説明

トルク変動吸収装置

【課題】遠心力が作用したり冷却されても弾性部材を収容する空間を確実にシールできるトルク変動吸収装置を提供すること。
【解決手段】センタプレート23と、センタプレート23に対して回転可能に配されるサイドプレート17、18と、サイドプレート17、18に囲まれた空間に収容されるとともにサイドプレート17、18とセンタプレート23との間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材34、35と、センタプレート23に固定されるとともにサイドプレート18にスライド可能に圧接することにより弾性部材34、35を収容する空間を外部からカバーするカバー部材25と、弾性部材34、35を収容する空間内の気圧が外気圧より低くなったときにカバー部材25に作用する圧力によるカバー部材25の変形を抑制可能な抑制部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク変動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルク変動吸収装置は、エンジンと変速機との間の動力伝達経路上に配設され、エンジンと変速機との間に生じた変動トルクを吸収(抑制)する。トルク変動吸収装置は、弾性力(バネ力)によって変動トルクを吸収するダンパ部を有するものがある。ダンパ部は、2つの回転部材の周方向の間に弾性部材(コイルスプリング)が配された構成となっており、2つの回転部材が相対回転したときにコイルスプリングが収縮することによって変動トルクを吸収する。
【0003】
このようなダンパ部を有する装置では、一方の回転部材が他方の回転部材の外周ないし両サイドに配され、一方の回転部材と他方の回転部材との間の隙間を、シール部材を用いて塞ぐことで、コイルスプリングが収容された空間をシールするものがある。例えば、特許文献1では、カバーディスク部材(特許文献1のFig.8の14e、16e)とセントラルディスク部材(特許文献1のFig.8の24e)との間の隙間に板ばね(特許文献1のFig.8の50e、52e)が配され、板ばねがカバーディスク部材の内側の面(コイルスプリングを収容する側の面)とスライド可能に接しているものが開示されている。また、特許文献2でも、特許文献1と同様なシール構造を有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2103838号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2002/0128074号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシール構造では、板ばねがカバーディスク部材の内側の面に接触しているため、その周囲に泥水がある環境下では、板ばねとカバーディスク部材との間の隙間に滞留している泥水が内側に浸入する可能性がある。
【0007】
例えば、特許文献1に記載のシール構造では、板ばねは、内周部分がリベットによってセントラルディスク部材に固定され、外周部分が軸方向に傾いてカバーディスク部材に圧接している。そのため、回転に伴う遠心力が作用すると、板ばねの外周部分がカバーディスク部材から離れる方向に変形し、板ばねの外周部分とカバーディスク部材との間のシール性が低下する。また、泥水にも遠心力が作用するので、泥水が板ばねの外周部分とカバーディスク部材との間から内側へ浸入する可能性がある。
【0008】
また、特許文献1に記載のシール構造では、運転中昇温しているカバーディスク部材が泥水により冷却されるに伴い、コイルスプリングを収容する空間の気圧が外気圧に対して負圧になる。その際、板ばねの外周部分とカバーディスク部材との接触部分に泥水が付着していると、圧力差によりコイルスプリングを収容する空間へ吸い込んでしまう可能性がある。
【0009】
本発明の主な課題は、遠心力が作用したり冷却されても弾性部材を収容する空間を確実にシールできるトルク変動吸収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点においては、トルク変動吸収装置において、回転可能に配されたセンタプレートと、前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレートと、前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材と、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接することにより前記弾性部材を収容する前記空間を外部からカバーするカバー部材と、前記弾性部材を収容する前記空間内の気圧が外気圧より低くなったときに前記カバー部材に作用する圧力による前記カバー部材の変形を抑制可能な抑制部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記抑制部は、前記カバー部材に作用する遠心力による前記カバー部材の変形を抑制可能であることが好ましい。
【0012】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記抑制部は、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に形成されることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の視点においては、トルク変動吸収装置において、回転可能に配されたセンタプレートと、前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されるサイドプレートと、前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材と、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接することにより前記弾性部材を収容する前記空間を外部からカバーするカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記弾性部材を収容する前記空間内の気圧が外気圧よりも低くなったときに、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対する密着性が増加するように構成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記カバー部材は、遠心力が作用したときに、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対する密着性が増加するように構成されることが好ましい。
