説明

トルエン類の酸化処理装置、および酸化処理方法

【課題】第1に、反応効率に優れると共に、第2に、しかもこれが、簡単容易に実現される、トルエン類の酸化処理装置および酸化処理方法を提案する。
【解決手段】この酸化処理装置2や酸化処理方法では、マイクロリアクター1が使用され、マイクロ流路3と光触媒4と紫外線照射手段5を、有している。光触媒4は、紫外線照射にて酸化力を発揮する。マイクロ流路3では、まず、圧入されたトルエン類がベンジルカチオン類に酸化され、次にベンジルカチオン類が、途中で圧入された水へと移行し水と反応してベンジルアルコール類化し、それからベンジルアルコール類が、ベンゾアルデヒド類に酸化される。酸化反応は、層流のトルエン層14と光触媒4の界面17や、層流の水層15と光触媒4の界面18で、分子拡散により行われる。又、水への移行および水との反応は、トルエン層14と水層15間の界面16で、分子拡散により行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルエン類の酸化処理装置、および酸化処理方法に関する。すなわち、光触媒付のマクロリアクターを使用して、トルエン類をベンゾアルデヒド類へと酸化処理する、酸化処理装置および酸化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
例えば、トルエン(C−CH)は、コールタールの分留,石油の改質,石炭ガス軽油の蒸留、等によって得られ、各種の有機工業物質の原料や溶剤として、用いられている。
ベンゾアルデヒド(C−CHO)は、代表的にはトルエンを酸化して得られ、セッケン,その他の香料,医薬品,染料等の合成原料として用いられている。
【0003】
《従来技術》
そして、トルエンを出発物質とし、これを酸化することにより、生成物質としてベンゾアルデヒドを得る方法としては、次の各方法が知られている。
例えば、トルエンを塩素化して得られる塩化ベンザルを加水分解する方法や、トルエンを酸化モリブデン触媒により直接空気酸化する方法や、トルエンを硫酸の存在下で二酸化マンガンで酸化する方法、等が知られている。
しかしながら工業的には、いずれの方法も工程が複雑で多段階のバッチ式であり、もって操作が煩雑で作業が面倒であり、コスト高ともなるという指摘があった。
【0004】
そこで、これらに対処すべく、マイクロリアクターを使用することにより簡単容易に、トルエンをベンゾアルデヒドに酸化処理する方法や装置も、提案されていた。
すなわち、光触媒付のマイクロリアクターを使用し、そのマイクロ流路において、光触媒への紫外線照射に基づき、供給されたトルエンをベンゾアルデヒドに酸化処理することも、提案されていた。
なお、このように対象液体を、光触媒付のマイクロリアクターのマイクロ流路に供給して、酸化等反応処理する技術としては、例えば次の特許文献1に示したものが、開示されている。
【0005】
《先行技術文献情報》
【特許文献1】特開2005−279595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したようにマイクロリアクターを使用して、出発物質を酸化等反応処理して、生成物質を得る方法や装置は、次のようになっていた。
すなわち、この種のマイクロリアクターでは、光触媒の酸化チタンに対し、親和性の高い対象液体を出発物質として圧入供給することが、基本的コンセプトとなっている。
そこで、酸化チタンに対し親和性の乏しい出発物質の場合は、これを溶質として、親和性の高いアルコール等の有機溶媒に溶解させ、もって全体的には親和性の対象溶液として、マイクロ流路に圧入供給することにより、出発物質を生成物質へと反応処理していた。出発物質が親和性の乏しいトルエンの場合は、正にこれに該当する。
しかしながら、このように対象溶液について、多量の有機溶媒を使用するので、その分だけトルエンの量が少なくなってしまい、反応効率が悪いという問題が指摘されていた。
すなわち、光触媒の酸化チタンと対象溶液との界面において、ベンゾアルデヒドへと酸化処理されるトルエンの濃度,存在割合が低くなってしまい、ベンゾアルデヒドへの酸化反応効率が悪い、という難点があった。出発物質に対する生成物質の生成効率の悪さが、問題となっていた。
【0007】
《本発明について》
本発明のトルエン類の酸化処理装置、および酸化処理方法は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、反応効率に優れると共に、第2に、しかもこれが、簡単容易に実現される、トルエン類の酸化処理装置および酸化処理方法を、提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《各請求項について》
このような課題を解決する、本発明の特許請求の範囲記載の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1のトルエン類の酸化処理装置は、トルエン類を酸化処理する。そして、マイクロリアクターが使用されており、マイクロ流路と光触媒と紫外線照射手段とを、有している。
