説明

トロンボキサン受容体アンタゴニストを用いて血栓症を治療及び予防する単位用量製剤及び方法

本発明は、抗血栓剤を使用して血栓症及び心臓血管疾患を治療する新規の方法、並びに抗血栓剤及びその単位用量製剤の治療有効量を決定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年5月3日に出願された米国仮特許出願第60/915,784号;2007年5月3日に出願された米国仮特許出願第60/915,785号、2007年6月29日に出願された米国仮特許出願第60/947,316号、2007年6月29日に出願された米国仮特許出願第60/947,289号の、米国特許法119条での利益を主張する。これらの4つの仮出願は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(背景)
(発明の技術分野)
本発明は、トロンボキサン受容体アンタゴニストなどの抗血栓剤、並びにその単位投与量製剤を使用して血栓症及び心臓血管疾患及び障害を治療又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
動脈血栓症は、急性心筋梗塞及び血栓性脳梗塞を引き起こし、西欧諸国における罹患及び死亡の主な誘引因子である。動脈血栓は最初に血小板から構成され、急性心筋梗塞及び血栓性脳梗塞の発生率を低下させるのに抗血小板薬が有効であることから、動脈血栓症における血小板の役割は、十分に確立されている。血小板は、動脈血栓の形成だけでなく、アテローム性動脈硬化症自体の進行においても中心的な役割を果たす。
【0004】
アテローム性動脈硬化症の進行に血小板が関与することは、より最近の発見である。この発見は、アテローム性動脈硬化症が、炎症に対する応答であり、血小板血栓から放出される炎症メディエーター(例えば、sCD40L、RANTES、TGFα、PF4、PDGF)が、アテローム硬化性病変の発生に対する強力な誘因因子であるという認識に端を発する(Huo Y.らの論文、Nat Med 9:61-67 (2003);Massberg S.らの論文、J. Exp. Med. 196: 887-896 (2002);Burger P.C.らの論文、Blood 101:2661-2666 (2003)を参照のこと)。
【0005】
血小板血栓症を担う機構は特定されている。動脈のずり速度下での血小板粘着が、コラーゲンによって最初に仲介され、これによって、血漿からフォンウィルブランド因子が動員され、続いてこれが、血小板膜GP Ib-V-IXによって認識され、血管損傷の部位での血小板の動員が誘発される。血小板はまた、血小板上の2つのコラーゲン受容体、すなわち、インテグリンα2β1、及び免疫クロブリン含有コラーゲン受容体GP VIを介してコラーゲンに直接結合する。
【0006】
血小板活性化は、一次アゴニスト;すなわち血小板粘着中のコラーゲン、及びトロンビン(すなわち、血管病変の部位に露出した組織因子(TF)に応答して、また、様々なリガンド(フィブリノーゲン、vWF、CD40L)によるGP IIb-IIIaの結合によって産生されるプロテアーゼ)によって最初に仲介される。さらに、活性化された血小板から放出されるいくつかの二次アゴニストが、オートクリンループにおいて機能し、血小板活性化を強化する。1つは、トロンボキサンA2(TXA2)、すなわちプロスタノイド経路(この経路は、一次血小板アゴニストに応答する、リン脂質からのアラキドン酸の放出によって開始される)の産物である。放出されたアラキドン酸は、COX-1(血小板酵素)によって連続的に改変され、PGH2、すなわち広く分布するトロンボキサンシンターゼの基質が産生され、これによってトロンボキサンA2(TXA2)が産生される。どちらの産物、すなわちPGH2及びTXA2も、TXA2受容体(別名TP)への結合によって血小板活性化を誘導する強力な血小板アゴニストである。別の二次アゴニストは、血小板活性化の際に血小板濃染顆粒から放出されるADPである。ADPは、2つのGタンパク質共役受容体、すなわちP2Y1及びP2Y12と結合する。さらなる二次メディエーターとしては、Gas6及びCD40Lが挙げられる。
【0007】
血小板活性化は、形態変化、フィブリノーゲン受容体発現の誘発、及び顆粒内容物の放出(凝集及び栓形成をもたらす)によって特徴づけられる。この応答は、止血に不可欠である一方、心筋梗塞、脳卒中、及び不安定狭心症を含めた、血栓形成関連の広範囲の疾患の病因論において重要である。
【0008】
心臓血管疾患患者における血小板機能の調節のために使用される第一の抗血小板薬は、アスピリンである。アスピリンの広範な使用は、何百もの無作為臨床試験に基づいており、有害事象の20〜25%の低下が示されている(BMJ 324:71-86(2002))。アスピリンの成功は注目に値するが、アスピリン治療が有益でない人もいることが明らかになり始めている。患者によっては、アスピリン抵抗性であり、アスピリン治療にもかかわらず、血栓症の発症を起こす。さらに、心臓血管系血栓症の発症の危険がある患者には、アスピリン感受性であり、アスピリンによって提供される心臓血管防御を利用できない人がいる。
【0009】
アスピリン治療から他の点で利益を受ける可能性があるかなりの数の患者が、アスピリンに対して抵抗性又は不耐性であることを考えると、アスピリンによって提供される心臓血管防御を模倣するがアスピリン固有の炎症反応を引き起こさない代替の薬物が求められる。開発されている、あるクラスの薬物は、トロンボキサン(TXA2)介在性血小板凝集を阻害する抗血栓剤である。TXA2、すなわちCOX-1の作用に起因する血栓形成性産物は、TXA2受容体(別名TP、時としてTP受容体(TP)とも呼ばれる)に作用することによって、血小板を活性化する。TXA2は、アスピリンによってブロックされる血栓形成メディエーターであり、TP拮抗作用によって、この血栓形成メディエーターの作用をブロックするための代替戦略が提供される。
【0010】
TXA2受容体アンタゴニストの発見及び開発は、約30年間、多くの製薬会社の目標であった(Dogne J-Mらの論文、Exp. Opin. Ther. Patents 11: 1663-1675 (2001)を参照のこと)。これらの会社によって特定された化合物には、(同時にTXA2合成酵素阻害活性を持つ持たないにかかわらず)イフェトロバン(BMS)、リドグレル(Janssen)、テルボグレル(BI)、UK-147535(Pfizer)、GR 32191(Glaxo)及びS-18886(Servier)がある。前臨床薬理学では、このクラスの化合物が、トロンボキサン経路の阻害によって得られる有効な抗血栓活性を有することが確立されている。これらの化合物はまた、TXA2や、血管床内のTXA2受容体に作用する他のプロスタノイドによって誘導される血管収縮を予防する。しかし、残念なことに、TXA2アンタゴニストの第II相/第III相試験は、好結果であると証明されておらず、これらの化合物はいずれも、市場には到達しなかった。
【0011】
アスピリン抵抗性又はアスピリン感受性の患者に有効な治療を含めた、血栓形成を治療及び予防する代替手段を提供するために、さらなる抗血栓剤、並びにTPアンタゴニストを含めた抗血栓剤を使用する治療的に有効な方法、を特定するための当分野での必要性が残っていることは明らかである。
【発明の概要】
【0012】
(概要)
一実施態様では、本発明は、血小板の凝集を阻害する方法であって、100nM超の濃度又は約350nM超の濃度のイフェトロバンと血小板を接触させることを含む前記方法を提供する。
【0013】
関連する実施態様では、本発明は、患者における血栓形成を治療又は予防する方法であって、100nM超又は約350nM超の血漿濃度を少なくとも24時間達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を提供する。関連する実施態様では、本発明は、患者における血栓形成を治療又は予防する方法であって、250nM超又は約350nM超の定常状態トラフ血漿濃度を少なくとも24時間達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を提供する。特定の実施態様では、投与されるイフェトロバンの量は、約450mg/日である。特定の実施態様では、投与されるイフェトロバンの量は、1から10mg/kg/日、又は約6もしくは7mg/kg/日である。別の特定の実施態様では、イフェトロバンの量は、約250nM又は350nM超の血漿濃度を少なくとも24時間達成するのに十分である。一実施態様では、イフェトロバンの量は、6から10mg/kg/日である。別の実施態様では、これは、5から10mg/kg/日である。
【0014】
他の関連する実施態様では、本発明は、患者における血栓形成を治療又は予防する方法であって、350nMから1000nMの範囲の恒常的な血漿濃度をしばらくの間達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。
【0015】
他の関連する実施態様では、本発明は、患者における血栓形成を治療又は予防する方法であって、Cmaxが1500から2500ng/mLの範囲である血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。
【0016】
他の関連する実施態様では、本発明は、患者における血栓形成を治療又は予防する方法であって、平均トラフ濃度が約154ng/mLである総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。
【0017】
他の関連する実施態様では、本発明は、患者における血栓形成を治療又は予防する方法であって、トラフ濃度に対するピークの比が15以下である総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。
【0018】
さらなる関連する実施態様では、本発明は、患者において血栓形成を治療又は予防する方法であって、治療的に有効な血漿濃度の抗血栓剤を患者に投与することを含む前記方法を提供する。ここでは、治療的に有効な血漿濃度は、以下を含む方法によって決定される:哺乳類から得られる血液サンプルを、該血液サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに、続いて、該血液サンプルをある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び血液サンプル中の血小板凝集の第2量を計測すること。ここで、血小板凝集の第2量が、第1の血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、抗血栓剤のその血漿濃度が、治療的に有効な血漿濃度である。一実施態様では、生理的血小板アゴニストは、コラーゲンである。別の実施態様では、この方法は、生理的血小板アゴニストと血液サンプルを接触させる前に、血液サンプルの凝固を阻止することをさらに含む。さらなる実施態様では、抗血栓剤は、トロンボキサン受容体アンタゴニストである。特定の実施態様では、トロンボキサン受容体アンタゴニストは、イフェトロバンである。ある実施態様では、血小板凝集の第1量及び第2量は、光線透過凝集測定によって測定される。ある実施態様では、血小板凝集の第1量及び第2量は、リアルタイム潅流チャンバーを使用して測定される。
【0019】
さらなる実施態様では、本発明は、医薬として許容し得る担体と、少なくとも250nM又は少なくとも350nMの血漿濃度を少なくとも24時間維持するのに十分な量のイフェトロバンとを含む、イフェトロバンの単位用量製剤を提供する。一実施態様では、製剤は、1日1回投与に適合され、イフェトロバンの量は、6〜10mg/kgの用量である。別の実施態様では、製剤は、1日2回投与に適合され、イフェトロバンの量は、3〜5mg/kgの用量である。
【0020】
本発明の別の実施態様は、哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度を決定するための方法であって、以下を含む前記方法を提供する:哺乳類から得られる血液サンプルを、該血液サンプルにおける血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること; 並びに、続いて、該血液サンプルをある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び血液サンプル中の血小板凝集の第2量を計測すること。ここで、血小板凝集の第2量が、血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、この血漿濃度が、哺乳類の血小板の凝集を阻害するのに有効な抗血栓剤の濃度である。特定の実施態様では、生理的血小板アゴニストは、コラーゲン、エピネフリン、又はADPである。ある実施態様では、この方法は、生理的血小板アゴニストと血液サンプルを接触させる前に、血液サンプルの凝固を阻止することをさらに含む。特定の実施態様では、抗血栓剤は、トロンボキサン受容体アンタゴニストである。
【0021】
