説明

トンネル水噴霧設備

【課題】簡単な設備構成と低コストで予告放水を可能とするトンネル水噴霧設備を提供する。
【解決手段】トンネル内の放水区画単位に放水する複数の水噴霧ヘッド12を設置し、放水区画毎に設けた自動弁30を遠隔操作により開放作動して加圧消火用水を水噴霧ヘッド12側に供給する。水噴霧ヘッド12に対応して自動弁30の開放作動による加圧消火用水の供給を受けて小容量の予告放水を行う予告放水ヘッド16を設ける。水噴霧ヘッド12には遅延開放弁18が設けられる。自動弁30を開放作動すると、まず予告放水ヘッド16から予告放水が行われ、所定の遅延時間後に遅延開放弁18が開放して水噴霧ヘッド12から本格放水を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置された水噴霧ヘッドに消火用水を供給して放水させるトンネル水噴霧設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置やトンネル防護のための水噴霧ヘッドから水を放水させる水噴霧設備が設けられる。
【0003】
水噴霧設備は50メートル間隔の放水区画単位に1台の自動弁が設置され、5メートル間隔に配置した複数の水噴霧ヘッドに対し自動弁から加圧消火用水を供給して一斉に放水させる。
【0004】
また水噴霧設備には水噴霧ヘッドからの本格放水がおこなわれることを警告するため、本格放水に先立って小容量の予告放水をする予告放水機能が設けられている。
【0005】
予告放水の方法は、自動弁に対する1次側の流量を小流量とする方法、圧力を低圧とする方法、自動弁で低圧から通常圧力に段階的に切替える方法、自動弁の2次側の制水弁の開度を2段階に切替える方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−355324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような小容量の予告放水をするトンネル水噴霧設備にあっては、基本的に水噴霧ヘッドをそのまま使用し、水噴霧ヘッドに供給する加圧消火用水の圧力又は流量を下げて小容量の予告放水を行っていたため、消火用水の圧力または流量を2段階に調整する機構や設備が必要となり、二次側に接続された全ての水噴霧ヘッドに規定量を流すための流量の非常に多い自動弁及びその関連設備を制御する必要があるため、設備構成が複雑化してコストアップになる問題がある。
【0008】
また、予告放水を行う目的として、いきなり放水量の多い本格放水をおこなうとトンネル内に進入した車両の視界が遮られて車による二次災害が発生することを防ぐためと、トンネル外への避難行動に悪影響を及ぼすことを防止するために予告放水を行っている。しかし従来の水噴霧設備の予告放水は、予告放水も本格放水も同じ水噴霧ヘッドをそのまま使用して全ての水噴霧ヘッドから放水されるため、各水噴霧ヘッドを設置する間隔によっては各ヘッドの放水パターンが近接するため、たとえ流量を少なくした予告放水であっても運転者の前方の視界が悪いこともある。
【0009】
本発明は、簡単な設備構成と低コストで予告放水を可能とするトンネル水噴霧設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トンネル水噴霧設備に於いて、
トンネル内の放水区画単位に放水する複数の水噴霧ヘッドと、
開放動作により開放作動して加圧消火用水を前記水噴霧ヘッド側に供給する自動弁装置と、
自動弁装置の開放動作による加圧消火用水の供給を受けて小容量の予告放水を行う予告放水ヘッドと、
水噴霧ヘッド毎に設けられ、自動弁装置の開放動作により供給された加圧消火用水により開放動作から所定時間後に水噴霧ヘッドから本格放水を行わせる遅延開放弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、予告放水ヘッドは、旋回放水ヘッド又はフラット放水ヘッドを備える。
【0012】
本発明の別の形態にあっては、トンネル水噴霧設備に於いて、
トンネル内に設けられて放水区画単位に放水する複数の水噴霧ヘッドと、
開放動作により開放動作して加圧消火用水を前記水噴霧ヘッド側に供給する自動弁装置と、
