説明

トロポロン化合物および精油を含むオーラルケア組成物

【課題】口腔の疾患または状態を予防または治療するためのオーラルケア組成物の提供。
【解決手段】(a)有効量の式(I)


の化合物;(b)(i)組成物の重量で約0.064%乃至約2.0%の量で存在するチモール;(ii)組成物の重量で約0.060%乃至約2.0%の量で存在するサリチル酸メチル;(iii)組成物の重量で約0.092%乃至約2.0%の量で存在するユーカリプトール;および(iv)組成物の重量で約0.042%乃至約2.0%の量で存在するメントール;を含む有効量の精油の組み合わせ;および(c)有効量の薬学的に受容できる口腔用キャリヤー;を含むオーラルケア組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはオーラルケア組成物、さらに特定的には置換されたトロポロン化合物および精油を含むオーラルケア組成物、およびオーラルケアのためにこのものを使用する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔の悪臭、歯垢、歯肉炎、歯周病、および歯の変色はすべて、多くの人々を襲う望ましくない状態である。口臭(halitosis)または悪臭のする呼気(bad breath)としても公知の最初の口腔の悪臭は、おおまかに米国において2ないし9千万人を悩ますと見積もられてきた。一般に、口中の嫌気性細菌、特にグラム陰性嫌気性細菌、の存在がこの状態の一因となると考えられる。微生物によって引き起こされるその他の口腔状態には、歯周病、齲蝕、炎症などが包含される。
【0003】
歯周病は、成人における歯の損失の主原因であり、年令12歳の若さの人々に現れることができる。歯周病は、歯周組織に影響を与えるが、この歯周組織は、歯の周囲の取り囲み支えている組織(すなわち歯周靭帯、歯肉、および歯槽骨)である。歯肉炎および歯周炎は、各々歯肉およびより深い歯周組織の疾患である。歯周病は、一般に歯の上の歯垢の集積に関連する。歯は、唾液タンパク様物質(薄膜)で被覆され、その後この被膜に連鎖球菌(streptococci)が接着する。歯肉炎は、一般に歯垢によって引き起こされ、そして歯周炎は、歯周ポケットまたは歯肉と歯の根との間の空間に広がる感染によって引き起こされる。
【0004】
練り歯磨き、含嗽剤、リンス剤および歯磨きゲルを包含する現今のオーラルケア組成物の多くは、口腔を清浄化し、そして病原微生物を殺すように製剤化される。このようなオーラルケア組成物は、典型的には、口腔の悪臭、歯周病およびその他の望ましくない口腔状態の開始および進行の両方の一因となる微生物を抑制するために1つまたはそれ以上の抗菌剤を用いて製剤化される。現今のオーラルケア組成物は、抗菌剤を含み、そして抗菌剤の反応速度論を最大にするように製剤化される。抗菌剤は、口臭の有効な予防、口腔微生物の根絶、および、歯垢および歯肉炎の浸透、減少および除去のために溶解させられる。
【0005】
一つの周知の防腐剤は、精油としても公知のチモールであり、このものは、その抗菌活性のために一連のオーラルケア製剤において利用される。特にチモールは、所望の有利な治療効果を与えるために十分な量で含嗽剤のような口腔衛生組成物中に利用されてきた。リステリン(LISTERINE)(登録商標)ブランドの口腔リンスは、100年以上何百万人もの人々によって使用されてきて、歯垢、歯肉炎および口臭の原因である口腔内の微生物を殺すのに有効であることが証明されてきた周知の防腐的含嗽剤である。チモールおよびサリチル酸メチル、メントールおよびユーカリプトールのようなその他の精油は、リステリン(LISTERINE)(登録商標)のような防腐的口腔リンス剤における活性成分(例えば抗菌剤)である。少量でさえこれらの精油は有効な抗菌剤である。いずれかの特定の理論に限定されることなく、リステリン(LISTERINE)(登録商標)のような防腐的含嗽剤の効力および味は、これらの4種の活性薬剤の溶解および送達速度論に帰すことができると考えられる。
【0006】
まだ、有効な送達および防腐有効性のために好ましい化学的安定性および溶解性を示しながら好ましい抗菌速度論を有する、有効なオーラルケア化合物およびこれを含有する含嗽剤またはリンスのようなオーラルケア組成物を提供する必要がある。まだ、歯垢、歯肉炎およびその他の口腔内の望ましくない口腔状態の原因となる病原性口腔微生物の存在を除去または抑制することによってヒトを含む温血動物における口腔の疾患および状態を予防または治療するために有効であるオーラルケア組成物および化合物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒトを含む温血動物における口腔の疾患または状態を予防または治療するためのオーラルケア組成物およびこれを使用する方法に関する。一般に、本オーラルケア組成物は、口腔内の有害な病原性口腔内微生物の存在を抑制または除去するために有効な量の1つまたはそれ以上の精油と組み合わせた置換されたトロポロン化合物を含む。本オーラルケア組成物は、なかんずく歯垢、歯肉疾患、およ口腔の悪臭、を予防するために有用な高水準の抗菌速度論および効力を提供する。さらに、本オーラルケア組成物は、練り歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、含嗽剤、ロゼンジ、チューインガム、歯磨き(tooth)ストリップ、糸ようじ、口内消耗性フィルム(orally consumable film)および口内スプレー剤を包含する(但しこれらに限定はされない)一連のオーラルケア製品に製剤化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの特定の態様においては、
(a)オーラルケア有効量の少なくとも1つの式(I)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、各々独立して水素、ヒドロキシ、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルカリール基、アルクシクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、場合により1ないし3個のハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、場合により1ないし3個のハロゲンで置換されていてもよい芳香族基、およびカルボニル基から成る群から選択される)
の化合物、およびその異性体および薬学的に受容できる塩;
(b)少なくとも1つの精油;および
(c)薬学的に受容できる口腔用キャリヤー;
を含むオーラルケア組成物が提供される。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、本オーラルケア組成物は、オーラルケア有効量の少なくとも1つの、R2、R3、およびR5が各々独立して水素、1ないし6個の炭素を有するアルキル基、1ないし6個の炭素を有するヒドロキシアルキル基、および“アルコキシ”部分および“アルキル”部分が各々1ないし6個の炭素を有するアルコキシアルキル基から成る群から選択され、そしてR1、およびR4が各々水素である式(I)の化合物を含む。
