説明

トーションビームの製造方法及びトーションビーム

【課題】生産性やコストの面での不利をほとんど招かずにトーションビームの疲労危険部位である耳部の疲労強度を向上させうる手段を提供する。
【解決手段】管体1を成形加工してトーションビームとなすにあたり、前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状に成形した後、ボトムライン3を腹側とする曲げにより、耳部2に管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトーションビームの製造方法及びトーションビームに関し、詳しくは、素形態が円管である管体を断面略U字状に成形加工してトーションビームとなす、トーションビームの製造方法及び該製造方法で製造されたトーションビームに関する。
【背景技術】
【0002】
トーションビームの製造方法に関する背景技術としては、特許文献1,2が挙げられる。
特許文献1では、通常の造管方法(圧延鋼板の圧延方向を管軸方向とした造管方法)で造管した管体の一部を径方向に押し潰してトーションビームとなしたものは、押し潰された箇所の断面の周方向端部(以下、耳部と称す)の内周表面に管軸方向に延びたしわが発生するおそれがあり、このしわが疲労亀裂発生の起点となって、トーションビームの耐久性を害するという問題を解決するために、径方向の押し潰し加工に供する管体として、圧延鋼板の圧延幅方向を管軸方向として造管した管体を用いること、および/または、造管の前もしくは後に管体内周(あるいは鋼板の管体内周対応部)を管周方向(あるいは鋼板の管周方向対応方向)に研磨する旨の提案がなされている。
【0003】
特許文献2では、車両部品の変形強度、疲労強度を向上させる熱処理方法として、鋼材を塑性変形が生じない範囲で捻り、その状態で引張応力が作用している部位に熱処理を加え、冷却後に捻りを解除する旨の提案がなされている。これにより、付与される圧縮残留応力の方向を使用時に作用する応力の方向に容易に揃えること、かつ、ひずみの発生を抑制して寸法精度を高めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−289258号公報
【特許文献2】特開2002−275538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術は、トーションビームの疲労亀裂発生の危険部位である耳部の疲労強度を向上させる手段として有効であると考えられる。同パイプ体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状に成形する際、耳部は主に周方向に折り曲げられる加工を受けるため、耳部の管内面には周方向引張側の残留応力が発生し、これが疲労特性低下の要因となっている。特許文献1の技術では、疲労亀裂発生の起点となる管内表面のしわに着目した技術であるが、しわが発生するような小さな曲率半径の耳形状に成形せず、少し大きい曲率半径の耳形状に設計すればしわ発生は回避可能である。耳部の管内面の引張残留応力の低減手段が、疲労特性向上に重要である。
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、圧延鋼板の圧延幅方向を管軸方向とする、および/または、管内周を管周方向に研磨することが必要であり、通常の場合に比べ、造管長さの制約が大きく、あるいは研磨工程の付加などがあるため、生産性やコストの面で不利になるという課題がある。また、特許文献2の技術では、通常の場合に比べ、捻り、熱処理の工程付加を必要とするため、同様に生産性やコストの面で不利になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、生産性やコストの面での不利をほとんど招かずにトーションビームの疲労亀裂発生の危険部位である耳部、とくに、管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形したときの、前記押し潰された部分と非押し潰し部分との境界部分(以下、徐変部と称す)の耳部の疲労強度を向上させうる手段を提供するものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形した後、ボトムラインを曲げ内側とする曲げにより、耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
(2)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形した後、両管端部を前記上クランプと前記下金型の下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部(耳部の徐変部の意、以下同じ)に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0009】
(3)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、
予め、前記管体の管長手方向中央部を断面略▽形状に成形するとともに、管端に対して断面略V字形状成形部のボトムが下に凸となる方向に反り変形を与える予成形を行った後、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形した後、両管端部を前記上クランプと前記下金型の下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0010】
