説明

トリム用インサート

【課題】従来に比してインサートの板厚を増やすことなく骨片部の剛性や強度等の機能を向上させることができる板金製のトリム用インサートを提供する。
【解決手段】所定間隔で並列された平板形状の骨片部11がボンド部12を介して連接された板金製のトリム用インサート10において、前記骨片部11が、上面11A側の長さ方向aに形成された上側突条部25を有する第一骨片部20と、下面11B側の長さ方向aに形成された下側突条部35を有する第二骨片部30とが交互に形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のドア開口等に装着されるトリムに関し、特にはその芯材として埋設される金属製のトリム用インサートの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
トリムは、例えば自動車のボディのドア開口部に取り付けられるいわゆるウェザーストリップのように、緩衝材、装飾材及びシール材として用いられている。この種トリムはゴムや合成樹脂の長尺成形品の内部にしばしば形状保持のための芯材として板金製のインサートが埋設される。
【0003】
トリムに埋設される板金製インサートは、例えば図7に符号110で示すように、所定間隔で並列された骨片部111,111と前記骨片部111を長手方向に連結するボンド部112とからなる。このトリム用インサート110は、平板状に打ち抜き成形されていて、通常、トリム本体の押出成形時に平板状で供給されて一体成形により埋設された後、曲げ加工機等によりトリムの幅方向に曲げ加工され、例えば図8のような所定の断面形状のトリム100に形成される。図8において、符号101は成形品本体部、102は自動車のドア開口部に形成されたフランジに取り付けられる嵌着部、103,104はそのリップ部、105はドアパネルに弾性的に当接して該ドアパネルとドアの開口部間の緩衝及びシールをするシール部である。
【0004】
上のように、トリム用インサートは、長尺のトリム成形品とともに一体成形され曲げ加工される。そして、トリムの装着箇所ではトリムとしての嵌着力を維持しなければならないものである。従って、トリム用インサートは曲げ加工されたトリムの芯材として形状保持力を有することは当然であるが、トリム成形品の押出成形時には押出材料の剪断抵抗にも十分耐えることができる剛性を備えなければならない。
【0005】
一般に、この種インサート110の骨片部111は幅が2ないし3mmで長さ(インサート全体としては幅方向の大きさ)が20ないし40mmという細長い形状であるので、厚みとしてはある程度のものが必要で、0.4ないし0.5mm厚の板金が使用されるが、図9に示すトリム用インサート110Aのように、骨片部111の一面側に突条部115を長さ方向に形成することによって、前記骨片部111の剛性、強度等の機能を向上させて板金の厚みを減らすことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかるに、トリム成形品の軽量化あるいはコスト削減さらには材料資源の有効利用等の要請から、インサートに使用する板金の厚みをより薄くすることが望まれている。しかしながら、前記インサート110Aのような構成では、さらに板金の厚みを減らした場合、骨片部111に突条部115が形成されない一般的なインサート110に比してトリム成形品の軽量化やコスト削減等を実現することができるものの、骨片部111の剛性や強度等を十分に確保することができず、トリム100の一体押出成形時の樹脂圧によって骨片部111が変形して並列状態が乱れてしまいインサートとしての機能を損なうおそれがある。そこで、近年では、インサートの板金の厚みを増やすことなく、骨片部111の一面側に突条部115が形成されたインサート110Aよりも剛性や強度等を向上させることができるトリム用インサートが切望されている。
【特許文献1】特開2003−200791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、従来に比してインサートの板厚を増やすことなく骨片部の剛性や強度等の機能を向上させることができる板金製のトリム用インサートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、所定間隔で並列された平板形状の骨片部がボンド部を介して連接された板金製のトリム用インサートにおいて、前記骨片部が、上面側の長さ方向に形成された上側突条部を有する第一骨片部と、下面側の長さ方向に形成された下側突条部を有する第二骨片部とが交互に形成されてなることを特徴とするトリム用インサートに係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記第一骨片部と第二骨片部との間に成形後に破断される破断ボンド部が形成されている請求項1に記載のトリム用インサートに係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記破断ボンド部が、前記第一骨片部及び第二骨片部の両端部近傍に形成されている請求項2に記載の記載のトリム用インサートに係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記第一骨片部と第二骨片部との間に長さ方向に対して傾斜状に連結する傾斜ボンド部が形成されている請求項1に記載のトリム用インサートに係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記第一骨片部または第二骨片部を介して隣接する各傾斜ボンド部が、それぞれ長さ方向に対して反対方向に傾斜して形成されている請求項4に記載のトリム用インサートに係る。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係るトリム用インサートは、所定間隔で並列された平板形状の骨片部がボンド部を介して連接された板金製のトリム用インサートにおいて、前記骨片部が、上面側の長さ方向に形成された上側突条部を有する第一骨片部と、下面側の長さ方向に形成された下側突条部を有する第二骨片部とが交互に形成されてなるため、従来のトリム用インサートに比して板厚を増やすことなく骨片部の剛性及び強度を高めることができる。