該光触媒は、該紫外線照射手段にて照射されて酸化力を発揮する。該マイクロ流路では、供給された該トルエン類が、ベンジルカチオン類に酸化され、該ベンジルカチオン類が、途中供給された水へと移行すると共に、水と反応してベンジルアルコール類化し、該ベンジルアルコール類が、ベンゾアルデヒド類に酸化されること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については、次のとおり。請求項2のトルエン類の酸化処理装置では、請求項1において、該マイクロ流路では、該トルエン類が、圧入供給されて層流のトルエン類層を形成すると共に、途中から水が、圧入供給されて層流の水層を形成して、該トルエン類層と界面接触する。
又、該光触媒は、該マイクロ流路の紫外線照射面以外の流路形成面に、付着コートせしめられている。該紫外線照射手段は、該マイクロ流路に対向配設されている。
そして、該トルエン類層と該光触媒との界面では、該紫外線照射手段による該光触媒への紫外線照射に基づき、分子拡散により、該トルエン類が該ベンジルカチオン類に酸化される。該トルエン類層と該水層との界面では、分子拡散により、該ベンジルカチオン類が、該トルエン類層から該水層へと移行すると共に、水と反応して該ベンジルアルコール類化する。
該水層と該光触媒との界面では、該紫外線照射手段による該光触媒への紫外線照射に基づき、分子拡散により、該ベンジルアルコール類が該ベンゾアルデヒド類に酸化されること、を特徴とする。
【0010】
請求項3については、次のとおり。請求項3のトルエン類の酸化処理装置では、請求項2において、該トルエン類層と該光触媒との界面、および該水層と該光触媒との界面では、該光触媒は、紫外線照射により原子構造の外殻軌道の電子が励起されて、電子欠損空孔である正孔が形成される。もって該正孔が、強力な酸化力を発揮すること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4のトルエン類の酸化処理装置では、請求項3において、該水層と該光触媒との界面では、更に、該光触媒の正孔にて水が酸化されて、OHラジカルが生成される。もって該OHラジカルが、強力な酸化力を発揮すること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5のトルエン類の酸化処理装置では、請求項3又は4に記載したトルエン類の酸化処理装置において、該光触媒は、酸化チタンよりなること、を特徴とする。
【0011】
請求項6のトルエン類の酸化処理方法は、光触媒付のマクロリアクターを使用して、トルエン類をベンゾアルデヒド類へと酸化処理する。
そして、そのマイクロ流路では、まず、供給された該トルエン類が、該光触媒への紫外線照射に基づき、ベンジルカチオン類に酸化される。次に、該ベンジルカチオン類が、途中供給された水へと移行すると共に、水と反応してベンジルアルコール類化する。それから、該ベンジルアルコール類が、該光触媒への紫外線照射に基づき、ベンゾアルデヒド類に酸化されること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。請求項7のトルエン類の酸化処理方法では、請求項
6において、酸化反応は、圧入供給されて層流となったトルエン類層と該光触媒との界面、および圧入供給されて層流となった水層と該光触媒との界面において、それぞれ分子拡散により行われる。又、水への移行および水との反応は、該トルエン類層と該水層間の界面において、分子拡散により行われること、を特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)まず、酸化処理装置のマイクロリアクターのマイクロ流路に、トルエン類が圧入供給されると共に、途中から水が圧入供給される。
(2)そして、紫外線照射手段から紫外線が照射され、もって、マイクロ流路に付着コートされた光触媒の外殻軌道に、正孔が形成される。
(3)そこで、マイクロ流路のトルエン層と光触媒との界面では、トルエン類がベンジルカチオン類へと、正孔の酸化力に基づき、分子拡散により酸化される。
(4)このベンジルカチオン類は、親水性に基づき分子拡散により、トルエン類層から界面を介し水層へと移行する。そして、反応性に富む陽イオンであるので、界面での分子拡散により水層の水と反応して、ベンジルアルコール類化される。
(5)このベンジルアルコール類は、水層と光触媒の界面において、正孔の酸化力に基づき分子拡散により、ベンゾアルデヒド類へと酸化される。
(6)なお、水層と光触媒の界面では、光触媒の正孔にて水層の水が酸化されて、OHラジカルが生成される。そこで、この面からも、その酸化力に基づき分子拡散により、ベンジルアルコール類がベンゾアルデヒド類へと酸化される。
(7)この酸化処理装置や酸化処理方法では、マイクロ流路において、上述したトルエン類からの一連の反応処理プロセスが遂次進行して行くが、これは、トルエン類層の単層流方式と、途中から水層を沿わせる2層流方式とを、組み合わせて採用したことにより、初めて実現されている。
