説明

トンネルの施工装置及び施工方法

【課題】切羽の直後方にて、床版等の構造体を構築する。
【解決手段】トンネルの施工装置1は、シールド機2と、門型の第1及び第2の後続台車4,6と、第1及び第2のクレーン7,8と、を備える。第1及び第2の後続台車4,6は、第1のクレーン7を用いて構築された床版15上を走行する。床版15は、プレキャスト部材によりトンネル幅方向に3分割されている。第2のクレーン8は、資材運搬用トラック9の積荷を第1の後続台車4内の床版15上に荷降ろしする。第1のクレーン7は、第1の後続台車4内の床版15上に荷降ろしされたプレキャスト部材をシールド機2の直後方で組立てて、床版15を構築する。第1のクレーン7の電気ホイストが第1の後続台車4とシールド機2との間にある場合に、電気ホイストのトンネル幅方向移動用の横行レールは、第1の後続台車4の内側面よりトンネル幅方向外方に張り出し可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの施工装置及び施工方法に関し、詳しくは、シールドトンネル内に床版等の構造体を構築する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路やライフライン用として掘進されたシールドトンネルは、一般にトンネルの中央付近下側に構築された床版を境に、車道として利用される上部空間と、排水、電気等の保全施設や避難施設等として利用される下部空間と、に区画されており、この下部空間は、更に必要に応じて、中壁によって、複数の空間に区画されている。
また、上述の床版や中壁等の各部分は、現場施工の省力化・工期の短縮化等を図るべく、プレキャスト部材によって構築されるようになってきている。
【0003】
プレキャスト部材を用いた床版の構築手法としては、例えば、特許文献1に記載の手法がある。特許文献1には、シールド機の掘進に追従して前進する後続台車の後方にクレーンを配置し、このクレーンを用いてプレキャスト部材を組立てて床版を構築する手法が記載されている。
また、特許文献2には、シールド機と後続台車との間にクレーンを配置し、このクレーンを用いて、プレキャストインバートを、トンネル覆工体の下部に設置することが記載されている。なお、この種のクレーンは、主に覆工セグメント、枕木、レール等の荷役用として、従来から多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4318042号公報
【特許文献2】特開2004−183273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、後続台車の後方にてプレキャスト部材を組立てて床版を構築するので、施工済みの床版上を走行する資材運搬用の台車等は後続台車の後方までしか進入できない。従って、資材を後続台車の後方から切羽付近へ運搬するには、そのための装置が別途必要となる。
また、特に特許文献2に記載のクレーンは、その吊り上げ中心がトンネルの中央付近に制限されているので、トンネルの両側部における資材の荷役には不向きであった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、切羽の直後方にて、床版等の構造体を構築することにより、切羽付近への資材運搬の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係るトンネルの施工装置は、トンネルを掘削するシールド機と、シールド機の後方にて構築された床版上に配置され、かつ、シールド機に連結される第1の後続台車と、シールド機と第1の後続台車との間に配置されて両者により支持され、かつ、トンネル内の構造体の構築に用いられる第1のクレーンと、を含んで構成される。第1のクレーンは、構造体を構成する構造部材を吊り上げ可能な吊上装置と、吊上装置をトンネル軸方向に第1の後続台車内から第1の後続台車前方まで移動させるトンネル軸方向移動装置と、吊上装置をトンネル幅方向に移動させるトンネル幅方向移動装置と、を備える。トンネル幅方向移動装置は、トンネル幅方向に延び、かつ、吊上装置が走行する横行レールを備える。そして、横行レールは、トンネル幅方向に伸縮する。
【0008】