【0010】
好ましくは精油は、チモール、ユーカリプトール、メントール、サリチル酸メチルおよびそれらの組み合わせ物から成る群から選択される。
【0011】
本発明の別の態様においては、ヒトを含む温血動物にオーラルケア有効量の本発明のオーラルケア組成物を投与することを含む、口腔の疾患または状態を予防または治療するための方法が提供される。
【0012】
本発明は、微生物、特に口腔の悪臭、歯垢形成などを包含する口腔内の望ましくない疾患または状態、およびそれに続くであろうその結果としての歯および歯肉疾患、を生じる原因となる口腔内微生物、に対する抗菌効果を有するオーラルケア組成物を目的とする。本オーラルケア組成物は、例えば含嗽剤、練り歯磨き、歯磨き粉、歯磨きクリーム、糸ようじ、液体、ゲル、チューインガム、液体を中心に充填したガム(liquid center filled gums)、ミント、ロゼンジ、口内消耗性フィルムなどから選択される形態であることができる。本発明の一つの好ましい態様は、1つまたはそれ以上の精油と組み合わせた有効量の少なくとも1つの抗菌活性を有する置換されたトロポロン化合物を含有するオーラルケア組成物を目的とする。本発明の特に好ましい態様においては、少なくとも1つの精油と組み合わせた有効量の少なくとも1つの置換されたトロポロン化合物を含有するオーラルケア組成物、好ましくは含嗽剤、が提供される。
【0013】
精油は、合成であることができるかまたは蒸留、圧搾または抽出によって植物から引き出されることができ、そして通常それらが得られるその植物の臭気またはフレーバーを運ぶ揮発性の芳香油である。本発明のオーラルケア組成物において、精油は、防腐活性を与える。これらの精油のいくつかはまた、矯味矯臭剤としても作用する。本発明の精油には、チモール、メントール、サリチル酸メチル(ウインターグリーン油)、ユーカリプトール、カルバクロール、ショウノウ、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン(osimen)、n−デシルアルコール、シトロネル(citronel)、a−サルピネオール(salpineol)、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナラオール(ethyl linalaol)、サフロラバニリン(safrola vanillin)、スペアミント油、ハッカ油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、月桂樹油(laurel oil)、ニオイヒバ油、ゲリアノール(gerianol)、ベルベノーン、アニス油、ベイ油、ベンズアルデヒド、ベルガモット油、苦扁桃、クロロチモール、桂皮アルデヒド、シトロネラ油、チョウジ油、コールタール、ユーカリ油、グアヤコール、ラベンダー油、カラシ油、フェノール、サリチル酸フェニル、パイン油、マツ葉油、サッサフラス油、スパイク(spike lavender)油、ストラックス、タイム油、トルーバルサム、テレビン油、チョウジ油、およびそれらの組み合わせ物があるが、これらに限定はされない。好ましい精油は、チモール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントールおよびそれらの組み合わせ物類から選択される。
【0014】
本発明は、口腔を清浄化しそして/または歯肉炎、歯周炎、口腔の悪臭、齲蝕などを包含する(但しこれらに限定はされない)口腔の疾患および状態を治療するために有効である。本発明のオーラルケア組成物は、微生物、特に口腔の悪臭ならびに歯垢および歯石の形成、そしてそれに続くであろう結果として生じる歯及び歯肉疾患、の原因となるフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、アクチノミセス・ビスコサス(Actinomyces viscosus)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、ポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、カプノシトファーガ(Capnocytophaga)、エイケネラ(Eikenella)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を包含する(但しこれらに限定はされない)病原性口腔微生物、に対する高度の抗菌有効性を提供する。
【0015】
本発明はまた、口腔にオーラルケア有効量の本発明のオーラルケア組成物を適用することによって、ヒトを含む温血動物において口腔を清浄化し、そして/または口腔の疾患または状態を治療または予防する方法をも目的とする。
【0016】
本明細書中で使用するとき、用語“口腔の疾患または状態”は、ヒトを含む温血動物における歯周病、歯肉炎、歯周炎、歯周症、成人および若年性歯周炎、およびその他の口腔内の組織の炎症状態、プラス齲蝕、壊死性潰瘍性歯肉炎、および口腔の悪臭または不愉快な舌触りのようなその他の状態、を包含する口腔の疾患を包含することを意味するが、但しこれらに限定はされない。本発明によって提供される組成物ならびに治療およびオーラルケアの方法は、ヒトを含む温血動物における歯周病(歯肉炎および/または歯周炎)および口腔の悪臭を予防または治療するために特に有効である。
【0017】
本発明の一つの特定の態様においては、
(a)オーラルケア有効量の少なくとも1つの式(I)
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、各々独立して水素、ヒドロキシ、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルカリール基、アルクシクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、場合により1ないし3個のハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、場合により1ないし3個のハロゲンで置換されていてもよい芳香族基、およびカルボニル基から成る群から選択される)
の化合物、およびその異性体および薬学的に受容できる塩;
(b)少なくとも1つの精油;および
(c)薬学的に受容できる口腔用キャリヤー;
を含むオーラルケア組成物が提供される。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、本オーラルケア組成物は、オーラルケア有効量の少なくとも1つの、R2、R3、およびR5が各々独立して水素、1ないし6個の炭素を有するアルキル基、1ないし6個の炭素を有するヒドロキシアルキル基、および“アルコキシ”部分および“アルキル”部分が各々1ないし6個の炭素を有するアルコキシアルキル基から成る群から選択され、そしてR1、およびR4が各々水素である式(I)の化合物を含む。
【0019】
所望の抗菌活性を有する式(I)の化合物の異性体、その混合物類は、本発明の範囲内に包含される。
