説明

トレイを備えたディスク装置

【課題】 下面の前後方向へ延びるラックギアにモータで回転駆動するピニオンギアが噛合ってスライドすることで出入りするトレイを備えたディスク装置であって、トレイが搬出された場合に自重の作用で下方へ傾かないようにしたディスク装置の提供。
【解決手段】 フレーム16の側壁17にはトレイ15のレール部30をガイドする為のガイドリブ18を内側へ突出して設け、又正面近傍には基部39から起立する支持部40の上端に当接部41を内側へ突出した押えリブ19を設け、該押えリブ19の当接部41をレール部30の後端部側に形成した高水平レール部33に押圧力を付勢して接触するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスクをセットするトレイであって、該トレイがディスク交換位置へ搬出される際に先端部が下方へ傾くことを防止したディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なディスク装置にはトレイが備わっていて、該トレイにディスクがセットされて出し入れすることが出来る。すなわち、突出したトレイにディスクをセットして装置内部へ搬入し、トラバースユニットのターンテーブル上に載置され、逆にターンテーブルに載置されていたディスクはトレイに載せ替えられて搬出される。
【0003】
図14は従来のディスク装置を示している平面図であり、トレイ1が搬出されてディスク交換位置にある状態を示している。トレイ1の上面には円形の浅い凹部が形成されていて、該凹部にディスクが嵌ってセットされる。又下面側にはラック2が前後方向に設けられ、該ラックギア2に沿って概略L型のガイド溝3を設けている。そしてラックギア2にはピニオンギア4が噛み合い、ガイド溝3にはカムロッドボス5が遊嵌している。
【0004】
上記のピニオンギア4はモータ6にて回転駆動され、該ピニオンギア4が回転することでラックギア2及びトレイ1は後退して装置内へ搬入される。該トレイ1は定められた距離を前進・後退動することで開閉することになるが、概略L型のガイド溝3はラックギア2と平行を成す縦ガイド溝7とラックギア2に対して垂直を成す横ガイド溝8、及び縦ガイド溝7と横ガイド溝8の間に形成されるコーナーガイド溝9から成っている。又、縦ガイド溝7の後方端部は湾曲して延びている。
【0005】
従って、トレイ1が搬出されてディスク交換位置へ移動する為に前進する場合、縦ガイド溝7に遊嵌しているカムロッドボス5が湾曲部に差し掛かることでカムロッド10の動きを検出して該トレイ1は停止する。又トレイ1が搬入されてディスク再生位置へ移動する為に後退する場合、縦ガイド溝7に遊嵌しているカムロッドボス5がコーナーガイド溝9に差し掛かることで、同じくカムロッド10が移動してトレイ1は停止する。すなわち、ガイド溝3に沿ってカムロッドボス5が動くことで、本体と成るカムロッド10が移動し、この動きを検出することでトレイ1が停止するように成っている。
【0006】
特開2001−291302号に係る「光ディスク機器などに組み込まれる精度の高いトレイ用スライド機構」は、光ディスク機器やプリンタなどのトレイの引出し量が大きい機器において、トレイを引き出したときにトレイが上下左右に大きく揺らぐことがないスライド機構である。
【0007】
従来から使用されているガイドに近接させて、トレイの全移動量の半分程度の長さを持つ第2のガイドを敷設し、トレイの出が少ないときは従来のガイドとそれに嵌合摺動するピンを使用し、トレイの出が大きい時は第2のガイドとそれに嵌合摺動するピンを使用するものであり、両者が同時に作用することのないように、スライド量が中間のときに嵌合を切り替えるように構成している。
【0008】
このスライド機構では、ガイドを2本用意し、3本のピンが同時に嵌合することのないように動作範囲に応じて切り替えている為に、何れのピンにおいても嵌合精度を極限まで高めることが可能と成り、トレイのスライド動作が滑らかで騒音の少ないスライド機構となる。しかし、この機構では左右方向の揺れは防止できるが、トレイが搬出された際に先端部が下方へ傾くことを抑制する効果を得ることは出来ない。さらに、従来のガイドに加えてトレイの全移動量の半分の長さを持つ第2ガイドを備える為に、トレイの搬入・搬出時の摺動摩擦のともなう余分な動力が必要と成り、トレイ駆動用として大きなモータが必要になる。