複数の水噴霧ヘッドの中から定めた予告放水兼用の水噴霧ヘッド以外の水噴霧ヘッドに対応して設けられ、自動弁装置の開放動作により供給された加圧消火用水により開放動作から所定時間後に水噴霧ヘッドから本格放水を行わせる遅延開放弁と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトンネル水噴霧設備によれば、自動弁装置を開放動作すると2次側配管に直接接続されている予告放水ヘッドから小容量の予告放水が行われ、水噴霧ヘッドには開放遅延弁による遅延時間後に加圧消火用水が供給されて本格放水するため、予告放水の小容量は専用の予告放水ヘッドの放水量により一義的に決まり、自動弁装置の1次側又は自動弁装置そのものによる予告放水を小容量とするための圧力又は流量の2段階調整の機構や設備が不要となり、水噴霧ヘッドに遅延開放弁を設けるという簡単な設備構成で小容量の予告放水を可能とし、コスト的にも安価に実現できる。また、予告放水時に運転者の視界を妨げることがなく、二次災害を防ぎ安全に避難することができる。
【0014】
本発明の別の形態にあっても、複数の水噴霧ヘッド中で定めた予告放水兼用の水噴霧ヘッド以外の水噴霧ヘッドに対応して遅延開放弁を設け、自動弁装置を開放作動すると2次側配管に直接接続されている放水ヘッドから予告放水が行われ、それ以外の水噴霧ヘッドには開放遅延弁による遅延時間後に加圧消火用水が供給されて本格放水するため、予告放水に使用する水噴霧ヘッドの数により予告放水の放水量を抑えることができ、自動弁の1次側又は自動弁装置そのものによる予告放水を小容量とするための圧力又は流量の2段階調整の機構や設備が不要となり、予告放水を兼ねる水噴霧ヘッド以外の水噴霧ヘッドに遅延開放弁を設けるという簡単な設備構成で予告放水を可能とし、コスト的にも安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるトンネル水噴霧設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1に設けた自動弁の配管系と制御系の実施形態を示した説明図
【図3】図2に設けた遅延開放弁の他の実施形態を示した説明図
【図4】本発明で使用する予告放水ヘッドによる旋回放水パターンを示した説明図
【図5】本発明で使用する予告放水ヘッドによるフラット放水パターンを示した説明図
【図6】図1の水噴霧設備につき予告放水ヘッドを水噴霧ヘッドの1つおきに設けた実施形態を示した説明図
【図7】図1の水噴霧設備につき予告放水ヘッドを1つの水噴霧ヘッドのみ設けた実施形態を示した説明図
【図8】本発明によるトンネル水噴霧設備の他の実施形態を示した説明図
【図9】図8に設けた自動弁の配管系と制御系の実施形態を示した説明図
【図10】図9に設けた遅延開放弁の他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明によるトンネル水噴霧設備の実施形態を示した説明図である。図1において、自動弁装置10はトンネル側壁のコンクリート枠体に対し枠抜きされたスペースに50メートル間隔の水噴霧区間に1台ずつ設置されている。自動弁装置10の1次側には給水配管26が接続され、給水配管26には所定圧力の加圧消火用水が充填されている。
【0017】
自動弁装置10の2次側には水噴霧配管14が設けられ、水噴霧配管14はコンクリート側壁に沿って立ち上がった後に長手方向に分岐され、所定間隔で複数の水噴霧ヘッド12が接続されている。
【0018】
水噴霧ヘッド12に対しては遅延開放弁18が設けられる。遅延開放弁18は加圧消火用水が供給されていない通常時は閉鎖状態にあり、自動弁12を開放して加圧消火用水の供給を受けると開放動作を開始し、所定の遅延時間後に全開して水噴霧ヘッド12から放水を行わせる。
【0019】
水噴霧ヘッド12の各々に対応して予告放水ヘッド16が設けられ、予告放水ヘッド16は対応する遅延開放弁18の1次側に接続されている。予告放水ヘッド16は水噴霧ヘッド12に対し放水量が小さく、小容量の予告放水を行う。
【0020】
自動弁装置10は信号線28を介してセンタ制御装置20に接続されている。自動弁装置10はトンネル内の火災検知に基づきセンタ制御装置20から起動信号を受けて開放作動し、水噴霧ヘッド12側に加圧消火用水を供給する。このとき遅延開放弁18は最初閉鎖状態にあるため水噴霧ヘッド12からの放水は行われず、加圧消火用水の供給を直接受けた予告放水ヘッド16から小容量の予告放水が行われる。