【0020】
さらに、水和物および薬学的に受容できる有機溶媒との溶媒和物、ならびに本発明の化合物のプロドラッグもまた、本発明によって包含される。
【0021】
さらに、式(I)の化合物またはその薬学的に受容できる塩は、水または種々の溶媒との付加生成物の形で存在することができ、そしてこれらの付加生成物もまた本発明の範囲内に包含される。
【0022】
用語“薬学的に受容できる塩”は、無機または有機塩基および無機または有機酸を包含する薬学的に受容できる無毒性塩基または酸から製造される塩を指す。これらは、当技術分野で周知で、例としてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどを包含する種々の有機および無機陽イオン、並びに塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、酢酸塩、マレイン酸塩、蓚酸塩などのような陰イオンから誘導されることができる。本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機および有機酸を包含する薬学的に受容できる無毒性酸から製造することができる。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモイン酸(pamoic)、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などがある。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などからの塩がある。
【0023】
特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウム塩である。薬学的に受容できる有機無毒性塩基から誘導される塩としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどのような、第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを包含する置換アミン、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂の塩がある。当業者は、種々の無毒性の薬学的に受容できる付加塩を認識するであろう。
【0024】
用語“アルキル”は、好ましくは約1ないし18個の炭素原子、より好ましくは約1ないし14個の炭素原子、さらに好ましくは約1ないし6個の炭素原子、を有する、一価の直鎖および分枝鎖状アルキル基を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチルなどのような基によって例示される。
【0025】
用語“アルキレン”は、直鎖および分枝鎖状であることができる好ましくは約1ないし18個の炭素原子、そしてより好ましくは約1ないし14個の炭素原子、を有する二価のアルキレン基を指す。この用語は、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2
)、プロピレン異性体(例えば−CH2CH2CH2−および−CH(CH3)CH2−)な
どのような基によって例示される。
【0026】
用語“アルケニレン”は、直鎖または分枝鎖状であることができて、少なくとも1個、好ましくは1ないし2個、のアルケニル不飽和部位を有する、好ましくは約2ないし18個の炭素原子、より好ましくは約2ないし14個の炭素原子、を有する二価のアルケニレン基を指す。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば−CH=CHCH2−および−C(CH3)=CH−および−CH=C(CH3)−)などのような基によって例示される。
【0027】
用語“アルカリール”は、好ましくはアルキレン部分に約1ないし18個の炭素原子、そしてアリール部分に約6ないし14個を有する−アルキレン−アリール基を指す。このようなアルカリール基は、ベンジル、フェネチルなどによって例示される。
【0028】
用語“アルクシクロアルキル”は、好ましくはアルキレン部分に約1ないし18個の炭素原子、そしてシクロアルキル部分に約3ないし14個を有する−アルキレン−シクロアルキル−基を指す。このようなアルクシクロアルキル基は、−CH2−シクロプロピル、
−CH2−シクロペンチル、−CH2CH2−シクロヘキシルなどによって例示される。
【0029】
用語“アルコキシ”は、基“アルキル−O−”を指す。アルコキシ基には、例としてメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシなどがあり、好ましくは約1ないし6個の炭素原子を有する。用語“アルコキシアルキル”は、基“アルキル−O−アルキル”を指し、好ましくはこの基のアルキル部分は、1ないし6個の炭素原子を有し、この基のアルコキシ部分は、1ないし6個の炭素原子を有する。
【0030】
用語“アルケニル”は、好ましくは約2ないし18個の炭素原子を有し、より好ましくは約2ないし14個の炭素原子を有し、そして少なくとも1個、そして好ましくは1ないし2個、のアルケニル不飽和部位を有するアルケニル基を指す。このようなアルケニル基は、エテニル(−CH=CH2)、n−プロペニル(−CH2CH=CH2)、イソプロペ
ニル(−C(CH3)=CH2)などによって例示される。
【0031】
用語“アルキニル”は、好ましくは約2ないし18個の炭素原子、より好ましくは約2ないし14個の炭素原子、を有し、そして少なくとも1個、好ましくは1ないし2個、のアルキニル不飽和部位を有するアルキニル基を指す。このようなアルキニル基は、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CH2−C≡CH)などによって例示される。
【0032】
用語“アリール”は、単環(例えばフェニル)または縮合多環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する約6ないし18個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基を指す。アリールの例としては、フェニル、ナフチルなどがある。個々の置換基についての定義によって他に束縛されない限り、このようなアリール基は、場合によりアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシなどから成る群から選択される1ないし3個の置換基で置換されていることができる。
【0033】
用語“シクロアルキル”は、場合により1ないし3個のアルキル基で置換されていることができる単環または縮合多環を有する約3ないし18個の炭素原子の環状アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基には例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロオクチルなど、またはアダマンタニルなどのような多環構造がある。
【0034】
