引下で分離した。
【0293】
すべての群のマウスは、恐らく外科手術のために、調査開始後直ちに体重下減少した。ビヒクル対照(bFGFあり;群2)、JBp1(群3)およびJBp1-DCM(群4)で処理されたマウスは、調査の残りの期間で体重が回復し、終了日には、平均体重の有意な減少はなかった。
【0294】
ビヒクル対照(bFGFなし;群1)およびソラフェニブ(群5)で処理されたマウスは、体重が回復せず、どちらの群も調査終了日には有意に体重減少(各々5.5%および5.6%)していた。
【0295】
繊維性被膜の湿重量は、最初はAngioChamber(商標)内に入ったbFGFによって誘導される血管新生の広がりによって促進され、次に内在性VEGFによって刺激される。小さい、または、軽度の線維性被膜は、内部の軽度の血管新生と関連し、従ってより高い血管新生阻害は、特定の処理による。
【0296】
本調査では、切除された被膜の線維性被膜の形成は、チャンバーにbFGFを乗せたビヒクル対照群(群2、誘導対照)において、bFGFなしのビヒクルコントロール群(群1、ベースライン対照)よりもはるかに増大しており(図21)、bFGFは十分に、および、顕著に被膜形成を促進することを示した。
【0297】
チャンバーにbFGFをのせたすべての処理群において、以後議論するビヒクル対照群との比較はすべて、誘導対照、群2(bFGFをチャンバーにのせている)とについてである。
【0298】
図21は、群1から5で調査した結果を示している。群1は、bFGFなしのビヒクル対照(NMP:PEG300(1:9、v/v))である。群2は、bFGFありのビヒクル対照(NMP:PEG300(1:9、v/v))である。群3は、bFGFありのJBp1である。群4は、bFGFありのJBp1-DCMである。群5は、bFGFありのソラフェニブ、60ミリグラム/キログラムである。参照記号の「a」は、誘導対照(bFGFありのビヒクル対照(群2))との有意な差を意味している(p<0.05:分散分析)。参照記号の「b」は、JBp1単剤治療(bFGFあり)との有意な差を意味する(p<0.05:分散分析)。すべての処理で、一日一回5日間(第0日から4日)投与した。
【0299】
JBp1、JBp1-DCMおよびソラフェニブでの処理(各々群3、4および5)は、被膜重量の差で示される通り(図21)、誘導対照(群2)と比べて血管新生が有意に減少する結果となった。JBp1-DCMおよびソラフェニブでの処理(各々群4および5)は、JBp1単剤治療(群3)と比べて有意に血管新生が減少していた。
【0300】
JBp1単剤で処理された(群3)マウスより回収されたチャンバーは、JBp1-DCMで処理された群(群4)のそれよりも、線維性被膜とチャンバーの間の空間に多くのフリーな血液が存在した。JBp1-DCMで処理された群(群4)マウスより回収されたチャンバー周辺の線維性被膜は、ビヒクル対照で処理された群(bFGFなしおよびあり;各々群1および2)よりも固かった。
【0301】
<結論>
JBp1(トリプシノーゲン(0.13ミリグラム/キログラム)、キモトリプシノーゲン(0.78ミリグラム/キログラム)およびα-アミラーゼ(0.03ミリグラム/キログラム))腹腔投与処理によるin vitro抗血管新生効果を、単独での投与、および、DCM(30.55ミリグラム/キログラム)、カプシエート(29.12ミリグラム/キログラム)およびメチルセレノシステイン(0.003ミリグラム/キログラム)との組み合わせた投与で、FvB雌マウスにおいてvivoPharm’s Angiochamber(商標)アッセイを用いて調査した。テスト項目の効果は、参照化合物ソラフェニブ(60ミリグラム/キログラム、経口投与)の効果と比較した。
【0302】
本調査では、調査終了日の被膜湿重量に示されるように、すべての処理で、誘導コントロールと比べてbFGF誘導性血管新生が有意に阻害される結果となった。参照化合物ソラフェニブ、および、JBp1-DCMとの組み合わせの両方において、JBp1単剤治療と比べて有意に血管新生が減少した。従ってJBp1-DCMは血管新生の減少に有効であることが示された。
【0303】
<実施例3:プロ酵素処方のin vitro調査>
トリプシノーゲン(pT)、キモトリプシノーゲン(pC)およびα-アミラーゼ(A)を、活性剤のメチルセレノシステイン(M)、カプシエート(C)または2-デオキシグルコース(D)と共に含むプロテアーゼプロ酵素処方(JBp1vPとして述べられている処方)の効果を決定するため、調査に取り掛かった。前記調査では、これらの成分間の相互作用を理解するため、イソボログラフィック法を適用した。
【0304】
<要約>
これらプロテアーゼプロ酵素処方の細胞成長阻害特性を調査した。IC50値および最大成長阻害に基づき、3つの細胞株、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2を、イソボログラフィック法を用いた組み合わせ調査のために選択した。イソボログラムの使用は、3つの個々の成分とJBp1vPの間の相互作用レベルの調査を可能にした。個々の構成要素のお互いの組み合わせおよびJBp1vPとの混合物の成長阻害活性の調査によって、改良された処方が同定された。これらの改良された処方の結果を、図22-24に示しており、図22-24はHCT-15細胞におけるJBp1vPならびにM,CおよびD各々のイソボログラフィック分析を提供する。
【0305】
<実施例4:2-デオキシグルコースおよびメチルセレノシステインを含む処方のin vitro調査>
メチルセレノシステイン(M)および2-デオキシグルコース(D)を含む処方の効果を決定するため、調査に取り掛かった。前記調査は、これらの成分間の相互作用を理解するため、イソボログラフィック法を適用した。
【0306】
<要約>
これらプロ酵素処方の細胞成長阻害特性を調査した。IC50値および最大成長阻害に基づき、3つの細胞株、A-549、HCT-15およびMIAPaCa-2を、イソボログラフィック法を用いた組み合わせ調査のために選択した。イソボログラムの使用は、2つの個々の成分の間の相互作用レベルの調査を可能にした。個々の成分およびお互いの組み合わせの成長阻害活性の調査によって、改良された処方を同定した。これsらの改良された処方の結果を、図25に示しており、図25はHCT-15細胞におけるMおよびDの組み合せのイソボログラフィック分析を提供する。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む医薬組成物であり、前記組成物は癌治療のために多機能アプローチを提供することが可能であって、プロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンから少なくとも一つ選択され、活性剤はセレン化合物、バニロイド化合物および細胞質解糖系還元剤および任意でグリコシドヒドロラーゼから少なくとも一つ選択される医薬組成物。
【請求項2】
