説明

トルク変動吸収装置

【課題】ダンパ特性を劣化させることなくシール性を向上させることができるトルク変動吸収装置を提供すること。
【解決手段】センタプレート23と、センタプレート23に対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレート17、18と、サイドプレート17、18に囲まれた空間に収容されるとともにサイドプレート17、18とセンタプレート23との間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材34、35と、センタプレート23とサイドプレート18との間の隙間をカバーすることで空間と外部空間とを隔てるカバー部材25と、カバー部材25よりも径方向内側に配されるとともに弾性部材34、35を収容する空間と外部空間との間を通気させる通気部17eと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク変動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルク変動吸収装置は、エンジンと変速機との間の動力伝達経路上に配設され、エンジンと変速機との間に生じた変動トルクを吸収(抑制)する。トルク変動吸収装置は、弾性力(バネ力)によって変動トルクを吸収するダンパ部を有するものがある。ダンパ部は、2つの回転部材の周方向の間に弾性部材(コイルスプリング)が配された構成となっており、2つの回転部材が相対回転したときにコイルスプリングが収縮することによって変動トルクを吸収する。
【0003】
このようなダンパ部を有する装置では、一方の回転部材が他方の回転部材の外周ないし両サイドに配され、一方の回転部材と他方の回転部材との間の隙間を、シール部材を用いて塞ぐことで、コイルスプリングが収容された空間をシールするものがある。
【0004】
例えば、特許文献1では、ダンパプレート(特許文献1のFig.1の21)とカバー(特許文献1のFig.1の11)との間の隙間を、ダンパプレートに固定されたシーリングジョイント(特許文献1のFig.4の7)を用いて塞ぐことで、弾性部材(許文献1のFig.1の3)が収容された空間をシールしている。また、特許文献1では、質量体(特許文献1のFig.1の2)とフランジ(特許文献1のFig.1の10)との間の隙間を、ベアリング(特許文献1のFig.1の6)を用いて塞ぐことで、弾性部材(特許文献1のFig.1の3)が収容された空間をシールしている。
【0005】
また、特許文献2では、サイドウォール(特許文献2のFIG.1の6、13)とインナーセクション(特許文献2のFIG.1の29)との間の隙間を、サイドウォールに固定された環状のシール(特許文献2のFIG.1の23、24)を用いて塞ぐことで、チャンバ(特許文献2のFIG.1の14)をシールしている。
【0006】
また、特許文献3では、ダンパ部材(特許文献3の図1の24)を収容する空間を、フライホール(特許文献3の図1の3)及びカバー部材(特許文献3の図1の5)で覆うことでシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0960292号明細書
【特許文献2】米国特許第6620048号明細書
【特許文献3】特開2007−218346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0009】
しかしながら、従来のトルク変動吸収装置のように泥水の浸入を防ぎたい空間(コイルスプリングが収容された空間)を密閉した密閉空間とすると、運転時と休止時の内部気体(多くは空気)の温度変化に伴い大気圧との圧力差が生じ、圧力差が比較的剛性の低いシール部にも作用する。
【0010】
シール部が圧力差に耐えられない場合には、以下のような問題がある。内部が負圧の場合、シール部近傍にある泥水が内部に浸入する可能性がある。内部が正圧の場合、シール部近傍にある例えば封入されたグリスが外部空間へ漏れ出す可能性がある。
【0011】
また、新品時はシール部が圧力差に耐えうる仕様に設定するが、通常の締め代に加えて温度の上昇/下降に伴い押付力による変形がさらに加わるため、弾性材料(ゴム或いは樹脂材料)からなるシール部はクリープや応力緩和により初期形状を維持できないという問題がある。つまり、シール部が永久変形するため、シール機能を十分に確保できなくなる可能性がある。
【0012】
以上のような問題を解決するため、シール部の締め代を調整することが考えられる。締め代を小さくすると、シール性能のロバスト性(シール性能の変化を抑える能力)が劣る。一方、締め代を大きくすると、ダンパ特性のヒステリシスが大きくなり性能が劣る。つまり、従来のトルク変動吸収装置のシール構造では、シール部の締め代を調整したとしても、これらのトレードオフの関係の中でシール性能を両立させることが難しかった。
【0013】
本発明の主な課題は、ダンパ特性を劣化させることなくシール性を向上させることができるトルク変動吸収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一視点においては、トルク変動吸収装置において、回転可能に配されたセンタプレートと、前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレートと、前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材と、前記センタプレートと前記サイドプレートとの間の隙間をカバーすることで前記空間と外部空間とを隔てるカバー部材と、前記カバー部材よりも径方向内側に配されるとともに前記空間と前記外部空間との間を通気させる通気部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記カバー部材は、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接し、前記通気部は、前記カバー部材と前記サイドプレートとの圧接部分よりも径方向内側に配されることが好ましい。
