説明

トー角自動調整装置およびその制御方法

【課題】調整後のトー角が、トー角の目標値と一致しているか否かを、タイヤを一回転させることなく短時間で精度よく判定することができる車両のトー角自動調整装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】制御装置21は、トー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果に基づいて、各タイヤ11・12・13・14が一回転する間の各回転位相における各トー角θ〜θの変化量の推移を示す各基準波形P〜Pを算出するとともに、各回転位相における各トー角θ〜θの目標値を示す各目標波形Q〜Qを設定し、各タイヤ11・12・13・14が任意の回転位相R〜Rであるときのトー角測定装置1による測定結果(各トー角現在値θn〜θn)が、各目標波形Q〜Qの任意の回転位相R〜Rにおける波形と一致するとき、各トー角現在値θn〜θnが目標値θsetに達したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トー角自動調整装置およびその制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のトー角を自動的に調整するトー角自動調整装置の技術は公知となっており、例えば、以下に示す特許文献1に開示されている。
係る特許文献1に記載された従来技術において、トー角自動調整装置は、車両に備えられた車輪(タイヤ)のトー角を測定するトー角測定手段と、タイヤのトー角を目標トー角に調整するトー角調整手段を備えている。また、トー角調整手段は制御手段を備えている。
【0003】
そして、トー角測定手段により測定されたトー角が所定の目標トー角と異なるときには、その差異に応じて、制御手段によって、トー角調整手段に対して指示するべき調整量を指示するとともに、測定されたトー角が目標トー角と一致するまで、随時調整量を更新しながら、トー角調整手段による調整作業を繰り返して実行する。
【0004】
トー角は、タイヤの回転位相に応じて、一定の規則性をもって変動するため、タイヤがある任意の回転位相である場合に測定されたトー角が目標トー角と一致したからといって、必ずしもトー角が目標トー角に一致したと判定することができないという性質を有するものである。
【0005】
このため従来は、測定されたトー角が目標トー角と一致しているか否かの判定は、以下の手順で行われている。
まず、タイヤを一回転させる。そして、タイヤが一回転する間の各回転位相のうち、少なくとも複数の回転位相を選択して、その選択した各回転位相でトー角を測定する。そして、各回転位相において測定して得られた各トー角の平均値を求め、該平均値が目標トー角と一致するか否か(または、平均値が目標トー角を基準とする一定の閾値内に収まっているか否か)に応じて行われている。
【0006】
このように従来は、トー角の調整結果を判定する(即ち、トー角が目標トー角と一致した(あるいは閾値内に収まった)か否かを判定する)ためには、トー角を調整する度に必ずタイヤを一回転させる必要があり、このためにトー角の自動調整に要する時間が長期化する要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−145212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、係る現状を鑑みてなされたものであり、調整後のトー角が、トー角の目標値と一致しているか否かを、タイヤを一回転させることなく短時間で精度よく判定することができるトー角自動調整装置およびその制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、車両に設けられたタイヤのトー角を測定するトー角測定装置と、前記トー角を調整するトー角調整装置と、前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記トー角調整装置による前記トー角の調整量を算出するとともに、該調整量の算出結果を前記トー角調整装置に出力する制御装置と、前記タイヤの回転位相を検出する回転位相検出装置と、を備えるトー角自動調整装置であって、前記制御装置は、前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記タイヤが一回転する間の各回転位相における前記トー角の変化量の推移を示す基準波形を算出するとともに、該基準波形におけるトー角の平均値を、予め設定された前記トー角の目標値に一致させて、各回転位相における前記トー角の目標値を示す目標波形を設定し、前記タイヤが任意の回転位相であるときの前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果が、前記目標波形の前記任意の回転位相における波形と一致するとき、前記トー角が前記目標値に達したと判定するものである。
【0011】
請求項2においては、車両に設けられたタイヤのトー角を測定するトー角測定装置と、前記トー角を調整するトー角調整装置と、前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記トー角調整装置による前記トー角の調整量を算出するとともに、該調整量の算出結果を前記トー角調整装置に出力する制御装置と、前記タイヤの回転位相を検出する回転位相検出装置と、を備えるトー角自動調整装置の制御方法であって、前記制御装置によって、前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記タイヤが一回転する間の各回転位相における前記トー角の変化量の推移を示す基準波形を設定する基準波形設定工程と、前記制御装置によって、前記基準波形におけるトー角の平均値を、予め設定された前記トー角の目標値に一致させて、各回転位相における前記トー角の目標値を示す目標波形を設定する目標波形設定工程と、前記制御装置によって、前記タイヤが任意の回転位相であるときの前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果が、前記目標波形の前記任意の回転位相における波形と一致するか否かを判定するトー角判定工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、調整後のトー角測定値が、トー角目標値と一致しているか否かの合否判定を、タイヤを一回転させることなく短時間で精度よく判定することができる。