ある特定の実施態様では、本発明は、血小板凝集を阻害する必要のある患者において血小板凝集を阻害するための方法であって、血小板凝集を阻害する必要のある患者に、治療濃度の抗血栓剤を投与することを含む前記方法を含む。ここでは、治療濃度は、以下を含む方法によって決定される:哺乳類から得られる血液サンプルを、該血液サンプルにおける血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること; 並びに、続いて、該血液サンプルをある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び血液サンプル中の血小板凝集の第2量を計測すること。ここで、血小板凝集の第2量が、血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、この抗血栓剤の血漿濃度は、治療的に有効な血漿濃度である。
【0022】
特定の実施態様では、本発明の方法及び組成物は、例えば、心筋梗塞、血栓性脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、難治性アンギナ、一過性脳虚血発作、塞栓性発作、播種性血管内凝固症候群、敗血症性ショック、深部静脈血栓症、肺塞栓症、再閉塞、再狭窄、肺塞栓症、及び閉塞性冠動脈血栓、あるいは、血栓溶解療法、経皮的冠動脈形成術、又は冠動脈バイパス移植に由来する他の合併症を含めた心臓血管疾患又は障害を治療又は予防するために使用される。さらに、本発明の方法及び組成物を、肺性高血圧、例えば低酸素誘発性肺性高血圧、及び血管内血栓症を治療又は予防するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
(図面のいくつかの観点の簡単な説明)
【図1】コラーゲン刺激に応答して血小板凝集をもたらす機構を表す模式図である。
【図2】光線透過凝集測定(LTA)によって測定されるものとしての、U-46619及びコラーゲン誘発性血小板凝集の用量反応性イフェトロバン阻害を示すグラフである。長期的なアスピリン治療によるコラーゲン誘発性血小板凝集の阻害は、垂直バーによって示される。
【図3】示された投薬量のイフェトロバン又はアスピリンに応答する経時的な平均血栓プロフィールを示すグラフである。データは、経時的血栓サイズの平均±標準誤差として表される。
【図4】潅流チャンバーアッセイを使用して測定されるものとしての、健康な被験者(図4A)及びアスピリン不耐性(AERD)喘息患者(図4B)における、アスピリンに対する100nm又は350nmイフェトロバン(103)の抗血栓症活性を表すグラフを提供する。血栓症の阻害は、対照との比較における蛍光強度の低下として示される。
【図5】コラーゲン誘発性血小板凝集アッセイを使用して測定されるものとしての、健康な被験者(図5A)及びアスピリン不耐性(AERD)喘息患者(図5B)における、アスピリンに対する1μM、100nM、及び350nMイフェトロバン(103)の抗血栓活性を示す棒グラフを提供する。示される通り、コラーゲン誘発性血小板凝集の統計学的に有意な阻害は、健康な被験者(P=0.0281)とAERD患者の両方で、100nM超の濃度で示された。NSは、有意ではないことを示す。
【図6】潅流チャンバーアッセイを使用して測定されるものとしての、アスピリン不耐性の(AERD)喘息患者における、アスピリンと比較した場合の、2mM SQ29548及び5Mテルボグレルの抗血栓活性を示すグラフである。
【図7】アラキドン酸誘発性血小板凝集アッセイによって測定されるものとしての、健康な被験者(図7A)及びアスピリン不耐性の(AERD)喘息患者(図7B)における、アスピリンに対する、1μM、350nM、及び100nMイフェトロバンの抗血栓活性を表すグラフを提供する。
【0024】
(詳細な説明)
本発明は、従来使用されていた血小板凝集のインビトロアッセイが、インビボで治療的利益を達成するのに必要とされる抗血栓剤の量を実質的に低く見積もっていたという驚くべき発見に基づいている。例えば、トロンボキサン受容体(TP)アンタゴニストの開発中にヒトにおけるTPアンタゴニストの活性をモニタリングするために利用された最適な薬力学的アッセイは、U-46619、すなわちTXA2ミメティクスによって誘発される血小板形態変化及び血小板凝集の阻害の測定であった。U-46619はTPに結合することによって直接的に血小板を刺激するが、本発明は、U-46619誘発性の血小板形態変化又は凝集の阻害が、ヒトにおける血栓症の阻害を予示するものではないことを発見した。トロンボキサン(TX)合成酵素、TP、又はTX合成酵素/TP阻害剤混合物を用いて実施される臨床試験のいずれも、その臨床開発計画において、用量選択又は薬物モニタリングのための薬力学的アッセイとして、コラーゲン誘発性血小板凝集又は潅流チャンバーを使用しなかった。したがって、U-46619と比較して、コラーゲンなどの生理的血小板アゴニストによって誘発される血小板凝集に、TP受容体が差別的に関与することは、本発明の驚くべき予想外の発見であった。
【0025】
一実施態様では、本発明は、例えばアスピリンと同じ程度まで血小板凝集を阻害するイフェトロバンなどのTPアンタゴニストを含めた抗血栓剤の濃度を決定するために生理的血小板アゴニストを利用する、適切なアッセイを確立する。特定の実施態様では、決定された濃度は、アスピリンに匹敵する臨床的利益を提供する。したがって、本発明は、抗血栓剤を特定する新規の方法、及び抗血栓剤の治療的に有効な投薬量を決定する方法を提供する。さらに、本発明は、血栓症及び心臓血管疾患及び障害を治療又は予防する方法であって、TPアンタゴニストなどの抗血栓剤を、従来使用されていた投薬量よりも実質的に大きい投薬量で患者に投与することを含む前記方法を含む。関連するさらなる方法は、治療的利益のために必要とされると従来理解されていたよりも実質的に高い血漿濃度を達成及び/又は維持するのに十分な量の抗血栓剤を患者に投与することを目的とする。
【0026】
本発明の実施は、そうではない旨が特に示されない限り、当業者の範囲内の、化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、細胞生物学、薬理学、分子生物学、及び組換えDNA技術の従来方法(これらの多くを、実例の目的で以下で説明する)を利用することとなる。こうした技術は、文献中に完全に説明されている。
【0027】
この明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられているものとしての、単数形「a」、「an」、及び「the」には、その内容が、明らかに他の指示をしない限り、複数の指示物が含まれる。
【0028】
(A.抗血栓剤の治療的に有効な投薬量を特定及び決定する方法)
本発明は、抗血栓剤を特定する方法、及び抗血栓剤の治療有効量を決定する関連方法を提供する。これらの方法は、血小板の形態変化又は凝集を誘発するためのTXA2ミメティクス、すなわちU-46619を利用する抗血栓症活性の以前のインビトロアッセイが、インビボで必要とされる有効量の抗血栓剤を正確には予測しないという発見に基づいている。したがって、本発明で主張する方法は、血小板凝集を誘発するために、生理的血小板アゴニスト(コラーゲン、エピネフリン、及びADPなど)を利用する。この方法には、U-46619又は他の非生理的血小板アゴニストを使用する従来実施されていたすべてのタイプのアッセイ(ここでは、生理的血小板アゴニストが非生理的血小板アゴニストで置き換えられる)が含まれる。
【0029】
一般に、本発明の方法は、ある量又はある濃度の、候補となる抗血栓剤の存在下又は非存在下で、溶液中の血小板を生理的血小板アゴニストと接触させ、該候補となる抗血栓剤の存在が、該生理的血小板アゴニストによって誘発される血小板凝集の量を低下させるかどうか決定することを含む。
【0030】
血小板凝集は、血小板形態変化、フィブリノーゲン受容体発現の誘発、顆粒内容物の放出、血小板粘着、及び血栓形成などの、血小板凝集の任意の公知の特性に基づいて測定することができる。これらの特性をそれぞれ測定する方法は公知であり、当分野で利用可能である。特定の実施態様では、血小板凝集は、光線透過凝集測定(LTA)又は潅流チャンバーを使用して測定される。特定の実施態様では、血小板は蛍光標識される。
【0031】
生理的血小板アゴニストには、インビボで血小板凝集を刺激する、誘発する、あるいは他のやり方で関与する内因性分子が含まれる。様々な生理的血小板アゴニストは当技術分野で公知であり、それだけには限らないが、コラーゲン、例えばIII型コラーゲン、I型コラーゲン、酸化LDL、トロンボスポンジン、エピネフリン、CD40L、トロンビン、及びアデノシン5'-二リン酸(ADP)が含まれる。これらの生理的血小板アゴニスト又は他の生理的血小板アゴニストのいずれかを、単独で、又は任意の組み合わせで使用することができる。
【0032】
本明細書に記載する方法に使用される血小板は、任意の動物、好ましくはヒトなどの哺乳類から得ることができる。溶液中の血小板としては、血液及び多血小板血漿が挙げられる。血液サンプルは、例えば、針及び注射器を使用して、動物から容易に得ることができる。多血小板血漿は、通常の方法を使用して、血液から調製することができる。
【0033】
ある実施態様では、溶液中の血小板は、生理的血小板アゴニスト又は抗血栓剤に露出させる前、あるいは露出させながら、生理的カルシウムレベルに影響を及ぼさないXa因子阻害剤を使用して凝固阻止される。生理的カルシウムレベルに影響を及ぼさないXa因子阻害剤の例は、当技術分野で公知である。適切なXa因子阻害剤の例は、C921-78である(Andre P.らの論文 Circulation 2003; 108:2697-2703)。
【0034】
本発明の方法は、生理的血小板アゴニストによって誘発される血小板凝集を阻害するその能力について候補薬剤をスクリーニングすることによって、抗血栓剤を特定するために使用することができる。候補薬剤としては、例えば、有機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、ナノ抗体、並びにそれらの誘導体及びミメティクスが挙げられる。ある実施態様では、候補となる抗血栓剤のライブラリは、本発明の方法を使用してスクリーニングされる。候補薬剤は、個々に、あるいはプール中でスクリーニングすることができ、活性を有する薬剤は、さらなる希釈によって特定される。
【0035】
本発明の方法を、例えば、量を増大させた候補又は公知の抗血栓剤を、生理的血小板アゴニストによって誘発される血小板凝集を阻害するその能力について試験することによって、血小板凝集を阻害するのに十分な濃度を決定するために使用することができる。本発明は、インビトロで生理的血小板アゴニストによって誘発される血小板凝集を阻害するために必要とされる濃度と、ヒトなどの哺乳類の患者においてインビボで血小板凝集を阻害するために必要とされる量との間に相関があることを確立したので、ある実施態様では、本発明の方法を使用して、抗血栓剤の治療有効濃度が決定される。
【0036】
種々の実施態様では、候補となる抗血栓剤は、本明細書に記載される特性又はアッセイによって測定されるものとしての血小板凝集を、陰性対照と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%低下させる場合に、抗血栓剤と特定される。他の実施態様では、有効濃度は、本明細書に記載される特性又はアッセイによって測定されるものとしての血小板凝集を、陰性対照と比較して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%低下させるのに必要とされる抗血栓剤の濃度と定義される。
【0037】
他の実施態様では、候補となる抗血栓剤は、血小板凝集を、アスピリンによって低下させられる量以上の量だけ低下又は阻害する場合に、抗血栓剤と特定される。関連する実施態様では、候補となる抗血栓剤の有効濃度は、それが、アスピリンによって低下させられる量以上の量だけ血小板凝集を低下又は阻害する場合に、有効濃度と特定される。一実施態様では、アスピリンによって阻害される凝集の量は、アスピリンを少なくとも3日間投与された哺乳類から得られた血液又は多血小板血漿を使用して決定される。一実施態様では、該動物は、少なくとも1又は2週間、約325mg/日のアスピリンを投与されたヒトである。
【0038】
このように、ある実施態様では、本発明は、候補となる抗血栓剤が抗血栓剤であるかどうか決定するための方法であって、哺乳類から得られる血液又は血清サンプルを、該血液又は血清サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること、並びに、続いて、該血液又は血清サンプルを、血漿濃度の候補となる抗血栓剤と接触させること、及び血液又は血清サンプルにおける血小板凝集の第2量を計測することを含む前記方法を含む。ここでは、血小板凝集の第2量が血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合に、候補となる抗血栓剤は、抗血栓剤である。
【0039】
関連する実施態様では、本発明は、候補となる抗血栓剤が抗血栓剤であるかどうか決定するための方法であって、以下を含む前記方法を含む:(1)哺乳類から得られる血液又は血清サンプルを、該血液又は血清サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに(2)候補となるある量の抗血栓剤の存在下で、哺乳類から得られる比較対象となる血液又は血清サンプルを、該血液又は血清サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第2量を計測すること。ここでは、血小板凝集の第2量が血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、候補となる抗血栓剤は、抗血栓剤と特定される。
