説明

トロイダル型無段変速機の製造方法

【課題】トラクション特性の向上を図る為に、ディスクの片側面に形状精度の高い凹溝を安定的に、且つ、低コストで形成する。
【解決手段】形成すべき凹溝に対応する形状の曲面部20を有するフォームローラ17を、フォームローラ17を移動させる工具変位部材21に対し、弾性部材23を介して支持する。上記フォームローラ17を上記片側面16に押し付けた状態で、ディスク15を回転させ、この片側面16に上記凹溝を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用の自動変速機として、或はポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の変速装置として利用する、トロイダル型無段変速機の製造方法の改良に関する。具体的には、各パワーローラの周面と各ディスクの軸方向片側面とのトラクション部のトラクション特性(トラクション係数)の向上を図るべく、これら各パワーローラの周面と各ディスクの軸方向片側面とのうちの少なくとも一方の面(少なくとも何れかのトラクション面)に、例えば深さが1〜3μm程度の凹溝(微細溝)を(トラクション面の全体に亙り)形成する構造に関し、形状精度の高い凹溝(所望の形状の凹溝)を安定的に、且つ、低コストで形成できる製造方法の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用変速装置としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、一部で実施されて周知である。図6〜7は、現在実施されているトロイダル型無段変速機の基本構成を示している。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、それぞれが中炭素鋼、高炭素鋼、軸受鋼等の硬質鋼製である1対の入力側ディスク1、1を入力回転軸2に対し、それぞれがトロイド曲面(断面円弧形の凹面)であって特許請求の範囲に記載した軸方向片側面に相当する入力側内側面3、3同士を、互いに対向させた状態で、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持している。
【0003】
又、上記入力回転軸2の中間部周囲に、中間部外周面に出力歯車4を固設した出力筒5を、この入力回転軸2に対する回転を自在に支持している。又、この出力筒5の両端部に、それぞれが中炭素鋼、高炭素鋼、軸受鋼等の硬質鋼製である出力側ディスク6、6を、スプライン係合により、上記出力筒5と同期した回転自在に支持している。この状態で、それぞれがトロイド曲面であって特許請求の範囲に記載した軸方向片側面に相当する、上記両出力側ディスク6、6の出力側内側面7、7が、上記両入力側内側面3、3に対向する。
【0004】
又、上記入力回転軸2の周囲で上記入力側、出力側両内側面3、7同士の間部分(キャビティ)に、それぞれの周面を球状凸面とした、それぞれが中炭素鋼、高炭素鋼、軸受鋼等の硬質鋼製であるパワーローラ8、8を、2個ずつ配置している。これら各パワーローラ8、8は、それぞれトラニオン9、9の内側面に、基半部と先半部とが偏心した支持軸10、10と複数の転がり軸受とを介して、これら各支持軸10、10の先半部回りの回転、及び、これら各支持軸10、10の基半部を中心とする若干の揺動変位自在に支持されている。又、上記各トラニオン9、9は、それぞれの長さ方向(図6の表裏方向、図7の上下方向)両端部にこれら各トラニオン9、9毎に互いに同心に設けられた、傾転軸11、11を中心として揺動変位自在である。
【0005】
これら各トラニオン9、9を揺動(傾斜)させる動作は、油圧式のアクチュエータ12、12により、これら各トラニオン9、9を上記各傾転軸11、11の軸方向に変位させる事により行う。即ち、変速時には、上記各アクチュエータ12、12への圧油の給排により、上記各トラニオン9、9を上記各傾転軸11、11の軸方向に変位させる。この結果、上記各パワーローラ8、8の周面と上記入力側、出力側各内側面3、7との接触部(トラクション部)の接線方向に作用する力の方向が変化する(サイドスリップが発生する)ので、上記各トラニオン9、9が上記各傾転軸11、11を中心として揺動変位する。
【0006】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、駆動軸13により一方(図6の左方)の入力側ディスク1を、ローディングカム式の押圧装置14を介して回転駆動する。この結果、前記入力回転軸2の両端部に支持された1対の入力側ディスク1、1が、互いに近付く方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ8、8を介して前記両出力側ディスク6、6に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
【0007】