【0016】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記サイドプレートは、前記センタプレートよりも径方向内側に配された円筒部を有し、前記センタプレートは、軸受を介して回転可能に前記円筒部の外周面に支持され、前記通気部は、前記円筒部の外周面、又は、前記軸受の内周面に形成された溝部又は凹部であることが好ましい。
【0017】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記軸受は、前記空間と前記外部空間とを隔てることが好ましい。
【0018】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記通気部の開口部は、径方向外側に向いていることが好ましい。
【0019】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記通気部の中間部は、軸方向に平行に形成された部分を有することが好ましい。
【0020】
本発明の前記トルク変動吸収装置において、前記通気部は、前記サイドプレートに形成された穴部と、前記穴部を塞ぐ防水透湿性素材とよりなることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トルク変動吸収装置において弾性部材を収容する空間と外部との間に通気部を設けることで、温度変化に伴う内部気体の熱膨張(又は伸縮)を逃し、カバー部材の内外の圧力差を発生させないようにすることができる。これにより、泥水等の吸い込みやグリス等の漏れを防ぐことが可能となる。また、内径側に通気部を設けることで、通気部から泥水等を吸い込むことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置を含む動力伝達装置の構成を模式的に示した図2のX−X´間の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した図1の矢視Aから見た平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係るトルク変動吸収装置では、回転可能に配されたセンタプレート(図3の23)と、前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレート(図3の17、18)と、前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材(図3の34、35)と、前記センタプレートと前記サイドプレートとの間の隙間をカバーすることで前記空間と外部空間とを隔てるカバー部材(図3の25)と、前記カバー部材よりも径方向内側に配されるとともに前記空間と前記外部空間との間を通気させる通気部(図3の17e、図4の17b、60)と、を備える。
【0024】
なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置を含む動力伝達装置の構成を模式的に示した図2のX−X´間の断面図である。図2は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した図1の矢視Aから見た平面図である。図3は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した部分拡大断面図である。
【0026】
図1を参照すると、動力伝達装置1は、エンジン(図示せず、内燃機関)の回転動力を変速機(図示せず)へ伝達する装置である。動力伝達装置1は、エンジンのクランクシャフト2と、変速機のインプットシャフト6との間の動力伝達経路において、トルク変動吸収装置3と、トルクコンバータ4と、が直列に配されている。クランクシャフト2とインプットシャフト6は、回転軸7上で同軸に配されている。
【0027】
トルク変動吸収装置3は、エンジンと変速機との間に生じた変動トルクを吸収(抑制)する装置である(図1〜図3参照)。トルク変動吸収装置3は、クランクシャフト2とトルクコンバータ4(フロントカバー40)との間の動力伝達経路に配されている。トルク変動吸収装置3は、弾性力(バネ力)によって変動トルクを吸収するダンパ部を有するものである。トルク変動吸収装置3は、ダンパ部において、サイドプレート(17、18の組立体)とセンタプレート23との間に生じる変動トルクをコイルスプリング34、35、36によって吸収する。トルク変動吸収装置3は、ダンパ部において、コイルスプリング34、35、36が収容された空間をシールするため、サイドプレート(17、18の組立体)がセンタプレート23の外周ないし両サイドに配され、サイドプレート17とセンタプレート23との間の隙間がカバー部材25によって塞がれ、サイドプレート18とセンタプレート23との間の隙間がベアリング28によって塞がれ、サイドプレート18に形成された穴部17bがキャップ20によって塞がれている。ただし、トルク変動吸収装置3は、ダンパ性能を確保するため、コイルスプリング34、35、36が収容された空間と外部との間を通気させる通気部(図3では17e)を有する。通気部17eの開口部は、コイルスプリング34、35、36が配置された位置(より好ましくはカバー部材25とサイドプレート18との当接部)よりも径方向内側に配されている。なお、通気部17eは、可能な限り回転軸7へ近づけることが望ましい。通気部17eは、コイルスプリング34、35、36が収容された空間に外部からの泥水等が入りにくく、かつ、コイルスプリング34、35、36が収容された空間から外部にグリス等が出にくい構成としている。
【0028】
トルク変動吸収装置3は、主な構成部として、ドライブプレート10と、サイド部材11、12と、ボルト13と、ブロック部材14と、溶接部15と、ボルト16と、サイドプレート17と、サイドプレート18と、溶接部19と、キャップ20と、リングギヤ21と、溶接部22と、センタプレート23と、カバー部材25と、サイド部材26と、リベット27と、ベアリング28と、ボルト29と、ブロック部材30と、溶接部31と、シート部材32、33と、アウタコイルスプリング34と、インナコイルスプリング35、36と、を有する。
【0029】