(8)そして、反応処理プロセスの酸化反応や水との反応は、それぞれ界面での分子拡散により、しかも広い接触面積のもとで、短時間のうちに迅速かつ確実に行われ、もって、トルエン類からベンゾアルデヒド類が効率的に得られるようになる。
(9)さてそこで、本発明のトルエン類の酸化処理装置および酸化処理方法は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
《第1の効果》
第1に、反応効率に優れている。すなわち、本発明のトルエン類の酸化処理装置および酸化処理方法では、マイクロリアクターのマイクロ流路について、トルエン類層の単層流方式と、途中から水層を沿わせる2層流方式とを、組み合わせて採用してなる。
これにより、トルエン類→ベンジルカチオン類→ベンジルアルコール類→ベンゾアルデヒド類、等の一連の逐次反応処理プロセスが進行することになるが、この各反応処理プロセスは、層流の広い接触面積の界面において、分子拡散により行われる。
これらにより本発明では、出発物質であるトルエン類から、生成物質であるベンゾアルデヒド類が、効率的に得られるようになる。
マイクロリアクターを使用したこの種従来例のように、トルエン類を溶質として、親和性の高い有機溶媒に溶解して溶液化していたのに比し、本発明は、トルエン類の酸化反応効率、そしてベンゾアルデヒド類の生成効率に優れている。
【0014】
《第2の効果》
第2に、しかもこれは、簡単容易に実現される。すなわち、本発明のトルエン類の酸化処理装置および酸化処理方法では、光触媒付のマイクロリアクターのマイクロ流路について、単層流方式と途中からの2層流方式とを採用したことにより、まず酸化反応工程,次に水との反応工程,それから再び酸化反応工程等を辿る、逐次反応処理プロセスが進行する。
このように簡単な構成により、上述した第1の反応効率に優れるという効果が、容易に実現される。複雑で多段階のバッチ式工程を辿る、前述したこの種従来例のように、操作が煩雑で作業が面倒化するようなこともなく、簡単な操作のもと容易な作業により、コスト面にも優れつつ、トルエン類からベンゾアルデヒド類を得ることができる。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
《図面について》
以下、本発明のトルエン類の酸化処理装置、および酸化処理方法を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして、図1の(1)図は、拡大した要部の側断面図、(2)図は、平面図である。図2は、分解斜視図である。図3は、拡大した要部の平断面図である。
【0016】
《マイクロリアクター1について》
本発明のトルエン類の酸化処理装置2や酸化処理方法では、マイクロリアクター1を使用して、トルエン類をベンゾアルデヒド類へと、酸化処理する。そこでまず、マイクロリアクター1について、説明する。
この酸化処理装置2のマイクロリアクター1は、マイクロ流路3と光触媒4と紫外線照射手段5とを、備えている。マイクロ流路3には、トルエン類が圧入供給されると共に、途中から水が圧入供給される。光触媒4は、紫外線照射手段5にて照射されて、酸化力を発揮する。
【0017】
このようなマイクロリアクター1について、更に詳述する。マイクロリアクター1は、マイクロオーダーの微細構造のマイクロ流路3を備えた反応器よりなり、マイクロ流路3は、例えば流路幅が、100μm〜500μm程度で、流路深さが、25μm〜100μm程度よりなる。
図示のマイクロリアクター1は、例えば肉厚2mm程度の3枚重ねの(石英)ガラスプレート板よりなり(なお不活性材料であれば、樹脂板や金属板も使用可能)、本体プレート6の上下に、ホルダープレート7,8が、密に重積,被覆,固定されたサンドイッチ構造よりなる。
本体プレート6には、マイクロ流路3が形成されており、上位のホルダープレート7は、図示例では紫外線照射との関係から、必須的に透明であり光透過性を備えているのに対し、下位のホルダープレート8は、透明でなくても良い。
マイクロ流路3はチャンネル状をなし、図示例では本体プレート6の長手方向に直線的、かつ短手方向に複数回繰り返しつつ往復して、略ジグザグ状,蛇行状に連続的に刻設形成されており、各折曲箇所は湾曲状にカーブしている。
【0018】
そして、このようなマイクロ流路3の入口に対し、トルエン類が、供給槽9からポンプや微細チューブ11を介して、圧入供給される。これと共に、マイクロ流路3に対しては、その流路途中の入口から、水が、供給槽12からポンプ13や微細チューブ11を介して、圧入供給される。
本体プレート6に形成されたマイクロ流路3は、内部に流路を形成すべく上面,両側面,底面等を備えた、断面半円状や断面矩形状をなしている。図示例では、上面が紫外線透過用の紫外線照射面となっているが、この上面の紫外線照射面は、開放されると共に上位のホルダープレート7で密閉,封鎖形成されている。このような紫外線照射面を除き、本体プレート6に形成されたマイクロ流路3は、その両側面や底面の流路形成面に、光触媒4が付着コートせしめられている。