また、本発明に係るトンネルの施工方法は、上記施工装置を用い、構造部材を吊り上げた吊上装置をシールド機と第1の後続台車との間に移動させ、横行レールをトンネル幅方向に拡張させ、吊上装置を構造部材の設置位置の直上に移動させ、構造部材を吊り下げて上記設置位置に移動させて、構造体を構築する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のクレーンのトンネル幅方向移動装置は、トンネル幅方向に伸縮する横行レールを備える。これにより、第1のクレーンでは、例えば、切羽の直後方における施工状態に応じて、吊上装置のトンネル幅方向の移動可能範囲を変更することができるので、切羽の直後方にて効率良く構造部材を組立てて構造体を構築することができる。従って、特許文献1に記載のように後続台車の後方にて構造体を構築する場合に比べて、資材運搬用の台車等がシールド機に近づくことができ、これにより、資材運搬用の台車等から切羽付近への資材運搬(いわゆる、2次運搬)を短縮することができるので、切羽付近への資材運搬を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態におけるトンネルの施工装置の概略側面図
【図2】同実施形態におけるトンネルの施工装置の概略平面図
【図3】図1のA−A断面図
【図4】図1のB−B断面図
【図5】図1のC−C断面図
【図6】同実施形態における第1のクレーンの概略構成図
【図7】同実施形態における床版施工時の第1のクレーンの作動状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態におけるトンネルの施工装置の概略構成を示す側面図及び平面図である。また、図3〜図5は、それぞれ、図1におけるA−A断面、B−B断面、及びC−C断面を示す図である。
図1及び図2に示すように、トンネルの施工装置1は、トンネルを掘削するシールド機2と、シールド機2の後方に牽引ビーム3を介して連結される第1の後続台車4と、第1の後続台車4の後方に牽引ビーム5を介して連結される第2の後続台車6と、シールド機2及び第1の後続台車4により支持される第1のクレーン7と、第1の後続台車4及び第2の後続台車6により支持される第2のクレーン8と、を備える。
【0012】
シールド機2は、その後部に、エレクター11と、エレクター11にセグメント12を供給するセグメント供給装置13と、を備える。
シールド機2は、セグメント供給装置13から供給されたセグメント12をエレクター11により組立てて円筒状の覆工体14を構築しつつ、掘進する。
シールド機2の後端上面に設けられたブラケット2aには、図示しないヒンジ機構を介して、牽引ビーム3の一端が取り付けられている。また、牽引ビーム3は、その他端が、図示しないヒンジ機構を介して、第1の後続台車4の先頭上部に取り付けられている。これらの構成により、牽引ビーム3は、シールド機2に対して左右方向で揺動することができ、更に、第1の後続台車4は、牽引ビーム3に対して左右方向で揺動することができる。
【0013】
第1の後続台車4は、覆工体14の下部に構築された床版15の上面を走行するものであり、牽引ビーム3を介してシールド機2により牽引されつつ、シールド機2の掘進に追従して、床版15の上面を前進する。
床版15は、図3に示すように、上下に分割され、かつ、覆工体14の中央下部に配置されるボックスカルバート部材15a,15bと、ボックスカルバート部材15aと覆工体14との間に配置される板状の床版部材15c,15dと、により構成される。ここで、ボックスカルバート部材15a,15b、及び、床版部材15c,15dは、それぞれ、プレキャスト部材であり、本発明における「構造部材」に対応する。
【0014】
ボックスカルバート部材15aは、下面開口のコの字断面を有する一方、ボックスカルバート部材15bは、上面開口のコの字断面を有する。そして、ボックスカルバート部材15bの上面にボックスカルバート部材15aが載置されることにより、矩形断面のボックスカルバートが形成される。
床版部材15c,15dは、各々の一端が図示しないブラケットを介してボックスカルバート部材15aに取り付けられる一方、他端が図示しないブラケットを介して覆工体14の内周面に取り付けられている。
【0015】
床版15は、第1のクレーン7を用いて、覆工体14の下部に構築されるが、この詳細については、後述のトンネルの施工方法(図7参照)にて説明する。
第1の後続台車4は、図4に示すように、アーチ状の上部フレーム41と、この上部フレーム41を支持する左右1対の支持フレーム42と、により構成される門型台車である。また、第1の後続台車4は、その先頭部、中間部、及び後尾部における左右の支持フレーム42の下端に、それぞれ、床版15の上面に接触する左右2対の走行車輪43を備える。更に、第1の後続台車4は、その先頭部、中間部、及び後尾部における左右の支持フレーム42の中央部から各別にトンネル幅方向外方に突出する脚部42aを備え、これらの脚部42aに、それぞれ、覆工体14の内周面に接触する走行車輪44を備えている。なお、上部フレーム41の後尾部には、その左右のアーチ傾斜部にそれぞれ、上部フレーム41より内方に突出するブラケット45が設けられており、このブラケット45には、後述する第1のクレーン7用の走行レール71が取り付けられている。