【0015】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記カバー部材は、環状の板状部材であることが好ましい。
【0016】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記カバー部材は、前記サイドプレートに対して圧接する部分が自由状態に対して前記センタプレートから離れる方向に撓んだ状態で、前記サイドプレートに対して圧接することが好ましい。
【0017】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記カバー部材は、前記センタプレートと当接する側の面が前記サイドプレートに圧接することが好ましい。
【0018】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートは、前記センタプレートに対する一方のサイドにて、前記カバー部材が前記センタプレートに固定された部分よりも径方向外側に内周端面を有し、かつ、前記内周端面の前記センタプレートから離れた側の角に前記カバー部材と圧接する当接部を有することが好ましい。
【0019】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートの前記内周端面の前記センタプレートから離れた側の角は、前記内周端面の前記センタプレートに近い側の角と径方向に同じ位置、又は、前記内周端面の前記センタプレートに近い側の角よりも径方向内側に配されるように形成されていることが好ましい。
【0020】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートの前記当接部は、曲面に形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートの前記当接部は、前記弾性部材と前記センタプレートとが当接する位置に対して軸方向にずれた位置に配されることが好ましい。
【0022】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートの前記当接部は、前記カバー部材の外周端面よりも径方向内側に配されることが好ましい。
【0023】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートは、前記センタプレートに対する他方のサイドに配された部分において前記センタプレートよりも径方向内側に配された円筒部を有し、前記円筒部にて軸受を介して前記センタプレートを回転可能に支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、弾性部材を収容する空間内の気圧が外気圧よりも低くなったときにカバー部材がサイドプレートに対して密着性が増加するように構成されているので、カバー部材の外側付近に滞留した泥水があっても、弾性部材を収容する空間内に泥水が浸入しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置を含む動力伝達装置の構成を模式的に示した図2のX−X´間の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した図1の矢視Aから見た平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置におけるシール部分の構成を模式的に示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態1に係るトルク変動吸収装置では、回転可能に配されたセンタプレート(図1の23)と、前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレート(図1の17、18)と、前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材(図1の34、35)と、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接することにより前記弾性部材を収容する前記空間を外部からカバーするカバー部材(図1の25)と、前記弾性部材を収容する前記空間内の気圧が外気圧より低くなったときに前記カバー部材に作用する圧力による前記カバー部材の変形を抑制可能な抑制部と、を備える。
【0027】
本発明の実施形態2に係るトルク変動吸収装置では、回転可能に配されたセンタプレート(図1の23)と、前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されるサイドプレート(図1の17、18)と、前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材(図1の34、35)と、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接することにより前記弾性部材を収容する前記空間を外部からカバーするカバー部材(図1の25)と、を備え、前記カバー部材は、前記弾性部材を収容する前記空間内の気圧が外気圧よりも低くなったときに、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対する密着性が増加するように構成される。
【0028】
なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0029】
本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置を含む動力伝達装置の構成を模式的に示した図2のX−X´間の断面図である。図2は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した図1の矢視Aから見た平面図である。図3は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置におけるシール部分の構成を模式的に示した拡大断面図である。
【0030】
図1を参照すると、動力伝達装置1は、エンジン(図示せず、内燃機関)の回転動力を変速機(図示せず)へ伝達する装置である。動力伝達装置1は、エンジンのクランクシャフト2と、変速機のインプットシャフト6との間の動力伝達経路において、トルク変動吸収装置3と、トルクコンバータ4と、が直列に配されている。クランクシャフト2とインプットシャフト6は、回転軸7上で同軸に配されている。