光触媒4としては、二酸化チタン(チタニア)が代表的に用いられ、その粒子が、金属微粒子や吸着材と共に、流路形成面に対し、塗布や焼結により膜状に固定,担持せしめられている。二酸化チタン以外の金属酸化物,その他も、光励起して触媒作用を発揮可能であると共に化学的に安定である限り、光触媒4として使用可能である。
そして、このようなマイクロ流路3に対し、紫外線照射手段5が対向配設されている。紫外線照射手段5は、本体プレート6のマイクロ流路3に対し、透明な上位のホルダープレート7を介し、対向配設されている。
光源である紫外線照射手段5としては、水銀灯,ブラックライト,LED等が使用可能である。もって、光触媒8を光励起(光化学反応)させる波長の紫外線(UV)を照射し、具体的には240nm〜280nmの中波長紫外線を照射するが、短波長紫外線や長波長紫外線を照射するものも使用可能である。
マイクロリアクター1は、このようになっている。
【0019】
《トルエン類やベンゾアルデヒド類について》
本発明の酸化処理装置2や酸化処理方法は、このようなマイクロリアクター1を使用して、出発物質,原料物質であるトルエン類を、目的物質,生成物質であるベンゾアルデヒド類へと、酸化処理する。そこで次に、このトルエン類やベンゾアルデヒド類について、説明しておく。
トルエン類の代表例であるトルエン(C−CH)は、ベンゼンの水素原子1個をメチル基(CH)で置換した芳香族炭化水素であり、水に難溶の無色液体よりなり、各種の有機工業物質の原料や溶剤として、知られている。
又、ベンゾアルデヒド類(ベンズアルデヒド類)の代表例であるベンゾアルデヒド(ベンズアルデヒド)(C−CHO)は、ベンゼンの水素原子1個をアルデヒド基(CHO)で置換した最も簡単な芳香族アルデヒドであり、無色液体よりなり、香料,医薬品,農薬,染料,顔料等の合成原料として、知られている。
【0020】
さて本発明は、このようなトルエン,その他のトルエン類を、出発物質,原料物質として適用対象とすると共に、ベンゾアルデヒド,その他のベンゾアルデヒド類を、目的物質,生成物質として適用対象とする。
このような出発物質としてのトルエン類と、生成物質としてのベンゾアルデヒド類との組み合わせ例について、代表的には次のとおり。
・トルエン→ベンゾアルデヒド
・パラクロロトルエン→パラクロロベンゾアルデヒド
・オルソクロロトルエン→オルソクロロベンゾアルデヒド
・オルソフロロトルエン→オルソフロロベンゾアルデヒド
・オルソシアノトルエン→オルソシアノベンゾアルデヒド
・メタクロロトルエン→メタクロロベンゾアルデヒド
・メタフロロトルエン→メタフロロベンゾアルデヒド
・メタシアノトルエン→メタシアノベンゾアルデヒド
・パラクロロトルエン→パラクロロベンゾアルデヒド
・パラフロロトルエン→パラフロロベンゾアルデヒド
・パラシアノトルエン→パラシアノベンゾアルデヒド
・フロロトルエン→パラフロロベンゾアルデヒド
・シアノトルエン→シアノベンゾアルデヒド
【0021】
更に本明細書において、トルエン類には、ベンゼンの水素原子1個をメチル基(CH)1個で置換したものの他、ベンゼンの水素原子2個をそれぞれメチル基で置換したキシレン(C−(CH)類をも、包含する。これと共に、ベンゾアルデヒド類には、ベンゼンの水素原子2個をそれぞれアルデヒド基(CHO)で置換したアルデヒド類も、包含する。
このような出発物質と生成物質としての組み合わせ例については、代表的には次のとおり。
・パラキシレン→テレフタルアルデヒド
・オルソキシレン→フタルアルデヒド
出発物質のトルエン類や、生成物質のベンゾアルデヒド類は、このようになっている。
【0022】
《層流や酸化力について》
本発明のマイクロリアクター1を使用した酸化処理装置2や酸化処理方法では、マイクロ流路3内に層流が形成されて、トルエン類が酸化処理される。そこで次に、この層流や酸化力について、説明する。
まず、マイクロリアクター1のマイクロ流路3では、トルエン類が、圧入供給されて層流のトルエン類層14を形成すると共に、途中から水が、圧入供給されて層流の水層15を形成し、もってトルエン類層14と沿わされ、界面16で接触する。トルエン類層14のトルエン類は、親水性に乏しく水層15とは交わることなく、両層は界面16を形成する。
すなわち、供給槽9からマイクロ流路3に圧入供給されたトルエン,又はその他のトルエン類は、マイクロ流路3内をその入口から出口へ向け、層流のトルエン類層14を形成して流れる。又、供給槽12からマイクロ流路3に圧入供給される水は、マイクロ流路3を途中から出口へ向け、層流の水層15を形成して流れる。そして、このトルエン類層14とこれに沿わされた水層15とは、界面16で接触する(図3を参照)。
層流については、更に次のとおり。マイクロ流路3は流路幅が極めて小さく狭いと共に、供給されるトルエン類や水がポンプ10,13で圧入されるので、レイノルズ数(慣性力と粘性による摩擦力との比である無次元数)が小さく、層流が形成される。マイクロ流路3を流れるトルエン類層14や水層15は、その粘性が支配的であり、入り乱れて乱流となることなく、滑るように層流となっている。