(4)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該可動上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に垂直部が連なる昇降可能な下金型と、該下金型の両端側に固定配置した下クランプとを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、前記上金型と前記下クランプとでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を前記上クランプと前記下クランプとで挟圧するとともに上下金型を管中央部挟圧状態のまま前記下クランプに対し上昇させてボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0011】
(5)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に垂直部が連なる固定の下金型と、該下金型の両端側に配置した反り促進用回転金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、前記上金型と上向き回転状態にした前記反り促進用回転金型とでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を前記上クランプと下向き回転状態にした前記反り促進用回転金型とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0012】
(6)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型と、該下金型の両端側に配置した先細りテーパ付きの反り促進用進退金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、前記上金型と前進させた前記反り促進用進退金型とでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、前記上金型を開放して前記反り促進用進退金型を後退させ、次いで、管中央部を上下金型で挟圧しつつ両管端部を前記上クランプと前記下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0013】
(7)管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に該上金型と連動可能かつ該上金型に対し進退可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型とを用い、
前記上クランプを後退させた状態で前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形しつつ管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、前記上金型を上昇させかつ前記上クランプを前進させ、次いで、前記上金型を下降させて、管中央部を上下金型で挟圧しつつ両管端部を前記上クランプと前記下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0014】
(8)前項(1)〜(7)のいずれか1項において、
少なくとも成形加工の終盤すなわちボトムラインを曲げ内側とする曲げを加えた状態に保持してから除荷する前までの段階で管内に液圧を負荷することを特徴とするトーションビームの製造方法。
(9)管体を成形加工して真直ぐな部品形状のトーションビームとなすにあたり、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部が管長以上の長さ範囲にわたる固定の下金型とを用い、
前記上クランプを上昇させた状態で前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形しつつ管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を前記上クランプと前記下金型とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する工程において、
少なくとも成形加工の終盤すなわちボトムラインを曲げ内側とする曲げを加えた状態に保持してから除荷する前までの段階で管内に液圧を負荷することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【0015】
(10)前項(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法で素管から製造されたトーションビームであって、該トーションビームの徐変部耳部における耳朶形状成形範囲の最大主応力の最大値で定義される残留応力σが、前記素管の降伏応力YSに対して50%以下に抑えられたことを特徴とする捻り疲労特性に優れたトーションビーム。
【発明の効果】
【0016】
トーションビーム成形時に主に周方向の折り曲げ加工を受けることにより発生した耳部板厚方向の残留応力分布は、次工程でボトムラインを腹側(すなわち曲げ内側)とする曲げ加工を行なうことにより、耳部の内外表面ともに長手方向に引張側のひずみが作用するため変化し、内表面の引張残留応力を減少させることができる。
本発明によれば、トーションビームの耳部の引張残留応力を低減させるとともに、加工硬化させることができて、疲労強度が向上する。工程としては通常の押し潰しの工程後に軽度といえる2〜6%の曲げの工程が付加されるだけであって、造管長さの制約は通常の場合と同じで、研磨、捻り、熱処理の工程付加もないので、生産性やコストの面での不利は無視できる程度に小さい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明により真直ぐな部品形状のトーションビームを製造する場合の1例を示す概略側面図