【0014】
請求項2においては、調整後のトー角測定値が、トー角目標値と一致しているか否かの合否判定を、タイヤを一回転させることなく短時間で精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】(a)本発明の一実施例に係るトー角測定装置における測定範囲の設定状況を示す左側面模式図、(b)本発明の一実施例に係るトー角測定装置の全体構成を示す左側面模式図。
【図3】(a)本発明の一実施例に係るトー角測定装置における測定範囲の設定状況を示す右側面模式図、(b)本発明の一実施例に係るトー角測定装置の全体構成を示す右側面模式図。
【図4】本発明の一実施例に係るトー角測定装置の全体構成を示す平面模式図。
【図5】本発明の一実施例に係るトー角測定装置によるトー角の測定状況を示す斜視図。
【図6】本発明の一実施例に係るトー角の算出方法を示す説明図。
【図7】各タイヤにおけるトー角を示す説明図。
【図8】本発明の一実施例に係るトー角調整装置によるトー角の調整状況(調整前)を示す側面模式図。
【図9】本発明の一実施例に係るトー角調整装置によるトー角の調整状況(調整中)を示す側面模式図。
【図10】(a)本発明の一実施例に係る基準波形の生成方法を示す説明図、(b)本発明の一実施例に係る目標波形の生成方法を示す説明図。
【図11】本発明の一実施例に係る制御装置による制御動作を示すロジック図。
【図12】(a)本発明の一実施例に係る制御装置による制御方法を示す説明図、(b)従来の制御方法を示す説明図。
【図13】本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置の全体構成を示す側面模式図。
【図14】本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置によるトー角の自動調整作業を示す作業フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置について、図1を用いて説明をする。図1は本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示す如く、本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置20は、トー角測定装置1、制御装置21、トー角調整装置22、モニタ23、操作スイッチ24、回転ローラ25等から構成されている。
【0018】
トー角測定装置1は、車両に備えられるタイヤのトー角を測定する機能を有する装置であり、制御装置21と接続されている。また、トー角調整装置22は、車両におけるトー角の調整部位(後述するタイロッド27等)に機械的な作用を施す(例えば、ボルトやナットを締めたり緩めたりする)機能を有する装置であり、制御装置21と接続されている。回転ローラ25は、タイヤを回転駆動する機能を有するとともに、エンコーダ26と協働して回転駆動されるタイヤの回転位相を検出する機能を有する装置であり、エンコーダ26を介して制御装置21と接続されている。制御装置21は、トー角自動調整装置20の各部(トー角測定装置1、トー角調整装置22、回転ローラ25等)の動作を制御するための指令信号を出力する機能を有するとともに、前記各部から入力された情報に基づいて調整されたトー角の合否を判定する機能を有する装置である。
【0019】
また、モニタ23は、制御装置21に接続されるディスプレイ装置であり、制御装置21に入力されたトー角測定装置1によるトー角の測定結果等が表示され、トー角の調整作業(所謂、アライメント調整作業)を行う作業者に対して、車両の状態等を報知するものである。
【0020】
操作スイッチ24は、制御装置21に接続されるスイッチであり、車両100の近傍で作業者が操作することができる操作部24aを備えている。そして、作業者が車両の配置状態等を確認した上で、当該操作スイッチ24の操作を行う(操作部24aを引く等する)ことによって、その時点から制御装置21による制御が開始される構成としている。
【0021】
ここで、トー角測定装置1について、図1〜図4を用いて説明をする。図2は(a)本発明の一実施例に係るトー角測定装置における測定範囲の設定状況を示す左側面模式図、(b)本発明の一実施例に係るトー角測定装置の全体構成を示す左側面模式図、図3は(a)本発明の一実施例に係るトー角測定装置における測定範囲の設定状況を示す右側面模式図、(b)本発明の一実施例に係るトー角測定装置の全体構成を示す右側面模式図、図4は本発明の一実施例に係るトー角測定装置の全体構成を示す平面模式図である。
【0022】
図1に示す如く、トー角測定装置1は、検出部2、コントローラ7、演算装置8等により構成されている。
検出部2は、検出対象物たるタイヤの状態を直接検出するための部位であり、複数の距離センサ群3・4・5・6によって構成されている。そして、各距離センサ群3・4・5・6には、それぞれに前部距離センサ3a・4a・5a・6aと、後部距離センサ3b・4b・5b・6bと、上部距離センサ3c・4c・5c・6cが備えられている。