用語“シクロアルケニル”は、場合により1ないし3個のアルキル基で置換されていることができる、単環および少なくとも1個の内部不飽和点を有する約4ないし18個の炭素原子の環状アルケニル基を指す。適当なシクロアルケニル基の例としては、例えばシクロペンタ−3−エニル、シクロヘキサ−2−エニル、シクロオクタ−3−エニルなどがある。
【0035】
本発明のオーラルケア組成物に使用するための好ましい式(I)のトロポロン化合物としては、2−ヒドロキシ−7−メチル−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン;2−ヒドロキシ−7−ヘプチル−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン;2−ヒドロキシ−7−(メトキシメチル)−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン;2−ヒドロキシ−4−メチル−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン;2−ヒドロキシ−4−ジメチルエチル−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン;および2−ヒドロキシ−7−(ヘキシルオキシメチル)−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン、およびそれらの組み合わせ物から成る群から選択される化合物がある。
【0036】
上記の化合物のいくつかは、塩の形で存在することができることは、理解されるであろう。このような場合には、これらの化合物は、イオン化されて、適宜薬学的に受容できる陰イオンまたは陽イオンを伴うことができる。最も一般的には陽イオンは、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムのような一価の物質であるが、それはまた、薬学的に受容できる一価陰イオンと組み合わせた多価陽イオン、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、硝酸塩、スルホン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、コハク酸塩、パモエート、または類似の陰イオンと組み合わせたカルシウム;このような陰イオンと組み合わせたマグネシウム;このような陰イオンと組み合わせた亜鉛;などであることもできる。
【0037】
用語“オーラルケア組成物”は、歯の表面および/または口腔粘膜組織に接触して所望の口腔活性を示すのに十分な時間、口腔内に保持される製品を包含することを意味する。本明細書中で使用するときの用語“オーラルケア有効量”は、安全な医学的および歯科的判断の範囲内で副作用を引き起こすことなく、口腔の疾患または状態を予防または治療するため、または口腔内の望ましくない微生物の存在を有意に除去するかまたは少なくとも抑制するために十分な、少なくとも1つのトロポロン化合物の量であることを意味する。本発明のトロポロン化合物のオーラルケア有効量は、治療する特定の状態(例えば口腔の疾患または悪臭を治療すること)、治療される患者の年令および身体の状態、その状態の重篤性、治療の期間、併用療法の性質、使用するトロポロン化合物の特定の形(すなわち塩)、およびトロポロン化合物を適用する特定のキャリヤーによって変動するであろう。
【0038】
本発明のオーラルケア組成物中のトロポロン化合物の濃度は、組織および歯に接触するその組成物の効力における差異のために、並びに一般的に使用されるその組成物の量のために、トロポロン化合物を歯肉/粘膜組織および/または歯に適用するために使用する組成物の型(例えば練り歯磨き、含嗽剤およびリンス、ロゼンジ、ガムなど)に依る。濃度はまた、治療する疾患または状態にも依る。
【0039】
好ましい態様においては、本発明のオーラルケア組成物は、オーラルケア組成物の全重量に基づいて重量で約0.001%ないし10.0%、好ましくは重量で約0.01%ない
し5.0%、より好ましくは重量で約0.1%ないし2.0%、の本発明のトロポロン化合
物を含むことができて、本製剤の残部は、精油、キャリヤーおよびオーラルケア組成物成分として当技術分野で公知のその他の物質である。このような付加的成分としては、緩衝剤、界面活性剤、可溶化剤、防腐剤、乳化剤、等張化剤(isotonizers)、安定剤、pH調整剤、甘味剤、着色料などを包含することができる。
【0040】
本発明のオーラルケア組成物は、活性成分として1つまたはそれ以上の抗菌的に有効な精油と組み合わせて抗菌有効量の式(I)の構造を有する抗菌化合物を含有する。このような抗菌的に有効な精油には、チモール、メントール、サリチル酸メチル(ウインターグリーン油)、ユーカリプトール、カルバクロール、ショウノウ、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン(osimen)、n−デシルアルコール、シトロネル(citronel)、a−サルピネオール(salpineol)、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナラオール(ethyl linalaol)、サフロラバニリン(safrola vanillin)、スペアミント油、ハッカ油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、月桂樹油(laurel oil)、ニオイヒバ油、ゲリアノール(gerianol)、ベルベノーン、アニス油、ベイ油、ベンズアルデヒド、ベルガモット油、苦扁桃、クロロチモール、桂皮アルデヒド、シトロネラ油、チョウジ油、コールタール、ユーカリ油、グアヤコール、ラベンダー油、カラシ油、フェノール、サリチル酸フェニル、パイン油、マツ葉油、サッサフラス油、スパイク(spike lavender)油、ストラックス、タイム油、トルーバルサム、テレビン油、チョウジ油などを包含することができる。本組成物は、一般に水中にこれらの成分を含有する溶液の形をとる。
【0041】
式(I)の抗菌化合物および抗菌精油、好ましくはチモール、メントール、ユーカリプトール、サリチル酸メチル、およびそれらの組み合わせ物類から成る群から選択されるもの、の混合物は、相乗的抗菌効果を与える。
【0042】
本オーラルケア組成物においては、精油を、口腔における口腔微生物の除去または抑制を包含するオーラルケアを提供するために十分な量使用する。一般に精油は、組成物の全重量に基づいて重量で約0.001%ないし8.0%の量で;好ましくは重量で約0.004%ないし3.0%の量で;より好ましくは重量で約0.007%ないし2.0%の量で;本発明のオーラルケア組成物中にあることができる。本オーラルケア組成物中に使用する量は、組成物の形に依って変動することができて、当業者によって容易に確かめられることができる。本発明の組成物は、一般にチモールおよび/または1つまたはそれ以上の他の精油を含有する。好ましくは、付加的な精油は、ユーカリプトール、メントールまたはサリチル酸メチル、またはそれらの混合物類である。最も好ましくは、本組成物は、これらの4種の精油のすべてを含有する。