ドライブプレート10は、クランクシャフト2からの回転動力をトルク変動吸収装置3に入力するための円盤状のプレートである(図1、図3参照)。ドライブプレート10は、径方向内側の部分でサイド部材11とサイド部材12との間に挟まれた状態で、複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。これにより、ドライブプレート10は、クランクシャフト2と一体に回転する。ドライブプレート10は、径方向外側の部分で複数のボルト16によって、対応するブロック部材14に締結されている。
【0030】
サイド部材11は、ボルト13の頭部の座面を安定させるとともに、ドライブプレート10の耐久性を向上するための環状かつ板状の部材である(図1、図3参照)。サイド部材11は、ボルト13の頭部とドライブプレート10との間に配され、ドライブプレート10及びサイド部材12とともに複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。
【0031】
サイド部材12は、振動などに対するドライブプレート10の耐久性を向上するための環状かつ板状の部材である(図1、図3参照)。サイド部材12は、ドライブプレート10とクランクシャフト2との間に配され、ドライブプレート10及びサイド部材11とともに複数のボルト13によってクランクシャフト2に締結(接続)されている。
【0032】
ボルト13は、ドライブプレート10及びサイド部材11、12をクランクシャフト2に締結(接続)するための部材である(図1、図3参照)。
【0033】
ブロック部材14は、ボルト16によってドライブプレート10を締結するためのブロック状の部材である(図1参照)。ブロック部材14は、サイドプレート17における周方向にて隣り合う収容部17a(コイルスプリング34、35、36を収容する部分)間の部位に形成された凹部17dに装着されている。言い換えると、ブロック部材14は、収容部17aと周方向に重なる位置に配設される。ブロック部材14は、径方向外側の部位と径方向内側の部位にて溶接部15によってサイドプレート17に溶接固定されている。ブロック部材14は、ボルト16と対応する位置に、ボルト16と螺合する雌ネジ部を有する。ブロック部材14は、ボルト16によってドライブプレート10が締結(接続)されることで、ドライブプレート10及びサイドプレート17と一体に回転する。
【0034】
溶接部15は、溶接によりブロック部材14をサイドプレート17に固定するための部分である(図1参照)。溶接部15は、ブロック部材14の径方向外側の部位と径方向内側の部位をサイドプレート17に固定する。
【0035】
ボルト16は、ドライブプレート10をブロック部材14に締結(接続)するための部材である(図1参照)。
【0036】
サイドプレート17は、環状の部材である(図1〜図3参照)。サイドプレート17は、径方向内側の部分にてフロントカバー40側に突出した円筒部17cを有する。サイドプレート17は、円筒部17cの外周面にてベアリング28の内輪が装着(圧入、カシメ固定)され、ベアリング28を介してセンタプレート23を回転可能に支持する。サイドプレート17は、ボルト29を通すための穴部17bを有する。穴部17bには、穴部17b全体を塞ぐキャップ20が装着されている。サイドプレート17は、径方向外側の部分にてシート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための袋状の収容部17aを有するとともに、コイルスプリング34、35、36、シート部材32、33の遠心力及びコイル圧縮時の径方向への分力を支える。収容部17aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。サイドプレート17は、周方向において隣り合う収容部17aの間の部位のドライブプレート10側の面に凹部17dを有する。凹部17dは、ブロック部材14を装着するための部分である。凹部17dは、削り、プレス成型で形成することができる。サイドプレート17には、凹部17dに装着されたブロック部材14が溶接部15により固定されている。サイドプレート17は、アウタコイルスプリングの径方向外側を覆うように形成されている。サイドプレート17は、外周面にて、環状のリングギヤ21の内側に挿入されており、溶接部22によってリングギヤ21が固定されている。サイドプレート17は、トルクコンバータ4側の端部が全周に渡ってサイドプレート18と密着しており、溶接部19によってサイドプレート18に固定されている。
【0037】
サイドプレート17は、コイルスプリング34、35、36が収容された空間と外部との間を通気させる通気部17eを有する。通気部17eは、コイルスプリング34、35、36が収容された空間の待機開放孔(ブリーザ孔)となる。通気部17eは、円筒部17cの外周面に形成された溝部(凹部でも可)であり、ベアリング28の内輪の外形に沿って形成されている。通気部17eの開口部は、コイルスプリング34、35、36が配置された位置(より好ましくはカバー部材25とサイドプレート18との当接部)よりも径方向内側に配されている。通気部17eの外部側の開口部は、トルク変動吸収装置3が回転しているときに、泥水等の浸入を抑える、或いは、通気部17e内に浸入した場合でも泥水等を外部に排出しやすくするため、径方向外側に向いていることが好ましい。通気部17eの内部側(コイルスプリング34、35、36が収容された空間側)の開口部は、トルク変動吸収装置3が回転しているときに、グリス等の浸入を抑える、或いは、通気部17e内に浸入した場合でもグリス等をコイルスプリング34、35、36が収容された空間内に戻しやすくするため、径方向外側に向いていることが好ましい。通気部17eは、外部側の開口部と内部側の開口部との間の中間部に軸方向に平行な部分を有することが好ましい。こうすることで、外部から通気部17eに泥水等が浸入した場合にも泥水等がコイルスプリング34、35、36が収容された空間に浸入するのを抑えることができ、内部から通気部17eにグリス等が浸入した場合にもグリス等が外部に排出されるのを抑えることができる。なお、通気部17eは、図3ではサイドプレート17に形成しているが、その代わりに、ベアリング28の内輪(内周面ないし軸方向にある両端面)に形成してもよい。