【0023】
コントローラ7は、前述した各距離センサ(即ち、各前部距離センサ3a・4a・5a・6a、各後部距離センサ3b・4b・5b・6bおよび各上部距離センサ3c・4c・5c・6c)によって検出された信号を集約し、各信号の同期処理を施すことができる装置であり、各距離センサは、全てコントローラ7に接続されている。
また、コントローラ7は、PCによって構成される演算装置8に接続されている。
【0024】
演算装置8には、コントローラ7から入力される各信号に基づいて、タイヤの状態を算出する演算プログラムが組み込まれており、また、タイヤの状態を算出するために必要となる基本データ(即ち、タイヤの形状データ等)が予め記憶されている。
【0025】
図2(a)および図3(a)に示す如く、トー角測定装置1によるトー角の測定対象となる車両100は、前進方向(X軸の負方向)に対して、車両100の左前方に配設される左前タイヤ11と、車両100の右前方に配設される右前タイヤ12と、車両100の左後方に配設される左後タイヤ13と、車両100の右後方に配設される右後タイヤ14と、これらの各タイヤ11・12・13・14によって支持されているボディ10を備えている。
【0026】
そして、トー角測定装置1によるトー角の測定方法では、各タイヤ11・12・13・14の各外側面に、それぞれ前部11a・12a・13a・14a、後部11b・12b・13b・14b、上部11c・12c・13c・14c、と呼ぶ範囲を設定している。
【0027】
本実施例では、各タイヤ11・12・13・14の内周円に対して上下2本の水平方向の接線と前後2本の鉛直方向の接線を設定して、各タイヤ11・12・13・14の外周円のうち車両の前方側の円弧と、前記上下2本の水平方向の接線と、前記前側の鉛直方向の接線と、によって囲まれる外側面の範囲をそれぞれ前部11a・12a・13a・14aと規定している。
【0028】
また、各タイヤ11・12・13・14の外周円のうち車両の後方側の円弧と、前記上下2本の水平方向の接線と、前記後側の鉛直方向の接線と、によって囲まれる外側面の範囲をそれぞれ後部11b・12b・13b・14bと規定し、さらに、各タイヤ11・12・13・14の外周円のうち車両の上方側の円弧と、前記前後2本の鉛直方向の接線と、前記上側の水平方向の接線と、によって囲まれる外側面の範囲をそれぞれ上部11c・12c・13c・14cと規定している。
【0029】
また、タイヤの形状データ等から、検出点が得られる範囲を予め予想することによって、各範囲(即ち、各前部11a・12a・13a・14a、各後部11b・12b・13b・14bおよび各上部11c・12c・13c・14c)をさらに狭めて設定することも可能であり、この場合、検出点の検出精度および検出速度(演算速度)の向上を図ることができる。
【0030】
そして、図2(b)、図3(b)および図4に示す如く、トー角測定装置1では、各タイヤ11・12・13・14の各周辺部には、各距離センサ(即ち、各前部距離センサ3a・4a・5a・6a、各後部距離センサ3b・4b・5b・6bおよび各上部距離センサ3c・4c・5c・6c)が配設される構成としている。
【0031】
つまり、図2(a)・(b)に示す如く、左前タイヤ11の周辺部には、該左前タイヤ11に対応させて距離センサ群3が配設され、左前タイヤ11の外側面の前部11aに対応させて前部距離センサ3aが配設され、後部11bに対応させて後部距離センサ3bが配設され、上部11cに対応させて上部距離センサ3cが配設されている。
そして、各距離センサ3a・3b・3cによって、それぞれに対応する各範囲(即ち、前部11a、後部11b、上部11c)を走査することが可能な構成としている。
【0032】
また、図3(a)・(b)に示す如く、右前タイヤ12の周辺部には、該右前タイヤ12に対応させて距離センサ群4が配設され、右前タイヤ12の外側面の前部12aに対応させて前部距離センサ4aが配設され、後部12bに対応させて後部距離センサ4bが配設され、上部12cに対応させて上部距離センサ4cが配設されている。
そして、各距離センサ4a・4b・4cによって、それぞれに対応する各範囲(即ち、前部12a、後部12b、上部12c)を走査することが可能な構成としている。
【0033】
また、図2(a)・(b)に示す如く、左後タイヤ13の周辺部には、該左後タイヤ13に対応させて距離センサ群5が配設され、左後タイヤ13の外側面の前部13aに対応させて前部距離センサ5aが配設され、後部13bに対応させて後部距離センサ5bが配設され、上部13cに対応させて上部距離センサ5cが配設されている。
そして、各距離センサ5a・5b・5cによって、それぞれに対応する各範囲(即ち、前部13a、後部13b、上部13c)を走査することが可能な構成としている。
【0034】
また、図3(a)・(b)に示す如く、右後タイヤ14の周辺部には、該右後タイヤ14に対応させて距離センサ群6が配設され、右後タイヤ14の外側面の前部14aに対応させて前部距離センサ6aが配設され、後部14bに対応させて後部距離センサ6bが配設され、上部14cに対応させて上部距離センサ6cが配設されている。
そして、各距離センサ6a・6b・6cによって、それぞれに対応する各範囲(即ち、前部14a、後部14b、上部14c)を走査することが可能な構成としている。
【0035】
また、各距離センサ(即ち、各前部距離センサ3a・4a・5a・6a、各後部距離センサ3b・4b・5b・6bおよび各上部距離センサ3c・4c・5c・6c)には、非接触式の距離センサが採用されており、各タイヤ11・12・13・14から所定の距離だけ離間した位置に配置されている。
【0036】