さらに、当該インサートの屈曲方向が一方に限定されることがなく、トリム成形品との一体成形を容易に行うことができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第一骨片部と第二骨片部との間に成形後に破断される破断ボンド部が形成されているため、当該インサートに生じる枝流れを回避することができるとともに、トリム本体との一体成形時の変形を防止することができ、さらに、トリムとして車両への取り付ける際の屈曲性が向上する。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2において、前記破断ボンド部が、前記第一骨片部及び第二骨片部の両端部近傍に形成されているため、骨片部がトリムとの一体成形時により変形しにくくなる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1において、前記第一骨片部と第二骨片部との間に長さ方向に対して傾斜状に連結する傾斜ボンド部が形成されているため、トリムにおける三次元方向の変形性と屈曲性を維持することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第一骨片部または第二骨片部を介して隣接する各傾斜ボンド部が、それぞれ長さ方向に対して反対方向に傾斜して形成されているため、トリムの三次元方向の変形性と屈曲性とをより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図、図2は図1のトリム用インサートの要部断面図、図3は第2実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図、図4は第3実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図、図5は第4実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図、図6は図1のトリム用インサートの圧縮強度の測定方法を示す概略図である。
【0019】
図1及び図2に示す本発明の一実施例に係る板金製のトリム用インサート10は、打ち抜き成形によって所定間隔で並列された平板形状の骨片部11がボンド部12を介して連接されたものであって、前記骨片部11が第一骨片部20と第二骨片部30とが交互に形成されてなるもである。このトリム用インサート10において、各骨片部11では、両端部がそれぞれ面取りして形成されている。
【0020】
実施例では、骨片部11の長さ(トリム用インサート10の幅)が32.0mm、幅が2.0mm、厚さが0.35mm、各骨片部11(第一骨片部20と第二骨片部30)の間隔(ボンド部12の幅)が1.4mm、骨片部11の端部の幅が1.2mm、骨片部11の面取り部分の長さが1.0mmで構成される。
【0021】
第一骨片部20は、図1,2に示すように、上面11A側の長さ方向aに形成された上側突条部25を有する。図示の上側突条部25は、第一骨片部20の一側端部近傍から他側端部近傍まで直線状に下面11Bと一体に上面11A側に突出して形成されている。また、実施例の上側突条部25では、幅が1.0mm、上面11Aからの突出高さbが0.15mmである。なお図示しないが、上側突条部25は、第一骨片部20の両端まで形成しても構わない。
【0022】
第二骨片部30は、図1,2に示すように、下面11B側の長さ方向aに形成された下側突条部35を有する。図示の下側突条部35は、第二骨片部30の一側端部近傍から他側端部近傍まで直線状に上面11Aと一体に下面11B側に突出して形成されており、特に、前記第一骨片部20の上側突条部25と同一の長さで構成される。また、実施例下側突条部35では、幅が1.0mm、下面11Bからの突出高さcが0.15mmである。なお図示しないが、下側突条部35は、第二骨片部30の両端まで形成しても構わない。
【0023】
トリム用インサート10を構成する板金は、鉄板、アルミニウム板、銅板、ステンレス等の各種合金板よりなり、平板をプレス切断加工して骨片部11及びボンド部12が形成される。また、第一及び第二骨片部20,30の上側突条部25及び下側突条部35は同じプレス機械内で同時又は順次連続して形成される。
【0024】
図3に図示したトリム用インサート10Aは、請求項2の発明として規定したように、第一骨片部20と第二骨片部30との間に成形後に破断される破断ボンド部13を形成したものである。破断ボンド部13は、ボンド部12より幅狭に形成され、トリム成形品と一体成形された後の曲げ加工時に切断されるように構成される。破断ボンド部13を形成することにより、当該トリム用インサートに生じる枝流れを回避することができるとともに、前記したトリム本体との一体成形時に骨片部11が押出材料の剪断抵抗に耐え変形を防止することができ、さらに、トリムとして車両への取り付ける際には破断されるので、屈曲性が向上する。
【0025】
図4に図示したトリム用インサート10Bは、請求項3の発明として規定したように、破断ボンド部13(13A、13B)を第一骨片部20及び第二骨片部30の両端部近傍に形成したものである。このように、第一骨片部20及び第二骨片部30の両端部近傍に破断ボンド部13A,13Bを形成することにより、骨片部11がトリムとの一体成形時により変形しにくくなる。
【0026】
図5に図示したトリム用インサート10Cは、請求項4の発明として規定したように、第一骨片部20と第二骨片部30との間に長さ方向aに対して傾斜状に連結する傾斜ボンド部14を形成したものである。この傾斜ボンド部14は、図示の如く骨片部11の長さ方向aに対して傾斜して形成されているため、当該インサート10Cの屈曲時に傾斜するため、第一骨片部20と第二骨片部30とを連結した状態でもトリムにおける三次元方向の変形性と屈曲性を維持することができる。
【0027】