【0021】
自動弁装置10の開放作動で加圧消火用水の供給を受けた遅延開放弁18は時間の経過に伴って開度が増加し、所定の遅延時間後に全開となり、このため水噴霧ヘッド12からは消火用水が少しずつに増加しながら放水され、所定の遅延時間後に本格放水に移行する。
【0022】
センタ制御装置20に対してはポンプ制御盤22と防災受信盤24が設けられている。ポンプ制御盤22は、センタ装置20からの自動弁装置の起動に伴うポンプ起動信号を受けてポンプ設備を運転し、給水配管26に加圧した消火用水を供給する。
【0023】
防災受信盤24は図示しないトンネル内に設置された火災検知装置からの火災検知信号を受信して火災警報を行うもので、火災警報に連動してセンタ制御装置20に火災移報信号を出力して、火災発生地区に対応した自動弁装置10の遠隔起動を行わせる。
【0024】
図2は図1に設けた自動弁装置10の配管系と制御系の実施形態を示した説明図である。図2において、自動弁30に対しては、制御系機器として止め弁35、常時閉の遠隔起動弁(電動弁)34、常時閉の手動起動弁36、圧力調整弁38及び自動排水弁40を設けている。
【0025】
自動弁30の1次側には給水配管26が接続され、給水配管26には所定圧力の加圧消火用水が充填されている。自動弁30の2次側には常時開放された制水弁32が設けられている。
【0026】
自動弁30はシリンダ室44にピストン46を摺動自在に入れたアクチュエータが設けられており、ピストン46の移動で弁体48を移動して弁を開放するようにしている。
【0027】
自動弁30の開放動作は、通常監視時は遠隔起動弁34により行われる。遠隔起動弁34としては電動弁を使用しており、図1のセンタ制御装置20でトンネル内での車両火災が防災受信盤24からの火災移報信号により確認されたとき、担当者の放水起動操作に基づく起動信号により遠隔起動弁34が開動作する。
【0028】
遠隔起動弁34が開くと、1次側の加圧水が止め弁35、遠隔起動弁34及び圧力調整弁38を介してシリンダ室44に供給され、ピストン46を左側にストロークして、弁体48を弁座からリフトして開放し、2次側の水噴霧配管14に加圧消火用水を供給する。
【0029】
水噴霧配管14の分岐側には遅延開放弁18を介して水噴霧ヘッド12が接続され、遅延開放弁18の1次側から分岐した予告放水配管15に予告放水ヘッド16を接続している。
【0030】
遅延開放弁18は、弁ボディ50の内部に1次側と2次側を仕切る隔壁52を形成し、隔壁52に設けた弁穴に弁体54を軸方向に移動自在に配置し、右側にリターンバネ56を配置し、左側にピストン58を配置してシリンダ60に摺動自在に収納している。シリンダ60に対しては制御配管62が1次側から接続され、制御配管64にストレーナ付きのオリフィス64を設けている。
【0031】
遅延開放弁18は自動弁30が閉鎖状態にある通常時は、加圧消火用水の供給がないことからリターンバネ56により弁体52を図示の閉鎖位置に閉じている。自動弁30の開放作動により1次側に加圧消火用水が供給されると、加圧消火用水は制御配管64のオリフィス64を通ってシリンダ60に供給され、ピストン58がリターンバネ56に抗して開方向にゆっくりした動きのストロークを開始する。
【0032】
このため弁体54の緩やかなストロークに伴い開度が少しずつ増加し、オリフィス64の流量とシリンダ60の容積で決まる所定の遅延時間後に全開となり、水噴霧ヘッド12から本格放水を行う。予告放水から本格放水への移行時間はオリフィス64を通る流量により設定することができるため、オリフィスの流量を調整できるように絞りを設けて流量調整できるようにしてもよい。
【0033】
一方、予告放水ヘッド16は自動弁30の開放作動による直接加圧消火用水の供給を受けて小容量の予告放水を開始し、火災を検知した水噴霧区間に向かってくる自動車の運転者に本格放水を予告警告して緊急停止させる。
【0034】
遅延開放弁18の全開により水噴霧ヘッド12が本格放水に移行した後は、予告放水ヘッド16からも継続的に小容量の放水が行われており、予告放水ヘッド16からの放水は水噴霧ヘッド12からの本格放水を補う放水となる。
【0035】