上記入力回転軸2と上記出力歯車4との回転速度の比を変える場合で、先ず入力回転軸2と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、上記各トラニオン9、9を図6に示す位置に揺動させ、上記各パワーローラ8、8の周面を、上記各入力側ディスク1、1の入力側内側面3、3の中心寄り部分と上記両出力側ディスク6、6の出力側内側面7、7の外周寄り部分とにそれぞれ当接させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン9、9を図6と反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ8、8の周面を、上記両入力側ディスク1、1の入力側内側面3、3の外周寄り部分と上記両出力側ディスク6、6の出力側内側面7、7の中心寄り部分とにそれぞれ当接させる。上記各トラニオン9、9の揺動角度を中間にすれば、上記入力回転軸2と出力歯車4との間で、中間の速度比(変速比)を得られる。
【0008】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時、入力側、出力側各ディスク1、6の入力側、出力側各内側面3、7と各パワーローラ8、8の周面とのトラクション部では、トラクションオイルを介して動力が伝達される。又、このトラクション部で大きなトルクを伝達する為には、このトラクション部に大きな押し付け力を付与する必要がある。但し、この様に大きな押し付け力を付与する場合、上記入力側、出力側各ディスク1、6や各パワーローラ8、8の耐久性が低下し易くなる可能性がある。これら各ディスク1、6や各パワーローラ8、8の強度を確保すべく、これら各部材1、6、8の厚さ寸法を大きくする事は、これら各部材1、6、8を組み込んだトロイダル型無段変速機が大型化する可能性があり、装置の小型化を図る面からは好ましくない。
【0009】
一方、上述の様な不都合の防止を図るべく、例えば特許文献1〜6には、各ディスク1、6の軸方向片側面や各パワーローラ8の周面(トラクション面)に、深さが0.1μm〜8μm程度の凹溝(微細溝)を、当該面全体に亙って(例えば、らせん状に、又は、同心円状に複数)形成する技術が記載されている。この様な技術を採用すれば、トラクション部のトラクション特性(トラクション係数)の向上を図れ、この様な凹溝を形成しない構造に比べ、小さな押し付け力で大きなトルクを伝達できると考えられる。但し、この様な凹溝を形成する構造の場合、この凹溝の溝深さや溝幅が大きくなり過ぎると、上記トラクション部に十分な油膜が形成されず、著しい場合には金属接触を生じ、十分な耐久性の確保を図れなくなる可能性がある。一方、上記凹溝の溝深さや溝幅が小さくなり過ぎると、この凹溝の形成に基づくトラクション特性の向上を十分に得られなくなる可能性がある。この為、この様な凹溝を精度良く形成する技術が求められている。
【0010】
上記特許文献1〜6のうち、例えば特許文献1には、多結晶CBN工具(CBN:立方晶窒化ホウ素)の切削に基づいて、トラクション面に凹溝を形成する技術が記載されている。又、同じく特許文献2には、切削工具の切り込み量をこの切削工具の摩耗量に応じて調節する事により、トラクション面に所望の凹溝を形成する技術が記載されている。又、同じく特許文献3には、切削によりトラクション面に凹溝を形成した後、このトラクション面に研削加工を施す事により、この凹溝の開口縁(隣り合う凹溝同士の間部分により構成される凸部の端縁)にクラウニングを施す技術が記載されている。又、同じく特許文献4には、切削により凹溝を形成する前、又は、後に、直径が6mm程度の窒化珪素製の球体をトラクション面に押し付けて、このトラクション面を加工硬化させる技術が記載されている。又、同じく特許文献5には、凹溝を形成したトラクション面にジチオリン酸亜鉛の被膜を施す技術が記載されている。又、同じく特許文献6には、転造加工によりトラクション面に凹溝を形成する技術が記載されている。
【0011】
但し、これら特許文献1〜6に記載された技術を採用しただけでは、形状精度の高い凹溝(所望の形状の凹溝)を安定的に、且つ、低コストで形成する事、即ち、所望の凹溝を形成したディスク1、6やパワーローラ8を安定的に量産する事は難しいと考えられる。この理由は、以下の通りである。即ち、例えばトラクション面に凹溝を形成する作業は、被加工物である上記ディスク1、6やパワーローラ8を加工機にセットし、この被加工物1、6、8を回転させつつ行われる。一方、トラクション特性の向上の面からは、上記被加工物である上記ディスク1、6やパワーローラ8のトラクション面に、深さが1〜3μm程度の凹溝を形成する必要がある。但し、上記被加工物1、6、8を加工機に、例えば上記凹溝の深さ方向に関し3μm未満の位置ずれでセットする事や、この様な被加工物1、6、8を、同じく深さ方向に関し3μm未満の振れで回転させる事は、コストや作業時間等を無視すれば不可能でははいが、量産化を図る面からは現実的ではない。
【0012】
