説明

トレッドミル用ベルト

【課題】トレッドミルに最適なベルトを提供する。
【解決手段】トレッドミル用ベルト10は、中間帆布20と、中間帆布20の上面側に配置される表面樹脂層21と、中間帆布20の下面側に配置されるプライマー層24と、プライマー層24の下面側に配置される中間樹脂層25と、中間樹脂層25の下面側にさらに配置される背面帆布26とを備える。中間帆布20とプライマー層24は、第2の接着剤層32を介して接着される。プライマー層24は、導電性カーボンブラック及び熱可塑性ポリウレタン樹脂を含むプライマー液を塗布・乾燥して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止のためにベルトに導電性を持たせたトレッドミル用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送用ベルトは、ベルトに静電気が帯電しスパークが発生するのを防止するために、ベルト自身に導電性を持たせることが知られている。導電性を持たせる方法としては、例えば、心体帆布の糸の一部を導電性繊維で形成する方法(例えば特許文献1〜2)、心体帆布とゴム層を接着するための接着ゴム層に導電性カーボンブラックを配合する方法(例えば、特許文献3)、ベルトの一部を構成する樹脂層に金属塩や導電性カーボングラックを配合する方法等が知られている(例えば特許文献4)。
【0003】
ベルトがランニングマシーン等のトレッドミルで使用される場合、2つのプーリ間に無端状に掛け回されており、それら2つのプーリ間で走行面を提供するとともに、その走行面の下面には使用者の体重を支持するための支持板が設けられている。
【0004】
トレッドミル用ベルトは、ベルトへの帯電を防止し、また使用者の靴とベルト走行面との剥離帯電の発生を防止するために、通常の搬送用ベルトと同様に、帆布に導電性をもたせることにより、帯電防止性能をもたせることが試みられている。
【特許文献1】実用新案登録第2568369号公報
【特許文献2】特開2003−48611号公報
【特許文献3】特開2002−68439号公報
【特許文献4】特開平9−166183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、トレッドミル用ベルトは、使用中に偏荷重が作用されるため、導電性を持たせた糸がその偏加重により早期に切断され、またはベルトの裏面が使用者の荷重により支持板に接触し帆布が磨耗され、帯電防止性能が早期に低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献3、4のように、カーボンブラック又は金属塩が配合された接着ゴム層や樹脂層は屈曲性が低下するため、高い屈曲性を必要とされるトレッドミル用ベルトに使用することは不適である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、高い屈曲性を維持したまま、帯電防止性能を長期に維持できるトレッドミル用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトレッドミル用ベルトは、第1の帆布の一面に、接着剤が塗布されて形成される接着剤層、導電性カーボンブラック及び樹脂を含むプライマー液が塗布されて形成されるプライマー層、及び第1の樹脂層がこの順に設けられて形成されることを特徴とする。
【0009】
プライマー液に含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であると共に、第1の樹脂層は熱可塑性樹脂で形成され、第1の樹脂層がプライマー層に熱融着により接着されていることが好ましい。
【0010】
プライマー液は例えばさらに溶剤を含み、塗布されたプライマー液が乾燥されてプライマー層が形成されることが好ましい。
【0011】
第1の帆布の一面とは反対側の面には例えば、搬送面を形成する第2の樹脂層が積層されている。また、第2の樹脂層は、靴とベルトとの剥離帯電を有効に防止するために、帯電防止樹脂層であることが好ましい。また、第1の樹脂層は、ベルト全体の導電性をさらに高めるために帯電防止樹脂層であっても良い。ここで、帯電防止樹脂層は、界面活性剤を含むことにより導電性を有することが好ましい。また、例えば、第1の樹脂層のプライマー層が設けられた面とは反対側の面にはさらに第2の帆布が設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベルトの内部に導電性の良好なプライマー層を設けることにより、屈曲性を維持したまま、帯電防止性能を長期に維持できるトレッドミル用ベルトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すためのトレッドミル用ベルトの側面図である。なお、以下の説明においては、図1における下方側を下面側、上方側を上面側として説明する。
【0014】
トレッドミル用ベルト10は、中間帆布20と、中間帆布20の上面側に積層される表面樹脂層21と、中間帆布20の下面側に積層されるプライマー層24と、プライマー層24の下面側に積層される中間樹脂層25と、中間樹脂層25の下面側に配置される背面帆布26とを備える。