【0038】
サイドプレート18は、環状の部材である(図1〜図3参照)。サイドプレート18は、環状のブロック部材30から所定間隔をおいて径方向外側に配されている。サイドプレート18は、径方向外側の部分が全周に渡ってサイドプレート17と密着しており、溶接部19によってサイドプレート17に固定されている。これにより、サイドプレート18はサイドプレート17と一体に回転するとともに、サイドプレート17、18の接合部分から内部の潤滑剤が漏れない。サイドプレート18は、中間部分にて、シート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための袋状の収容部18aを有する。収容部18aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接しているか、若干のガタを有して近接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。サイドプレート18は、収容部18aよりも径方向内側の内周端面18bが全周に渡ってセンタプレート23側に突出しており、内周端面18bのセンタプレート23から離れた側(フロントカバー40側)の角にある当接部18cにてカバー部材25と全周に渡ってスライド可能に圧接している。これにより、外部からコイルスプリング34、35、36を収容する部分がカバーされる。
【0039】
溶接部19は、サイドプレート17とサイドプレート18とを溶接固定した部分である(図1、図3参照)。
【0040】
キャップ20は、サイドプレート17の穴部17b全体を塞ぐ部材であり、穴部17bに装着されている(図1〜図3参照)。
【0041】
リングギヤ21は、外周面にギヤを有するリング状のギヤである(図1〜図3参照)。リングギヤ21は、スタータモータ(図示せず)の出力ギヤ(図示せず)と噛合う。リングギヤ21は、サイドプレート17の外周部に装着されており、溶接部22によってサイドプレート17に固定されている。
【0042】
溶接部22は、リングギヤ21をサイドプレート17に溶接固定した部分である(図1、図3参照)。
【0043】
センタプレート23は、環状の部材である(図1〜図3参照)。センタプレート23は、サイドプレート17の円筒部17cの外周に配されている。センタプレート23は、内周端部にて、ベアリング28を介して回転可能にサイドプレート17の円筒部17cに支持されている。センタプレート23は、サイドプレート17、18の接続部分よりも所定間隔をおいて径方向内側に配されている。センタプレート23は、径方向内側の部分の両側に配されたカバー部材25及びサイド部材26が複数のリベット27によって固定されている。これにより、センタプレート23は、カバー部材25と一体に回転する。センタプレート23は、カバー部材25及びサイド部材26とともにボルト29によってブロック部材30に締結されている。これにより、センタプレート23は、ブロック部材30を介して、トルクコンバータ4のフロントカバー40と一体に回転する。センタプレート23は、外周部分にて、シート部材32、33及びコイルスプリング34、35、36を収容するための切欠の窓部23aを有する。窓部23aは、周方向にある端面にて、シート部材32、33と接離可能であり、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じていないときにシート部材32、33の両方と接し、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩れが生じているときにシート部材32、33の片方と接する。
【0044】
カバー部材25は、環状かつ板状の部材である(図1〜図3参照)。カバー部材25は、径方向内側の部分にて、センタプレート23とブロック部材30との間に挟み込まれており、リベット27によってサイド部材26とともにセンタプレート23にかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23及びサイド部材26とともにブロック部材30に締結されている。カバー部材25は、径方向外側の部分にて、センタプレート23から離間しており、サイドプレート18の内周端面18bのセンタプレート23から離れた側の角にある当接部18cにスライド可能に圧接する。つまり、カバー部材25のセンタプレート23側の面がサイドプレート18の外側(フロントカバー40側)からスライド可能に圧接する。これにより、コイルスプリング34、35、36を収容する部分が外部からカバーされる。カバー部材25には、例えば、鋼板、樹脂などの弾性力を有する薄板を用いることができる。これにより、コストを安価に抑えられる。
【0045】
サイド部材26は、環状かつ板状の部材である(図1〜図3参照)。サイド部材26は、リベット27によってカバー部材25とともにセンタプレート23にかしめ固定されており、ボルト29によってセンタプレート23、及びカバー部材25とともにブロック部材30に締結されている。
【0046】
リベット27は、カバー部材25及びサイド部材26をセンタプレート23にかしめ固定するための部材である(図1、図2参照)。
【0047】
ベアリング28は、センタプレート23をサイドプレート17に対して回転可能にするための軸受けである(図1〜図3参照)。ベアリング28は、内輪がサイドプレート17の円筒部17cの外周面に固定され、外輪がセンタプレート23の内周端部に固定されている。なお、ベアリング28は、グリスが封入されたシール型であり、鋼板に合成ゴムを固着したシール版が外輪に固定され、該シール板先端のリップ部が内輪に摺接することでグリスを密封している。
【0048】
ボルト29は、センタプレート23、カバー部材25、及びサイド部材26をブロック部材30に締結するための部材である(図1〜図3参照)。
【0049】