水噴霧ヘッド12からの放水停止は、センタ制御装置20から遠隔起動弁34に停止信号を送って閉動作を行わせる。遠隔起動弁34が閉じると、圧力調整弁38を経由したシリンダ室44に対する1次側からの加圧消火用水の供給が停止する。
【0036】
自動弁30の2次側とドレインとの間には、自動排水弁40が接続されている。自動排水弁40は、所定圧を超える圧力が加わると閉じ、圧力が所定値を下回ると開く弁である。
【0037】
このため圧力調整弁38を経由して自動排水弁40に加わる加圧消火用水の圧力が低下し、所定圧以下に低下すると、自動排水弁40が開放し、シリンダ室44の加圧消火用水は圧力調整弁38及び自動排水弁40を介してドレインに流れ、ピストン46がスプリングの力で右にストロークし、弁体48を弁座に戻し、自動弁30を閉鎖状態とする。自動弁30は手動起動弁36の現場操作によっても開放させることができる。
【0038】
遅延開放弁18へ消火用水の供給が停止されると、ピストン58がリターンバネ56によって左側へストロークし、弁体54を閉止し、初期状態へ復旧する。
【0039】
図2の実施形態によれば、自動弁30を開放作動した時は、まず予告放水ヘッド16から小容量の予告放水を開始し、遅延開放弁18を所定の遅延時間後に全開として水噴霧ヘッド12を本格放水に移行するようにしたため、予告放水の小容量の放水は専用の予告放水ヘッド16の放水量により一義的に決まり、予告放水から本格放水への移行時間はオリフィス64の流量で簡単に設定でき、自動弁30の1次側又は自動弁30そのものによる予告放水を小容量とするための圧力又は流量の2段階調整の機構や設備が不要となり、水噴霧ヘッド12側に遅延開放弁18と予告放水ヘッド16を追加するといった簡単な構成により小容量の予告放水を可能とし、コスト的にも安価に実現できる。
【0040】
図3は図2に設けた遅延開放弁の他の実施形態を示した説明図である。本実施形態の遅延開放弁18は、ピストン58と弁体54を別部材としている。ピストン58はロッド72のガイドでシリンダ60内にリターンバネ72を介して配置し、ピストン58は別部材として内部流路の弁穴に対しリターンバネ56で閉位置に支持され、弁体54に設けた弁軸56にシール75を設け、予告配水配管15に移動して閉鎖可能としている。
【0041】
遅延開放弁18は図2の自動弁30が閉鎖状態にある通常時は、加圧消火用水の供給がないことからリターンバネ56により弁体52を図示の閉鎖位置に閉じている。自動弁30の開放作動により1次側に加圧消火用水が供給されると、加圧消火用水は制御配管62のオリフィス64を通ってシリンダ60に供給され、ピストン58がリターンバネ58に抗して開方向にゆっくりした動きのストロークを開始する。
【0042】
弁体54は別部材としているため、ピストン58がストロークしてもロッド70が当たるまでは閉鎖位置に閉じており、その間、予告放水ヘッド16から小容量の予告放水が行われ、火災を検知した水噴霧区間に向かってくる自動車の運転者に本格放水を予告警告して緊急停止させる。
【0043】
所定の遅延時間が経過するとストロークしたピストン58のロッド70が弁体58に当接し、リターンバネ56に抗して弁体54をストロークして開放し、水噴霧ヘッド12から本格放水を行う。弁体56のストロークにより弁軸74のシール75の部分が予告放水配水管15の流入口に入り込んで流路を閉鎖し、予告放水ヘッド16からの予告放水が停止し、水噴霧ヘッド12からの本格放水のみの状態に移行する。
【0044】
このようにピストン58と弁体54を別部品として分離配置することにより、自動弁30の開放で最初に予告放水ヘッド16からの予告放水を開始し、所定の遅延時間後に水噴霧ヘッド12からの本格放水を開始し、同時に、予告放水ヘッド16からの予告放水を停止するという段階放水制御を適切に実現できる。
【0045】
図4は図2の実施形態に設けた予告放水ヘッドによる旋回放水パターンを示した説明図であり、図4(A)にトンネル平面を、図4(B)にトンネル断面を示している。
【0046】
図4にあっては、予告放水ヘッドとして予告旋回放水ヘッド16aを使用している。予告旋回放水ヘッド16aとしては、例えばヘッド本体の先端に水圧を受けて回転する回転放出穴を有するヘッドであり、自動弁30の開放で遅延開放弁18を介して加圧消火用水の供給を受けると、消火用水の放出による反力を受けてヘッドの噴出し部分が高速に旋回し、スパイラル状に放水する旋回放水パターン66による予告放水をする。