【0031】
トルク変動吸収装置3は、エンジンと変速機との間に生じた変動トルクを吸収(抑制)する装置である(図1、図2参照)。トルク変動吸収装置3は、クランクシャフト2とトルクコンバータ4(フロントカバー40)との間の動力伝達経路に配されている。トルク変動吸収装置3は、弾性力(バネ力)によって変動トルクを吸収するダンパ部を有するものである。トルク変動吸収装置3は、主な構成部として、ドライブプレート10と、サイド部材11、12と、ボルト13と、ブロック部材14と、溶接部15と、ボルト16と、サイドプレート17と、サイドプレート18と、溶接部19と、キャップ20と、リングギヤ21と、溶接部22と、センタプレート23と、カバー部材24、25と、サイド部材26と、リベット27と、ベアリング28と、ボルト29と、ブロック部材30と、溶接部31と、シート部材32、33と、アウタコイルスプリング34と、インナコイルスプリング35、36と、を有する。
【0032】
ドライブプレート10は、クランクシャフト2からの回転動力をトルク変動吸収装置3に入力するための円盤状のプレートである(図1参照)。ドライブプレート10は、径方向内側の部分でサイド部材11とサイド部材12との間に挟まれた状態で、複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。これにより、ドライブプレート10は、クランクシャフト2と一体に回転する。ドライブプレート10は、径方向外側の部分で複数のボルト16によって、対応するブロック部材14に締結されている。
【0033】
サイド部材11は、ボルト13の頭部の座面を安定させるとともに、ドライブプレート10の耐久性を向上するための環状かつ板状の部材である(図1参照)。サイド部材11は、ボルト13の頭部とドライブプレート10との間に配され、ドライブプレート10及びサイド部材12とともに複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。
【0034】
サイド部材12は、振動などに対するドライブプレート10の耐久性を向上するための環状かつ板状の部材である(図1参照)。サイド部材12は、ドライブプレート10とクランクシャフト2との間に配され、ドライブプレート10及びサイド部材11とともに複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。
【0035】
ボルト13は、ドライブプレート10及びサイド部材11、12をクランクシャフト2に締結(接続)するための部材である(図1参照)。
【0036】
ブロック部材14は、ボルト16によってドライブプレート10を締結するためのブロック状の部材である(図1参照)。ブロック部材14は、サイドプレート17における周方向にて隣り合う収容部17a(コイルスプリング34、35、36を収容する部分)間の部位に形成された凹部17dに装着されている。言い換えると、ブロック部材14は、収容部17aと周方向に重なる位置に配設される。ブロック部材14は、径方向外側の部位と径方向内側の部位にて溶接部15によってサイドプレート17に溶接固定されている。ブロック部材14は、ボルト16と対応する位置に、ボルト16と螺合する雌ネジ部を有する。ブロック部材14は、ボルト16によってドライブプレート10が締結(接続)されることで、ドライブプレート10及びサイドプレート17と一体に回転する。
【0037】
溶接部15は、溶接によりブロック部材14をサイドプレート17に固定するための部分である(図1参照)。溶接部15は、ブロック部材14の径方向外側の部位と径方向内側の部位をサイドプレート17に固定する。
【0038】
ボルト16は、ドライブプレート10をブロック部材14に締結(接続)するための部材である(図1参照)。
【0039】
サイドプレート17は、環状の部材である(図1、図2参照)。サイドプレート17は、径方向内側の部分にてフロントカバー40側に突出した円筒部17cを有する。サイドプレート17は、円筒部17cの外周面にてベアリング28の内輪が装着(圧入、カシメ固定)され、ベアリング28を介してセンタプレート23を回転可能に支持する。サイドプレート17は、ボルト29を通すための穴部17bを有する。穴部17bには、穴部17b全体を塞ぐキャップ20が装着されている。サイドプレート17は、径方向における穴部17bと収容部17aとの間の部位の全周に渡ってセンタプレート23側に突出した絞り部を有し、当該絞り部にてカバー部材24と全周に渡ってスライド可能に圧接している。カバー部材24により、サイドプレート17とセンタプレート23との間の隙間にてコイルスプリング34、35、36を収容する部分がカバーされる。サイドプレート17は、径方向外側の部分にてシート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための袋状の収容部17aを有するとともに、コイルスプリング34、35、36、シート部材32、33の遠心力及びコイル圧縮時の径方向への分力を支える。収容部17aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。サイドプレート17は、周方向において隣り合う収容部17aの間の部位のドライブプレート10側の面に凹部17dを有する。凹部17dは、ブロック部材14を装着するための部分である。凹部17dは、削り、プレス成型で形成することができる。サイドプレート17には、凹部17dに装着されたブロック部材14が溶接部15により固定されている。サイドプレート17は、アウタコイルスプリングの径方向外側を覆うように形成されている。サイドプレート17は、外周面にて、環状のリングギヤ21の内側に挿入されており、溶接部22によってリングギヤ21が固定されている。サイドプレート17は、トルクコンバータ4側の端部が全周に渡ってサイドプレート18と密着しており、溶接部19によってサイドプレート18に固定されている。
【0040】