そして、単位容積当たりの接触面積(比表面積)が極めて広い状態で、トルエン類層14と水層15とは、相互間では界面16で接触しつつ、光触媒4とは界面17,18で接触しつつ、層流となって流れて行く(図3を参照)。
【0023】
又、このようにマイクロ流路3を流れるトルエン類層14および水層15、そしてマイクロ流路3の流路形成面に付着コートされた光触媒4に対して、紫外線照射手段5から紫外線が照射される。
すると、トルエン類層14と光触媒4との界面17、および水層15と光触媒4との界面18では、それぞれ光触媒4が、紫外線照射により、その原子構造の外殻軌道の電子が励起され、もって電子欠損空孔である正孔が形成される。そして正孔は、強力な酸化力を発揮する。
これに加え、水層15と光触媒4との界面18では、更に、光触媒4の上記正孔にて、水が酸化され、もってOHラジカルが生成される。そしてOHラジカルは、極めて強力な酸化力を発揮する。
なお、このような酸化力つまり光酸化効果は、白金(Pt)等の助触媒を用いれば、一層助長される。
層流や酸化力については、以上のとおり。
【0024】
《トルエン類の酸化処理について》
次に、トルエン類の酸化処理について説明する。この酸化処理装置2や酸化処理方法では、マイクロリアクター1のマイクロ流路3において、トルエン類の酸化処理,反応処理プロセスが、逐次進行して行く。
すなわち、トルエン類→ベンジルカチオン類→ベンジルアルコール類→ベンゾアルデヒド類、等の酸化処理,反応処理プロセスが、マイクロ流路3内において、時間的に順次そして遂次各所で進行して行く。
ところでトルエン類は、光触媒4の酸化チタンに対し親和性に乏しい。そこで、予め光触媒4が付着コートされたマイクロ流路3を、例えばエタノール等のアルコールで軽く濡らしておくことにより、トルエン類をマイクロ流路3に対し、馴染み易く流れ易くしておくとよい。
【0025】
反応処理プロセスについて、更に詳述する。マイクロ流路3内では、まず、トルエン類層14と光触媒4との界面17において、光触媒4への紫外線照射に基づき生成された正孔の酸化力に基づき、分子拡散により、トルエン類層14のトルエン類がベンジルカチオン類に酸化される。そしてベンジルカチオン類は、界面17からトルエン類層14内に拡散して行く。
すると、トルエン類層14と途中から導入された水層15との界面16では、分子拡散により、トルエン類層14中の上記ベンジルカチオン類が、その親水性に基づき、トルエン類層14から水層15へと移行する。移行と共に、ベンジルカチオン類は、反応性に富む陽イオンであることに基づき、水層15の水と反応してベンジルアルコール類化する。そしてベンジルアルコール類は、界面16から水層15内に拡散して行く。
すると、水層15と光触媒4との界面18では、光触媒4への紫外線照射に基づき生成された正孔、更にはOHラジカルの酸化力に基づき、分子拡散により、水層15中の上記ベンジルアルコール類が、ベンゾアルデヒド,又はその他のベンゾアルデヒド類に酸化される。そしてベンゾアルデヒド類は、界面18から水層15内に拡散して行く。
【0026】
そして、上述した一連の酸化処理,反応処理プロセスは、それぞれ界面16,17,18において、分子拡散により行われる。
すなわち、この酸化処理装置2や酸化処理方法において、その酸化処理は、圧入供給されて層流となったトルエン類層14と光触媒4との界面17、および、圧入供給されて層流となった水層15と光触媒4との界面18において、それぞれ分子拡散により行われる。又、水への移行および水との反応処理は、トルエン類層14と水層15間の界面16において、分子拡散により行われる。
そして、マイクロ流路3を層流となって流れるトルエン類層14と水層15間、およびこれらと光触媒4との界面16,17,18においては、乱流の場合のように、流体力学的な力による流路幅方向への物質移動は殆どなく、その為に費やされるエネルギーロスもない。流路幅方向への物質移動は分子拡散が主体であり、流体力学的な力による物質移動は流れ方向のみに働く。酸化処理,反応処理プロセスは、いずれも、物質相互間の分子拡散により、しかも広い接触面積のもとで行われる。界面16,17,18を介して、反応対象化学種の分子相互が作用し合って反応し、もって反応効率は最大となる。
図中19は回収槽であり、回収槽19には、マイクロ流路3から微細チューブ11を介して、未処理の出発物質,原料物質であるトルエン類、途中で導入された水、そして目的物質,生成物質であるベンゾアルデヒド類等が、排出されて重層的に回収される。なお、図3中の20は、層流の流れ方向を示す。
トルエン類の酸化処理は、このように行われる。
【0027】
《マイクロ流路3における反応:その1》
次に、マイクロリアクター1のマイクロ流路3での酸化処理,反応処理プロセスについて、上述した所を反応式等に基づき、更に具体的かつ詳細に、説明する(主に図3を参照)。ここでは、トルエン類の代表例であるトルエンについて、ベンゾアルデヒドへの酸化処理を説明する。
マイクロ流路3では、まず、紫外線照射手段5からの紫外線(光量子hνとして把握、以下同様)照射により、光触媒4の二酸化チタン(TiO)表面の外殻軌道(定常軌道)にある外殻電子(e)が、励起されて、外殻軌道から励起軌道に昇位して移る。もって、光触媒4表面の外殻軌道には、電子が抜け出て欠損した電子空孔である正孔(hole)が形成される。下記化1の反応式を参照。