そして、上述の様な凹溝を形成する際、加工工具(切削工具、転造工具)の位置を単純な位置制御だけで規制すると、即ち、予め設定した位置に加工工具を移動させるだけで加工を行うと、上述の様な被加工物1、6、8の位置ずれや振れ分、更には、上記加工工具の不可避的な位置ずれ分、凹溝の形状精度が悪化する(所望の凹溝を形成できない)。又、上記凹溝は、熱処理が施された高硬度のトラクション面に形成する為、加工時間の経過に伴い上記加工工具が摩耗する事が避けられない。この為、この工具の摩耗に関しても、そのままでは、上記凹溝の形状精度の悪化に繋がる。尚、上記特許文献2には、上述した様に切削工具の摩耗量に応じてその切り込み量を調節(補正)する技術が記載されているが、この技術を単に採用しただけでは、上記調節を頻繁に行わなければならず、十分なコストの低減を図れない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−39306号公報
【特許文献2】特開2002−46001号公報
【特許文献3】特開2004−138145号公報
【特許文献4】特開2004−138165号公報
【特許文献5】特開2004−138216号公報
【特許文献6】特開2002−307204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法は、上述の様な事情に鑑み、トラクション面に凹溝(微細溝)を形成する構造に関し、形状精度の高い凹溝(所望の形状の凹溝)を安定的に、且つ、低コストで形成できる製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の製造方法の対象となるトロイダル型無段変速機は、何れも、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、少なくとも1対のディスクと複数のパワーローラとを備える。
このうちの各ディスクは、それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持されるものである。
又、上記各パワーローラは、軸方向に関して上記各ディスクの軸方向片側面同士の間位置の円周方向に関して複数個所に設けられて、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させるものである。
そして、上記各パワーローラの周面と上記各ディスクの軸方向片側面とのうちの少なくとも一方の面(少なくとも何れかのトラクション面)に、トラクション特性(トラクション係数)の向上を図るべく、例えば深さが1〜3μm程度の凹溝(微細溝)を、当該面の周方向に形成している。
【0016】
特に、本発明の製造方法のうち、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機の製造方法に於いては、形成すべき凹溝に対応する形状の転造部を有するフォームローラ(転造工具)を、このフォームローラを変位させる部材{工具を支持すると共に、加工時にこの支持した工具を変位(移動)させる部材。加工機の工具変位部材}に対し、ばね(圧縮コイルばね、皿ばね等)、ゴムの如きエラストマー、合成樹脂等の弾性部材を介して支持し、且つ、この様な弾性部材を介して支持したこのフォームローラを、上記一方の面に押し付けた状態で、これらフォームローラと一方の面とを相対変位させる。具体的には、上記フォームローラに対し被加工部材(ディスク又はパワーローラ)を回転させる、或は、これとは逆に、この被加工部材に対し上記フォームローラを回転(旋回)させる。そして、この様なフォームローラと一方の面との相対変位に基づいて、この一方の面に上記凹溝を形成する。
【0017】
尚、上記弾性部材は、上記フォームローラの回転中心軸に対し直交する方向で、且つ、このフォームローラを上記一方の面に近付ける方向の弾力を付与するものとする。又、この様な弾性部材のばね定数は、例えば次の様に規制する。即ち、位置制御によりフォームローラを被加工部材に押し付けた状態で、上記フォームローラを変位させる部材(工具変位部材)と上記被加工部材との、上記凹溝の深さ方向に関する位置関係のずれ量をaとした場合に、形成される凹溝の深さのずれ量bが、このズレ量aに対し1/1000〜1/2000程度(b=a/1000〜a/2000)となる様に、上記弾性部材のばね定数を設定する。要するに、位置制御により上記フォームローラを被加工部材に(被加工面を塑性変形させるのに十分な程の力で)押し付けた状態で、上記フォームローラを変位させる部材とこの被加工物との位置ずれ量が例えば0.5mm程度となる場合に、形成される凹溝の深さのずれ量が例えば0.25〜0.5μm程度となる様に、上記ばね定数を設定する。
【0018】
又、同じく請求項2に記載したトロイダル型無段変速機の製造方法に於いては、形成すべき凹溝に対応する形状の転造部を有するフォームローラ(転造工具)を、上記一方の面に所定圧で押し付けた状態{一方の面とフォームローラとの当接部(転造加工部)に常に所定の荷重が付与された状態}で、これらフォームローラと一方の面とを相対変位させる。具体的には、上記フォームローラに対し被加工部材(ディスク又はパワーローラ)を回転させる、或は、これとは逆に、この被加工部材に対し上記フォームローラを回転(旋回)させる。そして、この様なフォームローラと一方の面との相対変位に基づいて、この一方の面に上記凹溝を形成する。尚、この様に所定圧で押し付ける為には、例えば、油圧式の押し付け装置により上記フォームローラを、油圧が常に所定の値になる様に制御しつつ押し付ける(定圧制御でフォームローラを押し付ける)。