【0015】
中間帆布20の上面及び下面それぞれには、第1及び第2の接着剤層31、32が被膜されており、その第1及び第2の接着剤層31、32を介して、表面樹脂層21及びプライマー層24が中間帆布20の上面及び下面それぞれに接着積層されている。同様に、背面帆布26の上面には、第3の接着剤層33が被膜されており、その第3の接着剤層33を介して中間樹脂層25が背面帆布26の上面に接着積層されている。
【0016】
トレッドミル用ベルト10は無端状のベルトであって、背面帆布26の下面側がプーリに接触するように、例えば2軸のプーリに掛け回られて使用され、表面樹脂層21の上面は搬送面(すなわち、走行面)として使用される。
【0017】
中間帆布20及び背面帆布26は、ポリエステル等の繊維材料が織られて形成された織布等であって、ベルトの張力を得るために使用される。
【0018】
第1〜第3の接着剤層31〜33は、熱可塑性樹脂が溶剤に配合されて構成される接着剤が、帆布の各面に塗布された後、加熱して乾燥されることにより、硬化被膜される。上記溶剤としては、例えば、MEK(メチルエチルケトン)、トルエン等の有機溶剤が使用される。接着剤としては、特にその種類が限定されるわけではないが、柔軟性の観点から、ウレタン接着剤が使用されることが好ましい。ウレタン接着剤としては、例えばウレタン樹脂を含む主剤と、ジイソシアネート化合物などのポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とが混合した後に塗布される、2液タイプのウレタン接着剤が使用される。主剤のウレタン樹脂としては、ポリエステル、ポリエーテル系等のウレタン樹脂が使用される。
【0019】
プライマー層24は、ベルトに静電気が帯電するのを防止するために導電性を有する薄膜であって、硬化被膜された第2の接着剤層32の下面にプライマー液が塗布された後、乾燥させられることにより被膜形成される。プライマー液は、導電性カーボンブラック及び熱可塑性樹脂が溶剤に配合されて分散又は溶解された溶液である。溶剤としては、MEK等の有機溶剤が使用される。熱可塑性樹脂としては、柔軟性の観点から熱可塑性ウレタン樹脂が使用されることが好ましい。熱可塑性ウレタン樹脂は、例えば、ジイソシアネート化合物等のポリイソシアネート化合物と、ジオール化合物等のポリオール化合物が付加重合反応して得られたものである。
【0020】
プライマー層24の25℃×50%RHにおける表面抵抗値は、ベルトが帯電防止性能を充分に発揮できるように、例えば10〜10Ωとなることが好ましい。なお、表面抵抗値の測定は、JIS K6911に準拠して行われたものをいう。プライマー液は、溶剤に配合された導電性カーボンブラック及び熱可塑性樹脂を塗布することにより、薄膜に形成されるため、ベルトの屈曲性を低下させることなく、ベルトに帯電防止性能を付与することができる。
【0021】
プライマー液は、溶剤50〜95重量部に、熱可塑性樹脂5〜30重量部及び導電性カーボンブラック2〜25重量部が配合されていることが好ましい。導電性カーボンブラックが上記範囲未満となり、又は熱可塑性樹脂が上記範囲より大きくなると、プライマー層24を薄膜にしつつ高い導電性を付与することができなくなる。一方、カーボンブラックが上記範囲より大きく、又は熱可塑性樹脂が上記範囲未満となると、第2の接着剤層32若しくは中間樹脂層25との接着性が悪くなり、又はベルトの屈曲性が低下するおそれがある。
【0022】
表面樹脂層21及び中間樹脂層25は、ベルトに静電気が帯電するのを防止するための、導電性を有する帯電防止樹脂層であって、帯電防止剤が配合された熱可塑性樹脂によって形成される。表面樹脂層21の上面は、走行面であり、スリップ等が生じないように所定の摩擦係数を有するように目付け加工が施され、例えば規則的に配列された凹凸が形成される。
【0023】
表面樹脂層21及び中間樹脂層25を形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるわけではないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン系エラストマー等が使用され、好ましくは塩化ビニル樹脂が使用される。また、帯電防止剤としては、導電性カーボンブラック、界面活性剤等が使用される。
【0024】
但し、導電性カーボングラックが配合された帯電防止樹脂層は、その表面抵抗値が比較的低くなるが、柔軟性が低くなることによりベルトの屈曲性を低下させると共に、耐磨耗性も低下する。したがって、帯電防止剤としては界面活性剤を使用することが好ましい。表面樹脂層21及び中間樹脂層25の25℃×50%RHにおける表面抵抗値は、例えば10〜1011Ωとなり、プライマー層の表面抵抗値より高くなる。
【0025】