【図2】本発明により曲り部品形状のトーションビームを製造する場合の1例を示す概略側面図
【図3】図1または図2のA−A断面図
【図4】トーションビームの耳部に付与した引張側の曲げひずみと疲労寿命の関係を調べた結果の1例を示すグラフ
【図5】本発明におけるもう1つの実施形態の1例を示す概略側面図
【図6】本発明(2)の実施形態の1例を示す概略図
【図7】本発明により耳部の徐変部に引張側の曲げひずみが付与される様子を示す説明図
【図8】本発明(3)における予成形(第1工程)の実施形態の1例を示す概略図
【図9】本発明(3)における予成形(第1工程)後の成形(第2工程)の実施形態の1例を示す概略図
【図10】本発明(4)の実施形態の1例を示す概略図
【図11】本発明(5)の実施形態の1例を示す概略図
【図12】本発明(6)の実施形態の1例を示す概略図
【図13】本発明(6)の実施形態の1例(図12から続く)を示す概略図
【図14】本発明(7)の実施形態の1例を示す概略図
【図15】本発明(9)の実施形態の1例を示す概略図
【図16】本発明(9)の実施形態のもう1つの例を示す概略図
【図17】曲げ矯正(ボトムラインを曲げ内側とする曲げ加工)方法及び曲げひずみと残留応力の測定方法を示す説明図
【図18】残留応力比率γと、除荷前の形状から幾何学的に算出した引張側の曲げひずみεa及び除荷後の残留塑性曲げひずみεbの関係を示す曲線図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明(1)について説明する。
本発明により真直ぐな部品形状のトーションビームを製造する場合、例えば図1に示すように、1工程目で素形態が円管である管体1の一部を径方向に押し潰して断面略U字状(図3)に成形する。このときボトムライン3を背側(曲げ外側)とする曲げも同時に行う(図1(a))。そして2工程目で、ボトムライン3を腹側(曲げ内側)とする曲げを行い、真直ぐな部品形状のトーションビームとなす(図1(b))。1工程目の曲げは、2工程目の曲げ(曲り部品形状から真直ぐな部品形状への曲げ戻し)で耳部2に2〜6%の引張側の曲げひずみが付与されるように行う。すなわちトーションビームの部品高さhに対し、このhと1工程目の曲げ半径Rとから次式(1)で定義される耳部の引張側の曲げひずみεが2〜6%となるように、1工程目の曲げ半径Rを設定する。
【0019】
【数1】

【0020】
一方、本発明により曲り部品形状のトーションビームを製造する場合、例えば図2に示すように、1工程目で素形態が円管である管体1の一部を径方向に押し潰して断面略U字状(図3)に成形する。このときボトムライン3は曲げずに真直ぐなままとしておく(図2(a))。そして2工程目で、ボトムライン3を腹側(曲げ内側)とする曲げを行い、曲り部品形状のトーションビームとなす(図2(b))。2工程目の曲げは、耳部2に2〜6%の引張側の曲げひずみが付与されるように行う。すなわちトーションビームの部品高さhに対し、このhと2工程目の曲げ半径Rとから次式(2)で定義される耳部の引張側の曲げひずみεが2〜6%となるように2工程目の曲げ半径Rを設定する。
【0021】
【数2】

【0022】
本発明では、耳部に付与する引張側の曲げひずみを2〜6%とすることで、形状不良の発生なく耳部の引張残留応力を有効に低減させ、かつ加工硬化させて、疲労強度を向上させることができる。例えば図4は、素形態が引張強さ780MPa、外径101.6mm、肉厚3.4mm、長さ1200mmの円管である管体に、図1に示した1工程目と2工程目の加工を施し、その際、耳部の引張側の曲げひずみの水準を変えて、真直ぐな部品形状のトーションビームを製造し、該製造したトーションビームについて、小型車に実装されたトーションビームが受けると推定される繰り返し応力負荷状態を模した疲労試験を行い、耐久寿命(回数)を調べた結果の1例を示すものである。図4より、曲げひずみが2〜6%の範囲内で耐久寿命が大幅に向上することがわかる。これに対し、曲げひずみが2%未満では耐久寿命向上効果に乏しく、一方、曲げひずみが6%を超えると形状不良が発生して製造不能となる。
【0023】
また、本発明の実施にあたっては、2工程目の曲げ加工は、例えば図5に示すように、場合に応じて、管長手方向全体に施さなくても、図示のような疲労亀裂発生の危険部位(例えば潰し部と非潰し部との境界部、すなわち徐変部7A)のみに施すようにしてもよい。
前記2工程目の曲げ加工は、前記疲労亀裂発生の危険部位のみに限らず、それ以外の部位にも必要に応じて付与されてもかまわない。該疲労亀裂発生の危険部位の中でも最たる危険部位は、徐変部耳部であるので、本発明では、最終的に少なくとも徐変部耳部には、長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみが付与されるように成形加工を行うのが好ましい。
【0024】
最終的に徐変部耳部に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与するために、金型を用いたより具体的な成形加工によるトーションビームの製造方法が、本発明(2)〜(7)である。これらによれば、素管からトーションビームへの成形中に管体内に液圧を負荷せずとも、疲労亀裂発生の危険部位の残留応力を低減させることが可能である。
本発明(8)は、本発明(1)〜(7)のいずれかにおいて成形加工中に管体内に液圧を負荷するものであり、これにより、残留応力の低減に加えて、高寸法精度(長手方向の反りや捻れ、面のゆがみの少ない)トーションビーム製品を提供できる。
【0025】
本発明(9)は、真直ぐな部品形状に成形する場合に適した、液圧負荷併用の成形方法を提供できる。