【0019】
又、上述の様な本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法を実施する場合に好ましくは、上記一方の面に研削加工、又は、超仕上加工を施した後、この一方の面に凹溝を形成する。
又、同じく本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法を実施する場合に好ましくは、上記一方の面に凹溝を形成した後、この一方の面に超仕上加工又はショット加工(例えばショットピーニング加工)を施して、この凹溝の開口縁、即ち、隣り合う凹溝同士の間部分により構成される凸部の端縁を滑らかな曲面にする(丸める、クラウニングさせる)。
又、同じく本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法を実施する場合に好ましくは、上記フォームローラ(転造工具)を、高硬度で耐摩耗性の優れたもの、例えば超硬合金、チタン合金、セラミックス、ダイヤモンド等により造られたものとする。
又、このフォームローラは、算盤の玉(断面を略菱形とした円盤)の如き形状を有するものとし、ローラ支持部材により回転自在に支持する。又、このローラ支持部材は、1対の支持片を互いに平行に固設したものとする。そして、これら各支持片の互いに対向する側面同士の間に上記フォームローラを、これら両側面に対し直交する軸を中心とする回転を可能に支持する。又、その回転中心軸に対し直角方向に、上記一方の面に押し付けられる曲面部(形成すべき凹溝に対応する形状の転造部)を、上記フォームローラの全周に亙って設ける。そして、この様なフォームローラを回転自在に支持した上記ローラ支持部材を、前記弾性部材、又は、油圧式の押し付け装置を介して、加工機の工具変位部材に支持する。
【0020】
尚、上記一方の面に形成すべき凹溝の形状(溝深さ、溝幅、溝ピッチ等)は、トロイダル型無段変速機の使用時に、トラクション部に付与される押し付け力やこのトラクション部で必要とされる油膜の厚さ等との関係に基づくトラクション特性(トラクション係数)が、所望のものとなる様に規制する。具体的には、上記凹溝の深さは、例えば1〜3μm程度とし、同じくその幅は、例えば30〜100μm程度とし、隣り合う凹溝同士の間隔(ピッチ)は、例えば100〜300μm程度とする。そして、上記フォームローラの曲面部(転造部)の曲率半径Rは、形成される凹溝の形状(溝深さ、溝幅、溝ピッチ等)が、上記押し付け力や油膜形成状況との関係で、所望のトラクション特性となる様に規制する。具体的には、上記曲面部(転造部)の曲率半径Rを、例えば0.05〜1mm(より好ましくは、0.1〜0.5mm、更に好ましくは、0.2〜0.3mm)とする。
【0021】
又、同じく本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法を実施する場合に好ましくは、上記工具変位部材に上記フォームローラを、上記被加工部材に対し、次の様に支持する。即ち、この被加工部材の一方の面のうちで、加工範囲の略中央(例えば被加工部材の径方向に関する略中央)となる部分の法線と、上記フォームローラの回転中心軸とが略直交する様に、このフォームローラを支持する。そして、この様にフォームローラを支持した上記工具変位部材を、上記一方の面に沿う様に相対的に移動(被加工部材の軸方向並びに径方向に移動)させ、この一方の面に上記凹溝を形成する。
【0022】
又、上記工具変位部材を、回転式の工具交換機であるタレットを備えたものとし、このタレットに支持した複数のフォームローラにより、上記被加工部材の一方の面を加工(凹溝を形成)する事もできる。例えば2個のフォームローラで加工を行う場合には、一方のフォームローラにより、上記一方の面のうち、例えば被加工部材の径方向に関して内径側半部を加工すると共に、他方のフォームローラにより、同じく外径側部半部(残部)を加工する。この場合に、上記一方の面に押し付けた状態での、当該フォームローラの回転中心軸と上記被加工部材の中心軸とのなす角が、それぞれのフォームローラで互いに異なる様に、これら各フォームローラを上記タレットに支持する。より具体的には、上記内径側半部を加工する一方のフォームローラは、この一方のフォームローラによる加工時に、この内径側半部の加工範囲の径方向に関する略中央部分の法線とその中心軸とが略直交する様に、上記タレットに支持する。又、上記外径側半部を加工する他方のフォームローラは、この他方のフォームローラによる加工時に、この外径側半部の加工範囲の径方向に関する略中央部分の法線とその中心軸とが略直交する様に、上記タレットに支持する。そして、上記一方のフォームローラ(或は他方のフォームローラ)で加工を行った後、上記タレットを回転させ、上記他方のフォームローラ(或は一方のフォームローラ)で加工する事により、上記一方の面のうちで上記凹溝を形成すべき部分の全体に亙り、この凹溝を形成する。尚、3個以上のフォームローラを支持する場合にも、それぞれのフォームローラが加工を受け持つ部分と各フォームローラの回転中心軸との関係に応じて(例えば、加工部分の法線と回転中心軸とが直交乃至はそれに近い状態となる様に)、上記各フォームローラを上記タレットに支持する。