次に、トー角測定装置1によるトー角の測定状況について、図5を用いて説明をする。図5は本発明の一実施例に係るトー角測定装置によるトー角の測定状況を示す斜視図である。尚、ここでは各タイヤ11・12・13・14を代表して左前タイヤ11の周辺部におけるトー角の測定状況を例示して説明をするが、その他の各タイヤ12・13・14の各周辺部におけるトー角の測定状況はこれと同様であるため、その他の各タイヤ12・13・14に関する説明は、割愛している。
【0037】
図5に示す如く、前部距離センサ3aによって、左前タイヤ11の前部11aが全面的に走査され、前部距離センサ3aから前部11aまでの距離が測定される。そして、この測定結果は、演算装置8に入力される。
そして、前部距離センサ3aによる測定結果に基づいて、演算装置8による演算がなされて、前部11aの表面形状が検出される。
【0038】
さらに、検出された前部11aの表面形状に基づいて、演算装置8によって、前部11aにおいて、左前タイヤ11の外側面方向(Y軸の負方向)に最も膨出している点(言い換えれば、前部11aにおいて前部距離センサ3aとの距離が最も近い点)Aが検出される。尚、点Aが、どのタイヤに対して検出されたものかを区別するために、左前タイヤ11の前部11aに対して検出されたものは、以後、点A(11)と記載するものとする。同様に、右前タイヤ12の前部12aに対して検出されたものは点A(12)と記載し、左後タイヤ13の前部13aに対して検出されたものは点A(13)と記載し、右後タイヤ14の前部14aに対して検出されたものは点A(14)と記載する。
【0039】
また、前部距離センサ3aによる測定と同時に、後部距離センサ3bによって、左前タイヤ11の後部11bが全面的に走査され、後部距離センサ3bから後部11bまでの距離が測定される。そして、この測定結果は、演算装置8に入力される。
そして、後部距離センサ3bによる測定結果に基づいて、演算装置8による演算がなされて、後部11bの表面形状が検出される。
【0040】
さらに、検出された後部11bの表面形状に基づいて、演算装置8によって、後部11bにおいて、左前タイヤ11の外側面方向(Y軸の負方向)に最も膨出している点(言い換えれば、後部11bにおいて後部距離センサ3bとの距離が最も近い点)Bが検出される。尚、点Bが、どのタイヤに対して検出されたものかを区別するために、左前タイヤ11の後部11bに対して検出されたものは、以後、点B(11)と記載するものとする。同様に、右前タイヤ12の後部12bに対して検出されたものは点B(12)と記載し、左後タイヤ13の後部13bに対して検出されたものは点B(13)と記載し、右後タイヤ14の後部14bに対して検出されたものは点B(14)と記載する。
【0041】
さらに、前部距離センサ3aおよび後部距離センサ3bによる測定と同時に、上部距離センサ3cによって、左前タイヤ11の上部11cが全面的に走査され、上部距離センサ3cから上部11cまでの距離が測定される。そして、この測定結果は、演算装置8に入力される。
そして、上部距離センサ3cによる上部11cの測定結果に基づいて、演算装置8による演算がなされて、上部11cの表面形状が検出される。
【0042】
さらに、検出された上部11cの表面形状に基づいて、演算装置8によって、上部11cにおいて、左前タイヤ11の外側面方向(Y軸の負方向)に最も膨出している点(言い換えれば、上部11cにおいて上部距離センサ3cとの距離が最も近い点)Cが検出される。尚、点Cが、どのタイヤに対して検出されたものかを区別するために、左前タイヤ11の上部11cに対して検出されたものは、以後、点C(11)と記載するものとする。同様に、右前タイヤ12の上部12cに対して検出されたものは点C(12)と記載し、左後タイヤ13の上部13cに対して検出されたものは点C(13)と記載し、右後タイヤ14の上部14cに対して検出されたものは点C(14)と記載する。
【0043】
本実施例では、各距離センサ(即ち、各前部距離センサ3a・4a・5a・6a、各後部距離センサ3b・4b・5b・6bおよび各上部距離センサ3c・4c・5c・6c)としてレーザーセンサを採用している。これにより、各範囲(即ち、各前部11a・12a・13a・14a、各後部11b・12b・13b・14bおよび各上部11c・12c・13c・14c)に現れる微小な形状変化を検出するために必要な検出精度を確保している。
【0044】
次に、トー角の検出方法について、図6および図7を用いて説明をする。図6は本発明の一実施例に係るトー角の算出方法を示す説明図、図7は各タイヤにおけるトー角を示す説明図である。
図6に示す如く、左前タイヤ11について、距離センサ群3によって測定され、演算装置8によって検出された点A(11)、点B(11)、点C(11)を用いて、三角形S1が形成される。
【0045】
そして、トー角測定装置1によるトー角の測定方法では、演算装置8によって、三角形S1のXY平面視におけるXZ平面に対する角度θを算出し、この角度を左前タイヤ11のトー角θとする(図7参照)。
【0046】
また同様に、右前タイヤ12について、距離センサ群4によって測定され、演算装置8によって検出された点A(13)、点B(13)、点C(13)を用いて、三角形S2が形成され、演算装置8によって、三角形S2のXY平面視におけるXZ平面に対する角度θを算出し、この角度を右前タイヤ12のトー角θとする(図7参照)。
【0047】
また同様に、左後タイヤ13について、距離センサ群5によって測定され、演算装置8によって検出された点A(13)、点B(13)、点C(13)を用いて、三角形S3が形成され、演算装置8によって、三角形S3のXY平面視におけるXZ平面に対する角度θを算出し、この角度を左後タイヤ13のトー角θとする(図7参照)。
【0048】