プロテアーゼプロ酵素がトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が4:1から8:1の間の範囲である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が5:1から7:1の間の範囲である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が6:1である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
セレン化合物が、式Iもしくは式IIの化合物または医薬として許容可能なその塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物;
【化1】
[R1およびR3はそれぞれに独立して、H、OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルより選択され、C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルは任意で、ハロゲン、OH、-NH2、-C(O)OH、-C(O)OR5より独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R2およびR4はそれぞれ独立して、H、OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルより選択され、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルは任意で-NH-、-N(C1-4アルキル)-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-および-C(NH2)H-C(O)-より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)H、-C(O)-OR5、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、シクロアルキル、シクロアルキニルおよびアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキルおよびシクロアルケニルより選択される]。
【請求項7】
R1およびR3がそれぞれに独立して、H、OHおよびC1-4アルキルより選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
R2およびR4がそれぞれに独立して、H、OHおよび-C1-6アルキル-C(NH2)H-C(O)OHより選択される、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
セレン化合物がメチルセレノシステインまたは医薬として許容可能なその塩である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
バニロイド化合物が、式IIIの化合物または医薬として許容可能なその塩である、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物;
【化2】
[R1およびR2はそれぞれに独立して、H、OH、OCH3、C(O)H、OC2-6アルキル、OC2-6アルケニル、SH、SC1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルおよびN(C1-6アルキル)2より選択され;
R3およびR4はそれぞれ独立して、H、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルニキニルより選択され、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルニキニルは任意で、-NR6-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-C(NR6R6)H-、C(O)O-、-C(S)-、-C(S)NR6-、および-NR6-C(S)-NR6より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、-C(S)-、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたシクロアルケニルおよび任意で置換されたアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルより選択され; R6はH、C1-6アルキルより選択され;R3およびR4は任意で置換された、O、SおよびNより選択される0から3のヘテロ原子を含み、3から8までの炭素原子を環内に有する飽和または不飽和環を形成するよう結合され得る]。
【請求項11】
R1およびR2はそれぞれに独立して、OH、C(O)HおよびOCH3より選択され;
R3はH、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルより選択され、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルは任意で、-NR6-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-C(NR6R6)H-C(O)O-、-C(S)-、-C(S)NR6-、および-NR6-C(S)-NR6より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、-C(S)-、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたシクロアルケニルおよび任意で置換されたアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換され; R4はHである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
R3が、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルケニル、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルキル、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルケニル、および、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルキルより選択される、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
バニロイド化合物が、カプシエート、すなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル(E)-8-メチル-6-ノネノエートより選択される請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