【発明の効果】
【0023】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法によれば、トラクション面である一方の面に形状精度の高い凹溝(所望の形状の凹溝)を安定的に、且つ、低コストで形成できる。
即ち、請求項1に記載した製造方法によれば、フォームローラ(転造工具)を上記一方の面に弾性部材を介して押し付ける為、このフォームローラを変位させる工具変位部材と上記一方の面との位置関係(凹溝の深さ方向に関する位置関係)が多少(例えば0.5mm程度)ずれたとしても(例えば、フォームローラの送り量や被加工部材のセット位置が多少ずれたとしても)、このずれを上記弾性部材により吸収できる(形成される凹溝の深さ方向に関するずれを抑えられる)。この為、上記位置関係(送り量)のずれに拘らず、上記凹溝を安定して精度良く形成できる(所望の形状の凹溝を安定して形成できる)。
又、請求項2に記載した製造方法によれば、フォームローラを上記一方の面に所定圧で押し付ける為、上記請求項1に記載した製造方法と同様に、このフォームローラを変位させる工具変位部材と上記一方の面との位置関係が多少ずれたとしても、上記押し付け力が所定圧に規制される事で、このずれが吸収される。この為、上記位置関係のずれに拘らず、上記凹溝を安定して精度良く形成できる。
【0024】
又、何れの製造方法の場合も、弾性部材を設ける事や、押し付け力を定圧にする為の押し付け装置を設けるだけで済む為、凹溝を形成する為の加工機のコストの増大も抑えられる。言い換えれば、この様な弾性部材や押し付け装置を、例えば汎用のNC旋盤に設ける事で、上述の様にずれを吸収する事ができる為、高精度で複雑、且つ、高価な加工機を必要としなくて済む。この為、トラクション面に所望の凹溝を形成したディスクやパワーローラを、安定的、且つ、低コストで量産できる。又、加工時間の経過に伴い、上記フォームローラが摩耗しても、この摩耗に伴うずれを、上述の位置関係(送り量)のずれと同様に吸収する事ができる。この為、このフォームローラの交換や、この摩耗に基づく位置関係の微調整をする手間も低減でき、この面からも、量産化、低コスト化を図れる。又、上記凹溝を、フォームローラによる転造加工に基づいて形成する為、この凹溝の形成と同時に、この凹溝を形成した部分の加工硬化を安定して行う事ができ、優れた耐久性を有する構造を低コストで得られる。尚、何れの製造方法の場合も、フォームローラのずれのうち、主として凹溝の深さ方向に関するずれを吸収する事を意図しているが、この深さ方向の以外のずれ、例えば幅方向のずれは略そのままとなる(吸収されない)。但し、多少幅方向にずれたとしても、凹溝の形成される位置が幅方向にずれるだけで(幅方向に関する形成位置が一方の面全体に亙って等しくずれるだけで)、トラクション特性やトラクション部での油膜形成に及ぼす悪影響は殆どない。
【0025】
尚、上述の様な凹溝を形成する作業を、上記一方の面に研削加工、又は、超仕上加工を施した後に行えば、この凹溝を形成した後に研削加工や超仕上加工を施す場合に比べ、この研削加工や超仕上加工の誤差(例えば被加工部材や砥石のセット誤差等)に伴う凹溝の深さのばらつきを低減できる。一方、上記凹溝を形成した後、超仕上加工又はショット加工(例えばショットピーニング加工)を施す事により、この凹溝の開口縁(凸部の端縁)を滑らかな曲面にすれば、トラクション部の油膜形成をより良好に保て、この面からも、トラクション特性(トラクション係数)の向上を図れる。又、上記フォームローラを、高硬度で耐摩耗性の優れたものとすれば、このフォームローラの寿命の確保を図れ、上述した工具摩耗に基づくずれを吸収できる事と相俟って、更なる低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を、ディスクにフォームローラを押し付けた状態で示す部分断面図。
【図2】フォームローラのみを取り出して、このフォームローラの径方向から見た状態で示す図。
【図3】工具変位部材の位置と形成される凹溝の溝深さとの関係の1例を示す線図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を、タレットにフォームローラを支持した状態で示す図。
【図5】ディスクにフォームローラを押し付けた状態を示す図で、(イ)は、図4の上側に設置されたフォームローラを押し付けた状態を、(ロ)は、図4の左下側に設置されたフォームローラを押し付けた状態を、それぞれ示している。
【図6】トロイダル型無段変速機の1例を示す断面図。