【特許文献1】特開2001−291302号に係る「光ディスク機器などに組み込まれる精度の高いトレイ用スライド機構」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のトレイを備えたディスク装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、トレイが搬出された場合に先端部が自重によって傾くことがないようなガイド手段を備えたディスク装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るディスク装置はトレイを備え、該トレイにディスクを載置して搬入・搬出することが出来、そして搬出した際に該トレイの先端側が自重によって傾かないようにガイド手段を備えている。そこで、トレイの両側にはレール部を形成し、フレーム(筐体)には上記レール部を保持する為のガイドリブを複数箇所に設けている。
【0011】
そして、トレイの両側に形成するレール部は2段階の高さを有し、低水平レール部と高水平レール部から成り、両レール部は傾斜レール部にて連接されている。又、フレームの正面側近傍には、該フレームの側面より内側に突出した押えリブを設け、トレイの高水平レール部に接してトレイの傾きを防止することが出来る。ここで、押えリブはフレームの側面より内側へ延出した基部と、基部の先端より上方に起立する支持部、そして支持部の先端よりフレーム内側へ延びる当接部から成っている。
【0012】
該当接部はトレイが搬出して高水平レール部に差し掛かることで接することが出来、しかも、当接部との摺動摩擦によって余分な負荷が発生しないように、基部と支持部との連結部位を支点として上記当接部が高水平レール部から離れる方向に支持部が撓み変形することが出来る構造と成っている。一方、上記押えリブの代わりにトレイのレール部を一部切り離し、撓み変形可能とした規制部を形成することも可能である。すなわち、レール部の後方を一部切り離して上方へ撓んだ状態の規制部を設け、この規制部が当接する当接部をフレームの側面より内側へ延出した構造とすることも出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るディスク装置は、トレイが搬出されて重心位置がフレームの正面を通過して、ガイドリブが外れる前に押えリブがレール部に当接する為に、該トレイの先端が傾斜することはない。そして、トレイに形成したレール部の前方を低水平レール部、後方を高水平レール部とすることで、トレイが搬出して傾き始める時に押えリブが高水平レール部に当接するような構造と成っている。すなわち、低水平レール部では接触することはなく、その為に押えリブを設けることに伴うトレイの搬送移動動力は必要以上に大きくならない。
【0014】
さらに、スライドするトレイの高水平レール部に押えリブが接触する場合において、滑り摩擦に基づく過剰な負荷が作用することを防止する為に、押えリブの当接部が離れる方向へ支持部を撓み変形可能な構造としている。このように、トレイの傾きを防止することで、該トレイ底面に設けているラックギアと駆動伝達機構であるピニオンギアとの噛合いが安定する。そして、高水平レール部と低水平レール部はトレイと共に一体成形され、又押えリブもフレームと共に一体成形されるために、生産コストが高くなることはない。
【実施例】
【0015】
図1はディスク装置を収容した製品の外観図を示し、キャビネット11の正面にはフロントパネル12が取付けられ、該フロントパネル12の中央にはトレイが出入する開口部13が形成され、又開口部13の隣には操作ボタン14a,14b・・が取付けられている。上記開口部13には一般に開閉ドアが取付けられ、トレイが装置内に搬入されている場合には開閉ドアが開口部13を閉じることが出来る。
【0016】
図2は本発明に係るディスク装置の平面図を表している。同図はトレイ15が装置内に搬入されている状態であり、フレーム16の両側に設けている側壁17,17にはガイドリブ18,18・・が設けられ、トレイ15は側壁17,17の近傍に設けているガイドレール及びガイドリブ18,18・・をガイドとしてスライドすることが出来る。そして、フレーム16の側壁17,17には押えリブ19,19が正面側近傍に設けられている。このディスク装置は前記図1に示すキャビネット11の内部に取付けられ、トレイ15はフロントパネル12の開口部13から出入することが出来る。