このように形成された正孔は、他物質から電子を引き抜いて、その電子欠損を埋めようとする性質、つまり強い酸化力(電子奪取力)を備えている。なお、紫外線照射がなくなると、昇位していた電子は、励起軌道から外殻軌道へと戻る。又、下記化1の反応式は、2光量子(2hν)反応と考えられ、正孔も2個(2hole)形成される。
さてそこで、このように生成された光触媒4の正孔(hole)は、界面17で接するトルエン類層14のトルエンから、電子(e)を引き抜く。もって、出発物質,原料物質のトルエン(C−CH)は、まず、下記化2の反応式の酸化反応により、ベンジルカチオン(C−CH)へと酸化される。
そして、この酸化反応は、界面17での分子拡散に基づき行われ、生成されたベンジルカチオンは、界面17からトルエン類層14へと拡散される。
【0028】
【化1】

【化2】

【0029】
《マイクロ流路3における反応:その2》
このように生成されたトルエン類層14中のベンジルカチオンは、親水性よりなる。そこで、界面16での分子拡散に基づき、トルエン類層14から水層15へと移行する。
これと共に、ベンジルカチオン(C−CH)は、反応性に富む陽イオンであり、界面16での分子拡散に基づき、水層15の水(HO)と反応してベンジルアルコール(C−CH−OH)化される。下記化3の反応式を参照。
界面16で生成されたベンジルアルコールは、界面17から水層15へと拡散される。
【0030】
【化3】

【0031】
《マイクロ流路3における反応:その3》
このように生成された水層15中のベンジルアルコールは、前述に準じ、光触媒4への紫外線照射に基づき生成された正孔にて、酸化される。
すなわち、下記化4の反応式にて生成された光触媒4の正孔(hole)は、界面18で接する水層15のベンジルアルコールから、電子を引き抜く。もって、ベンジルアルコール(C−CH−OH)は、下記化5の反応式の光酸化反応により、ベンゾアルデヒド類のベンゾアルデヒド(C−CHO)へと、酸化される。
そして、この酸化反応は、界面18での分子拡散に基づき行われ、生成された目的物質,生成物質のベンゾアルデヒドは、界面18から水層15へと拡散され、もって最終的に回収槽19に回収される。
【0032】
【化4】

【化5】

【0033】
《マイクロ流路3における反応:その4》
さて、以上の各反応式を総括すると、下記化6の総括反応式が得られる。すなわち、前記化1,化2,化3,化4,化5等の各反応式を合算すると、下記化6の反応式が得られる。
そして、この下記化6の反応式中のプロトン(H)は、光触媒4の正孔が引き抜いた電子(4e)が、事後に放電されることにより、水素分子(H)化される。下記化7の反応式を参照。
そこで、化6の総括反応式について、更に、この化7の反応式を加えて総括すると、下記化8の総括反応式が得られる。
【0034】
【化6】

【化7】

【化8】

【0035】
《マイクロ流路3における反応:その5》
ところで、水層15と光触媒4との界面18では、光触媒4の正孔にて、水層15の水が酸化されて、OHラジカルが生成される。
すなわち、例えば前記化4の反応式のように生成される正孔(hole)は、一方では、前述により界面18で接する水層15中のベンジルアルコールを、ベンゾアルデヒドに酸化するが、他方では、水層15の水(HO)から電子(e)を引き抜いて酸化し、もってプロトン(H)とOHラジカル(・OH)とにラジカル分裂させる。下記化9の反応式を参照。
そして、このように生成されたOHラジカルつまりヒドロキシラジカルは、周知のごとく、強力な酸化力(電子奪取力)を備えている。
そこで、このOHラジカルが、界面18で接する水層15のベンジルアルコールから、電子を引き抜く。もって、前記化5の反応式に加えこの面からも、ベンジルアルコール(C−CH−OH)は、酸化反応に基づき、ベンゾアルデヒド(C−CHO)へと酸化される。下記化10の反応式を参照。
そして、この化9の反応式と化10の反応式を合算すると、下記化11の総括反応式が得られる。つまり、OHラジカルの生成反応を潜在化させると、下記化11の反応式となる。
【0036】
【化9】

【化10】

【化11】

【0037】
そして、上記化11の総括反応式について、上記化9の反応式における正孔(2hole)の生成と、上記化11の反応式においるプロトン(2H)の水素分子化とを、加味すると、下記化12の総括反応式が得られる。
つまり、2hν → 2holeの正孔の生成反応(例えば、前記化4の反応式を参照)と、光触媒4の正孔が引き抜いた電子(2e)の事後放電により、プロトンが水素分子化される反応(例えば、前記化7の反応式を参照)とを、上記化11の反応式に加えると、下記化12の総括反応式となる。
トルエン類の代表例であるトルエンに関し、マイクロリアクター1のマイクロ流路3での反応処理プロセスの詳細は、以上のとおりである。
【0038】
【化12】

【0039】
《作用等》