グリコシドヒドロラーゼが、α-アミラーゼである、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞質解糖系還元剤が、2-デオキシ-D-グルコースである、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
活性剤が、メチルセレノシステイン、カプシエート、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る群の少なくとも一つより選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
活性剤が、メチルセレノシステイン、カプシエート、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができる第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含む医薬組成物であって、第一のプロテアーゼプロ酵素がキモトリプシノーゲンおよび第二のプロテアーゼプロ酵素がトリプシノーゲン、ならびにキモトリプシノーゲンとトリプシノーゲンの重量比が、4:1から8:1の間の範囲である医薬組成物。
【請求項19】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が5:1から7:1の間の範囲である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が6:1である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物が請求項1から17のいずれか一項に定義された活性剤をさらに含んでいる、請求項18から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
各々が腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含む医薬組成物であって、第一の活性剤がセレン化合物および第二の活性剤が細胞質解糖系還元剤である医薬組成物。
【請求項23】
セレン化合物および細胞質解糖系還元剤が請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から17のいずれか一項に定義されたプロテアーゼプロ酵素をさらに含む、請求項22または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から17のいずれか一項に定義された、バニロイド化合物およびグリコシドヒドロラーゼより選択された活性剤をさらに含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む癌治療剤であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は協同して癌治療への多機能アプローチを提供することができ、請求項1から17に記載のいずれか一項に定義されたものである、癌治療剤。
【請求項27】
活性剤を含む癌治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項28】
プロテアーゼプロ酵素を含む癌治療のための薬剤の製造における活性剤の使用であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項29】
癌治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素および活性剤の使用であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項30】
活性剤で治療されている対象における癌治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用であって、活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、ならびに、任意で活性剤は細胞間活性を誘導してプロテアーゼプロ酵素の効果を促進することができ、ならびに、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項31】
プロテアーゼプロ酵素で治療されている対象における癌治療のための薬剤の製造における活性剤の使用であって、活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、ならびに、任意で活性剤は細胞間活性を誘導しプロテアーゼプロ酵素の効果を促進することができ、ならびに、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項32】
治療的に有効な量のプロテアーゼプロ酵素および活性剤の対象への投与を含む癌を治療する方法であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、方法。
【請求項33】
プロテアーゼプロ酵素と活性剤の混合による、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬組成物、その調製物またはその処方を調製する方法。
【請求項34】
請求項18から25のいずれか一項に記載の癌治療のための医薬組成物。
【請求項35】
癌治療のための薬剤の製造における、請求項18から25のいずれか一項に記載の、医薬組成物の使用。
【請求項36】
請求項18から25のいずれか一項に記載の、治療的に有効な量の医薬組成物の、対象への投与を含む癌を治療する方法。
【請求項37】
請求項1から25のいずれか一項に記載の、治療的に有効な量の医薬組成物を含む坐薬。
【請求項1】
プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む医薬組成物であり、前記組成物は癌治療のために多機能アプローチを提供することが可能であって、プロテアーゼプロ酵素はトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンから少なくとも一つ選択され、活性剤はセレン化合物、バニロイド化合物および細胞質解糖系還元剤および任意でグリコシドヒドロラーゼから少なくとも一つ選択される医薬組成物。
【請求項2】
プロテアーゼプロ酵素がトリプシノーゲンおよびキモトリプシノーゲンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が4:1から8:1の間の範囲である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が5:1から7:1の間の範囲である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が6:1である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