本発明(10)は、本発明(1)〜(9)のいずれかの製造方法で製造された製品において徐変部耳部の残留応力を規制して捻り疲労特性に優れたトーションビームを提供するものである。
【0026】
本発明(2)について説明する。
本発明(2)では、管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、例えば図6に示すように、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型4の両端側に昇降可能に配置した上クランプ6と、下型水平部51の両端に下傾テーパ部52が連なる固定の下金型5とを用い、上金型4と下金型5とで管体1の一部を径方向に押し潰して断面略V字状(断面略U字状でもよい)に成形した後、両管端部を上クランプ6と下金型5の下傾テーパ部52とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ加工による矯正(曲げ矯正ともいう。以下同じ)により、図7に示す徐変部耳部(徐変部7Aの耳部)7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する。
【0027】
なお、図7は、本発明により徐変部耳部7に引張側の曲げひずみが付与される様子を示す説明図であり、図6(b)の上金型潰しの段階が図7(a)に対応し、図6(c)の両管端潰しの段階を経た図6(d)のパイプ取り出し(スプリングバック後)の段階が図7(b)に対応する。徐変部耳部7は、図7(a)では上反り曲がり状態であり、図7(b)ではほぼフラット状態であるから、最終的にボトムライン3を曲げ内側とする曲げにより、引張側の曲げひずみが付与されている。
【0028】
断面略V字状への成形(V字プレス;図6(b))の成形初期(耳部形成段階)で発生した徐変部耳部の肉厚方向の残留応力分布は、主に周方向の折り曲げ加工を受けることにより発生するが、成形終盤(図6(c))でボトムラインを曲げ内側とする曲げ加工を行うことにより、徐変部耳部の内外表面ともに長手方向に引張側のひずみが作用するために変化し、内表面の引張残留応力を減少させることができる。
【0029】
本発明(3)について説明する。
本発明(3)では、管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、例えば図8に示すように、第1工程として、予め、管体1の管長手方向中央部を断面略▽形状に成形(▽型予プレス)するとともに、管端に対してV底中央部が凸となる方向に反り変形を与える予成形を行う。この第1工程は、▽型予プレス用上金型8と▽型予プレス用下金型9を用いるが、▽型予プレス用下金型9の長手方向中央のV底部を長手方向両端の半円底部よりも成形後ギャップδ(>0)だけ低くしておく(図8(c),(d))ことで、1回のプレスで▽型予プレスおよび反り変形の加工が終了する。なお、断面略▽形状の底部は本例の略V形に代えて略U形としてもよい。
【0030】
次いで、例えば図9に示すように、第2工程として、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型4の両端側に昇降可能に配置した上クランプ6と、下型水平部51の両端に下傾テーパ部52が連なる固定の下金型5とを用い、上金型4と下金型5とで管体1の一部を径方向に押し潰して断面略V字状(断面略U字状でもよい)に成形した後、両管端部を上クランプ6と下金型5の下傾テーパ部52とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ(曲げ矯正)により、図7に示す徐変部耳部7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する。
【0031】
図9(b)の上金型潰しの段階が図7(a)に対応し、図9(c)の両管端潰しの段階を経た図9(d)のパイプ取り出し(スプリングバック後)の段階が図7(b)に対応する。徐変部耳部7は、図7(a)では上反り曲がり状態であり、図7(b)ではほぼフラット状態であるから、最終的にボトムライン3を曲げ内側とする曲げにより、引張側の曲げひずみが付与されている。
【0032】
断面略V字状への成形(V字プレス;図9(b))の成形初期(耳部形成段階)で発生した徐変部耳部の肉厚方向の残留応力分布は、主に周方向の折り曲げ加工を受けることにより発生するが、成形終盤(図9(c))でボトムラインを曲げ内側とする曲げ加工を行うことにより、徐変部耳部の内外表面ともに長手方向に引張側のひずみが作用するために変化し、内表面の引張残留応力を減少させることができる。本発明(3)ではプレス工程が2つなので、プレス工程が1つである場合に比べ、同じトーションビームを製造する(トータル加工量が同じ)場合、使用金型数は増えるが、各工程のプレス荷重は低くてすむ。
【0033】
本発明(4)について説明する。
本発明(4)では、管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、例えば図10に示すように、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型4の両端側に昇降可能に配置した上クランプ6と、下型水平部101の両端に垂直部103が連なる昇降可能な下金型10と、下金型10の両端側に固定配置した下クランプ11とを用い、上金型4と下金型10とで管体1の一部を径方向に押し潰して断面略V字状(断面略U字状でもよい)に成形するとともに、上金型4と下クランプ11での3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を上クランプ6と下クランプ11とで挟圧するとともに上下金型4,10を管中央部挟圧状態のまま下クランプ11に対し上昇させてボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ(曲げ矯正)により、図7に示す徐変部耳部7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する。