【0016】
第1の後続台車4には、シールド機2用の電力供給装置(例えば、トランスや配電盤)、油圧供給装置(例えば、タンクやポンプ)、及び、水供給装置等の各種装置(図示せず)が搭載されている。
図1及び図2に戻り、第1の後続台車4の後尾上端部には、図示しないヒンジ機構を介して、牽引ビーム5の一端が取り付けられている。また、牽引ビーム5は、その他端が、図示しないヒンジ機構を介して、第2の後続台車6の先頭上端部に取り付けられている。これらの構成により、牽引ビーム5は、第1の後続台車4に対して左右方向で揺動することができ、更に、第2の後続台車6は、牽引ビーム5に対して左右方向で揺動することができる。
【0017】
第2の後続台車6は、牽引ビーム5を介して第1の後続台車4により牽引されつつ、床版15の上面を前進する。
第2の後続台車6は、図5に示すように、アーチ状の上部フレーム61と、この上部フレーム61を支持する左右1対の支持フレーム62と、により構成される門型台車である。また、第2の後続台車6は、その先頭部、中間部、及び後尾部における左右の支持フレーム62の下端に、それぞれ、床版15の上面に接触する左右2対の走行車輪63を備える。更に、第2の後続台車6は、その先頭部、中間部、及び後尾部における左右の支持フレーム62の中央部から各別にトンネル幅方向外方に突出する脚部62aを備え、これらの脚部62aに、それぞれ、覆工体14の内周面に接触する走行車輪64を備えている。なお、第2の後続台車6は、第1の後続台車4と同様に、シールド機2用の電力供給装置や油圧供給装置等を搭載することが可能である。
【0018】
次に、第1の後続台車4及び第2の後続台車6により支持される第2のクレーン8について、図1、図2、図4、及び図5に基づいて説明する。
第2のクレーン8は、トンネル軸方向に延び、かつ、第1の後続台車4の上部フレーム41及び第2の後続台車6の上部フレーム61に取り付けられる左右1対の走行レール81と、走行レール81を走行する左右1対の走行装置82と、トンネル幅方向に延び、かつ、両端部に走行装置82がそれぞれ取り付けられる横行レール83と、横行レール83を走行する電気ホイスト84と、を含んで構成される。
【0019】
走行レール81は、第1の後続台車4の先頭上部から第2の後続台車6の後尾上部まで延びている。また、走行レール81の両端には、それぞれ、レール間隔保持用のビーム85が取り付けられている。そして、第1の後続台車4の先頭上部側のビーム85が、図示しないヒンジ機構を介して、第1の後続台車4の上部フレーム41に取り付けられている。また、第2の後続台車6の後尾上部側のビーム85が、図示しないヒンジ機構を介して、第2の後続台車6の上部フレーム61に取り付けられている。このように、走行レール81が、ビーム85及び図示しないヒンジ機構を介して、第1の後続台車4の上部フレーム41及び第2の後続台車6の上部フレーム61に取り付けられることにより、トンネル曲線部の施工時に、第2の後続台車6が第1の後続台車4に対して左右方向に揺動しても、その揺動をヒンジ機構にて吸収しつつ、走行レール81の間隔を保持することができる。
【0020】
第2のクレーン8は、以上の構成を有することにより、その吊荷を、第1の後続台車4と第2の後続台車6との間で運搬することができる。
次に、シールド機2及び第1の後続台車4により支持される第1のクレーン7について、図1〜図4及び図6に基づいて説明する。なお、図6は、第1のクレーン7の概略構成を示す。
【0021】
第1のクレーン7は、シールド機2及び第1の後続台車4により支持される左右1対の走行レール71と、走行レール71を走行する左右1対の走行装置72と、トンネル幅方向に延び、かつ、両端部に走行装置72がそれぞれ取り付けられる固定レール73と、固定レール73に対してその外面を長手方向に摺動可能な可動レール74と、可動レール74を走行する電気ホイスト75と、を含んで構成される。
【0022】