本発明のトルエン類の酸化処理装置2、および酸化処理方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)まず、酸化処理装置2のマイクロリアクター1のマイクロ流路3に対して、トルエン,又はその他のトルエン類が圧入供給されると共に、途中から水が圧入供給される。
【0040】
(2)そして、マイクロ流路3に対して、紫外線照射手段5から、紫外線(hν)が照射される。もって、マイクロ流路3に付着コートされた光触媒4は、紫外線照射により、その原子構造の外殻軌道の電子(e)が励起されて、電子欠損空孔である正孔(hole)が、形成される(前記化1,化4の反応式を参照)。
【0041】
(3)そこで、マイクロ流路3のトルエン層14と光触媒4との界面17では、トルエン(C−CH),又はその他のトルエン類が、ベンジルカチオン(C−CH),又はその他のベンジルカチオン類へと、正孔の酸化力に基づき、分子拡散により酸化される(前記化2の反応式を参照)。
【0042】
(4)すると、このように生成されたトルエン類層14中のベンジルカチオン,又はその他のベンジルカチオン類は、その親水性に基づき、分子拡散により界面16を介して、トルエン類層14から水層15へと移行する。
そして、ベンジルカチオン,又はその他のベンジルカチオン類は、反応性に富む陽イオンであるので、界面16での分子拡散により、水層15の水(HO)と反応して、ベンジルアルコール(C−CH−OH),又はその他のベンジルアルコール類化される(前記化3の反応式を参照)。
【0043】
(5)そして、このように生成された水層15中のベンジルアルコール,又はその他のベンジルアルコール類は、水層15と光触媒4との界面18において、正孔の酸化力に基づき分子拡散により、ベンゾアルデヒド(C−CHO),又はその他のベンゾアルデヒド類へと、酸化される(前記化5の反応式を参照)。
このようにして、トルエン又はその他のトルエン類が、ベンゾアルデヒド又はその他のベンゾアルデヒド類へと、酸化処理される(前記化6,化8の総括反応式を参照)。
【0044】
(6)これに加え、水層15と光触媒4の界面18では、光触媒4の上記正孔にて水層15の水が酸化されて、OHラジカル(・OH)が、生成される(前記化9の反応式を参照)。
そこで、上記(5)で述べた所に加え、更に、このOHラジカルの酸化力に基づいて、分子拡散により、ベンジルアルコール又はその他のベンジルアルコール類が、ベンゾアルデヒド又はその他のベンゾアルデヒド類へと、酸化される(前記化10の反応式,更には化11,化12の総括反応式を参照)。
【0045】
(7)本発明の酸化処理装置2や酸化処理方法では、マイクロリアクター1のマイクロ流路3において、上述したトルエン類からの一連の酸化処理,反応処理プロセスが遂次進行して行き、もってベンゾアルデヒド類が生成される。
そして、これらは次により実現される。すなわち、マイクロ流路3について、トルエン類層14の単層流方式と、途中からトルエン類層14に水層15を沿わせる2層流方式とを、組み合わせて採用したことにより、上記反応処理プロセスの遂次進行が、初めて実現されるに至っている。
特に、トルエン類層14に途中から水層15を沿わせて、トルエン類層14での反応処理プロセスの中間生成物であるベンジルカチオン類を、トルエン類層14から水層15側へと移行させ、もって事後、ベンゾアルデヒド類へ向けての反応処理プロセスを進行させることによって、初めて実現可能となっている。
【0046】
(8)そして、この反応処理プロセスにおける酸化反応や水との反応は、それぞれ、トルエン類層14と光触媒4との界面17、水層15と光触媒4との界面18、およびトルエン類層14と水層15との界面16等において、分子拡散により行われる。
すなわち、このトルエン類の酸化処理装置2や酸化処理方法において、各々の反応処理プロセスは、界面16,17,18を介した分子相互間の分子拡散作用に基づいて、極めて短時間のうちに迅速かつ確実に行われる。しかも界面16,17,18において、単位容積当たりの接触面積が、極めて広い状態で行われる。
この酸化処理装置2や酸化処理方法は、このような分子拡散と広い接触面積に基づき、出発物質,原料物質のトルエン類から、目的物質,生成物質であるベンゾアルデヒド類が、反応効率に優れ効率的に得られるようになる。
なお、前述したOHラジカル(前記化9の反応式を参照)は、その存在時間が極めて短く瞬間的で超短寿命ではあるが、上述した迅速な分子拡散と広い接触面積に基づき、ベンジルアルコールの酸化反応(前記10の反応式を参照)が、所期のとおり確実に行われるようになる。又、OHラジカルが、他の2次的な副産物を生じる反応をする虞もなくなる。従って、この面からも反応収率,反応効率に優れるようになる。