サイドプレート18は、環状の部材である(図1〜図3参照)。サイドプレート18は、環状のブロック部材30から所定間隔をおいて径方向外側に配されている。サイドプレート18は、径方向外側の部分が全周に渡ってサイドプレート17と密着しており、溶接部19によってサイドプレート17に固定されている。これにより、サイドプレート18はサイドプレート17と一体に回転するとともに、サイドプレート17、18の接合部分から内部の潤滑剤が漏れない。サイドプレート18は、中間部分にて、シート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための袋状の収容部18aを有する。収容部18aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。サイドプレート18は、収容部18aよりも径方向内側の内周端面18bが全周に渡ってセンタプレート23側に突出しており、内周端面18bのセンタプレート23から離れた側(フロントカバー40側)の角にある当接部18cにてカバー部材25と全周に渡ってスライド可能に圧接している。これにより、外部からコイルスプリング34、35、36を収容する部分がカバーされる。
【0041】
内周端面18bは、内周端面18bのセンタプレート23から離れた側(フロントカバー40側)の角に対して内周端面18bのセンタプレート23に近い側の角が径方向に同じ、又は、径方向外側となるように形成されており、回転軸7に対する角度θが0度以上となるように形成されている。これにより、コイルスプリング34、35、36を収容する空間に潤滑剤(グリスなど)が封入されている場合、当接部18cに付着した潤滑剤が外に漏れ出すのを防ぐことができる。当接部18cとカバー部材25との当接面では、当接部18cとカバー部材25との相対回転又は揺動により摩擦力によるヒステリシストルクが発生する。このヒステリシストルクにより、コイルスプリング34、35、36によるダンパ部での回転変動を減衰させることができる。当接部18cは、カバー部材25に対する面圧を小さくするため、曲面となっている。これにより、当接部18cとカバー部材25との相対回転又は揺動に伴う部材の摩耗を抑制することができる。当接部18cは、内周端面18bの軸方向のフロントカバー40側(図3の左側)の端面に配されるように設定されている。これにより、回転に伴う遠心力が作用したときに、カバー部材25と当接部18cとの接触圧を上昇させる力が働き、カバー部材25と当接部18cとの当接面を確実に塞ぐことができる。
【0042】
溶接部19は、サイドプレート17とサイドプレート18とを溶接固定した部分である(図1参照)。
【0043】
キャップ20は、サイドプレート17の穴部17b全体を塞ぐ部材であり、穴部17bに装着されている(図1参照)。
【0044】
リングギヤ21は、外周面にギヤを有するリング状のギヤである(図1、図2参照)。リングギヤ21は、スタータモータ(図示せず)の出力ギヤ(図示せず)と噛合う。リングギヤ21は、サイドプレート17の外周部に装着されており、溶接部22によってサイドプレート17に固定されている。
【0045】
溶接部22は、リングギヤ21をサイドプレート17に溶接固定した部分である(図1参照)。
【0046】
センタプレート23は、環状の部材である(図1〜図3参照)。センタプレート23は、サイドプレート17の円筒部17cの外周に配されている。センタプレート23は、内周端部にて、ベアリング28を介して回転可能にサイドプレート17の円筒部17cに支持されている。センタプレート23は、サイドプレート17、18の接続部分よりも所定間隔をおいて径方向内側に配されている。センタプレート23は、径方向内側の部分の両側に配されたカバー部材24、25、及びサイド部材26が複数のリベット27によって固定されている。これにより、センタプレート23は、カバー部材24、25と一体に回転する。センタプレート23は、カバー部材24、25及びサイド部材26とともにボルト29によってブロック部材30に締結されている。これにより、センタプレート23は、ブロック部材30を介して、トルクコンバータ4のフロントカバー40と一体に回転する。センタプレート23は、外周部分にて、シート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための切欠の窓部23aを有する。窓部23aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。
【0047】
カバー部材24は、環状かつ板状の部材である(図1、図2参照)。カバー部材24は、径方向内側の部分にて、センタプレート23とサイド部材26との間に挟み込まれており、リベット27によってカバー部材25及びサイド部材26とともにセンタプレート23にかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、カバー部材25及びサイド部材26とともにブロック部材30に締結されている。カバー部材24は、径方向外側の部分にて、センタプレート23から離間しており、サイドプレート17の絞り部にスライド可能に圧接する。これにより、コイルスプリング34、35、36を収容する部分がサイドプレート17とセンタプレート23との間の隙間からカバーされる。なお、図1ではカバー部材24がサイドプレート17の内側の面と圧接しているが、これはカバー部材24よりもボルト29の頭部がある側の空間がキャップ20、ベアリング28等によって閉鎖されているからである。カバー部材24よりもボルト29の頭部がある側の空間が閉鎖されていない場合には、カバー部材24とサイドプレート17との当接構造は、カバー部材25とサイドプレート18との当接構造と同様にすることが好ましい。
【0048】
カバー部材25は、環状かつ板状の部材である(図1〜図3参照)。カバー部材25は、径方向内側の部分にて、センタプレート23とブロック部材30との間に挟み込まれており、リベット27によってカバー部材24及びサイド部材26とともにセンタプレート23にかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、カバー部材24及びサイド部材26とともにブロック部材30に締結されている。カバー部材25は、径方向外側の部分にて、センタプレート23から離間しており、サイドプレート18の内周端面18bのセンタプレート23から離れた側の角にある当接部18cにスライド可能に圧接する。つまり、カバー部材25のセンタプレート23側の面がサイドプレート18の外側(フロントカバー40側)からスライド可能に圧接する。これにより、コイルスプリング34、35、36を収容する部分が外部からカバーされる。カバー部材25は、例えば、鋼板、樹脂などの弾性力を有する薄板を用いることができる。これにより、コストを安価に抑えられる。カバー部材25は、サイドプレート18に対して圧接する部分が自由状態(カバー部材25に応力がかかっていない状態)に対してセンタプレート23から離れる方向に撓んだ状態で、サイドプレート18に対して圧接するように組み付けられている。これにより、カバー部材25とサイドプレート18とが相対回転したときに当接面でヒステリシストルクを発生させることができ、また、カバー部材25及びサイドプレート18の寸法ばらつきにより隙間が空くことがない様に設定している。