走行レール71は、図1に示すように、シールド機2の後端中央部から第1の後続台車4の先頭上部までは緩やかに上昇傾斜しつつ延び、更に、第1の後続台車4の先頭上部から後尾上部までは水平に延びている。また、走行レール71は、上述の牽引ビーム3及び走行レール81の下方に配置されている。また、走行レール71は、図2に示すように、走行レール81に比べて、レール間隔が大きい。更に、走行レール71の両端には、上述の走行レール81と同様に、それぞれ、レール間隔保持用のビーム76が取り付けられている。そして、シールド機2の後端中央部側のビーム76が、図示しないヒンジ機構を介して、シールド機2の後端中央部のブラケット2bに取り付けられている。また、第1の後続台車4の後尾上部側のビーム76が、図示しないヒンジ機構を介して、第1の後続台車4の上部フレーム41のブラケット45に取り付けられている。このように、走行レール71が、ビーム76及び図示しないヒンジ機構を介して、シールド機2の後端中央部(ブラケット2b)及び第1の後続台車4の上部フレーム41(ブラケット45)に取り付けられることにより、トンネル曲線部の施工時に、第1の後続台車4がシールド機2に対して左右方向に揺動しても、その揺動をヒンジ機構にて吸収しつつ、走行レール71の間隔を保持することができる。
【0023】
走行装置72は、図6に示すように、走行レール71を走行する牽引装置72aと、牽引装置72aにより牽引され、かつ、固定レール73を吊支する吊支装置72bと、を備える。
牽引装置72aは、I形鋼で形成された走行レール71の底部上面に接触する複数の車輪72cと、複数の車輪72cの駆動用の電気モータ72dと、を備える。そして、牽引装置72aは、走行レール71に懸垂されつつ、複数の車輪72cが、電気モータ72dにより回転駆動されて、走行レール71を走行する。なお、走行レール71には、その下面に沿うように、図示しないローラチェーンが張られている。そして、牽引装置72aは、このローラチェーンに噛合するスプロケット72eを備え、このスプロケット72eが電気モータ72dによって回転駆動されることにより、牽引装置72aは、走行レール71の傾斜区間(シールド機2の後端中央部と第1の後続台車4の先頭上部との間)を滑ることなく走行することができる。
【0024】
吊支装置72bは、リンク機構72fを介して、牽引装置72aに連結されている。これにより、走行装置72は、その走行に応じて走行レール71の傾斜勾配が変化する区間を走行する場合に、走行レール71の傾斜勾配の変化をリンク機構72fで吸収することができるので、走行装置72は、その区間をスムーズに走行することができる。
吊支装置72bは、ヒンジ機構72gを介して、固定レール73を吊支している。
【0025】
固定レール73は、2本のI形鋼が並列配置されて構成されている。また、固定レール73は、その長手方向寸法が、第1の後続台車4の支持フレーム42間の間隔よりも小さい。
可動レール74は、固定レール73と同一の長手方向寸法を有し、かつ、固定レール73を挟むように並列配置される2本のI形鋼により構成されており、固定レール73の底部上面に接触する複数の車輪74aを介して、固定レール73に懸垂されている。また、可動レール74には、複数の車輪74aの駆動用の電気モータ74bが設置されている。これにより、複数の車輪74aが電気モータ74bによって回転駆動されるので、可動レール74は、固定レール73に対してトンネル幅方向に摺動することができる。なお、本実施形態では、電気モータ74bの回転駆動力を用いて(いわゆるトロリー形式で)可動レール74を固定レール73に対して摺動させているが、可動レール74の摺動手法はこれに限らず、この他に、例えば、固定レール73に油圧シリンダを設置し、その伸縮ロッドの端部を可動レール74に取り付けた上で、このロッドの伸縮運動により、可動レール74を固定レール73に対して摺動させてもよい。
【0026】
可動レール74には、電気ホイスト75が懸垂されており、これにより、電気ホイスト75は、可動レール74に沿って、トンネル幅方向に移動することができる。
なお、電気ホイスト75により、本発明における「第1のクレーンの吊上装置」の機能が実現される。また、固定レール73、可動レール74、複数の車輪74a、及び、電気モータ74b、及び電気ホイスト75により、本発明における「トンネル幅方向移動装置」の機能が実現される。また、固定レール73及び可動レール74により、本発明における「トンネル幅方向に伸縮する横行レール」の機能が実現される。また、走行レール71及び走行装置72により、本発明における「トンネル軸方向移動装置」の機能が実現される。
【0027】
また、本実施形態では、第1の後続台車4は、1台の門型台車により構成されているが、第1の後続台車4が第1のクレーン7及び第2のクレーン8を支持する架台として機能するのであれば、第1の後続台車4は、複数台の門型台車により構成されてもよい。