セレン化合物が、式Iもしくは式IIの化合物または医薬として許容可能なその塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物;
【化1】
[R1およびR3はそれぞれに独立して、H、OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルより選択され、C1-4アルキルおよびC2-6アルケニルは任意で、ハロゲン、OH、-NH2、-C(O)OH、-C(O)OR5より独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R2およびR4はそれぞれ独立して、H、OH、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)-OR5、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルより選択され、C1-12アルキルおよびC2-12アルケニルは任意で-NH-、-N(C1-4アルキル)-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-および-C(NH2)H-C(O)-より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)H、-C(O)-OR5、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、シクロアルキル、シクロアルキニルおよびアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキルおよびシクロアルケニルより選択される]。
【請求項7】
R1およびR3がそれぞれに独立して、H、OHおよびC1-4アルキルより選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
R2およびR4がそれぞれに独立して、H、OHおよび-C1-6アルキル-C(NH2)H-C(O)OHより選択される、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
セレン化合物がメチルセレノシステインまたは医薬として許容可能なその塩である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
バニロイド化合物が、式IIIの化合物または医薬として許容可能なその塩である、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物;
【化2】
[R1およびR2はそれぞれに独立して、H、OH、OCH3、C(O)H、OC2-6アルキル、OC2-6アルケニル、SH、SC1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルおよびN(C1-6アルキル)2より選択され;
R3およびR4はそれぞれ独立して、H、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルニキニルより選択され、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルニキニルは任意で、-NR6-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-C(NR6R6)H-、C(O)O-、-C(S)-、-C(S)NR6-、および-NR6-C(S)-NR6より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、-C(S)-、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたシクロアルケニルおよび任意で置換されたアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換され;
R5はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルより選択され; R6はH、C1-6アルキルより選択され;R3およびR4は任意で置換された、O、SおよびNより選択される0から3のヘテロ原子を含み、3から8までの炭素原子を環内に有する飽和または不飽和環を形成するよう結合され得る]。
【請求項11】
R1およびR2はそれぞれに独立して、OH、C(O)HおよびOCH3より選択され;
R3はH、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルより選択され、C1-20アルキル、C2-20アルケニルおよびC2-20アルキニルは任意で、-NR6-、-NH(CO)-、-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-C(NR6R6)H-C(O)O-、-C(S)-、-C(S)NR6-、および-NR6-C(S)-NR6より選択される一つまたは複数の基で中断され、任意でハロゲン、-NH2、-OH、-C1-4アルキル、-C(O)OH、-C(O)OR5、-C(O)H、-N(C1-4アルキル)H、-N(C1-4アルキル)2、-C(NH2)H-C(O)OH、-C(S)-、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたシクロアルケニルおよび任意で置換されたアリールより独立して選択される0から3個の置換基で置換され; R4はHである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
R3が、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルケニル、-C1-4アルキル-NH-C(O)-C1-12アルキル、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルケニル、および、-C1-4アルキル-O-C(O)-C1-12アルキルより選択される、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
バニロイド化合物が、カプシエート、すなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル(E)-8-メチル-6-ノネノエートより選択される請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
グリコシドヒドロラーゼが、α-アミラーゼである、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞質解糖系還元剤が、2-デオキシ-D-グルコースである、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