【0034】
図10(b)のV字プレス成形段階が図7(a)に、図10(c)(d)の段階を終えたパイプ取り出し(スプリングバック後)の段階が図7(b)に、それぞれ対応する。徐変部耳部7は、図7(a)では上反り曲がり状態であり、図7(b)ではほぼフラット状態であるから、最終的にボトムライン3を曲げ内側とする曲げにより、引張側の曲げひずみが付与されている。
V字プレス成形(図10(b))の成形初期(耳部形成段階)で発生した徐変部耳部の肉厚方向の残留応力分布は、主に周方向の折り曲げ加工を受けることにより発生するが、成形終盤(図10(c))でボトムラインを曲げ内側とする曲げ加工を行うことにより、徐変部耳部の内外表面ともに長手方向に引張側のひずみが作用するために変化し、内表面の引張残留応力を減少させることができる。本発明(4)では、下金型10の昇降により管長手方向の曲げ量を調整できるので、固定の下金型5を用いる場合に比べ、徐変部耳部に付与する引張側の曲げひずみ量の制御範囲を広くとることができる。
【0035】
本発明(5)について説明する。
本発明(5)では、管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、例えば図11に示すように、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型4の両端側に昇降可能(上金型4と連動可能でかつ上金型4とは独立に昇降可能)に配置した上クランプ6と、下型水平部51の両端に垂直部53が連なる固定の下金型5と、下金型5の両端側に配置した反り促進用回転金型12とを用い、管体1をセットし(図11(a))、上下金型4,5で管体1の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、上金型4と上向き回転状態にした反り促進用回転金型12とでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加え(図11(b))、その後、両管端部を上クランプ6と下向き回転状態にした反り促進用回転金型12とで挟圧してボトムライン3を曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ(曲げ矯正)により、徐変部耳部7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する(図11(c))。この例では、除荷しスプリングバックした後は真直ぐな部品形状が得られるように成形した(図11(d))。なお、図11において、4Aは上金型昇降駆動手段(油圧シリンダ等)、6Aは上クランプ昇降駆動手段(油圧シリンダ等)である(後掲の図でも同じ)。本発明(5)によれば、反り促進用回転金型の回転角度調整により上反り量を容易に制御できるため、管サイズ、管材質によらず安定したインライン曲げ矯正が可能である。なお、インライン曲げ矯正とは、トーションビーム成形加工工程に曲げ加工による矯正を含めた加工を行って、トーションビーム製品を得ることを言う。インライン曲げ矯正によれば、トーションビーム成形後の別の設備による後処理工程が不要となり、製造コストが低減できる。
【0036】
本発明(6)について説明する。
本発明(6)では、管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、例えば図12ないし図13に示すように、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型の両端側に昇降可能に(上金型4と連動可能でかつ上金型4とは独立に昇降可能)配置した上クランプ6と、下型水平部51の両端に下傾テーパ部52が連なる固定の下金型5と、下金型5の両端側に配置した先細りテーパ付きの反り促進用進退金型13とを用いる。
【0037】
そして、同図に示すように、まず反り促進用進退金型13を下傾テーパ部52と重なる位置に前進させ(図12(a))、管体1をセットする(図12(b))。続いて上金型4と下金型5とで管体1の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、上金型4と前記前進させた反り促進用進退金型13とでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加える(図12(c))。その後、上金型4を開放し(図13(a))、反り促進用進退金型を後退させ(図13(b))、次いで、管中央部を上下金型4,5で挟圧しつつ両管端部を上クランプ6と下傾テーパ部52とで挟圧してボトムライン3を曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ(曲げ矯正)により、徐変部耳部7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する(図13(c))。この例では、除荷しスプリングバックした後は真直ぐな部品形状が得られるように成形した(図13(d))。本発明(6)によれば、反り促進用進退金型のテーパ角度調整により上反り量を容易に制御できるため、管サイズ、管材質によらず安定したインライン曲げ矯正が可能である。
【0038】
本発明(7)について説明する。
本発明(7)では、管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、例えば図14に示すように、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型4の両端側に上金型4と連動可能かつ上金型4に対し進退可能に配置した上クランプ14と、下型水平部51の両端に下傾テーパ部52が連なる固定の下金型5とを用いる。なお、14Aは上クランプ進退駆動手段(油圧シリンダ等)である。