ブロック部材30は、ボルト29によってセンタプレート23を締結するための環状でブロック状の部材である(図1、図3参照)。ブロック部材30は、径方向外側の部位と径方向内側の部位にて溶接部31によってトルクコンバータ4のフロントカバー40に溶接固定されている。ブロック部材30は、ボルト29と対応する位置に、ボルト29と螺合する雌ネジ部を有する。ブロック部材30は、ボルト29によってセンタプレート23、カバー部材25、及びサイド部材26が締結(接続)されることで、センタプレート23及びフロントカバー40と一体に回転する。
【0050】
溶接部31は、溶接によりブロック部材30をトルクコンバータ4のフロントカバー40に固定するための部分である(図1、図3参照)。溶接部31は、ブロック部材30の径方向外側の部位と径方向内側の部位をフロントカバー40に固定する。
【0051】
シート部材32は、サイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、当該収容部17a、18a及び窓部23aの周方向にある一方の端面とアウタコイルスプリング34の一方の端部との間に配された部材である(図2参照)。シート部材32には、アウタコイルスプリング34の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。シート部材32は、アウタコイルスプリング34の内側に配されたインナコイルスプリング35の一方の端部の内側に圧入された部分を有し、インナコイルスプリング35の一方の端部を圧入で固定する。
【0052】
シート部材33は、サイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、当該収容部17a、18a及び窓部23aの周方向にある他方の端面とアウタコイルスプリング34の他方の端部との間に配された部材である(図2参照)。シート部材33には、アウタコイルスプリング34の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。シート部材33は、アウタコイルスプリング34の内側に配されたインナコイルスプリング36の他方の端部の内側に圧入された部分を有し、インナコイルスプリング36の他方の端部を圧入で固定する。
【0053】
アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18の収容部17a、18a、及びセンタプレート23の窓部23aに収容され、両端に配設されたシート部材32、33と接している(図1〜図3参照)。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに収縮する。アウタコイルスプリング34は、内側において、周方向のシート部材32側にインナコイルスプリング35が配され、周方向のシート部材33側にインナコイルスプリング36が配されている。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに、インナコイルスプリング35及びインナコイルスプリング36の両方が密着する前に、密着する。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに密着するとサイドプレート17、18とセンタプレート23との間の捩りを規制するストッパとなる。アウタコイルスプリング34は、インナコイルスプリング35、36よりもバネ定数が小さく設定されている。アウタコイルスプリング34は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときにおいて、インナコイルスプリング35が密着した後に、密着する。
【0054】
インナコイルスプリング35は、アウタコイルスプリング34の内側における周方向のシート部材32側に配されたコイルスプリングである(図1〜図3参照)。インナコイルスプリング35の一方の端部は、内側にシート部材32の部分が圧入され、シート部材32に固定されている。インナコイルスプリング35の他方の端部は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じていないときにインナコイルスプリング36の一方の端部と離間しており、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じて所定の捩り角に達するとインナコイルスプリング36の一方の端部と接し、所定の捩り角よりさらに捩りが生じたときに収縮する。インナコイルスプリング35は、アウタコイルスプリング34よりもバネ定数が大きく、かつ、インナコイルスプリング36よりもバネ定数が小さく設定されている。インナコイルスプリング35は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときにおいて、アウタコイルスプリング34が密着する前に、密着する。
【0055】
インナコイルスプリング36は、アウタコイルスプリング34の内側における周方向のシート部材33側に配されたコイルスプリングである(図2参照)。インナコイルスプリング36の他方の端部は、内側にシート部材33の部分が圧入され、シート部材33に固定されている。インナコイルスプリング36の一方の端部は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じていないときにインナコイルスプリング35の他方の端部と離間しており、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じて所定の捩り角に達するとインナコイルスプリング35の他方の端部と接し、所定の捩り角よりさらに捩りが生じたときに収縮する。インナコイルスプリング36は、アウタコイルスプリング34及びインナコイルスプリング35よりもバネ定数が大きく設定されている。インナコイルスプリング36は、サイドプレート17、18とセンタプレート23との間に捩りが生じたときに、アウタコイルスプリング34が密着する前には、密着しない。
【0056】