【0047】
このようにヘッドから旋回による動きのあるパターンで予告放水が行われるため、本格放水とは明らかに異なる放水パターンで放水し、本格放水を行う放水区間に向けて走行してくる自動車の運転者は予告放水による警告に確実に気付いて緊急停止することが可能となる。また、回転式ヘッドを採用することにより、従来のヘッドよりも少ない水量で遠くに放水することも可能となる。さらに回転ヘッドによる放水により、放水後の消火用水を分散させて粒子径を小さくして放水することができ、従来の本格放水と同じヘッドを使った予告放水よりも運転者の前方の視界の妨げをより防ぐことができ安全な避難が可能となる。
【0048】
図5は図2の実施形態に設けた予告放水ヘッドにフラット放水パターンを示した説明図であり、図5(A)にトンネル平面を、図5(B)にトンネル断面を示している。
【0049】
図5にあっては、予告放水ヘッドとして予告フラット放水ヘッド16bを使用している。予告フラット放水ヘッド16bとしては、例えばトンネル断面方向に長い長方形状の放水穴を有するヘッドであり、自動弁10の開放で遅延開放弁18を介して加圧消火用水の供給を受けると、トンネル断面方向に広がったフラット放水パターン68による予告放水をする。
【0050】
フラット放水パターン68は少ない放水量であっても、幅は薄いが大きく広がる放水パターンとなる予告放水が行われ、本格放水を行う放水区間に向けて走行してくる自動車の運転者は予告放水による警告に確実に気付いて緊急停止することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態に使用する予告放水ヘッド16としては、図3及び図4のヘッド以外に小容量のヘッドであれば適宜のヘッドを使用することができる。また隣に配置されるヘッド同士の放水パターン68が近接することがないことから、運転者は断続的に放水パターンをくぐることとなり、従来の本格放水と同じヘッドを使った隣同士の放水パターンが近接する予告放水よりも、運転者の前方の視界の妨げをより防ぐことができ安全である。
【0052】
図6は図1のトンネル水噴霧設備につき予告放水ヘッドを水噴霧ヘッドに対し1つ置きに設けた実施形態を示した説明図である。
【0053】
図1の実施形態にあっては、複数の水噴霧ヘッド12の各々に対応して同数の予告放水ヘッド16を設けているが、予告放水は本格放水を行う水噴霧区間を警告すればよいことから、全ての水噴霧ヘッド12に対応して予告放水ヘッド16を設ける必要はなく、例えば図6に示すように、予告放水ヘッド16を水噴霧ヘッド12に対し1つ置きに設ける。予告放水ヘッド16には、図3の予告旋回放水ヘッド16aや予告フラット放水ヘッド16bを使用することができる。これによって予告放水ヘッド16の設置台数を低減し、設備コストを低減することができる。また予告放水ヘッドによる放水パターンの放水間隔拡げることで、従来の全てのヘッドからの予告放水よりも運転者の視界の妨げを防ぐことができ、放水することによる二次災害をより防ぐことができる。
【0054】
図7は図1のトンネル水噴霧設備につき予告放水ヘッドを1つの水噴霧ヘッドに対してのみ設けた実施形態を示した説明図である。図7において、予告放水ヘッド16は水噴霧区間に配置された複数の水噴霧ヘッド12の内、区間の自動車の進入側に位置する水噴霧ヘッド12に対応して1台だけ設けられている。予告放水ヘッド16には、図3の予告旋回放水ヘッド16aや予告フラット放水ヘッド16bを使用することができる。
【0055】
このように本格放水を行う自動車進入側の区間境界に最も近い水噴霧ヘッド12に対応して予告放水ヘッド16を設けることで、本格放水を警告する予告放水が確実にでき、更に、予告放水ヘッド16の設置台数を最小限にして設備コストを低減することができる。
【0056】
なお、予告放水ヘッド16は水噴霧区間の任意の位置に設置しても良い。
【0057】