本発明の作用等は、このようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るトルエン類の酸化処理装置、および酸化処理方法について、発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして(1)図は、拡大した要部の側断面図、(2)図は、平面図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、分解斜視図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、拡大した要部の平断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 マイクロリアクター
2 酸化処理装置
3 マイクロ流路
4 光触媒
5 紫外線照射手段
6 本体プレート
7 ホルダープレート
8 ホルダープレート
9 供給槽
10 ポンプ
11 微細チューブ
12 供給槽
13 ポンプ
14 トルエン類層
15 水層
16 界面
17 界面
18 界面
19 回収槽
20 流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルエン類を酸化処理する装置であって、マイクロリアクターが使用され、マイクロ流路と光触媒と紫外線照射手段とを、有しており、
該光触媒は、該紫外線照射手段にて照射されて酸化力を発揮し、
該マイクロ流路では、供給された該トルエン類が、ベンジルカチオン類に酸化され、該ベンジルカチオン類が、途中供給された水へと移行すると共に水と反応してベンジルアルコール類化し、該ベンジルアルコール類が、ベンゾアルデヒド類に酸化されること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載したトルエン類の酸化処理装置において、該マイクロ流路では、該トルエン類が、圧入供給されて層流のトルエン類層を形成すると共に、途中から水が、圧入供給されて層流の水層を形成して、該トルエン類層と界面接触し、
該光触媒は、該マイクロ流路の紫外線照射面以外の流路形成面に、付着コートせしめられ、該紫外線照射手段は、該マイクロ流路に対向配設されており、
該トルエン類層と該光触媒との界面では、該紫外線照射手段による該光触媒への紫外線照射に基づき、分子拡散により、該トルエン類が該ベンジルカチオン類に酸化され、
該トルエン類層と該水層との界面では、分子拡散により、該ベンジルカチオン類が、該トルエン類層から該水層へと移行すると共に、水と反応して該ベンジルアルコール類化し、
該水層と該光触媒との界面では、該紫外線照射手段による該光触媒への紫外線照射に基づき、分子拡散により、該ベンジルアルコール類が該ベンゾアルデヒド類に酸化されること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載したトルエン類の酸化処理装置において、該トルエン類層と該光触媒との界面、および該水層と該光触媒との界面では、
該光触媒は、紫外線照射により原子構造の外殻軌道の電子が励起されて、電子欠損空孔である正孔が形成され、もって該正孔が強力な酸化力を発揮すること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載したトルエン類の酸化処理装置において、該水層と該光触媒との界面では、更に、
該光触媒の正孔にて水が酸化されて、OHラジカルが生成され、もって該OHラジカルが強力な酸化力を発揮すること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載したトルエン類の酸化処理装置において、該光触媒は、酸化チタンよりなること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理装置。
【請求項6】
光触媒付のマクロリアクターを使用して、トルエン類をベンゾアルデヒド類へと酸化処理する方法であって、そのマイクロ流路では、
まず、供給された該トルエン類が、該光触媒への紫外線照射に基づき、ベンジルカチオン類に酸化され、次に、該ベンジルカチオン類が、途中供給された水へと移行すると共に、水と反応してベンジルアルコール類化し、
それから、該ベンジルアルコール類が、該光触媒への紫外線照射に基づき、ベンゾアルデヒド類に酸化されること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載したトルエン類の酸化処理方法において、酸化反応は、圧入供給されて層流となったトルエン類層と該光触媒との界面、および圧入供給されて層流となった水層と該光触媒との界面において、それぞれ分子拡散により行われ、
又、水への移行および水との反応は、該トルエン類層と該水層間の界面において、分子拡散により行われること、を特徴とする、トルエン類の酸化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132597(P2010−132597A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309692(P2008−309692)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(500561931)三井造船プラントエンジニアリング株式会社 (41)
【Fターム(参考)】