【図7】図6のA−A断面に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、入力側、出力側各ディスク1、6の入力側、出力側各内側面3、7とパワーローラ8(図6、7参照)の周面とのうちの少なくとも一方の面(少なくとも何れかのトラクション面)に、トラクション特性(トラクション係数)の向上を図る為の凹溝(図示は省略)を、高精度で、且つ、低コストで形成する方法にある。トロイダル型無段変速機の構造及び作用は、前述の図6〜7に示した従来構造と同様であるから、重複する図示並びに説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0028】
本例の場合は、トロイダル型無段変速機を構成するディスク15(図6の入力側ディスク1、出力側ディスク6に相当)の軸方向片側面16(図6の入力側内側面3、出力側内側面7に相当)に、例えば深さが1〜3μm程度の上記凹溝(微細溝)を形成する。この凹溝は、研削加工又は超仕上加工により平滑面とされた上記ディスク15の片側面16に、転造加工、即ち、図2に示す様なフォームローラ17を押し付けつつ、上記ディスク15を回転させる事により形成する。このフォームローラ17は、算盤の玉(断面を略菱形とした円盤)の如き形状を有するもので、ローラ支持部材18により回転自在に支持している。又、このローラ支持部材18は、1対の支持片19、19を互いに平行に固設しており、これら各支持片19の互いに対向する側面同士の間に上記フォームローラ17を、これら両側面に対し直交する軸αを中心とする回転を可能に支持している。
【0029】
そして、このフォームローラ17の表面のうちで、その回転中心軸αに対し直角方向となる部分には、上記片側面16に押し付けられる曲面部20、即ち、形成すべき凹溝の内面形状に対応する(凹凸が逆になった)外面形状を有する転造部を、全周に亙って設けている。この様なフォームローラ17は、高硬度で耐摩耗性の優れたもの、例えば超硬合金、チタン合金、セラミックス、ダイヤモンド等により造られたものとしている。又、上記曲面部20の曲率半径Rは、例えば0.05〜1mm(より好ましくは、0.1〜0.5mm、更に好ましくは、0.2〜0.3mm)としている。尚、この様な曲面部20の曲率半径Rは、形成される凹溝の形状(溝深さ、溝幅、溝ピッチ等)が、トロイダル型無段変速機の使用時にトラクション部に付与される押し付け力やこのトラクション部で必要とされる油膜の厚さ等との関係で必要なトラクション特性(トラクション係数)を得られるものとなる様に、設定している。
【0030】
又、本例の場合には、上述の様なフォームローラ17を支持した上記ローラ支持部材18を、工具変位部材21を構成する腕部22に対し、ばね(圧縮コイルばね、皿ばね等)、或は、ゴムの如きエラストマー、合成樹脂等の弾性部材23を介して支持している。この弾性部材23は、上記フォームローラ17の回転中心軸αに対し直交する方向で、且つ、このフォームローラ17を上記片側面16に近付ける方向の弾力を付与する。そして、この様な弾性部材22を介して上記工具変位部材20に支持した上記フォームローラ17を、回転中心軸βを中心に回転する上記ディスク15の片側面16に押し付けて、この片側面16に上記凹溝を形成する。
【0031】
尚、上記フォームローラ17は、上記ローラ支持部材18を介して上記工具変位部材21に、次の様な位置関係で支持している。即ち、上記ディスク15の片側面16のうちで、加工範囲kの略中央(片側面16の径方向に関する略中央)となる部分の法線Hと、上記フォームローラ17の回転中心軸αとが略直交する様に、このフォームローラ17を支持している。そして、この様な状態でフォームローラ17を支持した上記工具変位部材21を、上記片側面16に沿う様に相対的{被加工部材であるディスク15の軸方向(X方向)並びに径方向(Y方向)}に移動させ、回転するディスク15の片側面16に上記凹溝を形成する。この場合に上記フォームローラ17は、このディスク15の径方向に関し、内径側から外径側に移動させる事もできるし、外径側から内径側に移動させる事もできる。又、この場合に、上記ディスク15を回転させた状態で、上記フォームローラ17を径方向及び軸方向に関して、互いに関連させつつ(片側面16を倣いつつ)、連続的に移動させれば、この片側面16に上記凹溝を螺旋状に形成できる。又、径方向に関する移動と軸方向に関する押し付けとを繰り返す事で、上記片側面16に上記凹溝を同心円状に多数設ける事もできる。何れにしても、上記フォームローラ17の転造に基づいて形成される上記凹溝が、所望のピッチや所望の軌跡となる様に、上記ディスク15の回転速度とフォームローラ17のX方向並びにY方向の移動速度とを設定する。
【0032】
又、本例の場合には、前記弾性部材23のばね定数を、例えば図3に示す様な関係に規制している。即ち、位置制御により上記工具変位部材21を移動させ、上記フォームローラ17を上記片側面16に押し付けた状態で、この工具変位部材21と上記ディスク15との、上記凹溝の深さ方向に関する位置関係のずれ量(目標値と実際の値とのずれ量)をaとした場合に、形成される凹溝の深さのずれ量(目標値と実際の値とのずれ量)bが、上記ズレ量aに対し1/1000程度(b=a/1000)となる様に設定している。従って、上記工具変位部材21とディスク15との(凹溝の深さ方向に関する)位置関係が、上記フォームローラ17を位置制御により上記片側面16に押し付けた状態で、例えば目標値から0.5mm程度ずれたとしても、形成される凹溝の深さは、目標値から0.5μm程度ずれるだけで済む。