また、本実施形態では、第2の後続台車6は、1台の門型台車により構成されているが、第2の後続台車6が第2のクレーン8を支持する架台として機能するのであれば、第2の後続台車6は、複数台の門型台車により構成されてもよい。
【0028】
次に、トンネルの施工装置1を用いたトンネルの施工方法について、図1〜図7を用いて説明する。なお、図7は、床版15の施工時の第1のクレーン7の作動状態を示す。
図1に示すように、セグメント12、ボックスカルバート部材15a,15b、床版部材15c,15d等の資材を積載したトラック9が、坑口よりトンネル内に進入し、施工済みの床版15の上面を走行して、第2の後続台車6内にて停車する。
【0029】
第2のクレーン8は、第2の後続台車6内にて停車中のトラック9より、積荷を第1の後続台車4内及び第2の後続台車6内の床版15上に荷降ろしする。また、第2の後続台車6内の床版15上に資材があり、かつ、第1の後続台車4内の床版15上に資材載置用のスペースがある場合には、第2のクレーン8は、第2の後続台車6内の床版15上にある資材を、第1の後続台車4内の床版15上に運搬する。なお、本実施形態では、第1の後続台車4内の床版15上に資材を載置しているが、第1の後続台車4内における資材の載置場所はこれに限らず、例えば、第1の後続台車4がその下部に資材用の荷台を備える場合には、その荷台上に、資材を載置することができる。
【0030】
第1のクレーン7は、第1の後続台車4内の床版15上にあるセグメント12を、セグメント供給装置13に運搬する。そして、セグメント供給装置13にて搬送されたセグメント12が、エレクター11によって組立てられることにより、覆工体14が構築される。なお、第1のクレーン7の電気ホイスト75が第1の後続台車4内を移動する際には、可動レール74が第1の後続台車4の支持フレーム42に接触することを防止するために、可動レール74の両端部を、固定レール73の両端部と一致させる(つまり、可動レール74を固定レール73に対してトンネル幅方向に摺動させない)。換言すれば、第1のクレーン7の電気ホイスト75が第1の後続台車4内にある場合には、固定レール73及び可動レール74は、第1の後続台車4の内側面(枠内面)よりトンネル幅方向内方に位置している。
【0031】
また、第1のクレーン7は、第1の後続台車4内の床版15上にあるボックスカルバート部材15a,15b、床版部材15c,15dを、施工済み床版15の切羽側端に隣接する覆工体14の下部に組立てることにより、床版15を構築する。
床版15を構築する際には、まず、第1工程として、図7(a)に示すように、第1のクレーン7により、覆工体14の中央下部に、ボックスカルバート部材15a,15bを組立てて、ボックスカルバートを構築する。この工程では、第1のクレーン7は、トンネルの中央付近にてボックスカルバート部材15a,15bを吊り下ろすので、可動レール74を固定レール73に対してトンネル幅方向に摺動させる必要はない。
【0032】
次に、第2工程として、図7(b)に示すように、第1のクレーン7により、ボックスカルバート部材15aの左上部と覆工体14の内周面との間に、床版部材15cを設置する。この工程では、第1のクレーン7は、トンネルの中央より左側に離れた位置にて床版部材15cを吊り下げる必要があるので、可動レール74を固定レール73に対してトンネル左側に摺動させる。この際に、可動レール74を、第1の後続台車4の内側面よりトンネル幅方向外方に張り出させることが可能である。これにより、電気ホイスト75のトンネル幅方向の移動可能範囲が、トンネル左側にて、可動レール74の摺動距離t分、拡張される。
【0033】
次に、第3工程として、図7(c)に示すように、第1のクレーン7により、ボックスカルバート部材15aの右上部と覆工体14の内周面との間に、床版部材15dを設置する。この工程では、第1のクレーン7は、トンネルの中央より右側に離れた位置にて床版部材15dを吊り下げる必要があるので、可動レール74を固定レール73に対してトンネル右側に摺動させる。この際に、可動レール74を、第1の後続台車4の内側面よりトンネル幅方向外方に張り出させることが可能である。これにより、電気ホイスト75のトンネル幅方向の移動可能範囲が、トンネル右側にて、可動レール74の摺動距離t分、拡張される。
【0034】
なお、上述の第2工程又は第3工程の完了後には、可動レール74の両端部が固定レール73の両端部と一致するように、可動レール74を固定レール73に対してトンネル幅方向に摺動させてから(つまり、第1のクレーン7の横行レールを縮小させてから)、第1のクレーン7の電気ホイスト75を、第1の後続台車4内にて移動させる。