トルクコンバータ4は、流体作動室における流体の力学的作用を利用して、入力側のポンプインペラ42と出力側のタービンランナ46との回転差によりトルクの増幅作用を発生させる流体伝動装置である(図1参照)。トルクコンバータ4は、トルク変動吸収装置3とインプットシャフト6との間の動力伝達経路上に配設されている。トルクコンバータ4は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との回転数差が小さいときに、それらを直結してクランクシャフト2とインプットシャフト6との回転数差をなくす単板式のロックアップクラッチ5を有する。トルクコンバータ4は、主な構成部として、フロントカバー40と、ポンプシェル41と、ポンプインペラ42と、シャフト43と、ポンプコア44と、タービンシェル45と、タービンランナ46と、タービンコア47と、タービンハブ48と、ステータ49と、ワンウェイクラッチ50と、シャフト51と、プレート部材52と、ロックアップピストン53と、摩擦材54と、を有する。
【0057】
フロントカバー40は、トルクコンバータ4のエンジン側(図1の右側)に配置された円盤状の部材である(図1参照)。フロントカバー40は、回転軸7から径方向外側へ延び、外周部分が変速機側(図1の左側)に延びた形状に形成されている。フロントカバー40の外周端部は、溶接によってポンプシェル41の外周端部に固定されている。フロントカバー40は、ポンプシェル41と一体に回転する。フロントカバー40とポンプシェル41とにより囲まれた空間内には、トルクコンバータ4のポンプインペラ42、タービンランナ46等の構成部が配置されており、作動流体としてのオートマチックトランスミッションフルード(ATF)が封入されている。フロントカバー40は、エンジンからの回転動力がクランクシャフト2及びトルク変動吸収装置3を介して入力される。フロントカバー40は、エンジン側(図1の右側)の面にトルク変動吸収装置3におけるブロック部材30が溶接部31により溶接されている。フロントカバー40は、変速機側(図1の左側)の面にて、ロックアップクラッチ5の摩擦材54と摩擦係合可能になっている。
【0058】
ポンプシェル41は、ATFを循環させる空間を構成する環状の部材である(図1参照)。ポンプシェル41は、外周端部がフロントカバー40の外周端部に溶接されており、内周端部がシャフト43に溶接されている。ポンプシェル41は、フロントカバー40及びシャフト43と一体に回転する。ポンプシェル41は、エンジン側(図1の右側)の面(内面)にて複数のポンプインペラ42が装着されており、ポンプインペラ42と一体に回転する。
【0059】
ポンプインペラ42は、ポンプ側の羽根部材である(図1参照)。ポンプインペラ42は、タービンランナ46と向かい合うように配置されている。ポンプインペラ42は、外側端部がポンプシェル41に装着されており、内側端部がポンプコア44に装着されている。ポンプインペラ42は、ポンプシェル41及びポンプコア44と一体に回転する。ポンプインペラ42は、ポンプシェル41が一方の方向に回転したときに、ステータ49から流れてきたATFをタービンランナ46側へ向かって押し出すような形状に形成されている。
【0060】
シャフト43は、トルクコンバータ4及びトルク変動吸収装置3の外周ないし変速機側を覆うケース(図示せず)に回転可能に支持された筒状の軸部材である(図1参照)。シャフト43は、ポンプシェル41の内周端部と溶接されており、ポンプシェル41と一体に回転する。シャフト43は、シャフト51の外周に所定の間隔をおいて配されている。
【0061】
ポンプコア44は、複数のポンプインペラ42の内側端部が装着される環状の部材である(図1参照)。
【0062】
タービンシェル45は、ATFを循環させる空間を構成する環状の部材である(図1参照)。タービンシェル45は、内周部分が複数のリベットによってタービンハブ48に固定されている。タービンシェル45は、タービンハブ48と一体に回転する。タービンシェル45は、変速機側(図1の左側)の面(内面)にて複数のタービンランナ46が装着されており、タービンランナ46と一体に回転する。タービンシェル45は、エンジン側(図1の右側)の面(外面)にて、プレート部材52が溶接により固定されている。
【0063】
タービンランナ46は、タービン側の羽根部材である(図1参照)。タービンランナ46は、ポンプインペラ42と向かい合うように配置されている。タービンランナ46は、外側端部がタービンシェル45に装着されており、内側端部がタービンコア47に装着されている。タービンランナ46は、タービンシェル45及びタービンコア47と一体に回転する。タービンランナ46は、回転するポンプインペラ42から押し出されたATFを受けて回転し、かつ、ステータ49に向かってATFを排出するような形状に形成されている。タービンランナ46は、ポンプインペラ42に対して独立に回転することが可能である。
【0064】
タービンコア47は、複数のタービンランナ46の内側端部が装着される環状の部材である(図1参照)。
【0065】
タービンハブ48は、筒状のハブ部から径方向外側に延在したフランジ部を有する部材である(図1参照)。タービンハブ48は、フランジ部の外周部分にて複数のリベットによってタービンシェル45が固定されている。タービンハブ48は、ハブ部の内周側にて、変速機のインプットシャフト6に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。タービンハブ48は、タービンシェル45及びインプットシャフト6と一体に回転する。タービンハブ48のハブ部の外周面には、ロックアップピストン53の内周部分の円筒部が軸方向にスライド可能に配されている。タービンハブ48とロックアップピストン53とのスライド面はシールされている。
【0066】
ステータ49は、タービンランナ46からポンプインペラ42へ戻るATFの流れを整流するための複数の羽根を有する部材である(図1参照)。ステータ49は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との間における径方向内側寄りの位置に配されている。ステータ49は、タービンランナ46からポンプインペラ42へ流れるATFの流れ方向を変えるように作用する。ステータ49は、ワンウェイクラッチ50及びシャフト51を介して変速機(図示せず)のケース(図示せず)に取付けられており、1方向にのみ回転することが可能である。