【0040】
他の関連する実施態様では、本発明は、哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度を決定するための方法であって、哺乳類から得られる血液又は血清サンプルを、該血液又は血清サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること、並びに、続いて、該血液又は血清サンプルを、血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び血液又は血清サンプルにおける血小板凝集の第2量を計測することを含む前記方法を含む、ここでは、血小板凝集の第2量が、血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、その濃度は、哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度である。
【0041】
さらなる関連する実施態様では、本発明は、哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度を決定するための方法であって、(1)哺乳類から得られる血液又は血清サンプルを、該血液又は血清サンプルにおける血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに(2)ある量の抗血栓剤の存在下で、該哺乳類から得られる比較対象となる血液又は血清サンプルを、該血液又は血清サンプルにおける血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第2量を計測することを含む前記方法を含む。ここでは、血小板凝集の第2量が、血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、その濃度は、哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度である。
【0042】
一実施態様では、本発明の方法は、Xa因子阻害剤で凝固阻止され、かつ、コラーゲン(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mg/ml)などの生理的血小板アゴニストを使用して凝集するように誘導され、かつ、ある種のアッセイでは抗血栓剤に露出させた、血液又は多血小板血漿のサンプルに対する光線透過凝集測定を実施することによって実施される。
【0043】
別の実施態様では、本発明の方法は、Xa因子阻害剤で凝固阻止され、かつ、コラーゲン(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mg/ml)などの生理的血小板アゴニストを使用して凝集するように誘導され、かつ、ある種のアッセイでは抗血栓剤に露出させた、血液又は多血小板血漿のサンプルに対するリアルタイム灌流アッセイを実施することによって実施される。潅流チャンバーは、中程度に狭窄した冠動脈において生じるものなどの、定義されたずりの条件下(例えば1600/sec)で、生理的な血栓形成面に露出させた凝固阻止されていない又は凝固阻止された血液のサンプルにおける血小板血栓症を研究するために、30年以上前に開発された。本発明に従って利用できるこれらの技術や他の技術は、Sakariassen, K.S.らの論文、J. Thromb. Haemost. 2:1681-90 (2004)及びSakariassen, K.S.らの論文、Thromb. Res. 104: 149-74 (2001)に記載されている。
【0044】
本発明の方法は、例えば臨床試験において、薬物活性をモニタリングするために容易に適合させることができる。血液サンプルは、抗血栓剤で治療される患者から得られる。特定の実施態様では、溶液(例えば血液)中の血小板が蛍光標識され、血栓症の動態をリアルタイムで観察することができる。例えば、Xa因子阻害剤を用いて凝固阻止された全血を、狭窄した冠動脈において生じるものなどの、定義されたずり速度下で、潅流チャンバー中で、タイプIIIコラーゲンなどの生理的血小板アゴニストに露出させる。潅流チャンバーにおける血栓沈着の分析は、蛍光強度の変動のコンピュータ・モニタリングを介して、リアルタイムで実施される。最大血栓ピーク、最大程度の血栓形成に到達する時間、並びに血栓増殖及び溶解の速度などのパラメータを測定することができる。こうしたアッセイは、限られた量の血液(アッセイにつき約6ml以下の血液)のみを必要とする小型化された装置を使用して実施することもできる。血液サンプルは、抗血栓剤を用いた治療中のある時点で、又は様々な時点で、患者から採取することができ、治療の有効性は、このようにして、血小板凝集の測定された量に基づいて、例えば陰性対照又は予め定められた所望の値もしくは対照値と比較して、決定することができる。
【0045】
抗血栓剤には、それだけには限らないが、抗凝血剤、抗血小板剤、及び血栓溶解剤が含まれる。抗凝血剤の具体例としては、ビタミンKアンタゴニスト、未分画ヘパリン、及び低分子量ヘパリンが挙げられる。抗血小板剤の具体例としては、アスピリン、チクロピジン、及びジピリダモールなどの血小板凝集阻害薬が挙げられる。血栓溶解剤の具体例としては、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、及び組織プラスミノーゲンアクチベータが挙げられる。
【0046】
さらなる抗血栓剤には、トロンビン、Xa因子、ADP受容体、トロンボキサン、又はトロンボキサン受容体(TP)などの、血液凝固経路に関与する標的の特異的阻害剤が含まれる。
【0047】
(1.TPアンタゴニスト)
本明細書では、用語「トロンボキサンA2受容体アンタゴニスト」又は「トロンボキサン受容体アンタゴニスト」又は「TPアンタゴニスト」は、標準のバイオアッセイにおいて、あるいはインビボで、あるいは治療的に有効な用量で使用された場合に、トロンボキサン受容体の発現又は活性を、少なくとも、又は少なくともおよそ、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する化合物を指す。ある実施態様では、TPアンタゴニストは、トロンボキサンA2のTPへの結合を阻害する。TPアンタゴニストには、競合的拮抗薬(すなわちTPに対するアゴニストと競合するアンタゴニスト)と、非競合的拮抗薬がある。TPアンタゴニストには、受容体に対する抗体が含まれる。抗体は、モノクローナルであり得る。これらは、ヒト又はヒト化抗体であり得る。TPアンタゴニストには、トロンボキサンシンターゼ阻害剤、並びにTPアンタゴニスト活性とトロンボキサンシンターゼ阻害活性の両方を有する化合物も含まれる。
【0048】
TPアンタゴニストには、例えば、イフェトロバン(BMS;[1S-(1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[(ペンチルアミノ)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチル]ベンゼンプロパン酸)、5-ヘキセン酸、6-[3-[[(シアノアミノ)[(1,1-ジメチルエチル)アミノ]メチレン]アミノ]フェニル]-6-(3-ピリジニル)-、(ε-)(テルボグレル)、5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸との一無水物、2-(プロピルチオ)-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)との一無水物、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル、2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、4-メトキシ-N,N'-ビス(3-ピリジニルメチル)-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(ピコタミド)、リドグレル(Janssen)、スロトロバン、UK-147535(Pfizer)、GR 32191(Glaxo)、バリプロスト(variprost)、及びS-18886(Servier)などの小分子が含まれる。
【0049】
本明細書での使用に適したさらなるTPアンタゴニストは、米国特許第6,509,348号にも記載されている。これらには、それだけには限らないが、以下が含まれる:好ましい[1S-(1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチル]ベンゼンプロパン酸(SQ 33,961)、又はそのエステルもしくは塩;[1S-(1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[[(4-クロロフェニル)ブチル]アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチル]ベンゼンプロパン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-((1α,2α,3α,4α)]-3-[[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチル]ベンゼン酢酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-((1α,2α,3α,4α)]-[2-[[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチル]フェノキシ]酢酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-((1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[-7,7-ジメチルオクチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2イル]メチル]ベンゼンプロパン酸、又はそのエステルもしくは塩、及びイフェトロバンを含めた、1992年3月31日に発行された米国特許第5,100,889号に開示される通りのインターフェニレン7-オキサビシクロヘプチル置換型・複素環式アミドプロスタグランジン類似体;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-チアゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)メチルアミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(1-ピロリジニル)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-4-ヘキセン酸又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(2-シクロヘキシルエチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[[2-(4-クロロ-フェニル)エチル]アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ-[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-クロロフェニル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[[4-(4-クロロフェニル)ブチル]アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4a-[[(6-シクロヘキシルヘキシル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(6-シクロヘキシルヘキシル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(プロピルアミノ)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-ブチルフェニル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(2,3-ジヒドロ-1H-インドール-1-イル)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-N-(フェニルスルホニル)-4-ヘキセンアミド;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-N-(メチルスルホニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセンアミド;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-5-ヘプテン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-1H-イミダゾール-2-イル]-7-オキサビシクロ-[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α,3α,4α)]-6-[3-[4-[[(7,7-ジメチルオクチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩;[1S-[1α,2α(E),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸;[1S-[1α,2α,3α,4α)]-3-[4-[[(4-(シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-ヘキサン酸、又はそのエステルもしくは塩を含めた、1992年3月31日に発行された米国特許第5,100,889号に開示される通りの7-オキサビシクロヘプチル置換型・複素環式アミドプロスタグランジン類似体(好ましい化合物は、[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ-[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのエステルもしくは塩である);Snitmanらの米国特許第4,537,981号に開示されている7-オキサビシクロヘプタン及び7-オキサビシクロヘプテン化合物、特に[1S-[1α,2α(Z),3α(1E,3S*,4R*),4α)]]-7-[3-(3-ヒドロキシ-4-フェニル-1-ペンテニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-5-ヘプテン酸(SQ 