また同様に、右後タイヤ14について、距離センサ群6によって測定され、演算装置8によって検出された点A(14)、点B(14)、点C(14)を用いて、三角形S4が形成され、演算装置8によって、三角形S4のXY平面視におけるXZ平面に対する角度θを算出し、この角度を右後タイヤ14のトー角θとする(図7参照)。
【0049】
尚、本実施例で示すように、本発明は一般的な4輪を有する車両に対して適用されるものであるが、係るトー角測定装置1を応用すれば、タイヤの数量が4輪以外の車両についても、トー角の測定を行うことができる。
【0050】
また、本実施例では、本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置に適用するトー角測定装置として、レーザーセンサを用いた非接触方式のトー角測定装置を例示しているが、本発明に係るトー角自動調整装置に適用するトー角測定装置を限定するものではなく、リアルタイムで精度よくトー角を測定することができるトー角測定装置であれば、種々の方式のものを採用することが可能である。
【0051】
次に、トー角調整装置22について、図1および図8、図9を用いて説明をする。図8は本発明の一実施例に係るトー角調整装置によるトー角の調整状況(調整前)を示す側面模式図、図9は本発明の一実施例に係るトー角調整装置によるトー角の調整状況(調整中)を示す側面模式図である。
図1に示す如く、本発明の一実施例に係るトー角調整装置22は、制御装置21から出力される指令信号に基づいて制御される装置である。
【0052】
また、図8に示す如く、トー角調整装置22は、ボルトやナット等を締めたり緩めたりすることができる工具としての機能を発揮する工具部22cを備えるスライド部22aと、係る工具部22cを所望する位置に導くロボットとしての機能を発揮するロボット部22bを備えており、制御装置21から指示される調整量に基づいて制御されて、任意の位置に存在するボルトやナット等の締め具合を調整することができる装置として構成されている。
【0053】
そして、図9に示す如く、トー角調整装置22のスライド部22aを、凹部28に対して、ボディ10等に接触させることなく挿入することができ、そして、凹部28の内部深くに配置されるタイロッド27に対して、スライド部22a先端に形成されている工具部22cを、精度良く宛がうことが可能となっている。これにより、作業者によらず、トー角調整装置22によって、タイロッド27を締めたり緩めたりすることが可能となる。
【0054】
そして、トー角測定装置1によって、車両100の各タイヤ11・12・13・14の各トー角θ・θ・θ・θをリアルタイムで検出しながら、制御装置21によってトー角調整装置22の動作を制御して、各タイヤ11・12・13・14に対応するタイロッド27・27・・・の締め具合を調整することが可能となる。つまり、トー角測定装置1とトー角調整装置22と制御装置21を協働させることによって、車両100の各タイヤ11・12・13・14の各トー角θ・θ・θ・θの調整作業を、自動的に実行する構成としている。
【0055】
また、本実施例では、本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置に適用するトー角調整装置として、ロボット部22bのガイド22dに沿って、スライド部22aがスライドする機構を備えた簡易な機構を有するトー角調整装置22を例示しているが、本発明に係るトー角自動調整装置に適用するトー角調整装置を限定するものではなく、例えば、ロボット部22bを多関節型のロボットアームとするような構成も可能であり、該ロボットアームの手先部分に工具部を備える構成とすることも可能である。
【0056】
次に、制御装置21について、図1を用いて説明をする。
図1に示す如く、制御装置21は、トー角自動調整装置20の各部(トー角測定装置1、トー角調整装置22、回転ローラ25等)を制御するための装置であり、演算装置8と接続されている。そして、演算装置8からは、トー角測定装置1による各タイヤ11・12・13・14の各トー角θ・θ・θ・θの測定結果が、制御装置21に入力される。
【0057】
また、制御装置21は、エンコーダ26・26・・・を介して回転ローラ25・25・・・と接続されている。そして、エンコーダ26・26・・・からは、各タイヤ11・12・13・14の回転位相の検出結果が、制御装置21に入力される。
【0058】
ここで、タイヤの回転位相とトー角の関係について、図10を用いて説明をする。図10は(a)本発明の一実施例に係る基準波形の生成方法を示す説明図、(b)本発明の一実施例に係る目標波形の生成方法を示す説明図である。
【0059】
例えば、左前タイヤ11が回転するときのトー角θの変化をグラフで表すと、図10(a)のように表される。そして、左前タイヤ11が一回転するとき(即ち、左前タイヤ11の回転位相が0〜2πまで変化する間)のトー角θの変化に着目し、一回転分のトー角θの変化を示す波形(楕円状囲み内の波形)だけを切り出したものを、基準波形Pとして設定している。
【0060】
この基準波形Pの形状は、図10(a)で示すように、トー角θの調整が進行しても、左タイヤ11の回転に伴って繰り返し出現することが判明している。つまり、トー角θの調整を行っても、左前タイヤ11が一回転する間のトー角θの変化状態は一定であり、かつ、その変化状態は左前タイヤ11の回転位相に対応しているのである。これは、その他の各タイヤ12・13・14においても同様であり、一般的なタイヤ全てにおいて、トー角の変化状態には固有の特性が存在しているものである。
【0061】
次に、目標波形の設定方法について、図10を用いて説明をする。
図10(a)に示す如く、基準波形Pに対して、その平均値θ1aを求めることができる。