【0039】
そして、上クランプ14を後退させた状態で管体1をセットし(図14(a))、上金型4と下金型5とで管体1の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形しつつ管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加え(図14(b))、その後、上金型4を上昇させかつ上クランプ14を前進させ(図14(c))、次いで、上金型4を下降させて、管中央部を上下金型4,5で挟圧しつつ両管端部を上クランプ14と下傾テーパ部52とで挟圧してボトムライン3を曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ(曲げ矯正)により、徐変部耳部7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する(図14(d))。この例では、最終的に除荷しスプリングバックした後は真直ぐな部品形状が得られるように成形した(図14(e))。本発明(7)によれば、上クランプは、上下方向の圧下・開放の駆動を上金型昇降駆動手段で兼任し、その進退駆動時は管端部から反力を受けないから、上クランプ進退駆動手段14Aのパワー(容量)を前記上クランプ昇降駆動手段6A(昇降駆動時は管端部から反力を受ける)のそれよりも小さいものにすることができて、設備コストを低減することが可能である。
【0040】
本発明(8)について説明する。
本発明(8)では、前項(1)〜(7)のいずれか1項において、少なくとも成形加工の終盤すなわちボトムラインを曲げ内側とする曲げ(曲げ矯正)を加えた状態に保持してから除荷する前までの段階で管内に液圧を負荷する。ここで、管内に液圧を負荷する段階は、成形加工の終盤のみでもよく、さらに終盤に終盤以外の段階を加えてもよく、例えば成形加工開始前から曲げ矯正後除荷前までの段階(成形加工の全段階)で液圧を負荷してもよい。
【0041】
これにより、残留応力の低減に加えて、高寸法精度(長手方向の反りや捻れ、面のゆがみの少ない)トーションビーム製品を提供できる。また、これによれば、除荷後のスプリングバックを小さく抑えることができるため、金型形状の設計にあたっては、最終製品目標形状にスプリングバックによる誤差分を加味する必要がなく、金型設計が容易化する。
なお、管内に液圧を負荷するための液圧負荷手段は、後述の本発明(9)の実施形態(図15,図16参照)に示されるように、増圧機20、給水弁21、シール用口金22,23、エア抜き弁24等を用いて構成できる。
【0042】
本発明(9)について説明する。
本発明(9)では、例えば図15に示すように、管体1を成形加工して真直ぐな部品形状のトーションビーム(図15(e))となすにあたり、上型水平部41の両端に上傾テーパ部42が連なる船底型形状の昇降可能な上金型4と、上金型4の両端側に昇降可能に配置した上クランプ6と、下型水平部51が管長以上の長さ範囲にわたる固定の下金型5とを用いる。
【0043】
そして、管体1をセットし(図15(a))、上クランプ6を上昇させた状態で上金型4と下金型5とで管体1の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形しつつ管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加え(図15(b))、その後、両管端部を上クランプ6と下金型5とで挟圧してボトムライン3を曲げ内側とする曲げを加え、該曲げ(曲げ矯正)により、徐変部耳部7に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する(図15(c))工程において、少なくとも成形加工の終盤すなわちボトムライン3を曲げ内側とする曲げ(曲げ矯正)を加えた状態に保持してから除荷する前までの段階(図15(d))で管内に液圧を負荷する。
【0044】
液圧負荷手段は、例えば図15のように、両管端の開口をシールするシール用口金22,23の一方の口金22に給水弁21を介して増圧機20で液体を送給可能とし、かつ、他方の口金23からエア抜き弁24を介してエア抜き可能とした形態に構成することができる。液圧を負荷する際には、口金22,23をそれぞれ両管端開口の一方と他方に装着してこれらをシールし、給水弁21を開いて増圧機20で加圧した液体(例えば水)を送給(液圧負荷)するとともに、エア抜き弁24を開閉(あるいは適当な開度に設定)してエア抜きを行う(図15(d))。
【0045】
図15の例では、成形加工の終盤のみに液圧を負荷する場合を示したが、さらに終盤に終盤以外の段階を加えて液圧負荷を行ってもよい。
例えば、本発明(9)のもう1つの実施形態として図16に示すように、成形加工開始前から曲げ矯正後除荷前までの段階(成形加工の全段階)で液圧を負荷するようにしてもよい。図16の例では図15と同様の成形加工装置および液圧負荷手段を用いるが、成形開始前に液圧負荷手段を管体1に取り付けておき(図16(a))、液圧を負荷したまま成形加工を行い(図16(b),(c))、除荷前まで液圧を負荷している。
【0046】
本発明(9)によれば、残留応力の低減に加えて、高寸法精度(長手方向の反りや捻れ、面のゆがみの少ない)トーションビーム製品を提供できる。また、これによれば、除荷後のスプリングバックを小さく抑えることができるため、金型形状の設計にあたっては、最終製品目標形状にスプリングバックによる誤差分を加味する必要がなく、金型設計が容易化する。また、真直ぐな部品形状を得るために、直線状の下型ボトムラインを有する簡単な形状の下金型を使用するため、下型水平部の両端側に下傾テーパ部を設けた比較的複雑な形状の下金型を用いる場合に比べ、下金型製作コストを低減できる。