以上のトンネルの施工方法では、第1の後続台車4及び第2の後続台車6が、施工済みの床版15上を走行しつつ、第1のクレーン7を用いて床版15を構築しているが、発進立坑からのシールド機2の発進時には、第1の後続台車4及び第2の後続台車6を載置するための仮設の床版をシールド機2の後方に予め構築し、この仮設の床版上に第1の後続台車4及び第2の後続台車6を配置してトンネルの施工装置1をセッティングし、この後、上述のトンネルの施工方法と同様にして、床版15を構築する。
【0035】
本実施形態によれば、トンネルの施工装置1は、トンネルを掘削するシールド機2と、シールド機2の後方にて構築された床版15上に配置され、かつ、シールド機2に連結される第1の後続台車4と、シールド機2と第1の後続台車4との間に配置されて両者により支持され、かつ、トンネル内の床版15の構築に用いられる第1のクレーン7と、を含んで構成される。また、第1のクレーン7は、床版15を構成する構造部材(ボックスカルバート部材15a,15b、及び、床版部材15c,15d)を吊り上げ可能な電気ホイスト75と、電気ホイスト75をトンネル軸方向に第1の後続台車4内から第1の後続台車4前方まで移動させるトンネル軸方向移動装置(走行レール71及び走行装置72)と、電気ホイスト75をトンネル幅方向に移動させるトンネル幅方向移動装置(固定レール73、可動レール74、複数の車輪74a、電気モータ74b、及び電気ホイスト75)と、を備える。また、このトンネル幅方向移動装置は、トンネル幅方向に延び、かつ、電気ホイスト75が走行する横行レール(固定レール73及び可動レール74)を備える。そして、この横行レールは、トンネル幅方向に伸縮する。これにより、第1のクレーン7では、シールド機2の直後方にて、床版15の構築工程に応じて、電気ホイスト75のトンネル幅方向の移動可能範囲を拡張・縮小させることができるので、トンネルの中央付近での構造部材設置作業のみならず、トンネルの左右両サイドでの構造部材設置作業を効率良く行うことができる。従って、第1の後続台車4等の後続台車の後方における床版15の構築作業が削減されて各種作業が簡素化されるので、後続台車の後方から切羽付近への資材輸送(例えば、セグメント12の輸送)を効率的に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、第1の後続台車4は、門型台車であり、電気ホイスト75が第1の後続台車4内にある場合には、第1のクレーン7の横行レール(固定レール73及び可動レール74)は、第1の後続台車4の内側面よりトンネル幅方向内方に位置する一方、電気ホイスト75が第1の後続台車4とシールド機2との間にある場合には、第1のクレーン7の横行レール(固定レール73及び可動レール74)は、第1の後続台車4の内側面よりトンネル幅方向外方に張り出す。これにより、シールド機2の直後方における電気ホイスト75のトンネル幅方向の移動可能範囲を、第1の後続台車4の支持フレーム42間の間隔よりも大きくすることができるので、第1の後続台車4の車幅等に制限されることなく、シールド機2の直後方にて、トンネルの左右両サイドでの構造部材設置作業を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、トンネルの施工装置1は、第1の後続台車4の後方の床版15上に配置され、かつ、第1の後続台車4に連結される第2の後続台車6と、第1の後続台車4及び第2の後続台車6に支持され、かつ、両者間にて構造部材を運搬する第2のクレーン8と、を更に含んで構成される。また、第1のクレーン7の電気ホイスト75は、第1の後続台車4内にて、第2のクレーン8の下方を移動する。換言すれば、第1の後続台車4内にて、第2のクレーン8と第1のクレーン7とが、オーバーラップしている。これにより、資材運搬用トラック9からの荷降ろし作業と、セグメント供給装置13へのセグメント12の運搬作業及び床版15の構築作業とを、各別のクレーンで行うことができるので、これらの作業を1台のクレーンで行う場合に比べて、クレーンの走行距離及び走行時間を短縮することができる。従って、この短縮時間分を、床版15等の施工に費やすことができるので、シールド掘進のサイクルに遅れることなく、効率的に、床版15等の施工を行うことができる。なお、本実施形態では、第1の後続台車4内にて、第1のクレーン7の電気ホイスト75が、第2のクレーン8の下方を移動する構成としたが、第1の後続台車4内にて、第1のクレーン7の電気ホイスト75が、第2のクレーン8の上方を移動する構成とすることも可能である。