そして、この平均値θ1aが、予め設定されたトー角θの目標値θsetに一致するようにして、グラフ上に基準波形Pを連続して配置すると、図10(b)に示すような波形(楕円状囲み内の波形)が生成される。この波形を目標波形Qとして設定している。このようにして設定された目標波形Qは、制御装置21に記憶される。
あるいは、目標波形Qを基準として、目標波形Qと平行な上限および下限の閾値を設定することも可能であり、上下の閾値によって挟まれる範囲を目標値として設定することも可能である。
【0062】
そして、その他の各タイヤ12・13・14についても、同様の方法により、各タイヤ12・13・14に対応する各基準波形P・P・Pを設定するとともに、各目標波形Q・Q・Qを設定する。このようにして設定された各目標波形Q・Q・Qについても、制御装置21に記憶される。
【0063】
次に、制御装置21による制御方法について、図11を用いて説明をする。図11は本発明の一実施例に係る制御装置による制御動作を示すロジック図である。尚、ここでは、左前タイヤ11について例示して説明をするが、他のタイヤ12・13・14についても同様の制御方法を適用している。
【0064】
図11に示す如く、制御装置21(図示せず)の制御ロジックにおいては、フィードフォワード制御部FFと、フィードバック制御部FBを備えている。
【0065】
フィードバック制御部FBでは、トー角測定装置1によるトー角θの現在の測定値(トー角現在値)θnの検出結果に基づいて、トー角現在値θnと現在の左前タイヤ11の回転位相Rと目標波形Qのデータの差異に基づいて、トー角調整装置22に対して指示するべき調整量Dを算出する。
【0066】
また、フィードフォワード制御部FFでは、エンコーダ26から入力される回転ローラ25(即ち、左前タイヤ11)の回転位相Rの検出結果と、目標波形Qのデータに基づいて、トー角目標値θmを算出する。
【0067】
つまり、制御装置21では、フィードバック制御部FBによって提示された調整量Dによって、トー角調整装置22を制御してトー角θを調整しつつ、その調整後のトー角現在値θnをリアルタイムでトー角測定装置1によって測定するとともに、その測定結果(トー角現在値θn)をフィードフォワード制御部FFによって提示されたトー角目標値θmに基づいて、トー角θの調整結果の合否をリアルタイムで判定している。
【0068】
次に、さらに具体的な制御装置21による制御方法について、図12を用いて説明をする。図12は(a)本発明の一実施例に係る制御装置による制御方法を示す説明図、(b)従来の制御方法を示す説明図である。尚、ここでも、左前タイヤ11について例示して説明をするが、他のタイヤ12・13・14についても同様の制御方法を適用することができる。
【0069】
(基準波形設定工程)
図12(a)に示す如く、時刻0から回転ローラ25が回転駆動され、それに伴って左前タイヤ11の回転駆動が開始される。そして、時刻Tから左前タイヤ11が一回転する時刻Tまでの間に、トー角測定装置1によって、連続的にトー角θを測定し、この測定結果に基づいて、制御装置21によって基準波形Pを設定する。
【0070】
(目標波形設定工程)
また、このとき測定された波形から、トー角θの平均値θ1bを算出し、該平均値θ1bと目標値θsetとの差異Δθに基づいて、トー角調整装置22に対して指示するべき調整量Dを算出する。
そしてさらに、生成した基準波形Pを用いて、目標波形Qを設定する。
【0071】
次に、例えば基準波形Pと同じ位相の波形の開始点(位相0のとき)が巡ってくる時刻Tから、トー角調整装置22によるトー角θの調整を開始する。尚、必ずしも位相が0となる時刻を待たなくてもよい。
【0072】
(トー角判定工程)
そして、時刻T以降において、トー角調整装置22によってトー角θの調整がなされた結果であるトー角現在値θnをトー角測定装置1によってリアルタイムに測定するとともに、そのトー角現在値θnと目標波形Qとが、そのときの回転位相Rにおいて一致するか否かを、制御装置21によりリアルタイムで判定していく。
【0073】
また、そのトー角現在値θnと目標波形Qを比較して、その差異からトー角調整装置22に対して指示するべき調整量Dを、制御装置21によりリアルタイムで算出する。
【0074】
そして、任意の回転位相Rにおける目標波形Qとそのときのトー角現在値θnが一致するまで、これらの制御動作を継続する。そして、本実施例では、任意の回転位相Rにおける目標波形Qとそのときのトー角現在値θnが時刻Tにおいて一致した例を示している。
【0075】
そして、任意の回転位相Rにおける目標波形Qとそのときのトー角現在値θnが一致した場合には、トー角θが所定の目標値θsetに達したと判定し、制御装置21からトー角調整装置22に対する調整量Dの入力を停止して、トー角θの調整作業を完了する。
以上が、トー角自動調整装置20における、制御装置21による一連の制御方法である。
【0076】
ここで、従来の制御方法と比較すると、図12(b)に示す如く、従来の制御方法では、時刻Tからトー角θの調整を開始し、時刻Tでその調整が完了したとしても、その結果を判定するためには、左前タイヤ11が一回転する間(即ち、時刻T〜T)を待って、その一回転分のトー角θの平均値θcを算出する工程を経なければならず、その結果、トー角θの調整結果が合格である旨の判定を下すことができるタイミングは、早くとも時刻Tとなっている。
【0077】
これに対して、本発明の一実施例に係る制御方法では、図12(a)に示す如く、同様に時刻Tからトー角θの調整を開始し、時刻Tよりも遅い時刻である時刻Tに調整が完了した場合であっても、その完了と同時(時刻T)に(即ち、左前タイヤ11が一回転する間を待たずに)、トー角θの調整結果が合格である旨の判定を下すことができるため、従来に比して早期にトー角θの調整作業を完了できるようになる。つまり、本実施例では、トー角θの調整作業に要する時間が、従来に比して(T−T)に相当する時間だけ短縮されている。