【0043】
化学式5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノールによっても公知のチモール((CH32CHC63(CH3)OH;イソプロピル−m−クレゾール)、は、有効な抗菌剤であり、そして典型的にはThymus vulgaris LabiataeおよびMonarda punctata Labiataeの精油から得られる。チモールは、芳香性の臭気と味をもつ白色結晶性粉末であって、有機溶媒に可溶性であるが、脱イオン水にはわずかに可溶性であるだけである。チモールは、組成物の全重量に基づいて重量で約0.001%ないし2.0%の量で;好ましくは重量で約0.01%ないし0.6%の量で;より好ましくは重量で約0.02%ないし0.5%の量で;本発明のオーラルケア組成物中にあることができる。
【0044】
メントール(CH369(C37)OH;ヘキシルヒドロキシチモール)はまた、防腐性をも有し、冷味、刺痛知覚を与える。メントールは、主にハッカ(Mentha arvensis)の油から単離される。その市販の形では、メントールは、この油の冷却を含む工程から得られるL−メントール結晶として入手可能である。通常約40%ないし約65%のメントールを含有するハッカ油の分別蒸留は、もう一つの重要なメントール源である。合成によるL−メントールもまた入手可能である。メントールは、組成物の全重量に基づいて重量で約0.001%ないし2.0%の量で;好ましくは重量で約0.01%ないし0.7%の量で;より好ましくは重量で約0.01%ないし0.6%の量で;本発明のオーラルケア組成物中にあることができる。
【0045】
防腐性を有するもう一つの精油であるユーカリプトール(C1018O;シネオール)は、ユーカリの木に由来する。ユーカリプトールは、冷味、香辛料のような風味および防腐活性を与えるテルペンエーテルである。ショウノウ様の香りと冷却風味を有するので、この精油は、しばしば医薬効果を添えるために糖剤の製剤においてメントールのような他の精油と組み合わせられる。メントールとユーカリプトールとの組み合わせは、広く使用されている。メントール−ユーカリプトール組み合わせの特に好ましい用途には、本発明に従えば、練り歯磨きまたは歯磨きゲルのような歯磨き剤がある。ユーカリプトールは、組成物の全重量に基づいて重量で約0.001%ないし2.0%の量で;好ましくは重量で0.005%ないし0.5%の量で;より好ましくは重量で約0.007%ないし0.4%の量で;本発明のオーラルケア組成物中にあることができる。
【0046】
ウインターグリーン油としても公知のサリチル酸メチル(C64OHCOOCH3)は、多くの精油中の主成分であり、ウインターグリーン(Gaultheria procumbens)およびスィートバーチ(sweet birch)(Betula lenta)の油の約99%を構成する。特有の清涼性芳香を有するサリチル酸メチルは、含嗽剤、チューインガムおよびその他の口腔および医薬製剤中に広く使用される。サリチル酸メチルは、その抗菌機能に加えて同時にオーラルケア組成物に矯味矯臭および感覚刺激性香味傾向を与えることができる。サリチル酸メチルは、組成物の全重量に基づいて重量で約0.001%ないし2.0%の量で;好ましくは重量で約0.004%ないし0.6%の量で;より好ましくは重量で約0.01%ないし0.6%の量で;本発明のオーラルケア組成物中にあることができる。
【0047】
本発明のオーラルケア組成物は、オーラルケア組成物の全重量に基づいて重量で下記のパーセンテージの精油を含有することができる:(a)重量で約0.001%ないし2.0%のチモール;(b)重量で約0.001%ないし2.0%のメントール;(c)重量で約0.001%ないし2.0%のユーカリプトール;および(d)重量で約0.001%ないし2.0%のサリチル酸メチル。
【0048】
本発明のオーラルケア組成物の好ましい態様においては、本オーラルケア組成物は、オーラルケア組成物の全重量に基づいて重量で下記のパーセンテージの精油を含有することができる:(a)重量で約0.01%ないし0.6%のチモール;(b)重量で約0.01%ないし0.7%のメントール;(c)重量で約0.005%ないし0.5%のユーカリプトール;および(d)重量で約0.004%ないし0.6%のサリチル酸メチル。
【0049】
本発明のオーラルケア組成物のより好ましい態様においては、本オーラルケア組成物は、オーラルケア組成物の全重量に基づいて重量で下記のパーセンテージの精油を含有することができる:(a)重量で約0.02%ないし0.5%のチモール;(b)重量で約0.01%ないし0.6%のメントール;(c)重量で約0.007%ないし0.4%のユーカリプトール;および(d)重量で約0.01%ないし0.6%のサリチル酸メチル。
【0050】
式(I)のトロポロン化合物、およびチモールおよび/または少なくとも1つの他の精油を含有する本発明のオーラルケア組成物は、有効な抗菌活性を与える。本オーラルケア組成物は、所望ならばさらに他の抗菌剤を含むことができる。このような典型的な抗菌剤としては、クロルヘキシジン、キトサン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム(cetylpyridiumchloride)、臭化ドミフェンなどがある。本発明の組成物において使用するこのような抗菌剤の量は、当業者が容易に決定することができる。本発明のオーラルケア組成物のための、そして特に精油含有組成物のための、キャリヤーは、水性媒質である。この水性媒質は、水−アルコール混合物、一般には水−エタノールまたは水−1−プロパノール混合物であることができる。エタノール含量水準は、抗菌剤を可溶化して送達するために、そして透明な、美的に魅力ある液体媒質を与えるために、組成物の全重量に基づいて重量で約0.01%ないし70%であることができる。本オーラルケア組成物、特に含嗽剤組成物、の感覚刺激の増強のための好ましいエタノール量は、所望ならばこれより少ない量を使用することもできるけれども、重量で約0.1%ないし30%、より好ましくは重量で約20%ないし30%、の範囲であることができる。別法として水性媒質は、水である。
【0051】
本オーラルケア組成物は、例えば、含嗽剤またはリンス、練り歯磨き、歯磨き粉、練り歯磨き剤、糸ようじ、液体、ゲル、チューインガム、液体を中心に充填したガム状物、ミント、ロゼンジ、口腔用フィルム形成歯磨き剤、口内消耗性フィルムなどから成る群から選択することができる。
【0052】
本発明のオーラルケア組成物は、製剤の他の成分を適応させるために適当な量の薬学的に受容できる口腔用キャリヤーを含む。用語“薬学的に受容できる口腔用キャリヤー”は、口腔内の意図した標的への送達のために活性成分と混合することができ、そしてヒトを含む温血動物に害を引き起こさないであろう賦形剤を指す。この口腔用キャリヤーにはさらに、実質的に本組成物の安定性および/または、本発明の組成物および方法に従ってヒトを含む温血動物の口腔の疾患または状態を予防または治療することを包含するオーラルケアのための効力、を低下させるであろうような相互作用なしに混合することができる組成物の成分が包含される。