【0017】
図3は上記トレイ15を取外した状態でのディスク装置の平面図を表している。同図の20はトレイ15によって搬入されたディスクを載せて回転するターンテーブル、21はターンテーブル20に載って回転するディスクが外れないようにクランプする為のクランパを示している。そして、ディスクに記録されている情報を読取る為のピッアップユニット22は両ガイドシャフト23,23をガイドとして移動することが出来、これらピックアップユニット22、ターンテーブル20はシャーシ24に取付けられてトラバースユニットを構成している。
【0018】
又、トレイ15を搬送する為のモータが設けられ、該モータ主軸に取着しているプーリ25が動力伝達機構26を介してピニオンギア27を駆動し、該ピニオンギア27がトレイ15の下面に設けているラックギアと噛み合うことが出来る。ただし、図3に示す本発明のディスク装置はあくまでも1具体例に過ぎない。
【0019】
図4はトレイ15を表す具体例であり、先端部側の中央部にはディスクが載置される凹部28a,28bが形成され、又中央部には長方形の貫通穴29が設けられている。この貫通穴29にピックアップユニット22が位置して、ディスクの回転に伴ってガイドシャフト23,23に沿って移動することが出来る。そして、該トレイ15の両側にはレール部30,30が設けられ、該レール部30は先端側(正面側)から低水平レール部31、傾斜レール部32、高水平レール部33が連続して形成され、これら各レール部はトレイ15と共に一体成形されている。
【0020】
図5はディスク装置の側面図を表しているが、(a)はトレイ15が搬出されてディスク交換位置にある場合、(b)は装置内部に搬入されている場合を表している。(a)に示すように搬出されたトレイ15にはディスクが載置され、(b)のように、トレイ15が搬入されるならば、シャーシ24にターンテーブル20やピックアップユニット22などを装着しているトラバースユニット34が上昇してトレイ15に載っているディスクはターンテーブル20に載り、クランパ21にてクランプされる。
【0021】
図6はフレーム16の正面側側壁17の一部を表している。側壁17にはガイドリブ18,18が内面から突出して設けられ、ガイドリブ18の下面35はトレイ15のレール部30が接触するガイド面と成る。又、フレーム16の底部36と側壁17とのコーナーに形成している基台37にはガイドレール38が形成されている。さらに、側壁17及び底部36の一部を切欠いて押えリブ19が設けられている。
【0022】
図7は上記押えリブ19を表している。押えリブ19は底部36と同一面を成す基部39、該基部39の先端から垂直に起立する支持部40、そして支持部先端から内側へ突出している当接部41から成っている。ここで、支持部40は基部39を中心として撓み変形することが出来、その為に当接部41の高さは僅かに変わり得る。そして、時には支持部40を基部39に対して垂直上方へ立ち上げることなく、内側へ僅かに傾斜した状態で起立することもある。
図8は押えリブ19の支持部40が斜め内側へ傾いて起立している場合を表し、同図の(b)は図8(a)のA部拡大図である。そして、この押えリブ19にトレイ15のレール部30が係合している場合を図9に示している。図9(a)のB部拡大図を(b)に示すように、トレイ15の両側部に設けているレール部30は基台37に載り、そしてレール部30の下側に形成しているガイド溝42には基台37の上面に起立して設けられるガイドレール38が嵌っている。従って、トレイ15は基台37に載った状態で左右方向の位置決めがなされ、押えリブ19の当接部41がトレイ15の上面に接している為に、浮上することもない。
【0023】
図9(b)に示すように、押えリブ19の支持部40が湾曲している。支持部40は前記図8に示しているように内側へ傾斜した状態で起立している為に、トレイ15がスライドして高水平レール部33に差し掛かるならば、当接部41が接することで基部39を中心として撓み変形して同図のように湾曲する。その結果、湾曲に伴う弾性力が高水平レール部33の上面に作用することで、該トレイ15を上方から押圧する力が働く。
【0024】
図10〜図13はトレイ15の搬出状態を表し、図10はトレイ15が記録再生位置に搬入されている場合、図11はトレイ15が僅かに搬出した場合、図12はトレイ15が約1/2程搬出した場合、図13はトレイ15がディスク交換位置まで搬出された状態を示している。