【0049】
サイド部材26は、環状かつ板状の部材である(図1、図2参照)。サイド部材26は、リベット27によってカバー部材24の径方向内側の部分をセンタプレート23側に押さえ付けて固定するためのものである。サイド部材26は、リベット27によってカバー部材24、25とともにセンタプレート23にかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、及びカバー部材24、25とともにブロック部材30に締結されている。
【0050】
リベット27は、カバー部材24、25及びサイド部材26をセンタプレート23にかしめ固定するための部材である(図1、図2参照)。
【0051】
ベアリング28は、センタプレート23をサイドプレート17に対して回転可能にするための軸受けである(図1、図2参照)。ベアリング28は、内輪がサイドプレート17の円筒部17cの外周面に固定され、外輪がセンタプレート23の内周端部に固定されている。なお、ベアリング28は、グリスが封入されたシール型であり、鋼板に合成ゴムを固着したシール版が外輪に固定され、該シール板先端のリップ部が内輪に摺接することでグリスを密封している。
【0052】
ボルト29は、センタプレート23、カバー部材24、25、及びサイド部材26をブロック部材30に締結するための部材である(図1、図2参照)。
【0053】
ブロック部材30は、ボルト29によってセンタプレート23を締結するための環状でブロック状の部材である(図1参照)。ブロック部材30は、径方向外側の部位と径方向内側の部位にて溶接部31によってトルクコンバータ4のフロントカバー40に溶接固定されている。ブロック部材30は、ボルト29と対応する位置に、ボルト29と螺合する雌ネジ部を有する。ブロック部材30は、ボルト29によってセンタプレート23、カバー部材24、25、及びサイド部材26が締結(接続)されることで、センタプレート23及びフロントカバー40と一体に回転する。
【0054】
溶接部31は、溶接によりブロック部材30をトルクコンバータ4のフロントカバー40に固定するための部分である(図1参照)。溶接部31は、ブロック部材30の径方向外側の部位と径方向内側の部位をフロントカバー40に固定する。
【0055】
シート部材32は、サイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、当該収容部17a、18a及び窓部23aの周方向にある一方の端面とアウタコイルスプリング34の一方の端部との間に配された部材である(図2参照)。シート部材32には、アウタコイルスプリング34の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。シート部材32は、アウタコイルスプリング34の内側に配されたインナコイルスプリング35の一方の端部の内側に圧入された部分を有し、インナコイルスプリング35の一方の端部を圧入で固定する。
【0056】
シート部材33は、サイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、当該収容部17a、18a及び窓部23aの周方向にある他方の端面とアウタコイルスプリング34の他方の端部との間に配された部材である(図2参照)。シート部材33には、アウタコイルスプリング34の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。シート部材33は、アウタコイルスプリング34の内側に配されたインナコイルスプリング36の他方の端部の内側に圧入された部分を有し、インナコイルスプリング36の他方の端部を圧入で固定する。
【0057】
アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、両端に配設されたシート部材32、33と接している(図1、図2参照)。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに収縮する。アウタコイルスプリング34は、内側において、周方向のシート部材32側にインナコイルスプリング35が配され、周方向のシート部材33側にインナコイルスプリング36が配されている。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに、インナコイルスプリング35及びインナコイルスプリング36の両方が密着する前に、密着する。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに密着するとサイドプレート17、18とセンタプレート23との間の捩りを規制するストッパとなる。アウタコイルスプリング34は、インナコイルスプリング35、36よりもバネ定数が小さく設定されている。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときにおいて、インナコイルスプリング35が密着した後に、密着する。
【0058】
インナコイルスプリング35は、アウタコイルスプリング34の内側における周方向のシート部材32側に配されたコイルスプリングである(図1、図2参照)。インナコイルスプリング35の一方の端部は、内側にシート部材32の部分が圧入され、シート部材32に固定されている。インナコイルスプリング35の他方の端部は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じていないときにインナコイルスプリング36の一方の端部と離間しており、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じて所定の捩り角に達するとインナコイルスプリング36の一方の端部と接し、所定の捩り角よりさらに捩りが生じたときに収縮する。インナコイルスプリング35は、アウタコイルスプリング34よりもバネ定数が大きく、かつ、インナコイルスプリング36よりもバネ定数が小さく設定されている。インナコイルスプリング35は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときにおいて、アウタコイルスプリング34が密着する前に、密着する。