29,548);Nakaneらの米国特許第4,416,896号に開示されている7-オキサビシクロヘプタン置換型・アミノプロスタグランジン類似体、特に、[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[[2-(フェニルアミノ)カルボニル]ヒドラジノ]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-5-ヘプテン酸;Nakaneらの米国特許第4,663,336号に開示されている7-オキサビシクロヘプタン置換型ジアミドプロスタグランジン類似体、特に、[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[[[[(1-オキソヘプチル)アミノ]アセチル]アミノ]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-5-ヘプテン酸及び相当するテトラゾール、及び[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[[[[(4-シクロヘキシル-1-オキソブチル)アミノ]アセチル]アミノ]メチル]-7-オキサビシクロ]2.2.1]ヘプト-2-イル]-5-ヘプテン酸;以下を含めた、1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,174号に開示される通りの7-オキサビシクロヘプタンイミダゾールプロスタグランジン類似体:[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-(4-シクロヘキシル-1-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾール-1-イル]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸又はそのメチルエステル;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-(3-シクロヘキシルプロピル)-1H-イミダゾール-1-イル]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸又はそのメチルエステル;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-(4-シクロヘキシル-1-オキソブチル)-1H-イミダゾール-1-イル]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸又はそのメチルエステル;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-(1H-イミダゾール-1-イルメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸又はそのメチルエステル;あるいは[1S-[1α,2αZ),3α,4α)]]-6-[3-[[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-1H-イミダゾール-1-イル]メチル-7-オキサビシクロ-[2.2.1]ヘプト-2-イル]-4-ヘキセン酸、又はそのメチルエステル;Witteらの米国特許第4,258,058号に開示されているフェノキシアルキルカルボン酸、特に4-[2-(ベンゼンスルファミド)エチル]フェノキシ酢酸(BM 13、177--Boehringer Mannheim)、Witteらの米国特許第4,443,477号に開示されているスルホンアミドフェニルカルボン酸、特に4-[2-(4-クロロベンゼンスルホンアミド)エチル]フェニル酢酸(BM 13,505(Boehringer Mannheim)、米国特許第4,752,616号に開示されているアリールチオアルキルフェニルカルボン酸、特に、4-(3-((4-クロロフェニル)スルホニル)プロピル)ベンゼン酢酸、ヤピプロスト(yapiprost)、R68,070ともいう(E)-5-[[[(ピリジニル)[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチレン]アミノ]オキシ]ペンタン酸--Janssen Research Laboratories、3-[1-(4-クロロフェニルメチル)-5-フルオロ-3-メチルインドール-2-イル]-2,2-ジメチルプロピオン酸[(L-655240 Merck-Frosst)Eur. J.Pharmacol. 135(2):193、1987年3月17日]、5(Z)-7-([2,4,5-シス]-4-(2-ヒドロキシフェニル)-2-トリフルオロメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)ヘプテン酸(ICI 185282、Brit. J. Pharmacol. 90 (Proc. Suppl): 228 P-Abs, March 87)、5(Z)-7-[2,2-ジメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン-シス-5-イル]ヘプテン酸(ICI 159995(Brit. J. Pharmacol. 86 (Proc. Suppl): 808 P-Abs., December 85)、N,N'-ビス[7-(3-クロロベンゼンアミノスルホニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリル]ジスルホニルイミド(SKF 88046(Pharmacologist 25(3): 116 Abs., 117 Abs, August 83)、[1α(Z)-2β,5α]-(+)-7-[5-[[(1,1'-ビフェニル)-4-イル]メトキシ]-2-(4-モルホリニル)-3-オキソシクロペンチル]-4-ヘプテン酸(AH 23848--Glaxo, Circulation 72(6): 1208, December 85)、レバロルファン臭化アリル(CM 32,191 Sanofi, Life Sci. 31(20-21):2261、1982年11月15日)、(Z,2-エンド-3-オキソ)-7-(3-アセチル-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-5-ヘプタ-3Z-エン酸、4-フェニル-チオセミカルバゾン(EP092--Univ. Edinburgh, Brit. J. Pharmacol. 84(3): 595, March 85);GR 32,191(バピプロスト)--[1R-[1α(Z),2β,3β,5α]]-(+)-7-[5-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメトキシ)-3-ヒドロキシ-2-(1-ピペリジニル)シクロペンチル]-4-ヘプテン酸;ICI 192,605--4(Z)-6-[(2,4,5-シス)2-(2-クロロフェニル)-4-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキサン-5-イル]ヘキセン酸;BAY u 3405(ラマトロバン)--3-[[(4-フルオロフェニル)スルホニル]アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-カルバゾール-9-プロパン酸;又はONO 3708--7-[2α,4α-(-(ジ-メチルメタノ)-6β-(2-シクロペンチル-2β-ヒドロキシアセトアミド)-1α-シクロヘキシル]-5(Z)-ヘプテン酸;(±)(5Z)-7-[3-エンド-[(フェニルスルホニル)アミノ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エキソ-イル]-ヘプテン酸(S-1452、Shionogiドミトロバン、Anboxan(商標));(-)6,8-ジフルオロ-9-p-メチルスルホニルベンジル-1,2,3,4-テトラヒドロカルバゾール-1-イル-酢酸(L670596、Merck)、及び(3-[1-(4-クロロベンジル)-5-フルオロ-3-メチル-インドール-2-イル]-2,2-ジメチルプロピオン酸(L655240、Merck)。本発明に従って使用することができるTPアンタゴニストには、通常、単位用量あたり1〜1000mg、かつ1日につき1〜5000mgのベンゼンアルコン酸(benzenealkonic acid)及びベンゼンスルホンアミド誘導体が含まれる。
【0050】
ある特定の実施形態では、TPモジュレーターは、イフェトロバン(これは、上で述べたものである、又は3-[2-[[(1S,4R,5S,6R)-5-[4-(ペンチルカルバモイル)-1,3-オキサゾール-2-イル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-6-イル]メチル]フェニル]プロパン酸塩と記述される)、又はイフェトロバンナトリウム(これは、3-[2-[[(1S,4R,5S,6R)-5-[4-(ペンチルカルバモイル)-1,3-オキサゾール-2-イル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-6-イル]メチル]フェニル]プロパン酸ナトリウムである)である。本明細書では、用語イフェトロバンには、イフェトロバン及びイフェトロバンナトリウムが含まれる。イフェトロバンの構造を、式Iに示す:
【化1】

【0051】
(2.ADPモジュレーター)
特定の実施態様では、ADPモジュレーターは、血小板ADP受容体のアンタゴニスト又は阻害剤、すなわちADP受容体アンタゴニスト、又はヒトCD39のモジュレーター(例えば、組み換え型の可溶性ecto-ADPアーゼ/CD39)である。
【0052】
本明細書で使用する用語「ADP受容体アンタゴニスト」は、治療的に有効な用量又は濃度で使用される場合に、ADP受容体の活性を少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%阻害又は低下させることができる化合物を指す。ADP受容体アンタゴニストには、チエノピリジン誘導体(例えばクロピドロゲルなど)を含めた小分子及び/又はプロドラッグが含まれる。ADP受容体アンタゴニストには、ADP受容体と結合し、その活性を阻害するポリペプチド及び核酸も含まれる。ADP受容体阻害剤は、受容体を、その活性をブロックするように修飾する薬剤である。ADP受容体アンタゴニストとしては、受容体に対する抗体を挙げることができる。抗体は、モノクローナルであり得る。これらは、ヒト又はヒト化抗体であり得る。これらは、ヒトADP受容体を指向し得る。
【0053】
ADP受容体アンタゴニストの例としては、それだけには限らないが、クロピドグレル、プラスグレル、及びチクロピジンなどのチエノピリジン誘導体、並びにカングレロール及びAZD6140などの直接作用剤が挙げられる。
【0054】