この場合においても、第1の後続台車4内にて、第1のクレーン7と第2のクレーン8とが、オーバーラップするので、上述のように、資材運搬用トラック9からの荷降ろし作業と、セグメント供給装置13へのセグメント12の運搬作業及び床版15の構築作業とを、各別のクレーンで行うことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、トンネルの施工装置1は、第1の後続台車4に支持され、かつ、第1の後続台車4内にて構造部材を運搬する第2のクレーン8を更に含んで構成される。また、第1のクレーン7の電気ホイスト75は、第1の後続台車4内にて、第2のクレーン8の下方を移動する。これにより、第1の後続台車4内にて、第2のクレーン8と第1のクレーン7とが、オーバーラップしているので、第1の後続台車4内にて、第2のクレーン8を用いて、資材運搬用トラック9からの荷降ろし作業を行いつつ、第1のクレーン4を用いて、セグメント供給装置13へのセグメント12の運搬作業及び床版15の構築作業を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、シールド機2と第1の後続台車4との間にてトンネル幅方向に3分割された床版(ボックスカルバート,床版部材15c,15d)を組立てて、床版15を構築する。これにより、特許文献1記載のように後続台車の後方にて床版を構築する場合に比べて、資材運搬用トラック9がシールド機2に近づくことができるので、トラック9から切羽付近への資材運搬(いわゆる、2次運搬)を短縮することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、第1のクレーン7の横行レールは、トンネル幅方向に延び、かつ、走行装置72に支持される固定レール73と、この固定レール73に対してその外面を長手方向に摺動可能な可動レール74と、を備えることにより、比較的簡易な構成で横行レールを伸縮させることができる。
また、本実施形態によれば、構造部材を吊り上げた第1のクレーン7の電気ホイスト75を、シールド機2と第1の後続台車4との間に移動させ、可動レール74を固定レール73に対してトンネル幅方向に摺動させることにより、第1のクレーン7の横行レール(固定レール73及び可動レール74)をトンネル幅方向に拡張させ、この後に、電気ホイスト75を構造部材の設置位置の直上に移動させ、そして、電気ホイスト75により、構造部材を吊り下げて上記設置位置に移動させて、床版15を構築する。これにより、クレーンを大型化させることなく、電気ホイスト75のトンネル幅方向の移動可能範囲を拡張させることができるので、施工コストを抑制しつつ、トンネルの左右両サイドでの構造部材設置作業を効率良く行うことができる。
【0041】
なお、本実施形態では、第2のクレーン8が、第1の後続台車4及び第2の後続台車6に支持されているが、第1の後続台車4内にて、第2のクレーン8と第1のクレーン7とが、オーバーラップするように構成されるのであれば、第2のクレーン8の支持形態はこれに限らず、例えば、第2のクレーン8が、第1の後続台車4のみにより支持されていてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、トンネル幅方向に3分割された床版(ボックスカルバート,床版部材15c,15d)を組立てて、床版15を構築しているが、床版の分割形態はこれに限らず、例えば、覆工体14の下部にて複数のプレキャスト支持部材をトンネル幅方向に並べて立設し、これらのプレキャスト支持部材に支持されるように、複数の板状のプレキャスト部材をトンネル幅方向に並べて配置する分割形態であってもよい。
【0043】
また、本実施形態では、第1のクレーン7を用いて構築するトンネル内の構造体の一例として、床版15を挙げて説明したが、第1のクレーン7を用いて構築できる構造体はこれに限らず、例えば、第1のクレーン7を用いて、トンネル施工用の仮設レールを、床版15の上面に敷設することが可能である。この場合には、仮設レールが本発明における「構造体」に対応する一方、仮設レールを構成するレール部材や枕木等が本発明における「構造部材」に対応する。なお、この仮設レールが、床版15上における第1の後続台車4及び第2の後続台車6の走行に用いられる場合には、第1の後続台車4の走行車輪43及び第2の後続台車6の走行車輪63は、それぞれ、仮設レール上を転動可能なように構成される。そして、この場合には、第1のクレーン7は、図7(b)及び図7(c)に示した第1のクレーン7の作動状態にて、電気ホイスト75用の横行レールを拡張させつつ、仮設レールの敷設作業を行う。