【0067】
ワンウェイクラッチ50は、1方向にのみ回転することが可能なクラッチである(図1参照)。ワンウェイクラッチ50としては、ローラ、スプラグまたはラチェット機構を用いる構造を用いることができる。ワンウェイクラッチ50は、軸方向においてシャフト43とタービンハブ48との間に配され、径方向においてステータ49とシャフト51との間に配されている。ワンウェイクラッチ50は、外輪がステータ49に固定され、内輪がシャフト51に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。
【0068】
シャフト51は、変速機(図示せず)のケース(図示せず)に対して回転不能に取付けられた筒状の軸部材である(図1参照)。シャフト51は、ワンウェイクラッチ50の内輪に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。シャフト51は、筒状のシャフト43の内側に所定の間隔をおいて配されている。シャフト51は、変速機のインプットシャフト6の外周に配されており、ブッシュを介してインプットシャフト6を回転可能に支持する。
【0069】
プレート部材52は、溶接によりタービンシェル45の外面に固定された環状の部材である(図1参照)。プレート部材52は、ロックアップピストン53に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合する。プレート部材52は、タービンシェル45及びロックアップピストン53と一体に回転する。
【0070】
ロックアップピストン53は、ポンプインペラ42とタービンランナ46との回転数差が小さいときに、それらを直結するための環状のピストンである(図1参照)。ロックアップピストン53は、フロントカバー40及びポンプシェル41で囲まれた空間のうち、ロックアップピストン53とフロントカバー40との間に配された油室56と、ロックアップピストン53とポンプシェル41との間に配された油室57と、の間に配されている。ロックアップピストン53は、外周部分のフロントカバー40側の面に環状の摩擦材54が固定されており、摩擦材54と一体に回転する。ロックアップピストン53は、摩擦材54がフロントカバー40と摩擦係合することで、摩擦材54、フロントカバー40、及びトルク変動吸収装置3を介してクランクシャフト2と一体に回転する。ロックアップピストン53は、外周端部にてプレート部材52に対して軸方向移動可能かつ回転不能にスプライン係合している。ロックアップピストン53は、プレート部材52、タービンシェル45、及びタービンハブ48を介して変速機のインプットシャフト6と一体に回転する。ロックアップピストン53は、タービンハブ48の筒状のハブ部の外周面に対して軸方向にスライド可能に配されており、タービンハブ48とのスライド面にてシールされている。ロックアップピストン53は、油室56内の油圧が油室57内の油圧よりも低いときにフロントカバー40側に押付けられて、摩擦材54とフロントカバー40とが摩擦係合する。ロックアップピストン53は、油室56内の油圧が油室57内の油圧よりも高いときにフロントカバー40から離れる方向に移動して、摩擦材54とフロントカバー40との摩擦係合を解除する。油室56、57内の油圧は、油圧回路(図示せず)によって制御され、油室56内の油圧を油室57内の油圧よりも低くすることでロックアップ状態(クランクシャフト2とインプットシャフト6との回転数差をなくした状態)とし、油室56内の油圧を油室57内の油圧よりも高くすることでロックアップ状態を解除する。
【0071】
摩擦材54は、ロックアップピストン53(フロントカバー40でも可)に固定されるとともに、フロントカバー40に対して摩擦係合可能な環状の部材である(図1参照)
【0072】
実施例1によれば、トルク変動吸収装置3においてコイルスプリング34、35、36を収容する空間と外部空間との間に通気部17eを形成することで、温度変化に伴う内部気体の熱膨張(又は伸縮)を逃し、カバー部材25の内外の圧力差を発生させないようにすることができる。これにより、泥水等の吸い込みやグリス等の漏れを防ぐことが可能となる。また、通気部17eを設定することで、特に、急冷時に発生する圧力差を短時間で小さくすることができる。
【0073】
また、実施例1によれば、内径側に通気部17eを設けることで、通気部17eから泥水等を吸い込むことを防ぐことができる。ダンパ部となるコイルスプリング34、35、36を収容する空間が急冷されるのは、泥水等が浸入してくる場合である。泥水等は外径側から浸入し始める。そのため、内径側に通気部17eを設けることで、泥水等が通気部17eに達するまでにダンパ部の構成部材、及び内部気体の温度を十分下げることが可能となる。
【0074】
さらに、実施例1によれば、通気部17eの開口部を径方向外側に向けておくことで、通気部17eへ泥水等が浸入してきたとしても、遠心力によって泥水等を外部空間に排出することができ、通気部17eへグリス等が浸入してきたとしても、遠心力によってグリス等を内部に戻すことができる。
【実施例2】
【0075】
本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。図4は、本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した部分拡大断面図である。
【0076】
実施例2は、実施例1の変形例であり、サイドプレート17の円筒部17cの外周面に溝状の通気部(図3の17e)を設けるのをやめるとともに、サイドプレート18に形成された穴部17bをキャップ(図3の20)で塞ぐのをやめて、穴部17bを通気部として用い、穴部17bを防水透湿性素材60で覆ったものである。防水透湿性素材60は、外部空間からの泥水等の浸入を防止し、かつ、内部(コイルスプリング34、35、36を収納する空間)の湿気・ガスを透過して排出可能な機能を有するシート状の素材であり、例えば、GORE−TEX(登録商標)を用いることができる。穴部17bを防水透湿性素材60で覆うことにより、コイルスプリング34、35、36が収容された空間に外部空間からの泥水等が入りにくく、かつ、コイルスプリング34、35、36が収容された空間から外部空間にグリス等が出にくい構成としている。防水透湿性素材60は、外部空間側から穴部17bを塞ぐようにサイドプレート17に貼付(接着、固定)されている。なお、通気部となる穴部17bは、コイルスプリング34、35、36が配置された位置(より好ましくはカバー部材25とサイドプレート18との当接部)よりも径方向内側に配されていることが好ましい。その他の構成は、実施例1と同様である。なお、実施例2は、実施例1と併用してもよい。