【0025】
図10ではトレイ15はディスク再生位置まで搬入されているが、この状態では押えリブ19はトレイ15のレール部30に接していない。ただし、2箇所のガイドリブ18a,18bはレール部30に接触又は近接しており、トレイ15が浮上することはない。図11に示すように、トレイ15が僅かに搬出した場合も同じく、押えリブ19の当接部41はレール部30に接しておらず、ガイドリブ18a,18bが近接している。
【0026】
図12はトレイ15が約1/2程度搬出した状態であり、トレイ15の重心はフレーム16からはみ出している。従って、トレイ先端部が降下して傾斜することを防止する為に、押えリブ19はトレイ15のレール部30に係合している。すなわち、押えリブ19の当接部41はトレイ15のレール部30、特に高水平レール部33(図4参照)に当ってトレイ15の傾きを防止することが出来る。
【0027】
押えリブ19を挟んで前後位置にあるガイドリブ18c,18dの下面35,35も高水平レール部33に近接している。ただし、押えリブ19は支持部40が撓み変形することで弾性力が高水平レール部33に作用し、トレイ15の傾きが防止される。図13はディスク交換位置まで搬出された場合であり、トレイ15の傾きを防止する為に押えリブ19の当接部41が高水平レール部33に弾性力を付勢した状態で接している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ディスク装置を収容した製品の外観図。
【図2】ディスク装置の平面図。
【図3】トレイを取外したディスク装置の平面図。
【図4】トレイの外観図。
【図5】(a)はトレイが搬出しているディスク装置の断面図、(b)はトレイが搬入されているディスク装置の断面図。
【図6】フレームの正面側の部分詳細図。
【図7】フレーム側壁部に設けている押えリブ。
【図8】押えリブが位置するフレーム断面図。
【図9】トレイに押えリブが係合している場合の断面図。
【図10】トレイが搬入状態の平面図。
【図11】トレイが僅かに搬出された状態。
【図12】トレイが約1/2程度搬出された状態。
【図13】トレイがディスク交換位置まで搬出された状態。
【図14】従来のディスク装置。
【符号の説明】
【0029】
11 キャビネット
12 フロントパネル
13 開口部
14 操作ボタン
15 トレイ
16 フレーム
17 側壁
18 ガイドリブ
19 押えリブ
20 ターンテーブル
21 クランパ
22 ピッアップユニット
23 ガイドシャフト
24 シャーシ
25 プーリ
26 動力伝達機構
27 ピニオンギア
28 凹部
29 貫通穴
30 レール部
31 低水平レール部
32 傾斜レール部
33 高水平レール部
34 トラバースユニット
35 下面
36 底部
37 基台
38 ガイドレール
39 基部
40 支持部
41 当接部
42 ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面の前後方向へ延びるラックギアにモータで回転駆動するピニオンギアが噛合ってスライドすることで出入りするトレイを備えたディスク装置において、フレームの側壁部にはトレイのレール部をガイドする為のガイドリブを内側へ突出して設け、又正面近傍には基部から起立する支持部の上端に当接部を内側へ突出した押えリブを設け、該押えリブの当接部をレール部の後端部側に形成した高水平レール部に押圧力を付勢して接触するようにしたことを特徴とするトレイを備えたディスク装置。
【請求項2】
上記押えリブの支持部を内側へ僅かに傾斜して起立した請求項1記載のトレイを備えたディスク装置。
【請求項3】
下面の前後方向へ延びるラックギアにモータで回転駆動するピニオンギアが噛合ってスライドすることで出入りするトレイを備えたディスク装置において、フレームの側壁部にはトレイのレール部をガイドする為のガイドリブを内側へ突出して設け、トレイのレール部の後端部側を切欠いて撓み変形可能な規制部を形成し、該規制部が上記ガイドリブと係合可能としたことを特徴とするトレイを備えたディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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