【0053】
本オーラルケア組成物の薬学的に受容できる口腔用キャリヤーは、口腔投与に適する1つまたはそれ以上の適合性固体もしくは液体充填剤希釈剤またはカプセル化物質を包含することができる。本発明のキャリヤーまたは添加剤は、送達の様式に適当ないずれかの形、例えば溶液、コロイド状分散物、エマルジョン、懸濁液、リンス、ゲル、泡沫、粉末、固体など、であることができて、練り歯磨き(ゲルおよび歯肉下適用のためのゲルを包含する)、含嗽剤およびリンス、口内スプレー剤、チューインガム、口内消耗性フィルムおよびロゼンジ(ブレスミントを包含する)の通常で一般的な成分を包含することができる。本発明の組成物の製造のために好適なキャリヤーは、当技術分野においては周知である。それらの選択は、味のコスト、および貯蔵安定性などのような二次的な要件に依るであろう。
【0054】
本発明の口腔用組成物中に包含されることができるキャリヤーの型は、研磨剤、フッ化物イオン、増粘剤、保湿剤、矯味矯臭および甘味剤、抗結石剤、アルカリ金属重炭酸塩、非イオンおよび両性界面活性剤ならびに陰イオン界面活性剤を包含する界面活性剤、および水、二酸化チタン、抗炎症剤などのような種々雑多のキャリヤーである。
【0055】
好ましい本発明の組成物は、含嗽剤、リンスおよび口内スプレー剤である。このような含嗽剤、リンスおよび口内スプレー剤の成分には、典型的には重量で約45%ないし95%の量で存在する水、並びに70%までのエタノール、50%までの保湿剤、約0.01%ないし7%の界面活性剤、約0.04%ないし2%の矯味矯臭剤、約0.1%ないし3%の甘味剤および約0.001%ないし0.5%の着色料のうちの1またはそれ以上、が包含される。このような含嗽剤、リンスおよび口内スプレー剤はまた、約0.05%ないし0.3%の齲蝕予防剤(例えばフッ化物イオン)および約0.1%ないし3%の抗結石剤のうちの1またはそれ以上をも包含することができる。
【0056】
その他の好ましい本発明の組成物は、歯磨き溶液である。このような歯磨き溶液の成分には、一般に、本オーラルケア組成物の全重量に基づいて重量で約90%ないし99%の水、並びに約0.01%ないし0.5%の防腐剤、5%までの増粘剤、約0.1%ないし3%の矯味矯臭剤および5%までの界面活性剤のうちの1またはそれ以上、が包含される。
【0057】
その他の好ましい本発明の組成物は、口内消耗性フィルムまたは薄手ストリップである。口内消耗性フィルムは、典型的には迅速に溶解する非自己粘着性ポリマーを基剤とする薄手フィルム賦形剤を含む。このような組成物は、典型的には口腔に投与されて、そこでそれらは、唾液と接触するやいなや迅速に溶解して、活性成分を迅速に送達する。Morris PlainsのPFIZER,Inc.、ニュージャージー、によって製造されるリステリン(LISTERINE)(登録商標)ポケットパックス(POCKETPAKS)(商標)ブランドのオーラルケア用ストリップ製品は、おそらく、治療剤、特にリステリン(LISTERINE)(登録商標)精油の形の抗菌剤、を口腔に送達するのに有効な最も成功した食用フィルム組成物の例である。このような組成物の成分としては一般に、重量で75%までの量の水、25%までの量の、プルランを包含する(但しこれに限定はされない)水溶性フィルム形成ポリマー、約0.01%ないし10%の量の矯味矯臭剤、5%までの量の界面活性剤、および場合により約0.01%ないし5%の量の銅塩が包含される。
【0058】
その他の好ましい本発明の組成物は、練り歯磨き、歯磨きゲルおよび歯磨き粉のような歯磨き剤の形である。このような練り歯磨きおよび歯磨きゲルの成分としては一般に、一般に重量で約10%ないし50%の歯科用研磨剤、約0.5%ないし10%の陰イオン性、非イオン性または両性イオン性洗剤のような界面活性剤、約0.1%ないし5%の増粘剤、約10%ないし55%の保湿剤、約0.04%ないし2%の矯味矯臭剤、約0.1%ないし3%の甘味剤、0.01%ないし0.5%の着色料、および約2%ないし45%の水が包含される。このような練り歯磨きまたは歯磨きゲルはまた、約0.05%ないし0.3%の齲蝕予防剤(例えばフッ化物イオン)および約0.1%ないし13%の抗結石剤のうちの1またはそれ以上をも包含することができる。この液体および固体は、加圧容器またはコラプシブルチューブから押し出すことができるクリーム状またはゲル化塊を形成するような割合にされる。歯磨き粉は、もちろん実質的にすべて非液体の成分を含有する。
【0059】
その他の好ましい本発明の組成物は、マイクロカプセル(microcaps)またはより一般的にはゲルビーズとして公知の形であり、これは、一般に重量で約0.1%ないし10%の量の矯味矯臭剤、約1%ないし60%の量の親油性充填剤、約0.1%ないし5%の量の乳化剤および約0.01%ないし3%の量の甘味剤を含む。
【0060】
チューインガム組成物は、典型的には重量で約50%ないし99%のガム基剤、約0.4%ないし2%の矯味矯臭剤および約0.01%ないし5%の甘味剤のうちの1またはそれ以上を包含する。
【0061】
本明細書中で使用するときの用語“ロゼンジ”は:ブレスミント、トローチ、パステル剤、マイクロカプセル、ならびに凍結乾燥形を包含する速溶性固体形(ケーク、カシェ剤、薄手フィルム、および錠剤)および圧縮錠剤を包含する速溶性固体形:を包含する。本明細書中で使用するときの用語“速溶性固体形”は、固体剤形がその固体剤形を口腔内に置いた後、約60秒未満、好ましくは約15秒未満、より好ましくは約5秒未満、で溶解することを意味する。ロゼンジには、矯味矯臭した基剤中に治療剤を含む円板状固体が包含される。基剤は、硬い砂糖キャンデー、グリセリンゼラチン、または砂糖とそれに形を与えるための十分な漿剤との組み合わせ物であることができる。ロゼンジ組成物(圧縮錠剤型)は、典型的には1つまたはそれ以上の充填剤(圧縮性砂糖)、矯味矯臭剤および潤滑剤を包含する。
【0062】
表面活性剤(界面活性剤)は、本発明の組成物中に使用することができる。これらは、溶液全体に本活性剤および矯味矯臭油を包含する成分を完全に分散させることならびに口腔全体にこの製剤を分散させることを助け、そして組成物に美的により訴えかける透明で均一な外観を与えることを可能にする有機物質である。好ましくは、本発明の組成物において使用する界面活性剤は、本活性成分を可溶化するのを助けるために十分な量で使用される非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤である。十分量によって、界面活性剤がトロポロン化合物および精油の可溶化および送達系速度を有効に援助する量で存在することを意味する。
【0063】
付加的成分は、当業者により公知のように加えることができる。例えば、ソルビン酸または安息香酸のような酸性防腐剤は、pH水準を低下させるために加えることができる。緩衝系は、組成物のpHを最適水準に制御するために必要であろう。これは、一般には弱酸およびその塩または弱塩基およびその塩の添加によって達成される。有用な系は、重量で約0.01%ないし4.0%の量の安息香酸ナトリウムおよび安息香酸、並びに重量で約0.001%ないし0.2%の量のクエン酸ナトリウムおよびクエン酸であることがわかった。好ましくは、緩衝剤は、pHを約3.5ないし9.0、より好ましくは約4.0ないし