【0059】
インナコイルスプリング36は、アウタコイルスプリング34の内側における周方向のシート部材33側に配されたコイルスプリングである(図2参照)。インナコイルスプリング36の他方の端部は、内側にシート部材33の部分が圧入され、シート部材33に固定されている。インナコイルスプリング36の一方の端部は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じていないときにインナコイルスプリング35の他方の端部と離間しており、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じて所定の捩り角に達するとインナコイルスプリング35の他方の端部と接し、所定の捩り角よりさらに捩りが生じたときに収縮する。インナコイルスプリング36は、アウタコイルスプリング34及びインナコイルスプリング35よりもバネ定数が大きく設定されている。インナコイルスプリング36は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに、アウタコイルスプリング34が密着する前には、密着しない。
【0060】
トルクコンバータ4は、流体作動室における流体の力学的作用を利用して、入力側のポンプインペラ42と出力側のタービンランナ46との回転差によりトルクの増幅作用を発生させる流体伝動装置である(図1参照)。トルクコンバータ4は、トルク変動吸収装置3とインプットシャフト6との間の動力伝達経路上に配設されている。トルクコンバータ4は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との回転数差が小さいときに、それらを直結してクランクシャフト2とインプットシャフト6との回転数差をなくす単板式のロックアップクラッチ5を有する。トルクコンバータ4は、主な構成部として、フロントカバー40と、ポンプシェル41と、ポンプインペラ42と、シャフト43と、ポンプコア44と、タービンシェル45と、タービンランナ46と、タービンコア47と、タービンハブ48と、ステータ49と、ワンウェイクラッチ50と、シャフト51と、プレート部材52と、ロックアップピストン53と、摩擦材54と、を有する。
【0061】
フロントカバー40は、トルクコンバータ4のエンジン側(図1の右側)に配置された円盤状の部材である(図1参照)。フロントカバー40は、回転軸7から径方向外側へ延び、外周部分が変速機側(図1の左側)に延びた形状に形成されている。フロントカバー40の外周端部は、溶接によってポンプシェル41の外周端部に固定されている。フロントカバー40は、ポンプシェル41と一体に回転する。フロントカバー40とポンプシェル41とにより囲まれた空間内には、トルクコンバータ4のポンプインペラ42、タービンランナ46等の構成部が配置されており、作動流体としてのオートマチックトランスミッションフルード(ATF)が封入されている。フロントカバー40は、エンジンからの回転動力がクランクシャフト2及びトルク変動吸収装置3を介して入力される。フロントカバー40は、エンジン側(図1の右側)の面にトルク変動吸収装置3におけるブロック部材30が溶接部31により溶接されている。フロントカバー40は、変速機側(図1の左側)の面にて、ロックアップクラッチ5の摩擦材54と摩擦係合可能になっている。
【0062】
ポンプシェル41は、ATFを循環させる空間を構成する環状の部材である(図1参照)。ポンプシェル41は、外周端部がフロントカバー40の外周端部に溶接されており、内周端部がシャフト43に溶接されている。ポンプシェル41は、フロントカバー40及びシャフト43と一体に回転する。ポンプシェル41は、エンジン側(図1の右側)の面(内面)にて複数のポンプインペラ42が装着されており、ポンプインペラ42と一体に回転する。
【0063】
ポンプインペラ42は、ポンプ側の羽根部材である(図1参照)。ポンプインペラ42は、タービンランナ46と向かい合うように配置されている。ポンプインペラ42は、外側端部がポンプシェル41に装着されており、内側端部がポンプコア44に装着されている。ポンプインペラ42は、ポンプシェル41及びポンプコア44と一体に回転する。ポンプインペラ42は、ポンプシェル41が一方の方向に回転したときに、ステータ49から流れてきたATFをタービンランナ46側へ向かって押し出すような形状に形成されている。
【0064】
シャフト43は、トルクコンバータ4及びトルク変動吸収装置3の外周ないし変速機側を覆うケース(図示せず)に回転可能に支持された筒状の軸部材である(図1参照)。シャフト43は、ポンプシェル41の内周端部と溶接されており、ポンプシェル41と一体に回転する。シャフト43は、シャフト51の外周に所定の間隔をおいて配されている。
【0065】
ポンプコア44は、複数のポンプインペラ42の内側端部が装着される環状の部材である(図1参照)。
【0066】
タービンシェル45は、ATFを循環させる空間を構成する環状の部材である(図1参照)。タービンシェル45は、内周部分が複数のリベットによってタービンハブ48に固定されている。タービンシェル45は、タービンハブ48と一体に回転する。タービンシェル45は、変速機側(図1の左側)の面(内面)にて複数のタービンランナ46が装着されており、タービンランナ46と一体に回転する。タービンシェル45は、エンジン側(図1の右側)の面(外面)にて、プレート部材52が溶接により固定されている。
【0067】
タービンランナ46は、タービン側の羽根部材である(図1参照)。タービンランナ46は、ポンプインペラ42と向かい合うように配置されている。タービンランナ46は、外側端部がタービンシェル45に装着されており、内側端部がタービンコア47に装着されている。タービンランナ46は、タービンシェル45及びタービンコア47と一体に回転する。タービンランナ46は、回転するポンプインペラ42から押し出されたATFを受けて回転し、かつ、ステータ49に向かってATFを排出するような形状に形成されている。タービンランナ46は、ポンプインペラ42に対して独立に回転することが可能である。
【0068】
タービンコア47は、複数のタービンランナ46の内側端部が装着される環状の部材である(図1参照)。
【0069】