【0033】
上述の様な本例によれば、トラクション面である片側面16に形状精度の高い凹溝(所望の形状の凹溝)を安定的に、且つ、低コストで形成できる。
即ち、上記フォームローラ17を上記片側面16に弾性部材23を介して押し付ける為、上記工具変位部材21と上記ディスク15との位置関係(凹溝の深さ方向に関する位置関係)が多少(例えば0.5mm程度)ずれたとしても(例えば、工具変位部材21の送り量やディスク15のセット位置が多少ずれたとしても)、形成される凹溝の深さとの関係でこのずれを、上記弾性部材23により1/1000程度(例えば0.5μm程度)に低減できる(形成される凹溝の深さ方向に関するずれを1/1000程度に抑えられる)。この為、上記位置関係(送り量)のずれに拘らず、上記凹溝を安定して精度良く形成できる(所望の形状の凹溝を安定して形成できる)。
【0034】
しかも、上述の様な弾性部材23を設けるだけで、上述の様にずれを吸収できる為、上記凹溝を形成する為の加工機のコストが増大する事も抑えられる。言い換えれば、例えば汎用のNC旋盤に上記弾性部材23を設ける事で、上述の様にずれを吸収できる為、高精度で複雑、且つ、高価な加工機を必要としなくて済む。この為、トラクション面に所望の凹溝を形成したディスク15を、安定的、且つ、低コストで量産できる。又、加工時間の経過に伴ない、上記フォームローラ17が摩耗しても、この摩耗に伴うずれも、上述の位置関係(送り量)のずれと同様に吸収する事ができる。この為、このフォームローラ17の交換や、この摩耗に基づく位置関係の微調整をする手間も低減でき、この面からも、量産化、低コスト化を図れる。又、上記凹溝をフォームローラ17による転造加工に基づいて形成する為、この凹溝の形成と同時に、この凹溝を形成した部分の加工硬化を安定して行う事ができ、優れた耐久性を有する構造を低コストで得られる。
【0035】
又、上述の様なフォームローラ17により凹溝を形成する作業を、上記片側面16に研削加工、又は、超仕上げ加工を施した後に行っている為、この凹溝を形成した後に研削加工や超仕上加工を施す場合に比べ、この研削加工や超仕上加工の誤差(例えばディスク15や砥石のセット誤差等)に伴う凹溝の深さのばらつきを低減できる。尚、上述の様にフォームローラ17により片側面16に凹溝を形成した後、必要に応じて、この片側面16に超仕上加工又はショット加工(例えばショットピーニング加工)を施し、この凹溝の開口縁、即ち、隣り合う凹溝同士の間部分により構成される凸部の端縁を滑らかな曲面にする(丸める、クラウニングさせる)事もできる。この様に凹溝の開口縁(凸部の端縁)を滑らかな曲面にすれば、トラクション部の油膜形成をより良好に保て、この面からも、トラクション特性(トラクション係数)の向上を図れる。又、上記フォームローラ17を、高硬度で耐摩耗性の優れたものとしている為、このフォームローラ17の寿命の確保を図れ、上述した工具摩耗に基づくずれを吸収できる事と相俟って、更なる低コスト化を図れる。
【0036】
[実施の形態の第2例]
図4〜5は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、工具変位部材21aを、回転式の工具交換機であるタレット24を備えたものとしている。そして、このタレット24に、複数(本例の場合には2個)のフォームローラ17a、17bを支持し、これら複数のフォームローラ17a、17bにより、ディスク15の片側面16に凹溝(微細溝)を形成する様にしている。この様な本例の場合には、一方のフォームローラ17aにより、上記片側面16のうち、上記ディスク15の径方向に関して内径側半部に凹溝を形成すると共に、他方のフォームローラ17bにより、同じく外径側部半部(残部)に凹溝を形成する。この為に、これら各フォームローラ17a、17bを上記片側面16に押し付けた状態での、当該フォームローラ17a、17bの回転中心軸α1、α2と上記ディスク15の回転中心軸βとのなす角θ1、θ2が、それぞれのフォームローラ17a、17b毎に異なる様に、これら各フォームローラ17a、17bを上記タレット24に支持している。
【0037】
より具体的には、上記内径側半部を加工する上記一方のフォームローラ17aは、この一方のフォームローラ17aによる加工時に、この内径側半部の加工範囲k1の径方向に関する略中央部分の法線H1とその回転中心軸α1とが略直交する様に、上記タレット24に支持している。又、上記外径側半部を加工する他方のフォームローラ17bは、この他方のフォームローラ17bによる加工時に、この外径側半部の加工範囲k2の径方向に関する略中央部分の法線H2とその回転中心軸α2とが略直交する様に、上記タレット24に支持している。そして、上記一方のフォームローラ17a(或は他方のフォームローラ17b)で加工を行った後、上記タレット24を回転させ、上記他方のフォームローラ17b(或は一方のフォームローラ17a)で加工する事により、上記片側面16のうちで上記凹溝を形成すべき部分の全体に亙り、この凹溝を形成する。