また、この傾斜ボンド部14は、図示しかつ請求項5の発明として規定したように、第一骨片部20または第二骨片部30を介して隣接する各傾斜ボンド部14A,14Bを、それぞれ長さ方向aに対して反対方向に傾斜して形成することが好ましい。これにより、トリム本体との一体成形時に不用意な変形の抑制が可能となって、第一骨片部20と第二骨片部30とを連結した状態でトリムの三次元方向の変形性と屈曲性とをより向上させることができる。
【0028】
次に、この発明のトリム用インサートの圧縮強度(剛性)について、図6に示す測定方法を用いて説明する。この測定方法において、トリム用インサート10は、トリム成形品とともに一体成形され折り曲げ加工される際の形状と同様に、骨片部11の長さ方向aに対して垂直方向に屈曲させてコの字型に変形させたものである。また、図6に示す測定装置50は、インサート10の屈曲形状に合わせて所定角度で傾斜した押圧面51Aによって所定の加圧力で前記インサート10を加圧する加圧部材51と、インサート10が載置される台座部52と、インサート10を前記台座部52に固定する固定部材53とを備える。
【0029】
図示の圧縮強度の測定方法は、屈曲させたトリム用インサート10を骨片部11の端部を上方に向けた状態で台座部52に載置し、前記インサート10の上方から加圧部材51を下降させて押圧面51Aを骨片部11の両端部に当接させ、前記骨片部11の両端部を外側に押圧した際の抗力を測定して行われる。
【0030】
この発明のトリム用インサート10の圧縮強度を測定した結果は、11.24(kgf)であった。また、第一の比較例として、各骨片部を平板状に形成した(突条部が形成されていない)インサートの圧縮強度を測定した結果、7.74(kgf)であった。さらに、第二の比較例として、各骨片部の一面側に突条部を形成したインサートの圧縮強度を測定した結果、9.66(kgf)であった。なお、インサート10と第一及び第二比較例のインサートでは、それぞれ板金の厚みや骨片部11の幅、各骨片部11の間隔等の条件を同一とした。
【0031】
上記測定結果から、この発明のトリム用インサート10では、板金の厚み等の条件が同一である場合、圧縮強度が、骨片部に突条部が形成されていない平板状のインサートより4割〜5割程度、骨片部の一面側に突条部が形成されたインサートより1割〜2割程度優れていることがわかった。
【0032】
このように、この発明のトリム用インサート10は、ボンド部12を介して連接される骨片部11が、上側突条部25を有する第一骨片部20と下側突条部35を有する第二骨片部30とを交互に形成して構成されることにより、骨片部が平板状に形成されたインサートや骨片部の一面側に突条部を形成したインサート等の従来品に比して、骨片部11の剛性及び強度を高めることができる。また特に、実施例のトリム用インサートにあっては、骨片部11の厚みを、骨片部に突条部が形成されない従来のトリム用インサートにおいて使用される板金の厚み0.5mmに対して0.15mm減じた0.35mmとしても、従来品と遜色ない剛性及び強度を備えることができる。
【0033】
さらに、このインサート10では、骨片部11の上面11A側に形成された上側突条部25と骨片部11の上面11B側に形成された下側突条部35が交互に連接して配置されるので、当該インサート10の屈曲方向が一方に限定されることがなく、トリム成形品との一体成形を容易に行うことができる。
【0034】
なお、本発明のトリム用インサートは、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、実施例では上側及び下側突条部の形状を断面台形状としたが、この形状に限定されず、適宜の形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図である。
【図2】図1のトリム用インサートの要部断面図である。
【図3】第2実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図である。
【図4】第3実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図である。
【図5】第4実施例に係るトリム用インサートの一部を示す平面図である。
【図6】トリム用インサートの圧縮強度の測定方法を示す概略図である。
【図7】従来のトリム用インサートの一部を示す平面図である。
【図8】従来のトリム用インサートを一体に埋設したトリムの断面図である。
【図9】骨片部の一面側に突条部を形成した従来のトリム用インサートの要部断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 トリム用インサート
11 骨片部
12 ボンド部
20 第一骨片部
25 上側突条部
30 第二骨片部
35 下側突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で並列された平板形状の骨片部がボンド部を介して連接された板金製のトリム用インサートにおいて、
前記骨片部が、上面側の長さ方向に形成された上側突条部を有する第一骨片部と、下面側の長さ方向に形成された下側突条部を有する第二骨片部とが交互に形成されてなることを特徴とするトリム用インサート。
【請求項2】
前記第一骨片部と第二骨片部との間に成形後に破断される破断ボンド部が形成されている請求項1に記載のトリム用インサート。
【請求項3】
前記破断ボンド部が、前記第一骨片部及び第二骨片部の両端部近傍に形成されている請求項2に記載の記載のトリム用インサート。
【請求項4】
前記第一骨片部と第二骨片部との間に長さ方向に対して傾斜状に連結する傾斜ボンド部が形成されている請求項1に記載のトリム用インサート。
【請求項5】
前記第一骨片部または第二骨片部を介して隣接する各傾斜ボンド部が、それぞれ長さ方向に対して反対方向に傾斜して形成されている請求項4に記載のトリム用インサート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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