7.0、の水準に保持する量で加えられる。
【0064】
本発明のもう一つの態様においては、オーラルケア有効量の本発明のオーラルケア組成物を口腔に適用することによる、ヒトを含む温血動物における口腔の疾患または状態を治療または予防する方法が提供される。オーラルケア有効量の本発明のオーラルケア組成物は、好ましくは、上記の口腔の疾患または状態の治療または予防のために1またはそれ以上の通常行われている方法で口腔の粘膜組織、口腔の歯肉組織、および/または歯の表面に適用される。例えば、十分な時間、好ましくは約10秒ないし10分、より好ましくは約30秒ないし60秒、歯肉または粘膜組織は、本発明の組成物を含有する溶液(例えば含漱剤、リンス)ですすぐことができ;もし歯磨き剤(例えば練り歯磨き、歯磨きゲルまたは歯磨き粉)を使用するならば、歯肉/粘膜組織または歯は、歯をブラッシングすることによって発生した液体および/または泡中に浴させることができる;など。
【0065】
本発明の方法には一般にさらに、このような接触の後、本組成物の大部分の吐き出しが包含される。このような接触の頻度は、好ましくは1週間に約1回ないし1日に約4回、より好ましくは1週間に約3回ないし1日に3回、さらに好ましくは1日に1回ないし1日に2回、である。このような治療の期間は、典型的には約1日ないし生涯にわたる。特定の口腔の疾患または状態については、治療の期間は、治療している口腔疾患または状態の重篤度、使用する特定の送達形およびその患者の治療に対する反応、に依る。歯周疾患の治療に関するように、もし歯周ポケットへの送達が望ましいならば、含嗽剤またはリンスは、例えばシリンジまたは水注入装置を使用して歯周ポケットに送達することができる。洗浄の後、患者は、その洗浄液を口の中でふりまわして、舌の背部およびその他の歯周/粘膜表面を覆うこともできる。練り歯磨きに加えて、非研磨性ゲル、歯磨きゲルなどを舌の表面および口腔のその他の歯肉および粘膜組織上にブラシで塗ることができる。
【0066】
その他の非限定的例としては、ブレス錠剤またはロゼンジを噛むかまたは吸う、本発明の組成物を含有するチューインガムがある。本発明のオーラルケア組成物を歯肉/粘膜組織および/または歯に適用する好ましい方法としては、含嗽剤またはリンス溶液ですすぐことおよび歯磨き剤を用いてブラッシングすることがある。その他の本発明の組成物を歯肉/粘膜組織および歯の表面に適用する方法は、当業者には明らかである。
【0067】
本発明において使用する本発明の式(I)の置換されたトロポロン化合物は、容易に入手できる出発物質から下記の一般的方法および手順を使用して製造することができる。典型的または好ましい製造条件(すなわち反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合には、他に説明されないかぎりその他の製造条件も使用することができることは、理解されるであろう。最適反応条件は、使用する特定の反応物または溶媒によって変化し得るが、しかしながらこのような反応条件は、常套的な最適化手順により当業者によって決定されうる。
【0068】
【化3】

【0069】
式(I)の化合物はスキーム1に示したように、塩化ジクロロアセチルをトリエチルアミンのような塩基の存在においてR2−置換されたシクロペンタジエン化合物と反応させて式(III)の環化付加物(cycloadduct)を製造することができる。次に式(III)の環化付加物を酢酸のような酸およびトリエチルアミンのような塩基で処理して、最終的な所望の生成物である4−アルキルトロポロン化合物を得る。R2がイソプロピルであるとき、結果として得られる化合物は、スキーム2で出発物質として使用するヒノキチオールである。
【0070】
【化4】

【0071】
式(I)の化合物はさらにスキーム2に示したように、ヒノキチオールを水酸化カリウムのような塩基の存在においてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのようなカルボニル化合物(R6=O、ここでR6は、アルキル基である)で処理し、その後塩酸のような酸を加えて4−イソプロピル−7−ヒドロキシアルキルトロポロン化合物を製造することができる。次にこの4−イソプロピル−7−ヒドロキシアルキルトロポロン化合物を、ピリジンのような塩基の存在においてSOCl2のような塩素化剤で処理して、4−イソプロピル−7−クロロアルキルトロポロン化合物を得る。この4−イソプロピル−7−クロロアルキルトロポロン化合物を加熱下にメタノール、エタノール、プロパノールなどのようなアルコール(R7OH;ここでR7は、アルキル基である)と反応させて、相当する4−イソプロピル−7−アルコキシアルキルトロポロン化合物を得る。
【0072】
【化5】

【0073】
式(I)の化合物はさらにスキーム3に示したように、4−イソプロピル−7−ヒドロキシメチルトロポロンをMnO2のような酸化剤と反応させることによって4−イソプロピル−7−ホルミルトロポロンを製造することができる。出発化合物、4−イソプロピル−7−ヒドロキシメチルトロポロンは、ヒノキチオールを水酸化カリウムのような塩基の存在においてホルムアルデヒドと反応させ、その後反応物を塩酸のような酸で処理することによって製造することができる。4−イソプロピル−7−ホルミルトロポロンを臭化アルキルマグネシウム化合物(R8MgBr;ここでR8は、アルキル基である)と反応させ、反応物を塩酸のような酸でクエンチして、4−イソプロピル−7−ヒドロキシアルキルトロポロン化合物を得る。この4−イソプロピル−7−ヒドロキシアルキル−トロポロン化合物を酢酸のような酸の存在においてリン、好ましくは赤リンのような還元剤で処理し、その後ヨウ素のような酸化剤を反応物に加えて、最終生成物の4−イソプロピル−7−アルキルトロポロン化合物を得る。
【0074】
下記の実施例は、本発明を具体的に説明するためにのみ提供され、それについての限定として解釈されるべきではない。例えば、最適反応条件は、使用する特定の反応物または溶媒によって変化するであろうが、しかしながらこのような反応条件は、常套的な最適化手順により当業者によって決定されることができる。
【実施例】
【0075】
実施例1
式(I)の化合物および精油を含有する含嗽剤組成物
含嗽剤組成物を下の表1に示す下記の成分を有して製造した。
【表1】

【0076】
この組成物は、精油(チモール、メントール、サリチル酸メチルおよびユーカリプトール)および式(I)の化合物、矯味矯臭油、ポロキサマー407および安息香酸をアルコールに加え、続いて水250mlを加えることによって製造した。ソルビトール、サッカリン、および染料をこうして得られた混合物に加え、続いて水を加えて、含嗽剤組成物の試料1000mlを調製した。
【0077】
実施例2
【化6】

【0078】