本発明による使用のためのADP受容体モジュレーターの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,051,141号又は米国特許第4,127,580号に記載されている5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン;米国特許第5,955,447号及びJournal of Medicinal Chemistry, 1999, Vol. 42, p. 213-220に記載されている、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸との一無水物;Journal of Medicinal Chemistry, 1999, Vol. 42, p. 213-220に記載されている、2-(プロピルチオ)-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)との一無水物;米国特許第4,529,596号、米国特許第4,847,265号、又は米国特許第5,576,328号に記載されている(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル;及び米国特許第5,288,726号又はWO 02/04461に記載されている2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、又は医薬として許容し得るその塩;5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2- -c]ピリジン(特に、その塩酸塩)、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[-(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸との一無水物、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル(特に、その硫酸塩)、又は2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5-,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン(特に、その塩酸塩)、又は医薬として許容し得るその塩、より好ましくは、2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、又は医薬として許容し得るその塩(特に、その塩酸塩)、並びに、これらの特許及び出願のいずれかに記載される、他の任意のADPモジュレーター又はADP受容体アンタゴニスト。
【0055】
特定の実施態様では、本発明によるADP受容体アンタゴニストは、米国特許出願第11/556,490号に記載される化合物又はその塩である。一実施態様では、ADP受容体アンタゴニストは、式IIに示される構造を有する:
【化2】

この化合物は、P2Y12ADP受容体に特異的に結合し、クロピドグレルに対する優れた薬物動態学的特性を有する、ADP介在性血小板凝集の可逆的阻害剤である。さらに、これは、予め形成された血栓を脱凝集させることが実証されている。
【0056】
さらなる関連する抗血栓剤は、例えば、米国特許第6,689,786号、第7,022,731号、第6,906,063号、第7,056,926号、第6,667,306号、第6,762,029号、第6,844,367号、第6,376,515号、第6,835,739号、第7,022,695号、第6,211,154号、第6,545,054号、第6,777,413号、第6,534,535号、第6,545,055号、第6,638,980号、第6,720,317号、第6,686,368号、第6,632,815号、第6,673,817号、及び第7,022,695号、並びに米国特許出願第11/304,054号、第11/107,324号、第11/236,051号、第10/942,733号、第10/959,909号、第11/158,274号、第11/298,317号、第11/298,296号、及び第11/284,805号に記載されている。これらの薬剤は、市販品として購入することもできるし、公開された方法に従って製造することもできる。
【0057】
特定の実施態様では、ADPモジュレーターは、血小板ADP受容体のアンタゴニストもしくは阻害剤、又はヒトCD39のモジュレーター(例えば、組み換え型の可溶性ecto-ADPアーゼ/CD39)である。
【0058】
ADP受容体モジュレーターは、例えば、米国特許第4,051,141号、米国特許第4,127,580号、米国特許第5,955,447号、Journal of Medicinal Chemistry, 1999, Vol. 42, p. 213-220、米国特許第5,721,219号、米国特許第4,529,596号、米国特許第4,847,265号、米国特許第5,576,328号、米国特許第5,288,726号、もしくはWO 02/04461に記載されている方法、又はそれに類似した方法に従って容易に調製することができる。米国特許出願公開第20050192245号(その中に開示されるADPモジュレーター内容に関して参照により本明細書に組み込む)も参照のこと。
【0059】
(B.抗血栓剤を使用して血栓症及び心臓血管疾患を治療する方法)
本発明の方法は、血小板凝集又は血液凝固を阻害する、低下させる、又は予防するために、あるいは、血栓症並びに関連する心臓血管疾患及び障害を治療又は予防するために、インビトロとインビボの両方で実施することができる。一実施態様では、本発明の方法は、使用前に保管されていた血小板調製物に対して実施される。他の実施態様では、本発明の方法は、患者(これには、哺乳類、特にヒトが含まれる)に対してインビボで実施される。
【0060】
抗血栓剤の有効濃度又は治療濃度を決定する方法は、治療の必要のある患者を治療するために、例えば患者における血栓症を治療又は予防するために使用するのに適した投薬量又は量を決定するために使用することができる。一実施態様では、本発明は、血小板凝集を阻害又は予防する必要のある患者において血小板凝集を阻害又は予防する方法であって、治療濃度の抗血栓剤を、投与の必要のある患者に投与することを含む前記方法を含む。ここでは、前記治療濃度は、哺乳類から得られる血液サンプルを、該血液サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに(b)続いて、該血液サンプルをある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び血液サンプルにおける血小板凝集の第2量を計測することによって決定される。ここでは、血小板凝集の第2量が、血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、抗血栓剤の血漿濃度は、治療的に有効な血漿濃度である。
【0061】
動脈血栓症及び血液凝固の障害は、それだけには限らないが、心筋梗塞、血栓性脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、難治性アンギナ、一過性脳虚血発作、塞栓性発作、播種性血管内凝固症候群、敗血症性ショック、深部静脈血栓症、肺塞栓症、再閉塞、再狭窄、肺塞栓症、及び閉塞性冠動脈血栓、又は血栓溶解療法、経皮的冠動脈形成術、もしくは冠動脈バイパス移植に由来する他の合併症を含めた様々な心臓血管関連の疾患及び障害と関連する。さらに、本発明の方法及び組成物は、肺性高血圧、例えば低酸素誘発性肺性高血圧、及び血管内血栓症(これはCox-2と関連づけられている)を治療又は予防するために使用することができる(Cathcart, M.C.らの論文、J. Pharmacol. Exp. Ther. March 28, 2008 DOI: 10.1124/jpet.107.134221)。本発明の方法は、これらの及び他の血栓症又は血液凝固関連疾患及び障害のいずれかの治療又は予防に使用することができる。
【0062】
本明細書では、文脈によってそうではないことが明らかにならない限り、「治療する」、及び「治療」、「治療すること」などの同様の単語は、好ましくは臨床成績を含めた、有益又は所望の結果を得るための手法である。治療は、任意に、疾患又は状態(例えば、血栓症又は関連する疾患もしくは障害)の軽減又は改善、あるいは疾患又は状態の進行の遅延を含み得る。
【0063】
本明細書では、文脈によってそうではないことが明らかにならない限り、「予防する」、及び「予防」、「予防すること」などの同様の単語は、疾患又は状態(例えば、血栓症又は関連する疾患もしくは障害)の開始又は再発を予防する、又は疾患又は状態の徴候の発生又は再発を予防するための手法、あるいは場合によっては、疾患又は状態の開始又は再発を遅らせる、又は疾患又は状態の徴候の発生又は再発を遅らせるための手法である。
【0064】
通常、対象は、有効量の抗血栓剤を提供される。本明細書では、物質、例えば抗血栓剤の「有効量」又は「治療有効量」は、臨床成績を含めた有益な結果などの、所望の生物的又は心理的効果に影響を及ぼすのに十分な量である。例えば、本発明の方法のある実施態様においては、抗血栓剤の有効量は、血栓症又は関連する疾患もしくは障害を軽減させる又は改善するのに十分な量である。
【0065】
ある実施態様では、本発明の方法は、抗血栓剤活性の以前のアッセイでは、インビボでの血小板凝集の有効な阻害に必要な抗血栓剤の量が、有意に低く見積もられていたという驚くべき発見に基づいている。したがって、本発明の特定の方法は、必要であると従来考えられていた、あるいは患者を治療するのに従来使用されていたよりも、より多い投薬量又はより高い血漿濃度の抗血栓剤を使用して実施される。これらは、例えば、インビトロのU-46619誘発性血小板凝集アッセイを使用して血小板凝集を阻害するのに有効であると決定された濃度の、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、又は少なくとも10倍であり得る。
【0066】
特定の実施態様では、本発明の方法は、本明細書に記述する通りに生理的血小板アゴニストを利用するインビトロアッセイを使用して血小板凝集を阻害するのに有効であると示された濃度と同じ、又はそれに匹敵する血漿濃度レベルを達成するのに十分な量の抗血栓剤を患者に投与することを含む。特定の実施態様では、その血漿濃度は、インビトロアッセイにおいて有効であると示された濃度の50%から200%である。特定の実施態様では、インビトロアッセイにおいて有効であると示される濃度は、血小板凝集をアスピリン使用と同じ程度まで阻害するのに必要とされる濃度と同じ、又はそれよりも大きい濃度である。別の実施態様では、これは、少なくとも25%の血小板凝集を阻害することを示す最低濃度である。さらに別の実施態様では、これは、本明細書に記載されるインビトロアッセイで達成される血小板凝集の最大阻害の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%を達成するのに必要とされる濃度である。
【0067】
種々の実施態様では、本発明の方法は、本明細書に記述する通りに生理的血小板アゴニストを利用するインビトロアッセイを使用して、血小板凝集を少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、又は少なくとも72時間阻害するのに有効であると示された濃度と同じ、又はそれに匹敵する血漿濃度レベルを維持するのに十分な量の抗血栓剤を患者に投与することを含む。特定の実施態様では、その血漿濃度は、インビトロアッセイにおいて有効であると示された濃度の50%から200%である。該量の抗血栓剤を、一回量として投与することもできるし、所望の血漿濃度を維持するために定期的に投与することもできる。例えば、抗血栓剤は、6、12、24、48、又は72時間ごとに、ある期間投与することができる。
【0068】
一実施態様では、本発明は、血小板凝集又は血栓症を軽減又は阻害する方法であって、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、少なくとも900nM、又は少なくとも1000nMの抗血栓剤の血漿濃度をある期間達成するのに十分な量の抗血栓剤を患者に提供することを含む方法を提供する。この期間は、例えば、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、又は少なくとも48時間であり得る。別の実施態様では、この期間は、抗血栓剤の慢性的使用に関連する期間、例えば、少なくとも3ヵ月、少なくとも6ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも1年、あるいはそれより長い期間であり得る。
【0069】
ある特定の実施態様では、少なくとも12時間又は少なくとも24時間、少なくとも350nMの血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に提供することによって、血小板凝集又は血栓症が軽減又は阻害される。特定の実施態様では、患者は、少なくとも24時間、少なくとも350nMの恒常的な血漿濃度を達成するために、少なくとも450mgのイフェトロバンを提供される。
【0070】
別の実施態様では、本発明は、血栓症を治療又は予防する方法であって、定常状態濃度が350nMから1000nMの範囲である総血漿濃度をしばらくの間達成するのに十分な量のイフェトロバンを投与することを含む前記方法を含む。
【0071】
本発明はまた、血栓症を治療又は予防する方法であって、Cmaxが1500から2500ng/mLである総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。別の実施態様では、Cmaxは、2188ng/mL以下である。
【0072】