【0047】
本発明(10)について説明する。
本発明(10)は、本発明(1)〜(9)のいずれか1つによって素管から製造されたトーションビームであって、該トーションビームの徐変部耳部における耳朶形状成形範囲の最大主応力の最大値σmaxで定義される残留応力σが、前記素管の降伏強度YSに対して50%以下に抑えられたものである。一方、従来のトーションビームは、σがYSの50%を上回る。よって、本発明によれば、従来よりも捻り疲労が起こりにくい部品を提供できる。
【0048】
徐変部耳部における耳朶形状成形範囲の最大主応力の最大値σmaxは、ひずみゲージ切出し法またはX線法などで計測可能である。素管の降伏強度YSはJIS12A号、JIS11号などの引張試験で求められる。本発明(10)では、σ,YSから次式(3)で定義される残留応力比率γが、γ≦50%とされている。
【0049】
【数3】

【0050】
一方、耳部(とくに徐変部耳部)に付与する引張側の曲げひずみε(εaと記す)は、図1、図2に示したように、除荷前の形状から幾何学的に算出される。この曲げひずみεaを、除荷後の残留塑性曲げひずみεbで表示した場合、εbとεaの関係は管サイズ、材料強度により多少変わるものの、後掲の図18に示されるように、εaを2%以上とすることで、εbが約0.2%以上となり、γ≦50%が得られる。除荷後の耳部管外面の残留塑性曲げひずみεbは、ひずみゲージ法などで計測が可能であり、最大主ひずみεmaxとして測定される。
【0051】
図17は、オフライン曲げ矯正方法及び曲げひずみと残留応力の測定方法の1例を示すものである。この例は、曲り部品形状を得る図5(b)の2工程目において測定する場合に対応し、対象材は690MPa級、素管サイズはφ89.1mm×t2.6mm×L1300mmである。管体1の徐変部耳部7にひずみゲージ30を貼り、中央金型と両端側の押付金型とを有する曲げ矯正装置に管体1をセットし(図17(a))、両管端部を押付金型で押下する(押下量=曲げ矯正量;図17(b))。除荷後、ひずみゲージ30の出力からεmax(=εb)を計測し(図17(c))、さらに、切出し法にてσmax(=σ)を計測し、これと別途求めたYSより、上記残留応力比率の式にてγを算出する。
【0052】
このような測定方法で、曲げ矯正量を変化させて求めた残留応力比率γと、残留塑性曲げひずみεb及び除荷前の形状から幾何学的に算出した引張側の曲げひずみεaの関係を図18に示す。なお、同図において、1μstrain=10−6=10−4%である。
図示のように、εaが2%以上(εbでは約0.2%以上)で、γ≦50%が余裕をもって得られることがわかる。また、εaが約4%以上(εbでは約0.4%以上)では、γが負の値であり、すなわちσmaxが引張側から圧縮側へ変更できており、捻り疲労特性面でさらに有利な(ひずみ取り焼鈍材の部品性能を超える)特性を付与できたことがわかる。
【実施例1】
【0053】
実施例1として、表1に示す素管(素形態は円管である)の管体を、図1または図2に示した実施形態において表2に示すように相違させた加工条件下で、成形加工してトーションビームを製造し、該製造したトーションビームについて、前記と同様の疲労試験を行って耐久寿命(回数)を調べた。その結果を表2に示す。表2より、本発明例では、比較例に比べて格段に高い耐久寿命を示し、形状不良も起こしていないことがわかる。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【実施例2】
【0056】
実施例2として、表1に示す素管(素形態は円管である)の管体を、前述の本発明(2)〜(9)のいずれかの実施形態において表3に示すように相違させた加工条件下で、成形加工してトーションビームを製造し、該製造したトーションビームについて、前記と同様の疲労試験を行って耐久寿命(回数)を調べた。その結果を表3に示す。表3より、本発明例では、比較例に比べて格段に高い耐久寿命を示し、形状不良も起こしていないことがわかる。また、前記γを前述の測定方法により求めた結果を表3に併記する。本発明例ではγが50%以下に抑えられている。
【0057】
【表3】

【符号の説明】
【0058】
1 管体
2 耳部
3 ボトムライン
4 上金型(昇降可能)
4A 上金型昇降駆動手段(油圧シリンダ等)
5 下金型(固定)
6 上クランプ(昇降可能;管端クランプ用)
6A 上クランプ昇降駆動手段(油圧シリンダ等)
7 徐変部耳部(徐変部の耳部)
7A 徐変部
8 ▽型予プレス用上金型
9 ▽型予プレス用下金型
10 下金型(昇降可能)
11 下クランプ(固定、管端クランプ用)
12 反り促進用回転金型
13 反り促進用進退金型
14 上クランプ(上金型と連動、進退可能;管端クランプ用)
14A 上クランプ進退駆動手段(油圧シリンダ等)
20 増圧機
21 給水弁
22,23 口金(シール用口金)
24 エア抜き弁
30 ひずみゲージ
41 上型水平部
42 上傾テーパ部
51 下型水平部(下型ボトムライン水平部)
52 下傾テーパ部
53 垂直部
60 増圧機
61 給水弁
62 シール用口金
63 エア抜き弁
101 下型水平部
103 垂直部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を成形加工してトーションビームとなすにあたり、前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形した後、ボトムラインを曲げ内側とする曲げにより、耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形した後、両管端部を前記上クランプと前記下金型の下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