【0078】
次に、トー角自動調整装置20によるトー角の自動調整作業について、図13および図14を用いて説明をする。図13は本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置の全体構成を示す側面模式図、図14は本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置によるトー角の自動調整作業を示す作業フロー図である。
【0079】
図13および図14に示す如く、まず始めに、各トー角θ・θ・θ・θの調整対象たる車両100をトー角自動調整装置20に対して搬入する(STEP−1)。
【0080】
次に、作業者が車両100の配置状態を確認した後に操作スイッチ24(操作部24a)を操作する(STEP−2)。この操作によって、制御装置21による各トー角θ・θ・θ・θの自動調整を行うための各部(トー角測定装置1、トー角調整装置22、回転ローラ25等)の制御が開始される。
【0081】
制御装置21による制御が開始されると、まず各回転ローラ25・25・・・の回転駆動が開始され、それに伴って、各回転ローラ25・25・・・に接している各タイヤ11・12・13・14が回転駆動される。そして、各タイヤ11・12・13・14が回転駆動された状態で、トー角測定装置1によって、各トー角θ・θ・θ・θが測定される。
【0082】
そして、各タイヤ11・12・13・14が一回転する間に取得された各トー角θ・θ・θ・θの測定結果に基づいて、制御装置21により各基準波形P・P・P・Pが設定される。さらに、該各基準波形P・P・P・Pに基づいて、制御装置21により各目標波形Q・Q・Q・Qが設定される(STEP−3)。尚、本実施例では、各タイヤ11・12・13・14が一回転するのに要する時間を約5秒としている。
【0083】
次に、各波形の平均値θ1b・θ2b・θ3b・θ4bと、目標値θsetとの各差異Δθ・Δθ・Δθ・Δθから、制御装置21によって、トー角調整装置22に対して指示するべき各調整量D・D・D・Dが算出される(STEP−4)。
【0084】
次に、制御装置21から各調整量D・D・D・Dがトー角調整装置22に入力され、トー角調整装置22による各トー角θ・θ・θ・θの調整が実行される(STEP−5)。
【0085】
そして、トー角調整装置22による各トー角θ・θ・θ・θの調整が実行されると、その調整後の各トー角θ・θ・θ・θ(即ち、各トー角現在値θn・θn・θn・θn)が、トー角測定装置1によってリアルタイムに測定される(STEP−6)。そして、この測定結果(各トー角現在値θn・θn・θn・θn)が、制御装置21に入力される。
【0086】
また、エンコーダ26により検出した各タイヤ11・12・13・14の各回転位相R・R・R・Rと各目標波形Q・Q・Q・Qに基づいて、制御装置21によって、各トー角目標値θm・θm・θm・θmが算出される(STEP−7)。
【0087】
そして、トー角測定装置1によってリアルタイムに行われる各トー角現在値θn・θn・θn・θnの測定結果と、制御装置21によってリアルタイムに算出される各トー角目標値θm・θm・θm・θmに基づいて、各トー角θ・θ・θ・θの合否判定(即ち、各トー角現在値θn・θn・θn・θnと各トー角目標値θm・θm・θm・θmが一致するか否か)が、制御装置21によってリアルタイムで行われる(STEP−8)。
【0088】
ここで、各トー角θ・θ・θ・θのうち合格の判定がなされていないものは、(STEP−4)に戻って、各トー角現在値θn・θn・θn・θnをフィードバックして、トー角調整装置22に対する調整量D・D・D・Dを再度算出するとともに、以下(STEP−5)〜(STEP−8)を合格と判定されるまで繰り返して実行される。
【0089】
一方、各トー角θ・θ・θ・θのうち合格の判定がなされたものは、所定の目標値θsetを満足するように調整ができたものと判断され、制御装置21からのトー角調整装置22に対する対応する調整量の出力を停止する等、制御動作を完了する動作に移行される(STEP−9)。
【0090】
その後、全てのトー角θ・θ・θ・θについて合格の判定がなされた後に、車両100をトー角自動調整装置20から搬出して(STEP−10)、トー角自動調整装置20による一連の各トー角θ・θ・θ・θの自動調整作業が終了される。
以上が、トー角自動調整装置20による、一連のトー角の自動調整作業である。
【0091】
即ち、本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置20は、車両100に設けられた各タイヤ11・12・13・14の各トー角θ〜θを測定するトー角測定装置1と、各トー角θ〜θを調整するトー角調整装置22と、トー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果に基づいて、トー角調整装置22による各トー角θ〜θの調整量D〜Dを算出するとともに、該各調整量D〜Dの算出結果をトー角調整装置22に出力する制御装置21と、各タイヤ11・12・13・14の各回転位相R〜Rを検出する回転位相検出装置たるエンコーダ26と、を備えるトー角自動調整装置20であって、制御装置21は、トー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果に基づいて、各タイヤ11・12・13・14が一回転する間の各回転位相における各トー角θ〜θの変化量の推移を示す各基準波形P〜Pを算出するとともに、該各基準波形P〜Pにおける各トー角θ〜θの平均値θ1a〜θ4aを、予め設定された各トー角θ〜θの目標値θsetに一致させて、各回転位相における各トー角θ〜θの目標値を示す各目標波形Q〜Qを設定し、各タイヤ11・12・13・14が任意の回転位相R〜Rであるときのトー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果(即ち、各トー角現在値θn〜θn)が、各目標波形Q〜Qの任意の回転位相R〜Rにおける波形と一致するとき、各トー角θ〜θ(即ち、各トー角現在値θn〜θn)が目標値θsetに達したと判定するものである。