活性剤が、メチルセレノシステイン、カプシエート、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る群の少なくとも一つより選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
活性剤が、メチルセレノシステイン、カプシエート、α-アミラーゼおよび2-デオキシ-D-グルコースから成る請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
腫瘍細胞の細胞間接着を促進するため、腫瘍細胞のタンパク質分解をもたらすため、または、腫瘍細胞の細胞死、分化もしくは免疫認識を誘導するために、腫瘍細胞表面またはその近傍を活性化することができる第一および第二のプロテアーゼプロ酵素を含む医薬組成物であって、第一のプロテアーゼプロ酵素がキモトリプシノーゲンおよび第二のプロテアーゼプロ酵素がトリプシノーゲン、ならびにキモトリプシノーゲンとトリプシノーゲンの重量比が、4:1から8:1の間の範囲である医薬組成物。
【請求項19】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が5:1から7:1の間の範囲である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
キモトリプシノーゲン:トリプシノーゲンの重量比が6:1である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物が請求項1から17のいずれか一項に定義された活性剤をさらに含んでいる、請求項18から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
各々が腫瘍細胞の細胞間活性を誘導することができる第一および第二の活性剤を含む医薬組成物であって、第一の活性剤がセレン化合物および第二の活性剤が細胞質解糖系還元剤である医薬組成物。
【請求項23】
セレン化合物および細胞質解糖系還元剤が請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から17のいずれか一項に定義されたプロテアーゼプロ酵素をさらに含む、請求項22または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から17のいずれか一項に定義された、バニロイド化合物およびグリコシドヒドロラーゼより選択された活性剤をさらに含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
プロテアーゼプロ酵素および活性剤を含む癌治療剤であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は協同して癌治療への多機能アプローチを提供することができ、請求項1から17に記載のいずれか一項に定義されたものである、癌治療剤。
【請求項27】
活性剤を含む癌治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項28】
プロテアーゼプロ酵素を含む癌治療のための薬剤の製造における活性剤の使用であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項29】
癌治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素および活性剤の使用であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項30】
活性剤で治療されている対象における癌治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼプロ酵素の使用であって、活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、ならびに、任意で活性剤は細胞間活性を誘導してプロテアーゼプロ酵素の効果を促進することができ、ならびに、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項31】
プロテアーゼプロ酵素で治療されている対象における癌治療のための薬剤の製造における活性剤の使用であって、活性剤およびプロテアーゼプロ酵素は協同して腫瘍細胞に有効であり、ならびに、任意で活性剤は細胞間活性を誘導しプロテアーゼプロ酵素の効果を促進することができ、ならびに、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、使用。
【請求項32】
治療的に有効な量のプロテアーゼプロ酵素および活性剤の対象への投与を含む癌を治療する方法であって、プロテアーゼプロ酵素および活性剤は請求項1から17のいずれか一項に定義されたものである、方法。
【請求項33】
プロテアーゼプロ酵素と活性剤の混合による、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬組成物、その調製物またはその処方を調製する方法。
【請求項34】
請求項18から25のいずれか一項に記載の癌治療のための医薬組成物。
【請求項35】
癌治療のための薬剤の製造における、請求項18から25のいずれか一項に記載の、医薬組成物の使用。
【請求項36】
請求項18から25のいずれか一項に記載の、治療的に有効な量の医薬組成物の、対象への投与を含む癌を治療する方法。
【請求項37】
請求項1から25のいずれか一項に記載の、治療的に有効な量の医薬組成物を含む坐薬。
【図3】
【図5】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図5】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2013−508307(P2013−508307A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534496(P2012−534496)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001403
【国際公開番号】WO2011/047434
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512104834)プロパンク・ピーティーワイ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001403
【国際公開番号】WO2011/047434
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512104834)プロパンク・ピーティーワイ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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