別の実施態様では、本発明は、血栓症を治療又は予防する方法であって、平均トラフ濃度が100から200ng/mLの範囲である総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。一実施態様では、平均トラフ濃度は、154ng/mLである。
【0073】
別の実施態様では、本発明は、血栓症を治療又は予防する方法であって、トラフ濃度に対するピークの比が15以下である総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法を含む。
【0074】
特定の実施態様では、抗血栓剤は、1、5、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1000nM以上の血漿濃度を達成するのに十分な量で投与される。特定の実施態様では、これは、250nM又は350nM以上の血漿レベルを達成するのに十分な量で投与される。ある実施態様では、これは、1〜10nM、1〜100nM、10〜1000nM、50〜500nM、100〜500nM、200〜400nM、200〜1000nM、又は500〜1000nMの範囲の血漿濃度を達成するのに十分な量で投与される。
【0075】
特定の実施態様では、イフェトロバンは、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも550nM、又は550nM超の血漿濃度を達成するのに十分な量で投与される。ある実施態様では、イフェトロバンは、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも550nM、又は550nM超の血中濃度を少なくとも6、12、24、又は48時間維持するのに十分な量で投与される。
【0076】
特定の実施態様では、薬剤は、約0.01mg/kgから約100mg/kg、約0.1mg/kgから約100mg/kg、約1mg/kgから約100mg/kg、又は約10mg/kgから約100mg/kgの範囲の量で投与される。特定の実施態様では、抗血栓剤は、約1mg/kgから約10mg/kg、約2mg/kgから約10mg/kg、約4mg/kgから約8mg/kg、又は約6mg/kgから約8mg/kgの範囲の量で投与される。一実施態様では、これは、約7mg/kgで投与される。したがって、特定の実施態様では、総量約100〜1000mg、100〜500mg、200〜500mg、300〜500mg、又は400〜500mgが、一回量として患者に投与される。一実施態様では、約450mgが患者に投与される。特定の実施態様では、投与は、経口又は静脈内投与である。
【0077】
本発明のさらなる方法は、本明細書に記載される量の抗血栓剤を1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与することによって、血栓症又は心臓の疾患もしくは障害を治療又は予防することを含む。一実施態様では、さらなる治療剤は、それだけには限らないが本明細書に記載されるもののいずれかを含めた、ADP受容体を遮断する抗血小板薬である。こうした薬物の例としては、クロピドグレル、チクロピジン、及び2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボキシル-2--フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンが挙げられる。別の実施形態では、さらなる治療剤は、Xa因子の阻害剤である。
【0078】
(C.抗血栓剤の医薬組成物及び単位用量製剤)
抗血栓剤及び他の治療剤は、医薬組成物に入れて、例えば、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、及び筋肉内投与を含めた様々な経路の送達を介して患者に投与することができる。これらの、また他の投与経路及び適切な医薬製剤は、当分野で公知であり、そのうちのいくつかを、実例の一般目的のために簡単に後述する。当然、治療上有用な各組成物中の該量の活性な化合物(1つ以上)は、化合物の任意の所与の単位用量において適切な投薬量が得られるような方法で調製することができる。溶解度、生体利用効率、生物的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命、並びに他の薬理学的要件などの因子は、こうした医薬製剤を調製する当業者によって熟考されることとなり、それにより、様々な投薬量及び治療計画が妥当となり得る。本発明の医薬組成物は一般に、その組成物が患者に投与された際に、その中に含有される有効成分が生体利用可能となるように調製される。
【0079】
本明細書に記載される組成物のいずれかが、本発明の抗血栓剤の医薬として許容し得る塩を含有できることは明らかであろう。こうした塩は、例えば、有機塩基(例えば一級、二級、及び三級アミン並びに塩基性アミノ酸の塩)、並びに無機塩基(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウム塩)を含めた、医薬として許容し得る非毒性塩基から調製することができる。
【0080】
したがって、本発明の一態様では、生理的に許容し得る又は医薬として許容し得る希釈剤、賦形剤、又は担体と組み合わせて、本明細書に記載される1つ以上の抗血栓剤を含む医薬組成物が提供される。治療的使用のための「医薬として許容し得る担体」は、医薬品分野で周知であり、例えば、「レミントンの薬学(Remingtons Pharmaceutical Sciences)」,Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro編 1985)に記載されている。例えば、滅菌生理食塩水及び生理的pHのリン酸緩衝生理食塩水を使用することができる。保存剤、安定剤、色素、さらに着香料も、医薬組成物中に提供することができる。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを、保存剤として加えることができる。同上、1449。さらに、酸化防止剤及び懸濁剤も使用することができる。同上。
【0081】
当業者に公知の任意の適切な担体を、この発明の組成物中に利用することができるが、担体のタイプは通常、投与様式に応じて変わることとなる。本発明の組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、粘膜、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、及び筋肉内投与を含めた任意の適切な投与方式のために調製することができる。ある種の状況では、本明細書に開示する抗血栓剤を、非経口的、静脈内、筋肉内、さらには腹膜内に送達することが望ましいであろう。用語「非経口的」には、本明細書では、皮下注射、静脈内、筋肉内、硬膜外、胸骨内注射又は注入技術が含まれる。こうした手法は、当業者に周知であり、そのうちのいくつかは、例えば、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号、及び米国特許第5,399,363号にさらに記載されている。
【0082】
ある実施態様では、遊離塩基として又は薬理的に許容し得る塩としての薬剤の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中に調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中に、また、オイル中に分散液を調製することもできる。保管及び使用の通常の条件下では、これらの調製物は一般に、微生物の増殖を妨げるために、保存剤を含有する。
【0083】
注射用途に適した例示的な剤型としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる(例えば、米国特許第5,466,468号を参照のこと)。一実施態様では、水溶液での非経口投与については、溶液は必要に応じて適切に緩衝され、液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水又はグルコースで等張性にされるべきである。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に適している。これに関して、利用することができる滅菌水性媒体は、本発明の開示に照らして当業者に知られることとなる。さらに、ヒト投与については、調製物は当然、FDA「生物学基準の研究室(Office of Biologics standards)」によって必要とされる通りの無菌性、発熱性、及び一般的な安全性及び純粋性基準を好ましくは満たすこととなる。
【0084】
担体は、あらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどをさらに含むことができる。医薬品活性物質のためのこうした媒体及び薬剤の使用は、当分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤は、有効成分と不適合である場合以外は、治療組成物中でのその使用が意図される。補助的な有効成分も、組成物に組み込むことができる。語句「医薬として許容し得る」は、ヒトに投与された場合に、アレルギー又は同様の有害反応をもたらさない分子的存在物及び組成物を指す。
【0085】
ある実施態様では、医薬組成物は、医薬として許容し得る1つ以上の担体又は希釈剤、緩衝液(例えば中性の緩衝食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えばグルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、又はグリシンなどのアミノ酸、抗酸化薬、静菌剤、EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、製剤をレシピエントの血液に対して等張性、低張性、又はわずかに高張性にする溶質、懸濁剤、増粘剤、及び/又は保存剤を含む。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として調製することができる。
【0086】
本明細書に記載する組成物は、密閉されたアンプル又はバイアルなどの単位用量又は複数回投与用容器で与えることができる。こうした容器は通常、使用するまで製剤の無菌性及び安定性を保つように密閉される。特定の実施態様では、製剤は、油性又は水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンとして保管することができる。あるいは、組成物は、使用直前に滅菌液体担体を加える必要があるだけの、凍結乾燥させた状態で保管することができる。
【0087】
ある種の用途では、本明細書に開示する抗血栓剤は、動物への経口投与を介して送達することができる。したがって、これらの組成物は、例えば、不活性希釈剤と共に、あるいは吸収可能な食用担体と共に調製することもできるし、ハード又はソフト(soft-shell)ゼラチンカプセル中に封入することもできるし、錠剤に圧縮することもできるし、食事の食物に直接的に組み込むこともできる。
【0088】
患者に投与するための組成物は、1つ以上の投薬単位という形をとることができ、ここでは、例えば、錠剤、カプセル、又はカシェ剤が、単一の投薬単位であってもよいし、エアロゾル形のイオンチャネル調節化合物の容器が、複数の投薬単位を有してもよい。特定の実施態様では、TPアンタゴニストなどの抗血栓剤を含む組成物が、通常は経口投与のために、錠剤調合物として1回又は複数回投与で投与される。錠剤調合物は、例えば、即時放出製剤、制御放出製剤、又は持続放出製剤であり得る。特定の実施態様では、錠剤は、約1、5、10、20、30、50、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1000mgの、イフェトロバンなどの抗血栓剤又はTPアンタゴニストを含む。特定の実施態様では、錠剤調合物は、約200〜250又は400〜500mgのイフェトロバンを含む。
【0089】
本明細書では、「制御放出」は、同一量の有効成分を含有する即時放出製剤が同じ期間に放出するであろうよりも、より長期間にわたる、製剤からの有効成分の持続的かつ調節的な放出を指す。例えば、抗血栓剤を含む即時放出製剤は、ヒト対象への投与の15分以内に、有効成分の80%を製剤から放出する可能性があるのに対し、同一量の抗血栓剤を含む本発明の持続放出製剤は、15分より長い期間、好ましくは6から12時間以内に、有効成分の80%を放出するであろう。制御放出製剤によって、投薬の必要のある哺乳類への投薬の頻度を、より少なくすることが可能となる。さらに、制御放出製剤によって、投与の必要性のある哺乳類に投与した際の、該化合物の薬物動態学的又は毒性プロフィールを向上させることができる。
【0090】