【0092】
また、本発明の一実施例に係るトー角自動調整装置20の制御方法は、車両100に設けられた各タイヤ11・12・13・14の各トー角θ〜θを測定するトー角測定装置1と、各トー角θ〜θを調整するトー角調整装置22と、トー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果に基づいて、トー角調整装置22による各トー角θ〜θの調整量D〜Dを算出するとともに、該各調整量D〜Dの算出結果をトー角調整装置22に出力する制御装置21と、各タイヤ11・12・13・14の各回転位相R〜Rを検出する回転位相検出装置たるエンコーダ26と、を備えるトー角自動調整装置20の制御方法であって、制御装置21によって、トー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果に基づいて、各タイヤ11・12・13・14が一回転する間の各回転位相における各トー角θ〜θの変化量の推移を示す各基準波形P〜Pを設定する基準波形設定工程と、制御装置21によって、各基準波形P〜Pにおける各トー角θ〜θの平均値θ1a〜θ4aを、予め設定された各トー角θ〜θの目標値θsetに一致させて、各回転位相における各トー角θ〜θの目標値θsetを示す各目標波形Q〜Qを設定する目標波形設定工程と、制御装置21によって、各タイヤ11・12・13・14が任意の回転位相R〜Rであるときのトー角測定装置1による各トー角θ〜θの測定結果(即ち、各トー角現在値θn〜θn)が、各目標波形Q〜Qの任意の回転位相R〜Rにおける波形と一致するか否かを判定するトー角判定工程と、を備えるものである。
【0093】
このような構成により、調整後の各トー角θ〜θ(即ち、各トー角現在値θn〜θn)が、各トー角目標値θm〜θmと一致しているか否かの合否判定を、各タイヤ11・12・13・14を一回転させることなく短時間で精度よく判定することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 トー角測定装置
11 左前タイヤ
12 右前タイヤ
13 左後タイヤ
14 右後タイヤ
20 トー角自動調整装置
21 制御装置
22 トー角調整装置
25 回転ローラ
26 エンコーダ
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたタイヤのトー角を測定するトー角測定装置と、
前記トー角を調整するトー角調整装置と、
前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記トー角調整装置による前記トー角の調整量を算出するとともに、該調整量の算出結果を前記トー角調整装置に出力する制御装置と、
前記タイヤの回転位相を検出する回転位相検出装置と、
を備えるトー角自動調整装置であって、
前記制御装置は、
前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記タイヤが一回転する間の各回転位相における前記トー角の変化量の推移を示す基準波形を算出するとともに、
該基準波形におけるトー角の平均値を、予め設定された前記トー角の目標値に一致させて、各回転位相における前記トー角の目標値を示す目標波形を設定し、
前記タイヤが任意の回転位相であるときの前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果が、前記目標波形の前記任意の回転位相における波形と一致するとき、前記トー角が前記目標値に達したと判定する、
ことを特徴とするトー角自動調整装置。
【請求項2】
車両に設けられたタイヤのトー角を測定するトー角測定装置と、
前記トー角を調整するトー角調整装置と、
前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記トー角調整装置による前記トー角の調整量を算出するとともに、該調整量の算出結果を前記トー角調整装置に出力する制御装置と、
前記タイヤの回転位相を検出する回転位相検出装置と、
を備えるトー角自動調整装置の制御方法であって、
前記制御装置によって、前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果に基づいて、前記タイヤが一回転する間の各回転位相における前記トー角の変化量の推移を示す基準波形を設定する基準波形設定工程と、
前記制御装置によって、前記基準波形におけるトー角の平均値を、予め設定された前記トー角の目標値に一致させて、各回転位相における前記トー角の目標値を示す目標波形を設定する目標波形設定工程と、
前記制御装置によって、前記タイヤが任意の回転位相であるときの前記トー角測定装置による前記トー角の測定結果が、前記目標波形の前記任意の回転位相における波形と一致するか否かを判定するトー角判定工程と、
を備える、
ことを特徴とするトー角自動調整装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−173577(P2010−173577A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20528(P2009−20528)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】