図8は本発明によるトンネル水噴霧設備の他の実施形態を示した説明図である。図8の実施形態にあっては、図1の小容量の予告放水を行う予告放水ヘッドは使用せず、水噴霧区間に設置している全ヘッドのうち一部の水噴霧ヘッドについては、水噴霧配管14に直接接続して予告放水と本格放水を行う予告兼用水噴霧ヘッド12aとし、残りの水噴霧ヘッドは遅延開閉弁18を介して接続した水噴霧ヘッド12bを本格放水専用としている。それ以外の構成は図1と同じである。予告兼用水噴霧ヘッド12aも水噴霧ヘッド12bも本格放水に対応する流量のヘッドを使用する。
【0058】
図8において、トンネル内での火災検知に基づき対応する水噴霧区間及び隣接する水噴霧区間の自動弁装置10が開放作動されると、まず水噴霧配管14に直接接続している予告兼用水噴霧ヘッド12aから放水が開始され、一部の水噴霧ヘッドによる放水となることから、本格放水に比べ放水量が少なく、本格放水を行う放水区間に向けて走行してくる自動車の運転者は予告放水による警告に確実に気付いて緊急停止することが可能となる。また放水区間内の部分的な放水になることから運転者の視界を確保することができる。
【0059】
自動弁装置10の開放作動から所定の遅延時間を経過すると遅延開放弁18が全開となり、水噴霧ヘッド12bが本格放水に移行し、予告放水兼用水噴霧ヘッド12aを含む区間全ヘッドからの放水となり、本格放水が行われる。
【0060】
なお、遅延開放弁18を設けずに水噴霧配管14に直接接続する予告兼用水噴霧ヘッド12aの数は、図8の1つ置きに限定されず、1つ水噴霧区間に最小限1台設ける場合を含め、水噴霧ヘッド総数より少ない任意の台数とすれば良い。
【0061】
図9は図8に設けた自動弁装置10の配管系と制御系の実施形態を示した説明図である。図9において、自動弁30に対しては、制御系機器として止め弁35、遠隔起動弁(電動弁)34、手動起動弁36、圧力調整弁38及び自動排水弁40を設けている。その構成及び動作は図2の実施形態と同じである。
【0062】
また水噴霧配管14に接続した水噴霧ヘッドのうち、予告兼用水噴霧ヘッド12aは直接接続し、本格放水専用の水噴霧ヘッド12bについては遅延開放弁18を介して接続している。遅延開放弁18は図2の実施形態と同じであり、自動弁30の開放作動により加圧消火用水の供給を受けると所定の遅延時間後に全開となる。
【0063】
本実施形態の動作は、図1のセンタ制御装置20から、まず遠隔起動弁34に開制御信号を送って開動作し、給水配管26からの加圧消火用水を水噴霧ヘッド12aに直接送って予告放水をする。
【0064】
予告放水の開始と同時に加圧消火用水の供給を受けた遅延開放弁18が緩やかに弁体54を開放し、所定時間後に全開となって水噴霧ヘッド12bから放水を行い、予告兼用水噴霧ヘッド12aと共に放水することで、水噴霧区間で放水する本格放水を行うことになる。
【0065】
図8及び図9の実施形態によれば、自動弁30を開放作動した時は、まず予告兼用水噴霧ヘッド12aから区間全体の放水量に比べて少ない予告放水を開始し、遅延開放弁18の作動による所定の遅延時間後に水噴霧ヘッド12bを本格放水に移行するようにしたため、予告放水の放水量は遅延開放弁18を設けていない予告兼用水噴霧ヘッド12aの台数により一義的に決まり、自動弁30の1次側又は自動弁30そのものによる予告放水を小容量とするための圧力又は流量の2段階調整の機構や設備が不要となり、水噴霧ヘッド12側に遅延開放弁18を追加するといった簡単な構成により小容量の予告放水を可能とし、コスト的にも安価に実現できる。
【0066】
図10は図9に設けた遅延開放弁の他の実施形態を示した説明図である。本実施形態の遅延開放弁18は、ピストン58と弁体54を別部材としている。ピストン58はロッド72のガイドでシリンダ60内にリターンバネ72を介して配置し、ピストン58は別部材として内部流路の弁穴に対しリターンバネ56で閉位置に支持されている。
【0067】
遅延開放弁18は図2の自動弁30が閉鎖状態にある通常時は、加圧消火用水の供給がないことからリターンバネ56により弁体52を図示の閉鎖位置に閉じている。自動弁30の開放作動により1次側に加圧消火用水が供給されると、加圧消火用水は制御配管62のオリフィス64を通ってシリンダ60に供給され、ピストン58がリターンバネ58に抗して開方向にゆっくりした動きのストロークを開始する。
【0068】
弁体54は別部材としているため、ピストン58がストロークしてもロッド70が当たるまでは閉鎖位置に閉じており、その間、図9の予告兼用水噴霧ヘッド12aから予告放水が行われ、火災を検知した水噴霧区間に向かってくる自動車の運転者に本格放水を予告警告して緊急停止させる。