本明細書では、「持続放出」は、同一量の有効成分を含有する即時放出製剤が同じ期間に放出するであろうよりも、より長期間にわたる、製剤からの有効成分の持続的かつ調節的な放出を指す。例えば、抗血栓剤を含む即時放出製剤は、ヒト対象への投与の15分以内に、有効成分の80%を製剤から放出する可能性があるのに対し、同一量の抗血栓剤を含む本発明の持続放出製剤は、15分より長い期間、好ましくは12時間より長い期間(例えば24時間)以内に、有効成分の80%を放出するであろう。さらに、本発明の持続放出製剤は、同一量の有効成分を含有している比較対象となる制御放出製剤が、インビボで同じ期間にわたって放出するであろうよりも、より長い期間にわたって、有効成分、好ましくはイフェトロバンを放出する。非限定的な例として、有効成分、すなわちイフェトロバンを含有している比較対象となる制御放出製剤が、ヒト対象への投与の後、インビボで4〜6時間の期間にわたって製剤中の本発明の有効成分の量の80%を放出する可能性があるのに対し、本発明の持続放出製剤は、インビボで6〜24時間の期間にわたって同一量の有効成分の80%を放出することができる。したがって、本発明の持続放出製剤によって、患者への投薬の頻度を、相当する制御放出製剤よりも少なくすることが可能となる。さらに、持続放出製剤は、患者に投与した際の、有効成分の薬物動態学的又は毒性プロフィールを向上させることができる。
【0091】
本発明は、抗血栓剤を含む医薬組成物の単位剤形をさらに含む。各単位剤形は、推奨された量で使用される場合の、治療有効量の本発明の医薬組成物を含む。例えば、単位剤形は、単一錠剤中に治療有効量を含むこともできるし、単位剤形は、所定の量が治療有効量を含むように、2つ以上の錠剤中に治療有効量を含むこともできる。
【0092】
本発明は、治療的に有効な投薬量、例えば本明細書に記載される血漿濃度を達成するのに十分な投薬量で薬剤を投与するのに適した、抗血栓剤の単位剤形を提供する。これらの単位用量製剤は、1日1回、1日2回、又は1日3回以上の患者への投与のために調製することができる。この発明による所望の用量の医薬組成物を、一回量で、あるいは適切な間隔で、例えば1日あたり2回、3回、又はそれ以上の服用で投与される分割量として、好都合に与えることができる。ある実施態様では、成人に適した1日量は、1日あたり、1から5000mg、1から1000mg、10から1000mg、50から500mg、100から500mg、200から500mg、300から500mg、又は400から500mgである。したがって、1日2回投与される場合、成人に適した一回量は、.5から2500mg、.5から500mg、5から500mg、25から250mg、50から250mg、100から250mg、150から250mg、又は200から250mgである。単位用量製剤は、複数回投与に容易に適合させることができる。
【0093】
特定の実施態様では、イフェトロバンの単位剤形は、約450mgのイフェトロバンを含有する単一のカプセル、又はそれぞれ約225mgのイフェトロバンを含有する2つのカプセルである。
【0094】
本明細書に記述する通り、本発明の抗血栓剤を、例えば、TPアンタゴニスト、トロンビキサン(thrombixane)アンタゴニスト、ADP受容体アンタゴニスト、又はXa因子アンタゴニストを含めた、1つ以上の他の抗血栓剤又は医薬品と組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用される場合、2つ以上の抗血栓剤が、相加的又は相乗作用で作用する可能性があるので、所望の効果を達成するために、1つ以上の組み合わされた抗血栓剤の、より低い投薬量を利用できることを理解されたい。したがって、1つ以上の組み合わせられた抗血栓剤の治療的に有効な投薬量は、抗血栓剤が単独で投与される場合の治療的に有効な投薬量の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、又は20%未満に相当する可能性がある。
【0095】
2つ以上の抗血栓剤は、同時又は異なる時間に、同じ投与経路によって、又は異なる投与経路によって投与することができる。例えば、投与計画を調整するために、抗血栓剤を、同時又は調整された別の時間に、個々の投薬量単位で別々に投与することができる。それぞれの物質は、上記の方式と同様の方式で、別々の単位剤形で、個々に調製することができる。しかし、抗血栓剤の合剤が、より好都合であり、特に経口投与用の錠剤又はカプセル形では好ましい。
【0096】
したがって、本発明はまた、2つ以上の抗血栓剤を含む単位用量製剤を提供する。ここでは、組み合わせで投与される場合、各血栓症剤は、治療有効量で存在する。
【0097】
特定の実施態様では、患者は、イフェトロバンと、1つ以上のさらなる抗血栓剤を提供される。さらに、本発明は、イフェトロバンと1つ以上のさらなる抗血栓剤とを含む、合剤としての単位用量製剤を含む。例えば、本発明の方法は、別のTPアンタゴニスト又はADP受容体アンタゴニストと組み合わせて、患者にイフェトロバンを与えることを含み得る。特定の実施態様では、イフェトロバンは、P2Y12阻害剤、クロピドグレル、プラスグレル、又はカングレロールと組み合わせて提供される。特定の実施態様では、(イフェトロバン又は別の抗血栓剤と組み合わせて、)その薬剤がアスピリンと組み合わせて使用された場合に有効であると従来示されている量の、さらなる抗血栓剤が提供される。
【0098】
ある実施態様では、クロピドグレルは、約10から約1000mg、好ましくは約25から約600mg、最も好ましくは約50から約100mgの範囲内の1日の経口投薬量で提供される。ある特定の実施態様では、1日につき約400〜500mgのイフェトロバンと約50〜100mgのクロピドグレルが、患者に提供される。関連する実施態様では、1日につき約200〜400mgのイフェトロバンと25〜50mgのクロピドグレルが、患者に提供される。ある特定の実施態様では、患者は、1日につき約450mgのイフェトロバンと約75mgのクロピオグレル(clopiogrel)(例えばPlavix(登録商標))を提供される。
【0099】
ある実施態様では、チクロピジンは、1997 PDRに記載される通りの1日の投薬量(250mg 1日2回)で提供されるが、約10から約1000mg、好ましくは約25から約800mgの1日の投薬量も、本発明に従って利用することができる。ある特定の実施態様では、1日につき約400〜500mgのイフェトロバンと約250〜750mgのチクロピジンが、患者に提供される。関連する実施態様では、1日につき約200〜400mgのイフェトロバンと100〜250mgのチクロピジンが、患者に提供される。ある特定の実施態様では、患者は、1日につき約450mgのイフェトロバンと約500mgのチクロピジン(例えばTidclid(登録商標))を提供される。
【0100】
ある実施態様では、プラスグレルは、1日につき1〜100mg又は1日につき約10mgの1日の投薬量で提供される。ある特定の実施態様では、1日につき約400〜500mgのイフェトロバンと約1〜100mgのプラスグレルが、患者に提供される。関連する実施態様では、1日につき約200〜400mgのイフェトロバンと1〜5mgのプラスグレルが、患者に提供される。ある特定の実施態様では、患者は、1日につき約450mgのイフェトロバンと約10mgのプラスグレルを提供される。
【0101】
本発明はさらに、イフェトロバンと、本明細書に記載される抗血栓剤のいずれかを含めた1つ以上のさらなる抗血栓剤とを含む単位投薬量を提供する。特定の実施態様では、さらなる抗血栓剤は、ADP受容体アンタゴニストである。特定の実施態様では、さらなる抗血栓剤は、P2Y12阻害剤である。本発明の単位投薬量は、特定の実施態様では、イフェトロバンの1日の投薬量と、さらなる1つ以上の抗血栓剤の1日の投薬量を含む。あるいは、単位投薬量は、1日の投薬量を、例えば同時にあるいは異なる時間に2つの単位投薬量で服用できるように、抗血栓剤の1日の投薬量の50%など、1日の投薬量のうちの一部を含む。
【実施例】
【0102】
(実施例1)
(治療的に有効なイフェトロバン投薬量の特定)
アスピリンの抗血栓症活性と等しく扱うために必要とされるイフェトロバンの濃度を、(血漿中のカルシウムの生理的濃度に影響を及ぼさない抗凝血剤を用いて)凝固阻止された多血小板血漿(PRP)及び血液のサンプルについて、それぞれ、コラーゲン誘発性血小板凝集及びリアルタイム潅流チャンバーアッセイを使用して測定した。これらのアッセイによって、コラーゲン誘発性血小板凝集アッセイにおいて低用量アスピリン(75〜325mg/日)と同様の血栓症阻害レベルを提供するイフェトロバンの濃度が、U-46619誘発性血小板凝集アッセイを使用することによって予測された濃度ものよりも約10倍高い(それぞれ、30nM v. 350nM)ことが示された。
【0103】
アスピリンとイフェトロバンの血小板凝集阻害活性を、生理的カルシウム濃度に影響を及ぼさないXa因子阻害剤で凝固阻止されたPRPのサンプルを使用する光線透過凝集測定(LTA)によって、最初に比較した。健康な個人(n=6〜7)からの血液を静脈穿刺によって採取し、FXa阻害剤を用いて凝固阻止した。血小板多血漿(PRP)を獲得し、U-46619(10μM)又はコラーゲン(4μg/ml)を用いて血小板凝集を開始する標準の手順によってLTAを実施した。
【0104】
アスピリンの血小板凝集阻害活性を証明するために、20人の健康な個人を、アスピリンの1日のレジメン(325mg/日)の2週間前と後の両方で調査した。LTAは、血小板凝集を誘発するためにコラーゲン(4マイクログラム/ml)を使用して、PRPサンプルについて実施した。図2に示す通り、アスピリンは、コラーゲン誘発性血小板凝集の程度を、ベースラインに対して39+/-6.0%v.(平均+標準誤差)低下させた。
【0105】
インビトロで非アスピリン(non-aspirinated)PRPに漸増濃度のイフェトロバンを加え、及びU-46619又はコラーゲン存在下でLTAを実施することによって、アスピリンの阻害活性を達成するために必要とされるイフェトロバンの濃度を測定した。図2に示されるデータは、イフェトロバンが、30nM超の濃度で、U-46619誘発性血小板凝集を完全に阻害したことを実証する。一方で、コラーゲン誘発性血小板凝集の最大阻害は、350nM以上の濃度で生じた。これらのデータは、アスピリンと同程度に血小板凝集を阻害するために、約350nMのイフェトロバンが必要とされることを示す(図2中の点線によって示される)。
【0106】
別のアッセイでは、リアルタイム潅流チャンバーアッセイ(ここでは、Fxa阻害剤で凝固阻止された血液を、コラーゲンでコートした毛細管を通して注いだ)を使用して、アスピリンとイフェトロバンの抗血栓症活性を比較した。アスピリンの抗血栓症活性は、1日につき325mgのアスピリンで2週間治療した20人の健康な対象から得られる血液を使用して測定した。
【0107】
アスピリンによって提供される抗血栓症活性を達成するイフェトロバンの濃度を測定するために、漸増濃度のイフェトロバンを、チャンバーを介する灌流の前に、非アスピリン血液のサンプルに加えた(n=6 別々の個人)。図3に示す通り、300nM以上のイフェトロバン濃度は、アスピリンと同等又はアスピリンよりも優れた、血栓症に対する阻害活性を提供した。
【0108】
これらのデータによって、コラーゲンによって誘発される血小板凝集を阻害するために必要とされるイフェトロバンの量が、U-46619によって誘発される血小板凝集と比較して、かなり多い(約10倍)ことが実証される。したがって、イフェトロバンの治療的に有効な投薬量は、U-46619誘発性凝集アッセイを使用して従来決定されていたものものよりもかなり高いことが予測できる。さらに、これらの実験は、イフェトロバンなどのTPアンタゴニストを含めた抗血栓剤の治療的に有効な投薬量を決定するために、U-46619誘発性血小板凝集アッセイよりも生体関連性が高いコラーゲン誘発性血小板凝集アッセイを使用できることを実証する。
【0109】
(実施例2)
(アスピリン耐性の患者とアスピリン感受性の患者におけるイフェトロバンの抗血小板効果)
アスピリン不耐性の(AERD)-喘息患者(AIA)患者と健康な被験者の血栓症プロフィールを、基本的には実施例1に述べた通り、生理的血小板アゴニストを使用する脱感作の後、PRT061103及びアスピリンの抗血小板効果と比較することによって評価した。
【0110】
Fxa阻害剤(10uM 034)で凝固阻止し、コラーゲンでコートした毛細管を通して注いだ(1100/sec)血液を使用して、リアルタイム潅流チャンバーアッセイ(RTTP)を実施した。コラーゲン表面上の血栓形成を、蛍光顕微鏡を使用して、リアルタイムでモニタリングし、蛍光標識された(R6G)血小板を検出した。
【0111】
光線透過凝集測定(LTA)アッセイを、コラーゲン又はアラキドン酸を用いて血小板凝集を開始する標準の手順によって実施した。
【0112】
アスピリン脱感作の前(+/-イフェトロバン、インビトロで添加)と後でアッセイを実施した。
【0113】
図4に示す通り、PRT061103は、潅流チャンバーアッセイを使用して測定した場合、健康な被験者(図4A)とAERD患者(図4B)の両方において、有意な抗血栓症活性を有していた。イフェトロバンも、コラーゲン誘発性血小板凝集アッセイ(図5)において、健康な被験者とAERD患者の両方において、有意な抗凝集活性を示した。具体的には、PRT061103は、>100nM濃度で、健康な被験者(図5A)とAERD患者(図5B)の両方において、コラーゲン誘発性血小板凝集及び血栓症に対するアスピリンの効果を再現した。健康な被験者では、100nMイフェトロバンは、アスピリンよりも有意に低い血小板凝集の阻害を有したのに対し、350及び1000nMイフェトロバンは、アスピリンと同じレベルの阻害を示した。
【0114】