次に、本実施形態のトレッドミル用ベルトの製造方法について説明する。本実施形態においては、まず、中間帆布20の上面及び下面に接着剤を塗布した後、加熱乾燥することによって接着剤を硬化させて第1及び第2の接着剤層31、32を形成する。次いで、第2の接着剤層32が被膜された、中間帆布20の下面にさらにプライマー液を塗布した後、加熱乾燥させてプライマー層24を被膜する。その後、第1の接着剤層31が被膜された、中間帆布20の上面に例えばカレンダーロールによって樹脂をラミネートして、中間帆布の上面に表面樹脂層21を積層する。
【0026】
同様に、背面帆布26の上面にも、第3の接着剤層33を被膜した後、中間樹脂層25を積層する。次いで、その中間樹脂層25の上面と、プライマー層24の下面を貼り合わせるとともに、これらを加熱し、熱融着によりプライマー層24と中間樹脂層25を接着する。そして、表面樹脂層21の上面に目付け加工を施し凹凸を形成して、長尺のトレッドミル用ベルトを得る。長尺のトレッドミル用ベルトは、適宜所定の長さに切断されると共に、両端部が熱融着されることにより、無端状のトレッドミル用ベルト10に形成される。
【0027】
以上のように、本実施形態において、高い導電性を有するプライマー層24は、ベルトの内部に設けられ、使用と共に磨耗等によって劣化されないので、トレッドミル用ベルト10は長時間安定した帯電防止効果を有することとなる。
【0028】
また、走行面を形成する表面樹脂層21は、帯電防止樹脂で構成されるため、靴とベルトの剥離帯電も有効に防止される。ただし、中間樹脂層25及び表面樹脂層21は、相対的に導電性が低いため、トレッドミル用ベルト10の帯電防止効果は主に、相対的に高い導電性を有するプライマー層24によってもたらされる。
【0029】
また、プライマー層24は、導電性カーボンブラックが配合されているため、繊維材料から形成される中間帆布20との接着性は良好ではない。しかし、本実施形態ではプライマー層24は、カーボンブラックが配合されていない第2の接着剤層32を介して中間帆布20に接着されているため、プライマー層24と中間帆布20との間で界面剥離が生じることが防止されている。
【0030】
一方、プライマー層24及び中間樹脂層25はいずれも熱可塑性樹脂から形成されるため、これらは熱融着によって強固に接着することができるので、これらの間で界面剥離が生じることも防止されている。
【0031】
なお、本実施形態に係る製造方法において、上記プライマー層24は、第2の接着剤層32が被膜された中間帆布20の下面に塗布されて積層されたが、中間樹脂層25の上面に塗布されて積層されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】トレッドミル用ベルトの側面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 トレッドミル用ベルト
20 中間帆布(第1の帆布)
21 表面樹脂層(第2の樹脂層)
24 プライマー層
25 中間樹脂層(第1の樹脂層)
26 背面帆布(第2の帆布)
31〜33 第1〜第3の接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の帆布の一面に、接着剤が塗布されて形成される接着剤層、導電性カーボンブラック及び樹脂を含むプライマー液が塗布されて形成されるプライマー層、及び第1の樹脂層がこの順に設けられて形成されることを特徴とするトレッドミル用ベルト。
【請求項2】
前記プライマー液に含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であると共に、前記第1の樹脂層は熱可塑性樹脂で形成され、前記第1の樹脂層はプライマー層に熱融着により接着されていることを特徴とする請求項1に記載のトレッドミル用ベルト。
【請求項3】
前記プライマー液はさらに溶剤を含み、塗布されたプライマー液が乾燥されて前記プライマー層が形成されることを特徴とする請求項1に記載のトレッドミル用ベルト。
【請求項4】
前記第1の帆布の前記一面とは反対側の面には搬送面を形成する、第2の樹脂層が積層されることを特徴とする請求項1に記載のトレッドミル用ベルト。
【請求項5】
前記第1及び第2の樹脂層は、少なくともいずれか一方が帯電防止樹脂層であることを特徴とする請求項1又は4のいずれか1項に記載のトレッドミル用ベルト。
【請求項6】
前記帯電防止樹脂層は、界面活性剤を含むことにより導電性を有することを特徴とする請求項5に記載のトレッドミル用ベルト。
【請求項7】
前記第1の樹脂層のプライマー層が設けられた面とは反対側の面にはさらに第2の帆布が設けられることを特徴とする請求項1に記載のトレッドミル用ベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2009−7128(P2009−7128A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171060(P2007−171060)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【特許番号】特許第4087888号(P4087888)
【特許公報発行日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】