タービンハブ48は、筒状のハブ部から径方向外側に延在したフランジ部を有する部材である(図1参照)。タービンハブ48は、フランジ部の外周部分にて複数のリベットによってタービンシェル45が固定されている。タービンハブ48は、ハブ部の内周側にて、変速機のインプットシャフト6に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。タービンハブ48は、タービンシェル45及びインプットシャフト6と一体に回転する。タービンハブ48のハブ部の外周面には、ロックアップピストン53の内周部分の円筒部が軸方向にスライド可能に配されている。タービンハブ48とロックアップピストン53とのスライド面はシールされている。
【0070】
ステータ49は、タービンランナ46からポンプインペラ42へ戻るATFの流れを整流するための複数の羽根を有する部材である(図1参照)。ステータ49は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との間における径方向内側寄りの位置に配されている。ステータ49は、タービンランナ46からポンプインペラ42へ流れるATFの流れ方向を変えるように作用する。ステータ49は、ワンウェイクラッチ50及びシャフト51を介して変速機(図示せず)のケース(図示せず)に取付けられており、1方向にのみ回転することが可能である。
【0071】
ワンウェイクラッチ50は、1方向にのみ回転することが可能なクラッチである(図1参照)。ワンウェイクラッチ50としては、ローラ、スプラグまたはラチェット機構を用いる構造を用いることができる。ワンウェイクラッチ50は、軸方向においてシャフト43とタービンハブ48との間に配され、径方向においてステータ49とシャフト51との間に配されている。ワンウェイクラッチ50は、外輪がステータ49に固定され、内輪がシャフト51に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。
【0072】
シャフト51は、変速機(図示せず)のケース(図示せず)に対して回転不能に取付けられた筒状の軸部材である(図1参照)。シャフト51は、ワンウェイクラッチ50の内輪に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。シャフト51は、筒状のシャフト43の内側に所定の間隔をおいて配されている。シャフト51は、変速機のインプットシャフト6の外周に配されており、ブッシュを介してインプットシャフト6を回転可能に支持する。
【0073】
プレート部材52は、溶接によりタービンシェル45の外面に固定された環状の部材である(図1参照)。プレート部材52は、ロックアップピストン53に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合する。プレート部材52は、タービンシェル45及びロックアップピストン53と一体に回転する。
【0074】
ロックアップピストン53は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との回転数差が小さいときに、それらを直結するための環状のピストンである(図1参照)。ロックアップピストン53は、フロントカバー40及びポンプシェル41で囲まれた空間のうち、ロックアップピストン53とフロントカバー40との間に配された油室56と、ロックアップピストン53とポンプシェル41との間に配された油室57と、の間に配されている。ロックアップピストン53は、外周部分のフロントカバー40側の面に環状の摩擦材54が固定されており、摩擦材54と一体に回転する。ロックアップピストン53は、摩擦材54がフロントカバー40と摩擦係合することで、摩擦材54、フロントカバー40、及びトルク変動吸収装置3を介してクランクシャフト2と一体に回転する。ロックアップピストン53は、外周端部にてプレート部材52に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。ロックアップピストン53は、プレート部材52、タービンシェル45、及びタービンハブ48を介して変速機のインプットシャフト6と一体に回転する。ロックアップピストン53は、タービンハブ48の筒状のハブ部の外周面に対して軸方向にスライド可能に配されており、タービンハブ48とのスライド面にてシールされている。ロックアップピストン53は、油室56内の油圧が油室57内の油圧よりも低いときにフロントカバー40側に押付けられて、摩擦材54とフロントカバー40とが摩擦係合する。ロックアップピストン53は、油室56内の油圧が油室57内の油圧よりも高いときにフロントカバー40から離れる方向に移動して、摩擦材54とフロントカバー40との摩擦係合を解除する。油室56、57内の油圧は、油圧回路(図示せず)によって制御され、油室56内の油圧を油室57内の油圧よりも低くすることでロックアップ状態(クランクシャフト2とインプットシャフト6との回転数差をなくした状態)とし、油室56内の油圧を油室57内の油圧よりも高くすることでロックアップ状態を解除する。
【0075】
摩擦材54は、ロックアップピストン53(フロントカバー40でも可)に固定されるとともに、フロントカバー40に対して摩擦係合可能な環状の部材である(図1参照)
【0076】
実施例1によれば、カバー部材25がサイドプレート18の外側から内周端面18bのセンタプレート23から離れた側の角にある当接部18cと圧接するので、カバー部材25の外側付近に滞留した泥水があっても、泥水が遠心力により圧接部分よりも径方向外側へ飛ばされ、コイルスプリング34、35、36が収容される空間に泥水が浸入しないようにすることができる。また、泥水によりコイルスプリング34、35、36が収容される空間が急冷されて外気圧に対して負圧になった状態でも、カバー部材25の弾性力だけでなくカバー部材25に働く圧力差が加わってカバー部材25とサイドプレート18の当接部18cとの密着性が増し、確実に閉じ、コイルスプリング34、35、36が収容される空間に泥水が浸入しないようにすることができる。さらに、回転に伴う遠心力が作用したときに、カバー部材25の弾性力だけでなくカバー部材25に作用する遠心力が加わってカバー部材25と当接部18cとの密着性が増し、確実に閉じ、コイルスプリング34、35、36が収容される空間に泥水が浸入しないようにすることもできる。
【0077】
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
1 動力伝達装置
2 クランクシャフト
3 トルク変動吸収装置
4 トルクコンバータ
5 ロックアップクラッチ
6 インプットシャフト
7 回転軸
10 ドライブプレート
11、12 サイド部材
13 ボルト
14 ブロック部材