【符号の説明】
【0044】
1 トンネルの施工装置
2 シールド機
3 牽引ビーム
4 第1の後続台車
5 牽引ビーム
6 第2の後続台車
7 第1のクレーン
8 第2のクレーン
9 トラック
11 エレクター
12 セグメント
13 セグメント供給装置
14 覆工体
15 床版
15a,15b ボックスカルバート部材
15c,15d 床版部材
41 上部フレーム
42 支持フレーム
43,44 走行車輪
61 上部フレーム
62 支持フレーム
63,64 走行車輪
71 走行レール
72 走行装置
73 固定レール(横行レール)
74 可動レール(横行レール)
75 電気ホイスト
81 走行レール
82 走行装置
83 横行レール
84 電気ホイスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを掘削するシールド機と、
該シールド機の後方にて構築された床版上に配置され、かつ、前記シールド機に連結される第1の後続台車と、
前記シールド機と前記第1の後続台車との間に配置されて両者により支持され、かつ、前記トンネル内の構造体の構築に用いられる第1のクレーンと、
を含んで構成され、
前記第1のクレーンは、前記構造体を構成する構造部材を吊り上げ可能な吊上装置と、該吊上装置をトンネル軸方向に前記第1の後続台車内から前記第1の後続台車前方まで移動させるトンネル軸方向移動装置と、前記吊上装置をトンネル幅方向に移動させるトンネル幅方向移動装置と、を備え、
該トンネル幅方向移動装置は、トンネル幅方向に延び、かつ、前記吊上装置が走行する横行レールを備え、
該横行レールは、トンネル幅方向に伸縮することを特徴とするトンネルの施工装置。
【請求項2】
前記第1の後続台車は、門型台車であり、
前記吊上装置が前記門型台車内にある場合には、前記横行レールは、前記門型台車の内側面よりトンネル幅方向内方に位置する一方、
前記吊上装置が前記門型台車と前記シールド機との間にある場合には、前記横行レールは、前記門型台車の内側面よりトンネル幅方向外方に張り出すことを特徴とする請求項1に記載のトンネルの施工装置。
【請求項3】
前記第1の後続台車の後方の床版上に配置され、かつ、前記第1の後続台車に連結される第2の後続台車と、前記第1及び第2の後続台車に支持され、かつ、両者間にて前記構造部材を運搬する第2のクレーンと、を更に含んで構成され、
前記吊上装置は、前記第1の後続台車内にて、前記第2のクレーンの上方又は下方を移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトンネルの施工装置。
【請求項4】
前記第1の後続台車に支持され、かつ、前記第1の後続台車内にて前記構造部材を運搬する第2のクレーンを更に含んで構成され、
前記吊上装置は、前記第1の後続台車内にて、前記第2のクレーンの上方又は下方を移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトンネルの施工装置。
【請求項5】
前記構造体は、トンネル幅方向に少なくとも2つに分割される床版であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のトンネルの施工装置。
【請求項6】
前記横行レールは、トンネル幅方向に延び、かつ、前記トンネル軸方向移動装置に支持される固定レールと、該固定レールに対してその外面を長手方向に摺動可能な可動レールと、を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のトンネルの施工装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のトンネルの施工装置を用い、
前記構造部材を吊り上げた前記吊上装置を前記シールド機と前記第1の後続台車との間に移動させ、
前記横行レールをトンネル幅方向に拡張させ、
前記吊上装置を前記構造部材の設置位置の直上に移動させ、
前記構造部材を吊り下げて前記設置位置に移動させて、前記構造体を構築する、
トンネルの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46877(P2012−46877A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187080(P2010−187080)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】