他のTPアンタゴニストが血栓症を阻害する能力を、SQ29548、すなわち直接作用性のTPアンタゴニスト、及びテルボグレル、すなわちTPとTxA合成酵素の混合された阻害剤を使用して実証した。潅流チャンバー試験(RTTP)を使用して測定される通り、インビトロで添加されたSQ29548とテルボグレルは両方とも、AERD患者において(脱感作の後)、アスピリンと同様のレベルの血栓症阻害を提供した(図6)。
【0115】
健康な被験者及びAERD患者におけるアスピリンに対するPRT061103の抗凝集活性を、アラキドン酸誘発性血小板凝集分析を使用して、さらに実証した(図7A及び7B)。ここでは、3つの試験された用量のイフェトロバンはすべて、アラキドン酸誘発性血小板凝集を十分に妨げた。しかし、アラキドン酸は、生理的血小板アゴニストではないので、このアッセイでは、インビボでの有効濃度を提供する用量が定義されない。
【0116】
これらのデータは、生理的血小板アゴニスト、例えばコラーゲン又はアラキドン酸を使用して実施される血小板凝集アッセイを用いて、アスピリン耐性の患者及びアスピリン不耐性又はアスピリン感受性の患者におけるイフェトロバンなどのTPアンタゴニストを含めた抗血栓剤の治療的に有効な投薬量を決定することができることを実証する。
【0117】
上記の様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。この明細書中に引用した、かつ/又は出願データシート中に列挙した米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許公報はすべて、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。さらに他の実施態様を提供するために、様々な特許、出願、及び公報の概念を使用する必要があるならば、実施態様の態様を改変することができる。
【0118】
これらの変更、及び他の変更を、上記の詳細な説明を踏まえて、実施態様に対して行うことができる。一般に、以下の請求項では、使用する用語は、請求項を、明細書及び請求項中に開示される特定の実施態様に限定するものと解釈するべきではなく、こうした請求項が権利を与えられる最大限の範囲の等価物と共に、可能性のあるすべての実施態様を含むものと解釈するべきである。したがって、請求項は、開示によって限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板凝集を阻害する必要のある患者において血小板凝集を阻害する方法であって、治療濃度の抗血栓剤を、投与の必要のある患者に投与することを含み、前記治療濃度は、
(a)哺乳類から得られる血液サンプルを、該血液サンプルにおいて血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに
(b)続いて、該血液サンプルをある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び該血液サンプル中の血小板凝集の第2量を計測すること
を含む方法によって決定され、ここで、該血小板凝集の第2量が、該血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、該抗血栓剤の血漿濃度が、治療的に有効な血漿濃度である、前記方法。
【請求項2】
前記生理的血小板アゴニストがコラーゲンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生理的血小板アゴニストと前記血液サンプルを接触させる前に、該血液サンプルの凝固を阻止することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記抗血栓剤が、トロンボキサン受容体アンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記トロンボキサン受容体アンタゴニストが、イフェトロバンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記血小板凝集の第1量及び第2量が、光線透過凝集測定によって測定される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記血小板凝集の第1量及び第2量が、リアルタイム灌流チャンバーを使用して測定される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
血小板の凝集を阻害する方法であって、100nM超の濃度のイフェトロバンと血小板を接触させることを含む、前記方法。
【請求項9】
患者における血栓症を治療又は予防する方法であって、100nM超の血漿濃度を少なくとも24時間達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法。
【請求項10】
前記イフェトロバンの量が、1から10mg/kg/日である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記量が、350nM以上の血漿濃度を少なくとも12時間達成するのに十分である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記量が、350nM以上の血漿濃度を少なくとも24時間達成するのに十分である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記イフェトロバンの量が、6から10mg/kg/日である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
患者における血栓症を治療又は予防する方法であって、治療的に有効な血漿濃度の抗血栓剤を患者に投与することを含み、該治療的に有効な血漿濃度は、
(a)哺乳類から得られる血液サンプルを、該血液サンプルにおける血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに
(b)続いて、該血液サンプルをある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び該血液サンプル中の血小板凝集の第2量を計測すること
を含む方法によって決定され、ここで、該血小板凝集の第2量が、該血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、該抗血栓剤の血漿濃度が、治療的に有効な血漿濃度である、前記方法。
【請求項15】
前記生理的血小板アゴニストがコラーゲンである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記血液サンプルを前記生理的血小板アゴニストと接触させる前に、該血液サンプルの凝固を阻止することをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記抗血栓剤が、トロンボキサン受容体アンタゴニストである、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記トロンボキサン受容体アンタゴニストが、イフェトロバンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記血小板凝集の第1量及び第2量が、光線透過凝集測定によって測定される、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記血小板凝集の第1量及び第2量が、リアルタイム灌流チャンバーを使用して測定される、請求項14記載の方法。
【請求項21】
医薬として許容し得る担体と、250nMの血漿濃度を少なくとも24時間維持するのに十分な量のイフェトロバンを含む、イフェトロバンの単位用量製剤。
【請求項22】
前記イフェトロバンの量が、350nMの血漿濃度を少なくとも24時間維持するのに十分である、請求項21の単位用量製剤。
【請求項23】
前記製剤が1日1回投与に適合され、かつ前記イフェトロバンの量が、6〜10mg/kgの用量である、請求項21の単位用量製剤。
【請求項24】
前記製剤が1日2回投与に適合され、かつ前記イフェトロバンの量が、3〜5mg/kgの用量である、請求項21の単位用量製剤。
【請求項25】
哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度を決定する方法であって、
(a)哺乳類から得られた血液サンプルを、該血液サンプルにおける血小板凝集を誘発するのに十分な量の生理的血小板アゴニストと接触させること、及び血小板凝集の第1量を計測すること;並びに
(b)続いて、該血液サンプルを、ある血漿濃度の抗血栓剤と接触させること、及び該血液サンプルにおける血小板凝集の第2量を計測することを含み、ここで、該血小板凝集の第2量が、該血小板凝集の第1量より少なくとも25%低い場合、該血漿濃度が、哺乳類の血小板の凝集を阻害するための抗血栓剤の有効濃度である、前記方法。
【請求項26】
前記生理的血小板アゴニストが、コラーゲン、エピネフリン、及びADPからなる群から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記血液サンプルを前記生理的血小板アゴニストと接触させる前に、該血液サンプルの凝固を阻止することをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記抗血栓剤が、トロンボキサン受容体アンタゴニストである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記トロンボキサン受容体アンタゴニストが、イフェトロバンである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
患者における血栓症を治療又は予防する方法であって、少なくとも350nMの恒常的な血漿濃度をしばらくの間達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に提供することを含む前記方法。
【請求項31】
前記イフェトロバンの量が、350nMから1000nMの範囲の恒常的な血漿濃度をしばらくの間達成するのに十分である、請求項31記載の方法。
【請求項32】
患者における血栓症を治療又は予防する方法であって、Cmaxが1500から2500ng/mLの範囲である血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法。
【請求項33】
患者における血栓症を治療又は予防する方法であって、平均トラフ濃度が約154ng/mLである総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法。
【請求項34】
患者における血栓症を治療又は予防する方法であって、トラフ濃度に対するピークの比が15以下である総血漿濃度を達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に投与することを含む前記方法。
【請求項35】
患者における心臓血管疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、100nM超の血漿濃度を少なくとも12時間達成するのに十分な量のイフェトロバンを患者に提供することを含む前記方法。
【請求項36】
前記血漿濃度が、少なくとも12時間、100nM超である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記量が、350nM以上の血漿濃度を少なくとも12時間達成するのに十分である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記量が、350nM以上の血漿濃度を少なくとも24時間達成するのに十分である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記イフェトロバンの量が、1から10mg/kg/日である、請求項35記載の方法。
【請求項40】
前記イフェトロバンの量が、6から10mg/kg/日である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記心臓血管疾患又は障害が、心筋梗塞、血栓性脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、難治性アンギナ、一過性脳虚血発作、塞栓性発作、播種性血管内凝固症候群、敗血症性ショック、深部静脈血栓症、肺塞栓症、再閉塞、再狭窄、肺塞栓症、閉塞性冠動脈血栓、血栓溶解療法、経皮的冠動脈形成術、又は冠動脈バイパス移植に由来する合併症、肺性高血圧、及び血管内血栓症からなる群から選択される、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−526104(P2010−526104A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506700(P2010−506700)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062567
【国際公開番号】WO2008/137793
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509303464)ポルトラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】