【0038】
この様な本例の場合には、上記各フォームローラ17a、17bと片側面16との接触状態をより微細に調節できる{回転中心軸α1、α2と当該加工部分の法線との関係を、片側面16全体に亙って大きく(90度に近い値に)できる}。言い換えれば、上記各フォームローラ17a、17bの転造部を、上記片側面16に対して立たせた状態で加工できる(加工面に対して転造部が寝ない様にできる)。又、本例の場合も、前述した実施の形態の第1例と同様に、弾性部材23により位置ずれを吸収できる為、例えば上記タレット24を汎用のもの(高精度の位置決め機能を有しないもの)を用いても、上記凹溝を精度良く形成できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述した各例は、ディスク15の片側面に凹溝を形成する場合を示したが、パワーローラ8(図6、7参照)の周面に凹溝を形成する事もできる。又、上述した各例は、フォームローラ17、17a、17bに対し被加工部材であるディスク15を回転させて凹溝を形成する場合を示したが、被加工部材に対しフォームローラを回転(旋回)させて凹溝を形成する事もできる。又、上述した各例は、弾性部材23を介して支持したフォームローラ17、17a、17bにより凹溝を形成する場合を示したが、次の様に凹溝を形成する事もできる。即ち、図示は省略するが、形成すべき凹溝に対応する形状の転造部を有するフォームローラを、ディスクの片側面又はパワーローラの周面に所定圧で押し付けた状態{一方の面とフォームローラとの当接部(転造加工部)に常に所定の荷重が付与された状態}で、このディスク又はパワーローラとフォームローラとを相対変位させる事により、上記片側面又は周面に上記凹溝を形成する事もでる。尚、この様に所定圧で押し付ける為には、例えば、油圧式の押し付け装置により上記フォームローラを、油圧が常に所定の値になる様に制御しつつ押し付ける(定圧制御でフォームローラを押し付ける)。
【符号の説明】
【0040】
1 入力側ディスク
2 入力回転軸
3 入力側内側面
4 出力歯車
5 出力筒
6 出力側ディスク
7 出力側内側面
8 パワーローラ
9 トラニオン
10 支持軸
11 傾転軸
12 アクチュエータ
13 駆動軸
14 押圧装置
15 ディスク
16 片側面
17、17a、17b フォームローラ
18 ローラ支持部材
19 支持片
20 曲面部
21、21a 工具変位部材
22 腕部
23 弾性部材
24 タレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持された少なくとも1対のディスクと、軸方向に関してこれら各ディスクの軸方向片側面同士の間位置の円周方向に関して複数個所に設けられて、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させた複数のパワーローラとを備え、これら各パワーローラの周面と上記各ディスクの軸方向片側面とのうちの少なくとも一方の面に、トラクション特性の向上を図る為の凹溝を、当該面の周方向に形成したトロイダル型無段変速機の製造方法に於いて、
形成すべき凹溝に対応する形状の転造部を有するフォームローラを、このフォームローラを変位させる部材に対し弾性部材を介して支持し、且つ、この弾性部材を介して支持した上記フォームローラを上記一方の面に押し付けた状態で、これらフォームローラと一方の面とを相対変位させる事により、この一方の面に上記凹溝を形成する事を特徴とするトロイダル型無段変速機の製造方法。
【請求項2】
それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持された少なくとも1対のディスクと、軸方向に関してこれら各ディスクの軸方向片側面同士の間位置の円周方向に関して複数個所に設けられて、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させた複数のパワーローラとを備え、これら各パワーローラの周面と上記各ディスクの軸方向片側面とのうちの少なくとも一方の面に、トラクション特性の向上を図る為の凹溝を、当該面の周方向に形成したトロイダル型無段変速機の製造方法に於いて、
形成すべき凹溝に対応する形状の転造部を有するフォームローラを上記一方の面に所定圧で押し付けた状態で、これらフォームローラと一方の面とを相対変位させる事により、この一方の面に上記凹溝を形成する事を特徴とするトロイダル型無段変速機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−173130(P2011−173130A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37057(P2010−37057)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】