スキームAに図で説明したように、トリエチルアミン25mLおよびヘキサンの混合物100mLを含む溶液を、0℃のヘキサンの混合物200mL中にメチルシクロペンタジエン(メチルシクロペンタジエン二量体を分解することから製造した)48.5gおよび塩化ジクロロアセチル22.5gを含有する溶液に滴加した。混合物を約1時間撹拌した後、約0℃の水150mL中に注いだ。各層を分離して、水性相をヘキサン75mLづつで2回抽出した。合わせた有機層を水で2回洗浄した後、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮して油状物を得た。分別蒸留を真空下で実施して式(III)の環化付加物を得て、これをアセトン80mLに溶解させた。次に、得られた溶液を、酢酸28.5mL、トリエチルアミン82.5mL、水36mLおよびアセトン100mLを含有する溶液に加えた。混合物を窒素下で約4時間還流させた。アセトンを減圧下で混合物から除去した。追加の水100mLを加えてから、溶液を各々エーテル100mLづつで3回抽出した。合わせた有機抽出物を水で洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥させた。最終生成物、4−メチルトロポロンをヘキサンから再結晶させて、白色固体を得た。
【0079】
実施例3
4−イソプロピル−7−メトキシメチルトロポロンの合成
【化7】

【0080】
スキームBに図で説明したように、ヒノキチオール10gおよび25%KOH水溶液18.8mLを含む溶液をアルゴン下で60℃に加熱した。ホルムアルデヒドを30分毎に1mLづつ、合計で10mLが加えられるまで加えた。この反応混合物を黄色ペーストが得られるまで濃縮して、アセトン300mLを加えた。得られた黄色固体を集めて、アセトンで洗浄した。この固体をジクロロメタン250mL中に懸濁させ、2.0M HCl 50mLを加えた。水層をジクロロメタンで洗浄して、合わせた有機層を水で洗浄した後、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空下で除去すると油状物が残り、このものは、石油エーテルで摩砕すると固化した。ジエチルエーテル100mL中の4−イソプロピル−7−ヒドロキシメチルトロポロン4.0gおよびピリジン1.8mLの氷冷溶液を、それにエーテル80mL中のSOCl2(2.5mL)の溶液を加えながら2時間激しく撹拌した。得られた混合物を濃縮して固体を得た。沸騰石油エーテルをこの固体に加えた。得られた混合物を濾過し、濾液を冷却して、4−イソプロピル−7−クロロメチルトロポロンを固体の形で得た。次に固体生成物を約2時間窒素下でメタノール中で還流させた後、濃縮して、金色油状物を得た。この油状物上にそれが固化するまでN2ガス流を通して、4−イソプロピル−7−メトキシメチルトロポロンを淡黄色固体の形で得た。
【0081】
実施例4
4−イソプロピル−7−ヘキシルトロポロンの合成
【化8】

【0082】
スキームCに図で説明したように、実施例2で製造したとおりの4−イソプロピル−7−メトキシメチルトロポロンをMnO2の存在において酸化して、4−イソプロピル−7−ホルミルトロポロン0.85gを得た。4−イソプロピル−7−ホルミルトロポロンをエーテルに加えて溶液を得て、これを0℃でN2下で撹拌した。臭化ペンチルマグネシウムの2.0M溶液5mLをシリンジでこの溶液に加えた。混合物を約45分間撹拌した後、水20mLでクエンチした。0.5M HCl 10mLおよびエーテル100mLをこの混合物に加えた。各層を分離して、有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、得られた油状物を石油エーテルで摩砕して、4−イソプロピル−7−ヒドロキシヘキシルトロポロンを黄色油状物の形で得た。この油状生成物を水2mL、赤リン1gおよび酢酸15mL中で混合した。混合物を十分に撹拌して、I2 1gを加えた。反応混合物を約1時間還流させた後、濾過した。水150mLを濾液に加えた。K2CO3を混合物に加えて、塩基性pHを生じさせた。この混合物を石油エーテルで抽出した。有機層をNa223で洗浄し、次に水で洗浄し、そしてNa2SO4上で乾燥させて、4−イソプロピル−7−ヘキシルトロポロンを油状物の形で得た。
【0083】
前記の論議は、本発明の単に好例となる態様を開示し、記述している。当業者は、このような論議および添付の特許請求の範囲から、特許請求の範囲で定義したとおりの本発明の精神および範囲から離れることなく種々の変化、変更、および変動がそのなかで行われることができることを容易に認めるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効量の式(I)
【化1】

の化合物;
(b)(i) 組成物の重量で約0.064%乃至約2.0%の量で存在するチモール;
(ii) 組成物の重量で約0.060%乃至約2.0%の量で存在するサリチル酸メチル;
(iii) 組成物の重量で約0.092%乃至約2.0%の量で存在するユーカリプトール;および
(iv) 組成物の重量で約0.042%乃至約2.0%の量で存在するメントール;
を含む有効量の精油の組み合わせ;および
(c)有効量の薬学的に受容できる口腔用キャリヤー;
を含むオーラルケア組成物。
【請求項2】
さらにオーラルケア組成物の全重量に基づいて重量で約0.01%乃至70%の量のアルコールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アルコールの量が重量で約0.1%乃至30%である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
アルコールがエタノールである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
ヒトを含む温血動物における口腔の疾患または状態を予防または治療するための請求項1記載の含嗽剤組成物。
【請求項6】
組成物が、練り歯磨き、含嗽剤、ゲル、歯磨き粉、フィルム形成歯磨き剤、チューインガム、口内スプレー剤およびロゼンジから成る群から選択される形態である請求項5記載のオーラルケア組成物。
【請求項7】
組成物が、含嗽剤の形態である請求項6記載のオーラルケア組成物。
【請求項8】
組成物が、練り歯磨き、含嗽剤、ゲル、歯磨き粉、フィルム形成歯磨き剤、チューインガム、口内スプレー剤およびロゼンジから成る群から選択される形態である請求項1記載のオーラルケア組成物。
【請求項9】
オーラルケア組成物が、含嗽剤の形態である請求項8記載のオーラルケア組成物。

【公開番号】特開2009−263375(P2009−263375A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142879(P2009−142879)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【分割の表示】特願2004−525702(P2004−525702)の分割
【原出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】