【0077】
実施例2によれば、トルク変動吸収装置3においてコイルスプリング34、35、36を収容する空間と外部空間との間に通気部となる穴部17bを形成し、かつ、穴部17bを防水透湿性素材60で覆うことで、温度変化に伴う内部気体の熱膨張(又は伸縮)を逃し、カバー部材25の内外の圧力差を発生させないようにすることができる。これにより、泥水等の吸い込みやグリス等の漏れを防ぐことが可能となる。また、穴部17bを設定することで、特に、急冷時に発生する圧力差を短時間で小さくすることができる。
【0078】
また、実施例2によれば、内径側に穴部17bを設け、かつ、穴部17bを防水透湿性素材60で覆うことで、穴部17bから泥水等を吸い込むことを防ぐことができる。ダンパ部となるコイルスプリング34、35、36を収容する空間が急冷されるのは、泥水等が浸入してくる場合である。泥水等は外径側から浸入し始める。そのため、内径側に穴部17bを設けることで、泥水等が穴部17bに達するまでにダンパ部の構成部材、及び内部気体の温度を十分下げることが可能となる。たとえ、泥水等が穴部17bに達しても防水透湿性素材60で泥水等の浸入が防げる。
【0079】
さらに、実施例2によれば、穴部17bを防水透湿性素材60で覆うことで、穴部17bの孔径を大きくすることができる。防水透湿性素材60で閉じるため、防水性が向上する。また、防水透湿性素材60の透湿性により、温度変化とそれに伴う飽和水蒸気量の変化を利用してダンパ内部(コイルスプリング34、35、36を収容する空間)の水分を外部空間へ出すことができる。この作用で内部を乾燥状態に保てる。
【0080】
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
1 動力伝達装置
2 クランクシャフト
3 トルク変動吸収装置
4 トルクコンバータ
5 ロックアップクラッチ
6 インプットシャフト
7 回転軸
10 ドライブプレート
11、12 サイド部材
13 ボルト
14 ブロック部材
15 溶接部
16 ボルト
17 サイドプレート
17a 収容部
17b 穴部(通気部)
17c 円筒部
17d 凹部
17e 通気部
18 サイドプレート
18a 収容部
18b 内周端面
18c 当接部
19 溶接部
20 キャップ
21 リングギヤ
22 溶接部
23 センタプレート
23a 窓部
25 カバー部材
26 サイド部材
27 リベット
28 ベアリング(所定の部材、軸受)
29 ボルト
30 ブロック部材
31 溶接部
32、33 シート部材
34 アウタコイルスプリング
35、36 インナコイルスプリング
40 フロントカバー
41 ポンプシェル
42 ポンプインペラ
43 シャフト
44 ポンプコア
45 タービンシェル
46 タービンランナ
47 タービンコア
48 タービンハブ
49 ステータ
50 ワンウェイクラッチ
51 シャフト
52 プレート部材
53 ロックアップピストン
54 摩擦材
56、57 油室
60 防水透湿性素材(通気部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配されたセンタプレートと、
前記センタプレートに対して回転可能かつ同軸に配されたサイドプレートと、
前記サイドプレートに囲まれた空間に収容されるとともに前記サイドプレートと前記センタプレートとの間に生じたトルク変動を吸収する弾性部材と、
前記センタプレートと前記サイドプレートとの間の隙間をカバーすることで前記空間と外部空間とを隔てるカバー部材と、
前記カバー部材よりも径方向内側に配されるとともに前記空間と前記外部空間との間を通気させる通気部と、
を備えることを特徴とするトルク変動吸収装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち一方に対して円周方向に連続的かつ密着して固定されるとともに前記センタプレート及び前記サイドプレートのうち他方に対して円周方向に連続的かつスライド可能に圧接し、
前記通気部は、前記カバー部材と前記サイドプレートとの圧接部分よりも径方向内側に配されることを特徴とする請求項1記載のトルク変動吸収装置。
【請求項3】
前記サイドプレートは、前記センタプレートよりも径方向内側に配された円筒部を有し、
前記センタプレートは、軸受を介して回転可能に前記円筒部の外周面に支持され、
前記通気部は、前記円筒部の外周面、又は、前記軸受の内周面に形成された溝部又は凹部であることを特徴とする請求項1又は2記載のトルク変動吸収装置。
【請求項4】
前記軸受は、前記空間と前記外部空間とを隔てることを特徴とする請求項3記載のトルク変動吸収装置。
【請求項5】
前記通気部の開口部は、径方向外側に向いていることを特徴とする請求項3又は4記載のトルク変動吸収装置。
【請求項6】
前記通気部の中間部は、軸方向に平行に形成された部分を有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【請求項7】
前記通気部は、前記サイドプレートに形成された穴部と、前記穴部を塞ぐ防水透湿性素材とよりなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72542(P2013−72542A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214267(P2011−214267)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000149033)株式会社エクセディ (270)