【0069】
所定の遅延時間が経過するとストロークしたピストン58のロッド70が弁体58に当接し、リターンバネ56に抗して弁体54をストロークして開放し、水噴霧ヘッド12から本格放水を行う。
【0070】
このようにピストン58と弁体54を別部品として分離配置することにより、自動弁30の開放で最初に予告放水ヘッド16からの予告放水を開始し、所定の遅延時間後に水噴霧ヘッド12からの本格放水を開始するという段階放水制御を適切に実現できる。
【0071】
なお、上記の実施形態において、水噴霧ヘッド12a、12bは同じヘッドを使用して、本格放水をおこなうヘッド12bが接続される配管にのみ遅延開放弁18とセットで接続する構成としても良い。
【0072】
また遅延開放弁18と水噴霧ヘッド12、12bを一体に形成して本格放水専用のヘッドとしても良い。
【0073】
予告放水用の各ヘッドは、運転者へ本格放水の予告を行うものであるから、本格放水のような車道に向けて直接噴霧するものに限らず、トンネル上面や側壁面方向に放水し、運転者へ予告放水を行う構成として運転者の視界の妨げをより防ぐようにしてもよい。
【0074】
遅延開放弁18はピストン58を弁体54側に移動して弁開放するようにしているが、これに限らず、弁体の開放方向側にピストンを配置し、ピストンにより弁体54を開放方向に引っ張って弁開放するようにしても良い。
【0075】
予告放水用のヘッドは放水区域の両端に設けて、本格放水を行う区域を挟むように予告放水を行うようにしてもよい。
【0076】
なお、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0077】
10:自動弁装置
12,12b:水噴霧ヘッド
12a:予告放水兼用水噴霧ヘッド
14:水噴霧配管
16:予告放水ヘッド
16a:予告旋回放水ヘッド
16b:予告フラット放水ヘッド
18:予告放水配管
30:自動弁
50:弁ボディ
52:隔壁
54:弁体
56:リターンバネ
58:ピストン
60:シリンダ
62:オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の放水区画単位に放水する複数の水噴霧ヘッドと、
開放動作により加圧消火用水を前記水噴霧ヘッド側に供給する自動弁装置と、
前記自動弁装置の開放動作による加圧消火用水の供給を受けて小容量の予告放水を行う予告放水ヘッドと、
前記水噴霧ヘッド毎に設けられ、前記自動弁装置の開放動作により供給された加圧消火用水により開放動作から所定時間後に前記水噴霧ヘッドから本格放水を行わせる遅延開放弁と、
を備えたことを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル水噴霧設備に於いて、前記予告放水ヘッドは、旋回放水ヘッド又はフラット放水ヘッドであることを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項3】
トンネル内に設けられて放水区画単位に放水する複数の水噴霧ヘッドと、
開放動作により加圧消火用水を前記水噴霧ヘッド側に供給する自動弁装置と、
前記複数の水噴霧ヘッドの中から定めた予告放水兼用の水噴霧ヘッド以外の水噴霧ヘッドに対応して設けられ、前記自動弁装置の開放動作により供給された加圧消火用水により開放動作から所定時間後に前記水噴霧ヘッドから本格放水を行わせる遅延開放弁と、
を備えたことを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項4】
請求項1乃至3にいずれかに記載のトンネル水噴霧設備に於いて、前記予告放水ヘッドは、トンネル上方及び又は壁面方向に放水することを特徴とするトンネル水噴霧設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182905(P2011−182905A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50102(P2010−50102)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】