予め、前記管体の管長手方向中央部を断面略▽形状に成形するとともに、管端に対して断面略V字形状成形部のボトムが下に凸となる方向に反り変形を与える予成形を行った後、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形した後、両管端部を前記上クランプと前記下金型の下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該可動上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に垂直部が連なる昇降可能な下金型と、該下金型の両端側に固定配置した下クランプとを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、前記上金型と前記下クランプとでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を前記上クランプと前記下クランプとで挟圧するとともに上下金型を管中央部挟圧状態のまま前記下クランプに対し上昇させてボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項5】
請求項1または2において、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に垂直部が連なる固定の下金型と、該下金型の両端側に配置した反り促進用回転金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、前記上金型と上向き回転状態にした前記反り促進用回転金型とでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を前記上クランプと下向き回転状態にした前記反り促進用回転金型とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項6】
請求項1または2において、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型と、該下金型の両端側に配置した先細りテーパ付きの反り促進用進退金型とを用い、
前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形するとともに、前記上金型と前進させた前記反り促進用進退金型とでの3点曲げにより管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、前記上金型を開放して前記反り促進用進退金型を後退させ、次いで、管中央部を上下金型で挟圧しつつ両管端部を前記上クランプと前記下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2において、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に該上金型と連動可能かつ該上金型に対し進退可能に配置した上クランプと、下型水平部の両端に下傾テーパ部が連なる固定の下金型とを用い、
前記上クランプを後退させた状態で前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形しつつ管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、前記上金型を上昇させかつ前記上クランプを前進させ、次いで、前記上金型を下降させて、管中央部を上下金型で挟圧しつつ両管端部を前記上クランプと前記下傾テーパ部とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
少なくとも成形加工の終盤すなわちボトムラインを曲げ内側とする曲げを加えた状態に保持してから除荷する前までの段階で管内に液圧を負荷することを特徴とするトーションビームの製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
上型水平部の両端に上傾テーパ部が連なる船底型形状の昇降可能な上金型と、該上金型の両端側に昇降可能に配置した上クランプと、下型水平部が管長以上の長さ範囲にわたる固定の下金型とを用い、
前記上クランプを上昇させた状態で前記上金型と前記下金型とで前記管体の一部を径方向に押し潰して断面略U字状もしくは断面略V字状に成形しつつ管中央部が下に凸になる方向に反り変形を加えた後、両管端部を前記上クランプと前記下金型とで挟圧してボトムラインを曲げ内側とする曲げを加え、該曲げにより、徐変部耳部に、管長手方向に2〜6%の引張側の曲げひずみを付与する工程において、
少なくとも成形加工の終盤すなわちボトムラインを曲げ内側とする曲げを加えた状態に保持してから除荷する前までの段階で管内に液圧を負荷することを特徴とする真直ぐな部品形状のトーションビームの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で素管から製造されたトーションビームであって、該トーションビームの徐変部耳部における耳朶形状成形範囲の最大主応力の最大値で定義される残留応力σが、前記素管の降伏応力YSに対して50%以下に抑えられたことを特徴とする捻り疲労特性に優れたトーションビーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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