15 溶接部
16 ボルト
17 サイドプレート
17a 収容部
17b 穴部
17c 円筒部
17d 凹部
18 サイドプレート
18a 収容部
18b 内周端面
18c 当接部
19 溶接部
20 キャップ
21 リングギヤ
22 溶接部
23 センタプレート
23a 窓部
23b 支持面
24、25 カバー部材
26 サイド部材
27 リベット
28 ベアリング
29 ボルト
30 ブロック部材
31 溶接部
32、33 シート部材
34 アウタコイルスプリング
35、36 インナコイルスプリング
40 フロントカバー
41 ポンプシェル
42 ポンプインペラ
43 シャフト
44 ポンプコア
45 タービンシェル
46 タービンランナ
47 タービンコア
48 タービンハブ
49 ステータ
50 ワンウェイクラッチ
51 シャフト
52 プレート部材
53 ロックアップピストン
54 摩擦材
56、57 油室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配されたセンタプレートと、
前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレートと、
前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材と、
前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接することにより前記弾性部材を収容する前記空間を外部からカバーするカバー部材と、
前記弾性部材を収容する前記空間内の気圧が外気圧より低くなったときに前記カバー部材に作用する圧力による前記カバー部材の変形を抑制可能な抑制部と、
を備えることを特徴とするトルク変動吸収装置。
【請求項2】
前記抑制部は、前記カバー部材に作用する遠心力による前記カバー部材の変形を抑制可能であることを特徴とする請求項1記載のトルク変動吸収装置。
【請求項3】
前記抑制部は、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のトルク変動吸収装置。
【請求項4】
回転可能に配されたセンタプレートと、
前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されるサイドプレートと、
前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材と、
前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接することにより前記弾性部材を収容する前記空間を外部からカバーするカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記弾性部材を収容する前記空間内の気圧が外気圧よりも低くなったときに、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対する密着性が増加するように構成されることを特徴とするトルク変動吸収装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、遠心力が作用したときに、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対する密着性が増加するように構成されることを特徴とする請求項4記載のトルク変動吸収装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、環状の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載のトルク変動吸収装置。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記サイドプレートに対して圧接する部分が自由状態に対して前記センタプレートから離れる方向に撓んだ状態で、前記サイドプレートに対して圧接することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記センタプレートと当接する側の面が前記サイドプレートに圧接することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項9】
前記サイドプレートは、前記センタプレートに対する一方のサイドにて、前記カバー部材が前記センタプレートに固定された部分よりも径方向外側に内周端面を有し、かつ、前記内周端面の前記センタプレートから離れた側の角に前記カバー部材と圧接する当接部を有することを特徴とする請求項4乃至8のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項10】
前記サイドプレートの前記内周端面の前記センタプレートから離れた側の角は、前記内周端面の前記センタプレートに近い側の角と径方向に同じ位置、又は、前記内周端面の前記センタプレートに近い側の角よりも径方向内側に配されるように形成されていることを特徴とする請求項9記載のトルク変動吸収装置。
【請求項11】
前記サイドプレートの前記当接部は、曲面に形成されていることを特徴とする請求項9又は10記載のトルク変動吸収装置
【請求項12】
前記サイドプレートの前記当接部は、前記弾性部材と前記センタプレートとが当接する位置に対して軸方向にずれた位置に配されることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項13】
前記サイドプレートの前記当接部は、前記カバー部材の外周端面よりも径方向内側に配されることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項14】
前記サイドプレートは、前記センタプレートに対する他方のサイドに配された部分において前記センタプレートよりも径方向内側に配された円筒部を有し、前記円筒部にて軸受を介して前記センタプレートを回転可能に支持することを特徴とする請求項4乃至13のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−72540(P2013−72540A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214265(P2011−214265)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000149033)株式会社エクセディ (270)